JP3873002B2 - 粘着テープおよび粘着テープ基材 - Google Patents

粘着テープおよび粘着テープ基材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性を有する粘着テープおよび当該粘着テープに使用する粘着テープ基材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリ塩化ビニル(以下、PVCと称す)からなるテープ基材(以下、単に基材とも称す)を使用した粘着テープは、機械的特性(特に柔軟性と伸長性)、難燃性、耐熱変形性、電気絶縁性等の点で優れ、さらに、比較的安価なことから、自動車、電車、バス等の車両の他、航空機、船舶、家屋、工場等の各分野における電気機器の絶縁テープに使用されてきた。特に、自動車等の電気配線に使用されるワイヤーハーネスや家電製品等のコイル、電線等を束ねて巻き付ける粘着テープには、高度の難燃性(酸素指数濃度が25%以上)および耐熱変形性が必要とされ、PVCを基材とした粘着テープはかかる要求を満たすものとして汎用されてきた。
【0003】
ところが、近年の環境意識の高まりの中で、PVCは焼却処理した場合のダイオキシンや塩素ガス等の有害ガスの発生原因の疑いから、使用を制限し、環境負荷が少ない材料への転換の動きがある。そこで、かかるPVCに替わるものとして、焼却処理をしてもダイオキシンの発生の可能性が少なく、また、塩素ガス等の有害ガスを発生しないポリオレフィン系樹脂を基材に用いることが検討されているが、ポリオレフィン系樹脂はPVCに比べて燃えやすいという欠点があることから、難燃剤の添加が必要となる。例えば、特公昭57−10898号公報には、環境負荷が少ない水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤を添加することが提案されている。
【0004】
しかしながら、粘着テープに必要な柔軟性と伸長性を考慮した場合、ポリオレフィン系樹脂として、比較的高融点のポリプロピレンや高密度ポリエチレン等は適切ではなく、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等の低融点のポリオレフィン系樹脂を使用しなければならず、かかる低融点のポリオレフィン系樹脂は柔軟で伸びやすいが熱変形しやすいという欠点がある。
【0005】
樹脂フィルムの耐熱変形性を向上させる方法として、例えば、フィルムに電離放射線を照射する方法や、樹脂中に予めジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等の架橋剤を添加しておき、成形されたフィルムに蒸気加熱等を施してフィルム中に架橋構造を生じせしめる方法等が知られている。しかしながら、これらの方法は、生産工程数が増え、製造コストが高くなるため、実用に供し難い。
また、別の方法として、比較的高融点であるポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、高密度ポリエチレン等と、エチレン系共重合体からなるエラストマー(例えば、EPM(エチレン−プロピレン共重合ゴム)、EBR(エチレン−ブテンゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)等)とを機械的にブレンドしたポリマー混合物を用いることも検討されてきたが、当該ポリマー混合物に無機系難燃剤を添加した場合、その成形品は室温雰囲気下では非常に硬くて柔軟性に欠けるものとなり、伸長性が著しく低下し、さらには耐熱変形性も十分に向上し得ない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような事情に鑑み、焼却処理時の燃焼による有毒ガスの発生がなく、優れた耐熱変形性及び難燃性を有する粘着テープ及び当該粘着テープに使用する粘着テープ基材を提供することを目的とする。
またさらに、優れた耐熱変形性及び難燃性に加え、テープの巻き付け作業に好適な優れた伸長性を有する粘着テープ及び当該粘着テープに使用する粘着テープ基材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、オレフィン系ポリマーとして、分子骨格中にカルボニル性の酸素原子を有する熱可塑性樹脂と、エチレン成分とプロピレン成分を含むポリマーアロイとを組み合わせて使用し、これらに無機系難燃剤を混合してテープ基材を構成することにより、高い難燃性を有しながらも、耐熱変形性及び伸長性に優れた粘着テープ基材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の特徴を有している。
