JP3878025B2 - 強化型航海データ記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、海上輸送船舶の運行に関するデータを記録するための方法および装置に関する。より詳細には、本発明は、事故または「事件」に至るデータを記録し、保護するための方法および装置に関する。さらに、本発明は概して、熱に弱いアイテム(例えば、航海データ記録装置において用いられるソリッドステートメモリデバイスおよびそのようなもの)を、航海事故の後に発生し得る火災から保護する方法および装置に関する。本発明は概して、このようなアイテムを衝撃による損傷および湿気による影響から保護する方法および装置にも関する。
【0002】
【従来の技術】
国外にいる船舶において発生するデータおよび可聴コマンドの記録は、航海時の事故および事件の調査に有用であり得ることが、長年指摘されてきた。実際、これは従来の船舶の航海日誌にとって欠かせない技術適用であると、多くの人が認識していた。このような要望が頂点に達したことにより、航海データ記録装置(VDR)の性能を管理する国際規格が作られた。
【0003】
上記の主張の価値は、1974年、国際海事機関(IMO)の「海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS)会議によって承認され、同会議は、航空機のフライトレコーダである「ブラックボックス」に類似した記録装置を船舶に搭載したいとの希望を表明した。これが契機となって、航海データ記録装置(VDR)に関する国際規格および要件が時間をかけて確立されることとなった。
【0004】
1996年、長年議論が重ねられてきたこのVDRに関する要件が、IMOの航行(navigation)およびエレクトロニクスに関する部会(NAV)において浮上した。その後のIMOによるVDRに関する決議を見越して、IEC(国際電気標準会議)TC80はWG11を形成し、NAVによる要求の起草案に基づいて、VDRに関する仕様の構築に着手した。1997年11月、IMOはA.861(20)に関する決議を通過させ、1999年3月の投票による委員会の草案として、IEC規格61996が完成した。この仕様書は、2000年8月に公開された。
【0005】
IEC61996の海上輸送データ記録装置の性能に関する要求においては、データ取得機能および格納機能についての記載があり、「保護カプセル」および「最終格納媒体」について言及している。この規格を満たすためのアーキテクチャが、2つの主要コンポーネントと共に現れた。
【0006】
第1のコンポーネントにおいて、船舶のインターフェース、データ取得機能およびソフト記録機能が、データ管理ユニット(DMU)に収容される。DMUは、比較的良好な環境のブリッジでの取付けを想定している。第2のコンポーネントは、保護カプセルおよび最終格納媒体を収容する強化型の航海記録装置(HVR)である。HVRは、残存性および復元性を重要視して設計され、船橋楼甲板へのまたは上部構造の上面への外部からの取付けを想定している。
【0007】
強化型の航海記録装置(HVR)の主な機能は、航海データ記録装置(VDR)によって取得されたデータを保護して、事故または「事件」の捜査の際にデータを使うことができるようにすることである。
【0008】
同一譲受人に譲渡され、かつ、同時係属中である米国特許出願に、HVRのエレクトロニクスおよびソフトウェアに関連する詳細についての開示がある。本願は、メモリを含む「保護カプセル」の物理的な面についての詳細に関する。この保護カプセルは、衝撃による損傷、熱による損傷および湿気による損傷からメモリを保護しなければならない。
【0009】
航空機のフライトレコーダの分野では、「ボイラー」を用いて、メモリを熱による損傷から保護することが知られている。本明細書中、「ボイラー」という用語を、保護対象のデバイス(例えば、ソリッドステートメモリデバイス)から熱質量を隔離するために用いることが可能な、複数の(2つ以上の)区画分けされた収納構造として定義する。
【0010】
