JP3866909B2 - 無線中継装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、時分割多重方式を使用して通信を行う通信システムで、基地局と端末との間を無線中継する無線中継装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話などに使用する移動体無線通信は、サービスエリアの広がりとともに広く普及するようになってきている。ただし、サービスエリア内でも、屋内などの電波が届かないエリアでは移動体無線通信のサービスを受けることができない。移動体無線通信の普及に伴い、屋内などで電波が届かないエリアでも無線通信サービスを利用したいという要望が高まってきている。たとえば、PHS(
Personal Handyphone System)においては、公衆基地局の電波を受信し、それを中継して送信する装置として、リピータあるいはホームアンテナ装置と呼ばれる無線中継装置を、公衆基地局からの電波の届きやすい家屋の窓際に設置することで、室内でも利用できる電波状態にすることが可能となっている。
【0003】
図5は、無線中継装置10を用いる一般的なPHS通信網の概要を示す。CSで示す公衆基地局21,22,23は、ISDN網30などの電話回線網を介して相互に接続される。各公衆基地局21,22,23は、位置についての情報を送信している。PSで示す各端末11〜16は、内部で記憶している位置情報と公衆基地局21,22,23から送信される位置情報とが一致していないときには、公衆基地局21〜23に位置登録要求を行い、ISDN網30を介して接続されるPHSサービス制御局内の位置情報を更新する。
【0004】
PHS通信システムで使用する電波は、サービスエリア内でも屋内などには届きにくい。このため、屋内でもPHSの無線通信を利用したい場合に、無線中継装置10を窓際などに設置し、たとえばPHSの端末15,16と公衆基地局22との間での無線通信を中継する。
【0005】
図6は、従来からの無線中継装置10の概略的な構成を示す。この無線中継装置10は、アンテナ31、方向性結合器32、受信部33、送信部34および無線信号処理部35で構成される。アンテナ31は、電波を送受信するために設けられる。方向性結合器32は、アンテナ31で受信する受信信号を受信部33に伝送するとともに、送信部34からの送信信号をアンテナ31に伝送する。無線信号処理部35は、受信信号の解析や送信信号の構築、タイムスロットの使用など通信プロトコル全般を制御する。
【0006】
図7は、図6の無線信号処理部35によって使用されるタイムスロットの概要を示す。PHSでは、1つの周波数の電波を、時間的に8分割して多重化して利用する。8分割されたタイムスロットは、送信と受信とに4つずつ使用され、送信と受信との組で考えれば、1〜4の4つのチャネル分として、PHS通信に利用されている。
【0007】
近年、移動体無線通信においてもインターネットへのアクセスでホームページを閲覧したり、電子メールを送受信したりするデータ通信に対する利用が増加している。PHSにおいては、データ通信速度も音声通信と同一の1チャネル分のタイムスロットを使用する32Kbpsから、2チャネル分のタイムスロットを使用する64Kbpsへと発展し、無線中継装置10でもそれに対応して、中継時に2チャネルを使用するものも用いられている。図6の構成では、無線機は1台しかないので、全部で4チャネル分のタイムスロットしか利用することができず、例えば64Kbpsの無線データ通信を中継する際には、端末側との通信に2チャネルを使用し、公衆基地局側との通信にも2チャネルを使用するので、4チャネル全部を使用してしまうことになる。
【0008】
図8は、図5に示す無線中継装置10として、アンテナ31a,31b、方向性結合器32a,32b、受信部33a,33b、送信部34a,34b、無線信号処理部35a,35bをそれぞれ含む2台の無線機36a,36bをインタフェース40を介して相互に結合している構成を示す。各無線機36a,36bは、4チャネル分ずつタイムスロットを使用することができるので、合計8チャネル分のタイムスロットを使用することができる。
【0009】
図9は、図8の2台の無線機36a,36bを用いて使用可能な8チャネル分のタイムスロットを示す。無線機36a,36bでは、それぞれ同一のタイミングでタイムスロットが設定されているので、同じ時間タイミングに2つのチャネルが存在することになる。
【0010】
一般に、同一タイミングのタイムスロットを2以上同時に使用する際には、そのタイムスロット間の受信レベル差、および通信を行う端末の送信雑音による受信抑圧特性によって、無線特性劣化が発生することがある。この結果として誤り率特性が悪くなり、通信の維持に支障をきたす場合がある。このような場合は、無線特性の劣化を検出してから、使用しているタイムスロットを、通信中のチャネル切替動作で、移動させたり、予め同一タイミングのタイムスロットは使用しないように動作を制限するようにしている。
