JP3872541B2 - 保存性に優れた包装容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保存性に優れた包装容器に関するもので、より詳細には包装内の残存酸素による香味低下を抑制し、内容物の保存性を向上させた包装容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビン詰や缶詰の製造においては、ビン或いは缶胴の上部に、ヘッドスペースと呼ばれる空間が必ず存在し、このヘッドスペースに残存する酸素が内容物を酸化劣化し、更にはカビ、酵母、細菌等の増殖を生じさせることが問題となる。
【0003】
このヘッドスペースの酸素を除去するために、内容物を充填したビンや缶に水蒸気や窒素ガスを吹付けて、ヘッドスペースの空気をこれらのガスで置換し、次いで蓋の打栓や缶蓋との二重巻締を行うことが一般に行われているが、これらの方法でも内容物の溶存酸素迄を除去することが困難であり、果実、果汁、野菜等のビン詰や缶詰では、溶存酸素による内容物の変質を生じることが知られている。
【0004】
この溶存酸素の影響を防止するために最も普通に採用されている方法は、容器表面の少なくとも一部を金属錫で構成し、金属錫層の還元作用で残存酸素の影響を防止しようとするものである。
【0005】
特公昭48−2782号公報には、缶内面に塗装する耐酸性塗料中に化合物中での錫比が大きく且つ錫イオンとしての解離度が大きい酸化第一錫或いはシュウ酸第一錫を固形物比5乃至30%分散させて成る塗料を缶内面に塗装して成る酸性果実、果汁等の缶詰用缶が記載されている。同様に、特公昭47−43−62号公報には、塗膜から溶出する錫量を1缶当たり内容物に対して20乃至80ppmにコントロールする野菜等の缶詰の製造法が記載されている。
【0006】
また、酸素吸収性の容器蓋として、酸素吸収剤をコルク或いは発泡樹脂のガスケット内に埋め込んだり、またその収納したものを多孔質フィルムで覆ったりしたものも知られている。
【0007】
更に、特公平4−31949号公報には、容器蓋殻体と該殻体の密封部に設けられるガスケットから成る容器蓋において、該密封用ガスケットは、ペースト用塩化ビニル樹脂、可塑剤、及び酸素吸収剤からなるプラスチゾル組成物であって、該酸素吸収剤は該樹脂成分に混練り、或いは該樹脂溶液又は溶融樹脂に分散、若しくは該樹脂に可塑剤をブレンドする際に分散させて含有されていることを特徴とする容器蓋が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の内、ブリキからの錫溶出を利用する方法は、現在市販されているブリキの殆ど全てが電気錫メッキであって錫メッキ量が少なく、溶存酸素除去に利用できる錫量が少なく、また、ブリキ地肌が露出しているため、一寸した擦り傷でも錆発生の原因となるという問題がある。
【0009】
缶用塗料中に酸化第一錫等を含有させる方法は、内容物中への錫溶出量をコントロールできるという点では、優れたものであるが、塗料中に含有させうる酸化第一錫の量は、塗料物性の点でも、塗膜の厚みや塗料の分散安定性の点でも、制約を受け、溶存酸素による影響を完全に防止する目的には未だ十分満足しうるものではない。
【0010】
また、酸素吸収剤を使用する方法は、原理的には優れているものの、使用できる酸素吸収剤に問題があり、酸素吸収性が大きく、経済的にも有利な鉄系酸素吸収剤は、溶出する鉄イオンによるフレーバー低下が大きく、未だ実用性に欠けている。また、酸素吸収剤として、ビタミン等の有機系のものを使用することも既に提案されているが、溶出量が規格を越える等の衛生上の問題がある。
【0011】
従って、本発明の目的は、包装容器内の残存酸素を、前述した欠点なしに、除去することが可能で、内容物の保存性を顕著に改善することが可能な包装容器を提供するにある。