【0008】
(1)下記A成分及びB成分からなるオレフィン系ポリマー100重量部当たり無機系難燃剤を20〜200重量部含んでなり、かつ、実質的にハロゲン原子を含まないとともに、その成形過程および/または成形後において架橋処理されていない粘着テープ基材であって、当該基材を用いた粘着テープの100℃における加熱変形率が40%以下で、かつ、引張速度300mm/分での破断伸度が150%以上であることを特徴とする粘着テープ基材。
A成分:分子骨格中にカルボニル性の酸素原子を有する軟質ポリオレフィン系樹脂
B成分:80℃における動的貯蔵弾性率(E ' )が40MPa以上、180MPa未満で、かつ、120℃における動的貯蔵弾性率(E ' )が12MPa以上、70MPa未満であり、さらに23℃における動的貯蔵弾性率 ( ' )が200MPa以上、400MPa未満である、エチレン成分とプロピレン成分を含むポリマーアロイ
)無機系難燃剤が金属水酸化物である上記(1)記載の粘着テープ基材
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の粘着テープは、オレフィン系ポリマーおよび無機系難燃剤を含み、かつ、実質的にハロゲン原子を含まないテープ基材の少なくとも片面に粘着剤層を設けてなるもので、100℃における粘着テープの加熱変形率が65%以下(好ましくは40%以下、特に好ましくは0%)を示す、また、当該65%以下の加熱変形率を示すとともに、引張速度300mm/分での粘着テープの破断伸度が150%以上(好ましくは170〜500%)を示すことを特徴としている。
【0010】
ここで、「テープ基材が実質的にハロゲン原子を含まない」とは、基材の構成材料として、分子中にハロゲン原子を含む物質を使用していないことを意味しており、例えば、機器分析手段によってテープ基材の組成分析をした場合に、極微量レベルで検出されるハロゲン原子(例えば、化合物(構成材料)の合成時に触媒として使用したハロゲン含有物質によるハロゲン原子が化合物(構成材料)中に混入した結果、基材から検出される極微量のハロゲン原子等)の含有等は許容される。
また、粘着テープの100℃における加熱変形率および引張速度300mm/分での破断伸度(%)はそれぞれ粘着テープの耐熱変形性と伸長性の指標として用いており、当該100℃における粘着テープの加熱変形率が65%以下を示すものは、実際の使用状態(対象物に粘着された状態)で十分な耐熱変形性を示し、また、当該引張速度300mm/分での粘着テープの破断伸度が150%以上を示すものは、実際の使用状態(対象物への粘着(巻き付け)作業時)において容易に引き伸ばすことができ、作業性良く当該粘着(巻き付け)作業を行うことができる。なお、かかる粘着テープの加熱変形率と破断伸度は以下の方法で測定した値である。
【0011】
〔加熱変形率測定方法〕
UL−510に準拠して行う。図1(a)に示すように、導体からなる直径(d)が2mm、長さ30mmの丸棒1の外周面に粘着テープTを巻き付けた試験体10を作成する。当該試験体10の常温での外径(D0 )をJIS B7503に規定のダイヤルゲージ、JIS B7507に規定のノギス、または、これらと同程度の測定精度を有する測定器で測定する。次に、当該試験体10を規定温度(100℃±1.0℃)に加熱した試験機に入れ、60分間加熱した後、試験体を図1(b)に示すように、直径9.5±0.2mmの円柱状の凸部2aを有する加圧板2と平行板3との間に設置し、板平面に対する垂直方向から加圧(4.9N)し、さらに規定温度(100℃±1.0℃)で60分間放置した後、そのままの状態で試験体の外径(D1 )を測定し、加熱前のテープの厚さ(t0 )、加熱後のテープの厚さ(t1 )を下記式(II)により計算し、さらに、下記式(III)により、加熱前のテープの厚さからの加熱後のテープの厚さの減少率(加熱変形率)(X)を算出する。
【0012】
t=(D−d)/2 (II)
(式中、Dは試験体の外径、dは丸棒の直径)
【0013】
X(%)={(t0 −t1 )/t0 }×100 (III)
(式中、t0 は加熱前の厚さ(mm)、t1 は加熱後の厚さ(mm))
【0014】
〔破断伸度測定方法〕
粘着テープ(厚さ0.2mmのテープ基材の片面に厚さ30μmの粘着剤層を設けたもの)から採取した試験片(幅19mm、長さ100mm)を、23℃、60%RHの雰囲気下、当該試験片の長さ方向の両末端(ここで長さ方向はテープ基材の成形流れ方向(MD方向)に充当している。)を保持して、万能引張圧縮試験機にて、引張速度:300mm/minで、当該試験片を長さ方向に引っ張って、破断伸度(%)を測定する。
【0015】
