JP3872889B2 - 身体組成推計装置及び身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents
身体組成推計装置及び身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、身体組成推計装置及び身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に係り、詳しくは、生体電気インピーダンス法に基づいて、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBWを推計するための身体組成推計装置及び身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
人間の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT等の精密な測定は、主として、二重エネルギX線吸収法(DXA:Dual energy X-ray Absorptiometry)等に代表されるX線を使用する測定装置を用いたり、あるいは水中体重法により行われるが、X線による測定では、装置が大がかりになる上、被曝の虞がある。また、水中体重法では、浴槽内に被験者が入らねばならず、大変煩雑である。
【0003】
そこで、無被爆下で取り扱える簡易な装置として、生体電気インピーダンス(Bioelectric Impedance)法を利用する身体組成推計装置が普及してきている。この生体電気インピーダンス法では、生体の電気特性が、組織又は臓器の種類によって著しく異なっており、例えば、ヒトの場合、血液の電気抵抗率は150Ω・cm前後であるのに対して、骨や脂肪の電気抵抗率は1〜5kΩ・cmもあることが、利用される。
生体電気インピーダンスは、生体中のイオンによって搬送される電流に対する生体の抵抗(レジスタンス)と、細胞膜、組織界面、あるいは非イオン化組織によって作り出される様々な種類の分極プロセスと関連したリアクタンスとから構成される。生体の組織を構成する細胞1,1,…は、図9に示すように、細胞膜2,2,…によって取り囲まれて成り立っており、この細胞膜2,2,…は、電気的には容量(キャパシタンス)の大きなコンデンサと見ることができる。したがって、生体電気インピーダンスは、図10に示すように、細胞外液抵抗1/Yeのみからなる細胞外液インピーダンスと、細胞内液抵抗1/Yiと細胞膜容量Cmとの直列接続からなる細胞内液インピーダンスとの並列合成インピーダンスと考えることができる。
【0004】
ところで、従来の身体組成推計装置では、手足の表面電極間に流すべき正弦波交流電流の周波数を、電気位相角φが最大になる時の周波数(特性周波数)である略50kHzに固定した状態で、被験者の生体電気インピーダンスを測定する構成となっているため、細胞外液抵抗1/Yeと、細胞内液抵抗1/Yiとを分離して求めることができず、細胞外液インピーダンスと細胞内液インピーダンスとの並列合成インピーダンスに基づいて、被験者の体水分分布や体脂肪の状態を推計していたため、除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等の推計精度が余り良くない、という欠点があった。
【0005】
そこで、この欠点を解消する手段として、マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して、この被験者の体の電気インピーダンスを測定することで、細胞外液抵抗1/Yeと、細胞内液抵抗1/Yiとを分離して求め、求められた細胞外液抵抗1/Yeと、細胞内液抵抗1/Yiとに基づいて、被験者の体水分分布や体脂肪の状態を推計する身体組成推計装置が提供されている(この出願人の出願に係る特願平8−176448号等参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のマルチ周数インピーダンス法によれば、単一周波数(50kHz)を用いたインピーダンス法に較べて明らかに推計精度の向上が認められ、除脂肪体重とDXAで測定したデータとの相関係数が0.9と高いものの、体重から除脂肪体重の差をとる体脂肪量の算出には、これでも不充分である、という問題があった。
【0007】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等の推計精度の向上を図ることのできる身体組成推計装置及び身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明に係る身体組成推計装置は、マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して該被験者の体の電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定手段と、上記電気インピーダンスに基づいて、上記被験者の体の細胞外液抵抗及び細胞内液低抗を算出する抵抗算出手段と、上記被験者の身長H及び体重Wを入力するための身長・体重入力手段と、式(8)を用いて、上記被験者の体の除脂肪重量LBMを推計する除脂肪重量推計手段とを備えてなることを特徴としている。
【0009】
【数8】
LBM=a1W+b1H2Ye+c1H2Yi+d1 (8)
LBM:被験者の体の除脂肪重量
W:被験者の体重
H:被験者の身長
Ye:細胞外液抵抗の逆数
Yi:細胞内液抵抗の逆数
a1,b1,c1,d1:定数
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の身体組成推計装置に係り、式(8)によって与えられた上記除脂肪重量LBMを上記被験者の体重Wから減ずることによって、上記被験者の体脂肪重量FATを算出する体脂肪重量算出手段を備えてなることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明に係る身体組成推計装置は、マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して該被験者の体の電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定手段と、上記電気インピーダンスに基づいて、上記被験者の体の細胞外液抵抗及び細胞内液抵抗を算出する抵抗算出手段と、上記被験者の身長H及び体重Wを入力するための身長・体重入力手段と、式(9)を用いて、上記被験者の体脂肪重量FATを推計する体脂肪重量推計手段とを備えてなることを特徴としている。
【0012】
【数9】
FAT=a2W+b2H2Ye+c2H2Yi+d2 (9)
FAT:被験者の体脂肪重量
W:被験者の体重
H:被験者の身長
Ye:細胞外液抵抗の逆数
Yi:細胞内液抵抗の逆数
a2,b2,c2,d2:定数
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の身体組成推計装置に係り、式(9)によって与えられた上記体脂肪重量FATを上記被験者の体重Wから減ずることによって、上記被験者の除脂肪重量LBMを算出する除脂肪重量算出手段を備えてなることを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1,2,3又は4記載の身体組成推計装置に係り、式(10)を用いて、上記被験者の体液量TBWを推計する体液量推計手段を備えてなることを特徴としている。
【0015】
【数10】
TBW=a3W+b3H2Ye+c3H2Yi+d3 (10)
TBW:被験者の体液量
W:被験者の体重
H:被験者の身長
Ye:細胞外液抵抗の逆数
Yi:細胞内液抵抗の逆数
a3,b3,c3,d3:定数
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記細胞外液抵抗の逆数Yeは、式(11)で与えられると共に、上記細胞内液抵抗の逆数Yiは、式(12)で与えられることを特徴としている。
【0017】
【数11】
Ye=Y(0) (11)
【0018】
【数12】
Yi=Y(∞)一Y(0) (12)
Y(0):周波数0時の生体電気アドミッタンス又はその外挿値
Y(∞):周波数無限大時の生体電気アドミッタンス又はその外挿値
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記生体電気インピーダンス測定手段は、上記被験者の体に投入される上記プローブ電流の各周波毎に、該被験者の体の生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスを測定し、測定された各周波毎の上記生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスに基づいて、最小二乗法の演算手法を駆使して、インピーダンス軌跡又はアドミッタンス軌跡を求め、求められた該インピーダンス軌跡又はアドミッタンス軌跡から、上記被験者の周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスの外挿値を算出すると共に、上記抵抗算出手段は、上記生体電気インピーダンス測定手段によって算出された被験者の周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスの外挿値に基づいて、上記被験者の体の細胞外液抵抗及び細胞内液抵抗を算出することを特徴としている。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段が付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、男女別に定められていることを特徴としている。
【0021】
請求項9記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記被験者の年令又は年代を入力するための年令入力手段が付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、年令別又は年代別に定められていることを特徴としている。
【0022】
請求項10記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段が付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、スポーツ選手、一般人の別に定められていることを特徴としている。
【0023】
請求項11記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段と、肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人、スポーツ選手、肥満者の別で定められていることを特徴としている。
【0024】
請求項12記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段と、肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められていることを特徴としている。
【0025】
請求項13記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、上記被験者の年令又は年代を入力するための年令入力手段と、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段と、肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別がさらに年令別又は年代別に定められていることを特徴としている。
【0026】
請求項14記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、式(13)を用いて、上記被験者の体脂肪率%FATを算出する体脂肪率算出手段と、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、少なくとも上記体脂肪率%FATを表示する表示手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められており、上記体脂肪率算出手段は、上記体脂肪率%FATを、一般人の場合、スポーツ選手の場合、肥満者の場合について算出し、算出結果を上記表示手段に表示することを特徴としている。
【0027】
【数13】
%FAT=100FAT/(FAT+LBM) (13)
%FAT:被験者の体脂肪率
FAT:被験者の体脂肪重量
LBM:被験者の体の除脂肪重量
【0028】
請求項15記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、式(14)を用いて、上記被験者の体格を表す指数BMIを算出し、その算出結果に基づいて上記被験者が肥満者か否かを判断する肥満判断手段と、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、上記被験者の運動習慣の有無を入力するための運動習慣入力手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められており、上記肥満判断手段の判断結果及び上記運動習慣入力手段の入力結果に基づいて、いずれか1の推計式が用いられることを特徴としている。
【0029】
【数14】
BMI=W/H2 (14)
BMI:被験者の体格を表す指数
W:被験者の体重
H:被験者の身長
【0030】
請求項16記載の発明は、コンピュータによって被験者の体の除脂肪重量LBM、体液量TBW、あるいは体脂肪重量FATを推計乃至算出するための身体組成推計プログラムを記録した記録媒体に係り、コンピュータを請求項1乃至15のいずれか1に記載の上記生体電気インピーダンス測定手段の一部、上記抵抗算出手段、上記除脂肪重量推計手段又は上記除脂肪重量算出手段、上記体脂肪重量推計手段又は上記体脂肪重量算出手段、上記体液量推計手段、上記体脂肪率算出手段、上記肥満判断手段として機能させるための身体組成推計プログラムを記録していることを特徴としている。
【0031】
【作用】
この発明の構成において、身長・体重入力手段は、被験者の身長H及び体重Wを入力する。生体電気インピーダンス測定手段は、マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して被験者の体の電気インピーダンスを測定する。また、抵抗算出手段は、生体電気インピーダンス測定手段によって測定された被験者の体の電気インピーダンスに基づいて、被験者の生体組織の細胞外液抵抗1/Yeと細胞内液抵抗1/Yiとを求める。そして、求められた細胞外液抵抗や細胞内液抵抗、及び入力された被験者の身長H及び体重Wに基づいて、請求項1記載の除脂肪重量推計手段は、被験者の体の除脂肪重量LBMを推計し、また、請求項3記載の体脂肪重量推計手段は、被験者の体脂肪重量FATを推計し、また、請求項5記載の体液量推計手段は、被験者の体液量TBWを推計する。
このように、この発明の構成によれば、細胞外液抵抗1/Yeと細胞内液抵抗1/Yiとを、確実に分離でき、しかも、細胞膜の容量成分を全く含まない上、被験者の身長Hのみならず、体重Wも考慮されるので、一段と正確な推計値を得ることができる。例えば、除脂肪重量LBMでは、DXAで測定したデータとの相関係数が、0.96に上昇する。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。説明は、実施例を用いて具体的に行う。