1998年5月12日に出願された、「Flight Crash Survivable Storage Unit With Boiler For Flight Recorder Memory」というタイトルの米国特許第5,750,925号(原譲受人:Local Fairchild,Corp.)に、このような「ボイラー」についての記載がある。本明細書中、同特許の内容全体を参考のため援用する。より詳細には、この’925特許では、摂氏1100度(およそ華氏2000度)の温度に耐えるように設計されたユニットについての記載がある。本明細書中、この温度を、比較的短期間における「高温」環境として定義する。
【0011】
’925特許に記載されたこのユニットは、熱に弱いコンポーネント(例えば、ソリッドステートメモリ)を高温環境(例えば、航空機の火災が生じることの多い環境)において保護する用途に適している。しかし、航海における衝突の後に熱に弱いコンポーネントを残存させるという点に密接に関係する問題は、航空機事故の後のそれとは全く異なり、また、Purdomらによってもあるいはあらゆる公知の航海記録装置によっても対策は講じられていない。
【0012】
詳細には、航海記録装置は、「低温」での火災(すなわち、比較的長時間(例えば、10時間)にわたって260℃で燃える(またはくすぶる)火災。これを本明細書における低温火災の定義とする)において残存しなければならない。このような要求は、1100℃の環境に1時間にわたって耐える能力を要求している航空機レコーダ業界の高温残存性に関する仕様とは、反対である。
【0013】
低温火災は、従来技術の保護ユニット(例えば、上記にて援用した’925特許に記載の保護ユニット)の場合は問題とはならなかった。なぜならば、これらのユニットでは、「TSOP」(肉薄小型外形パッケージ)メモリコンポーネントを用いて、そこからリードを伸ばしていたからである。その結果、基板が低温火災において残存できなかった(あるいは残存しなかった)した場合にも、メモリは必ず残存し、「再作動」(すなわち、別の基板上に容易に配置して、読み出すこと)が可能であった。
【0014】
本願(航海記録装置に関する出願)では、基板レベルでの低温火災残存性が非常に重要となる。なぜならば、この点は、メモリコンポーネント用の「BGA」(ボールグリッドアレイ)パッケージを用いる際に所望される点であるからである。これらの小型のパッケージはより高密度でのパッケージングが可能であり、「不動産」の利用が少ないなどの特徴があるが、接続がデバイスの下で行なわれるという制約(すなわち、(TSOPからはリードは伸びているのに対し)BGAパッケージの周辺部からはリードが伸びていない点)が難点となっている。これにより、低温火災後に基板を再作動させることが困難または不可能になっている。それでも、このBGA設計は、別の場合においては上記のような理由(および下記に述べるような理由)のために所望されている。
【0015】
さらには、例えば、BGAはTSOPよりも接続部分の間隔が大きいため、BGAパッケージングが望ましい。この点により、BGAの方が半田ブリッジを回避するのが容易となるため、BGAユニットの信頼性が増す。信頼性が高いことに加えて、BGAメモリを用いたユニットは、作製が容易である。
【0016】
そのため、BGAからのリード伸長ができない点と、低温火災時に基板が破壊された場合にメモリ格納ユニットの再作動が困難(あるいは不可能)である点とを以ってしても、BGAメモリを(航海でのコンテキストにおいて)提供し、保護すること(すなわち、(比較的長時間にわたる低温火災において基板レベルで残存することが可能な)ボイラーによって保護されたBGAソリッドステートメモリを提供すること)が望ましい。
【0017】
さらに、’925特許を基準フレームとして用いて、同特許に記載されているボイラーは、航海での用途において要求される機械的統合性を提供しない。より詳細には、航海用途の仕様において「貫入」について述べた部分は、フライトレコーダに関するそれとは異なる。なぜならば、航海事故に伴う物体のサイズは、航空機の衝突に伴う比較的軽量の物体よりもかなり大きいことが多いからである。
【0018】