本発明の他の目的は、第一錫化合物含有プラスチゾルを、面積の比較的小さな容器蓋に適用した場合にも、十分な香味保持性が得られる包装容器を提供するにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、包装容器の内面の少なくとも一部に、塩化ビニールペーストレジンと、固体の酸化第一錫と、可塑剤とを含んで成るプラスチゾルから形成された被覆層を設けて成り、前記塩化ビニールペーストレジンが、粒径が10乃至60μmの塩化ビニール樹脂粗粒子と粒径が0.1乃至5μmの塩化ビニール樹脂微粒子とを90:10乃至30:70の重量比で含むものであり、前記酸化第一錫が、塩化ビニール樹脂100重量部当たり5乃至100重量部の量で存在することを特徴とする保存性に優れた包装容器が提供される。
尚、以下の説明において、酸化第一錫を第一錫化合物と呼ぶことがある。
【0013】
本発明においては、
1.可塑剤が塩化ビニール樹脂100重量部当たり40乃至150重量部,特に50乃至100重量部の量で存在すること、
2.可塑剤がアセチルトリブチルシトレートまたはジアセチルモノグリセリドであること、
が好ましい。
【0014】
本発明において、上記第一錫化合物含有プラスチゾルから成る被覆層は、容器内面の少なくとも一部に設けられている限り、容器の形状或いは構造には何等制限を受けなく、容器或いは蓋の両方或いは一方に設けることができるが、包装容器が、容器本体とこれを密封する蓋体とからなり、前記蓋体の密封部よりも内側に前記被覆層が形成されている場合に、小面積の被覆で十分な残存酸素除去能が得られるので、本発明の目的に特に好都合である。
【0015】
【発明の実施形態】
本発明は、塩化ビニルペーストレジンとして、粒径が10乃至60μmの塩化ビニール樹脂粗粒子を含有する塩化ビニールペーストレジンを選択し、これに固体の第一錫化合物と可塑剤とを配合してプラスチゾルを形成し、このプラスチゾルを容器内面の少なくとも一部に被覆層として設けたことが顕著な特徴であり、これにより、第一錫の還元力を残存酸素の除去に有効に利用することが可能となる。尚、本明細書における粒径とは、電子顕微鏡写真から測定される粒径を意味する。
【0016】
本発明者らは、本発明に到達する過程で、次の興味のある事実を見いだした。先ず、本発明者らは、塩化ビニル樹脂のプラスチゾルは、製缶用塗料等とは異なり、第一錫化合物を任意の割合で配合できるものと推定した。この推定に基づき、通常の塩化ビニルペーストレジンから成るプラスチゾルに第一錫化合物を比較的高濃度に配合し、実際に容器内面に被覆層として設け、錫の溶出を測定した。ところが、期待に反して、錫の溶出量は殆どゼロか、ゼロでないにしても極めて少ないものであった。そこで、塩化ビニルペーストレジンに粒径が10乃至60の範囲にある塩化ビニール樹脂粗粒子を配合すると、この配合量の増大に伴って、被覆層からの錫の溶出量も増大するという驚くべき事実を見いだした。
【0017】
後述する例の表1を参照されたい。即ち、塩化ビニルペーストレジンに対する塩化ビニール樹脂粗粒子の配合量がゼロである場合、錫の溶出量は有効量には達しないが、塩化ビニール樹脂粗粒子の配合量を増大させると、これに伴って或るレベル迄は錫の溶出量が増大していることが了解される。また、塩化ビニルペーストレジンとして塩化ビニール樹脂粗粒子を含有するものを使用した場合、塩化ビニール樹脂に対する第一錫化合物の配合量を増大させると、この配合量の増大にも伴って、錫の溶出量も増大するという事実も明らかとなる。かくして、本発明によれば、第一には、塩化ビニルペーストレジン中の塩化ビニール樹脂粗粒子の含有量を調節することにより、第二には、塩化ビニール樹脂に対する第一錫化合物の配合量を調節することにより、残存酸素に応じて、その除去に必要な錫溶出量を自由に調節しうることが了解されよう。
【0018】
従来、塩化ビニール樹脂系のプラスチゾルにおいて、ペーストレジンとして、粗粒子タイプのもの(懸濁重合タイプ)と微粒子タイプのもの(入荷重合タイプ)とを組み合わせて使用すること自体は公知であるが、このプラスチゾルに第一錫化合物を配合することは知られていなく、況や、粗粒子タイプのものが、ゲル化したプラスチゾルからの第一錫化合物の溶出を促進することは、予測だにできなかったことである。
【0019】