◇第1実施例
図1は、この発明の第1実施例である身体組成推計装置の電気的構成を示すブロック図、図2は、同装置の使用状態を模式的に示す模式図、図3は、人体のインピーダンス軌跡を示す図、図4は、組織内細胞の電気的等価回路図、図5は、周波数無限大時の組織内細胞の電気的等価回路図、図6は、同装置の動作処理手順を示すフローチャート、図7は、同動作を説明するためのタイミングチャート、また、図8は、同装置における表示器の別の表示例を示す図である。
この例の身体組成推計装置4は、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等を測定し、測定結果を表示する装置に係り、図1及び図2に示すように、被験者の体Eに測定信号としてマルチ周波数電流Ibを流すための信号出力回路5と、被験者の体Eを流れるマルチ周波数電流Ibを検出するための電流検出回路6と、被験者の手足間の電圧Vpを検出するための電圧検出回路7と、入力装置としてのキーボード8と、出力装置としての表示器9と、装置各部を制御すると共に、各種演算処理を行うCPU(中央処理装置)10と、CPU10の処理プログラムを記憶するROM11と、各種データを一時記憶するデータ領域及びCPU10の作業領域が設定されるRAM12と、測定時に被験者の手甲部Haや足甲部Leの皮膚表面に導電可能に貼り付けられる4個の表面電極Hp,Hc,Lp,Lcとから概略構成されている。
【0033】
まず、上記キーボード8は、被験者の身長や体重、測定時間等を入力するためのテンキーや機能キー、体液量測定モード又は体脂肪測定モードの一方を選択するモード選択キー、及び操作者(又は被験者)が測定開始/測定終了を指示するための開始/終了スイッチ等を有して構成されている。キーボード8から供給される操作データ及び身長・体重データは、図示せぬキーコード発生回路でキーコードに変換されてCPU10に供給される。CPU10は、コード入力された各種操作信号及び身長・体重データをRAM12のデータ領域に一時記憶する。
この例では、体脂肪測定モードにおいては、全測定期間Tf及び後述する測定信号Iaの掃引回数Nが入力される。また、体液量測定モードにおいては、全測定時間TW、測定間隔t、及び掃引回数Nが入力され、全測定時間TWは、例えば、透析をモニタするのに充分な時間を考慮して、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間、7時間の中から、また、測定間隔tは、10分、20分、30分の中から任意に選択できるようになっている。これにより、全測定時間TWの間、被験者の体液量TBWの経時変化が測定される。このように、与えられたいくつかの時間の中から選択する代わりに、操作者が、キーボード8を用いて自由に全測定時間TW又は測定間隔tを設定しても良い。
【0034】
上記信号出力回路5は、PIO(パラレル・インタフェース)51、測定信号発生器52及び出カバッファ53から構成されている。測定信号発生器52は、所定の掃引周期で、PIO51を介してCPU10から信号発生指示信号SGが供給されると、周波数が、例えば1kHz〜400kHzの範囲で、かつ、15kHzの周波数間隔で段階変化する測定信号(電流)Iaを、所定の掃引回数Nに亘って、繰り返し生成して、出力バッファ53に入力する。出力バッファ53は、入力される測定信号Iaを定電流状態に保ちながら、マルチ周波数電流Ibとして表面電極Hcに送出する。この表面電極Hcは、測定時、被験者の手甲部Haに導電可能に貼り付けられ、これにより、100〜800μAの範囲にあるマルチ周波数電流Ibが被験者の体Eを流れることになる。
なお、体液量測定モードにおいては、信号発生指示信号SGの供給周期は、操作者がキーボード8を用いて設定した測定間隔tに一致する。
【0035】
上記電流検出回路6は、I/V変換器(電流/電圧変換器)61、BPF(バンドパスフィルタ)62、A/D変換器63及びサンプリングメモリ64から概略構成されている。I/V変換器61は、被験者の体E、すなわち被験者の手甲部Ha(図2)に貼り付けられた表面電極Hcと足甲部Leに貼り付けられた表面電極Lcとの間を流れるマルチ周波数電流Ibを検出して電圧Vbに変換し、変換により得られた電圧VbをBPF62に供給する。BPF62は、入力された電圧Vbのうち、略1kHz〜800kHzの帯域の電圧信号のみを通して、A/D変換器63に供給する。
A/D変換器63は、CPU10が発行するデジタル変換指示に従って、アナログの入力電圧Vbをデジタルの電圧信号Vbに変換した後、デジタル化された電圧信号Vbを電流データVbとして、サンプリング周期毎、測定信号Iaの周波数毎にサンプリングメモリ64に格納する。また、サンプリングメモリ64は、SRAMから構成され、測定信号Iaの周波数毎に一時格納されたデジタルの電圧信号Vbを、CPU10の求めに応じて、CPU10に送出する。
【0036】
電圧検出回路7は、差動増幅器71、BPF(バンドパスフィルタ)72、A/D変換器73及びサンプリングメモリ74から構成されている。差動増幅器71は、被験者の体E、すなわち被験者の手甲部Haに貼り付けられた表面電極Hpと足甲部Leに貼り付けられた表面電極Lpとの間の電圧(電位差)を検出する。BPF72は、入力された電圧Vpのうち、略1kHz〜800kHzの帯域の電圧信号のみを通して、A/D変換器73に供給する。
A/D変換器73は、CPU10が発行するデジタル変換指示に従って、アナログの入力電圧Vpをデジタルの電圧信号Vpに変換した後、デジタル化された電圧信号VDを電圧データVDとして、サンプリング周期毎、測定信号Iaの周波数毎にサンプリングメモリ74に格納する。また、サンプリングメモリ74は、SRAMから構成され、測定信号Iaの周波数毎に一時格納されたデジタルの電圧信号Vpを、CPU10の求めに応じて、CPU10に送出する。
なお、CPU10は、2つのA/D変換器63,73に対して同一のタイミングでデジタル変換指示を行う。
【0037】
ROM11は、CPU10の処理プログラムとして、主プログラムの他、例えば、生体電気インピーダンス算出サブプログラム、インピーダンス軌跡算出サブプログラム、周波数0時インピーダンス決定サブプログラム、周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラム、細胞内液抵抗算出サブプログラム、除脂肪重量推計サブプログラム、体脂肪重量推計サブプログラム、体脂肪率推計サブプログラム、体液量推計サブプログラム、体液量−除脂肪重量比算出サブプログラム、体液量偏差算出サブプログラム等を格納する。また、ROM11には、予め統計的に処理された一般健常者の体の正常状態における体液量TBWSを、除脂肪重量LBMSで除した数値データも、正常体液量−除脂肪重量比(TBWS/LBMS)として予め設定登録されている。各種プログラムは、ROM11からCPU10に読み込まれ、CPU10の動作を制御する。なお、これらのサブプログラムを記録する記録媒体は、ROM11等の半導体メモリに限らず、FD(フロッピーディスク)やHD(ハードディスク)等の磁気ディスク、CD−ROM等の光ディスクに記録されていても良い。
【0038】
ここで、生体電気インピーダンス算出サブプログラムは、CPU10に、サンプリングメモリ64,74に記憶された周波数毎の電流データ及び電圧データを順次読み出させて、各周波数についての被験者の生体電気インピーダンスを算出させる。「従来の技術」欄で説明したように、細胞膜2,2,…は、容量の大きなコンデンサとみることができるため、外部から印加された電流は、周波数の低いときには、図9に実線A,A,…で示すように、細胞外液3のみを流れる。しかし、周波数が高くなるにつれて、細胞膜2,2,…を通って流れる電流が増え、周波数が非常に高くなると、同図に破線B,B,…で示すように、細胞1,1,…内を通って流れるようになる。
【0039】
インピーダンス軌跡算出サブプログラムには、CPU10に、生体電気インピーダンス算出サブプログラムの稼働により得られた各周波数についての被験者の生体電気インピーダンスに基づいて、最小二乗法の演算手法に従って、周波数0から周波数無限大までのインピーダンス軌跡を算出させる処理手順が書き込まれている。「従来の技術」欄では、人体の組織内細胞を単純な電気的等価回路(図10)で表したが、実際の人体の組織では、いろいろな大きさの細胞が不規則に配置されているので、実際の人体のインピーダンス軌跡は、図3に実線Dで示すように、中心が実軸より上がった円弧となり、電気的等価回路は、図4に示すように、時定数τ=Cmk/Yik(k=1,2,3,…)が分布している分布定数回路で表される。なお、同図において、1/Yeは細胞外液抵抗、1/Yikは各細胞の細胞内液抵抗、Cmkは各細胞の細胞膜容量を示す。
【0040】
周波数0時インピーダンス決定サブプログラム、周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラムには、それぞれ、CPU10に、インピーダンス軌跡算出サブプログラムの稼働により得られたインピーダンス軌跡に基づいて、それぞれ、周波数0時、無限大時の被験者の生体電気インピーダンスを決定させる手順が書き込まれている。
細胞内液抵抗算出サブプログラムには、CPU10に、周波数0時インピーダンス決定サブプログラム及び周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラムの稼働により得られた両インピーダンスに基づいて、細胞内液抵抗1/Yiを算出させる算出式(15)が記述されている。
周波数0では、測定される生体電気インピーダンス1/Y(0)は、細胞外液抵抗1/Yeと等価となるので、周波数0時インピーダンス決定サブプログラムにおいて得られたインピーダンス1/Y(0)が求めるべき細胞外液抵抗1/Yeとなる(式(16)参照)。また、周波数無限大では、図3に示すように、細胞膜が容量性能力を失い、測定される生体電気インピーダンス1/Y(∞)は、細胞内液抵抗1/Yiと細胞外液抵抗1/Yeとの合成抵抗と等価(図5)になる。したがって、周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンス1/Y(∞)から、細胞内液抵抗1/Yiが正確に算出される。
【0041】
【数15】
Yi=Y(∞)−Y(0) (15)
【0042】
【数16】
Ye=Y(0) (16)
【0043】
また、除脂肪重量推計サブプログラムには、CPU10に、周波数0時インピーダンス決定サブプログラムにより得られた細胞外液抵抗1/Ye、細胞内液抵抗算出サブプログラムにより得られた細胞内液抵抗1/Yi、キーボード8を介して入力された被験者の身長データHや体重データWに基づいて、被験者の除脂肪重量LBMを推計させるための推計式(17)が記述されている。
ここで、式(17)は、多数の被験者について予め標本調査を実施した結果得られた除脂肪重量LBMの重回帰式であり、定数a1,b1,c1,d1は、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求められたものである。説明変数に体重Wを付加することで、DXAで測定したデータとの相関係数が、0.96に上昇する。
【0044】
【数17】
LBM=a1W+b1H2Ye+c1H2Yi+d1 (17)
LBM:被験者の体の除脂肪重量[kg]
W:被験者の体重[kg]
H:被験者の身長[kg]
Ye:細胞外液拡抗の逆数[1/Ω]
Yi:抑胞内液拡抗の逆数[1/Ω]
a1,b1,C1,d1:定数
【0045】
また、体脂肪重量推計サブプログラムは、CPU10に、除脂肪重量LBMを被験者の体重Wから減算させることによって、被験者の体脂肪重量FATを算出させる。
【0046】
また、体脂肪率推計サブプログラムには、CPU10に、除脂肪重量推計サブプログラムにより得られた除脂肪重量LBMと、体脂肪重量推計サブプログラムにより得られた体脂肪重量FATとに基づいて、被験者の体脂肪率%FATを算出させるための手順(式(18))が記述されている。
【0047】
【数18】
%FAT=100FAT/(FAT+LBM) (18)
【0048】
また、体液量推計サブプログラムには、同じく、細胞外液抵抗1/Ye、細胞内液抵抗1/Yi、被験者の身長データHや体重データWに基づいて、被験者の体液量TBWを推計するための推計式(19)が記述されている。
ここで、式(19)は、多数の被験者について予め標本調査を実施した結果得られた体液量TBWの重回帰式であり、定数a3,b3,c3,d3は、DXAで測定した体液量TBWをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求められたものである。
【0049】
【数19】
TBW=a3W+b3H2Ye+c3H2Yi+d3 (19)
TBW:被験者の体液量[kg]
W:被験者の体重[kg]
H:被験者の身長[cm]
Ye:細胞外液抵抗の逆数[1/Ω]
Yi:細胞内液抵抗の逆数[1/Ω]
a3,b3,C3,d3:定数
【0050】
体液量−除脂肪重量比算出サブプログラムには、CPU10に、被験者の体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)を算出させる手順が記述されている。
また、体液量偏差算出サブプログラムには、被験者の体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)と正常体液量−除脂肪重量比(TBWS/LBMS)との差である体液量−除脂肪重量比偏差Δ(TBW/LBM)に除脂肪重量LBMを乗ずることで与えられる体液量偏差ΔTBW(式(20))を算出させる手順が記述されている。
【0051】
【数20】
ΔTBW=LBM((TBW/LBM)−(TBWS/LBMS)) (20)
【0052】
RAM12のデータ領域には、例えば、生体電気インピーダンス算出サブプログラム等により得られた被験者の生体電気インピーダンスを周波数毎に格納する生体電気インピーダンス記憶領域と、キーポード8を介して入力された被験者の身長・体重データ等を格納する身長・体重データ記憶領域と、体脂肪率推計サブプログラムにより得られた体脂肪率等の数値を記憶する体脂肪記憶領域等が設定される。
【0053】
CPU10は、ROM11に記憶された各種処理プログラムの制御により、RAM12を用いて、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等を推計する処理を順次実行する。
表示器9は、例えば、カラー表示が可能な液晶表示パネルからなり、キーボード8からの入カデータやCPU10の演算結果、例えば、体液量−除脂肪重量比に関するトレンドグラフや、体液量偏差、体脂肪率、インピーダンス軌跡(図8(a),(b)参照)、細胞外液抵抗、細胞内液抵抗、被験者の身長・体重等を表示する。
【0054】
次に、この例の動作について説明する。
まず、測定に先だって、図2に示すように、2個の表面電極Hc,Hpを被験者の手甲部Haに、2個の表面電極Lp,Lcを被験者の同じ側の足甲部Leにそれぞれ導電クリームを介して貼り付ける(このとき、表面電極Hc,Lcを、表面電極Hp,Lpよりも人体の中心から遠い部位に取り付ける)。上記構成の身体組成推計装置4を、例えば、透析時のモニタとして用いる場合には、操作者(又は被験者自身)が身体組成推計装置4のキーボード8を操作して、モード選択キーを操作して、体液量測定モードを設定し、さらに、被験者の身長H及び体重Wを入力すると共に、測定開始から測定終了までの全測定時間TWや測定間隔等t(図7)や掃引回数Nを設定する。この例では、全測定時間TWは、透析をモニタするのに充分な時間を考慮して、7時間が選択され、また、測定間隔tは、30分が選択されたとする。キーボード8から入力された身長H及び体重W等のデータや設定値は、RAM12に記憶される。