【0011】
なお、特開平6−338854号公報には、デジタル携帯電話装置で、複数の基地局との間で時分割された複数の通信スロットを使用して通信が可能な場合に、公衆基地局間で送信タイミングの同期が全く取られていないために生じる干渉を防ぐように、タイムスロットを切替える考え方が示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、図8に示すような無線機2台を使用する中継装置を使用すると、同一タイミングの2つのタイムスロットを使用し、無線中継を行うことができる。ただし、同一タイミングの2つのタイムスロットを使用して無線特性の劣化を検出すると、使用しているタイムスロットを、PHSの規約に定められている通信中チャネル切替手順に従って変更する必要がある。無線状態が劣化している状況下でのチャネル切替動作は、その制御メッセージが正しく伝送される確率が低くなるため、100%成功するとは限らない。そこで、予め同一タイミングのタイムスロットを使用しないように動作を制限しておくことが考えられる。この場合は、同一タイミングの2つのタイムスロットを同時に使用することはなくなるけれども、タイムスロットの使用に制限が加わるため、通信の開始時に使用可能な空きタイムスロットがないために通信を確立させることができなくなりやすく、無線中継装置10を経由する無線通信の接続率が低下するという問題が生じる。受信レベルが端末側および公衆基地局側とも充分に大きく、無線特性の劣化が問題ない条件でも使用可能なタイムスロットが制限されるからである。
【0013】
本発明の目的は、無線特性劣化が生じるか否かを適切に判定し、無線特性劣化が生じ得るような周辺電波状態では、できるだけ同一タイミングのタイムスロットを同時に使用しないように制御することができる無線中継装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、時分割多重通信方式を用いる無線機を複数備え、各無線機が同一のタイミングで無線機毎に異なるタイムスロットに属するチャネルの使用を可能とすると共に、当該タイムスロットを用いて、時分割多重通信方式を用いる基地局と端末との無線中継あるいは端末と端末との無線中継を行う無線中継装置において、
受信電波の電界強度を測定する測定部と、
該測定部によって測定される基地局からの電波の受信電界強度を、周辺電波状態として記憶する記憶部と、
無線中継の開始時に該記憶部に記憶されている周辺電波状態に基づいて、同一タイミングで異なる複数のタイムスロットに属するチャネルを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定する判定部と、
該判定部によって受信特性が劣化すると判定されたとき、同一タイミングで異なる複数のタイムスロットが設定されないように、各無線機で使用するタイムスロットを決定する無線信号処理部とを含むことを特徴とする無線中継装置である。
【0015】
本発明に従えば、無線中継装置は、時分割多重通信方式を用いる基地局と端末とを無線中継、あるいは端末と端末とを無線中継するために使用される。無線中継装置には複数の無線機が備えられ、各無線機が同一のタイミングで無線機毎に異なるタイムスロットに属するチャネルの使用を可能とする。無線中継装置は、測定部、記憶部、判定部および無線信号処理部を含む。測定部は、受信される電波の電界強度を測定する。記憶部は、測定部によって測定される基地局からの電波の受信電界強度を、周辺電波状態として記憶する。判定部は、記憶部に記憶されている周辺電波状態に基づいて、同一タイミングで複数の無線機がそれぞれ異なるタイムスロットに属するチャネルを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定する。無線信号処理部は、判定部によって、受信特性が劣化すると判定されるときは、同一タイミングで複数のタイムスロットの使用を避けるように、各無線機のタイムスロットを決定する。周辺電波状態に基づき、同一タイミングで複数のタイムスロットを使用する無線中継を行うときには受信特性が劣化すると判定されれば、同一タイミングのタイムスロットの使用を避け、無線特性劣化を防止することができる。受信特性が劣化しないと判断されるときは同一タイミングで複数のタイムスロットに属するチャネルを使用することも可能になるので、通信の開始時に、使用可能な空いているタイムスロットがある可能性が大きくなり、タイムスロットがないために通信の確立を行うことができず、無線中継装置を経由した通信の接続率が低下してしまう問題を避けることができる。
