JP3873923B2 - ポリオキシアルキレン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリオキシアルキレン誘導体の製造方法に関し、さらに詳しくは両末端に種類の異なる官能基を有するポリオキシアルキレン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオキシアルキレン誘導体のなかで、特にポリエチレングリコールは水溶性、非免疫原性などの特性を有し、タンパク質や薬物などの生理活性物質の修飾剤としての利用をはじめ、生物学、医用工学分野への応用が注目されている。
【0003】
一般に、タンパク質の表面にはカルボキシル基、アミノ基、水酸基、メルカプト基など、さまざまな官能基が存在する。このようなタンパク質分子とポリエチレングリコール誘導体とを化学的に結合させる際には、どのような官能基を選ぶか、どの程度結合させるかなどが、合成されるポリエチレングリコール−タンパク質結合体の性質に大きな影響を及ぼす。このため、修飾しようとするタンパク質の表面の存在する官能基に応じて、ポリエチレングリコール誘導体側の官能基を選択する必要がある。
【0004】
工業的に合成されているポリエチレングリコール誘導体は、一方の末端にメトキシ基などの非反応性の基、他方の末端に水酸基を有するもの、あるいは両末端に水酸基を有するものが殆どである。水酸基はアミノ基やカルボキシル基等に比べると反応性が小さいので、上記のようなタンパク質の修飾剤として利用するために、ポリエチレングリコール誘導体の片末端(一方の末端)の水酸基をより反応性の高い他の官能基に変換する試みが行われている(Synth. Commun., 22(16), 2417-2424(1992))。また、ポリエチレングリコールの両末端の水酸基を反応性の高い官能基に変換する試みも行われている(J. Bioact. Compat. Polym., 5(2)227-231(1990))。
【0005】
ポリエチレングリコール誘導体の両端に種類の異なるタンパク質等の物質を選択的に結合させる場合には、両末端に相異なる官能基を有するポリエチレングリコール誘導体が必要となる(DE4004296(1991))。
しかしながら、上記のようなポリエチレングリコールの両末端に存在する水酸基を反応性の高い官能基に変換する方法では、未反応の水酸基末端が残る可能性があり、また反応生成物は、両末端に同一の官能基を有するものと、両末端に相異なる官能基を有するものとの混合物として得られるため、カラムクロマトグラフィーなどの方法により精製する必要があり、収率や純度の面で問題がある。
【0006】
一方、重合開始剤としてカリウムビス(トリメチルシリル)アミドを用いて、エチレンオキシドの重合を行った例がある(Bioconjugate Chem., 3(4), 275-276(1992))。この方法では、α−アミノ−ω−ヒドロキシポリオキシエチレンが選択的に得られているが、他の相異なる官能基を選択的に導入した例はまだない。
【0007】
ところで、末端にシアノ基を有するポリエチレングリコール誘導体は、シアノ基を反応性の高いアミノ基やカルボキシル基に変換することができる特性をもっており、両末端または片末端に水酸基を有するポリエチレングリコール誘導体を出発原料として末端の水酸基をアクリロニトリルによりシアノ化した例(CS155578、特開昭47−13393号)や、両末端にシアノ基を有するポリエチレングリコール誘導体の末端を他の官能基に変換した例がある(DD284240、特開昭50−160214号)。
しかしながら、シアノ基とシアノ基以外の官能基を末端に有するポリエチレングリコール誘導体の選択的な製造方法は知られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、両末端に官能基を有するポリオキシアルキレン誘導体を選択的に、しかも容易に効率よく製造することができる製造方法を提案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は次のポリオキシアルキレン誘導体の製造方法である。
〔1〕一般式(1)
【化18】
〔式中、pは0〜2の整数、qは0〜2の整数、rは0または1である。だたし、0≦p+q+r≦2を満たす。〕
で表わされる環状オキシアルキレン化合物の1種または2種以上を、一般式(2)
【化19】
〔式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。Mはアルカリ金属を示す。〕
で表わされる重合開始剤の存在下に重合し、一般式(3)
【化20】
〔式中、nは5〜10000の数、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。オキシアルキレン基は同一でも異なっていてもよく、またランダムに付加していても、ブロック状に付加していてもよい。R1、R2およびMは前記と同じものを示す。〕