本発明において、塩化ビニール樹脂プラスチゾルに配合された塩化ビニール樹脂粗粒子が、ゲル化した皮膜からの第一錫化合物の溶出を促進するという事実は、現象として見いだされたものであり、その理由は推測の域をでないが、次のように考えられる。即ち、塩化ビニール樹脂プラスチゾルのゲル化は、可塑剤中に分散した塩化ビニール樹脂粒子が、可塑剤を吸収して膨潤し、この粒子相互が密着して、石垣構造の一体化物を形成するものと信じられるが、塩化ビニール樹脂粗粒子を配合した場合には、この石垣構造中に第一錫化合物の溶出に適した隙間乃至空孔が形成され、これによりこの隙間乃至空孔通して第一錫化合物の溶出が生じるものと思われる。
【0020】
本発明に用いる塩化ビニール樹脂粗粒子は、前述した範囲の粒径を有することも重要である。即ち、粒径が前記範囲よりも小さいときには、第一錫化合物の溶出が不満足であって、残存酸素の捕捉が不十分であり、一方粒径が上記範囲よりも大きいと、プラスチゾルゲル被覆の物性が低下する傾向がある。
【0021】
本発明に用いるペーストレジンは、粒径が10乃至60μmの範囲にある上記の塩化ビニール樹脂粗粒子と、粒径が0.1乃至5μmの塩化ビニール樹脂微粒子とを90:10乃至30:70、特に85:15乃至40:60の重量比で含む。粗粒子の重量比が上記範囲よりも少ないと、やはり第一錫化合物(酸化第一錫)の溶出が少なく、一方上記範囲よりも多いと、プラスチゾルの分散安定性やコーティング性が低下し、被覆の物性も低下する。
【0022】
本発明の包装容器の一例を示す図1において、この包装容器は、ビン1と容器蓋2とからなっている。容器蓋2は、天面3と短いスカート4とスカート下端の密封用突起5とからなっている。天面3の内面の外周には密封用ガスケット6が設けられている。一方、ビン1は密封されるべき口部7と、口部の外周の密封用スクリュー8とを備えている。容器蓋2の密封用突起5がビン1の密封用スクリュー8と係合して、容器蓋2の締め付けが行われ、容器口部7がガスケット6に押圧されて密封が行われる。
【0023】
本発明では、容器蓋天面3の密封用ガスケット6よりも内側に、前述した第一錫化合物を配合した塩化ビニールプラスチゾルのゲル化被覆層9を設ける。内容物を充填したビン1に容器蓋2を密栓したとき、この被覆層9は容器内のヘッドスペースに露出し、一方、ヘッドスペースにおいては、被覆層9は水蒸気の凝縮が生じるため、被覆層9内の第一錫化合物はこの凝縮水中に溶出し、これにより、ヘッドスペース中に存在し、或いは内容物中に溶存している酸素の還元が行われる。これにより、内容物の酸化劣化や風味の低下が有効に抑制されるのである。
【0024】
[プラスチゾル]
本明細書において、プラスチゾルとは、塩化ビニル系樹脂と可塑剤と他の配合成分とを混合し、ペースト状にしたもので加熱によりゲル化し、均一な弾性体になり得るものを言う。
【0025】
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体の他、塩化ビニルと少量の共単量体、例えば酢酸ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエンとの共重合体も使用できる。これらの塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に制限はなく、一般に500乃至3000のものが好都合である。
【0026】
粒径が10乃至60μmの範囲にある塩化ビニール樹脂粗粒子としては、懸濁重合法によるものの内、上記粒径を満足するものが使用される。懸濁重合法では、塩化ビニールモノマー或いは更にコモノマーを、分散剤や分散助剤の存在下に水中に懸濁させ、重合開始剤により、懸濁状態を保ちつつ重合を行う。このため、得られる樹脂粒子の粒径が粗大であるという特徴を有している。一方、上記粗粒子と組み合わせで使用する塩化ビニール樹脂微粒子は、容器ガスケット形成用のプラスチゾルに普通に使用されている所謂ペーストレジンであり、このものは、乳化重合法による粒径の比較的微細なものである。これらの両樹脂は、前述した重量比で組み合わせて使用される。
【0027】
プラスチゾルに配合する第一錫化合物としては、酸化第一錫が使用される。酸化第一錫は、第一錫化合物の中でももっとも単純な化合物であり、しかも重量当たりの還元力がもっとも高いという利点を有している。酸化第一錫の粒径は、一般に0.1乃至30μmの範囲にあるのがよい。
【0028】