【0016】
また本発明で前記記憶部は、無線中継装置設置後の動作開始時に前記測定部によって測定される基地局からの電波の受信電界強度を、周辺電波状態として記憶することを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、無線中継装置を設置した後の動作開始時に、基地局からの電波の受信電界強度を観測して、周辺電波状態として記憶させておくので、同一のタイミングで複数のタイムスロットを同時に使用するときに問題が発生しやすいか否かを予め判定しておき、同一のタイミングのチャネルを使用して無線特性劣化が生じてから通信中チャネル切替えを行うような事態を避けることができる。
【0018】
また本発明で前記判定部は、基地局と端末との間で無線中継を開始する際の初期通信時に前記測定部によって測定される端末からの電波の受信電界強度と前記記憶部に記憶されている周辺電波状態とに基づいて、同一タイミングで複数のタイムスロットを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定することを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、基地局と端末との間で無線中継を開始する際の初期通信時に、測定部によって測定される端末からの電波の受信電界強度と記憶部に記憶されている周辺電波状態に基づいて同一タイミングで複数のタイムスロットを使用可能か否かを判定するので、無線中継を行うタイミング毎に適切な判定を行うことができる。
【0020】
また本発明で前記判定部は、基地局と端末または端末と端末との間の無線中継を行っているとき、当該無線中継時に前記測定部によって測定される基地局または端末からの電波の受信電界強度と端末からの電波の受信電界強度とに基づいて、同一タイミングで複数のタイムスロットを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定することを特徴とする。
【0021】
本発明に従えば、無線中継を開始した後でタイムスロットの受信レベルを監視し、無線特性劣化が発生しやすい電波状況に遷移しはじめると、通信中チャネル切替えなどを行って、無線中継を適切に継続させることができる。
【0022】
さらに本発明は、時分割多重通信方式を用いる無線機を複数備え、各無線機が同一のタイミングで無線機毎に異なるタイムスロットに属するチャネルの使用を可能とすると共に、当該タイムスロットを用いて、時分割多重通信方式を用いる基地局と端末との無線中継あるいは端末と端末との無線中継を行う無線中継装置において、
全ての通信における受信電波の電界強度を測定する測定部と、
基地局と端末または端末と端末との間の無線中継を行っているとき、あるいは無線中継中の通信中チャネル切替を行うとき、当該無線中継時に前記測定部によって測定される基地局または端末からの電波の受信電界強度と端末からの電波の受信電界強度とに基づいて、同一タイミングで異なる複数のタイムスロットに属するチャネルを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定する判定部と、
該判定部によって受信特性が劣化すると判定されたとき、同一タイミングで異なる複数のタイムスロットが設定されないように、各無線機で使用するタイムスロットを決定する無線信号処理部とを含むことを特徴とする無線中継装置である。
【0023】
本発明に従えば、無線中継装置は、時分割多重通信方式を用いる基地局と端末あるいは端末と端末とを無線中継するために使用される。無線中継装置には複数の無線機が備えられ、各無線機が同一のタイミングで無線機毎に異なるタイムスロット使用を可能とする。無線中継装置は、測定部、判定部および無線信号処理部を含む。測定部は、受信される電波の電界強度を測定する。判定部は、基地局と端末または端末と端末との間の無線中継を行っているとき、あるいは無線中継中の通信中チャネル切替を行うとき、当該無線中継時に前記測定部によって測定される基地局からの電波の受信電界強度と端末からの電波の受信電界強度とに基づいて、同一タイミングで複数の無線機がそれぞれ異なるタイムスロットに属するチャネルを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定する。無線信号処理部は、判定部によって、受信特性が劣化すると判定されるときは、同一タイミングで複数のタイムスロットの使用を避けるように、各無線機のタイムスロットを決定する。周辺電波状態に基づき、同一タイミングで複数のタイムスロットを使用する無線中継を行うときには受信特性が劣化すると判定されれば、同一タイミングのタイムスロットの使用を避け、無線特性劣化を防止することができる。