JP3873208B2 - 車両用電力変換装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用電力変換装置に係り、特に、電力変換装置から放出される高周波漏洩電流を抑制する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、図8に、鉄道車両における電力変換装置の艤装状態を示す。電力変換装置9は、車両6の床下に艤装され、架線、車両の屋根上に設置された集電装置13、遮断器14、平滑リアクトル15、電力変換装置9、台車およびレールによって構成される経路を経て直流電力を変電所から得ている。
図5に、電力変換装置の内部および車体と筐体との電気的な接続状態を示す。電力変換装置は、半導体スイッチで構成される電力変換回路1と、電力変換回路に電力を供給する主回路配線(プラス電源)7と、開放スイッチ4を介して電力変換回路1に接続される主回路配線(マイナス電源)8と、主回路配線7と開放スイッチ4の電力変換回路側との間に接続される短絡スイッチ3と、短絡スイッチ3よりも電力変換回路側に短絡スイッチ3と並列に接続され、電力変換回路1の直流入力電圧を平滑する平滑コンデンサ2と、電力変換装置の筐体9と車体6とを接続するアース線5とから構成される。電力変換回路1からの交流はモータ線10を介して出力される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
電力変換回路を構成している半導体素子がスイッチングすると、電力変換回路の出力電圧は急激に変動する。電力変換回路の出力電圧の変動に伴い、電力変換装置内部の配線や平滑コンデンサなどの構成要素と筐体や、筐体・車体間に寄生する寄生コンデンサ成分を介して高周波の漏洩電流が流れる。その中でも平滑コンデンサのケースから筐体に漏れ出す高周波漏洩電流が大きい。
これらの漏洩電流が電力変換装置の筐体等を経由して電力変換装置の外部に漏洩し、通信設備、信号設備などに悪影響を与える。
【0004】
本発明の課題は、電力変換装置の内部に寄生する寄生コンデンサ成分を介して流れる高周波漏洩電流を抑制することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、少なくとも半導体から構成される電力変換回路と、電力変換回路の直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、平滑コンデンサに電力を供給する配線と、電力変換回路と平滑コンデンサと配線を内包する筐体から構成され、車体に艤装される車両用電力変換装置において、平滑コンデンサのケースが非導電体であり、筐体と対面する非導電体のケースの面を導電物で被うとともに、導電物と筐体とを第一の減流要素を介して接続する。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態を示す車両用電力変換装置の構成図である。図1において、図5と同じ機器については図5と同じ記号を付してある。本実施形態においては、絶縁体500の上に平滑コンデンサ(ケースが導電性)2を配し、平滑コンデンサ2と筐体9との間の絶縁を取るとともに、平滑コンデンサ2と筐体9を抵抗器(減流要素)50を介して接続し、開放スイッチ4の負側と筐体9を抵抗器51(減流要素)によって接続する。
【0007】
図2に、図1の構成における高周波成分に対する等価回路を示す。また、平滑コンデンサ2の高周波成分に対する等価回路を図6に示す。
図6において、平滑コンデンサ2は、コンデンサセル21を金属ケースで覆った構成である。コンデンサセル21は、内部で電荷を蓄積する構成となっている。このとき、コンデンサセル21と平滑コンデンサ2の金属ケース間の絶縁物を誘電体とした寄生容量22,23が発生し、平滑コンデンサ2の等価回路は図6のようになる。
図2において、11は等価ノイズ源、12は寄生コンデンサ、18は車体アース、24,44は寄生コンデンサ、25,40は寄生インダクタンス、41はノイズ伝播経路、50,51は抵抗器を示す。
平滑コンデンサ2の金属ケースと内包されているコンデンサセル21との間に寄生するコンデンサ(寄生容量22,23の集約)24と、配線の寄生インダクタンス25により構成される共振回路により大きな漏洩電流イが流れる。本実施形態では、平滑コンデンサ2と筐体9の間を絶縁(絶縁体500)するとともに、平滑コンデンサ2と筐体9の間を抵抗器50を介して接続することによって、寄生コンデンサ24と配線の寄生インダクタンス25の共振およびそれに伴って発生する高周波漏洩電流を抑制する。
勿論、平滑コンデンサ2と筐体9の間の絶縁を確保するのみで抵抗器50を挿入しなくても、共振にもとなう漏洩電流を抑制することができる。