そのため、貫入物(貫入する物体)はエネルギーを吸収せず、破壊される。物体(例えば、船舶のコンポーネントまたは船舶そのもの)は(航空機部品と比較して)比較的大きく、重量も重く、また、貫入物のエネルギーは直接ボイラーに向かい得るため、航海のコンテキストにおいてボイラーを用いる際の構造の問題は、フライトレコーダのコンテキストには存在しなかった新たな深刻な問題となっている。航海用途のボイラーが残存し、その保護機能を果たした場合、ボイラーに用いられる形状、構造および材料が問題となる。
【0019】
従来技術のボイラーが呈しているさらなる問題(例えば、’925特許に記載されている問題)のために、従来技術のボイラーには航海用途における適切性の点において制約がある。詳細には、このようなボイラーと関連して用いられるケーブルを出す設計は、航海用途には不適切である。なぜならば、この設計は、ボイラーそのものの構造統合性に強い影響を与えるため、航海環境用途には不適切であるからである。
【0020】
’925特許を参照すると、プレートエッジ部から矩形に切り抜かれた部分を介してケーブルをボイラーから出していることが分かる;これが、ふたの弱点となっている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、航海データ記録装置(VDR)によって取得されたデータを保護して、事故または「事件」の捜査の際にデータを使うことができる強化型の航海記録装置(HVR)を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の実施形態は、IEC61996試験仕様の要件を満足するかまたは上回る強化型航海記憶装置を提供する。
【0023】
本発明の実施形態はまた、ボイラーにおいて保護されるメモリユニットを組み込んだ強化型航海記憶装置を提供する。
【0024】
本発明の実施形態は、低温火災に比較的長時間耐えることのできるボイラーを含む強化型航海記憶装置を提供する。
【0025】
本発明の実施形態は、BGAメモリを用いた強化型航海記憶装置を提供する。
【0026】
本発明の実施形態は、ボイラーの統合性に影響が出ないように改良されたケーブル配線を備えたボイラーを含む強化型航海記憶装置を提供する。
【0027】
本発明の実施形態は、改良されたカバーを有するボイラーを含む強化型航海記憶装置を提供する。
【0028】
本発明の実施形態は、ボイラーによって保護されるスタック型メモリを含む強化型航海記憶装置を提供する。
【0029】
本発明を実現する強化型航海記憶装置(HVR)は、2つの分離可能なサブアセンブリを含む。第1のサブアセンブリは、船舶に直接取り付けられ、かつ、電力接続およびデータ接続用の防水ケーブルを挿入できるように設計された、取付けベースサブアセンブリである。第2のサブアセンブリは、素早い取外しが可能なクランプによって取付けベースに取り付けられた取外し可能な強化型メモリサブアセンブリである。
【0030】
上記強化型メモリサブアセンブリは、外部に取り付けられる水中位置ビーコンのためのブラケットを有する。上記水中位置ビーコンは、(スプレー、雨またはホースによる放水が原因となって発生する不注意による活性化を回避するための)デュアル活性化湿気センサを備える。上記HVRは好適には、白色の反射ラベルの付いた視認性の高いオレンジ色の蛍光色で塗装される。上記反射ラベルは、以下のような必要なテキストを含む:これは、航海データ記憶装置です。開けないでください。(開けた場合)当局に通報が行きます。
【0031】
上記取付けベースサブアセンブリは、本願と同時出願された米国特許出願により詳細に開示されているような、上記強化型メモリサブアセンブリ中のメモリに対するデータ受信およびデータ書込みを行うための電子回路を含む。
【0032】
上記取外し可能な強化型メモリサブアセンブリは好適には、1.5ギガバイトのスタック状に構成されたBGAソリッドステートメモリを含む。上記BGAソリッドステートメモリは、ボイラーにおいて保護される。この好適な上記によれば、上記強化型メモリサブアセンブリは、実質的に円筒状のステンレススチール「ベル」を含む。上記ベルは、上記ボイラーを受け入れる円筒状のウェルを規定する実質的な絶縁層を含む。
【0033】
本発明を実現するボイラーは、二又分岐型の円筒状部材を含む。上記二又分岐型の円筒状部材の一方の部分は、相変化材料またはヒートシンクとして機能する「熱質量」を含むように適合された熱膨張型キャビティである。上記二又分岐型の円筒状部材のもう一方の部分は、スタック型メモリ用の格納区画を規定する。
