JP3878662B2 - セグメントピース及び地中構造物の構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼−コンクリート複合の地中構造物の原型となる沈設体を構設する鋼製のセグメントピースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋼−コンクリート複合の地中構造物の原型となる沈設体を用いて地中構造物を構築する地中構造物の構築方法においては、沈設体を構設するために多数のセグメントピースを使用している。かかるセグメントピースの一例を図5に示す。図5のセグメントピース100は、スキンプレート101、主桁102、継手板103、縦リブ104から構成されている。
【0003】
スキンプレート101は、円弧状に湾曲した長方形の形状を有しており、図面の上下方向の両端には、一対の主桁102が接合されている。また、図面の左右方向の両端には、一対の継手板103が接合されている。さらに、一対の主桁102と一対の継手板103とが互いに接合するとともに、継手板103と平行に配置された複数の縦リブ104が、スキンプレート101と一対の主桁102とに接合することにより、図5のセグメントピース100の補強がなされている。
【0004】
尚、各部材は、3〜25mm程度の厚さを有した鋼板からなっており、その接合は溶接によって行われる。さらに、主桁102と継手板103には、セグメントピース100同士をボルト接合で連結させるための接続孔105が多数設けられている。
【0005】
そして、多数のセグメントピース100を、千鳥配列をもって互いに連結することにより、図6に示すような円筒状の沈設体110を構設することができる。このように構設された沈設体110は、圧入工法や既設の孔中に設置する設置工法などで地中に配置され、その内部に鉄筋篭を吊込んだ後にコンクリートを打設することによって、深礎杭などにすることができる。あるいは、その内部に主鉄筋や帯鉄筋を配置した後に2次巻コンクリートを打設することによって、立坑などにすることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、深礎杭や立坑などの地中構造物の原型となる沈設体110が、深礎杭や立坑などの地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋と同じ鋼材でできており、しかも、優れた強度を持つにも拘わらず、従来の技術においては、深礎杭や立坑などの地中構造物の有効断面を沈設体110の内側の空筒部分で決めなければならなかったため、深礎杭や立坑などの地中構造物を構築する際には、沈設体110の内部に鉄筋篭を吊込んだり、主鉄筋や帯鉄筋を配置しなければならなかった。そのため、深礎杭や立坑などの地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を沈設体110に代用させることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を沈設体に代用させることによって、その内部に鉄筋篭を吊込んだり、主鉄筋や帯鉄筋を配置することが不要なセグメントピース及び地中構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために成された請求項1に係るセグメントピースは、スキンプレートの両端に形設された主桁を介して互いを連結することにより、鋼−コンクリート複合の地中構造物の原型となる沈設体を構設する鋼製のセグメントピースであって、両端に雄ねじを螺刻した鉄筋と、前記主桁に所定ピッチで対称的に設けられた鉄筋孔と、前記鉄筋の両端の雄ねじと螺接する長ナットと、前記鉄筋の一端の雄ねじと螺接する短ナットとを備え、前記沈設体の構設時に連通する互いの鉄筋孔に挿通させた各鉄筋を、前記長ナットで接合し一本化することによって、前記地中構造物の主鉄筋を前記所定ピッチで形成すると同時に、前記沈設体の構設時に接面する互いの主桁を、各鉄筋の一端の雄ねじに螺接した前記長ナットと前記短ナットで締結することによって、互いを連結することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係るセグメントピースは、請求項1に記載するセグメントピースであって、前記沈設体の軸方向の千鳥配列をもって互いを連結することにより、前記主桁を前記沈設体の周方向の同一接面上に配置したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係るセグメントピースは、請求項1又は請求項2に記載するセグメントピースであって、前記沈設体の主桁の総重量が、前記地中構造物に要求される帯鉄筋の総重量に等しいことを特徴とする。
