JP3870611B2 - 水平制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水平制御装置に関するものであり、特に、農業用トラクタや乗用管理機等の水平制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
農業用トラクタや乗用管理機等の農用作業車両では、機体の後部にリンク機構を介してロータリ等の作業機を連結し、該機体と作業機の間に機体に対する作業機のローリング角を変更するアクチュエータを設けるとともに、該機体に作業機のローリング角を設定する傾き調整ダイヤル等を設け、作業機のローリング角を自動的に調整する水平制御装置を備えたものが知られている。
【0003】
この水平制御装置には、機体と作業機の間に作業機のローリング角を検出するセンサを設けるとともに、該機体に機体のローリング角を検出する傾斜センサを設け、各センサの検出値に基づいて機体のローリング角と作業機のローリング角を演算し、機体の姿勢に拘らず作業機のローリング角を水平に維持すべく前記アクチュエータへ駆動信号を出力したり、或いは、機体のローリング角と作業機のローリング角を平行に維持すべく前記アクチュエータを駆動するように制御している。
【0004】
一般に傾斜センサは、筐体内に常時鉛直方向に向かう振り子を吊り下げておき、該振り子に対して機体に取り付けた筐体の左右傾斜の角度変化を検出するように構成されており、該振り子自体の慣性力のため、例えば機体が右下がり方向に傾斜し始めるときは、該振り子は相対的に左側に取り残される。従って、傾斜センサは機体の傾斜開始直後は逆方向の検出信号を出力し、また、検出信号の出力に時間遅れが生じることで、機体の傾斜を迅速に検出するという応答性が良好ではない。
【0005】
これに対して、機体に機体のローリング角速度を検出するローリング角速度センサを設け、該ローリング角速度センサの検出値から機体のローリング角を演算する方法も考えられる。しかし、機体の走行速度や圃場の硬さ、或いはタイヤのラグパターン等の走行条件や圃場条件により種々のノイズが発生し、ローリング角速度センサの出力信号には連続的に小刻みの変化が表れる。該ローリング角速度センサの出力変化に同期して作業機のローリング角を調整するには、全く応答遅れのない可変スピードの出せるアクチュエータが必要となり、構成が複雑になるとともに極めて高価となる。
【0006】
また、振動ジャイロ式のローリング角速度センサは温度変化により基準電圧がドリフトし易く、環境条件により角速度なしとみなす電圧即ちローリング角速度センサの基準値が変動することがある。
【0007】
図8は振動ジャイロ式ローリング角速度センサの出力信号の変化を示し、機体が左方向へローリングしたときの角速度の変化がグラフの上方向に表れ、機体が右方向へローリングしたときの角速度の変化が下方向に表れるものとしたとき、機体の振動ノイズによって、ローリング角速度センサの検出信号には連続的に小刻みの変化が表れる。そして、左方向角速度のピーク値(上端ピーク値)と右方向角速度のピーク値(下端ピーク値)の中間値が、角速度なしとみなす電圧即ちローリング角速度センサの基準値C0であるが、振動ジャイロ式のローリング角速度センサは温度変化により内部抵抗が変わりやすく、このため例えば該基準値がC1のように左ローリング側へ徐々に変化することがある。
【0008】
更に、作業機を硬い地面上に着地させたときの左右リンクの捩じれや、作業機を昇降したときのリンク機構のガタ等により、機体と作業機とのローリング角が変化することがあり、然るときは、作業機が傾斜していないにも拘らず、水平制御信号が出力されて前記アクチュエータが駆動され、作業機が不必要な動きをするという不具合が生じてしまう。
【0009】
