JP3874901B2 - 人工芝生 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパイル間に充填材層を有する人工芝生に関し、さらに詳しく言えば、良好な接地感を長期間維持できるとともに、充填材層の修復やリサイクルを行なうことができる人工芝生に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
テニスコートなどの各種運動競技場には、施工性およびメンテナンスなどの面から人工芝生が広く普及されている。人工芝生は、面状の基布に合成樹脂製のパイルを多数植設したものからなるが、天然芝生に近い感触を得るため、近年においては、そのパイル間に例えば廃タイヤを粉砕したゴムチップなどの弾性充填材を充填した充填材入り人工芝生が主流となっている。
この充填材入り人工芝生によれば、弾性充填材の弾力により競技者の足腰に不必要な負担をかけることのない良好な接地感が得られる。
【0003】
しかしながら、充填材はパイル間を自由に移動可能であるため、競技者もしくは歩行者や各種車両などの荷重により、その充填層に凹凸が生じたり、また、パイルが靴や車輪に踏まれて復元する際に、充填材がパイル間から弾き出されるという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、本願出願人は、実開平3−79311号公報において、人工芝表面から接着剤としての高分子樹脂液を散布して芝目内に充填されている細かな充填材の少なくとも表層部分を固定するようにした粒状物入り人工芝生を提案した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この従来例によれば、充填材の移動や飛び出しは防止されるものの、パイル間に充填材を充填した後、芝面に接着剤を散布するため、この接着剤がパイルにも付着することになる。したがって、外観が悪くなるばかりでなく、各パイルが相互に付着してその自由な動きが妨げられ、接地感や手触りなどが悪くなるおそれがある。
【0006】
また、例えば競技者のスパイクなどの踏圧により、充填材相互の接着が破壊されたり、さらにはゴムチップやコルクなどの弾性充填材においては、それ自体が小粒に破壊されてしまうことがある。
【0007】
特に後者のように、充填材自体が小粒化された場合には、小粒化される前にはその充填材の全表面に接着剤が付着していたとしても、その個々の小粒について見ると、接着剤が付いている面は一部分でしかなく、したがって再度熱処理を施してもなかなかその接着性を修復できない。
【0008】
また、前者のように充填材相互の接着が破壊された場合においても、そもそもが充填材の表面には接着剤が薄くコーティングされているだけなので、再度熱処理を施しても施工当初のような接着能力を期待することはできない。
【0009】
さらに言えば、従来においては、接着剤として湿気硬化型もしくは熱硬化型のものを用いているため、例えば人工芝生の改修時に回収した充填材を元の細粒に分離することが困難であり、充填材をリサイクル(再利用)することができなかった。
【0010】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、その目的は、充填材の破損を容易に修復でき、良好な接地感が長期間維持可能であるとともに、例えば改修時に回収された充填材をリサイクルすることができる人工芝生を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明は、基布に植設されたパイル間に、粒状もしくは繊維状などの所定形状とされた充填材からなる充填材層を形成した人工芝生において、上記充填材の25〜100wt%が上記パイルの軟化点よりも低い温度での加熱により接着性を発揮する熱可塑性弾性体からなり、上記熱可塑性弾性体が加熱により隣接する充填材と接着され、上記接着された充填材層の空隙率が5〜80%であることを特徴としている。
【0012】
この場合、芝葉を形成するパイルには、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの各種ポリ塩化系の合成樹脂、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ポリプロピレンなどの各種合成樹脂を採用することができる。
【0013】