また、平滑コンデンサ2のケースと筐体9の間のインピーダンスよりも低いインピーダンスを有する抵抗器で平滑コンデンサ2のケースと筐体9の間を接続すれば、平滑コンデンサ2のケースの電位が安定するので、平滑コンデンサ2のケースと筐体9の間に電位差が発生しなくなる。この結果、平滑コンデンサ2のケースと筐体9の間を絶縁しなくとも、平滑コンデンサ2のケースと筐体9の間に漏洩電流が流れなくなる。
【0008】
また、主回路配線8は数mから場合によっては十数mの長さになる。このため、高周波成分に対して無視できないインダクタンス40になるので、平滑コンデンサ2のマイナス側の端子の電位は、高周波的に不安定となる。このため、電力変換回路1のスイッチングに伴い、電力変換装置内部に存在する平滑コンデンサ2、開放スイッチ4、短絡スイッチ3、電力変換回路1などの電気機器と筐体9の間に寄生する寄生コンデンサ(集約して表現)44を介して漏洩電流ロが流れる。
そこで、開放スイッチ4の電源側を抵抗器51を介して接続する。この結果、主回路配線8の開放スイッチ4の電源側における電位は、筐体9すなわちアース電位となり、平滑コンデンサ2のマイナス側の電位および電力変換装置の内部に存在する電気機器の電位が安定化され、これらの電気機器と筐体9の間に寄生する寄生コンデンサ44を介して流れる漏洩電流を抑制することができる。
勿論、抵抗器51は、開放スイッチ4の平滑コンデンサ2側と筐体9の間に接続しても同様の結果が得られる。
【0009】
車両用電力変換装置においては、装置を構成する電気機器が大地に対して十分な絶縁能力を維持しているか定期的に試験を行うことが一般的である。この試験は、開放スイッチ4を開放し、短絡スイッチ5を短絡した上で、開放スイッチ4の平滑コンデンサ2側と筐体9(即ち、大地電位)との間に高圧(1500V級の機器の場合、AC5400V)を印加する試験を行う。このため、抵抗器51を開放スイッチ4の平滑コンデンサ2側に接続した場合には、抵抗器51には上記の試験を考慮した耐圧を有する抵抗器とする必要がある。一方で、抵抗器51を開放スイッチ4の負側に接続した場合には、上述の試験時には切り離されるので、比較的耐圧の低い抵抗器を使用できるので、小型・軽量化の点で有利になるということを記しておく。
【0010】
図3は、本発明の他の実施形態を示す。本実施形態は、平滑コンデンサ29が非金属(非導電性)のケースの場合の例である。ケースが非金属の場合、平滑コンデンサ(ケースが非導電性)29と筐体9の絶縁はケースで確保することができるので、図1に示したように平滑コンデンサ2と筐体9を絶縁体500により絶縁する必要がない。しかしながら、コンデンサセル21と筐体9の間には、寄生コンデンサ22,23を含む寄生コンデンサ(図示せず)が存在するので、この寄生コンデンサと寄生インダクタンス(図示せず)による共振電流が流れる。これを抑制するため、非金属のケースを導体200で被うとともに、導体200と筐体9の間を抵抗器50を介して接続する。この結果、コンデンサセル21と筐体9の間に寄生する寄生コンデンサを介して流れる漏洩電流を抑制することができる。
ここで、コンデンサセル21と筐体9の間に寄生する寄生コンデンサは、非金属のケースの面と筐体9の面が向かい合う部分で発生する寄生容量が最も大きくなる。そこで、図4に示すように、ケースの面と筐体9の面が向かい合う部分にのみ導体200を配し、この導体200と筐体9との間を抵抗器を介して接続しても同様の効果が得られる。
【0011】
図7は、本発明の他の実施形態を示す。本実施形態は、平滑コンデンサのケースが非金属(非導電性)の場合の別の例である。本実施形態では、平滑コンデンサ(ケースが非導電性)29の端子と筐体9の間をコンデンサ52,53および抵抗器50を介して接続した構成である。コンデンサセル21と筐体9との間に寄生する寄生コンデンサ22,23を含む寄生コンデンサ(図示せず)よりも容量の大きいコンデンサ52,53と抵抗器50を接続する。これにより、コンデンサ52,53および抵抗器50から構成されるバイパス回路が形成され、コンデンサセル21と筐体9の間に寄生する寄生コンデンサに流れる電流を抑制するとともに、抵抗器50の作用により、バイパス回路を構成するコンデンサ52,53と寄生インダクタンス(図示せず)との共振を抑制し、これにより、図3と同様の効果が得られる。
勿論、艤装スペースに十分な余裕があれば、筐体9と平滑コンデンサ29との間に距離をおいて設置し、寄生コンデンサを小さくすることも、また、寄生インダクタンスと寄生コンデンサとの共振および共振による漏洩電流の発生を抑制することができる。この場合、寄生インダクタンスをLと寄生コンデンサをCと配線の抵抗分をRとした場合に、
C<4L/R2
を満たすように、平滑コンデンサ29と筐体9との距離を確保すれば、寄生インダクタンスと寄生コンデンサの共振による振動成分を抑制することができる。これは、平滑コンデンサのケースが導電性の物質である場合にも有効である。