受信特性が劣化しないと判断されるときは同一タイミングで複数のタイムスロットを使用することも可能になるので、通信の開始時に、使用可能な空いているタイムスロットがある可能性が大きくなり、タイムスロットがないために通信の確立を行うことができず、無線中継装置を経由した通信の接続率が低下してしまう問題を避けることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態としての無線中継装置50の概略的な電気的構成を示す。本実施形態の無線中継装置50も、図8に示す無線中継装置と同様に、アンテナ51a,51b、方向性結合器52a,52b、受信部53a,53b、送信部54a,54b、無線信号処理部55a,55bをそれぞれ含む2台の無線機56a,56bを備え、インタフェース60を介して相互に接続するようにしている。無線機56a,56bを2台使用するので、図9と同様に、同一タイミングで2つのタイムスロットを同時に使用可能である。このような無線中継装置50は、サービスエリア内でも、基地局からの電波が届きにくい場所で、基地局からの電波を中継することによって、端末を使用可能にするために設けられる。無線中継は、端末と無線中継装置50との間、および無線中継装置50と基地局との間でそれぞれ行う必要があるので、端末側への通信と基地局側への通信とで異なるタイムスロットを使用すると、1つの音声通信には、2チャネル分のタイムスロットを使用することになり、64Kbpsのデータ通信であれば、合計4チャネル分のタイムスロットを使用してしまう。
【0025】
図1の無線中継装置50では、同一タイミングで2つの無線機56a,56bがタイムスロットを同時に使用した場合に、受信特性の劣化を生じないようにするため、図8に示すような従来の無線中継装置の構成要素に加え、各タイムスロットの受信レベルを測定する測定部61と、受信レベルを記憶する記憶部62と、記憶部62の記憶内容から同一タイミングのタイムスロットの受信レベルを比較する比較部63と、比較部63での比較結果によって、問題の発生を予測判定する判定部64とを含む。無線信号処理部55a,55bは、同一タイミングで2以上のタイムスロットを使用した場合に、受信特性の劣化が生じないようにするため、判定部64の判定結果に従って、使用するタイムスロットを決定し、無線制御を行う。
【0026】
図2は、図1の無線中継装置50が、設置後に周辺電波状態を記憶部62に記憶させ、各無線中継時に記憶させた周辺電波状態に従って、同一タイミングで複数のタイムスロットを同時に使用するか否かを判定する手順を示す。ステップa1で無線中継装置50を設置すると、ステップa2では基地局からの電波を受信する。ステップa3では、受信電波の電界強度を測定部61によって観測し、ステップa4で電界強度を周辺電波状態として記憶部62に記憶する。
【0027】
ステップa5では、無線中継の開始を待つ。無線中継の開始時には、ステップa6で記憶部62から呼び出して電波状態を解析する。ステップa7では、解析結果に基づいて、受信特性が劣化する可能性があるか否かを判断する。受信特性劣化の可能性がないと判断されるときには、ステップa8で、同一タイミングのタイムスロットの設定が可能であると判定する。ステップa7で、受信特性劣化の可能性があると判断されるときには、ステップa9で同一タイミングのタイムスロットの設定が不可であると判定する。ステップa8またはステップa9の手順の終了後は、ステップa10で無線中継の終了を判断し、ステップa5に戻る。
【0028】
すなわち、無線中継装置50を基地局からの電波の届く場所に設置し、電源を投入したときに基地局から送信されている制御用情報を検索し、その際に制御用情報の受信レベル値を測定部61で観測して記憶部62に記憶させる。測定部61で観測された受信強度の情報は、デジタルデータの形で記憶部62に記憶され、比較部63で予め設定してある受信強度の基準値と比較し、受信強度の基準値よりも制御用情報を受信した際の受信強度の方が大きいか小さいかを判定部64で判定する。判定部64では、比較結果に基づいて、無線中継装置50の設置環境で同一タイミングのタイムスロットを使用しても無線特性の劣化が起こらない条件か否かを判定し、無線信号処理部55a,55bに対してタイムスロットの使用方法を通知する。また、ステップa4の後にステップa6を行い、設置時にステップa8,a9の判断をし、動作を決定させることもできる。
【0029】