【0055】
次に、操作者(又は被験者自身)が、透析開始の時刻に合わせてキーボード8の開始/終了スイッチをオンにすると、これより、CPU10は、図6に示す処理の流れに従って、動作を開始する。まず、ステップSP10において、CPU10は、信号出力回路5の測定信号発生器52に、信号発生指示信号SGを発行する。測定信号発生器52は、CPU10から信号発生指示信号SGを受け取ると、駆動を開始して、全測定時間TWの間、所定の掃引周期で、周波数が、1kHz〜400kHzの範囲で、かつ、15kHzの周波数間隔で段階変化する測定信号Iaを繰り返し生成して、出力バッファ53に入力する。出カバッファ53は、入力される測定信号Iaを定電流状態(500〜800μAに範囲の一定値)に保ちながら、マルチ周波数電流Ibとして表面電極Hcに送出する。これにより、定電流のマルチ周波数電流Ibが、表面電極Hcから被験者の体Eを流れ、測定が開始される。
【0056】
マルチ周波数電流Ibが被験者の体Eに供給されると、電流検出回路6のI/V変換器61において、表面電極Hc,Lcが貼り付けられた手足間を流れるマルチ周波数電流Ibが検出され、アナログの電圧信号Vbに変換された後、BPF62に供給される。BPF62では、入力された電圧信号Vbの中から1kHz〜800kHzの帯域の電圧信号成分のみが通過を許されて、A/D変換器63へ供給される。A/D変換器63では、供給されたアナログの電圧信号Vbが、デジタルの電圧信号Vbに変換され、電流データVbとして、所定のサンプリング周期毎、測定信号Iaの周波数毎にサンプリングメモリ64に格納される。サンプリングメモリ64では、格納されたデジタルの電圧信号VbがCPU10の求めに応じて、CPU10に送出される。
一方、電圧検出回路7の差動増幅器71において、表面電極Hp,Lpが貼り付けられた手足間で生じた電圧Vpが検出され、BPF72に供給される。BPF72では、入力された電圧信号Vpの中から1kHz〜800kHzの帯域の電圧信号成分のみが通過を許されて、A/D変換器73へ供給される。A/D変換器73では、供給されたアナログの電圧信号Vpが、デジタルの電圧信号Vpに変換され、電圧データVpとして、所定のサンプリング周期毎、測定信号Iaの周波数毎にサンプリングメモリ74に格納される。サンプリングメモリ74では、格納されたデジタルの電圧信号VpがCPU10の求めに応じて、CPU10に送出される。CPU10は、プローブ電流Iaの掃引回数が、指定された掃引回数Nになるまで繰り返す。
【0057】
そして、掃引回数が指定の回数Nになると、CPU10は、測定を停止する制御を行った後、ステップSPllへ進み、これより、まず、生体電気インピーダンス算出サブプログラムを起動して、両サンプリングメモリ64,74に格納された周波数毎の電流データ及び電圧データを順次読み出して、各周波数についての被験者の生体電気インピーダンス(掃引回数N回の平均値)を算出する。なお、生体電気インピーダンスの算出には、その成分(抵抗及びリアクタンス)の算出も含まれる。次に、CPU10は、インピーダンス軌跡算出サブプログラムを起動して、生体電気インピーダンス算出サブプログラムにより得られた各周波数についての被験者の生体電気インピーダンス及びその成分(抵抗及びリアクタンス)に基づいて、最小二乗法を用いるカーブフィッティングの手法に従って、周波数0から周波数無限大までのインピーダンス軌跡を算出する。このようにして算出されたインピーダンス軌鉢は、図8(a),(b)に示すように、中心が実紬より上がった円弧となる。
【0058】
次に、CPU10は、周波数0時インピーダンス決定サブプログラム及び周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラムの制御に従って、インピーダンス軌跡算出サブプログラムにより得られたインピーダンス軌跡に基づいて、それぞれ、周波数0時及び無限大時の被験者の生体電気インピーダンスを求める。つまり、インピーダンス軌鉢の円弧が、図中X軸紬と交わる点が、それぞれ周波数OHzと無限大の時の生体電気インピーダンスになる。ここで、周波数0Hz時の生体電気インピーダンスが、求める細胞外液抵抗となる。次に、CPU10は、細胞内液抵抗算出サブプログラムに従って、周波数0時インピーダンス決定サブプログラム及び周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラムにより得られた両インピーダンスに基づいて、細胞内液抵抗を算出する。
【0059】
(a)体液量測定モード時
次に、ステップSP12へ進み、CPU10は、図示せぬモード設定フラグを見て、現在のモードが体液量測定モードであるか体脂肪測定モードであるかを確認する。いまは、操作者(又は被験者自身)によって、体液量測定モードが設定されているので、CPU10は、ステップSP13へ進み、まず、体液量推計サブプログラムの制御により、式(19)を用いて、被験者の体液量TBWを推計する処理を実行する。次に、CPU10は、除脂肪重量推計サブプログラムの制御により、式(17)を用いて、被験者の除脂肪重量LBMを推計し、この後、体液量−除脂肪重量比算出サブプログラムの制御により、体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)を算出し、最後に、体液量偏差算出サブプログラムの制御により、式(20)を用いて、被験者の現在の体液量偏差△TBWを算出する。
【0060】
上述の一連の算出処理が完了すると、CPU10は、算出された被験者の体液量TBW、除脂肪重量LBM、体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)、体液量偏差△TBW等を測定時点における測定結果としてRAM12に記憶すると共に、ステップSP14へ進み、表示器9に画面表示されたトレンドグラフ(透析開始からの経過時間を横軸とし、体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)の各値を縦軸とする折れ線グラフ)上に体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)の値をプロットし、また、体液量偏差△TBW、体液量TBW、除脂肪重量LBMを現在のデータとして画面表示する。
【0061】
この後、ステップSPl5へ進み、CPU10は、全測定時間TW(図7)が経過したか否かを判断する。この判断において、全測定時間TW(この例では、7時間)が経過したとの結論が得られれば、以後の測定処理を終了するが、いま、最初の測定が終了したばかりなので、全測定時間TWがいまだ経過していないと判断され、ステップSP16へ進み、測定間隔に相当する時間t(同図)が経過するのを待つ。なお、この待ち時間の間も、表示器9のトレンドグラフ画面は、表示されている。そして、測定間隔に相当する時間t(この例では、30分)が経過すると、ステップSP10へ戻り、2回目の測定を開始する。そして、上述の処理を、全測定時間TWが経過するまで、すなわち、透析終了時まで繰り返す。
【0062】
(b)体脂肪測定モード時
一方、被験者が除脂肪重量LBM、体脂肪重量FAT、体脂肪率%FAT等の測定を希望する場合には、まず、測定に先だって、操作者(又は被験者自身)が身体組成推計装置4のキーボード8を操作して、モード選択キーを操作して、体脂肪測定モードを設定し、さらに、被験者の身長H及び体重Wを入力すると共に、全測定時間Tf、及び掃引回数Nを設定する。次に、キーポード8の開始/終了スイッチを押下すると、これより、CPU10は、上述した測定演算処理(ステップSPl0及びステップSPll)を実行する。そして、ステップSP12へ進み、CPU10は、モード設定フラグを見て、現在のモードが体液量測定モードであるか体脂肪測定モードであるかを調べる。
今度は、体脂肪測定モードが選択されているので、ステップSP17へ進み、CPU10は、除脂肪重量推計サブプログラムの制御により、式(17)を用いて、被験者の除脂肪重量LBMを推計する。次に、CPU10は、体脂肪重量推計サブプログラムの制御により、被験者の体脂肪重量FATを推計し、次いで、体脂肪率推計サブプログラムの制御により、式(18)を用いて、体脂肪率%FATを算出する。
【0063】
上述の一連の算出処理が完了すると、算出された被験者の除脂肪重量LBM、体脂肪重量FAT、体脂肪率%FAT等をRAM12に記憶すると共に、ステップSP18において、図8に示すように、被験者の除脂肪重量LBM、体脂肪重量FAT、体脂肪率%FAT等、インピーダンス軌跡、細胞外液抵抗、被験者の身長・体重等を表示器9に表示させる。そして、当該一連の処理を終了する。
【0064】
このように、上記構成によれば、細胞外液抵抗1/Yeと細胞内液抵抗1/Yiとを、互いに確実に分離でき、しかも、細胞膜の容量成分を全く含まない上、被験者の身長Hのみならず、体重Wも考慮されるので、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等について、一段と正確な推計値を得ることができる。例えば、除脂肪重量LBMでは、DXAで測定したデータとの相関係数が、0.96に上昇する。
また、インピーダンス軌跡算出サブプログラムにより、最小二乗法の演算手法を駆使して、インピーダンス軌跡を求め、求められた軌跡から、周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンスを求め、求められた生体電気インピーダンスに基づいて、細胞外液抵抗及び細胞内液抵抗を算出するので、高周波投入時の浮遊容量や外来ノイズの影響を回避でき、また、人体への直流の直接投入を回避できる。それゆえ、測定精度が向上する。
【0065】
◇第2実施例
次に、この発明の第2実施例について説明する。
この第2実施例の構成が、上述の第1実施例のそれと大きく異なるところは、上述の第1実施例では、まず、除脂肪重量LBMを求め、求めた除脂肪重量LBMを被験者の体重Wから減ずることで、被験者の体脂肪重量FATを算出するようにしたが、この第2実施例では、まず、被験者の体脂肪重量FATを算出し、算出された脂肪重量FATを被験者の体重Wから減ずることで、被験者の体の除脂肪重量LBMを算出するようにした点である。
すなわち、この例では、式(21)で与えられる推計式を用いて、被験者の体脂肪重量FATが算出される。
ここで、式(21)は、多数の被験者について予め標本調査を実施した結果得られた体脂肪重量FATの重回帰式であり、定数a2,b2,c2,d2は、DXAで測定した体脂肪重量FATをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求められたものである。
【0066】
【数21】
FAT=a2W+b2H2Ye+c2H2Yi+d2 (21)
FAT:被験者の体脂肪重量[kg]
W:被験者の体重[kg]
H:被験者の身長[cm]
Ye:細胞外液抵抗の逆数[1/Ω]
Yi:細胞内液抵抗の逆数[1/Ω]
a2,b2,C2,d2:定数
【0067】
このように、この第2実施例によっても、第1実施例で述べたと略同様の効果を得ることができる。
【0068】
◇第3実施例
次に、この発明の第3実施例について説明する。
この第3実施例では、被験者の除脂肪重量LBMを与える推計式(17)の定数a1,b1,c1,d1、及び体液量TBWを与える推計式(19)の定数a3,b3,c3,d3が、それぞれ、男女別に定められており、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能が付加されている点で、上述の第1実施例と相違している。
この第3実施例の構成によれば、男女間の特徴が考慮されるので、除脂肪重量LBM及び体液量TBWの推計精度が一段と向上する。
【0069】
なお、上述の第2実施例の変形例として、被験者の体脂肪重量FATを与える式(21)の定数a2,b2,c2,d2についても、男女別に定められており、体脂肪重量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能を付加するようにすれば、上述の第3実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0070】
◇第4実施例
次に、この発明の第4実施例について説明する。
この第4実施例では、被験者の除脂肪重量LBMを与える推計式(17)の定数a1,b1,c1,d1、及び体液量TBWを与える推計式(19)の定数a3,b3,c3,d3が、それぞれ、年令別又は年代別に定められており、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の年令又は年代を入力するための年令入力機能が付加されている点で、上述の第1実施例と相違している。この第4実施例の構成によれば、年令又は年代が考慮されるので、特に、子供や高齢者にとって、除脂肪重量LBM及び体液量TBWの推計精度が一段と向上する。
【0071】
なお、第2実施例の別の変形例として、被験者の体脂肪重量FATを与える式(21)の定数a2,b2,c2,d2についても、年令別又は年代別に定められており、体脂肪重量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の年令又は年代を入力するための年令入力機能を付加するようにすれば、第4実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0072】
◇第5実施例
次に、この発明の第5実施例について説明する。
この第5実施例では、被験者の除脂肪重量LBMを与える推計式(17)の定数a1,b1,c1,d1、及び体液量TBWを与える推計式(19)の定数a3,b3,c3,d3が、それぞれ、スポーツ選手/一般人別に定められており、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力機能が付加されている点で、上述の第1実施例と相違している。
ここで、スポーツ選手に適用される式(17)は、多数の被験者(大学の運動部員)について予め標本調査を実施した結果得られた除脂肪重量LBMの重回帰式であり、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって、a1=0.308±20%,b1=0.332±20%,c1=0.185±20%に設定される。なお、d1は、式(17)の左辺(LBM)の平均値と、式(17)の右辺の第1項から第3項までの和(a1W+b1H2Ye+c1H2Yi)の平均値との差として求められる。
この第5実施例の構成によれば、スポーツ選手であるか否かが考慮されるので、スポーツ選手にとって、除脂肪重量LBM及び体液量TBWの推計精度が一段と向上する。
【0073】
なお、第2実施例のさらに別の変形例として、被験者の体脂肪重量FATを与える式(21)の定数a2,b2,c2,d2についても、スポーツ選手/一般人別に定められており、体脂肪重量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力機能を付加するようにすれば、上述の第5実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0074】
