JP3875807B2 - 成形品の成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶プロジェクションテレビ、投影機等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシートまたはレンチキュラーレンズシート、集光用のフレネルレンズシートなどのレンズシート、その他の大型の成形品を製造するために利用することが有効な成形品の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシートなどのレンズシートを製造する場合にそのサイズが大きいときは、樹脂板に加熱された平板状のレンズ型を当接して加圧することによって、レンズ型表面の凹凸レンズ面を樹脂板に転写することが一般的である。しかし、この方法には、成形のサイクルが長く、生産性が高くないという課題が存在する。そこで、最近では、レンズ型に紫外線硬化樹脂を塗布し、この上に樹脂板を載置した状態で紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させることによってレンズを形成する技術が開発されているが、この技術によっても生産性の向上は十分に図れない。
【0003】
一方、比較的小型のフレネルレンズシートまたはレンチキュラーレンズシートを、所望のレンズ面の凹凸パターンとは逆の凹凸パターンが形成された金型を用いた射出成形法によって成形することも行われている。射出成形法においては、金型のキャビティ内に溶融樹脂が射出充填され、ゲート部が冷却固化するまでスプルまたはランナの溶融樹脂を介してキャビティ内に圧力が付加される(保圧工程)ことによって金型の形状が転写される。ゲートが固化した後は金型内の樹脂が冷却固化されて成形品(レンズシート)が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
射出成形法によりキャビティ内に射出充填された溶融樹脂はキャビティ面と接すると急激に冷却され、冷却固化層が形成されながらキャビティ内に溶融樹脂が充填される。このようにして形成された冷却固化層は、転写性の低下、充填された溶融樹脂の会合部で発生して異常発光を引き起こすウェルドマーク、フローマークおよびコールドマークの発生、ウェルドマーク、フローマークおよびコールドマークの部分での強度低下、残留応力による変形等による品質低下、変形等による外観不良の原因となる。さらに、冷却固化層が発生すると溶融樹脂の流動性が低下し、このために射出成形法によって大きな面積のレンズシートを成形することが困難になる。
【0005】
冷却固化層による溶融樹脂の流動性の低下を解消する手段として、溶融樹脂の温度を高くする、金型温度を高くする、充填速度を高くする等の成形条件を変更するという対応、冷熱サイクル温度調節器を用いて金型温度を制御するという対応などが挙げられるが、これらの方法では、成形サイクルが延長されることによる樹脂の熱劣化、黄変による光線透過率の低下、生産性の低下を来し、対応としては充分ではない。また、所望のレンズ面の凹凸パターンとは逆の凹凸パターンが形成された金型を用いて、予めキャビティ容積を大きくしておくことによって溶融樹脂の流路を確保しておき、充填完了後にキャビティ容積を所定の容積とすることにより、溶融樹脂の流動層の流路を確保する技術がある。しかし、この方法で大きな面積を有するレンズシートを製造しようとすると、内圧が低く、転写性が低下するという別の課題が生じる。以上、レンズシートの成形を中心に説明したが、導光体などの微細な凹凸パターンを持つ大面積の成形品の射出成形においては同様の問題が生じていた。
【0006】
本発明の成形品の成形方法は上記の課題を解決すべくなされたものであり、低い内圧でも高い転写性を実現し、大きい面積を有するレンズシート等の成形に適用することが有効な成形方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する本発明の成形品の成形方法は、熱伝導率が30〜100kcal/m・hr・℃の範囲であり、厚さが0.03〜0.6mmの範囲であって、第1の面がキャビティ部を構成する薄板本体がキャビティ部側に装着されており、該第1の面に対向する面である第2の面に、熱伝導率が0.2〜0.5kcal/m・hr・℃の範囲であり、厚さが0.05〜0.3mmの範囲である低熱伝導率部材が設けられている薄板部材が装着された金型を使用し、(1)射出充填中あるいは射出充填完了後に金型のキャビティ容積を増加させ、または(2)射出充填中あるいは射出充填完了後に金型のキャビティ容積を増加させ、その後減少させることを特徴とする。金型のキャビティ容積を増加させる割合としては、所望の製品板厚の20%から所望の製品板厚まで、金型のキャビティ容積を減少させる割合としては、所望の製品板厚の200%から所望の製品板厚までが好ましい。薄板本体の厚さとしては、0.1〜0.6mmの範囲であることが好ましく、低熱伝導率部材の厚さとしては、0.1〜0.3mmの範囲であることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記本発明による成形品の成形方法で用いられる金型の断面構造の一例を図1に示す。この金型は射出成形機に取り付けられてレンズシート、導光板などの樹脂成形品の射出成形に利用される。本発明における金型は可動側金型1と固定側金型2とからなり、固定側金型2に1つの主面がキャビティの一部を構成する薄板部材(以下、「キャビティ側部材」という。)4と、キャビティを構成する上記主面とは異なる他の1つの主面に設けられている低熱伝導率部材(以下、「金型本体側部材」という。)3とが装着されている。ここで、「主面」とは、薄板部材を構成する6つの面のうち、大きな面積を有する2つの対向する面のことである。