また、請求項4に係るセグメントピースは、請求項1又は請求項2に記載するセグメントピースであって、前記沈設体の主桁の総重量と前記沈設体のスキンプレートの総重量との和が、前記地中構造物に要求される帯鉄筋の総重量に等しいことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係るセグメントピースは、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載するセグメントピースであって、前記長ナットは前記主桁の内面に固定されたことを特徴とする。
また、請求項6に係るセグメントピースは、請求項5に記載するセグメントピースであって、前記鉄筋の長さが前記主桁の間隔と同じであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係るセグメントピースは、請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載するセグメントピースであって、前記所定ピッチで前記主桁の曲げ強度を確保したことを特徴とするセグメントピース。
また、請求項8に係るセグメントピースは、請求項7に記載するセグメントピースであって、前記スキンプレートの厚さが前記主桁の厚さに等しいとともに、前記主桁の間隔が前記所定ピッチであることを特徴とする。
【0013】
また、請求項9に係る地中構造物の構築方法は、請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載するセグメントピースで構設された沈設体を使用して地中構造物を構築することを特徴とする。
【0014】
このような構成を有する本発明のセグメントピースでは、継手板及び主桁を介して互いを連結させることによって、地中構造物の原型となる沈設体を構設することができる。そのためには、スキンプレートの両端に形設された主桁を接面させることによって、互いの主桁に設けられた鉄筋孔を連通させる。
【0015】
このとき、鉄筋孔は主桁に所定ピッチで対称的に設けられたものであるから、千鳥組を配慮して主桁を次々に接面させると、これによって、連通した鉄筋孔は直線上に位置する。従って、連通した鉄筋孔に挿通させた各鉄筋も、直線上に位置する。そこで、各鉄筋の両端の雄ねじに長ナットを螺合させることによって、直線上に位置する各鉄筋を一本化する。一本化された鉄筋は、複数のセグメントピースで構設された沈設体を原型とする地中構造物の主鉄筋となることができる。そして、一本化された鉄筋(沈設体の軸方向の鉄筋で、鋼−コンクリート複合の地中構造物の主鉄筋となるもの)は、所定ピッチで等しく配置されるので、荷重に対する地中構造物の抵抗力が均一になるとともに、各鉄筋の太さを共通化させることができる。
【0016】
さらに、各鉄筋の一端の雄ねじに螺接した長ナットと短ナットとで、接面した互いの主桁を挟持するようにして締結する。これによって、主桁を介して互いを連結させることができる。同時に、一本化された鉄筋(地中構造物の主鉄筋となるもの)が固定されるとともに、各鉄筋を一本化させている長ナットのゆるみを防止することができる。
【0017】
また、一本化された鉄筋(地中構造物の主鉄筋となるもの)は、主桁の鉄筋孔に挿通された状態にある。従って、主桁は、一本化された鉄筋(地中構造物の主鉄筋となるもの)を座屈から防止することができる。さらに、沈設体の構設時においては、主桁の各々は隣り合うことによって平面的に一体となり、一本化された鉄筋(地中構造物の主鉄筋となるもの)の全てを取り囲む状態にある。そして、平面的に一体となった主桁は、スキンプレートの両端に形設されたものであるから、スキンプレートの両端に形設された主桁の間隔ごとに位置する。よって、平面的に一体となった主桁を地中構造物の帯鉄筋とみなすことができる。また、平面的に一体となった主桁の各々を、地中構造物の帯鉄筋の一部とみなすことができる。
【0018】
以上より、一本化された鉄筋が地中構造物の主鉄筋となるとともに、平面的に一体となった主桁を地中構造物の帯鉄筋とみなすことができる。そして、鉄筋や主桁は本発明のセグメントピースを構成するものである。従って、鋼−コンクリート複合の地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を、本発明のセグメントピースで構設される沈設体に代用させることができる。
【0019】