また、パイルの形態としては、ストレート状あるいはループ状のモノフィラメントタイプ、マルチフィラメントタイプなどが選択可能であり、捲縮加工、スリット加工、撚り加工、着色の有無やその度合いなども任意である。なお、パイルを着色する場合には、先端から基端までが同一色であってもよく、グラデーション(無段階な色調変化)を施しておいてもよい。
【0014】
パイルは、ポリプロピレンシートや適宜な合成樹脂繊維を織った面状の基布に植設されるが、その並びは規則的(例えばマトリックス状の等間隔)もしくは不規則(不等間隔)のいずれであってもよく、さらには樹脂成形によりパイルを基布と一体成形してもよい。
【0015】
本発明の人工芝生は、従来と同様に、例えばコンクリート、アスファルト、アスファルトコンクリート、転圧砕石もくしは適宜な弾性層などの平坦な下地の上に敷設されることが好ましい。
【0016】
本発明で使用される熱可塑性弾性体としては、熱可塑性ゴム、例えばスチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ニトリル系、ポリアミド系、フッ素系、ウレタン塩化ビニル系、塩素化ポリエチレン、1.2PB系、トランス1.4IR、シリコン系、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイ、またはエレチン酢酸ビニルポリマー、アイオノマーなどを例示することができ、1種類であってもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、形状的には粒状、繊維状もしくは多角形状のいずれであってもよく、さらに必要に応じてレジンやワックスなどを添加してもよい。
【0017】
本発明においては、充填材に含まれる熱可塑性弾性体の範囲25〜100wt%としているように、充填材のすべてを熱可塑性弾性体としてもよいが、その熱可塑性弾性体の接着効果を阻害しない範囲、すなわち75%未満を限度として、次のような副充填材と混合して用いてもよい。
【0018】
その副充填材としては、例えば砂、砂利などの無機材料や、NRゴム(天然ゴム)、SBRゴム(スチレン−ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ウレタンなどの各種ゴムの粉砕品が採用できる。
【0019】
熱可塑性弾性体は加熱により、隣接する充填材と相互に接着するが、本発明において、その空隙率は5〜80%とされるすなわち、5%未満であると透水性が劣るとともに、弾力性も低くなる。80%を超えるとシューズのスパイクなどの引っ掻きで簡単に破損するので好ましくない。
【0020】
この人工芝生を施工するには、熱可塑性弾性体をパイル間にデッキブラシや回転ブラシなどを用いて充填した後、熱ローラもしくは熱送風機(ドライヤー)を用いて充填層に加熱処理を施せばよい。これにより、熱可塑性弾性体同士もしくは熱可塑性弾性体と隣接する他の充填材とが相互に結合され、パイル間での自由移動が抑制されることから、歩行者や競技者あるいは各種車両の通過に伴って充填層に窪みや轍が生じるという問題を回避することができることになる。
【0021】
すなわち、本発明によれば、先に説明した従来例のように、人工芝表面から接着剤としての高分子樹脂液を散布することなく、パイル間に形成された充填層を加熱するという極めて簡単な作業にて確実に弾性充填材を相互に固定できるとともに、接着剤がパイルに付着するという問題をも回避できる。
【0022】
また、本発明によれば、例えば競技者のスパイクなどにより充填材層の深部にまで達するような破損が生じても、その充填材層を再び加熱すれば充填材層の深部を構成する弾性充填材が隣接する充填材と再び相互に固定され、施工当初に得られた良好な接地感を回復することができる。この効果は、充填層内に上述のように25〜100wt%の熱可塑性弾性体を含む場合に顕著に現れる。
【0023】
発明においては、上記熱可塑性弾性体の接着性を発揮する加熱温度が、上記パイルの軟化点よりも低い温度であることを特徴としている。なお、充填材に複数種類の熱可塑性弾性体を併用する場合は、そのいずれの熱可塑性弾性体もパイルの軟化点よりも低い温度で接着力を発揮するものから選択すればよい。
【0024】
本発明によれば、接着温度がパイルの軟化点よりも低温であるため、充填材層の加熱処理に伴ってパイルに熱変形や熱変質が生じたり、あるいはパイル同士が相互に接着するおそれがなく、芝面の手触りや外観性に悪影響を与えないことになる。
【0025】