図3は、本発明の実施の他の形態での制御手順として、回線接続の制御手順に従う無線中継の開始時に、同一のタイミングでタイムスロットを同時に使用するか否かの判定を行う手順を示す。ステップb1から手順を開始し、ステップb2では端末PSからのリンクチャネル確立要求があるか否かを判定し、確立要求があるまで待つ。リンクチャネル確立要求があれば、ステップb3で端末PSからの電波の受信強度を測定部61で観測する。ステップb4では、基地局CSからの電波受信強度を測定部61で観測する。測定部61での観測結果は、記憶部62にそれぞれ記憶する。ステップb5では、記憶部62に記憶されている周辺電波状態に基づいて、双方の受信状態を比較する。ステップb6では、どちらの受信強度がどのくらいの差で大きいか小さいかに従い、同一タイミングのタイムスロットを使用しても無線特性の劣化が起こらない条件か否かを判定し、無線信号処理部55a,55bに対し、タイムスロットの使用方法を通知する。すなわち、ステップb6で、無線特性の劣化が起こり得ない条件と判定されれば、ステップb7で同一タイミングのタイムスロットの使用可の判定を行う。ステップb6で無線特性の劣化が起こり得る条件と判定されれば、ステップb8で同一タイミングのタイムスロットの使用不可の判定を行う。ステップb7またはステップb8の手順が終了すると、ステップb9で無線通信の終了を判断し、ステップb2に戻る。
【0030】
図4は、本発明の実施のさらに他の形態として、同一タイミングのタイムスロットの同時使用を開始した後で、受信強度に基づく判定を行う手順を示す。ステップc1から手順を開始し、ステップc2では同一タイミングでの複数のタイムスロット使用を行っているか否かを判定する。同一タイミングのタイムスロットを使用していない場合は、本手順を行わない。同一タイミングのタイムスロット使用と判定されれば、ステップc3、ステップc4およびステップc5の各ステップを、図3ステップb3、ステップb4およびステップb5の各ステップと同様に行う。ステップc6では、ステップc5の双方の受信状態比較結果に基づき、同一タイミングのタイムスロットの使用継続で無線特性劣化が生じる可能性があるか否かを判定する。無線特性劣化が生じる可能性があると判定されるときには、ステップc7で、無線信号処理部55a,55bに対し、チャネル切替指示を与える。ステップc7の手順が終了した後、またはステップc6で無線特性劣化の生じる可能性がないと判定されるときには、ステップc2に戻る。
【0031】
以上説明した各実施形態は、それぞれ単独で行ってもよく、また組合せることもできる。また、端末と端末との無線中継を行う場合においても適用することができる。また、PHSの他にも、時分割方式を使用する通信システムであれば、本発明を同様に適用することができる。さらに無線機は、3台以上であっても、本発明を同様に適用することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、同一タイミングの異なるタイムスロットを複数の無線機が同時に使用する際に、タイムスロット間の受信レベル差や通信を行う端末の送信雑音による受信抑圧特性で、無線特性劣化が発生する条件にならないようにできるだけ同一タイミングで複数のタイムスロットを同時に使用しないように制御することができる。受信電波の電界強度が双方とも充分に大きく無線特性劣化が発生しないような条件では、同一タイミングで複数の無線機がそれぞれ異なるタイムスロットを同時に使用するので、無線中継装置を経由する通信の接続率の低下を避けることができる。
【0033】
また本発明によれば、無線中継装置の設置時に、基地局からの受信電波の電界強度を観測して周辺電波状態として記憶しておくので、同一のタイミングで複数のタイムスロットを同時に使用するときに無線特性劣化が発生しやすいか否かを予め判定しておくことができる。
【0034】
また本発明によれば、無線中継の開始時に、基地局からの受信電波の電界強度と、端末からの受信電波の電界強度とを比較し、双方の電波の受信状態に基づいて判定を行うので、無線中継を行うたびに同一タイミングのタイムスロットを複数同時に使用するか否かについて適切に判定することができる。
【0035】
また本発明によれば、同一タイミングで複数のタイムスロットを同時に使用するように無線中継を開始した後でも、無線特性の劣化が生じる可能性があると判定されるようになれば、できるだけ同一タイミングのタイムスロットを同時に使用しないように制御することができる。
【0036】
さらに本発明によれば、同一タイミングの異なるタイムスロットを複数の無線機が同時に使用する際に、タイムスロット間の受信レベル差や通信を行う端末の送信雑音による受信抑圧特性で、無線特性劣化が発生する条件にならないようにできるだけ同一タイミングで複数のタイムスロットを同時に使用しないように制御することができる。基地局および端末からの受信電波の電界強度が双方とも充分に大きく無線特性劣化が発生しないような条件では、同一タイミングで複数の無線機がそれぞれ異なるタイムスロットを同時に使用するので、無線中継装置を経由する通信の接続率の低下を避けることができる。