本発明において、テープ基材を構成するオレフィン系ポリマーは、これに十分な難燃性が得られる量の無機系難燃剤を混合した混合物が、粘着テープに目的の優れた耐熱変形性および伸長性を付与し得るものであれば、特に制限なく使用できるが、中でも、以下のA成分及びB成分を主体に構成されたものが好ましい。
A成分:分子骨格中にカルボニル性の酸素原子を有する熱可塑性樹脂
B成分:エチレン成分とプロピレン成分を含むポリマーアロイ
【0016】
A成分の分子骨格中にカルボニル性の酸素原子(カルボニル基に帰属する酸素原子)を有する熱可塑性樹脂は、主として無機系難燃剤による難燃性付与作用を活性化させるとともに、テープ基材(粘着テープ)に適度な柔軟性および良好な伸長性を与える成分であり、特に、分子骨格中にカルボニル性の酸素原子を有する軟質ポリオレフィン系樹脂等が好適である。当該分子骨格中にカルボニル性の酸素原子を有する軟質ポリオレフィン系樹脂としては、モノマーまたはコモノマーとして、ビニルエステル化合物および/またはα,β−不飽和カルボン酸若しくはその誘導体を用いてなるエチレン系共重合体またはその金属塩(アイオノマー)等が挙げられ、一般に融点が120℃以下、好ましくは40〜100℃である。ここで融点は示差走査熱量計(DSC)による測定値である。
【0017】
上記エチレン系共重合体またはその金属塩(アイオノマー)におけるビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルアルコール低級アルキルエステル等が挙げられる。また、α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物類;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の不飽和カルボン酸エステル類等が挙げられるが、これらのうち(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、特に好ましくはアクリル酸エチルである。
【0018】
エチレン系共重合体またはその金属塩(アイオノマー)の好適な具体例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸エチル共重合体およびこれらの金属塩(アイオノマー)等が挙げられ、これらは1種または2種以上が使用される。
【0019】
当該A成分の分子骨格中にカルボニル性の酸素原子を有する熱可塑性樹脂による無機系難燃剤の難燃性付与作用を活性化させる効果は、分子骨格中にカルボニル性の酸素原子をもたない熱可塑性樹脂では得られない。
【0020】
B成分のエチレン成分とプロピレン成分を含むポリマーアロイは、主としてテープ基材(粘着テープ)の熱変形を抑制するための成分であり、2種以上の重合体をアロイ化することによって、特にテープ基材(粘着テープ)の熱変形を抑制するに適した粘弾性を示すものとしたポリマーアロイである。
【0021】
ポリマーアロイの構成(形態)は、特に制限されず、例えば、▲1▼2種以上の重合体が物理的に混合されたポリマーブレンド(物理的混合物)、▲2▼2種以上の重合体が共有結合で結合したブロック共重合体やグラフト共重合体、▲3▼2種以上の重合体が互いに共有結合で結合されることなく絡み合ったIPN(Interpenetrating Polymer Network)構造体等、種々の構成(形態)のものが許容される。また、ポリマーアロイは組成的に必ずしも均一でなくてもよく(分布をもっていてもよく)、また、2種以上の重合体が相溶したもの(相溶性ポリマーアロイ)でも、2種以上の重合体が非相溶で相分離構造を形成しているもの(非相溶性ポリマーアロイ)でもよい。また、DSC測定による発熱または吸熱ピークを複数有するような熱特性を示すものでもよい。
【0022】
当該B成分のエチレン成分とプロピレン成分を含むポリマーアロイとしては、例えば、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン)とポリエチレン(エチレンと少量のα−オレフィンとの共重合体を含む)との物理的混合物、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレンとエチレンとこれら以外の他のα−オレフィンとの3元共重合体(他のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられ、1−ブテンが好ましい。)等が挙げられる。
ここで「ホモポリプロピレン」は実質的にポリプロピレン100%からなる重合体を意味し、「ランダムポリプロピレン」は数%のエチレン成分がランダムに共重合したものを意味する。
【0023】