そこで、機体と作業機の間に設けられたアクチュエータを駆動し、作業機のローリング角を調整して水平制御を行う際に、機体に設けたローリング角速度センサのノイズに対応して正確な水平制御を行うとともに、ローリング角速度センサの基準値を簡易且つ正確に設定するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、機体の後部にリンク機構(11)を介して作業機(12)を連結し、該機体と作業機(12)の間に機体に対する作業機(12)のローリング角を変更するアクチュエータと該機体に対する作業機(12)のローリング角を検出する手段(31)とを設け、該機体に機体のローリング角を検出する傾斜センサ(41)と、作業機(12)のローリング角を設定する傾き設定手段(17)とを備えた水平制御装置に於いて、該機体に機体がローリングするときのローリング角速度検出手段(43)を設け、該ローリング角速度検出手段(43)により右方向角速度のピーク値と左方向角速度のピーク値を所定時間継続して測定し、短期間の角速度ピーク値の平均値を算出するとともに複数の短期間角速度平均値から長期間角速度平均値を算出し、短期間角速度平均値の変化の差が規定値内にあり、且つ、該長期間角速度平均値と直前の短期間角速度平均値が規定値内にあるときは、該長期間角速度平均値からローリング角速度検出手段(43)の基準値を設定し、該ローリング角速度検出手段(43)の検出値が前記基準値を中心とする不感帯内にあるときは、前記傾斜センサ(41)の検出値に基づき作業機(12)のローリング角を調整し、前記不感帯より大きなローリング角速度を検出したときは該ローリング角速度検出手段(43)の検出値に基づき作業機(12)のローリング角を調整するように構成した水平制御装置を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に従って詳述する。図1及び図2は作業車両の一例として小型のトラクタ10を示し、機体の後部にリンク機構11を介してロータリ作業機12が連結されている。運転席13の近傍には作業機の昇降位置設定手段であるポジションレバー15、作業機の耕深量設定手段である耕深調整ダイヤル16、作業機のローリング角を設定する傾き設定手段である傾き調整ダイヤル17等が設けられている。また、ミッションケース18の上面部には後車軸19の近傍上方位置の略中央部に、機体のローリング角を検出する手段である傾斜センサ41と、機体がピッチングするときの角速度を検出する手段であるピッチング角速度センサ42と、機体がローリングするときの角速度を検出する手段であるローリング角速度センサ43がケース44内に一体的に収納されている。
【0012】
前記リンク機構11はトップリンク20と左右のロワリンク21,21とからなり、左右のリフトアーム22,22の先端とロワリンク21,21をリフトロッド23,23にて連結し、リフトシリンダ24の駆動にてリフトアーム22を回動することにより、リフトロッド23,23を介してロワリンク21,21が上下動する。斯くして、ロワリンク21,21の先端部を回動中心に前記ロータリ作業機12が昇降する。
【0013】
リフトアーム22の回動基部には、作業機の昇降位置を検出する手段としてリフトアーム角センサ25が設けられ、このリフトアーム角センサ25にてリフトアーム22の回動角を検出し、コントローラ50にてロータリ作業機12の昇降高さを演算する。また、ロータリ作業機12のメインカバー26の後端部にリヤカバー27を上下回動自在に取り付け、リヤカバーセンサ28により前記リヤカバー27の回動角を検出して、コントローラ50にてロータリ作業機12の耕深量を演算する。
【0014】
一方、機体に対するロータリ作業機12のローリング角を変更するためのアクチュエータとして、左右どちらかのリフトロッド23の途中にローリングシリンダ30を設け、該ローリングシリンダ30を伸縮させてロワリンク21のリフト量を左右で変えることにより、機体に対するロータリ作業機12の左右方向への傾きを変更できるように形成してある。
【0015】