◇第6実施例
次に、この発明の第6実施例について説明する。
この第6実施例では、被験者の除脂肪重量LBMを与える推計式(17)の定数a1,b1,c1,d1、及び体液量TBWを与える推計式(19)の定数a3,b3,c3,d3が、それぞれ、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性で別々に定められており、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力機能及び肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力機能が付加されている点で、上述の第1実施例と相違している。ここで、肥満者について推計式(17)及び(19)を別個に定めるのは、成人肥満者の場合、肥満度が増加すると共に細胞外液量が増加する傾向にあるので、それを考慮しなければ、正確に除脂肪重量LBM及び体液量TBWを推計できないからである。
スポーツ選手に適用される式(17)は、例えば、男女共通で、上記した第5実施例と同様、多数の被験者(大学の運動部員)について予め標本調査を実施した結果得られた除脂肪重量LBMの重回帰式であり、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって、a1=0.308±20%,b1=0.332±20%,c1=0.185±20%に設定される。なお、d1は、式(17)の左辺(LBM)の平均値と、式(17)の右辺の第1項から第3項までの和(a1W+b1H2Ye+c1H2Yi)の平均値との差として求められる。
また、肥満女性に適用される式(17)は、多数の被験者(具体的には、DXAで測定した体脂肪率が30%以上の成人女性)について予め標本調査を実施した結果得られた除脂肪重量LBMの重回帰式であり、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって、a1=0.194±20%,b1=0.241±20%,c1=0.235±20%に設定される。なお、d1は、式(17)の左辺(LBM)の平均値と、式(17)の右辺の第1項から第3項までの和(a1W+b1H2Ye+c1H2Yi)の平均値との差として求められる。
このように、この第6実施例の構成によれば、男女間の特徴、スポーツ選手であるか否か及び肥満者であるか否かが考慮されるので、身体組成の異なる人でも、除脂肪重量LBM、体液量TBW、あるいは体脂肪率%FATの推計精度が一段と向上する。この場合、男女を区別せず、一般人、スポーツ選手、肥満者の推計式を定めるようにしても良い。
【0075】
また、この第6実施例の変形例として、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能だけを付加し、上記一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性及び肥満者女性別の推計式に基づいて除脂肪重量LBM及び体液量TBWを求めて、その結果およびその結果から得られる体脂肪率%FAT等を、一般人の場合、スポーツ選手の場合、肥満者の場合の3通り表示器9に表示するようにしても良い。
この構成によれば、被験者は、自身の運動習慣の有無や程度によって自分の適正な体脂肪率%FAT等を判断できる。
【0076】
さらに、この第6実施例の別の変形例として、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能及び運動習慣の有無を入力するための運動習慣入力機能を付加すると共に、被験者が肥満者であるか否かを判断するために、式(22)で表される体格を表す指数BMI(Body Mass Index)に基づいて被験者が肥満者(例えば、指数BMIが25以上)であるか否かを判断し、肥満者と判断された場合には、肥満者の推計式を用いるようにしても良い。なお、運動習慣がある場合には、スポーツ選手の推計式を用いる。
【0077】
【数22】
BMI=W/H2 (22)
BMI:被験者の体格を表す指数
W:被験者の体重[kg]
H:被験者の身長[m]
【0078】
なお、第2実施例のさらに別の変形例として、被験者の体脂肪重量FATを与える式(21)の定数a2,b2,c2,d2についても、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められており、体脂肪重量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力機能及び肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力機能を付加するようにすれば、上述の第6実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0079】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、各種身体組成推計式の回帰係数等の数値は、上述の実施例のものに限定されない。
また、上述の実施例では、4個の表面電極Hc,Hp,Lc,Lpのうち、2個の表面電極Hc,Hpを被験者Eの手甲部Haに、残り2個の表面電極Lc,Lpを被験者Eの足甲部Leに、貼り付けるようにしたが、これに限らず、例えば、4個とも片足に取り付けるようにしても良い。
また、測定信号(電流)Iaの周波数範囲は、1kHz〜400kHzに限定されない。同様に、周波数の数も複数である限り任意である。また、生体電気インピーダンスを算出する代わりに、生体電気アドミッタンスを算出するようにしても良く、これに伴い、インピーダンス軌跡を算出する代わりに、アドミッタンス軌跡を算出するようにしても良い。
また、上述の実施例では、最小二乗法によるカーブフィッティングの手法を用いて、周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンスを求めるようにしたが、これに限らず、浮遊容量や外来ノイズの影響を他の手段により回避できる場合には、例えば、2周波数(5kHz以下の低周波と、200kHz以上の高周波)の測定信号を生成して被験者に投入し、被験者の体の低周波時の生体電気インピーダンスを周波数0時の生体電気インピーダンスとみなすと共に、被験者の体の高周波時の生体電気インピーダンスを周波数無限大時の生体電気インピーダンスとみなすようにしても良い。
【0080】
また、上述の各実施例では、定数a1,b1,c1,d1を、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求めたが、これに限らず、例えば、水中体重法で測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求めても良い。定数a2,b2,c2,d2、定数a3,b3,c3,d3についても、同様である。
さらに、上述の各実施例の構成を適宜組み合わせた構成にしても良い。例えば、第4実施例の構成と第6実施例の構成とを組み合わせて、被験者の年令又は年代、男性か女性か、運動習慣があるか否か、肥満者か否か、あるいはやせ型かなどの各要素を加味した推計式の各定数を定めて、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶すると共に、キーボード8に右各要素を入力するための入力機能を付加するように構成しても良い。このような構成によれば、どのような身体組成の人でも、正確な除脂肪重量LBM、体液量TBW、あるいは体脂肪率%FATを得ることができる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の構成によれば、細胞外液抵抗1/Yeと細胞内液抵抗1/Yiとを、完全に分離でき、しかも、細胞膜の容量成分を全く含まない上、被験者の身長Hのみならず、体重Wも考慮されるので、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等について、一段と正確な推計値を簡便に得ることができる。例えば、除脂肪重量LBMでは、DXAで測定したデータとの相関係数が、0.96に上昇する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例である身体組成推計装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】同身体組成推計装置の使用状態を模式的に示す模式図である。
【図3】人体のインピーダンス軌跡を示す図である。
【図4】組織内細胞の電気的等価回路図である。
【図5】周波数無限大時の組織内細胞の電気的等価回路図である。
【図6】同身体組成推計装置の動作処理手順を示すフローチャートである。
【図7】同身体組成推計装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】同身体組成推計装置における表示器の別の表示例を示す図である。
【図9】人体の組織内細胞を模式的に示す模式図である。
【図10】組織内細胞の電気的等価回路図である。
【符号の説明】
4 身体組成推計装置
5 信号出力回路(生体電気インピーダンス測定手段の一部)
52 測定信号発生器
53 出力バッファ
6 電流検出回路(生体電気インピーダンス測定手段の一部)
61 I/V変換器
62 BPF
63 A/D変換器
64 サンプリングメモリ
7 電圧検出回略(生体電気インピーダンス測定手段の一部)
71 差動増幅器
72 BPF
73 A/D変換器
74 サンプリングメモリ
8 キーボード(身長・体重入力手段、性別入力手段、年令入力手段、スポーツ選手入力手段、肥満者入力手段、運動習慣入力手段)
9 表示器(表示手段)
10 CPU(生体電気インピーダンス測定手段の一部、抵抗算出手段、除脂肪重量推計手段、体脂肪重量算出手段、体脂肪重量推計手段、体液量推計手段、体脂肪率算出手段、肥満判断手段)
11 ROM(身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体)
12 RAM
Hc,Hp,Lc,Lp 表面電極
E 被験者の体
Ha 被験者の手甲部
Le 被験者の足甲部
Ia 測定信号
Ib マルチ周波数電流(マルチ周波のプローブ電流)
Vp 被験者の手足間の電圧
【発明の属する技術分野】
この発明は、身体組成推計装置及び身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に係り、詳しくは、生体電気インピーダンス法に基づいて、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBWを推計するための身体組成推計装置及び身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
人間の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT等の精密な測定は、主として、二重エネルギX線吸収法(DXA:Dual energy X-ray Absorptiometry)等に代表されるX線を使用する測定装置を用いたり、あるいは水中体重法により行われるが、X線による測定では、装置が大がかりになる上、被曝の虞がある。また、水中体重法では、浴槽内に被験者が入らねばならず、大変煩雑である。
【0003】
そこで、無被爆下で取り扱える簡易な装置として、生体電気インピーダンス(Bioelectric Impedance)法を利用する身体組成推計装置が普及してきている。この生体電気インピーダンス法では、生体の電気特性が、組織又は臓器の種類によって著しく異なっており、例えば、ヒトの場合、血液の電気抵抗率は150Ω・cm前後であるのに対して、骨や脂肪の電気抵抗率は1〜5kΩ・cmもあることが、利用される。
生体電気インピーダンスは、生体中のイオンによって搬送される電流に対する生体の抵抗(レジスタンス)と、細胞膜、組織界面、あるいは非イオン化組織によって作り出される様々な種類の分極プロセスと関連したリアクタンスとから構成される。生体の組織を構成する細胞1,1,…は、図9に示すように、細胞膜2,2,…によって取り囲まれて成り立っており、この細胞膜2,2,…は、電気的には容量(キャパシタンス)の大きなコンデンサと見ることができる。したがって、生体電気インピーダンスは、図10に示すように、細胞外液抵抗1/Yeのみからなる細胞外液インピーダンスと、細胞内液抵抗1/Yiと細胞膜容量Cmとの直列接続からなる細胞内液インピーダンスとの並列合成インピーダンスと考えることができる。
【0004】
ところで、従来の身体組成推計装置では、手足の表面電極間に流すべき正弦波交流電流の周波数を、電気位相角φが最大になる時の周波数(特性周波数)である略50kHzに固定した状態で、被験者の生体電気インピーダンスを測定する構成となっているため、細胞外液抵抗1/Yeと、細胞内液抵抗1/Yiとを分離して求めることができず、細胞外液インピーダンスと細胞内液インピーダンスとの並列合成インピーダンスに基づいて、被験者の体水分分布や体脂肪の状態を推計していたため、除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等の推計精度が余り良くない、という欠点があった。
【0005】
そこで、この欠点を解消する手段として、マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して、この被験者の体の電気インピーダンスを測定することで、細胞外液抵抗1/Yeと、細胞内液抵抗1/Yiとを分離して求め、求められた細胞外液抵抗1/Yeと、細胞内液抵抗1/Yiとに基づいて、被験者の体水分分布や体脂肪の状態を推計する身体組成推計装置が提供されている(この出願人の出願に係る特願平8−176448号等参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のマルチ周数インピーダンス法によれば、単一周波数(50kHz)を用いたインピーダンス法に較べて明らかに推計精度の向上が認められ、除脂肪体重とDXAで測定したデータとの相関係数が0.9と高いものの、体重から除脂肪体重の差をとる体脂肪量の算出には、これでも不充分である、という問題があった。
【0007】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等の推計精度の向上を図ることのできる身体組成推計装置及び身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明に係る身体組成推計装置は、マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して該被験者の体の電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定手段と、上記電気インピーダンスに基づいて、上記被験者の体の細胞外液抵抗及び細胞内液低抗を算出する抵抗算出手段と、上記被験者の身長H及び体重Wを入力するための身長・体重入力手段と、式(8)を用いて、上記被験者の体の除脂肪重量LBMを推計する除脂肪重量推計手段とを備えてなることを特徴としている。
【0009】
【数8】
LBM=a1W+b1H2Ye+c1H2Yi+d1 (8)
LBM:被験者の体の除脂肪重量
W:被験者の体重
H:被験者の身長
Ye:細胞外液抵抗の逆数
Yi:細胞内液抵抗の逆数
a1,b1,c1,d1:定数