【0034】
一実施形態において、リボンケーブルが、上記スタック中の最終メモリ基板から伸びて、ステンレススチールカバーのエッジ部から間隔を空けて配置された円形の開口部を通過する。上記ボイラーは、上記ベル中の絶縁部によって規定される上記円筒状のウェルに配置される。上記リボンケーブル上には、上記リボンケーブルを保護するためのシリコンゴムパッドが配置され、上記円筒状のウェル中には、円筒状の絶縁体が充填される。ステンレススチールカバーは、絶縁部および上記ボイラーを上記ベル中に保持するために用いられ、2つのスナップリングによって上記ベルにロックされる。
【0035】
本発明の強化型航海記録装置は、航海船舶上において用いられる取外し可能なメモリモジュールを含む強化型航海記録装置であって、該取外し可能なメモリモジュールは、(a)ソリッドステートメモリを収容する内部キャビティを含む外側ハウジングと、(b)該外側ハウジング用のカバーと、(c)該内部キャビティの内部に配置される熱絶縁体であって、該熱絶縁体は、第2の内部キャビティの少なくとも一部分を規定し、該ソリッドステートメモリは、該第2の内部キャビティ内に配置される、熱絶縁体とを備え、これにより上記目的が達成される。
【0036】
前記第2の内部キャビティ内に配置されたボイラーをさらに備え、該ボイラーは、熱質量を収容するための収納区画と、内部に前記ソリッドステートメモリが配置される保護区画と、該収納区画と該保護区画を相互接続するための手段とを含み、該相互接続手段は、開くと、該収納区画と該保護区画との間に通路を提供し得る。
【0037】
前記ソリッドステートメモリは、およそ10時間にわたる260°Cのオーダーの温度から保護され得る。
【0038】
前記ソリッドステートメモリは少なくとも1つのBGAチップを含み得る。
【0039】
前記外側ハウジングは、航海用途に適した衝撃統合性を有し得る。
【0040】
前記ボイラーは、前記保護区画を被覆するカバープレートを含み、該カバープレートは、該カバープレートのエッジ部から間隔を空けて配置された貫通穴を規定し、前記ソリッドステートメモリは、該貫通穴を通じて伸びるケーブルに結合され得る。
【0041】
前記ソリッドステートメモリはBGAメモリを含み得る。
【0042】
前記ソリッドステートメモリはスタック型メモリであり得る。
【0043】
前記ボイラーは、前記保護区画を被覆するカバープレートを含み、該カバープレートは、該カバープレートのエッジ部から間隔を空けて配置された貫通穴を規定し、前記ソリッドステートメモリは、該貫通穴を通じて伸びるケーブルに結合され得る。
【0044】
前記貫通穴は実質的に円形であり得る。
【0045】
前記カバープレートは前記ボイラーにプレスばめされ得る。
【0046】
前記熱質量は相変化材料(PCM)を含み得る。
【0047】
前記PCMは、熱を吸収する気化作用によるエネルギー吸収を用い得る。
【0048】
前記PCMは水であり得る。
【0049】
前記水は、該水が凍結または膨張するのを抑止する乾燥材料中に含まれ得る。
【0050】
前記乾燥材料は、スポンジ、シリカ、ポリアクリルアミド、ケイ酸カルシウムまたは陶磁器用土を含み得る。
【0051】
前記熱質量は、水およびシリカを組み合わせることにより形成される乾燥粉体であり得る。
【0052】
前記熱質量は、衝撃を吸収し得る。
【0053】
前記熱質量は、水とポリアクリルアミドとを組み合わせることにより形成されるゲルであり得る。
【0054】
所定の温度において開くことにより、前記熱質量を前記通路に流すことを可能にする安全バルブをさらに備え得る。
【0055】
前記安全バルブは、所定の温度において解放される少なくとも1つの熱ベントプラグを備え得る。
【0056】
前記熱ベントプラグは、蝋、パラフィン、ビスマス合金または電気半田を含み得る。
【0057】
前記外側ハウジング用の前記カバーは、スナップリングによって該外側ハウジングに結合され得る。
【0058】
前記外側ハウジング用の前記カバーは、2つのスナップリングによって該外側ハウジングに結合され得る。
【0059】
前記外側ハウジングは、3メートルの距離から発射された100mm、250kgの貫入物に耐え得る。
【0060】