そして、機体に対するロータリ作業機12のローリング角を検出する手段として、前記ローリングシリンダ30に隣接してストロークセンサ31を設け、該ストロークセンサ31によリローリングシリンダ30の伸縮長さを検出し、機体に対するロータリ作業機12のローリング角をコントローラ50にて演算するとともに、前記傾き調整ダイヤル17の設定値に応じてローリングシリンダ30を駆動し、ロータリ作業機12の水平制御を行えるようにしてある。
【0016】
ここで運転席13の前方には機体の操舵操作部であるステアリングハンドル32が設けられ、該ステアリングハンドル32の近傍位置に前後進切換えレバー33を設けてあり、該前後進切換えレバー33を操作することにより、後輪34へ伝達する駆動力を逆転させて、機体の進行方向を選択できるようにしてある。また、運転席13の前下方部に変速レバー35を設置するとともに、左右独立して踏み込み可能な左右ブレーキペダル36,36が設けられている。前記、ステアリングハンドル32の回転操作は操舵装置37へ伝達され、操舵量に応じて前輪38が回向する。前輪38の操舵量は前輪切れ角センサ39によって検出される。
【0017】
図3は制御系のブロック図であり、耕深調整ダイヤル16によってロータリ作業機12の耕深目標値を設定し、リフトアーム角センサ25の検出信号にてロータリ作業機12の昇降位置を演算するとともに、リヤカバーセンサ28にてリヤカバー27の回動角を検出してロータリ作業機の耕深量を演算する。そして、リヤカバー27の回動角を前記耕深調整ダイヤル16にて設定された耕深目標値に応じた所定角に維持すべく、リフトシリンダ24を駆動する電磁制御弁の上昇ソレノイドまたは下降ソレノイドへコントローラ50から制御信号を出力する。従って、リフトアーム22が上下回動してロータリ作業機12が昇降し、リヤカバー27が回動してリヤカバーセンサ28の検出値が耕深目標値と一致するように制御される。
【0018】
一方、傾き調整ダイヤル17によってオペレータがロータリ作業機12のローリング角を任意に設定できる。地面に対する機体のローリング角は傾斜センサ41にて検出し、機体に対するロータリ作業機12のローリング角はストロークセンサ31にて検出する。従って、双方のセンサの検出値からロータリ作業機12の地面に対するローリング角を演算することができ、前記傾き調整ダイヤル17にて設定された作業機のローリング角を維持すべく、ローリングシリンダ30を駆動する電磁制御弁の右上げソレノイドまたは右下げソレノイドへコントローラ50から制御信号を出力する。従って、ローリングシリンダ30が伸縮してロータリ作業機12のローリング角が変更され、ストロークセンサ31の検出値が水平制御の目標値と一致するように制御される。
【0019】
尚、ピッチング角速度センサ42及びローリング角速度センサ43は夫々振動ジャイロ方式のものを使用しており、構造が簡単で精密且つ安価である。しかし、振動ジャイロ方式以外のセンサであってもよい。之等傾斜センサ41とピッチング角速度センサ42とローリング角速度センサ43は、後車軸19の近傍上方位置の略中央部に設けられており、前輪38側に設置する場合と比較して機体の重心に近くなり、上下方向の振動が少なく外乱を受けにくくなって測定精度が向上する。また、前記3つのセンサがすべてケース44内に一体的に収納されているので、設置スペースがコンパクトになり、電源回路を共用できる等、設置作業も簡単となる。
【0020】
更に、水平切換スイッチ45により、水平モードと機体平行モードと角度設定モードとを選択可能にしてあり、機体と作業機の相対的な傾き及び地面に対する傾きを検出しながら、該水平切換スイッチ45でセットしたモードに応じて水平制御の目標値を定め、前記ローリングシリンダ30を駆動してロータリ作業機12の傾きを調整する。
【0021】
例えば、水平切換スイッチ45が水平モードにセットされているときは、傾斜センサ41の検出値とストロークセンサ31の検出値からロータリ作業機12の地面に対する傾きを算出し、この傾きをゼロにするように水平制御の目標値を定める。そして、ストロークセンサ31の計測値がこの目標値に一致するように、ローリングシリンダ30を駆動する電磁制御弁の右上げソレノイドまたは右下げソレノイドへコントローラ50から制御信号を出力する。従って、機体の姿勢に拘らずロータリ作業機12の左右方向の傾きが水平となるように制御される。