ポリマーアロイが共重合体の場合は、2段以上の多段重合により重合された共重合体が好ましく、また、プロピレン/エチレン共重合体が好ましい。かかる2段以上の多段重合によって重合された共重合体は、具体的には、特開平4−224809号公報に記載されているように、例えば、チタン化合物および有機アルミニウム化合物触媒の存在下において、先ずプロピレン若しくはプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとを多段重合の第1段目で予備重合し、次いで、第2段目以降において、生成したチタン含有ポリオレフィンと有機アルミニウム化合物の存在下で、プロピレンとエチレンを共重合(必要に応じてプロピレンおよびエチレン以外の他のα−オレフィンをさらに追加して共重合)させることにより得られる。これにより、第1段目で生成するポリマー(例えば、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレン−α−オレフィン共重合体等)と、第2段目以降にて生成するポリマー(例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−他のα−オレフィン共重合体等)とが、第2段目以降の重合過程で分子レベルでブレンドされた共重合体となる。上記チタン化合物としては、例えば、三塩化チタンと塩化マグネシウムを共粉砕し、オルトチタン酸n−ブチル、2−エチル−ヘキサノール、p−トルイル酸エチル、四塩化ケイ素、フタル酸ジイソブチル等で処理した球状で平均粒子径15μmの固体触媒等が使用され、有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム等が使用される。なお、さらに重合層において、電子供与体としてジフェニルジメトキシシラン等のケイ素化合物を添加したり、ヨウ化エチル等のヨウ素化合物等を添加することもできる。
【0024】
当該B成分のエチレン成分とプロピレン成分を含むポリマーアロイは、高温度下で高弾性を示すもの、すなわち、粘着テープの使用時の温度を考慮して、その80℃における動的貯蔵弾性率(E')が40MPa以上、180MPa未満(好ましくは45〜160MPaの範囲内)を示し、かつ、120℃における動的貯蔵弾性率(E')が12MPa以上、70MPa未満(好ましくは15〜65MPaの範囲内)を示すものが好ましい。かかる動的貯蔵弾性率(E')を示すことで、テープ基材(粘着テープ)の熱変形は十分に抑制される。
ここでの動的貯蔵弾性率(E')は、ポリマーアロイによる試験片(厚み0.2mm:幅10mm、長さ20mm)を作成し、当該試験片の温度分散による動的粘弾性挙動を、測定機器としてDMS200(セイコーインスツルメンツ製、商品名)を用い、測定法:引っ張りモード、昇温速度:2℃/min、周波数:1Hzの測定条件で測定した値である。
【0025】
かかる動的貯蔵弾性率(E')を示すポリマーアロイの具体例としては、例えば、モンテル・エスディーケイ・サンライズ(株)製の商品名キャタロイKS−353P、キャタロイKS−021P、キャタロイC200F等が挙げられる。
【0026】
また、当該B成分のポリマーアロイは、室温付近での粘着テープの作業性(被粘着物への粘着テープの追従性)を考慮すると、その23℃における動的貯蔵弾性率(E')が200MPa以上、400MPa未満であるのが好ましい。当該B成分のポリマーアロイがかかる動的貯蔵弾性率(E')を有することで、テープ基材は良好な柔軟性を有し、被粘着物への追従性が向上する。ここでの動的貯蔵弾性率(E')は前記の方法で測定した値であり、また、かかる動的貯蔵弾性率(E')を示すポリマーアロイの具体例としては、例えば、モンテル・エスディーケイ・サンライズ(株)製の商品名キャタロイKS−353P、キャタロイKS−021P、キャタロイC200F等が挙げられる。
【0027】
A成分(分子骨格中にカルボニル性の酸素原子を有する熱可塑性樹脂)とB成分(エチレン成分とプロピレン成分を含むポリマーアロイ)の配合重量比(A:B)は通常1:9〜8:2、好ましくは2:8〜6:4である。かかる重量比を外れて、A成分が少ない場合(B成分が多い場合)は、テープ基材の伸長性および難燃性が低下するおそれがあり、A成分が多い場合(B成分が少ない場合)は、耐熱変形性が低下するおそれがある。
【0028】