で表わされる重合体を得、この重合体を化学修飾して一般式(4)
【化21】
〔式中、Yは炭素数1〜6のアルキレン基、mは0または1を示す。mが0の場合、R3は水素原子、mが1の場合、R3は保護された水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、メルカプト基またはアミノ基を示す。AO、n、R1およびR2は前記と同じものを示す。〕
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体を得、このポリオキシアルキレン誘導体のシアノ基末端を還元し、一般式(5)
【化22】
〔式中、Y、m、AO、n、R1、R2およびR3は前記と同じものを示す。〕
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体を得た後、このポリオキシアルキレン誘導体を加水分解することを特徴とする一般式(6)
【化23】
〔式中、mは0または1であり、mが0の場合、Xは水素原子、mが1の場合、Xは水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、メルカプト基またはアミノ基を示す。Y、AO、n、R1およびR2は前記と同じものを示す。〕
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
〔2〕前記一般式(1)で表わされる環状オキシアルキレン化合物の1種または2種以上を、前記一般式(2)で表わされる重合開始剤の存在下に重合し、前記一般式(3)で表わされる重合体を得、この重合体を水または弱酸で処理して一般式(7)
【化24】
〔式中、AO、n、R1およびR2は前記と同じものを示す。〕
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体を得た後、このポリオキシアルキレン誘導体のシアノ基末端を還元することを特徴とする一般式(8)
【化25】
〔式中、AO、n、R1およびR2は前記と同じものを示す。〕
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
〔3〕前記一般式(4)で表わされるポリオキシアルキレン誘導体のシアノ基末端を還元することを特徴とする前記一般式(5)で表わされるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
〔4〕前記一般式(5)で表わされるポリオキシアルキレン誘導体を加水分解することを特徴とする前記一般式(6)で表わされるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
〔5〕前記一般式(7)で表わされるポリオキシアルキレン誘導体のシアノ基末端を還元することを特徴とする前記一般式(8)で表わされるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
【0010】
本発明のポリオキシアルキレン誘導体の製造方法では、一般式(1)および(2)で表わされる化合物を出発原料にして、中間体を経由して、最終目的物である一般式(6)または(8)で表わされるポリオキシアルキレン誘導体を製造する。この際、一般式(6)で表わされる最終目的物は、一般式(3)、(4)および(5)で表わされる中間体を経由して製造される。一般式(8)で表わされる最終目的物は、一般式(3)および(7)で表わされる中間体を経由して製造される。ここで、一般式(8)で表わされる最終目的物は、一般式(6)の最終目的物においてmが0の場合の化合物である。
【0011】
一般式(2)〜(8)におけるR1およびR2はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などがあげられる。R1、R2同士は、同一でも異なっていてもよい。R1およびR2が水素原子の場合、重合が進行しやすく、この基が好ましい。一般式(2)または(3)においてMで示されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどがあげられる。
【0012】
一般式(3)〜(8)においてAOで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシ−1−エチルエチレン基、オキシ−1,2−ジメチルエチレン基、オキシテトラメチレン基などがあげられる。
一般式(3)〜(8)においてnは5〜10000であり、最終目的物のポリオキシアルキレン誘導体を生理活性物質の修飾剤として利用する場合は、好ましくは5〜2000、さらに好ましくは5〜1000である。
