JP3878993B2 - 分析用具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液や尿などの試料液に含まれる特定成分を分析する際に用いられる分析用具に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料液(たとえば血液や尿)に含まれる特定成分(たとえばグルコースやコレステロール)を分析する際には、キャピラリ方式を採用したバイオセンサが使用されている。図9および図10に示したように、バイオセンサ6としては、キャピラリ60の内部に試料液が供給されたことを確認するための窓部61が形成されたものがある(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
キャピラリ60は、基板62、スペーサ63、およびカバー64によって構成されている。基板62上には、作用極65および対極66が形成されている。作用極65および対極66は、両端部65a,65b,66a,66bが露出するようにして絶縁膜67により覆われており、作用極65および対極66の端部65a,66aの間が試薬部68により繋げられている。
【0004】
窓部61は、カバー64の一部に透明または半透明領域を設けることにより形成されている。より具体的には、窓部61は、作用極65および対極66の端部65a,66aの直上を含んで、試料液導入口69aから排気口69bの間に一連に延びるように形成されている。
【0005】
このバイオセンサ6では、試料液導入口69aから導入された試料液は、毛細管現象により、キャピラリ60の内部を排気口69bに向けて移動する。このような試料液の移動は、バイオセンサ6に形成された窓部61によって、目視によって確認することができる。
【0006】
【特許文献1】
特表2001−526388号公報
【0007】
【発明が解決しようとしている課題】
しかしながら、バイオセンサ6では、キャピラリ60の内部を移動する試料液が微量であり、また窓部61が試料液導入口69aから排気口69bの間に一連に延びるように形成されているため、試料液がキャピラリ60における目的部位に到達したことを、使用者が目視によって確認するのが容易ではない。しかも、作用極65や対極66を覆っている絶縁膜67が着色されていれば、絶縁膜67の色彩が試料液の色彩を不明瞭にすることもあり、このような場合には、目視による確認がより困難となる。また、窓部61が作用極65および対極66の端部65a,66aの直上に形成されていれば、作用極65や対極66などのバイセンサ6の内部構成が見えてしまい、体裁が悪い。
【0008】
本発明は、分析用具の体裁を損ねることなく、キャピラリにおける目的部位に試料液が到達したか否かを、目視によって容易かつ確実に確認できるようにすることを課題としている。
【0009】
【発明の開示】
上記した課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。すなわち、本発明により提供される分析用具は、基板と、この基板に接合されたカバーと、上記基板および上記カバーによって構成され、試料液導入口を有し、かつこの試料液導入口から導入された試料液を移動させるためのキャピラリと、上記キャピラリにおける目的部位に試料液が到達したか否かを確認するための窓部と、を備えた分析用具であって、上記窓部は、上記目的部位の直上において、上記カバーの一部に光学的に透明な領域を設けるとともに、上記透明な領域の周りに不透明な領域を設けることにより形成されており、上記試料液導入口と上記窓部との間に、光学的に不透明な領域が設定されていることを特徴としている。
【0010】
目的部位は、たとえばキャピラリの内部において、測定に必要な量の試料液が供給されたことを確認することができる部位に設定されている。
【0012】
窓部は、たとえばカバーを、光学的に透明な透明材の表面に、開口部が形成された光学的に光不透過層を積層した構成とすることにより形成されている。
【0013】
光不透過層は、たとえば透明材の表面に直接成膜することにより形成することができる。光不透過層を直接成膜する方法としては、たとえばグラビア印刷、スクリーン印刷、蒸着、スパッタリング、CVD法が挙げられ、本発明においては、グラビア印刷あるいはスクリーン印刷により直接成膜するのが好ましい。光不透過層は、透明材の表面に貼着された薄膜として形成することもできる。このような光不透過層は、たとえば開口部が形成された色付きフィルムをカバーに貼着することにより形成することができる。
【0014】
窓部は、カバーを、開口部が形成された光不透過部と、開口部に埋設された光透過部と、を有するものとして構成することにより形成してもよい。
【0015】
本発明の分析用具は、たとえば基板上に形成され、かつキャピラリの内部に臨んだ露出部を有する複数の電極をさらに備えたものとして構成される。この場合、目的部位は、露出部における試料液の移動方向の最下流に位置する部分、または当該部分よりも下流位置に設定するのが好ましい。
【0016】
好ましい実施の形態においては、試料液導入口から試料液が導入されたことを確認するための追加の窓部が形成されている。追加の窓部は、複数の電極のうちの少なくとも一つの電極の直上を避けた部位に形成するのが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0018】
図1ないし図4には、本発明の第1の実施の形態に係るバイオセンサを示した。このバイオセンサ1は、電気化学的手法によって血液や尿などの試料液に含まれる特定成分を分析するために使用されるものである。バイオセンサ1は、基板2、スペーサ3、およびカバー4を有しており、これらによってキャピラリ5が構成されている。