プラスチゾルの必須成分である可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂に対し一般に使用されている可塑剤、例えば、次のものを単独又は組合せで用いることができる。
1.フタール酸エステル
フタール酸ジエチル
フタール酸ジ−n−ブチル
フタール酸ジ−i−ブチル
フタール酸ジヘキシル
フタール酸ジ−i−ヘプチル
フタール酸ジオクチル(DOP)
[n−オクチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル(オキソ)を含む]
フタール酸ジ−i−ヘプチル−i−ノニル
フタール酸ジ−n−オクチル−n−デシル
フタール酸ジデシル
[n−デシル、i−デシルを含む]
フタール酸ブチルベンジル
フタール酸ジフェニル
フタール酸ジシクロヘキシル
フタール酸ジメチルシクロヘキシル
フタール酸ジメトキシエチル
フタール酸ジブトキシエチル
エチルフタリルエチルグリコレート
ブチルフタリルブチルグリコレート
2.脂肪族二塩基酸エステル
アジピン酸ジ−i−ブチル
アジピン酸オクチル
[2エチルヘキシル、n−オクチル共]
アジピン酸ジデシル
[i−デシル、n−デシル共]
アジピン酸ジ(n−オクチル−n−デシル)
アジピン酸ジベンジル
セバチン酸ジブチル
[n−ブチル]
セバチン酸ジオクチル
[2エチルヘキシル、n−オクチル共]
アゼライン酸−n−ヘキシル
アゼライン酸ジオクチル
[2エチルヘキシル]
3.リン酸エステル;
リン酸ジフェニル2エチルヘキシル
4.ヒドロキシ多価カルボン酸エステル
酒石酸ジエチル
アセチルクエン酸トリエチル
アセチルクエン酸トリブチル
アセチルクエン酸2エチルヘキシル
クエン酸モノイソプロピル
クエン酸トリブチル
クエン酸モノ、ジ、トリステリル
5.脂肪酸エステル
アセチルリシノール酸メチル
パルミチン酸エチル
ステアリン酸エチル
ステアリン酸n−ブチル
ステアリン酸アミル
ステアリン酸シクロヘキシル
オレイン酸ブチル
水添ロジンメチルエステル
6.多価アルコールエステル
グリセリントリアセテート
グリセリントリプロピオネート
グリセリントリブチレート
グリセリントリヘプタノエート
グリセリンモノアセチルモノステアレート
グリセリンモノアセチルモノラウレート
トリエチレングリコールジカプリレート
トリエチレングリコールジカプレート
ペンタンジオールジイソ酪酸エステル
7.エポキシ系可塑剤
エポキシ化大豆油
エポキシ化ヒマシ油
エポキシ化アマニ油
エポキシ化サフラワー油
エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル
エポキシステアリン酸オクチル
[i−オクチル、2エチルヘキシル共]
3−(2−キセノキシ)−1・2エポキシプロパン
8.ポリエステル系可塑剤
ポリ(ジエチレングリコール、テルペン無水マレイン酸付加物)エステル
ポリ(プロピレングリコール、アジピン酸)エステル
ポリ(1・3ブタンジオール、アジピン酸)エステル
ポリ(プロピレングリコール、セバチン酸)エステル
ポリ(1・3ブタンジオール、セバチン酸)エステル
ポリ(プロピレングリコール、フタール酸)エステル
ポリ(1・3ブタンジオール、フタール酸)エステル
ポリ(エチレングリコール、アジピン酸)エステル
ポリ(1・6−ヘキサンジオール、アジピン酸)エステル
アセチル化ポリ(ブタンジオール、アジピン酸)エステル
[ブタンジオールは1・3−及び1・4−タイプ]
9.その他
アルキルスルホン酸(C12〜C20)
フェノールエステル
アルキルスルホン酸(C12〜C20)
クレゾールエステル
水素化ポリブテン
p−tert−ブチルフェニルサリシレート
塩素化パラフィン。
【0029】
これらの可塑剤の内でも、アセチルトリブチルシトレートまたはジアセチルモノグリセリドが、第一錫化合物の溶出性の点で好ましい。
【0030】
可塑剤の使用量は、塩化ビニールペーストレジン100重量部当たり40乃至150重量部、特に50乃至100重量部の範囲が適当である。
【0031】
本発明に用いるプラスチゾルには、上記必須成分に加えて、それ自体公知の配合剤、例えば熱安定剤、滑剤、充填剤、顔料、粘着付与剤等を配合しうる。
【0032】