また、沈設体の構設時において、沈設体の軸方向の千鳥配列をもってセグメントピースの主桁を接面させていれば、沈設体の周方向に平面的に一体となった主桁の各々(地中構造物の帯鉄筋の一部とみなされるもの)は、交互に重なり合いながら接面する。従って、平面的に一体となった主桁(地中構造物の帯鉄筋とみなされるもの)において、帯鉄筋の一部同士(平面的に一体となった主桁の各々)を接合する際に要求される、例えば鉄筋直径(ここでは、主桁の厚さ)の20倍以上などのオーバーラップを確保することができる。
【0020】
また、平面的に一体となった主桁(地中構造物の帯鉄筋とみなされるもの)の総重量を、地中構造物に要求される帯鉄筋の総重量に等しくすることにより、地中構造物の帯鉄筋に要求される強度を確保する。沈設体においては、平面的に一体とならない主桁は存在しないことから、平面的に一体となった主桁(地中構造物の帯鉄筋とみなされるもの)の総重量とは、沈設体の主桁の総重量である。
【0021】
また、スキンプレートも、地中構造物の帯鉄筋の一部とみなされる主桁を形設したものであるから、一本化された鉄筋(地中構造物の主鉄筋となるもの)を座屈から防止すると考えることができる。さらに、沈設体の構設時においては、スキンプレートは隣り合うことによって平面的に一体となり、一本化された鉄筋(地中構造物の主鉄筋となるもの)の全てを取り囲む状態にあるので、地中構造物の帯鉄筋の一部とみなすことができる。そこで、この場合には、沈設体の主桁の総重量に沈設体のスキンプレートの総重量を加えた和を、地中構造物に要求される帯鉄筋の総重量に等しくすることにより、地中構造物の帯鉄筋に要求される強度を確保することが可能となる。
【0022】
また、主桁の鉄筋孔に挿通させた各鉄筋を一本化する長ナットが、主桁の内面に固定したものであれば、長ナットを作業者が保持する必要がないので、各鉄筋を一本化する作業や、接面した互いの主桁を締結する作業が容易となる。
【0023】
そして、主桁の内面に固定された各長ナットに、各鉄筋の他端の雄ねじを螺接させることにより、セグメントピース内において各鉄筋を一時的に保持させることができる。このとき、各鉄筋の長さがスキンプレートの両端に形設された主桁の間隔と同じであれば、セグメントピース外に各鉄筋を突出させないようにすることができる。また、各鉄筋の一端は主桁の各鉄筋孔に係止された状態になるので、各鉄筋を主桁の各鉄筋孔に挿通させる作業が容易となる。
【0024】
さらに、かかる鉄筋の一端の雄ねじに短ナットを螺接させておけば、鉄筋、長ナット、短ナットをセグメントピース内に納めることができる。これにより、鉄筋、長ナット、短ナットを個別に取り扱うことがなく、その不便さから解放される。また、鉄筋が自然に回転して長ナットから抜け出そうになっても、短ナットが主桁に当接することから、一時的に保持された鉄筋がセグメントピース内から脱落することを防止できる。
【0025】
また、主桁を介して互いを連結させた際は、スキンプレートの両端に形設された主桁の鉄筋孔に挿通された鉄筋は、長ナットと短ナットとを介して、スキンプレートの両端に形設された一対の主桁に固定される。従って、鉄筋は主桁を補強するリブとしての役割を果たす。このことから、主桁に設けられた鉄筋孔の所定ピッチをもって、主桁に要求される曲げ強度を確保することができる。このとき、補強の縦リブを必要に応じて補って設けることで、前記の要求される曲げ強度をより有効に確保することもできる。
【0026】
さらに、主桁はスキンプレートの両端に形設されたものであるから、主桁の間隔はスキンプレートの曲げ強度を左右する。また、スキンプレートも主桁も地中構造物の原型である沈設体の一部であるから、スキンプレートの曲げ強度を考慮する際の設計荷重は、主桁の曲げ強度を考慮する際に用いるものと同じである。そこで、スキンプレートの厚さが主桁の厚さに等しい場合には、主桁の曲げ強度のときと同様に考えることができるので、主桁の間隔を上述した所定ピッチにすることにより、スキンプレートに要求される曲げ強度を確保することができる。
【0027】
すなわち、本発明のセグメントピースでは、沈設体を構設するセグメントピースの主桁の鉄筋孔に挿通された各鉄筋を、長ナットと短ナットで一本化しており、一本化された鉄筋が地中構造物の主鉄筋となるとともに、平面的に一体となった主桁は地中構造物の帯鉄筋とみなされ、地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を沈設体に代用させることができるので、その内部に鉄筋篭を吊込んだり、主鉄筋や帯鉄筋を配置させることが不要となる。
【0028】
特に、地中構造物の構築方法において、セグメントピースで構設された沈設体を地中構造物の原型として使用するときは、地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を沈設体に代用させることによって、鋼材を節約させることができるとともに、沈設体の内部に鉄筋篭を吊込んだり、主鉄筋や帯鉄筋を配置させることが不要となるので、工費の削減や工期の短縮を実現できる。