発明においては、上記熱可塑性弾性体が上記充填材層の表面に配置されていることが好ましい。すなわち、充填材層の下部層がもっぱら上述した副充填材、例えば砂、砂利などの無機材料や、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ウレタンなどの各種ゴムの粉砕品などで形成されている場合、その上層に熱可塑性弾性体を配置することが好ましく、これによれば、熱可塑性弾性体を加熱して相互に結合することにより、下部層を形成している充填材の移動が効果的に抑制される。特に、下部層の充填材が粒体である場合や軽比重である場合に効果的である。
【0026】
また、上記充填材層のさらに上層に上記熱可塑性弾性体とは異なる材質の粒状体からなる保護層が積層されていることが好ましい。この場合、充填材層はその全体が熱可塑性弾性体からなるか、もしくは熱可塑性弾性体と副充填材との混合物のいずれであってもよいが、その上層には保護層としての砂やゴムチップなどが敷き詰められ、これにより、充填材層に対する例えばジュースのスパイクによる衝撃荷重が緩和され、加熱結合されている熱可塑性弾性体の損傷が効果的に保護される。この場合、保護層は砂などの剛体に近いものやその混合物、もしくは高比重のもので構成されることが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の技術的思想をよりよく理解するうえで、図面に示されている好適な実施の形態について説明する。
【0028】
図1には本発明の第1実施例が示されており、これによると、この人工芝生10は例えばポリプロピレン製の基布12に天然芝を模するように多数植設されたパイル11を備えている。この人工芝生10は平坦な安定基盤、例えばアスファルトコンクリート製の下地基盤13上に敷設される。
【0029】
そして、その敷設後にパイル11間の芝目内に充填材14がデッキブラシもしくは回転ブラシなどにより充填され、これによりその芝目内に所定の層厚を有する充填材層15が形成される。この実施例において、パイル11はナイロンおよびポリプロピレンの撚り合わせ糸からなり、その先端部分が充填材層15から露出して芝面を構成している。
【0030】
充填材14には好ましくは適度の弾性を有する粒状物もしくは繊維状物が用いられるが、本発明においては、この充填材14内に加熱により接着性を発揮する熱可塑性弾性体が含まれ、その許容含有率は25〜100wt%である。すなわち、充填材層15全体を熱可塑性弾性体とする場合を含むが、熱可塑性弾性体を25wt%とし、その残余部分を他の充填材(副充填材)としてもよい。
【0031】
熱可塑性弾性体としては、熱可塑性ゴム、例えばスチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ニトリル系、ポリアミド系、フッ素系、ウレタン塩化ビニル系、塩素化ポリエチレン、1.2PB系、トランス1.41IR、シリコン系、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイ、またはエチレン酢酸ビニルポリマー、アイオノマーなどを例示することができ、1種類であってもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
また、副充填材には、例えば砂、砂利などの無機材料や、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ウレタンなどの各種ゴムの粉砕品を使用することができる。
【0033】
この第1実施例において、熱可塑性弾性体と副充填材とを併用する場合には、それらはランダムに混合されて芝目内に充填される。しかる後、この充填材層15に対して、加熱ローラもしくは熱送風機(ドライヤー)などによる加熱処理を施すことにより、熱可塑性弾性体同士もしくは熱可塑性弾性体と隣接する充填材との接着(結合)が行なわれる。
【0034】
この場合、充填材層15の空隙率を5%ないし80%とすることが好ましい。すなわち、空隙率5%未満であると透水性が劣るとともに、弾力性も低くなり、またその一方で、空隙率が80%を超えるとシューズのスパイクなどの引っ掻きで簡単に熱可塑性弾性体による結合が破損するので好ましくない。
【0035】
ここで、空隙率とは充填材の実際のかさ比重/弾性充填材の真比重であり、その調整方法としては、熱可塑性弾性体を2種以上使用する場合には、その加熱温度を接着力が発現する温度の低い方に合わせることにより、空隙率を大きくすることができる。
【0036】
また、熱可塑性弾性体と副充填材とを混合して用いる場合には、熱可塑性弾性体の配合比を少なくすることにより空隙率が大となる。さらに、副充填材として粒子の大きなものを選択するか、もしくはその形状を繊維状とすることにより、空隙率を大きくすることができる。