塩化ビニル系樹脂は、高温において脱塩化水素反応を生じ、着色と物性の低下とを生じる。これを防止するために熱安定剤を配合する。熱安定剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系安定剤や、ビスフェノールA、グリシン系安定剤、有機錫系安定剤等のそれ自体公知の塩化ビニル樹脂用熱安定剤を用いることができる。
【0033】
塩化ビニール樹脂被覆に滑り性を付与することを目的として、滑剤を配合することができる。滑剤としては、(イ)流動、天然または合成パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、(ロ)ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、(ハ)ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系のもの、(ニ)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、(ホ)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、(ヘ)ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケンおよび(ト)それらの混合系が一般に用いられる。滑剤は、塩化ビニール樹脂100重量部当たり0.5乃至5重量部の量で使用するのが望ましい。
【0034】
また、塩化ビニール樹脂被覆の機械的特性の調節を目的として充填剤を配合でき、更にこれを着色することを目的として顔料を配合することができる。充填剤としては、シリカ、アルミナ、アタパルガイド、カオリン、カーボンブラック、グラファイト、微粉ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイソウ土、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、スレート粉、セリサイト、フリント、炭酸カルシウム、タルク、長石粉、二硫化モリブデン、バライト、ひる石、ホワイティング、マイカ、ろう石クレイ、石こう、炭化ケイ素、ジルコン、ガラスビーズ、シラスバルーン、アスベスト、ガラス繊維、カーボン繊維、ロックウール、スラグウール、ボロンウスイカ、ステンレススチール繊維等を挙げることができ、また、顔料としては、チタン白、亜鉛華、ベンガラ、鉄黒、黄色酸化鉄、チタンエロー、酸化クロムグリーン、群青、紺青等が挙げられる。
【0035】
更に、塩化ビニール樹脂プラスチゾルを加熱ゲル化させる際、蓋体とゲルとの間に適当な接着力が得られるように、粘着付与剤(タッキイファイアー)を配合することができる。粘着付与剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、石油樹脂、スチレン系樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。これらの粘着付与剤は、塩化ビニール樹脂100重量部当たり5乃至20重量部の量で用いるのがよい。
【0036】
[蓋体]
蓋体は、容器内外の圧力差にかかわらず、天面内面との密封或いは天面内面に施されたガスケットとの密封が維持されるような剛性を有するべきであり、各種金属、プラスチック或いはこれらの複合体から形成されているのがよい。金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の軽金属板や、ブリキ、テインフリースチール等の表面処理鋼板等が使用される。プラスチックとしては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、スチレン系樹脂等が挙げられる。蓋体の構造は、王冠、スクリュウキャップ、ピルファープルーフ型キャップ、ラグキャップ、ホワイトキャップ、タブ切り裂き開口型キャップ等であってよい。
【0037】
金属蓋では、塗装金属板のプレス成形乃至絞り成形で形成されており、一方プラスチック蓋では、プラスチックの射出成形やプレス成形で形成されている。
【0038】