さらに、地中構造物の有効断面を、沈設体の最外面すなわちスキンプレート面の内側における構造で評価できることになり、工事のコンパクト化に寄与することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。本実施の形態のセグメントピースの斜視図を図1に示す。図1のセグメントピース1は、千鳥配列をもって互いを連結させることによって、図6の円筒状の沈設体110を構設することができるものである。尚、ここでは、必要に応じて配設されることもある縦リブは図示しない。
【0030】
先ず、図1のセグメントピース1の構成について説明する。図1のセグメントピース1は、スキンプレート11、主桁12、継手板13、図示しない縦リブなどから構成されている。スキンプレート11は、円弧状に湾曲した長方形の形状を有しており、図面の上下方向の両端に、一対の主桁12が形設されている。また、図面の左右方向の両端に、一対の継手板13が形設され、一対の主桁12と接合している。
【0031】
さらに、一対の主桁12には、所定ピッチで対称的に鉄筋孔14が設けられている。ただし、両側の鉄筋孔14と継手板13の間隔は、所定ピッチの半分である。また、他方(図面の上側)の主桁12の内面には、各鉄筋孔14と連通するように、長ナット17がそれぞれ固定されている。
【0032】
そして、各長ナット17には、各鉄筋16の他端(図面の上側)の雄ねじが螺接される。本実施の形態では、各鉄筋16の長さはスキンプレート11の両端に形設された主桁12の間隔と同じである。従って、図1に示すように、各鉄筋16の一端(図面の下側)を、一方(図面の下側)の主桁12の各鉄筋孔14に係止させることによって、セグメントピース1外に各鉄筋16を突出させることなく、セグメントピース1内において、各鉄筋16を一時的に保持することができる。
【0033】
また、各鉄筋16の一端(図面の下側)の雄ねじに短ナット18を螺接させており、鉄筋16、長ナット17、短ナット18をセグメントピース1内に納めることができる。これにより、鉄筋16、長ナット17、短ナット18を個別に取り扱うことがなく、その不便さから解放される。また、鉄筋16が自然に回転して長ナット17から抜け出そうになっても、短ナット18が一方(図面の下側)の主桁12に当接することから、一時的に保持された鉄筋16がセグメントピース1内から脱落することを防止できる。
【0034】
また、スキンプレート11、主桁12、継手板13は、鋼板からなっており、それらの接合は溶接によって行われる。また、スキンプレート11と主桁12は、同じ厚さのものである。また、継手板13には、継手板13同士をボルト接合で連結させるための接続孔15が多数設けられている。
【0035】
次に、図1のセグメントピース1の連結について説明する。ここでは、主桁12を介した互いの連結について、図2のフロー図を参照しながら説明する。先ず、スキンプレート13を揃えながら、互いの主桁12を接面させる。そして、互いの主桁12に設けられた鉄筋孔14を連通させる。さらに、鉄筋16の一端(図面の下側)を、連通させた鉄筋孔14に挿通させるために、鉄筋16を時計方向に回転させる。
【0036】
このとき、鉄筋16の一端(図面の下側)は、一方(図面の下側)の主桁12の鉄筋孔14に係止された状態にあるので、連通させた鉄筋孔14に鉄筋16を挿通させる作業は容易となる。
【0037】
時計方向に回転させられた鉄筋16は、連通させた鉄筋孔14を挿通し、相手側のセグメントピース1において、他方(図面の上側)の主桁12の内面に固定された長ナット17と螺合し、かかる長ナット17に既に螺合している鉄筋16の他端(図面の上側)に当接するまで、図面の下側へ移動する。これにより、相手側のセグメントピース1の鉄筋16と一本化することができる。
【0038】
その後、鉄筋16の一端(図面の下側)に螺接している短ナット18を、反時計方向に回転させる。これにより、短ナット18と相手側のセグメントピース1の長ナット17で、接面した互いの主桁12を挟持するように締結する。よって、互いのセグメントピース1を連結させることができる。同時に、一本化された鉄筋16が固定されるとともに、各鉄筋16を一本化させている長ナット17のゆるみを防止することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、長ナット17は主桁12の内面に固定されたものであるから、長ナット17を作業者が保持する必要がない。従って、各鉄筋16を一本化する作業や、接面した互いの主桁12を締結する作業が容易となる。
【0040】