本発明において、無機系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム−カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ドロマイト等の金属炭酸塩;ハイドロタルサイト、硼砂等の金属水和物(金属化合物の水和物);メタホウ酸バリウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。この中でも水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物や、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトからなる群から選ばれるものが、難燃性の付与効果に優れ、経済的にも有利である。
【0029】
当該無機系難燃剤の粒径は化合物の種類によっても異なるが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物においては、平均粒径が0.1〜50μm、好ましくは0.5〜20μm程度の粒径が適当である。ここでの粒径はレーザー回析法で測定した粒径である。
【0030】
無機系難燃剤の配合量は、オレフィン系ポリマー100重量部当たり通常20〜200重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。かかる範囲を外れて無機系難燃剤の配合量が少ない場合は、テープ基材(粘着テープ)に十分な難燃性を付与することが困難となり、多い場合は、テープ基材(粘着テープ)の柔軟性及び伸長性が低下する傾向を示す。
【0031】
また、無機系難燃剤のチャー(炭化層)を助成する目的で、赤リンを使用してもよい。赤リンの使用にあたっては、水分存在下で加熱しても有毒なホスフィンを発生させない手法(赤リン表面の安定化)として、赤リンを、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンより選ばれる金属水酸化物の被膜で被覆処理したものを使用したり、当該金属水酸化物の被膜の上にさらに熱硬化性樹脂(フェノール樹脂等)の被覆を設けて、二重に被覆処理したものを使用するのが好ましい。かかる赤リンを含むチャー形成助剤は、オレフィン系ポリマー100重量部当たり通常2〜10重量部、好ましくは4〜8重量部とするのが適当である。
【0032】
また、赤リンを含むチャー形成助剤を使用する場合、カーボンブラック、硼酸塩およびシリコーン化合物(シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジン等)から選ばれる少なくとも1種をさらに併用すれば、より好ましい結果を得ることができる。この場合、カーボンブラック、硼酸塩およびシリコーン化合物から選ばれる少なくとも1種は、オレフィン系ポリマー100重量部当たり通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%用いるのが適当である。
【0033】
本発明において、テープ基材は、オレフィン系ポリマーと無機系難燃剤とを必須成分として構成されるが、必要に応じて、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機質充填剤、アミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、フェノール系、リン系、亜リン酸エステル系等の老化防止剤や酸化防止剤、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系等の紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤等を配合してもよい。
【0034】
本発明において、テープ基材は、通常、ポリオレフィン系ポリマーと無機系難燃剤(および充填剤等の必要に応じて配合される材料)をドライブレンドし、当該混合物をバンバリーミキサー、ロール、押出機等を用いて混練し、当該混練物を圧縮成形、カレンダー成形、射出成形、押出成形等の公知の成形方法によりフィルムに成形することにより得られる。また、テープ基材(フィルム)の厚みは、粘着テープの用途によっても異なるが、一般に0.01〜1mm、好ましくは0.05〜0.5mmである。
【0035】
なお、本発明のテープ基材には、フィルムの成形後に電子線、β線、γ線等の電離放射線を照射する架橋処理や、フィルムの成形材料中に有機過酸化物等の架橋剤や架橋助剤を配合することによる成形過程での架橋処理は行わないのが好ましい。すなわち、架橋構造が基材全体に形成されていないものが好ましい。
【0036】
本発明の粘着テープは、上記テープ基材の少なくとも片面に粘着剤層を設けて構成される。粘着剤としては、ゴム系、ホットメルト系、アクリル系、エマルジョン系等の現存する全ての粘着剤を適用することができる。ゴム系、ホットメルト系粘着剤のベースポリマーとしては、天然ゴム、再生ゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレン、NBR、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体等が好ましい。