【0037】
図2は本発明の第2実施例であり、この場合、充填材層15は上下の2層構造とされる。すなわち、上記の副充填材により下層15aを所定の層厚に形成した後、その上に熱可塑性弾性体を散布して上層15bを形成する。各層の厚さは任意であってよい。
【0038】
そして、上層15bを加熱処理することにより、その熱可塑性弾性体に接着力を発現させて熱可塑性弾性体同士を相互に結合する。この第2実施例によれば、結合された上層15bより下層15aの副充填材の自由移動が抑制されるため、競技者の激しい運動などによっても、充填材の片寄りや芝面からの飛散が防止される。
【0039】
図3には本発明の第3実施例が示されており、この実施例においても充填材層15は下層15cとその上層15dの2層構造からなるが、この場合、下層15cは熱可塑性弾性体から形成され、上層15dは下層15cの保護層として上記副充填材中の好ましくは砂やゴムチップにより形成される。
【0040】
この第3実施例において、熱可塑性弾性体の加熱処理は熱を効率的に加える意味で上層(保護層)15dの形成前に行なうことが好ましいが、場合によっては上層15dの形成後でもよく、いずれにしても上層15dが保護層として作用するため、例えばシューズのスパイクによる衝撃荷重が緩和され、下層15cの加熱結合されている熱可塑性弾性体の損傷が効果的に保護される。
【0041】
【実施例】
次に、充填材の種類や充填層の空隙率および副充填材の有無を選択して、実際に複数種類の充填材入り人工芝生を施工し、その衝撃力、外観性、透水性、耐久性、加工性および修復性を評価するとともに、これらの各評価に基づく総合評価を行なったので、それについて説明する。
【0042】
なお、充填材の硬度はJISK6301A型ゴム硬度計によりゴムの硬度測定法に準じて測定した。衝撃力の評価はDIN18035の落重式衝撃試験機により行ない、その値が小さいものほど良好であるとした。すなわち、衝撃力が350kgf以下であればサッカーなどの激しい競技を行なう競技に好適であり、350kgfを超え590kgf以下の場合には通常の競技を行なう運動場に適用でき、これに対して590kgfを超えていると芝面が硬く感じられ、競技によっては支障を及ぼすおそれがあると一般に言われている。
【0043】
また、充填材固化性の評価は、インテスコ社製2050の試験装置により芝面のばね定数を測定し、その値が小さいものほど良好であるとした。具体的には、直径50mmの試験片(円柱端面)を芝面に荷重速度50mm/min、荷重ループ0〜100kgfで10000回繰り返し圧接させた後、その芝面を成人男子が歩行したときの荷重を想定して荷重速度30mm/min、80kgfで試験片を圧接させたときのばね定数を測定した。
【0044】
外観性の評価は、アンケート調査で複数の観者が目視観察して採点した5点満点とする5段階評価で行なった。透水性の評価は、JIS1218の低水位透水試験によった。一般に、透水性の運動場では0.5×10−2以上、好ましくは1.0×10−2(cm/s)以上とされている。耐久性の評価は、人工芝面上においてスパイクピン付きローラを1時間回転させた後、目視によりその破壊状況を観察し、5点満点とする5段階評価で行なった。
【0045】
加工性については、充填材に用いる材料に特殊な加工が必要か否かに基づいてその良否を判定し、また、修復性については、耐久試験後に充填材を取り出したり、再投入したりすることなく、元に近い状態に戻せるか否かにより、修復性の有り、無しを判定した。
【0046】
なお、各実施例および各比較例ともに、人工芝生のパイル長は25mm、その材質はPP(ポリプロピレン)で、かつ、その軟化点温度は120℃である。また、パイル植え付けはステッチ3.5,ゲージ5/16とした。
【0047】
《実施例1》
充填材として、平均粒径3.0mm、硬度90、接着性発揮温度が95℃のEVA(エチレン酢酸ビニル樹脂)をパイル間の芝目内に充填し、熱風機(ドライヤー)にて充填層内の平均温度が95〜105℃となるように加熱処理し、厚さ5.0mm、空隙率50%の熱可塑性弾性体による充填材層を形成した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は585kgfであり、外観性の評価は5点、透水性は1.0×10−2であり、また、耐久性の評価は4点であった。加工性は良好、修復性も有りで、総合評価は概ね良好であった。
【0048】
《実施例2》