そして、上述した連結手順を、千鳥配列されたセグメントピース1に対し繰り返すことによって、図6の円筒状の沈設体110を構設することができる。尚、継手板13を介する互いの連結は、従来技術と同様にして、継手板13に設けられた接続孔15を介したボルト接合で行う。
【0041】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のセグメントピース1では、図2に示すように、主桁12を介して互いを連結させることによって、地中構造物の原型となる図6の沈設体110を構設することができる。そのためには、先ず、スキンプレート11の両端に形設された主桁12を接面させることによって、互いの主桁12に設けられた鉄筋孔14を連通させる。
【0042】
このとき、鉄筋孔14は主桁12に所定ピッチで対称的に設けられたものであるから(図1参照)、主桁12を次々に接面させると、これによって、連通した鉄筋孔14は直線上に位置する。従って、連通した鉄筋孔14に挿通させた各鉄筋16も、直線上に位置する。そこで、各鉄筋16の両端の雄ねじに長ナット17を螺合させることによって、直線上に位置する各鉄筋16を一本化する。一本化された鉄筋16は、複数のセグメントピース1で構設された沈設体110を原型とする地中構造物の主鉄筋となることができる。
【0043】
図3は、本実施の形態のセグメントピース1で構設された沈設体110を切断した断面図である。図3に示すように、一本化された鉄筋16(地中構造物の主鉄筋となるもの)は、所定ピッチで等しく配置されるので、荷重に対する地中構造物の抵抗力が均一になるとともに、各鉄筋16の太さを共通化させることができる。
【0044】
また、一本化された鉄筋16(地中構造物の主鉄筋となるもの)は、主桁12の鉄筋孔14に挿通された状態にある。従って、主桁12は、一本化された鉄筋16(地中構造物の主鉄筋となるもの)を座屈から防止することができる。さらに、沈設体110の構設時においては、図3に示すように、主桁12の各々は隣り合うことによって平面的に一体となり、一本化された鉄筋16(地中構造物の主鉄筋となるもの)の全てを取り囲む状態にある。
【0045】
そして、平面的に一体となった主桁12は、スキンプレート11の両端に形設されたものであるから(図1参照)、スキンプレート11の両端に形設された主桁12の間隔ごとに位置する(図6参照)。よって、平面的に一体となった主桁12を地中構造物の帯鉄筋とみなすことができる。また、平面的に一体となった主桁12の各々を、地中構造物の帯鉄筋の一部とみなすことができる。
【0046】
以上より、一本化された鉄筋16が地中構造物の主鉄筋となるとともに、平面的に一体となった主桁12を地中構造物の帯鉄筋とみなすことができる。そして、鉄筋16や主桁12は本実施の形態のセグメントピース1を構成するものである(図1参照)。従って、地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を、本実施の形態のセグメントピース1で構設される沈設体110に代用させることができる。
【0047】
また、沈設体110の構設時において、千鳥配列をもって主桁12を接面させているので、平面的に一体となった主桁12の各々(地中構造物の帯鉄筋の一部とみなされるもの)は、交互に重なり合いながら接面する。本実施の形態においては、図3に示すように、10個の主桁12が交互に重なり合いながら接面する。従って、平面的に一体となった主桁12(図3の地中構造物の帯鉄筋とみなされるもの20)は、図4に示すように、帯鉄筋の一部30同士(平面的に一体となった主桁12の各々)を交互に重ね合わせながら接合していると言える。従って、帯鉄筋の一部同士を接合する際に要求される、例えば鉄筋直径(ここでは主桁12の厚さ)の20倍以上などのオーバーラップを確保することができる。
【0048】
また、本実施の形態では、平面的に一体となった主桁12(図3の地中構造物の帯鉄筋とみなされるもの20)の総重量は、地中構造物に要求される帯鉄筋の総重量に等しくしてある。従って、地中構造物の帯鉄筋に要求される強度を確保することができる。尚、沈設体110においては、平面的に一体とならない主桁12は存在しないことから、平面的に一体となった主桁12(図3の地中構造物の帯鉄筋とみなされるもの20)の総重量とは、沈設体110の主桁12の総重量である。
【0049】
また、主桁12を介して互いを連結する際は、スキンプレート11の両端に形設された主桁12の鉄筋孔14に挿通された鉄筋16は、長ナット17と短ナット18とを介して、スキンプレート11の両端に形設された一対の主桁12に固定される(図2参照)。従って、鉄筋16は主桁12を補強するリブとしての役割の全部又は一部を果たす。このことから、主桁12に設けられた鉄筋孔14の所定ピッチをもって、主桁12に要求される曲げ強度を確保することができる。