【0009】
本発明の成形品の成形方法において、熱伝導率が30〜100kcal/m・hr・℃の範囲であり、厚さが0.03〜0.6mmの範囲であって、第1の面がキャビティ部を構成する薄板本体がキャビティ部側に装着されており、該第1の面に対向する面である第2の面に、熱伝導率が0.2〜0.5kcal/m・hr・℃の範囲であり、厚さが0.05〜0.3mmの範囲である低熱伝導率部材が設けられている薄板部材が装着された金型を使用することにより、転写開始温度以上の温度を有する熱可塑性樹脂を、転写開始温度以下の温度に保持された金型で構成されたキャビティ部に射出充填し、該金型で冷却されて転写開始温度以下の温度に下がった金型の表面近傍の熱可塑性樹脂がキャビティ部に熱可塑性樹脂が充填された後に、再度、転写開始温度を超える温度に上昇させる。これによって冷却固化層の発生が抑えられる理由は、本発明者らによる特願平10−83432号明細書において説明するところと同じであり、その詳しい説明を省略する。本発明の成形品の成形方法では、(1)射出充填中あるいは射出充填完了後に金型のキャビティ容積を増加させ、または(2)射出充填中あるいは射出充填完了後に金型のキャビティ容積を増加させ、その後減少させる。これによって、キャビティ内へ射出充填された溶融樹脂の板厚方向に均一に圧力を付加することができ、大面積の金型の凹凸パターンを高い均一性で転写させることができる。また、均一な内部応力が保たれるため、反りや変形の少ない信頼性の高い成形品を得ることができる。
【0010】
本発明によりレンズシートを成形しようとする場合、上記キャビティ側部材のキャビティ部を構成する主面には、レンズシートに形成されるべきレンズの凹凸パターンとは逆の凹凸が設けられている。成形しようとするレンズシートが表裏の両面に凹凸のレンズ面を有するのであれば、図1に示す構造の薄板部材をキャビティの両面に設ければ良い。凹凸のレンズ面がレンズシートの片面のみであれば、図1に示す構造の薄板部材をキャビティの片面のみに設ければ良く、他の面は鏡面のままでも良い。金型に薄板部材を装着する方法としては、真空吸着する方法、接着剤によって接着する方法、磁石を用いて固定する方法などが挙げられる。
【0011】
なお、本発明の方法で用いられる熱可塑性樹脂は特に制限がなく、例えばポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマー、非晶性ポリオレフィン(例えば、商品名ゼオネックス(日本ゼオン株式会社製)、商品名アートン(ジェイエスアール株式会社製))、またはこれらの共重合体等や、ポリアミドまたはポリアミドアロイなどの結晶性樹脂が挙げられる。
【0012】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。ここでは本発明によりレンズシートを成形する場合について説明する。
参考例1〜3、および実施例1
キャビティ側部材として、熱伝導率が50kcal/m・hr・℃であり、厚さが0.3mmであり、大きさが800mm×400mmのニッケル製の薄板を使用した。キャビティ側部材のパーティング面側にはピッチが100μmであり、中心部分から外側にかけて20〜80μmと高さが徐々に高くなるフレネルレンズが配置されている。金型本体側部材として、熱伝導率が0.3kcal/m・hr・℃であり、厚さが0.1mmであり、大きさが800mm×400mmであるポリイミドフィルムを使用した。このポリイミドフィルムは上記ニッケル製薄板に装着される。また、上記キャビティ側部材および金型本体側部材が装着される金型は金型のパーティング面より、まず、キャビティ側部材であるニッケル製の薄板に相当するように深さが0.3mm、金型本体側部材であるポリイミドフィルムに相当するように深さが0.1mm(全体で0.4mm)で、大きさが800mm×400mmになるように彫り込まれている。上記両部材を装着した金型を使用してポリメチルメタクリレート樹脂を使用して表1に示す条件によりレンズシートを成形することができた。キャビティの厚さの変更(充填前のキャビティ厚さ→取出し前のキャビティ厚さ)は、位置センサーで初期位置を制御しながら型締力を制御することにより行った。なお、上記の金型を使用し、シリンダ温度270℃の条件で、フレネルレンズの形状が正確に転写される内圧を測定すると、27MPaであった。
【0013】
(比較例1)
実施例1と同じポリメチルメタクリレート樹脂を使用し、実施例1で使用したものと同じ金型についてキャビティの厚さを変更しないで表1に示す条件によりレンズシートを成形した。なお、キャビティの厚さを変更しない比較例1の条件では、シリンダ温度270℃の条件で、フレネルレンズの形状が正確に転写される内圧を測定すると70MPaであった。
【0014】
(比較例2〜3)