【0013】
一般式(4)〜(6)においてYで示される炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、メチルエチレン基、ジメチルエチレン基などがあげられる。最終目的物のポリオキシアルキレン誘導体を生理活性物質の修飾剤として利用する場合は、Yがエチレン基、トリメチレン基、特にエチレン基であるのが好ましい。
【0014】
一般式(6)におけるXは、mが0の場合は水素原子であり、mが1の場合は水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、メルカプト基またはアミノ基である。一般式(4)または(5)におけるR3は、mが0の場合は水素原子であり、mが1の場合は保護された水酸基、保護されたカルボキシル基、保護されたアルデヒド基、保護されたメルカプト基または保護されたアミノ基である。ここで、保護された基とは、後述の方法で酸またはアルカリの存在下に加水分解することにより、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、メルカプト基またはアミノ基に変換される基である。
【0015】
R3で示される保護された水酸基の具体的なものとしては、tert−ブトキシ基、p−クロロフェニルオキシ基、p−メトキシフェニルオキシ基、2,4−ジニトロフェニルオキシ基、ベンジルオキシ基、p−メトキシベンジルオキシ基、3,4−ジメトキシベンジルオキシ基、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基等があげられる。
【0016】
R3で示される保護されたカルボキシル基の具体的なものとしては、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ジフェニルオキシカルボニル基、トリフェニルオキシカルボニル基等があげられる。
【0017】
R3で示される保護されたアルデヒド基の具体的なものとしては、ジメトキシメチル基、ジエトキシメチル基、ジプロポキシメチル基、ジ−tert−ブトキシメチル基、ジヘキシロキシメチル基等があげられる。
【0018】
R3で示される保護されたメルカプト基の具体的なものとしては、アセチルチオ基、プロピオニルチオ基、ベンジルチオ基、p−メトキシベンジルチオ基、p−ニトロベンジルチオ基、ジフェニルメチルチオ基、トリフェニルメチルチオ基等があげられる。
【0019】
R3で示される保護されたアミノ基の具体的にものとしては、ジベンジルアミノ基、フタルイミド基、2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンチル基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ビストリメチルシリルアミノ基などがあげられる。
【0020】
まず、一般式(3)〜(5)で表わされる中間体を経由して一般式(6)で表わされる最終目的物を得るポリオキシアルキレン誘導体の製造方法について説明する。
一般式(3)で表わされる中間体は、一般式(2)で表わされる化合物を重合開始剤として用いて、この重合開始剤の存在下に一般式(1)で表わされる環状オキシアルキレン化合物を重合することにより製造することができる。
【0021】
一般式(1)で表わされる環状オキシアルキレン化合物の具体的なものとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、テトラヒドロフラン等があげられる。これらは単独で、または2種類以上の混合物として用いられる。
【0022】
一般式(2)で表わされる重合開始剤の具体的なものとしては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、2−メチルブチロニトリル、ヘキサンニトリル、4−メチルバレロニトリル等のアルキルシアニド化合物の2位の炭素が、前記アルカリ金属によりメタル化された化合物があげられる。これらの化合物は、金属塩の形態で使用するほかにも、前記シアノ誘導体と、ナフタレンカリウム、ナフタレンナトリウム等の有機アルカリ金属や、水素化カリウム、水素化ナトリウム等の水素化アルカリ金属や、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属とを別々に反応液に添加する形態で使用することもできる。これらの化合物は重合開始剤として作用するため、すべてのポリマー末端にシアノ基が存在することになる。
【0023】