【0050】
さらに、主桁12はスキンプレート11の両端に形設されたものであるから(図1参照)、主桁12の間隔はスキンプレート11の曲げ強度を左右する。また、スキンプレート11も主桁12も地中構造物の原型である沈設体110の一部であるから、スキンプレート11の曲げ強度を考慮する際の設計荷重は、主桁12の曲げ強度を考慮する際に用いるものと同じである。本実施の形態では、スキンプレート11の厚さが主桁12の厚さに等しく、主桁12の曲げ強度のときと同様に考えることができるので、主桁12の間隔を上述した所定ピッチにすることにより、スキンプレート11に要求される曲げ強度を確保することができる。
【0051】
すなわち、本実施の形態のセグメントピース1では、沈設体110を構設するセグメントピース1の主桁12の鉄筋孔14に挿通された各鉄筋16を、長ナット17と短ナット18で一本化しており、一本化された鉄筋16が地中構造物の主鉄筋となるとともに、平面的に一体となった主桁12は地中構造物の帯鉄筋とみなされ、地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を沈設体110に代用させることができるので、その内部に鉄筋篭を吊込んだり、主鉄筋や帯鉄筋を配置させることが不要となる。
【0052】
特に、地中構造物の構築方法において、セグメントピース1で構設された沈設体110を地中構造物の原型として使用するときは、地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を沈設体110に代用させることによって、鋼材を節約させることができるとともに、沈設体110の内部に鉄筋篭を吊込んだり、主鉄筋や帯鉄筋を配置させることが不要となるので、工費の削減や工期の短縮を実現できる。
さらに、地中構造物の有効断面を、沈設体110の最外面すなわちスキンプレート11面の内側における構造で評価できることになり、工事のコンパクト化に寄与することができる。
【0053】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施の形態のセグメントピース1では、沈設体110の主桁12の総重量を、地中構造物に要求される帯鉄筋の総重量に等しくすることにより、地中構造物の帯鉄筋に要求される強度を確保している。しかし、スキンプレート11も、地中構造物の帯鉄筋の一部とみなされる主桁12を形設したものであるから、一本化された鉄筋16(地中構造物の主鉄筋となるもの)を座屈から防止すると考えることができる。さらに、沈設体110の構設時においては、スキンプレート11は隣り合うことによって平面的に一体となり、一本化された鉄筋16(地中構造物の主鉄筋となるもの)の全てを取り囲む状態にあるので(図3、図6参照)、地中構造物の帯鉄筋の一部とみなすことができる。
【0054】
そこで、この場合には、沈設体110の主桁12の総重量に沈設体110のスキンプレート11の総重量を加えた和を、地中構造物に要求される帯鉄筋の総重量に等しくすることにより、地中構造物の帯鉄筋に要求される強度を確保することが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態のセグメントピース1では、他方(図1の上側)の主桁12の内面のみに長ナット17が固定されている。しかし、各鉄筋16を一本化させたり、接面した互いの主桁12を締結させたりすることができるのであれば、両方(図1の上・下側)の主桁12の内面のどちらかに長ナット17を固定してもよい。ただし、千鳥配列をもって連結させる場合には、長ナット17を規則的に固定させる必要がある。
【0056】
また、長ナット17を主桁12に固定しなくても、各鉄筋16を一本化させたり、接面した互いの主桁12を締結させたりすることは可能である。従って、長ナット17を主桁12に固定しなくても、地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を、本実施の形態のセグメントピース1で構設される沈設体110に代用させることは可能である。
【0057】