【0019】
図2および図3に良く表れているように、基板2の上面には、作用極21および対極22が形成されている。これらの電極21,22は、両端部21a、21b、22a、22bが露出するようにして絶縁膜23により覆われている。作用極21および対極22の端部21a、22aの間は、試薬部24により繋げられている。試薬部24は、たとえば酸化還元酵素および電子伝達物質を含んだ固体状に形成されている。酸化還元酵素や電子伝達物質の種類は、測定対象成分の種類などに応じて選択され、たとえばグルコース濃度を測定する場合には、酸化還元酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼやグルコースオキシダーゼが使用され、電子伝達物質としてフェリシアン化カリウムが使用される。
【0020】
スペーサ3は、キャピラリ5の内部の高さ寸法を規定するためのものである。このスペーサ3には、先端部が開放したスリット31が形成されている。スリット31は、キャピラリ5内部の幅寸法を規定するためのものであり、スリット31における先端の開放部は、キャピラリ5内に試料液を導入するための試料液導入口51を構成するためのものである。
【0021】
カバー4は、図1ないし図3に示したように、排気口41および2つの窓部42,43を有している。排気口41は、キャピラリ5の内部の気体を外部に排気するためのものであり、キャピラリ5の内部と連通している。窓部42は、試料液がキャピラリ5の内部に導入されたか否かを確認するためのものであり、試料液導入口51を介して試料液を導入する際の目印ともなるものである。一方、窓部43は、キャピラリ5内における試料液の移動状態を確認するためのものであり、排気口41よりも試料液導入口51よりの部位に設けられている。これらの窓部42,43は、図3および図4に良く表れているように作用極21および対極22の直上部分を避けた領域に形成されており、窓部43における上流側の縁は対極22の端部22aにおける下流側の縁と略一致させられている。
【0022】
カバー4は、透明材44の上面に、光不透過層45を積層した形態を有している。透明材44は、排気口41を構成する貫通孔46を有しており、透明樹脂などにより形成されている。
【0023】
光不透過層45は、3つの開口部47a〜47cを有している。開口部47aは、窓部42を構成するものであり、試料液導入口51に近接した部位に形成されている。開口部47bは、窓部43を構成するものであり、キャピラリ5の直上において、開口部47c(排気口41)と、作用極21および対極22の端部21a、22aの間に設けられている。開口部47cは、排気口41を構成するものであり、透明材44における貫通孔46に対応した部位に設けられている。
【0024】
光不透過層45は、たとえば透明材44の上面に直接成膜されている。光不透過層45を成膜する方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、蒸着、スパッタリング、CVD法などの手法が挙げられるが、製造コストなどを考慮した場合、グラビア印刷やスクリーン印刷により形成するのが好ましい。グラビア印刷やスクリーン印刷では、光不透過層45は、たとえば顔料を含むインクや塗料などを透明材44の上面に塗布した後に、これを乾燥させることにより形成される。顔料としては、試料液の色彩とのコントラストの高い色彩のものを使用するのが好ましい。光不透過層45は、色つきのフィルムを透明材44の上面に貼着することにより形成することもできる。
【0025】
バイオセンサ1では、試料液導入口51から試料液を導入すれば、毛細管現象により排気口41に向けて試料液が移動する。試料液の導入は、窓部42を目印として容易かつ確実に行うことができる。また、図5(a)にクロスハッチングで示したように、窓部42を介して確認される色彩が変化したかにより、キャピラリ5に試料液が導入されたか否かを判断することができる。一方、キャピラリ5の内部に測定に必要な量の試料液が供給されたか否か、たとえば作用極21および対極22の表面が試料液により濡らされたか否かは、図5(b)にクロスハッチングで示したように、窓部43を介して確認される色彩が変化したかにより判断することができる。
【0026】
試料液の移動過程においては、試薬部24は試料液により溶解させられる。これにより、キャピラリ5内に液相反応系が構築される。この液相反応系においては、酸化還元反応が生じ、測定対象成分の量に相関した反応生成物が得られる。この反応生成物の量は、作用極21および対極22を利用して液相反応系に電圧を印加することによって、たとえば反応生成物の量に応じた応答電流値として把握される。したがって、応答電流値に基づいて、測定対象成分の量を演算することができる。
【0027】
バイオセンサ1では、窓部42,43を介して確認される色彩の変化により、目視によって、試料液がキャピラリ5に導入されたこと、あるいは試料液がキャピラリ5の内部に設定された目的部位に到達したことを容易かつ確実に確認することができる。とくに、窓部42,43の周りの色彩と試料液の色彩のコントラストが著しく異なるものとすれば、試料液がキャピラリ5に導入されたこと、および試料液が目的部位に到達していることを、さらに容易かつ確実に判断することができる。窓部42,43は、作用極21および対極22の直上を避けた部分に形成され、かつカバー4の表面において、窓部42,43が形成されている部分が占める割合が比較的に少なくされているため、窓部42,43を介して外部から確認されるバイオセンサ1の内部領域が少なく、しかもカバー4を介して作用極21や対極22が見えることがないため、バイオセンサ1の体裁を改善することができる。