【発明の実施の形態】
ここで図1〜3を参照して、本発明による強化形航海記憶装置(HVR)10は、2つの分離可能なサブアセンブリを含む。第1のサブアセンブリ12は、船舶に直接取り付けられ、かつ、電力接続部およびデータ接続部用の防水ケーブルを挿入できるように設計された、取付けベースサブアセンブリである。第2のサブアセンブリ14は、素早い取外しが可能なクランプによって取付けベースに取り付けられた、取外し可能な強化型メモリサブアセンブリである。
【0061】
ここで、図1および2に示すようなサブアセンブリ12の機械的特徴を参照して、取付けベースサブアセンブリ12は、3つの取付け穴18、20、22を規定する下部フランジ16を有する。電力ケーブルとデータケーブルと(図示せず)の防水接続を提供するために、2つのケーブルグランドコネクタ24、26が提供される。図2において最良に分かるように、サブアセンブリ12には、上部フランジ28も設けられる。上部フランジ28は、取外し可能な強化型メモリサブアセンブリ14とのシーリング係合を提供するために用いられる
強化型メモリサブアセンブリ14の機械的特徴としては、水中位置ビーコン40外部から取り付けられる用のブラケット38がある。このビーコンは好適には、スプレー、雨またはホースによる放水が原因となって発生する不注意による活性化を回避するためのデュアル活性化湿気センサを備える。サブアセンブリ14はまた、2つのリフトハンドル42、44と下部フランジ46とを有する。下部フランジ46は、サブアセンブリとのシーリング係合を提供するために用いられる。
【0062】
HVRはまた、2つの素早い取外しが可能なクランプ50、52を有するV字バンド48も有する。上述したように、HVRは好適には、白色の反射ラベル(例えば、図1および図2に図示のラベル54)を備えた、視認性の高いオレンジ色の蛍光色で塗装される。この反射ラベルは、以下のような(IEC61996によって)必要とされているテキストを含む:これは、航海データ記憶装置です。開けないでください。(開けた場合)当局に通報が行きます。反射テープのストリップ19が図1に図示されており、これは、IEC61996の要件をさらに満足させるものである。
【0063】
HVR10のこの好適な実施形態は、高さがおよそ13インチで、直径はおよそ8インチである。サブアセンブリ12の下部フランジ16は実質的に三角形であり、側部はおよそ10インチである。HVRの総重量はおよそ41ポンドであり、その中には、ベース12の重量であるおよそ13ポンドと、メモリサブアセンブリ14の重量であるおよそ28ポンドとが含まれる。
【0064】
図4に示すように、サブアセンブリ14は概して、ボイラー58において保護されるメモリ56を含む。
【0065】
より詳細には、サブアセンブリ14は、ステンレススチールベル60を含む。ステンレススチールベル60は好適には円筒状の形状であり、第1の内部円筒状空間62を規定する。この円筒状空間62中には、第2の内部円筒状空間66を規定する第1の絶縁部材64が配置される。
【0066】
図4から分かるように、円筒状空間66は、段差形状を有する。円筒状空間66中には、メモリ56を含むボイラー58が配置される。円筒状空間66中に第2の絶縁部材68が配置され、ボイラー58と空間66の段差部分とを被覆する。ベル60は、ステンレススチールディスク70でシーリングされる。このステンレススチールディスク70は、内側スナップリングおよび外側スナップリング(図示せず)によって所定位置に保持される。
【0067】
ここで図5〜図8を参照して、本発明によるボイラー58は、二又分岐型の円筒状部材80を含む。この二又分岐型の円筒状部材80の一方の部分は、相変化材料すなわちヒートシンクとして機能する「熱質量」(図示せず)を含むように適合された、熱膨張型キャビティ82(これを、図7において最良に図示する)である。二又分岐型の円筒状部材80のもう一方の部分84は、スタック型メモリ56用の格納区画を規定する。これらの2つの部分82および84は、デミスター壁83によって分断される。デミスター壁83は、安全バルブ85を含む。この安全バルブ85は、所定の温度で開くことにより、熱質量を区画84中に入らせて、メモリを火災から保護する。
【0068】