さらに、接面した互いの主桁12の締結力や主桁12の曲げ強度を確保できるのであれば、連通した鉄筋孔14の全ての箇所において、接面した互いの主桁12を長ナット17と短ナット18で締結する必要はない。そこで、プレート11の両端に形設された主桁12の間隔の倍数の長さをもつ鉄筋16を使用すれば、接面した互いの主桁12を長ナット17と短ナット18で締結することを、とびとびに行うことができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明のセグメントピースでは、沈設体を構設するセグメントピースの主桁の鉄筋孔に挿通された各鉄筋を、長ナットと短ナットで一本化しており、一本化された鉄筋が地中構造物の主鉄筋となるとともに、平面的に一体となった主桁は地中構造物の帯鉄筋とみなされ、地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を沈設体に代用させることができるので、その内部に鉄筋篭を吊込んだり、主鉄筋や帯鉄筋を配置させることが不要となる。
【0059】
特に、地中構造物の構築方法において、セグメントピースで構設された沈設体を地中構造物の原型として使用するときは、地中構造物に要求される主鉄筋や帯鉄筋を沈設体に代用させることによって、鋼材を節約させることができるとともに、沈設体の内部に鉄筋篭を吊込んだり、主鉄筋や帯鉄筋を配置させることが不要となるので、工費の削減や工期の短縮を実現できる。
さらに、地中構造物の有効断面を、沈設体の最外面すなわちスキンプレート面の内側における構造で評価できることになり、工事のコンパクト化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセグメントピースの斜視図である。
【図2】本発明のセグメントピースの連結手順を示したフロー図である。
【図3】本発明のセグメントピースで構設された沈設体を切断した断面図である。
【図4】本発明のセグメントピースを千鳥配列で連結することにより沈設体を構設した場合において、本発明のセグメントピースの主桁を地中構造物に要求される帯鉄筋の一部とみなしたときの概念図である。
【図5】従来技術のセグメントピースの斜視図である。
【図6】セグメントピースで構設された沈設体の斜視図である。
【符号の説明】
1 セグメントピース
11 スキンプレート
12 主桁
14 鉄筋孔
16 鉄筋
17 長ナット
18 短ナット
110 沈設体
Claims (9)
- スキンプレートの両端に形設された主桁を介して互いを連結することにより、鋼−コンクリート複合の地中構造物の原型となる沈設体を構設する鋼製のセグメントピースにおいて、
両端に雄ねじを螺刻した鉄筋と、
前記主桁に所定ピッチで対称的に設けられた鉄筋孔と、
前記鉄筋の両端の雄ねじと螺接する長ナットと、
前記鉄筋の一端の雄ねじと螺接する短ナットとを備え、
前記沈設体の構設時に連通する互いの鉄筋孔に挿通させた各鉄筋を、前記長ナットで接合し一本化することによって、前記地中構造物の主鉄筋を前記所定ピッチで形成すると同時に、前記沈設体の構設時に接面する互いの主桁を、各鉄筋の一端の雄ねじに螺接した前記長ナットと前記短ナットで締結することによって、互いを連結することを特徴とするセグメントピース。 - 請求項1に記載するセグメントピースにおいて、
前記沈設体の軸方向の千鳥配列をもって互いを連結することにより、前記主桁を前記沈設体の周方向の同一接面上に配置したことを特徴とするセグメントピース。 - 請求項1又は請求項2に記載するセグメントピースにおいて、
前記沈設体の主桁の総重量が、前記地中構造物に要求される帯鉄筋の総重量に等しいことを特徴とするセグメントピース。 - 請求項1乃至請求項2に記載するセグメントピースにおいて、
前記沈設体の主桁の総重量と前記沈設体のスキンプレートの総重量との和が、前記地中構造物に要求される帯鉄筋の総重量に等しいことを特徴とするセグメントピース。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載するセグメントピースにおいて、
前記長ナットは前記主桁の内面に固定されたことを特徴とするセグメントピース。 - 請求項5に記載するセグメントピースにおいて、
前記鉄筋の長さが前記主桁の間隔と同じであることを特徴とするセグメントピース。 - 請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載するセグメントピースにおいて、
前記主桁の間隔を所定ピッチにすることにより前記主桁の曲げ強度を確保したことを特徴とするセグメントピース。 - 請求項7に記載するセグメントピースにおいて、
前記スキンプレートの厚さが前記主桁の厚さに等しいとともに、前記主桁の間隔が前記所定ピッチであることを特徴とするセグメントピース。 - 請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載するセグメントピースで構設された沈設体を用いて地中構造物を構築することを特徴とする地中構造物の構築方法。
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