重合開始剤は、そのまま反応系に添加することもできるが、有機溶媒に溶解させた溶液状態で添加するのが好ましい。このような有機溶媒としては溶液として活性水素基を有しない有機溶媒であれば特に規制されず、例えばベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどがあげられる。重合開始剤の濃度としては、0.1〜90重量%、好ましくは1.0〜50重量%とするのが望ましい。
【0024】
一般式(1)で表わされる環状オキシアルキレン化合物と一般式(2)で表わされる重合開始剤との使用割合は、環状オキシアルキレン化合物:重合開始剤のモル比で、通常1:0.00001〜1:0.5、好ましくは1:0.0001〜1:0.2とするのが望ましい。
【0025】
重合反応は、一般式(1)で表わされる環状オキシアルキレン化合物と一般式(2)で表わされる重合開始剤または重合開始剤溶液とを、非溶媒中または有機溶媒中で混合して行われる。有機溶媒は重合反応を妨害しないものであれば特に限定されず、例えばテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどがあげられる。重合反応は、封管ガラス管中またはオートクレーブ中で、不活性ガス雰囲気下に行うのが好ましい。反応溶液の濃度としては、0.1〜90重量%、好ましくは1.0〜50重量%とするのが望ましい。
反応条件は、温度が0〜180℃、好ましくは10〜50℃、圧力が通常8〜0kgf/cm2G、反応時間が通常0.5〜120時間とするのが望ましい。
【0026】
次に、このようにして得られた一般式(3)で表わされる中間体を、導入する官能基の種類に応じて次のような方法によって化学修飾を行うことにより、一般式(4)で表わされる中間体を得ることができる。
α−末端に水酸基を導入する場合は、次のようにして化学修飾を行い、保護された水酸基を導入する。すなわち、一般式(3)で表わされる中間体に、求電子試薬として1−tert−ブトキシ−2−ブロモエタン、1−ベンジルオキシ−3−ブロモプロパン、2−トリメチルシリルオキシ−2−ブロモエタン等の化合物を反応させ、一般式(4)で表わされる中間体を得る。
【0027】
α−末端にカルボキシル基を導入する場合は、次のようにして化学修飾を行い、保護されたカルボキシル基を導入する。すなわち、一般式(3)で表わされる中間体に、求電子試薬としてtert−ブチルブロモアセテート、tert−ブチル−2−ブロモプロピオネート、tert−ブチル−3−ブロモブチレート、tert−ブチル−4−ブロモバレラート、エチルブロモアセテート、エチル−2−ブロモプロピオネート、エチル−3−ブロモプロピオネート、エチル−3−ブロモブチレート、エチル−4−ブロモバレラート等のハロゲン化アルキルカルボン酸エステル;ベンジルブロモアセテート、ベンジル−3−ブロモプロピオネート等のハロゲン化アリールアルキルカルボン酸エステルを反応させ、一般式(4)で表わされる中間体を得る。
【0028】
α−末端にアルデヒド基を導入する場合は、次のようにして化学修飾を行い、保護されたアルデヒド基を導入する。すなわち、一般式(3)で表わされる中間体に、求電子試薬として2−ブロモ−1,1−ジメトキシエタン、2−ブロモ−1,1−ジエトキシエタン、3−ブロモ−1,1−ジメトキシプロパン、3−ブロモ−1,1−ジエトキシプロパンなどの化合物を反応させ、一般式(4)で表わされる中間体を得る。
【0029】
α−末端にメルカプト基を導入する場合は、次のようにして化学修飾を行い、保護されたメルカプト基を導入する。すなわち、一般式(3)で表わされる中間体に、求電子試薬としてtert−ブチル−2−クロロメチルスルフィド、フェニルクロロメチルスルフィド、ベンジルクロロメチルスルフィド、ベンジルブロモメチルスルフィド、4−メトキシベンジルクロロメチルスルフィド等のハロゲン化アルキルスルフィドを反応させ、一般式(4)で表わされる中間体を得る。
【0030】
α−末端にアミノ基を導入する場合は、次ののようにして化学修飾を行い、保護されたアミノ基を導入する。すなわち、一般式(3)で表わされる中間体に、求電子試薬として、N−(2−ブロモエチル)フタルイミド、N−(3−ブロモプロピル)フタルイミド、N−2−クロロエチルジベンジルアミン、2,2,5,5−テトラメチル−1,3−クロロプロピル−1−アザ−2,3−ジシラシクロペンタン、1−ブロモ−2−(ベンジルアミノ)エタン、N−(2−ブロモエチル)カルバミン酸ベンジルなどを反応させ、一般式(4)で表わされる中間体を得る。
【0031】
次に、このようにして得られた一般式(4)で表わされる中間体のシアノ基末端を還元することにより、一般式(5)で表わされる中間体を得ることができる。
シアノ基末端の還元に使用する試薬としては、リチウムアルミニウムハイドライドや、ヒドラジンなどの還元試薬があげられる。また、ニッケル、パラジウムなどの金属触媒を用いた直接水素添加の方法なども採用できる。
【0032】