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の身体組成推計装置に係り、式(8)によって与えられた上記除脂肪重量LBMを上記被験者の体重Wから減ずることによって、上記被験者の体脂肪重量FATを算出する体脂肪重量算出手段を備えてなることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明に係る身体組成推計装置は、マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して該被験者の体の電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定手段と、上記電気インピーダンスに基づいて、上記被験者の体の細胞外液抵抗及び細胞内液抵抗を算出する抵抗算出手段と、上記被験者の身長H及び体重Wを入力するための身長・体重入力手段と、式(9)を用いて、上記被験者の体脂肪重量FATを推計する体脂肪重量推計手段とを備えてなることを特徴としている。
【0012】
【数9】
FAT=a2W+b2H2Ye+c2H2Yi+d2 (9)
FAT:被験者の体脂肪重量
W:被験者の体重
H:被験者の身長
Ye:細胞外液抵抗の逆数
Yi:細胞内液抵抗の逆数
a2,b2,c2,d2:定数
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の身体組成推計装置に係り、式(9)によって与えられた上記体脂肪重量FATを上記被験者の体重Wから減ずることによって、上記被験者の除脂肪重量LBMを算出する除脂肪重量算出手段を備えてなることを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1,2,3又は4記載の身体組成推計装置に係り、式(10)を用いて、上記被験者の体液量TBWを推計する体液量推計手段を備えてなることを特徴としている。
【0015】
【数10】
TBW=a3W+b3H2Ye+c3H2Yi+d3 (10)
TBW:被験者の体液量
W:被験者の体重
H:被験者の身長
Ye:細胞外液抵抗の逆数
Yi:細胞内液抵抗の逆数
a3,b3,c3,d3:定数
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記細胞外液抵抗の逆数Yeは、式(11)で与えられると共に、上記細胞内液抵抗の逆数Yiは、式(12)で与えられることを特徴としている。
【0017】
【数11】
Ye=Y(0) (11)
【0018】
【数12】
Yi=Y(∞)一Y(0) (12)
Y(0):周波数0時の生体電気アドミッタンス又はその外挿値
Y(∞):周波数無限大時の生体電気アドミッタンス又はその外挿値
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記生体電気インピーダンス測定手段は、上記被験者の体に投入される上記プローブ電流の各周波毎に、該被験者の体の生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスを測定し、測定された各周波毎の上記生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスに基づいて、最小二乗法の演算手法を駆使して、インピーダンス軌跡又はアドミッタンス軌跡を求め、求められた該インピーダンス軌跡又はアドミッタンス軌跡から、上記被験者の周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスの外挿値を算出すると共に、上記抵抗算出手段は、上記生体電気インピーダンス測定手段によって算出された被験者の周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスの外挿値に基づいて、上記被験者の体の細胞外液抵抗及び細胞内液抵抗を算出することを特徴としている。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段が付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、男女別に定められていることを特徴としている。
【0021】
請求項9記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記被験者の年令又は年代を入力するための年令入力手段が付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、年令別又は年代別に定められていることを特徴としている。
【0022】
請求項10記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段が付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、スポーツ選手、一般人の別に定められていることを特徴としている。
【0023】
請求項11記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段と、肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人、スポーツ選手、肥満者の別で定められていることを特徴としている。
【0024】
請求項12記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段と、肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められていることを特徴としている。
【0025】
請求項13記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、上記被験者の年令又は年代を入力するための年令入力手段と、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段と、肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別がさらに年令別又は年代別に定められていることを特徴としている。
【0026】
請求項14記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、式(13)を用いて、上記被験者の体脂肪率%FATを算出する体脂肪率算出手段と、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、少なくとも上記体脂肪率%FATを表示する表示手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められており、上記体脂肪率算出手段は、上記体脂肪率%FATを、一般人の場合、スポーツ選手の場合、肥満者の場合について算出し、算出結果を上記表示手段に表示することを特徴としている。
【0027】
【数13】
%FAT=100FAT/(FAT+LBM) (13)
%FAT:被験者の体脂肪率
FAT:被験者の体脂肪重量
LBM:被験者の体の除脂肪重量
【0028】
請求項15記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置に係り、式(14)を用いて、上記被験者の体格を表す指数BMIを算出し、その算出結果に基づいて上記被験者が肥満者か否かを判断する肥満判断手段と、上記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、上記被験者の運動習慣の有無を入力するための運動習慣入力手段とが付加されてなると共に、上記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(8)を構成する上記定数a1,b1,c1,d1、上記体脂肪重量FATを与える式(9)を構成する上記定数a2,b2,c2,d2、又は上記体液量TBWを与える式(10)を構成する上記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められており、上記肥満判断手段の判断結果及び上記運動習慣入力手段の入力結果に基づいて、いずれか1の推計式が用いられることを特徴としている。
【0029】
【数14】
BMI=W/H2 (14)
BMI:被験者の体格を表す指数
W:被験者の体重
H:被験者の身長
【0030】
請求項16記載の発明は、コンピュータによって被験者の体の除脂肪重量LBM、体液量TBW、あるいは体脂肪重量FATを推計乃至算出するための身体組成推計プログラムを記録した記録媒体に係り、コンピュータを請求項1乃至15のいずれか1に記載の上記生体電気インピーダンス測定手段の一部、上記抵抗算出手段、上記除脂肪重量推計手段又は上記除脂肪重量算出手段、上記体脂肪重量推計手段又は上記体脂肪重量算出手段、上記体液量推計手段、上記体脂肪率算出手段、上記肥満判断手段として機能させるための身体組成推計プログラムを記録していることを特徴としている。
【0031】
【作用】
この発明の構成において、身長・体重入力手段は、被験者の身長H及び体重Wを入力する。生体電気インピーダンス測定手段は、マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して被験者の体の電気インピーダンスを測定する。また、抵抗算出手段は、生体電気インピーダンス測定手段によって測定された被験者の体の電気インピーダンスに基づいて、被験者の生体組織の細胞外液抵抗1/Yeと細胞内液抵抗1/Yiとを求める。そして、求められた細胞外液抵抗や細胞内液抵抗、及び入力された被験者の身長H及び体重Wに基づいて、請求項1記載の除脂肪重量推計手段は、被験者の体の除脂肪重量LBMを推計し、また、請求項3記載の体脂肪重量推計手段は、被験者の体脂肪重量FATを推計し、また、請求項5記載の体液量推計手段は、被験者の体液量TBWを推計する。
このように、この発明の構成によれば、細胞外液抵抗1/Yeと細胞内液抵抗1/Yiとを、確実に分離でき、しかも、細胞膜の容量成分を全く含まない上、被験者の身長Hのみならず、体重Wも考慮されるので、一段と正確な推計値を得ることができる。例えば、除脂肪重量LBMでは、DXAで測定したデータとの相関係数が、0.96に上昇する。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。説明は、実施例を用いて具体的に行う。
◇第1実施例
図1は、この発明の第1実施例である身体組成推計装置の電気的構成を示すブロック図、図2は、同装置の使用状態を模式的に示す模式図、図3は、人体のインピーダンス軌跡を示す図、図4は、組織内細胞の電気的等価回路図、図5は、周波数無限大時の組織内細胞の電気的等価回路図、図6は、同装置の動作処理手順を示すフローチャート、図7は、同動作を説明するためのタイミングチャート、また、図8は、同装置における表示器の別の表示例を示す図である。
この例の身体組成推計装置4は、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等を測定し、測定結果を表示する装置に係り、図1及び図2に示すように、被験者の体Eに測定信号としてマルチ周波数電流Ibを流すための信号出力回路5と、被験者の体Eを流れるマルチ周波数電流Ibを検出するための電流検出回路6と、被験者の手足間の電圧Vpを検出するための電圧検出回路7と、入力装置としてのキーボード8と、出力装置としての表示器9と、装置各部を制御すると共に、各種演算処理を行うCPU(中央処理装置)10と、CPU10の処理プログラムを記憶するROM11と、各種データを一時記憶するデータ領域及びCPU10の作業領域が設定されるRAM12と、測定時に被験者の手甲部Haや足甲部Leの皮膚表面に導電可能に貼り付けられる4個の表面電極Hp,Hc,Lp,Lcとから概略構成されている。
【0033】
まず、上記キーボード8は、被験者の身長や体重、測定時間等を入力するためのテンキーや機能キー、体液量測定モード又は体脂肪測定モードの一方を選択するモード選択キー、及び操作者(又は被験者)が測定開始/測定終了を指示するための開始/終了スイッチ等を有して構成されている。キーボード8から供給される操作データ及び身長・体重データは、図示せぬキーコード発生回路でキーコードに変換されてCPU10に供給される。CPU10は、コード入力された各種操作信号及び身長・体重データをRAM12のデータ領域に一時記憶する。
この例では、体脂肪測定モードにおいては、全測定期間Tf及び後述する測定信号Iaの掃引回数Nが入力される。また、体液量測定モードにおいては、全測定時間TW、測定間隔t、及び掃引回数Nが入力され、全測定時間TWは、例えば、透析をモニタするのに充分な時間を考慮して、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間、7時間の中から、また、測定間隔tは、10分、20分、30分の中から任意に選択できるようになっている。これにより、全測定時間TWの間、被験者の体液量TBWの経時変化が測定される。このように、与えられたいくつかの時間の中から選択する代わりに、操作者が、キーボード8を用いて自由に全測定時間TW又は測定間隔tを設定しても良い。
【0034】
上記信号出力回路5は、PIO(パラレル・インタフェース)51、測定信号発生器52及び出カバッファ53から構成されている。測定信号発生器52は、所定の掃引周期で、PIO51を介してCPU10から信号発生指示信号SGが供給されると、周波数が、例えば1kHz〜400kHzの範囲で、かつ、15kHzの周波数間隔で段階変化する測定信号(電流)Iaを、所定の掃引回数Nに亘って、繰り返し生成して、出力バッファ53に入力する。出力バッファ53は、入力される測定信号Iaを定電流状態に保ちながら、マルチ周波数電流Ibとして表面電極Hcに送出する。この表面電極Hcは、測定時、被験者の手甲部Haに導電可能に貼り付けられ、これにより、100〜800μAの範囲にあるマルチ周波数電流Ibが被験者の体Eを流れることになる。
なお、体液量測定モードにおいては、信号発生指示信号SGの供給周期は、操作者がキーボード8を用いて設定した測定間隔tに一致する。
【0035】
上記電流検出回路6は、I/V変換器(電流/電圧変換器)61、BPF(バンドパスフィルタ)62、A/D変換器63及びサンプリングメモリ64から概略構成されている。I/V変換器61は、被験者の体E、すなわち被験者の手甲部Ha(図2)に貼り付けられた表面電極Hcと足甲部Leに貼り付けられた表面電極Lcとの間を流れるマルチ周波数電流Ibを検出して電圧Vbに変換し、変換により得られた電圧VbをBPF62に供給する。BPF62は、入力された電圧Vbのうち、略1kHz〜800kHzの帯域の電圧信号のみを通して、A/D変換器63に供給する。
A/D変換器63は、CPU10が発行するデジタル変換指示に従って、アナログの入力電圧Vbをデジタルの電圧信号Vbに変換した後、デジタル化された電圧信号Vbを電流データVbとして、サンプリング周期毎、測定信号Iaの周波数毎にサンプリングメモリ64に格納する。また、サンプリングメモリ64は、SRAMから構成され、測定信号Iaの周波数毎に一時格納されたデジタルの電圧信号Vbを、CPU10の求めに応じて、CPU10に送出する。
【0036】
電圧検出回路7は、差動増幅器71、BPF(バンドパスフィルタ)72、A/D変換器73及びサンプリングメモリ74から構成されている。差動増幅器71は、被験者の体E、すなわち被験者の手甲部Haに貼り付けられた表面電極Hpと足甲部Leに貼り付けられた表面電極Lpとの間の電圧(電位差)を検出する。BPF72は、入力された電圧Vpのうち、略1kHz〜800kHzの帯域の電圧信号のみを通して、A/D変換器73に供給する。