熱質量としての用途に適した適切な化合物を挙げると、水および蝋があり、これらはどちらとも相変化材料である。しかし、熱質量は相変化材料でなくてもよい。熱質量に要求されるのは、ヒートシンクとしての機能だけである。本発明の一実施形態によれば、水の凍結または膨張を阻止する乾燥材料中に水を含ませる。このような材料としては、(例えば)スポンジ、シリカ、ポリアクリルアミド、ケイ酸カルシウムまたは陶磁器用土がある。熱質量を収容する収納区画82は、熱質量の膨張を収容するための熱膨張型キャビティを含むことができる点に留意されたい。
【0069】
別の受容可能な熱質量としては、水およびシリカの組み合わせによって形成される乾燥粉体熱質量か、または、水およびポリアクリルアミドの組み合わせによって形成されるゲルがある。このような組成物から生成された熱質量は、本質的に衝撃を吸収し、これにより、ボイラー80中に含まれるメモリ56をさらに保護することが可能となる。
【0070】
この好適な実施形態によれば、メモリ56は、3つの回路基板86、88、90を含む。これらの3つの回路基板86、88、90はそれぞれ、電気結合部87、89、91を有する。各回路基板は好適には、4個の128メガバイトのBGAメモリチップまたは16個の32メガバイトのBGAメモリチップ(図示せず)から組み立てられた、512メガバイトのメモリを提供する。従って、メモリ56の総容量は好適には1.5ギガバイトである。上記にて援用した関連出願に記載されているように、メモリ基板に有利にMICチップを設けて、メモリをアドレシングしてもよい。
【0071】
各メモリ基板には、4つの周辺取付け穴92、94、96、98;100、102、104、106;および108、110、112、114が設けられる。3つのメモリ基板86、88、90は、4つのねじ116、118、120、122と、4つのナイロン製ナット(そのうち3つのみを図5中に示す)124、126、128と、8個のスペーサ(そのうち6つのみを図5中に示す)130、132、134、136、138、140と組み立てられる。
【0072】
これらの4つのねじ116、118、120、120はそれぞれ、図8中のねじ122を参照すると最良に図示してあるねじ切り(threaded)ヘッドを有する。4つの短尺短尺ねじ152、154、156、158によって、4つの周辺取付け穴144、146、148、150を有するカバープレート142を、ねじ116、118、120、120のねじ切りヘッドに締め付ける。図8に示すように、基板間コネクタは、基板の一方の側に雌部を有し、基板のもう一方の側に雄部を有し、これにより、任意の数のスタッキングを可能にする。従って、カバープレート142に直接隣接するコネクタ91が、テープ160の一部によってカバープレートから絶縁される。本発明の好適な実施形態によれば、図8に最良に示すように、カバープレート142は、ボイラー80中にプレスばめされる。
【0073】
本発明のこの好適な実施形態によれば、図8に最良に示すように、リボンケーブル162は、最終メモリ基板90にハードワイヤードされる。上記にて援用した本願と同時出願された関連出願により詳細に記載があるように、リボンケーブル162には好適にはJlOコネクタ164が設けられ、これにより、ベースアセンブリ中の電子回路に結合される。
【0074】
本発明の好適な実施形態によれば、カバープレート142には、プレートのエッジ部から間隔を空けて配置された円形の開口部166が提供される。リボンケーブル162は、この開口部166を通過する。
【0075】
これらの図(特に図4)に示すように、ケーブル162は、6つの湾曲部を通る経路をたどる。これらの湾曲部により、ケーブルがボイラーから出て行き、2つの絶縁体64、68(図4)の間を通って、ステンレススチールディスク70中の開口部71を介してベル60から出て行き、ベルの底部上を移動して、図2中の電子回路サブアセンブリ12に向かうことを可能にする。開口部71から出ていくときのストレスを軽減するため、開口部71にケーブルガイド73が隣接して配置される。
【0076】
図4中に最良に示すように、リボンケーブルの構成は、リボンケーブルが、従来技術のボイラー(例えば、上述したような925特許のボイラー)の場合におけるケーブルのように絶縁部を横断しなくてもよいような構成にされる。本発明によれば、このケーブルは、ケーブルと絶縁部との間に配置されたシリコンゴムパッドによってさらに保護される。