還元反応は、一般式(4)で表わされる中間体と還元試薬とを有機溶媒中または水系溶液中で攪拌するなどの方法が採用できる。このとき使用する還元試薬の量は、シアノ基のモル数に対して1〜100モル倍量、好ましくは1〜10モル倍量とするのが望ましい。有機溶媒は還元反応を妨害しないものであれば特に限定されず、例えばテトラヒドロフラン、トルエンなどがあげられる。反応溶液の濃度としては、0.1〜90重量%、好ましくは1.0〜50重量%とするのが望ましい。
反応条件は、温度が0〜180℃、好ましくは10〜150℃、反応時間が通常0.5〜120時間とするのが望ましい。
このようにして還元することにより、シアノ基が還元されてアミノ基が形成され、一般式(5)で表わされる中間体が得られる。
【0033】
次に、一般式(5)で表わされる中間体を酸またはアルカリの存在下に加水分解することにより、一般式(6)で表わされる最終目的物のポリオキシアルキレン誘導体が得られる。加水分解に使用する酸の試薬としては、酢酸、塩酸、硫酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、フッ化水素等があげられるが、塩酸が好ましい。加水分解に使用するアルカリの試薬としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどがあげられる。
【0034】
加水分解の方法としては、一般式(5)で表わされる中間体を上記酸またはアルカリを含む水溶液または水系溶液中で攪拌するなどの方法が採用できる。このとき使用する酸の濃度は0.5N〜10N、好ましくは0.5N〜5Nとするのが望ましい。またアルカリの濃度は0.5N〜10N、好ましくは0.5N〜5Nとするのが望ましい。
このようにして加水分解することにより、一方の末端がアミノ基、他方の末端が水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、メルカプト基またはアミノ基である一般式(6)で表わされるポリオキシアルキレン誘導体が選択的に得られる。
【0035】
次に一般式(3)および(7)で表わされる中間体を経由して一般式(8)で表わされる最終目的物を製造する方法について説明する。
まず前記と同様にして一般式(2)で表わされる重合開始剤の存在下に一般式(1)で表わされる化合物を重合して一般式(3)で表わされる中間体を製造し、次にこの一般式(3)で表わされる中間体を水または弱酸で処理して一般式(7)で表わされる中間体を製造する。
【0036】
弱酸処理に使用する酸としては、塩酸、酢酸などが使用できる。酸処理の方法としては、これらの酸を含む水溶液または水系溶液中で攪拌するなどの方法が採用できる。このとき使用する酸の濃度は、0.001〜0.2N、好ましくは0.01〜0.1Nとするのが望ましい。反応条件は、0〜100℃、好ましくは10〜80℃で、反応時間は10秒〜100時間、好ましくは1分〜20時間とするのが望ましい。
水で処理する場合は、一般式(3)で表わされる中間体を水に添加し、撹拌するなどの方法が採用できる。
【0037】
次に、このようにして得られた一般式(7)で表わされる中間体のシアノ基末端を、前記と同様にして還元することにより、一方の末端がアミノ基、他方の末端が水酸基である一般式(8)で表わされる最終目的物のポリオキシアルキレン誘導体が選択的に得られる。
【0038】
以上のような方法により最終目的物を得た後は、反応液をジエチルエーテル、イソプロパノール、ヘキサン等のポリオキシアルキレン誘導体を溶解しない有機溶媒中に投入して沈殿させることにより、沈殿物として目的とするポリオキシアルキレン誘導体を単離することができる。また、カラムクロマトグラムによる方法や、透析、限外ろ過、吸着剤処理、再沈殿などの方法によっても単離精製することができる。
【0039】
このようにして得られた最終目的物のポリオキシアルキレン誘導体はタンパク質や薬物等の生理活性物質の修飾剤として利用でき、修飾した生理活性物質に水溶性や非免疫原性などの特性を付与することができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表わされる重合開始剤を出発原料にして、一般式(6)または(8)で表わされる最終目的物のポリオキシアルキレン誘導体を効率良く、しかも選択的に製造できる。
【0041】
また本発明の製造方法によれば、一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表わされる重合開始剤を出発原料にして、最終目的物のポリオキシアルキレン誘導体の製造に必要な一般式(3)、(4)、(5)または(7)で表わされる中間体を効率良く、しかも選択的に製造できる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら制限するものではない。