蓋体が金属製である場合には、内面及び外面はそれ自体公知の保護塗料で塗装されている。また、天面の内面側には、塩化ビニル樹脂プラスチゾルに対して、そのゲル化の際に接着性を示す塗料を予め施しておく。この塗料は、金属蓋の場合、金属の腐食からの保護をも兼ねるものである。
【0039】
この様な接着性塗料としては、エポキシ樹脂系接着塗料、ウレタン樹脂系接着塗料、塩化ビニル樹脂系接着塗料、アクリル系接着塗料、酸変性オレフィン樹脂含有接着塗料等が、用いるプラスチゾルの組成との組み合わせで、適宜選定使用される。接着性塗料の厚みは3乃至7μmが適当である。
【0040】
金属製の蓋体やプラスチック性の蓋体であっても硬質のものでは、天面内面の外周部に密封用ガスケットを設けるのがよく、この密封用ガスケットは、塩化ビニール樹脂粗粒子と第一錫化合物とを含有しない点を除いて、前述したのと同様な塩化ビニール樹脂プラスチゾルを使用して形成することができる。
【0041】
[施用及びゲル化]
蓋体へのプラスチゾルの施用は、蓋体を内面が上向きになるように位置させ、プラスチゾルをスピンコートするか、或いはプラスチゾルの注加と型押しとで行うことができる。前者の場合、蓋体を回転可能なチャック上に保持し、蓋体を回転させながら、プラスチゾルを天面内面に一様に広がるようにする。また、後者の場合、所定量のプラスチゾルを天面内面に注加し、これを型押しすることにより、所定の厚み及び形状に成形する。プラスチゾルが低粘度である場合には、前者の方法が有利であり、プラスチゾルが高粘度である場合には、後者の方法が有利である。
【0042】
第一錫化合物含有プラスチゾル組成物の粘度は、一般的に言って、1000乃至20000 センチポイズ(20℃)の範囲にあるのが好ましい。スピンコート法では、チャックの回転速度は、一般に300乃至1500rpmの回転数から、ゾル状密封剤組成物の粘度に応じて、適度の塗布が行われるように回転数を選ぶ。
【0043】
第一錫化合物含有プラスチゾル組成物の塗布量は、容器の内容積や酸素残存量によっても相違するので一概に規定できないが、一般に内容物当たり、金属錫として、10乃至150ppm,特に20乃至100ppmの溶出錫量が得られるように、プラスチゾルを施すのがよい。
【0044】
蓋体内に施した第一錫化合物含有プラスチゾル層を加熱によりゲル化させる。プラスチゾルでは、加熱により分散媒である可塑剤が重合体中に吸収されると共に、全体が一体となって第一錫化合物含有被覆層が形成される。
加熱温度は、180乃至250℃の温度が適当である。加熱雰囲気は、大気中でもよいが、窒素等の不活性雰囲気或いは減圧下に行ってもよい。
【0045】
[その他の応用]
本発明を、蓋体の天面内面に第一錫化合物含有プラスチゾルを施す場合について専ら説明したが、勿論、第一錫化合物含有プラスチゾルは、例えば容器の底部及び/または胴部の内面に施すことができ、これによっても同様な効果が奏されることが理解されるべきである。
【0046】
【実施例】
本発明を次の例で具体的に説明する。
【0047】
実施例1
粗粒子塩ビ樹脂と微粒子塩ビ樹脂の比を変え合計100重量部としたものに対して可塑剤として65重量部のAMG(アセチルモノグリセライド)と、酸化錫を一定量(1〜200重量部)添加した組成のペーストコンパウンドを作成し常法に従いシートに焼き付けた後、0.1%クエン酸水溶液に浸漬し、95℃で1時間保持した後、錫の溶出量を測定した。測定は原子吸光法で測定した。液比は1cm2 :2mlとした。このとき使用した塩ビ樹脂はレーザー光線散乱法による測定では粗粒子タイプは平均粒径が33μmであり、微粒子タイプの平均粒径は4μmであった。またこれらのコンパウンドについてそのライニング成形性を調べた。
結果を次表に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
実施例2
粗粒子塩ビ樹脂80重量部と微粒子塩ビ樹脂20重量部の合計100重量部としたものに対して各種可塑剤を65重量部、酸化錫を10重量部添加した組成のペーストコンパウンドを作成し常法に従いシートに焼き付けた後、0.1%クエン酸水溶液に浸漬し、95℃で1時間保持した後、錫の溶出量を測定した。測定は原子吸光法で測定した。液比は1cm2 :2mlとした。このとき使用した塩ビ樹脂は実施例1と同様である。