充填材として、平均粒径3.0mm、硬度50、接着性発揮温度が95℃のEVAをパイル間の芝目内に充填し、ドライヤーにて充填層内の平均温度が95〜105℃となるように加熱処理し、厚さ5.0mm、空隙率5%の熱可塑性弾性体による充填材層を形成した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は582kgfであり、外観性の評価は5点、透水性は0.5×10−2であり、また、耐久性の評価は4点であった。加工性は良好、修復性も有りで、総合評価は概ね良好であった。
【0049】
《実施例3》
充填材として、平均粒径3.0mm、硬度50、接着性発揮温度が95℃のEVAをパイル間の芝目内に充填し、ドライヤーにて充填層内の平均温度が95〜105℃となるように加熱処理し、厚さ5.0mm、空隙率20%の熱可塑性弾性体による充填材層を形成した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は580kgfであり、外観性の評価は5点、透水性は0.7×10−2であり、また、耐久性の評価は4点であった。加工性は良好、修復性も有りで、総合評価は実施例1,2よりも良好であった。
【0050】
《実施例4》
充填材として、平均粒径3.0mm、硬度50、接着性発揮温度が95℃のEVAをパイル間の芝目内に充填し、ドライヤーにて充填層内の平均温度が95〜105℃となるように加熱処理し、厚さ5.0mm、空隙率60%の熱可塑性弾性体による充填材層を形成した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は579kgfであり、外観性の評価は5点、透水性は1.0×10−2であり、また、耐久性の評価は4点であった。加工性は良好、修復性も有りで、総合評価は実施例3と遜色はなかった。
【0051】
《実施例5》
充填材として、平均粒径3.0mm、硬度50、接着性発揮温度が95℃のEVAをパイル間の芝目内に充填し、ドライヤーにて充填層内の平均温度が95〜105℃となるように加熱処理し、厚さ5.0mm、空隙率80%の熱可塑性弾性体による充填材層を形成した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は578kgfであり、外観性の評価は5点、透水性は2.0×10−2であり、また、耐久性の評価は3点であった。加工性は良好、修復性も有りであったが、総合評価は実施例1,2と同じく概ね良好であった。
【0052】
《実施例6》
充填材として、平均粒径3.0mm、硬度50、接着性発揮温度が95℃のEVAをパイル間の芝目内に充填し、ドライヤーにて充填層内の平均温度が95〜105℃となるように加熱処理し、厚さ5.0mm、空隙率60%の熱可塑性弾性体による充填材層を形成した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は577kgfであり、外観性の評価は5点、透水性は1.0×10−2であり、また、耐久性の評価は3点であった。加工性は良好、修復性も有りであったが、総合評価は実施例1,2と同じく概ね良好であった。
【0053】
《実施例7》
充填材として、平均粒径3.0mm、硬度50、接着性発揮温度が95℃のEVAをパイル間の芝目内に充填し、ドライヤーにて充填層内の平均温度が95〜105℃となるように加熱処理し、厚さ5.0mm、空隙率60%の熱可塑性弾性体による充填材層を形成した後、その上に平均粒径1.0mmの砂による保護層15mmの厚さをもって形成した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は320kgfであり、外観性の評価は5点、透水性は1.0×10−2であり、また、耐久性の評価は5点で、砂による保護層の固化性は47であった。加工性は良好、修復性も有りで、総合評価としては実施例1〜6を上回る最高得点を獲得した。
【0054】
〈比較例1〉
充填材として、平均粒径1.0mmの砂をパイル間の芝目内に厚さ20mmに充填した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は630kgfで運動競技には硬すぎるきらいがあった。しかも、砂の固化性は250を示した。外観性の評価は5点、透水性は2.0×10−2が得られたが、耐久性の評価は1点であった。加工性は良好であったが、修復性は無しで、総合評価としては満足の得られるものではなかった。
【0055】
〈比較例2〉