実施例1−1
窒素雰囲気下、0℃の条件下で重合開始剤としてアセトニトリル0.41g(0.01mol)および0.5mol/lのナフタレンカリウム/テトラヒドロフラン溶液10mlをテトラヒドロフラン150mlに添加後、さらに26.4g(0.6mol)のエチレンオキシドを添加し、20℃で3日間攪拌して重合し、次式(11)で表わされる重合体を得た。
【化37】
【0043】
次に、上記反応液にエチルブロモアセテート3.0g(0.02mol)を加えた後、さらに10時間反応させて化学修飾した。その後、500mlのジエチルエーテルに滴下して再沈し、真空乾燥することにより、次式(12)で表わされるα−((2−オキソ−2−エトキシ)エチル)−ω−シアノメチルポリオキシエチレンを得た。
【化38】
【0044】
得られたポリオキシエチレン誘導体をゲルろ過タイプの高速液体クロマトグラフィーで分析した結果は、ポリエチレンオキシドの標準サンプルから求めた平均分子量2800、重量平均分子量/数平均分子量=1.1であった。
13C−NMRの分析結果は次の通りである。
13C−NMR(CDCl3)、δ(ppm):
13.6(b)、14.4(i)、27.3(c)、60.2(h)、69.2(d)、70.1(f)、71.0(e)、
121.2(a)、171.5(g)
【0045】
実施例1−2
実施例1−1で得られたα−((2−オキソ−2−エトキシ)エチル)−ω−シアノメチルポリオキシエチレン10gをテトラヒドロフラン100mlに溶解し、この溶液にリチウムアルミニウムハイドライド0.5gを加えて25℃で2時間攪拌しながら還元した。水2mlを加えて反応を停止した後、0.1mol/l塩酸水溶液で中和した。次に80℃減圧下、テトラヒドロフランおよび水を留去した後、析出物をろ過し、次式(13)で示されるα−((2−オキソ−2−エトキシ)エチル)−ω−(2−アミノエチル)ポリオキシエチレンを得た。
【化39】
【0046】
得られたポリオキシエチレン誘導体をゲルろ過タイプの高速液体クロマトグラフィーで分析した結果は、ポリエチレンオキシドの標準サンプルから求めた平均分子量2800、重量平均分子量/数平均分子量=1.1であった。
13C−NMRの分析結果は次の通りである。
13C−NMR(CDCl3)、δ(ppm):
14.4(i)、26.4(b)、27.3(c)、41.3(a)、60.2(h)、69.2(d)、70.1(f)、
71.0(e)、171.5(g)
【0047】
実施例1−3
実施例1−2で得られたα−((2−オキソ−2−エトキシ)エチル)−ω−(2−アミノエチル)ポリオキシエチレンを1mol/l塩酸水溶液中で24時間攪拌して加水分解した後、2mol/l水酸化ナトリウム水溶液で中和した。次に80℃減圧下、水を留去した後、析出物をろ過し、下記(14)で表わされるα−(カルボキシメチル)−ω−(2−アミノエチル)ポリオキシエチレンを得た。
【化40】
【0048】
得られたポリオキシエチレン誘導体をゲルろ過タイプの高速液体クロマトグラフィーで分析した結果は、ポリエチレンオキシドの標準サンプルから求めた平均分子量2700、重量平均分子量/数平均分子量=1.1であった。
13C−NMRの分析結果は次の通りである。
13C−NMR(CDCl3)、δ(ppm):
26.9(c)、28.2(b)、41.1(a)、69.8(f)、69.7(d)、70.4(e)、173.5(g)
【0049】
実施例2−1
窒素雰囲気下、0℃の条件下で重合開始剤としてアセトニトリル0.41g(0.01mol)および0.5mol/lのナフタレンカリウム/テトラヒドロフラン溶液10mlをテトラヒドロフラン150mlに添加後、さらに26.4g(0.6mol)のエチレンオキシドを添加し、20℃で3日間攪拌して重合し、次式(15)で表わされる重合体を得た。
【化41】
【0050】
次に、上記反応液に0.1N酢酸水溶液2mlを加え、10分間攪拌して弱酸処理した。次に500mlのジエチルエーテルに滴下して再沈し、真空乾燥することにより、次式(16)で示されるα−ヒドロ−ω−シアノメチルポリオキシエチレンを得た。
【化42】
【0051】
得られたポリオキシエチレン誘導体をゲルろ過タイプの高速液体クロマトグラフィーで分析した結果は、ポリエチレンオキシドの標準サンプルから求めた平均分子量2700、重量平均分子量/数平均分子量=1.1であった。
13C−NMRの分析結果は次の通りである。
13C−NMR(CDCl3)、δ(ppm):
13.4(b)、26.2(c)、61.2(g)、68.2(d)、70.2(e)、72.2(f)、119.3(a)
【0052】
実施例2−2