【0022】
一方、水平切換スイッチ45が機体平行モードにセットされているときは、左右のロワリンク21のリフト量を等しくするように水平制御の目標値を定める。そして、ストロークセンサ31の計測値がこの目標値に一致するようにローリングシリンダ30を駆動すべく、コントローラ50から前記右上げソレノイドまたは右下げソレノイドへ制御信号を出力する。従って、ロータリ作業機12の左右方向の傾きが機体の傾きと平行になるように制御される。
【0023】
また、水平切換スイッチ45が角度設定モードにセットされているときは、オペレータが任意に設定した傾き調整ダイヤル17の設定値に応じて水平制御の目標値を定め、ストロークセンサ31の計測値がこの目標値に一致するようにローリングシリンダ30を駆動すべく、コントローラ50から前記右上げソレノイドまたは右下げソレノイドへ制御信号を出力する。従って、ロータリ作業機12が設定した任意の傾きとなるように制御される。
【0024】
ここで、機体の走行速度や圃場の硬さ或いはタイヤのラグパターン等、走行条件や圃場条件によって、前記ローリング角速度センサ43の検出信号には種々の振動に起因するノイズが発生する。例えば、図4に示すように、ローリング角速度センサ43の出力信号が0Vから最大5Vまで変化し、機体が左方向へローリングしたときの角速度の変化がグラフの上方向に表れ、機体が右方向へローリングしたときの角速度の変化が下方向に表れるものとしたとき、機体の振動ノイズによって、ローリング角速度センサ43の検出信号には連続的に小刻みの変化が表れる。
【0025】
従って、ローリング角速度に基づいて水平制御を行う場合は、左方向角速度のピーク値(上端ピーク値)と右方向角速度のピーク値(下端ピーク値)を所定時間継続して測定し、各ピーク値の移動平均値を算出し、左方向角速度ピーク値の移動平均値と右方向角速度ピーク値の移動平均値とからローリング角速度センサ43の基準値Cを設定する。そして、図4の点線にて示すように、上記基準値Cに対して予め所定範囲(例えば中立位置を中心として±1V〜1.5V)の不感帯Uを定めておき、ローリング角速度センサ43の検出値が該不感帯U内にあるときは、機体の固有振動による角速度検出と見做して、前記傾斜センサ41の検出値にて機体のローリング角を算出し、該傾斜センサ41の検出値に基づいてローリングシリンダ30用の電磁制御弁へ「右上げ」または「右下げ」の水平制御信号を出力する。いま、図4のtmからtnのように、該不感帯Uより大きなローリング角速度を検出したときは、前記ローリング角速度センサ43の検出値に基づいてローリングシリンダ30用の電磁制御弁へ水平制御信号を出力する(この場合は機体が左側にローリングしたので「右下げ」の水平制御信号)。
【0026】
図5のフローチャートに示すように、水平制御が開始されると、先ず、各種センサやスイッチ及びダイヤル等の状態をコントローラ50に読み込み(Step100)、続いて、ローリング角速度センサ43の基準値を設定するとともに(Step110)、傾斜センサ41の基準値を設定する(Step120)。そして、夫々センサの基準値を中心として所定範囲の不感帯を定めておき、ローリング角速度センサ43の検出値がこの不感帯内にあるときは前述した振動ノイズと見做して、傾斜センサ41の検出値に基づいて機体のローリング角を算出し、該傾斜センサ41の検出値に基づいてローリングシリンダ30用の電磁制御弁へ「右上げ」または「右下げ」の水平制御信号を出力する(Step140)。これに対して、ローリング角速度センサ43の検出値が前記不感帯から外れて、左方向または右方向に大きな角速度が検出されたときは、該ローリング角速度センサ43の検出値に基づいてローリングシリンダ30用の電磁制御弁へ水平制御信号を出力する(Step150)。
【0027】
尚、ローリング角速度センサ43にて検出された機体のローリング角速度をω、検出時間をTとすれば、機体のローリング角θは次式で表される。