A/D変換器73は、CPU10が発行するデジタル変換指示に従って、アナログの入力電圧Vpをデジタルの電圧信号Vpに変換した後、デジタル化された電圧信号VDを電圧データVDとして、サンプリング周期毎、測定信号Iaの周波数毎にサンプリングメモリ74に格納する。また、サンプリングメモリ74は、SRAMから構成され、測定信号Iaの周波数毎に一時格納されたデジタルの電圧信号Vpを、CPU10の求めに応じて、CPU10に送出する。
なお、CPU10は、2つのA/D変換器63,73に対して同一のタイミングでデジタル変換指示を行う。
【0037】
ROM11は、CPU10の処理プログラムとして、主プログラムの他、例えば、生体電気インピーダンス算出サブプログラム、インピーダンス軌跡算出サブプログラム、周波数0時インピーダンス決定サブプログラム、周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラム、細胞内液抵抗算出サブプログラム、除脂肪重量推計サブプログラム、体脂肪重量推計サブプログラム、体脂肪率推計サブプログラム、体液量推計サブプログラム、体液量−除脂肪重量比算出サブプログラム、体液量偏差算出サブプログラム等を格納する。また、ROM11には、予め統計的に処理された一般健常者の体の正常状態における体液量TBWSを、除脂肪重量LBMSで除した数値データも、正常体液量−除脂肪重量比(TBWS/LBMS)として予め設定登録されている。各種プログラムは、ROM11からCPU10に読み込まれ、CPU10の動作を制御する。なお、これらのサブプログラムを記録する記録媒体は、ROM11等の半導体メモリに限らず、FD(フロッピーディスク)やHD(ハードディスク)等の磁気ディスク、CD−ROM等の光ディスクに記録されていても良い。
【0038】
ここで、生体電気インピーダンス算出サブプログラムは、CPU10に、サンプリングメモリ64,74に記憶された周波数毎の電流データ及び電圧データを順次読み出させて、各周波数についての被験者の生体電気インピーダンスを算出させる。「従来の技術」欄で説明したように、細胞膜2,2,…は、容量の大きなコンデンサとみることができるため、外部から印加された電流は、周波数の低いときには、図9に実線A,A,…で示すように、細胞外液3のみを流れる。しかし、周波数が高くなるにつれて、細胞膜2,2,…を通って流れる電流が増え、周波数が非常に高くなると、同図に破線B,B,…で示すように、細胞1,1,…内を通って流れるようになる。
【0039】
インピーダンス軌跡算出サブプログラムには、CPU10に、生体電気インピーダンス算出サブプログラムの稼働により得られた各周波数についての被験者の生体電気インピーダンスに基づいて、最小二乗法の演算手法に従って、周波数0から周波数無限大までのインピーダンス軌跡を算出させる処理手順が書き込まれている。「従来の技術」欄では、人体の組織内細胞を単純な電気的等価回路(図10)で表したが、実際の人体の組織では、いろいろな大きさの細胞が不規則に配置されているので、実際の人体のインピーダンス軌跡は、図3に実線Dで示すように、中心が実軸より上がった円弧となり、電気的等価回路は、図4に示すように、時定数τ=Cmk/Yik(k=1,2,3,…)が分布している分布定数回路で表される。なお、同図において、1/Yeは細胞外液抵抗、1/Yikは各細胞の細胞内液抵抗、Cmkは各細胞の細胞膜容量を示す。
【0040】
周波数0時インピーダンス決定サブプログラム、周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラムには、それぞれ、CPU10に、インピーダンス軌跡算出サブプログラムの稼働により得られたインピーダンス軌跡に基づいて、それぞれ、周波数0時、無限大時の被験者の生体電気インピーダンスを決定させる手順が書き込まれている。
細胞内液抵抗算出サブプログラムには、CPU10に、周波数0時インピーダンス決定サブプログラム及び周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラムの稼働により得られた両インピーダンスに基づいて、細胞内液抵抗1/Yiを算出させる算出式(15)が記述されている。
周波数0では、測定される生体電気インピーダンス1/Y(0)は、細胞外液抵抗1/Yeと等価となるので、周波数0時インピーダンス決定サブプログラムにおいて得られたインピーダンス1/Y(0)が求めるべき細胞外液抵抗1/Yeとなる(式(16)参照)。また、周波数無限大では、図3に示すように、細胞膜が容量性能力を失い、測定される生体電気インピーダンス1/Y(∞)は、細胞内液抵抗1/Yiと細胞外液抵抗1/Yeとの合成抵抗と等価(図5)になる。したがって、周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンス1/Y(∞)から、細胞内液抵抗1/Yiが正確に算出される。
【0041】
【数15】
Yi=Y(∞)−Y(0) (15)
【0042】
【数16】
Ye=Y(0) (16)
【0043】
また、除脂肪重量推計サブプログラムには、CPU10に、周波数0時インピーダンス決定サブプログラムにより得られた細胞外液抵抗1/Ye、細胞内液抵抗算出サブプログラムにより得られた細胞内液抵抗1/Yi、キーボード8を介して入力された被験者の身長データHや体重データWに基づいて、被験者の除脂肪重量LBMを推計させるための推計式(17)が記述されている。
ここで、式(17)は、多数の被験者について予め標本調査を実施した結果得られた除脂肪重量LBMの重回帰式であり、定数a1,b1,c1,d1は、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求められたものである。説明変数に体重Wを付加することで、DXAで測定したデータとの相関係数が、0.96に上昇する。
【0044】
【数17】
LBM=a1W+b1H2Ye+c1H2Yi+d1 (17)
LBM:被験者の体の除脂肪重量[kg]
W:被験者の体重[kg]
H:被験者の身長[kg]
Ye:細胞外液拡抗の逆数[1/Ω]
Yi:抑胞内液拡抗の逆数[1/Ω]
a1,b1,C1,d1:定数
【0045】
また、体脂肪重量推計サブプログラムは、CPU10に、除脂肪重量LBMを被験者の体重Wから減算させることによって、被験者の体脂肪重量FATを算出させる。
【0046】
また、体脂肪率推計サブプログラムには、CPU10に、除脂肪重量推計サブプログラムにより得られた除脂肪重量LBMと、体脂肪重量推計サブプログラムにより得られた体脂肪重量FATとに基づいて、被験者の体脂肪率%FATを算出させるための手順(式(18))が記述されている。
【0047】
【数18】
%FAT=100FAT/(FAT+LBM) (18)
【0048】
また、体液量推計サブプログラムには、同じく、細胞外液抵抗1/Ye、細胞内液抵抗1/Yi、被験者の身長データHや体重データWに基づいて、被験者の体液量TBWを推計するための推計式(19)が記述されている。
ここで、式(19)は、多数の被験者について予め標本調査を実施した結果得られた体液量TBWの重回帰式であり、定数a3,b3,c3,d3は、DXAで測定した体液量TBWをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求められたものである。
【0049】
【数19】
TBW=a3W+b3H2Ye+c3H2Yi+d3 (19)
TBW:被験者の体液量[kg]
W:被験者の体重[kg]
H:被験者の身長[cm]
Ye:細胞外液抵抗の逆数[1/Ω]
Yi:細胞内液抵抗の逆数[1/Ω]
a3,b3,C3,d3:定数
【0050】
体液量−除脂肪重量比算出サブプログラムには、CPU10に、被験者の体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)を算出させる手順が記述されている。
また、体液量偏差算出サブプログラムには、被験者の体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)と正常体液量−除脂肪重量比(TBWS/LBMS)との差である体液量−除脂肪重量比偏差Δ(TBW/LBM)に除脂肪重量LBMを乗ずることで与えられる体液量偏差ΔTBW(式(20))を算出させる手順が記述されている。
【0051】
【数20】
ΔTBW=LBM((TBW/LBM)−(TBWS/LBMS)) (20)
【0052】
RAM12のデータ領域には、例えば、生体電気インピーダンス算出サブプログラム等により得られた被験者の生体電気インピーダンスを周波数毎に格納する生体電気インピーダンス記憶領域と、キーポード8を介して入力された被験者の身長・体重データ等を格納する身長・体重データ記憶領域と、体脂肪率推計サブプログラムにより得られた体脂肪率等の数値を記憶する体脂肪記憶領域等が設定される。
【0053】
CPU10は、ROM11に記憶された各種処理プログラムの制御により、RAM12を用いて、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等を推計する処理を順次実行する。
表示器9は、例えば、カラー表示が可能な液晶表示パネルからなり、キーボード8からの入カデータやCPU10の演算結果、例えば、体液量−除脂肪重量比に関するトレンドグラフや、体液量偏差、体脂肪率、インピーダンス軌跡(図8(a),(b)参照)、細胞外液抵抗、細胞内液抵抗、被験者の身長・体重等を表示する。
【0054】
次に、この例の動作について説明する。
まず、測定に先だって、図2に示すように、2個の表面電極Hc,Hpを被験者の手甲部Haに、2個の表面電極Lp,Lcを被験者の同じ側の足甲部Leにそれぞれ導電クリームを介して貼り付ける(このとき、表面電極Hc,Lcを、表面電極Hp,Lpよりも人体の中心から遠い部位に取り付ける)。上記構成の身体組成推計装置4を、例えば、透析時のモニタとして用いる場合には、操作者(又は被験者自身)が身体組成推計装置4のキーボード8を操作して、モード選択キーを操作して、体液量測定モードを設定し、さらに、被験者の身長H及び体重Wを入力すると共に、測定開始から測定終了までの全測定時間TWや測定間隔等t(図7)や掃引回数Nを設定する。この例では、全測定時間TWは、透析をモニタするのに充分な時間を考慮して、7時間が選択され、また、測定間隔tは、30分が選択されたとする。キーボード8から入力された身長H及び体重W等のデータや設定値は、RAM12に記憶される。
【0055】
次に、操作者(又は被験者自身)が、透析開始の時刻に合わせてキーボード8の開始/終了スイッチをオンにすると、これより、CPU10は、図6に示す処理の流れに従って、動作を開始する。まず、ステップSP10において、CPU10は、信号出力回路5の測定信号発生器52に、信号発生指示信号SGを発行する。測定信号発生器52は、CPU10から信号発生指示信号SGを受け取ると、駆動を開始して、全測定時間TWの間、所定の掃引周期で、周波数が、1kHz〜400kHzの範囲で、かつ、15kHzの周波数間隔で段階変化する測定信号Iaを繰り返し生成して、出力バッファ53に入力する。出カバッファ53は、入力される測定信号Iaを定電流状態(500〜800μAに範囲の一定値)に保ちながら、マルチ周波数電流Ibとして表面電極Hcに送出する。これにより、定電流のマルチ周波数電流Ibが、表面電極Hcから被験者の体Eを流れ、測定が開始される。
【0056】
マルチ周波数電流Ibが被験者の体Eに供給されると、電流検出回路6のI/V変換器61において、表面電極Hc,Lcが貼り付けられた手足間を流れるマルチ周波数電流Ibが検出され、アナログの電圧信号Vbに変換された後、BPF62に供給される。BPF62では、入力された電圧信号Vbの中から1kHz〜800kHzの帯域の電圧信号成分のみが通過を許されて、A/D変換器63へ供給される。A/D変換器63では、供給されたアナログの電圧信号Vbが、デジタルの電圧信号Vbに変換され、電流データVbとして、所定のサンプリング周期毎、測定信号Iaの周波数毎にサンプリングメモリ64に格納される。サンプリングメモリ64では、格納されたデジタルの電圧信号VbがCPU10の求めに応じて、CPU10に送出される。
一方、電圧検出回路7の差動増幅器71において、表面電極Hp,Lpが貼り付けられた手足間で生じた電圧Vpが検出され、BPF72に供給される。BPF72では、入力された電圧信号Vpの中から1kHz〜800kHzの帯域の電圧信号成分のみが通過を許されて、A/D変換器73へ供給される。A/D変換器73では、供給されたアナログの電圧信号Vpが、デジタルの電圧信号Vpに変換され、電圧データVpとして、所定のサンプリング周期毎、測定信号Iaの周波数毎にサンプリングメモリ74に格納される。サンプリングメモリ74では、格納されたデジタルの電圧信号VpがCPU10の求めに応じて、CPU10に送出される。CPU10は、プローブ電流Iaの掃引回数が、指定された掃引回数Nになるまで繰り返す。
【0057】
そして、掃引回数が指定の回数Nになると、CPU10は、測定を停止する制御を行った後、ステップSPllへ進み、これより、まず、生体電気インピーダンス算出サブプログラムを起動して、両サンプリングメモリ64,74に格納された周波数毎の電流データ及び電圧データを順次読み出して、各周波数についての被験者の生体電気インピーダンス(掃引回数N回の平均値)を算出する。なお、生体電気インピーダンスの算出には、その成分(抵抗及びリアクタンス)の算出も含まれる。次に、CPU10は、インピーダンス軌跡算出サブプログラムを起動して、生体電気インピーダンス算出サブプログラムにより得られた各周波数についての被験者の生体電気インピーダンス及びその成分(抵抗及びリアクタンス)に基づいて、最小二乗法を用いるカーブフィッティングの手法に従って、周波数0から周波数無限大までのインピーダンス軌跡を算出する。このようにして算出されたインピーダンス軌鉢は、図8(a),(b)に示すように、中心が実紬より上がった円弧となる。
【0058】
次に、CPU10は、周波数0時インピーダンス決定サブプログラム及び周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラムの制御に従って、インピーダンス軌跡算出サブプログラムにより得られたインピーダンス軌跡に基づいて、それぞれ、周波数0時及び無限大時の被験者の生体電気インピーダンスを求める。つまり、インピーダンス軌鉢の円弧が、図中X軸紬と交わる点が、それぞれ周波数OHzと無限大の時の生体電気インピーダンスになる。ここで、周波数0Hz時の生体電気インピーダンスが、求める細胞外液抵抗となる。次に、CPU10は、細胞内液抵抗算出サブプログラムに従って、周波数0時インピーダンス決定サブプログラム及び周波数無限大時インピーダンス決定サブプログラムにより得られた両インピーダンスに基づいて、細胞内液抵抗を算出する。
【0059】
(a)体液量測定モード時
次に、ステップSP12へ進み、CPU10は、図示せぬモード設定フラグを見て、現在のモードが体液量測定モードであるか体脂肪測定モードであるかを確認する。いまは、操作者(又は被験者自身)によって、体液量測定モードが設定されているので、CPU10は、ステップSP13へ進み、まず、体液量推計サブプログラムの制御により、式(19)を用いて、被験者の体液量TBWを推計する処理を実行する。次に、CPU10は、除脂肪重量推計サブプログラムの制御により、式(17)を用いて、被験者の除脂肪重量LBMを推計し、この後、体液量−除脂肪重量比算出サブプログラムの制御により、体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)を算出し、最後に、体液量偏差算出サブプログラムの制御により、式(20)を用いて、被験者の現在の体液量偏差△TBWを算出する。
