JP3873956B2 - 内燃機関の燃料性状判定装置 - Google Patents
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Description
本発明は、始動時により速やかに精度良く燃料性状を判定できるようにすることを目的とする。
そこで、始動時の最初の燃料噴射気筒の膨張行程から一巡目の最後の燃料噴射気筒の膨張行程までの間での回転速度変化度合に基づき、所定のしきい値との比較により、使用燃料の重軽質を判定する。そして、前記しきい値は、機関の温度状態に応じて変更する。
エンジン1の各気筒のピストン2により画成される燃焼室3には、点火栓4を囲むように、吸気弁5及び排気弁6を備えている。7は吸気通路、8は排気通路である。
吸気通路7には、吸気マニホールドの上流側に、スロットル弁9が設けられている。吸気通路7にはまた、吸気マニホールドの各ブランチ部(シリンダヘッド側の吸気ポートに臨む位置)に、各気筒毎に、電磁式の燃料噴射弁10が設けられており、吸気弁5に向けて燃料を噴射するようになっている。
COEF=1+KAS+・・・
また、この始動後増量補正係数KASは、次式により算出される。
KAS=MTKAS×TMKAS
MTKASは、エンジン冷却水温Twに応じたテーブル値(水温増量率)で、低水温時に大きく、水温の上昇と共に小さな値となる。そして、重質燃料の場合と軽質燃料の場合とで異なるテーブルが用いられる。図2は水温増量率(MTKAS)テーブルの概略図である。水温Twの低いところでは重質燃料と軽質燃料とで燃料気化率に大きな差があるが、水温Twの高いところでは差が縮まる。よって、燃料別に水温Twに応じて図示のように増量率MTKASを設定している。
本発明は、上記のように始動後増量補正係数KASの設定のための水温増量率(MTKAS)テーブルを燃料性状により切換えるなど、燃料噴射量を燃料性状により補正する場合の燃料性状判定装置を提供するものである。
図3は燃料性状判定ルーチンのフローチャートである。尚、本実施形態は4気筒エンジンとする。
S1では、高温状態での始動時(ホットリスタート)か否かを判定する。具体的には、始動直前の冷却水温Twを検出し、これが所定値Twh以上か否かによって、ホットリスタートか否かを判定する。エンジン温度を表すものであれば、冷却水温Twに代えて、燃温、油温等を用いてもよい。又は、始動前のエンジン停止時間(前回のエンジン停止から今回の始動までの時間)を計測し、エンジン停止時間が所定値以下か否かによって、ホットリスタートか否かを判定してもよい。
ホットリスタート時でない場合は、S2へ進む。
S2では、初回噴射気筒を判定する。すなわち、気筒別の燃料噴射制御のため、気筒判別を行って、各気筒がいずれの行程にあるかを判別しており、気筒判別結果に従って各気筒への燃料噴射を行っているので、初回噴射気筒(最初に燃料噴射を行って最初に膨張行程を迎える気筒)を判定する。尚、通常は各気筒の排気行程にて燃料噴射を行うが、より速やかな始動のため、初回噴射気筒については吸気行程にて燃料噴射を行うので、初回噴射気筒への燃料噴射と2回目の噴射気筒への燃料噴射は同時に行われる。
S3では、初回噴射気筒(Nc=1)について、圧縮上死点(TDC)時の角速度ω1(deg/s )を検出する。すなわち、圧縮TDCのときに角速度ωを検出し、これを圧縮TDC時角速度ω1とする。
具体的には、図4のサブルーチンにより算出する。図4のサブルーチンは、圧縮上死点(TDC)時の角速度ω1を検出した後に実行され、S31でωmax を初期化(ωmax =0)した後、S32で例えばクランク角10°毎のサンプリング間隔で角速度ωを検出する。そして、S33で検出したωとωmax とを比較し、ω>ωmax の場合にS34でωmax =ωとして、ωmax を更新する。そして、S35で膨張行程が終了する下死点(BDC)付近に達したか否かを判定し、達しない場合は、S32へ戻ってサンプリングを続ける。BDC付近に達した場合は、S36へ進んで現時点でのωmax を膨張行程最大角速度ω2とする。
S5では、圧縮TDC時角速度ω1と膨張行程最大角速度ω2とから、角加速度Δω=ω2−ω1を算出する。より正確に、角加速度Δω=(ω2−ω1)/dtとして算出してもよい。dtはω1の検出時からω2の検出時までの時間である。
初爆判定がなされなかった場合(Δω<ΔωSの場合)は、S7へ進む。
S7では、Nc=4(初回噴射気筒から4番目、すなわち4気筒の場合の一巡目の最後の噴射気筒)か否かを判定し、NOであれば、S8で気筒数Ncを1アップした後、S3〜S5を実行することで、次の気筒についての、圧縮TDC時角速度ω1と膨張行程最大角速度ω2とから、角加速度Δωを算出し、S6で再度初爆判定を行う。
S6で一巡目内に初爆判定がなされた場合は、S9へ進む。
S10では、S5(又は後述するS15)にて算出された各気筒毎の回転速度変化度合である角加速度Δωと、S9にて設定したしきい値ΔωL(>ΔωS)とを比較し、Δω≧ΔωLとなったか否かを判定する。
S11では、Nc=4(初回噴射気筒から4番目、すなわち4気筒の場合の一巡目の最後の噴射気筒)か否かを判定し、NOであれば、S12で気筒数Ncを1アップした後、S3〜S5と同様、S13〜S15を実行することで、次の気筒についての、圧縮TDC時角速度ω1と膨張行程最大角速度ω2とから、角加速度Δωを算出し、S10で再度Δω≧ΔωLか否かの判定を行う。
これに対し、S10での判定でいずれの気筒についてもΔω<ΔωLのまま、S11での判定でNc=4となった場合、すなわち、一巡目内にΔω≧ΔωLとならなかった場合は、S11からS17へ進み、重質と判定して、処理を終了する。
図6(b)は、気筒判別後の膨張行程の回数を横軸として、図6(a)の横軸と対応させ、図6(a)の角速度ωの変化から算出される各気筒毎(膨張行程毎)の角加速度Δω(deg/s2)を示している。