結果を次表に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
実施例3
粗粒子塩ビ樹脂80重量部と微粒子塩ビ樹脂20重量部の合計100重量部としたものに対して可塑剤としてAMGを65重量部、酸化錫を10重量部添加した組成のコンパウンドを作成し直径約70mmのラグキャップの内側天面の中央にライニングした。このときの塗布面積は外側ライナーとほぼ接触した状態にした。比較品として同一組成で酸化錫を入れないコンパウンドも作成した。これらを常法に従い焼き付けた後、口径約70mmのガラス壜に100%果汁のオレンジジュース、トマトジュース及びアップルジュースを85℃に加温して詰めたものに施栓し、促進のため40℃に放置し経時的に色調、味、臭いの変化について調べた。
【0053】
【表4】
褐変臭はいも臭ともいわれるもの
【0054】
実施例4
粗粒子塩ビ樹脂80重量部と微粒子塩ビ樹脂20重量部の合計100重量部としたものに対して可塑剤としてAMGを65重量部、酸化錫を10重量部添加した組成のコンパウンドを作成し直径約70mmのラグキャップの内側天面の中央にライニングした。このときの塗布面積は外側ライナーに接触した状態にした。比較品として同一組成で酸化錫を入れないコンパウンドも作成した。これらを常法に従い焼き付けた後、腐食促進液を入れた壜に施栓し40℃に横置き放置し経時による内面の腐食状態を目視にて調べた。なお比較キャップとしてキャップの天面中央に塩ビコンパウンドを塗布しないものも供試した。その結果を次表に示す。
【0055】
【表5】
注1 錆発生程度
○ 錆発生無し
△ 錆発生わずか
× 錆発生
×× 錆発生大
注2 Aは腐食促進液で5%酢酸+0.1%亜硫酸ナトリウムの水溶液
注3 Bは腐食促進液で5%酢酸+2%食塩の水溶液
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、塩化ビニルペーストレジンとして、粒径が10乃至60μmの塩化ビニール樹脂粗粒子と粒径が0.1乃至5μmの塩化ビニール樹脂微粒子とを所定の量比で含有する塩化ビニールペーストレジンを選択し、これに固体の第一錫化合物(酸化第一錫)と可塑剤とを配合してプラスチゾルを形成し、このプラスチゾルを容器内面の少なくとも一部に被覆層として設けたことにより、第一錫化合物の内容物への溶出を、有効にしかも制御された量で行い、従来の技術の欠点なしに、第一錫の還元力を残存酸素の除去に有効に利用することが可能となり、これにより、内容物の香味保持性を向上させることができる。また、第一錫化合物含有プラスチゾルを、面積の比較的小さな容器蓋に適用した場合にも、十分な香味保持性が得られるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の包装容器の一例を示す断面図である。
【記号の説明】
1 ビン
2 容器蓋
3 天面
4 スカート
5 密封用突起
6 密封用ガスケット
7 ビンの口部
8 密封用スクリュー
9 第一錫化合物配合塩化ビニールプラスチゾルのゲル化被覆層
Claims (4)
- 包装容器の内面の少なくとも一部に、塩化ビニールペーストレジンと、固体の酸化第一錫と、可塑剤とを含んで成るプラスチゾルから形成された被覆層を設けて成り、前記塩化ビニールペーストレジンが、粒径が10乃至60μmの塩化ビニール樹脂粗粒子と粒径が0.1乃至5μmの塩化ビニール樹脂微粒子とを90:10乃至30:70の重量比で含むものであり、前記酸化第一錫が、塩化ビニール樹脂100重量部当たり5乃至100重量部の量で存在することを特徴とする保存性に優れた包装容器。
- 可塑剤が塩化ビニール樹脂100重量部当たり40乃至150重量部の量で存在する請求項1に記載の包装容器。
- 可塑剤がアセチルトリブチルシトレートまたはジアセチルモノグリセリドである請求項1または2に記載の包装容器。
- 包装容器が、容器本体とこれを密封する蓋体とからなり、前記蓋体の密封部よりも内側に前記被覆層が形成されている請求項1乃至3の何れかに記載の包装容器。
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