実施例2−1で得られたα−ヒドロ−ω−シアノメチルポリオキシエチレン10gをテトラヒドロフラン100mlに溶解し、この溶液にリチウムアルミニウムハイドライド0.5gを加えて25℃で2時間攪拌しながら還元した。水2mlを加えて反応を停止した後、0.1mol/l塩酸水溶液で中和した。次に80℃減圧下、テトラヒドロフランおよび水を留去した後、析出物をろ過し、次式(17)で表わされるα−ヒドロ−ω−(2−アミノエチル)ポリオキシエチレンを得た。
【化43】
【0053】
得られたポリオキシエチレン誘導体をゲルろ過タイプの高速液体クロマトグラフィーで分析した結果は、ポリエチレンオキシドの標準サンプルから求めた平均分子量2700、重量平均分子量/数平均分子量=1.1であった。
13C−NMRの分析結果は次の通りである。
13C−NMR(CDCl3)、δ(ppm):
26.4(b)、25.1(c)、40.9(a)、61.1(g)、68.8(d)、70.0(e)、72.2(f)
【0054】
実施例3−1
窒素雰囲気下、0℃の条件下で重合開始剤としてアセトニトリル0.41g(0.01mol)および0.5mol/lのナフタレンカリウム/テトラヒドロフラン溶液10mlをテトラヒドロフラン150mlに添加後、さらに26.4g(0.6mol)のエチレンオキシドを添加し、20℃で3日間攪拌して重合し、次式(18)で表わされる重合体を得た。
【化44】
【0055】
次に、上記反応液に2−ブロモ−1,1−ジエトキシエタン3.0g(0.02mol)を加えた後、さらに10時間反応させて化学修飾した。その後、500mlのジエチルエーテルに滴下して再沈し、真空乾燥することにより、次式(19)で示されるα−(2,2−ジエトキシエチル)−ω−シアノメチルポリオキシエチレンを得た。
【化45】
【0056】
得られたポリオキシエチレン誘導体をゲルろ過タイプの高速液体クロマトグラフィーで分析した結果は、ポリエチレンオキシドの標準サンプルから求めた平均分子量2800、重量平均分子量/数平均分子量=1.1であった。
13C−NMRの分析結果は次の通りである。
13C−NMR(CDCl3)、δ(ppm):
13.5(b)、15.5(i)、27.2(c)、60.1(h)、68.0(d)、70.1(e)、71.5(f)、
101.5(g)、121.2(a)
【0057】
実施例4
実施例2−1と同様に、窒素雰囲気下、0℃の条件下で重合開始剤としてアセトニトリル0.41g(0.01mol)および0.5mol/lのナフタレンカリウム/テトラヒドロフラン溶液10mlをテトラヒドロフラン150mlに添加後、さらに26.4g(0.6mol)のエチレンオキシドを添加し、20℃で3日間攪拌して重合し、次式(22)で表わされる重合体を得た。
【0058】
【化46】
Claims (5)
- 一般式(1)
で表わされる環状オキシアルキレン化合物の1種または2種以上を、一般式(2)
で表わされる重合開始剤の存在下に重合し、一般式(3)
で表わされる重合体を得、この重合体を化学修飾して一般式(4)
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体を得、このポリオキシアルキレン誘導体のシアノ基末端を還元し、一般式(5)
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体を得た後、このポリオキシアルキレン誘導体を加水分解することを特徴とする一般式(6)
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。 - 一般式(1)
で表わされる環状オキシアルキレン化合物の1種または2種以上を、一般式(2)
で表わされる重合開始剤の存在下に重合し、一般式(3)
で表わされる重合体を得、この重合体を水または弱酸で処理して一般式(7)
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体を得た後、このポリオキシアルキレン誘導体のシアノ基末端を還元することを特徴とする一般式(8)
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。 - 一般式(4)
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体のシアノ基末端を還元することを特徴とする一般式(5)
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。 - 一般式(5)
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体を加水分解することを特徴とする一般式(6)
で表わされるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
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