【0060】
上述の一連の算出処理が完了すると、CPU10は、算出された被験者の体液量TBW、除脂肪重量LBM、体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)、体液量偏差△TBW等を測定時点における測定結果としてRAM12に記憶すると共に、ステップSP14へ進み、表示器9に画面表示されたトレンドグラフ(透析開始からの経過時間を横軸とし、体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)の各値を縦軸とする折れ線グラフ)上に体液量−除脂肪重量比(TBW/LBM)の値をプロットし、また、体液量偏差△TBW、体液量TBW、除脂肪重量LBMを現在のデータとして画面表示する。
【0061】
この後、ステップSPl5へ進み、CPU10は、全測定時間TW(図7)が経過したか否かを判断する。この判断において、全測定時間TW(この例では、7時間)が経過したとの結論が得られれば、以後の測定処理を終了するが、いま、最初の測定が終了したばかりなので、全測定時間TWがいまだ経過していないと判断され、ステップSP16へ進み、測定間隔に相当する時間t(同図)が経過するのを待つ。なお、この待ち時間の間も、表示器9のトレンドグラフ画面は、表示されている。そして、測定間隔に相当する時間t(この例では、30分)が経過すると、ステップSP10へ戻り、2回目の測定を開始する。そして、上述の処理を、全測定時間TWが経過するまで、すなわち、透析終了時まで繰り返す。
【0062】
(b)体脂肪測定モード時
一方、被験者が除脂肪重量LBM、体脂肪重量FAT、体脂肪率%FAT等の測定を希望する場合には、まず、測定に先だって、操作者(又は被験者自身)が身体組成推計装置4のキーボード8を操作して、モード選択キーを操作して、体脂肪測定モードを設定し、さらに、被験者の身長H及び体重Wを入力すると共に、全測定時間Tf、及び掃引回数Nを設定する。次に、キーポード8の開始/終了スイッチを押下すると、これより、CPU10は、上述した測定演算処理(ステップSPl0及びステップSPll)を実行する。そして、ステップSP12へ進み、CPU10は、モード設定フラグを見て、現在のモードが体液量測定モードであるか体脂肪測定モードであるかを調べる。
今度は、体脂肪測定モードが選択されているので、ステップSP17へ進み、CPU10は、除脂肪重量推計サブプログラムの制御により、式(17)を用いて、被験者の除脂肪重量LBMを推計する。次に、CPU10は、体脂肪重量推計サブプログラムの制御により、被験者の体脂肪重量FATを推計し、次いで、体脂肪率推計サブプログラムの制御により、式(18)を用いて、体脂肪率%FATを算出する。
【0063】
上述の一連の算出処理が完了すると、算出された被験者の除脂肪重量LBM、体脂肪重量FAT、体脂肪率%FAT等をRAM12に記憶すると共に、ステップSP18において、図8に示すように、被験者の除脂肪重量LBM、体脂肪重量FAT、体脂肪率%FAT等、インピーダンス軌跡、細胞外液抵抗、被験者の身長・体重等を表示器9に表示させる。そして、当該一連の処理を終了する。
【0064】
このように、上記構成によれば、細胞外液抵抗1/Yeと細胞内液抵抗1/Yiとを、互いに確実に分離でき、しかも、細胞膜の容量成分を全く含まない上、被験者の身長Hのみならず、体重Wも考慮されるので、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等について、一段と正確な推計値を得ることができる。例えば、除脂肪重量LBMでは、DXAで測定したデータとの相関係数が、0.96に上昇する。
また、インピーダンス軌跡算出サブプログラムにより、最小二乗法の演算手法を駆使して、インピーダンス軌跡を求め、求められた軌跡から、周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンスを求め、求められた生体電気インピーダンスに基づいて、細胞外液抵抗及び細胞内液抵抗を算出するので、高周波投入時の浮遊容量や外来ノイズの影響を回避でき、また、人体への直流の直接投入を回避できる。それゆえ、測定精度が向上する。
【0065】
◇第2実施例
次に、この発明の第2実施例について説明する。
この第2実施例の構成が、上述の第1実施例のそれと大きく異なるところは、上述の第1実施例では、まず、除脂肪重量LBMを求め、求めた除脂肪重量LBMを被験者の体重Wから減ずることで、被験者の体脂肪重量FATを算出するようにしたが、この第2実施例では、まず、被験者の体脂肪重量FATを算出し、算出された脂肪重量FATを被験者の体重Wから減ずることで、被験者の体の除脂肪重量LBMを算出するようにした点である。
すなわち、この例では、式(21)で与えられる推計式を用いて、被験者の体脂肪重量FATが算出される。
ここで、式(21)は、多数の被験者について予め標本調査を実施した結果得られた体脂肪重量FATの重回帰式であり、定数a2,b2,c2,d2は、DXAで測定した体脂肪重量FATをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求められたものである。
【0066】
【数21】
FAT=a2W+b2H2Ye+c2H2Yi+d2 (21)
FAT:被験者の体脂肪重量[kg]
W:被験者の体重[kg]
H:被験者の身長[cm]
Ye:細胞外液抵抗の逆数[1/Ω]
Yi:細胞内液抵抗の逆数[1/Ω]
a2,b2,C2,d2:定数
【0067】
このように、この第2実施例によっても、第1実施例で述べたと略同様の効果を得ることができる。
【0068】
◇第3実施例
次に、この発明の第3実施例について説明する。
この第3実施例では、被験者の除脂肪重量LBMを与える推計式(17)の定数a1,b1,c1,d1、及び体液量TBWを与える推計式(19)の定数a3,b3,c3,d3が、それぞれ、男女別に定められており、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能が付加されている点で、上述の第1実施例と相違している。
この第3実施例の構成によれば、男女間の特徴が考慮されるので、除脂肪重量LBM及び体液量TBWの推計精度が一段と向上する。
【0069】
なお、上述の第2実施例の変形例として、被験者の体脂肪重量FATを与える式(21)の定数a2,b2,c2,d2についても、男女別に定められており、体脂肪重量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能を付加するようにすれば、上述の第3実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0070】
◇第4実施例
次に、この発明の第4実施例について説明する。
この第4実施例では、被験者の除脂肪重量LBMを与える推計式(17)の定数a1,b1,c1,d1、及び体液量TBWを与える推計式(19)の定数a3,b3,c3,d3が、それぞれ、年令別又は年代別に定められており、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の年令又は年代を入力するための年令入力機能が付加されている点で、上述の第1実施例と相違している。この第4実施例の構成によれば、年令又は年代が考慮されるので、特に、子供や高齢者にとって、除脂肪重量LBM及び体液量TBWの推計精度が一段と向上する。
【0071】
なお、第2実施例の別の変形例として、被験者の体脂肪重量FATを与える式(21)の定数a2,b2,c2,d2についても、年令別又は年代別に定められており、体脂肪重量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の年令又は年代を入力するための年令入力機能を付加するようにすれば、第4実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0072】
◇第5実施例
次に、この発明の第5実施例について説明する。
この第5実施例では、被験者の除脂肪重量LBMを与える推計式(17)の定数a1,b1,c1,d1、及び体液量TBWを与える推計式(19)の定数a3,b3,c3,d3が、それぞれ、スポーツ選手/一般人別に定められており、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力機能が付加されている点で、上述の第1実施例と相違している。
ここで、スポーツ選手に適用される式(17)は、多数の被験者(大学の運動部員)について予め標本調査を実施した結果得られた除脂肪重量LBMの重回帰式であり、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって、a1=0.308±20%,b1=0.332±20%,c1=0.185±20%に設定される。なお、d1は、式(17)の左辺(LBM)の平均値と、式(17)の右辺の第1項から第3項までの和(a1W+b1H2Ye+c1H2Yi)の平均値との差として求められる。
この第5実施例の構成によれば、スポーツ選手であるか否かが考慮されるので、スポーツ選手にとって、除脂肪重量LBM及び体液量TBWの推計精度が一段と向上する。
【0073】
なお、第2実施例のさらに別の変形例として、被験者の体脂肪重量FATを与える式(21)の定数a2,b2,c2,d2についても、スポーツ選手/一般人別に定められており、体脂肪重量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力機能を付加するようにすれば、上述の第5実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0074】
◇第6実施例
次に、この発明の第6実施例について説明する。
この第6実施例では、被験者の除脂肪重量LBMを与える推計式(17)の定数a1,b1,c1,d1、及び体液量TBWを与える推計式(19)の定数a3,b3,c3,d3が、それぞれ、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性で別々に定められており、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力機能及び肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力機能が付加されている点で、上述の第1実施例と相違している。ここで、肥満者について推計式(17)及び(19)を別個に定めるのは、成人肥満者の場合、肥満度が増加すると共に細胞外液量が増加する傾向にあるので、それを考慮しなければ、正確に除脂肪重量LBM及び体液量TBWを推計できないからである。
スポーツ選手に適用される式(17)は、例えば、男女共通で、上記した第5実施例と同様、多数の被験者(大学の運動部員)について予め標本調査を実施した結果得られた除脂肪重量LBMの重回帰式であり、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって、a1=0.308±20%,b1=0.332±20%,c1=0.185±20%に設定される。なお、d1は、式(17)の左辺(LBM)の平均値と、式(17)の右辺の第1項から第3項までの和(a1W+b1H2Ye+c1H2Yi)の平均値との差として求められる。
また、肥満女性に適用される式(17)は、多数の被験者(具体的には、DXAで測定した体脂肪率が30%以上の成人女性)について予め標本調査を実施した結果得られた除脂肪重量LBMの重回帰式であり、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって、a1=0.194±20%,b1=0.241±20%,c1=0.235±20%に設定される。なお、d1は、式(17)の左辺(LBM)の平均値と、式(17)の右辺の第1項から第3項までの和(a1W+b1H2Ye+c1H2Yi)の平均値との差として求められる。
このように、この第6実施例の構成によれば、男女間の特徴、スポーツ選手であるか否か及び肥満者であるか否かが考慮されるので、身体組成の異なる人でも、除脂肪重量LBM、体液量TBW、あるいは体脂肪率%FATの推計精度が一段と向上する。この場合、男女を区別せず、一般人、スポーツ選手、肥満者の推計式を定めるようにしても良い。
【0075】
また、この第6実施例の変形例として、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能だけを付加し、上記一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性及び肥満者女性別の推計式に基づいて除脂肪重量LBM及び体液量TBWを求めて、その結果およびその結果から得られる体脂肪率%FAT等を、一般人の場合、スポーツ選手の場合、肥満者の場合の3通り表示器9に表示するようにしても良い。
この構成によれば、被験者は、自身の運動習慣の有無や程度によって自分の適正な体脂肪率%FAT等を判断できる。
【0076】
さらに、この第6実施例の別の変形例として、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能及び運動習慣の有無を入力するための運動習慣入力機能を付加すると共に、被験者が肥満者であるか否かを判断するために、式(22)で表される体格を表す指数BMI(Body Mass Index)に基づいて被験者が肥満者(例えば、指数BMIが25以上)であるか否かを判断し、肥満者と判断された場合には、肥満者の推計式を用いるようにしても良い。なお、運動習慣がある場合には、スポーツ選手の推計式を用いる。
【0077】
【数22】
BMI=W/H2 (22)
BMI:被験者の体格を表す指数
W:被験者の体重[kg]
H:被験者の身長[m]
【0078】
なお、第2実施例のさらに別の変形例として、被験者の体脂肪重量FATを与える式(21)の定数a2,b2,c2,d2についても、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められており、体脂肪重量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶されていると共に、キーボード8に、被験者の性別を入力するための性別入力機能、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力機能及び肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力機能を付加するようにすれば、上述の第6実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0079】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、各種身体組成推計式の回帰係数等の数値は、上述の実施例のものに限定されない。