【0012】
以上の実施形態は、平滑コンデンサが電力変換回路の直流側に接続されている場合を例にとって説明したが、電力変換回路の交流側にコンデンサが接続される場合においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
図9は、本発明の他の実施形態を示す。本実施形態は、電力変換回路の交流側にコンデンサが接続される場合の例である。図9においては、電力変換回路1の発生するリプル成分を除去する目的で交流出力側にリアクトル101とコンデンサ102からなるフィルタ回路が設けてある。コンデンサが交流側に接続されている場合においても、スイッチングに伴う高調波成分は、コンデンサ102のケースと筐体9の間の寄生容量を介して漏れ電流が発生する。これを抑制するため、コンデンサ102のケースと筐体9の間を絶縁物104によって絶縁するとともに、コンデンサ102のケースと筐体9の間を抵抗器103を化して接続する。これにより、漏洩電流を抑制することができる。
【0013】
上述の実施形態においては、抵抗器を用いて漏洩電流を抑制しているが、抵抗器に流れる直流成分が無視できない場合には、抵抗器の容量を大きくする必要があり、装置の小型・軽量化の障害となるだけでなく、抵抗器によって消費される電力により電力変換装置の効率を低下させてしまう。このように、直流成分が無視できない場合には、抵抗器とコンデンサを直列接続し、抵抗器に流れる直流成分を除去する。これにより、上記の課題を解決することができる。
また、本発明は、電力変換装置の内部における電気機器の配置、接続の変更であるので、車両を構成する他の要素に影響を与えることなく、実施可能であり、比較的容易に実現可能である。
また、本発明は、交流電圧を入力とし、交流を整流して直流電圧を得るとともに、整流して得た直流電圧を電圧源とし、交流を得る交流車用の装置へも適用可能である。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、平滑コンデンサと筐体を絶縁し、平滑コンデンサのケースと筐体を抵抗器で接続することにより、平滑コンデンサ内部に寄生するコンデンサと寄生インダクタンス成分との共振を抑制することができ、高周波漏洩電流を抑制することができる。
また、電力変換回路の直流入力の負側の配線と筐体を抵抗器で接続することにより、電力変換装置の筐体電位が高周波的に安定となるから、電力変換装置から車体に漏れる高周波電流を抑制することができる。
電力変換回路の直流入力の負側の配線と筐体を接続する抵抗器を開放スイッチの負側に設置することにより、電力変換装置を構成する高圧機器の絶縁を試験する際、高圧電源から抵抗器を開放スイッチにより切り離すことができるので、低圧で安価な抵抗器を使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用電力変換装置の構成図
【図2】本発明におけるノイズに対する等価回路を示す図
【図3】本発明の他の実施形態を示す図
【図4】本発明の他の実施形態を示す図
【図5】従来例による電力変換装置の構成図
【図6】平滑コンデンサの等価回路を示す図
【図7】本発明の他の実施形態を示す図
【図8】電力変換装置の艤装状態を示す図
【図9】本発明の他の実施形態を示す図
【符号の説明】
1…電力変換回路、2…平滑コンデンサ(ケースが導電性)、3…短絡スイッチ、4…開放スイッチ、5…アース線、6…車体、7…主回路配線(プラス電源)、8…主回路配線(マイナス電源)、9…筐体、10…モータ線、11…等価ノイズ源、12…寄生コンデンサ、13…集電装置、14…遮断器、15…平滑リアクトル、18…車体アース、21…コンデンサセル、22,23…寄生コンデンサ、24…寄生コンデンサ、25…寄生インダクタンス、29…平滑コンデンサ(ケースが非導電性)、40…寄生インダクタンス、41…ノイズ伝播経路、44…寄生コンデンサ、50,51…抵抗器、500…絶縁板、200…導電性カバー、52,53…バイパスコンデンサ、101…リアクトル、102…コンデンサ、103…抵抗器、104…絶縁物
Claims (1)
- 少なくとも半導体から構成される電力変換回路と、前記電力変換回路の直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサに電力を供給する配線と、前記電力変換回路と前記平滑コンデンサと前記配線を内包する筐体から構成され、車体に艤装される車両用電力変換装置において、
前記平滑コンデンサのケースが非導電体であり、前記筐体と対面する前記非導電体のケースの面を導電物で被うとともに、前記導電物と前記筐体とを第一の減流要素を介して接続することを特徴とする車両用電力変換装置。
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