【0077】
本発明による取外し可能なメモリサブアセンブリは、3メートルの距離から発射された100mmで250kgの貫入物に耐える。この取外し可能なメモリサブアセンブリは、は、11msの正弦半周期の50gの衝撃と6,000メートルの深さの浸没とに耐える。このメモリは、260℃の火災に10時間耐える。
【0078】
本明細書において、強化型航海データ記録装置と、取外し可能なメモリモジュールアセンブリと、内部のメモリを保護するためのボイラーとについて説明および図示してきた。本発明の特定の実施形態について説明してきたが、本発明をこれらの実施形態に限定することは意図していない。なぜならば、本発明は、当該分野が許す限りの範囲において広範であり、本明細書もそのように読まれることを意図しているからである。従って、当業者であれば、本明細書中の特許請求の範囲に記載されている意図および範囲から逸脱することなく、記載の発明に特定の改変を為すことが可能であることが、理解される。
【0079】
強化型航海データ記録装置は、2つのサブシステム(すなわち、取外し可能な不揮発性メモリモジュールと、データ感知システムへの通信および上記メモリへのアクセスを行うための電子回路ならびにファームウェアを含むベース)を有する。本発明によれば、上記メモリは、「ボイラー」において保護されたスタック型BGAメモリである。上記「ボイラー」は、比較的長時間の低温火災環境に耐えるように設計される。上記ボイラーおよび上記メモリモジュールサブシステムは、海難事故に関連する貫入力に耐えるように設計される。上記メモリのケーブル配線は、上記ボイラーの統合性に悪影響が出ないように構成される。
【0080】
【発明の効果】
本発明により、航海データ記録装置(VDR)によって取得されたデータを保護して、事故または「事件」の捜査の際にデータを使うことができる強化型の航海記録装置(HVR)を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明によるHVRの斜視図である。
【図2】図2は、本発明によるHVRの側面図である。
【図3】図3は、ビーコンブラケットを取り外した状態の強化型メモリサブアセンブリ側部の立面図である。
【図4】図4は、図3中の線A〜Aに沿った断面図である。
【図5】図5は、本発明によるボイラーの分解斜視図である。
【図6】図6は、ボイラーを組み立てた状態の平面図であり、リボンケーブルを示す。
【図7】図7は、ボイラーを組み立てた状態の部分的断面側部の立面図である。
【図8】図8は、図7において丸で印を付けた部分を拡大した詳細図である。
【符号の説明】
12 サブアセンブリ
14 強化型メモリサブアセンブリ
16 下部フランジ
28 上部フランジ
38 ブラケット
40 水中位置ビーコン
Claims (27)
- 航海船舶において用いられる取外し可能なメモリモジュールを含む強化型航海記録装置であって、
該取外し可能なメモリモジュールは、
(a)ソリッドステートメモリを収容する内部キャビティを含む外側ハウジングと、
(b)該外側ハウジング用のカバーと、
(c)該内部キャビティの内部に配置された熱絶縁体であって、該熱絶縁体は、第2の内部キャビティの少なくとも一部分を規定し、該ソリッドステートメモリは、該第2の内部キャビティ内に配置されている、熱絶縁体と、
(d)該第2の内部キャビティ内に配置されたボイラーと
を備え、
該ボイラーは、熱質量を収容する収納区画と、該ソリッドステートメモリが内部に配置された保護区画と、該収納区画と該保護区画とを相互接続する手段とを含み、
該相互接続する手段は、開くと、該熱質量が該保護区画に入ることにより該ソリッドステートメモリを保護することを可能にするように該収納区画と該保護区画との間に通路を提供する、強化型航海記録装置。 - 前記ソリッドステートメモリは、およそ10時間にわたり260°Cのオーダーの温度から保護される、請求項1に記載の強化型航海記録装置。
- 前記ソリッドステートメモリは少なくとも1つのBGAチップを含む、請求項1に記載の強化型航海記録装置。