キャビティ側部材として、熱伝導率が50kcal/m・hr・℃であり、厚さが0.3mmであり、大きさが800mm×400mmのニッケル製の薄板を使用した。キャビティ側部材のパーティング面側には、ピッチが100μmであり、中心部分から外側にかけて20〜80μmと高さが徐々に高くなるフレネルレンズが配置されている。上記のキャビティ側部材が装着される金型は、金型のパーティング面からキャビティ側部材であるニッケル製の薄板に相当するように深さが0.3mm、大きさが800mm×400mmになるように彫り込まれている。実施例1で用いたメチルメタクリレート樹脂を使用し、比較例1と同様の金型を使用して、表1に示す条件でレンズシートを成形した。キャビティの厚さの変更(充填前のキャビティ厚さ→取出し前のキャビティ厚さ)は参考例1〜3と同様に行った。
【0015】
(比較例4)
キャビティ側部材として、熱伝導率が50kcal/m・hr・℃であり、厚さが0.3mmであり、大きさが800mm×400mmのニッケル製の薄板を使用した。キャビティ側部材のパーティング面側には、ピッチが100μmであり、中心部分から外側にかけて20〜80μmと高さが徐々に高くなるフレネルレンズが配置されている。上記のキャビティ側部材が装着される金型は、金型のパーティング面からキャビティ側部材であるニッケル製の薄板に相当するように深さが0.3mm、大きさが800mm×400mmになるように彫り込まれている。実施例1で用いたメチルメタクリレート樹脂を使用し、比較例1と同様の金型を使用して、表1に示すように実施例1よりも高シリンダ温度、高金型温度でレンズシートを成形した。
【0016】
(比較例5)
比較例2と同様の金型を使用して、金型温度調節器の媒体を保圧までは100℃、冷却中に85℃として、同じメチルメタクリレート樹脂を使用して、表1に示す条件の射出プレス成形法によってレンズシートを成形した。
【0017】
【表1】
Figure 0003875807
【0018】
上記の各比較例のうち、比較例1〜3では、フレネルレンズの高さが低く転写性が低かった。比較例4および5のようにすると、転写性は向上するが成形サイクルが長くなった。
【0019】
参考例4〜10
キャビティを構成する部材として熱伝導率が50kcal/m・hr・℃であり、大きさが800mm×400mmであって、表2に示すように厚さが異なるニッケル製の薄板を使用した。キャビティ側部材のパーティング面側にはピッチが100μmであり、中心部分がら外側にかけて高さが20〜80μmと徐々に高くなるフレネルレンズが配置されている。金型本体側部材として、熱伝導率が0.3kcal/m・hr・℃であり、大きさが800mm×400mmであって、表2に示すように厚さが異なるポリイミドフィルムを使用した。このポリイミドフィルムは上記ニッケル製薄板に装着される。上記の金型を使用して実施例1と同じポリメチルメタクリレート樹脂を使用し、表2に示す条件の射出プレス成形法によってレンズシートを成形した。キャビティの厚さの変更(充填前のキャビティ厚さ→取出し前のキャビティ厚さ)は参考例1〜3と同様に行った。得られたレンズシートのフレネルレンズの高さの測定、外観観察、環境試験による反り測定をそれぞれ行った。環境試験はレンズシートを60℃×90%RHの環境で300時間放置して行い、300時間後のレンズシートの反りをチクネスゲージにより測定することにより行った。
【0020】
【表2】
Figure 0003875807
【0021】
参考例4〜10のようにキャビティ側部材の厚さが0.1〜0.6mmであり、金型本体側部材の厚さが0.1〜0.3mmである範囲において、フレネルレンズの形状の転写性が特に高く、信頼性の高い成形品が得られた。また、高温度高湿度環境下でも反りがほとんど発生しなかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、大きい面積のレンズシート等の成形品を高い転写性で成形することができる。したがって、従来の射出成形法では転写が不十分で設計通りの性能の成形品が得られなかった場合でも、所望の性能のものを成形することができる。また、低い内圧でも高い転写性が得られるため、従来よりも大面積の成形品を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における金型の概略構成図である。
【符号の説明】
1…可動側金型
2…固定側金型
3…金型本体側部材
4…キャビティ側部材

Claims (2)

  1. 熱伝導率が30〜100kcal/m・hr・℃の範囲であり、厚さが0.03〜0.6mmの範囲であって、第1の面がキャビティ部を構成する薄板本体がキャビティ部側に装着されており、該第1の面に対向する面である第2の面に、熱伝導率が0.2〜0.5kcal/m・hr・℃の範囲であり、厚さが0.05〜0.3mmの範囲である低熱伝導率部材が設けられている薄板部材が装着された金型を使用し、射出充填中あるいは射出充填完了後に金型のキャビティ容積を増加させることを特徴とする成形品の成形方法。
  2. 熱伝導率が30〜100kcal/m・hr・℃の範囲であり、厚さが0.03〜0.6mmの範囲であって、第1の面がキャビティ部を構成する薄板本体がキャビティ部側に装着されており、該第1の面に対向する面である第2の面に、熱伝導率が0.2〜0.5kcal/m・hr・℃の範囲であり、厚さが0.05〜0.3mmの範囲である低熱伝導率部材が設けられている薄板部材が装着された金型を使用し、射出充填中あるいは射出充填完了後に金型のキャビティ容積を増加させ、その後減少させることを特徴とする成形品の成形方法。
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