この例では、膨張行程回数3の気筒が初回噴射気筒である。いずれの燃料の場合も、初回噴射気筒(膨張行程回数3)にて圧縮TDC時角速度ω1と膨張行程最大角速度(膨張行程中間位置での角速度)ω2とから算出される角加速度Δω=(ω2−ω1)/dtに基づく判定で、初爆と判定される。軽質燃料の場合は、初爆判定と同時に、Δω≧ΔωLとなって、軽質と判定される。重質燃料の場合は、一巡目(膨張行程回数で3〜6)内に、Δω≧ΔωLとならず、重質と判定される。
S101では、初期設定として、重質設定を行う。これにより、図2の軽質燃料用テーブルと重質燃料用テーブルとのうち、重質燃料用テーブルが使用されるようになる。重質燃料を使用している場合に、軽質設定とすると、始動性が悪化するからである。
S103では、重軽質判定の結果に基づいて、分岐する。重質と判定された場合は、初期設定を変更する必要はないので処理を終了する。軽質と判定された場合は、軽質設定に変更する。これにより、図2の軽質燃料用テーブルと重質燃料用テーブルとのうち、軽質燃料用テーブルが使用されるようになり、燃費を向上できる。重軽質不定の場合(図3のS1の判定でYES、又はS7の判定でYESとなり、処理を終了した場合)は、始動性及び始動後の安定性を重視して初期設定(重質設定)のままとして処理を終了する。
また、本実施形態によれば、回転速度変化度合は、少なくとも1つの気筒についての、膨張行程開始時(圧縮上死点付近)の角速度ω1と、膨張行程での最大角速度(若しくはその近傍の値)ω2との差(ω2−ω1)に基づいて算出することにより、回転速度変化度合を的確にとらえることができる。尚、膨張行程での最大角速度近傍の値として、膨張行程の中間位置付近の角速度、又は、膨張行程の下死点付近の角速度を検出することより、検出を容易にすることができる。特に膨張行程の中間位置付近の角速度を用いれば、絶対差が大きいところなので検知が容易になる。膨張行程の下死点付近の角速度を用いれば、膨張行程の仕事量を安定して検知できる。
また、本実施形態によれば、一巡目内のいずれかの気筒の回転速度変化度合(Δω)がしきい値(ΔωL)を超えたときに、軽質と判定することにより、より速やかに判定できる。
また、本実施形態によれば、エンジンの温度状態(冷却水温Tw)に応じて、重軽質判定用のしきい値(ΔωL)を、温度が高いほど大きくするように、変更することにより、的確に判定精度を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、高温状態での始動時(ホットリスタート時)に、回転速度変化度合に基づく重軽質判定を禁止することにより、誤判定を防止できる。すなわち、エンジンの温度状態(冷却水温Tw)に応じ、これが高くなるほど、重軽質判定用のしきい値(ΔωL)を大きくすることで、判定精度を確保できるが、ある温度以上に達すると、燃料性状の差による回転速度変化度合の差が出にくくなるので、重軽質判定を禁止することで誤判定を防止できる。
また、本実施形態によれば、初爆判定は、各気筒毎の回転速度変化度合(Δω)と、予め定めた回転速度変化度合の第2のしきい値(ΔωS)との比較に基づいて行うことにより、重軽質判定と同じパラメータを用いて初爆判定を実行できる。
7 吸気通路
10 燃料噴射弁
11 ECU
12 カム角センサ
13 クランク角センサ
15 水温センサ
Claims (12)
- 吸気通路に各気筒毎に燃料噴射弁を有する内燃機関において、
始動時の最初の燃料噴射気筒の膨張行程から一巡目の最後の燃料噴射気筒の膨張行程までの間での回転速度変化度合に基づき、所定のしきい値との比較により、使用燃料の重軽質を判定する一方、
機関の温度状態に応じて前記しきい値を変更することを特徴とする内燃機関の燃料性状判定装置。 - 回転速度変化度合は、少なくとも1つの気筒についての、膨張行程開始時の角速度と、膨張行程での最大角速度若しくはその近傍の値との差に基づいて算出することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 膨張行程での最大角速度近傍の値として、膨張行程の中間位置付近の角速度を検出することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 膨張行程での最大角速度近傍の値として、膨張行程の下死点付近の角速度を検出することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 回転速度変化度合は、各気筒毎に算出し、各気筒毎に得られる回転速度変化度合としきい値との比較を繰り返すことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 一巡目内のいずれかの気筒の回転速度変化度合がしきい値を超えたときに、軽質と判定することを特徴とする請求項5記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 一巡目内の全ての気筒の回転速度変化度合がしきい値を超えないときに、重質と判定することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 機関の温度状態に応じて、重軽質判定用のしきい値を、温度が高いほど大きくするように、変更することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 重軽質判定用のしきい値を変更する機関の温度状態を、冷却水温とすることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 高温状態での始動時に、回転速度変化度合に基づく重軽質判定を禁止することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 初爆判定を行い、一巡目内に初爆判定がなされなかった場合、回転速度変化度合に基づく重軽質判定を禁止することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
- 初爆判定は、各気筒毎の回転速度変化度合と、予め定めた回転速度変化度合の第2のしきい値との比較に基づいて行うことを特徴とする請求項11記載の内燃機関の燃料性状判定装置。
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