【0037】
また、粘着剤に使用されるタッキファイヤーとしては、例えばロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、脂肪族石油炭化水素(C5)系粘着付与剤、脂肪族石油炭化水素(C9)系粘着付与剤および水添化合物等が挙げられる。また、粘着テープの粘着剤に一般に添加されるオイル、ワックス、酸化防止剤等の添加剤を添加してもよい。これらを添加する場合の添加量は常法に従って決定される。
【0038】
前記粘着剤のうち、アクリル系粘着剤が好ましく、当該アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルまたは共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、オクチルエステル等)、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、主モノマーとしては、通常、そのホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度が−50℃以下となるアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0039】
粘着剤の塗布方法としては、従来公知の方法を使用でき、例えば、流延法、ロールコーター法、リバースコータ法、ドクターブレード法等が使用できる。
【0040】
粘着剤層の厚み(乾燥後の厚み)は、粘着テープの用途によっても異なるが、一般に10〜50μm、好ましくは15〜40μmである。
【0041】
本発明において、粘着テープは80℃での動的貯蔵弾性率(E')が25MPa以上で、120℃での貯蔵弾性率(E')が10MPa以上であるのが好ましい。かかる動的粘弾性を有することで、テープ基材(粘着テープ)は熱変形が極めて起こりにくくなる。なお、粘着テープに必要な適度な柔軟性と伸長性などの点から、80℃における動的貯蔵弾性率(E')は200MPa以下であるのが好ましく、120℃における動的貯蔵弾性率(E')は150MPa以下であるのが好ましい。
ここでの粘着テープの動的貯蔵弾性率(E')は厚み0.2mmのテープ基材に粘着剤層を設けた粘着テープから試験片(幅10mm、長さ20mm)を作成し、当該試験片の温度分散による動的粘弾性挙動を、測定機器としてDMS200(セイコーインスツルメンツ製、商品名)を用い、測定法:引っ張りモード、昇温速度:2℃/min、周波数:1Hzの測定条件で測定した値である。
【0042】
なお、粘着テープの動的貯蔵弾性率(E')は、粘着剤層がその値に殆ど影響せず(すなわち、粘着剤層を有する場合と、テープ基材のみの場合とで動的貯蔵弾性率(E')の値は変わらない。)、実質的にテープ基材の動的貯蔵弾性率(E')である。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例によってより詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
〔使用材料〕
A成分(分子骨格中にカルボニル性の酸素原子を有する熱可塑性樹脂)
A1:エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、融点84℃[商品名:エバフレックスP−1905、三井デュポンポリケミカル(株)製]
A2:エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、融点84℃[商品名:エバフレックスA−702、三井デュポンポリケミカル(株)製]
【0045】
B成分(エチレン成分とプロピレン成分を含むポリマーアロイ)
B1:キャタロイKS−353P(商品名)、モンテル・エスディーケイ・サンライズ(株)製
B2:キャタロイKS−021P(商品名)、モンテル・エスディーケイ・サンライズ(株)製
B3:キャタロイC200F(商品名)、モンテル・エスディーケイ・サンライズ(株)製
【0046】
上記B1〜B3の23℃、80℃、120℃での動的貯蔵弾性率は以下の通りである。
B1(23℃:210MPa、80℃:52MPa、120℃:21MPa)
B2(23℃:294MPa、80℃:125MPa、120℃:59MPa)
B3(23℃:303MPa、80℃:65MPa、120℃:20MPa)
【0047】
C成分(無機系難燃剤)