【0028】
θ=ω×T
上式によって求められた機体のローリング角θとストロークセンサ31の検出値から、ロータリ作業機12のローリング角を演算し、傾き調整ダイヤル17の設定値に応じて前記ローリングシリンダ用の電磁制御弁へ水平制御信号を出力する。
【0029】
図6は前記ローリング角速度センサ43の基準値を設定するフローチャートを示し、先ずローリング角速度センサ43の検出信号をコントローラ50に読み込み(Step200)、続いてローリング角速度センサ43のピーク値を収集する(Step210)。いま、図4に示したような振動ノイズが発生している場合、左方向角速度のピーク値(上端ピーク値)と右方向角速度のピーク値(下端ピーク値)を所定時間継続して測定し、短期間に於ける角速度の各ピーク値の平均値(短期間角速度平均値)ωavSnを算出する(Step220)。
【0030】
続いて、複数の短期間角速度平均値から長期間に於ける角速度の各ピーク値の移動平均値(長期間角速度移動平均値)ωavLnを算出する(Step230)。複数の短期間角速度平均値の収集個数(即ち収集時間)は特に限定すべきではないが、本実施の形態では、一番古い短期間角速度平均値から最新の短期間角速度平均値まで連続する8個のデータを収集して長期間角速度移動平均値ωavLnを算出する。即ち、圃場条件や走行条件により異なってくるが、機体の固有振動数の最低一周期以上の整数倍(1〜3倍程度)を短期間角速度平均値の収集時間として、適正な平均値を得るようにしている。
【0031】
いま、直前に算出した短期間角速度平均値ωavSnと、その一つ前に算出した短期間角速度平均値ωavSn-1との差が規定値以内であり(Step240)、且つ、前記長期間角速度移動平均値ωavLnと前記直前の短期間角速度平均値ωavSnの双方が規定値以内であるときは(Step250)、一番古い短期間角速度平均値を捨てて直前の短期間角速度平均値ωavSnを短期間角速度平均値の今回データωavSpとして採用する(Step260)。然る後、この新たな短期間角速度平均値を含めた8個の短期間角速度平均値(ωavSp, ωavSp-1,…ωavSp-7)から長期間角速度移動平均値ωavLnを再計算する(Step270)。
【0032】
そして、再計算された長期間角速度移動平均値ωavLnが規定範囲にあるときは(Step280)、該長期間角速度移動平均値ωavLnをローリング角速度センサ43の基準値ωbasenとし、図4に示したローリング角速度センサ43の中立位置Cと不感帯Uとを設定する(Step290)。一方、再計算された長期間角速度移動平均値ωavLnが規定範囲から外れたときは、前回までの基準値ωbasenを使用する(Step300)。また、Step240に於いて、直前の短期間角速度平均値ωavSnと前回の短期間角速度平均値ωavSn-1との差が規定値を超えた場合や、Step250に於いて、直前の短期間角速度平均値ωavSnが長期間角速度移動平均値ωavLnと規定値以上変動したときは、夫々の値が規定値と略同じになるまでは、その短期間角速度平均値を長期間角速度移動平均値の演算に組み込まないようにする。
【0033】
即ち、図4にて古い短期間角速度平均値ωavSp-7(図中ではスペースの都合によりωavを省略して単にSp-7と記載し、以下他の平均値も同様にしてωavを省略して記載する)から次の短期間角速度平均値ωavSp-6, ωavSp-5,…と新たな短期間角速度データωavSpまで8個のデータを移動平均して長期間角速度移動平均値ωavLnを算出する。次に、新たに得られた短期間角速度平均値ωavSnが、その一つ前に算出した短期間角速度平均値ωavSn-1即ち前回最新であった短期間角速度平均値ωavSpとの差が規定値以内であって、且つ、前記長期間角速度移動平均値ωavLnと新たな短期間角速度平均値ωavSnの双方が規定値以内であるときは、前回までの一番古い短期間角速度平均値ωavSp-7を捨てて新たな短期間角速度平均値ωavSnを今回データωavSpとして採用し、新たな長期間角速度移動平均値ωavLn+1を算出する。