- 前記外側ハウジングは、航海用途に用いられるのに適した衝撃強さを有する、請求項1に記載の強化型航海記録装置。
- 前記ボイラーは、前記保護区画を被覆するカバープレートを含み、該カバープレートは、該カバープレートのエッジ部から間隔を空けて配置された貫通穴を規定し、前記ソリッドステートメモリは、該貫通穴を通じて伸びるケーブルに結合される、請求項1に記載の強化型航海記録装置。
- 前記ソリッドステートメモリはBGAメモリを含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記ソリッドステートメモリはスタック型メモリである、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記ボイラーは、前記保護区画を被覆するカバープレートを含み、該カバープレートは、該カバープレートのエッジ部から間隔を空けて配置された貫通穴を規定し、前記ソリッドステートメモリは、該貫通穴を通じて伸びるケーブルに結合される、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記貫通穴は実質的に円形である、請求項8に記載の強化型航海記録装置。
- 前記カバープレートは前記ボイラーにプレスばめされる、請求項8に記載の強化型航海記録装置。
- 前記熱質量は相変化材料(PCM)を含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記PCMは、熱を吸収する気化作用によるエネルギー吸収を用いる、請求項11に記載の強化型航海記録装置。
- 前記PCMは水である、請求項11に記載の強化型航海記録装置。
- 前記水は、該水が凍結または膨張するのを抑止する乾燥材料中に含まれる、請求項13に記載の強化型航海記録装置。
- 前記乾燥材料は、スポンジ、シリカ、ポリアクリルアミド、ケイ酸カルシウムまたは陶磁器用土を含む、請求項14に記載の強化型航海記録装置。
- 前記熱質量は、水およびシリカを組み合わせることにより形成される乾燥粉体である、請求項11に記載の強化型航海記録装置。
- 前記熱質量は、衝撃を吸収する、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記熱質量は、水とポリアクリルアミドとを組み合わせることにより形成されるゲルである、請求項17に記載の強化型航海記録装置。
- 前記熱質量が前記通路を流れることを可能にするように、所定の温度において開く可溶性バルブをさらに備える、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記可溶性バルブは、所定の温度において解放される少なくとも1つの熱ベントプラグを備える、請求項19に記載の強化型航海記録装置。
- 前記熱ベントプラグは、蝋、パラフィン、ビスマス合金または電気半田を含む、請求項20に記載の強化型航海記録装置。
- 前記外側ハウジング用の前記カバーは、スナップリングによって該外側ハウジングに結合される、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記外側ハウジング用の前記カバーは、2つのスナップリングによって該外側ハウジングに結合される、請求項22に記載の強化型航海記録装置。
- 前記外側ハウジングは、3メートルの距離から発射された100mm、250kgの貫入物に耐える、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記外側ハウジングは、11msの正弦半周期の50gの衝撃に耐える、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記外側ハウジングは、6,000メートルの深さの浸没に耐える、請求項2から5のいずれか一項に記載の強化型航海記録装置。
- 前記航海船舶に配置されたデータセンサからのデータを受信する電子回路と、前記メモリモジュールへのデータ書込みを行う電子回路と、前記強化型航海記録装置を前記航海船舶に取り付けるための取付け可能ベースとをさらに備える、請求項1に記載の強化型航海記録装置。
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