C1:水酸化マグネシウム(Mg(OH)2 )[商品名:マグシーズN−3 神島化学工業(株)製]
C2−1:赤リン[商品名:ヒシガードCP−A15 日本化学工業(株)製]
C2−2:赤リン[商品名:ノーバエクセルF5 燐化学工業(株)製]
C3:カーボンブラック[商品名:シースト3H 東海カーボン(株)製]
【0048】
〔テープ基材および粘着テープの作成法〕
上記A成分、B成分およびC成分の各材料をドライブレンドし、次いで、3L加圧ニーダーにて180℃で混練してペレット化する。当該組成物をTダイ押出機により0.2mmの厚さのフィルムに成形してテープ基材を作製し、当該テープ基材の片面にコロナ放電処理を施した後、下記の方法で調製したアクリル系粘着剤を塗布(厚さ30μm)して粘着テープを作製する。
【0049】
〔アクリル系粘着剤の調製方法〕
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器にトルエン溶媒中、アクリル酸2−エチルヘキシル100重量部、アクリル酸2重量部、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.2重量部を入れ、60℃で8時間反応させて、ポリマーを得た。このポリマー溶液に、ポリマー固形分100重量部に対してポリイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)を3重量部を添加してアクリル系粘着剤を調製した。
【0050】
(実施例1〜7)
A成分、B成分およびC成分を下記表1に示す材料および配合量とし、上記作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0051】
(比較例1)
A成分(A1:100重量部)を使用し、B成分およびC成分は使用せず、他は上記テープ基材(粘着テープ)の作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0052】
(比較例2)
A成分(A2:100重量部)を使用し、B成分およびC成分は使用せず、他は上記テープ基材(粘着テープ)の作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0053】
(比較例3)
B成分(B1:100重量部)を使用し、A成分およびC成分は使用せず、他は上記テープ基材(粘着テープ)の作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0054】
(比較例4)
A成分、B成分およびC成分は使用せず、ポリプロピレン(PP)[商品名:ノバテックFX3 日本ポリケム(株)製]100重量部を使用し、他は上記テープ基材(粘着テープ)の作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0055】
(比較例5)
A成分(A1:100重量部)とC成分(C1:50重量部)を使用し、B成分は使用せず、他は上記テープ基材(粘着テープ)の作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0056】
(比較例6)
A成分(A1:100重量部)とC成分(C1:100重量部)を使用し、B成分は使用せず、他は上記テープ基材(粘着テープ)の作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0057】
(比較例7)
A成分(A1:100重量部)とC成分(C1:105重量部、C2−1:5重量部)を使用し、B成分は使用せず、他は上記テープ基材(粘着テープ)の作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0058】
(比較例8)
A成分(A1:100重量部)、C成分(C1:50重量部、C2−2:4重量部、C3:2重量部)を使用し、B成分は使用せず、他は上記テープ基材(粘着テープ)の作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0059】
(比較例9)
A成分(A1:50重量部)、C成分(C1:100重量部、C3:2重量部)、ポリプロピレン(PP)[商品名:ノバテックFX3 日本ポリケム(株)製]15重量部、エチレン−プロピレンゴム(EPR)[商品名:SPO VO−141 住友化学工業(株)製]35重量部を使用し、B成分は使用せず、他は上記テープ基材(粘着テープ)の作成法に従ってテープ基材(粘着テープ)を作成した。
【0060】
〔評価試験〕