【0034】
斯くして、温度変化等によってローリング角速度センサ43の基準値が変動したり、緩やかなローリング角速度が発生して基準値が変動したとき等に、ローリング角速度センサ43の基準値を誤判定せず、ローリング角速度の有無を性格に判定することができる。
【0035】
ここで、傾斜センサ41やローリング角速度43だけではなく、前記ストロークセンサ31に対しても不感帯を設定することにより、トラクタ10の機体とロータリ作業機12の間に設けられているリンク機構11の捩じれやガタ等による誤動作や不必要な動きを抑止することができる。例えば、図7のフローチャートに示すように、傾斜センサ41の検出値と傾き設定ダイヤル17の設定値と現在のストロークセンサ31の検出値とから、前記ローリングシリンダ30を駆動したときのストロークセンサ31の目標値を設定し(Step310)、このストロークセンサ目標値と実際のストロークセンサ検出値とを比較する(Step320)。
【0036】
双方の差がストロークセンサ31の不感帯を超えていて、且つ、傾斜センサ41の検出値に変化があったり傾き調整ダイヤル17の設定値に変化がある場合は(Step340)、機体にローリング変化が生じたときであるので、ローリングシリンダ30用の電磁制御弁に対する水平制御信号の出力を大きくして、ロータリ作業機12の傾きを直ちに修正する(Step350)。
【0037】
これに対して、前記ストロークセンサ目標値と実際のストロークセンサ検出値との差が不感帯を超えている場合であっても、傾斜センサ41の検出値に変化がないとき、或いは傾き調整ダイヤル17の設定値に変化がない場合は、ローリングシリンダ30用の電磁制御弁に対する水平制御信号の出力を小さくして、ロータリ作業機12の傾きを緩慢に修正する(Step360)。これは、ロータリ作業機12を硬い地面上に着地させたときの左右ロワリンク21,21の捩じれや、ロータリ作業機12を昇降したときのリンク機構11のガタ等により機体とロータリ作業機12とのローリング角が変化し、ストロークセンサ31が動いてしまったためであると見做すものであり、然るときは、水平制御信号の出力を小さくするか出力ディレーをかけて、ローリングシリンダ30の駆動を制限する。また、Step330に於いて差が不感帯内にあるときは、水平制御信号を出力しない(Step370)。斯くして、ロータリ作業機12が不必要に動くことを防止できる。
【0038】
尚、図示は省略するが、傾斜センサ変化での水平制御出力の不感帯とストロークセンサ変化での水平制御出力の不感帯とに差を設け、ストロークセンサ変化時の不感帯の方を大きくして動きを鈍くするようにしてもよい。また、オペレータの意思により手動操作にてローリング角を修正しようとしたときは、ストロークセンサ31の検出値に拘らず、ローリングシリンダ30用の電磁制御弁に水平制御信号を出力する。そして、傾斜センサ変化での水平制御出力またはストロークセンサ変化での水平制御出力の何れであっても、一旦水平制御信号を出力した後は狭い不感帯にて停止するように制御して、水平精度を確保するものとする。
【0039】
ここで、前記リンク機構11の部品のばらつきや組み立て誤差などにより、ローリングシリンダ30を伸縮しない場合であっても、ロータリ作業機12の昇降位置によってストロークセンサ31の検出値が変化することがある。このため、ロータリ作業機12が下降した状態でのストロークセンサ31の機体に対する平行位置をフラッシュメモリやEEPROM等の記憶手段に記憶するとともに、ロータリ作業機12が最上げ状態でのストロークセンサ31の機体に対する平行位置を前記記憶手段に記憶しておく。そして、ポジションレバー15の操作位置やリフトアーム角センサ25の検出値に基づいてロータリ作業機の昇降高さを判別し、下降状態と最上げ状態とでストロークセンサ31の基準値を変更することにより、リンク機構11の微調整を行わずしてストロークセンサ31の精度を向上できる。