充填材として、平均粒径3.0mmのゴムチップに主成分がEVAのホットメルトをまぶしてパイル間の芝目内に充填し、ドライヤーにて充填層内の平均温度が95〜105℃となるように加熱処理し、厚さ5.0mm、空隙率50%の充填材層を形成した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は580kgfで、透水性は0.8×10−2であった。外観性の評価は2点であり、加工性はよくなかった。また、耐久性の評価も2点であり、修復性も無く、総合評価としては満足の得られるものではなかった。
【0056】
〈比較例3〉
充填材として、平均粒径3.0mmのゴムチップに主成分がEVAのホットメルトをまぶしてパイル間の芝目内に充填し、ドライヤーにて充填層内の平均温度が95〜105℃となるように加熱処理し、厚さ5.0mm、空隙率50%の充填材層を形成した後、その上に平均粒径1.0mmの砂による保護層を15mmの厚さをもって形成した。この充填材入り人工芝生の衝撃力は450kgfであったが、砂による保護層の固化性は150を示した。透水性は0.8×10−2が得られたが、ホットメルトがパイルに付着したため、外観性の評価は2点であった。耐久性の評価は3点であるが、修復性は無く、総合評価としては満足の得られるものではなかった。
【0057】
参考までに、上記実施例1〜7および比較例1〜3の評価結果を表1、表2に示す。総合評価は、以上の測定値あるいは評価に基づいて、◎を最高として、×,△,○,○〜◎,◎の5段階とした。
【0058】
【表1】
Figure 0003874901
【0059】
【表2】
Figure 0003874901
【0060】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、本発明を達成できる範囲での改良、変形等は本発明に含まれる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような効果が奏される。すなわち、人工芝表面から接着剤としての高分子樹脂液を散布したり、もしくはあらかじめ接着剤および弾性充填材を混合しておく事前作業を伴うことなく、パイル間に形成された充填層を加熱するという極めて簡単な作業にて確実に弾性充填材を相互に固定できるとともに、接着剤がパイルに付着するという問題をも回避できる。
【0062】
また、例えば競技者のスパイクなどにより充填材層の深部にまで達するような破損が生じても、その充填材層を再び加熱することにより、熱可塑性弾性充填材が隣接する充填材と再び相互に固定され、施工当初に得られた良好な接地感を回復することができる。
【0063】
さらに、熱可塑性弾性充填材の接着温度がパイルの軟化点よりも低温であるため、充填材層の加熱処理に伴ってパイルに熱変形や熱変質が生じたり、あるいはパイル同士が相互に接着するおそれがなく、芝面の手触りや外観性に悪影響を与えることはない。
【0064】
加えて、充填材層の下部層がもっぱら砂、砂利などの無機材料や、NR、SBR、CR、EPDM、ウレタンなどの各種ゴムの粉砕品などの副充填材で形成されている場合には、その上層に熱可塑性弾性体を配置することにより、熱可塑性弾性体を加熱して隣接する充填材と相互に結合することにより、下部層を形成している充填材の移動が効果的に抑制される。
【0065】
そして、上記充填材層のさらに上層に上記熱可塑性弾性体とは異なる材質の粒状体(例えば、砂、ゴムチップなど)からなる保護層を積層することにより、充填材層に対する例えばシューズのスパイクによる衝撃荷重が緩和され、加熱結合されている熱可塑性弾性体の損傷が効果的に保護される、などの種々の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す拡大断面図。
【図2】本発明の第2実施例を示す拡大断面図。
【図3】本発明の第3実施例を示す拡大断面図。
【符号の説明】
10 人工芝生
11 パイル
12 基布
13 基盤
14 充填材
15 充填材層
15a,15c 下部層
15b,15d 上部層

Claims (1)

  1. 基布に植設されたパイル間に、粒状もしくは繊維状などの所定形状とされた充填材からなる充填材層を形成した人工芝生において、
    上記充填材の25〜100wt%が上記パイルの軟化点よりも低い温度での加熱により接着性を発揮する熱可塑性弾性体からなり、上記熱可塑性弾性体が加熱により隣接する充填材と接着され、上記接着された充填材層の空隙率が5〜80%であることを特徴とする人工芝生。
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