実施例1〜7および比較例1〜9の各テープ基材(粘着テープ)について以下の評価試験を行った。また、粘着テープの80℃、120℃での動的貯蔵弾性率(E')を前述の方法により測定した。
【0061】
難燃性の評価
前記テープ基材の作成時のプレス機で厚さ3mmのシートに成形した段階で、当該シートから試験片(寸法:長さ70mm、幅6.5mm)を採取し、この試験片をJIS K7201の酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法に準じて燃焼させ、試験片の燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、または着炎後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な最低の酸素流量とその時の窒素流量を流量計(装置名「キャンドル燃焼試験機」東洋精機(株)製)にて測定し、下記式(I)により酸素指数を求め、当該酸素指数で難燃性を評価した。25%以上を合格、25%未満を不合格とした。
【0062】
酸素指数(O.I.)={[O2 ]/([O2 ]+[N2 ])}×100 (I)
【0063】
(式中、[O2 ]は酸素の流量(l/min)、[N2 ]は窒素の流量(l/min)である。)
【0064】
耐熱変形性および伸長性の評価
耐熱変形性は前述の方法で粘着テープの加熱変形率を測定し、当該加熱変形率が65%以下を合格とした。また、伸長性は前述の方法で粘着テープの破断伸度を測定し、当該破断伸度が150%以上を合格とした。
【0065】
これらの評価結果と粘着テープの80℃、120℃での動的貯蔵弾性率(E')を下記表1に示す。
【0066】
【表1】
Figure 0003873002
【0067】
表中、A成分、B成分、C成分の配合量は重量部である。また、※は粘着テープ(基材)が溶融して動的貯蔵弾性率(E')を測定できなかったことを意味している。加熱変形率100%は粘着テープが溶融して丸棒から流れ落ちてテープとしての形態が保持し得なかったことを意味している。比較例4、9で使用したポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)は便宜上、B成分の欄に記載されている。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明によれば、粘着テープ基材が、オレフィン系ポリマーおよび無機系難燃剤を含み、かつ、実質的にハロゲン原子を含まないものであり、粘着テープの100℃における加熱変形率が65%以下、さらに引張速度300mm/分での破断伸度(%)が150%以上であることにより、無機系難燃剤を含有しながらも、適度な柔軟性と優れた伸長性および耐熱変形性を有し、しかも、高度の難燃性を示し、さらに焼却処理時にはダイオキシンやハロゲン系ガス等の有毒ガスの発生がない粘着テープを得ることができる。
当該粘着テープは、例えば、従来、自動車、電車、バス等の車両、航空機、船舶、家屋、工場等の各分野における電気機器の絶縁テープとして用いられてきたPVC基材を用いた粘着テープの代替えとして十分に使用でき、しかも、焼却時の有毒ガスの発生がないので、環境に対する負荷が少なく、その利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】粘着テープの加熱変形率の評価試験方法の説明図であり、(a)は試験体の側面図、(b)は試験装置の側面図である。
【符号の説明】
1 丸棒
2 加圧板
2a 凸部
3 平行板
10 試験体
T 粘着テープ

Claims (2)

  1. 下記A成分及びB成分からなるオレフィン系ポリマー100重量部当たり無機系難燃剤を20〜200重量部含んでなり、かつ、実質的にハロゲン原子を含まないとともに、その成形過程および/または成形後において架橋処理されていない粘着テープ基材であって、当該基材を用いた粘着テープの100℃における加熱変形率が40%以下で、かつ、引張速度300mm/分での破断伸度が150%以上であることを特徴とする粘着テープ基材。
    A成分:分子骨格中にカルボニル性の酸素原子を有する軟質ポリオレフィン系樹脂
    B成分:80℃における動的貯蔵弾性率(E')が40MPa以上、180MPa未満で、かつ、120℃における動的貯蔵弾性率(E')が12MPa以上、70MPa未満であり、さらに23℃における動的貯蔵弾性率 ( ' )が200MPa以上、400MPa未満である、エチレン成分とプロピレン成分を含むポリマーアロイ
  2. 無機系難燃剤が金属水酸化物である請求項1記載の粘着テープ基材。
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