【0040】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0041】
【発明の効果】
本発明は上記一実施の形態に詳述したように、請求項1記載の発明は機体の傾斜センサの検出値と機体のローリング角速度の検出値とに基づいて作業機の水平制御を行う際に、左右のローリング角速度のピーク値を所定時間継続して測定し、短期間角速度平均値と長期間角速度平均値とを算出する。そして、短期間角速度平均値の変化の差が規定値内にあり、且つ、長期間角速度平均値と直前の短期間角速度平均値が規定値内にあるときは、該長期間角速度からローリング角速度検出手段の基準値を設定するので、温度変化や機体の振動ノイズによるローリング角速度の検出信号の変化に対して、正確にローリング角速度検出手段の基準値を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、トラクタの機体とロータリ作業機の側面図。
【図2】リヤカバーセンサ等の図示を省略した図1の背面図。
【図3】本発明の一実施の形態を示し、制御系のブロック図。
【図4】本発明の一実施の形態を示し、ノイズがあるときのローリング角速度センサの検出信号を表したグラフ。
【図5】本発明の一実施の形態を示し、水平制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【図6】本発明の一実施の形態を示し、ローリング角速度センサの基準値を設定するフローチャート。
【図7】本発明の一実施の形態を示し、ストロークセンサの不感帯を設定するフローチャート。
【図8】振動ジャイロ式ローリング角速度センサの温度変化により基準値が変動したときの検出信号を示すグラフ。
【符号の説明】
10 トラクタ
11 リンク機構
12 ロータリ作業機
17 傾き調整ダイヤル
30 ローリングシリンダ
31 ストロークセンサ
40 エンジン回転数センサ
41 傾斜センサ
43 ローリング角速度センサ
50 コントローラ
Claims (1)
- 機体の後部にリンク機構(11)を介して作業機(12)を連結し、該機体と作業機(12)の間に機体に対する作業機(12)のローリング角を変更するアクチュエータと該機体に対する作業機(12)のローリング角を検出する手段(31)とを設け、該機体に機体のローリング角を検出する傾斜センサ(41)と、作業機(12)のローリング角を設定する傾き設定手段(17)とを備えた水平制御装置に於いて、
該機体に機体がローリングするときのローリング角速度検出手段(43)を設け、該ローリング角速度検出手段(43)により右方向角速度のピーク値と左方向角速度のピーク値を所定時間継続して測定し、短期間の角速度ピーク値の平均値を算出するとともに複数の短期間角速度平均値から長期間角速度平均値を算出し、短期間角速度平均値の変化の差が規定値内にあり、且つ、該長期間角速度平均値と直前の短期間角速度平均値が規定値内にあるときは、該長期間角速度平均値からローリング角速度検出手段(43)の基準値を設定し、該ローリング角速度検出手段(43)の検出値が前記基準値を中心とする不感帯内にあるときは、前記傾斜センサ(41)の検出値に基づき作業機(12)のローリング角を調整し、前記不感帯より大きなローリング角速度を検出したときは該ローリング角速度検出手段(43)の検出値に基づき作業機(12)のローリング角を調整するように構成したことを特徴とする水平制御装置。
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JP17135499A JP3870611B2 (ja) | 1999-06-17 | 1999-06-17 | 水平制御装置 |
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JP17135499A JP3870611B2 (ja) | 1999-06-17 | 1999-06-17 | 水平制御装置 |
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