また、端末と端末との無線中継を行う場合においても適用することができ、同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態としての無線中継装置50の概略的な電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1の無線中継装置50を設置後に基地局からの電波を受信し、その受信強度に基づいて同一タイムスロットを同時に使用するか否かを判定する手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の他の形態としての判定手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施のさらに他の形態としての判定手順を示すフローチャートである。
【図5】PHS通信システムの概要を示す図である。
【図6】図5の通信システムで使用する無線中継装置10の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】図6の無線中継装置で使用するタイムスロットを示す図である。
【図8】図5の無線中継装置としての他の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】図8の無線中継装置で使用するタイムスロットを示す図である。
【符号の説明】
50 無線中継装置
51a,51b アンテナ
52a,52b 方向性結合器
53a,53b 受信部
54a,54b 送信部
55a,55b 無線信号処理部
56a,56b 無線機
60 インタフェース
61 測定部
62 記憶部
63 比較部
64 判定部
Claims (5)
- 時分割多重通信方式を用いる無線機を複数備え、各無線機が同一のタイミングで無線機毎に異なるタイムスロットに属するチャネルの使用を可能とすると共に、当該タイムスロットを用いて、時分割多重通信方式を用いる基地局と端末との無線中継あるいは端末と端末との無線中継を行う無線中継装置において、
受信電波の電界強度を測定する測定部と、
該測定部によって測定される基地局からの電波の受信電界強度を、周辺電波状態として記憶する記憶部と、
無線中継の開始時に該記憶部に記憶されている周辺電波状態に基づいて、同一タイミングで異なる複数のタイムスロットに属するチャネルを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定する判定部と、
該判定部によって受信特性が劣化すると判定されたとき、同一タイミングで異なる複数のタイムスロットが設定されないように、各無線機で使用するタイムスロットを決定する無線信号処理部とを含むことを特徴とする無線中継装置。 - 前記記憶部は、無線中継装置設置後の動作開始時に前記測定部によって測定される基地局からの電波の受信電界強度を、周辺電波状態として記憶することを特徴とする請求項1記載の無線中継装置。
- 前記判定部は、基地局と端末との間で無線中継を開始する際の初期通信時に前記測定部によって測定される端末からの電波の受信電界強度と前記記憶部に記憶されている周辺電波状態とに基づいて、同一タイミングで複数のタイムスロットを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の無線中継装置。
- 前記判定部は、基地局と端末または端末と端末との間の無線中継を行っているとき、当該無線中継時に前記測定部によって測定される基地局または端末からの電波の受信電界強度と端末からの電波の受信電界強度とに基づいて、同一タイミングで複数のタイムスロットを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の無線中継装置。
- 時分割多重通信方式を用いる無線機を複数備え、各無線機が同一のタイミングで無線機毎に異なるタイムスロットに属するチャネルの使用を可能とすると共に、当該タイムスロットを用いて、時分割多重通信方式を用いる基地局と端末との無線中継あるいは端末と端末との無線中継を行う無線中継装置において、
全ての通信における受信電波の電界強度を測定する測定部と、
基地局と端末または端末と端末との間の無線中継を行っているとき、あるいは無線中継中の通信中チャネル切替を行うとき、当該無線中継時に前記測定部によって測定される基地局または端末からの電波の受信電界強度と端末からの電波の受信電界強度とに基づいて、同一タイミングで異なる複数のタイムスロットに属するチャネルを使用するときに受信特性が劣化するか否かを判定する判定部と、
該判定部によって受信特性が劣化すると判定されたとき、同一タイミングで異なる複数のタイムスロットが設定されないように、各無線機で使用するタイムスロットを決定する無線信号処理部とを含むことを特徴とする無線中継装置。
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