また、上述の実施例では、4個の表面電極Hc,Hp,Lc,Lpのうち、2個の表面電極Hc,Hpを被験者Eの手甲部Haに、残り2個の表面電極Lc,Lpを被験者Eの足甲部Leに、貼り付けるようにしたが、これに限らず、例えば、4個とも片足に取り付けるようにしても良い。
また、測定信号(電流)Iaの周波数範囲は、1kHz〜400kHzに限定されない。同様に、周波数の数も複数である限り任意である。また、生体電気インピーダンスを算出する代わりに、生体電気アドミッタンスを算出するようにしても良く、これに伴い、インピーダンス軌跡を算出する代わりに、アドミッタンス軌跡を算出するようにしても良い。
また、上述の実施例では、最小二乗法によるカーブフィッティングの手法を用いて、周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンスを求めるようにしたが、これに限らず、浮遊容量や外来ノイズの影響を他の手段により回避できる場合には、例えば、2周波数(5kHz以下の低周波と、200kHz以上の高周波)の測定信号を生成して被験者に投入し、被験者の体の低周波時の生体電気インピーダンスを周波数0時の生体電気インピーダンスとみなすと共に、被験者の体の高周波時の生体電気インピーダンスを周波数無限大時の生体電気インピーダンスとみなすようにしても良い。
【0080】
また、上述の各実施例では、定数a1,b1,c1,d1を、DXAで測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求めたが、これに限らず、例えば、水中体重法で測定した除脂肪重量LBMをW、H2Ye、H2Yiの3つの説明変数で重回帰分析することによって求めても良い。定数a2,b2,c2,d2、定数a3,b3,c3,d3についても、同様である。
さらに、上述の各実施例の構成を適宜組み合わせた構成にしても良い。例えば、第4実施例の構成と第6実施例の構成とを組み合わせて、被験者の年令又は年代、男性か女性か、運動習慣があるか否か、肥満者か否か、あるいはやせ型かなどの各要素を加味した推計式の各定数を定めて、それぞれ除脂肪重量推計サブプログラム及び体液量推計サブプログラムとしてROM11に予め記憶すると共に、キーボード8に右各要素を入力するための入力機能を付加するように構成しても良い。このような構成によれば、どのような身体組成の人でも、正確な除脂肪重量LBM、体液量TBW、あるいは体脂肪率%FATを得ることができる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の構成によれば、細胞外液抵抗1/Yeと細胞内液抵抗1/Yiとを、完全に分離でき、しかも、細胞膜の容量成分を全く含まない上、被験者の身長Hのみならず、体重Wも考慮されるので、被験者の除脂肪重量LBM、脂肪重量FAT、体液量TBW等について、一段と正確な推計値を簡便に得ることができる。例えば、除脂肪重量LBMでは、DXAで測定したデータとの相関係数が、0.96に上昇する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例である身体組成推計装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】同身体組成推計装置の使用状態を模式的に示す模式図である。
【図3】人体のインピーダンス軌跡を示す図である。
【図4】組織内細胞の電気的等価回路図である。
【図5】周波数無限大時の組織内細胞の電気的等価回路図である。
【図6】同身体組成推計装置の動作処理手順を示すフローチャートである。
【図7】同身体組成推計装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】同身体組成推計装置における表示器の別の表示例を示す図である。
【図9】人体の組織内細胞を模式的に示す模式図である。
【図10】組織内細胞の電気的等価回路図である。
【符号の説明】
4 身体組成推計装置
5 信号出力回路(生体電気インピーダンス測定手段の一部)
52 測定信号発生器
53 出力バッファ
6 電流検出回路(生体電気インピーダンス測定手段の一部)
61 I/V変換器
62 BPF
63 A/D変換器
64 サンプリングメモリ
7 電圧検出回略(生体電気インピーダンス測定手段の一部)
71 差動増幅器
72 BPF
73 A/D変換器
74 サンプリングメモリ
8 キーボード(身長・体重入力手段、性別入力手段、年令入力手段、スポーツ選手入力手段、肥満者入力手段、運動習慣入力手段)
9 表示器(表示手段)
10 CPU(生体電気インピーダンス測定手段の一部、抵抗算出手段、除脂肪重量推計手段、体脂肪重量算出手段、体脂肪重量推計手段、体液量推計手段、体脂肪率算出手段、肥満判断手段)
11 ROM(身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体)
12 RAM
Hc,Hp,Lc,Lp 表面電極
E 被験者の体
Ha 被験者の手甲部
Le 被験者の足甲部
Ia 測定信号
Ib マルチ周波数電流(マルチ周波のプローブ電流)
Vp 被験者の手足間の電圧
Claims (16)
- マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して該被験者の体の電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定手段と、
前記電気インピーダンスに基づいて、前記被験者の体の細胞外液抵抗及び細胞内液低抗を算出する抵抗算出手段と、
前記被験者の身長H及び体重Wを入力するための身長・体重入力手段と、
式(1)を用いて、前記被験者の体の除脂肪重量LBMを推計する除脂肪重量推計手段とを備えてなることを特徴とする身体組成推計装置。
W:被験者の体重
H:被験者の身長
Ye:細胞外液抵抗の逆数
Yi:細胞内液抵抗の逆数
a1,b1,c1,d1:定数 - 式(1)によって与えられた前記除脂肪重量LBMを前記被験者の体重Wから減ずることによって、前記被験者の体脂肪重量FATを算出する体脂肪重量算出手段を備えてなることを特徴とする請求項1記載の身体組成推計装置。
- マルチ周波のプローブ電流を生成し、生成した各周波のプローブ電流を被験者の体に投入して該被験者の体の電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定手段と、
前記電気インピーダンスに基づいて、前記被験者の体の細胞外液抵抗及び細胞内液抵抗を算出する抵抗算出手段と、
前記被験者の身長H及び体重Wを入力するための身長・体重入力手段と、
式(2)を用いて、前記被験者の体脂肪重量FATを推計する体脂肪重量推計手段とを備えてなることを特徴とする身体組成推計装置。
W:被験者の体重
H:被験者の身長
Ye:細胞外液抵抗の逆数
Yi:細胞内液抵抗の逆数
a2,b2,c2,d2:定数 - 式(2)によって与えられた前記体脂肪重量FATを前記被験者の体重Wから減ずることによって、前記被験者の除脂肪重量LBMを算出する除脂肪重量算出手段を備えてなることを特徴とする請求項3記載の身体組成推計装置。
- 前記生体電気インピーダンス測定手段は、前記被験者の体に投入される前記プローブ電流の各周波毎に、該被験者の体の生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスを測定し、測定された各周波毎の前記生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスに基づいて、最小二乗法の演算手法を駆使して、インピーダンス軌跡又はアドミッタンス軌跡を求め、求められた該インピーダンス軌跡又はアドミッタンス軌跡から、前記被験者の周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスの外挿値を算出すると共に、
前記抵抗算出手段は、前記生体電気インピーダンス測定手段によって算出された被験者の周波数0時及び無限大時の生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスの外挿値に基づいて、前記被験者の体の細胞外液抵抗及び細胞内液抵抗を算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の身体組成推計装置。 - 前記被験者の性別を入力するための性別入力手段が付加されてなると共に、
前記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(1)を構成する前記定数a1,b1,c1,d1、前記体脂肪重量FATを与える式(2)を構成する前記定数a2,b2,c2,d2、又は前記体液量TBWを与える式(3)を構成する前記定数a3,b3,c3,d3が、男女別に定められていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置。 - 前記被験者の年令又は年代を入力するための年令入力手段が付加されてなると共に、
前記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(1)を構成する前記定数a1,b1,c1,d1、前記体脂肪重量FATを与える式(2)を構成する前記定数a2,b2,c2,d2、又は前記体液量TBWを与える式(3)を構成する前記定数a3,b3,c3,d3が、年令別又は年代別に定められていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置。 - スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段が付加されてなると共に、
前記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(1)を構成する前記定数a1,b1,c1,d1、前記体脂肪重量FATを与える式(2)を構成する前記定数a2,b2,c2,d2、又は前記体液量TBWを与える式(3)を構成する前記定数a3,b3,c3,d3が、スポーツ選手、一般人の別に定められていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置。 - スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段と、肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力手段とが付加されてなると共に、
前記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(1)を構成する前記定数a1,b1,c1,d1、前記体脂肪重量FATを与える式(2)を構成する前記定数a2,b2,c2,d2、又は前記体液量TBWを与える式(3)を構成する前記定数a3,b3,c3,d3が、一般人、スポーツ選手、肥満者の別で定められていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置。 - 前記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段と、肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力手段とが付加されてなると共に、
前記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(1)を構成する前記定数a1,b1,c1,d1、前記体脂肪重量FATを与える式(2)を構成する前記定数a2,b2,c2,d2、又は前記体液量TBWを与える式(3)を構成する前記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置。 - 前記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、前記被験者の年令又は年代を入力するための年令入力手段と、スポーツ選手であるか否かを入力するためのスポーツ選手入力手段と、肥満者であるか否かを入力するための肥満者入力手段とが付加されてなると共に、
前記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(1)を構成する前記定数a1,b1,c1,d1、前記体脂肪重量FATを与える式(2)を構成する前記定数a2,b2,c2,d2、又は前記体液量TBWを与える式(3)を構成する前記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別がさらに年令別又は年代別に定められていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置。 - 式(6)を用いて、前記被験者の体脂肪率%FATを算出する体脂肪率算出手段と、前記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、少なくとも前記体脂肪率%FATを表示する表示手段とが付加されてなると共に、前記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(1)を構成する前記定数a1,b1,c1,d1、前記体脂肪重量FATを与える式(2)を構成する前記定数a2,b2,c2,d2、又は前記体液量TBWを与える式(3)を構成する前記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められており、
前記体脂肪率算出手段は、前記体脂肪率%FATを、一般人の場合、スポーツ選手の場合、肥満者の場合について算出し、算出結果を前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置。
FAT:被験者の体脂肪重量
LBM:被験者の体の除脂肪重量 - 式(7)を用いて、前記被験者の体格を表す指数BMIを算出し、その算出結果に基づいて前記被験者が肥満者か否かを判断する肥満判断手段と、前記被験者の性別を入力するための性別入力手段と、前記被験者の運動習慣の有無を入力するための運動習慣入力手段とが付加されてなると共に、
前記被験者の除脂肪重量LBMを与える式(1)を構成する前記定数a1,b1,c1,d1、前記体脂肪重量FATを与える式(2)を構成する前記定数a2,b2,c2,d2、又は前記体液量TBWを与える式(3)を構成する前記定数a3,b3,c3,d3が、一般人男性、一般人女性、スポーツ選手男性、スポーツ選手女性、肥満者男性、肥満者女性の別で定められており、
前記肥満判断手段の判断結果及び前記運動習慣入力手段の入力結果に基づいて、いずれか1の推計式が用いられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の身体組成推計装置。
W:被験者の体重
H:被験者の身長 - コンピュータによって被験者の体の除脂肪重量LBM、体液量TBW、あるいは体脂肪重量FATを推計乃至算出するための身体組成推計プログラムを記録した記録媒体であって、
コンピュータを請求項1乃至15のいずれか1に記載の生体電気インピーダンス測定手段の一部、前記抵抗算出手段、前記除脂肪重量推計手段又は前記除脂肪重量算出手段、前記体脂肪重量推計手段又は前記体脂肪重量算出手段、前記体液量推計手段、前記体脂肪率算出手段、前記肥満判断手段として機能させるための身体組成推計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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