【0028】
バイオセンサに形成すべき窓部は、たとえば図6(a)〜(d)に示したような構成とすることができる。図6(a)には、窓部43が排気口41に繋がった形態を示した。図6(b)には、窓部42を省略した形態を示した。図6(c)には、窓部42が作用極21の直上まで広がった形態のものを示した。図6(d)には、窓部43が対極22の直上まで広がった形態のものを示した。これらの図に示した例においても、窓部43に隣接した試料液導入口51よりの部分が不透明に形成され、作用極21および対極22のうちの少なくとも一方の直上部位を避けた領域に窓部42,43が形成されている。したがって、先に説明したバイオセンサ1と同様な効果を享受することができる。
【0029】
図7および図8には、本発明の第2の実施の形態に係るバイオセンサ1′を示した。これらの図においては、先に説明したバイオセンサ1と同様な要素には同一の符号を付してある。
【0030】
バイオセンサ1′では、カバー4′が、2つの部材を組み合わせて構成されている。このカバー4′は、開口部48a,48bが設けられた光不透過部48と、開口部48a,48bに埋設された光透過部49a,49bと、を有している。光透過部49a,49bは、バイオセンサ1(図1ないし図4参照)における窓部42,43に対応している。
【0031】
このようなバイオセンサ1′においても、光透過部(窓部)49a,49bを介して確認される色彩の変化により、試料液がキャピラリ5の内部に導入されたこと、あるいは試料液が目的部位に到達したか否かを容易かつ確実に確認することができ、バイオセンサ1′の内部構成が見えにくく、体裁が良いものとされている。
【0032】
バイオセンサ1′は、バイオセンサ1について図6(a)〜(d)を参照して先に説明したのと同様に、光透過部(窓部)について種々の変更が可能である。
【0033】
本発明は、上述した実施の形態には限定されず、種々に設計変更可能である。たとえば、先に説明した本実施の形態では、キャピラリが基板とスペーサおよびカバーにより形成されている分析用具を例にとって説明したが、本発明は、凹部が形成された基板とカバーとによってキャピラリが構成された分析用具に対しても適用可能である。本発明は、電気化学的手法により分析を行うための分析用具に限らず、光学的手法により分析を行うように構成された分析用具に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るバイオセンサを示す全体斜視図である。
【図2】図1に示したバイオセンサの分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示したバイオセンサの平面図である。
【図5】図1に示したバイオセンサのキャピラリに試料液が導入されていく様子を示す平面図である。
【図6】本発明に係るバイオセンサの他の例を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るバイオセンサを示す全体斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】従来のバイオセンサの一例を示す分解斜視図である。
【図10】図9に示したバイオセンサの断面図である。
【符号の説明】
1,1′ バイオセンサ(分析用具)
2 基板
4,4′ カバー
42 (追加の)窓部
43 窓部
44 透明材
45 光不透過層
48 光不透過部
49a,49b 光透過部
5 キャピラリ
Claims (9)
- 基板と、この基板に接合されたカバーと、上記基板および上記カバーによって構成され、試料液導入口を有し、かつこの試料液導入口から導入された試料液を移動させるためのキャピラリと、上記キャピラリにおける目的部位に試料液が到達したか否かを確認するための窓部と、を備えた分析用具であって、
上記窓部は、上記目的部位の直上において、上記カバーの一部に光学的に透明な領域を設けるとともに、上記透明な領域の周りに不透明な領域を設けることにより形成されており、
上記試料液導入口と上記窓部との間に、光学的に不透明な領域が設定されていることを特徴とする、分析用具。 - 上記窓部は、測定に必要な量の試料液が供給されたことを確認することができる部位に設定されている、請求項1に記載の分析用具。
- 上記窓部は、上記カバーを、光学的に透明な透明材の表面に、開口部が形成された光不透過層を積層した構成とすることにより形成されている、請求項1に記載の分析用具。
- 上記光不透過層は、上記透明材の表面に直接成膜されたものである、請求項3に記載の分析用具。
- 上記光不透過層は、上記透明材の表面に貼着された薄膜である、請求項3に記載の分析用具。
- 上記窓部は、上記カバーを、開口部が形成された光不透過部と、上記開口部に埋設された光透過部と、を有するものとして構成することにより形成されている、請求項1に記載の分析用具。
- 上記基板上に形成され、かつ上記キャピラリの内部に臨んだ露出部を有する複数の電極をさらに備え、
上記目的部位は、上記露出部における上記試料液の移動方向の最下流に位置する部分、または当該部分よりも下流位置に設定されている、請求項1ないし6のいずれかに記載の分析用具。 - 上記試料液導入口から試料液が導入されたことを確認するための追加の窓部が形成されている、請求項7に記載の分析用具。
- 上記追加の窓部は、上記複数の電極のうちの少なくとも一つの電極の直上を避けた部位に形成されている、請求項8に記載の分析用具。
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