JP3866827B2 - ブラインドリベット、及び、ブラインドリベット構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、片面から操作することができるブラインドリベット、ブラインドリベット構造体、ブラインドリベットに用いるマンドレルおよび環状ボディに関し、特に複写機等の締結に好適なマンドレル、環状ボディ、ブラインドリベットおよびブラインドリベット構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
図13に示すように、複写機の構造体としては、主として上から順に、スキャナユニット(読取部分)51と、本体ユニット(感光体等が入っている部分)52と、給紙ユニット53との3つに分かれている。従来では、量産段階の製造効率を上げるため、荷重のあまりかからないスキャナユニット51にのみリベット54を使用していた。
【0003】
このリベット54は、例えば、側面同士を板金で折った形にして穴を開けて止めている。このような締結では、片面から締結操作ができるブラインドリベット54が使用されている。このブラインドリベット54は、図15に示すように、塑性変形される環状のボディ55とこのボディ55を塑性変形するマンドレル56とを備えている。
【0004】
前記ボディ55は、マンドレル56を挿通する同径の筒部の一端に被締結部材に当接するフランジ部55aを備えている。前記マンドレル56は、先端にボディ55の筒部を座屈させるヘッド部56aおよびヘッド部56aの後方に突出する同径の円柱部56bを備え、この円柱部56bには締結後に破断される括れを形成した破断部56cが設けられている。
【0005】
このようなブラインドリベットを用いて、被締結部材である第1部材3および第2部材4を締結するには、先ず、図14(A)に示すように、リベッター57にリベット54を装着し、結合部分である第1部材3および第2部材4の穴に差し込む。次に、図14(B)に示すように、リベッター57のハンドル(不図示)を握ってマンドレル56を方向α(図15参照)に引いて、ボディ55を座屈させる。次に、図14(C)に示すように、さらにマンドレル56を引いて破断部56cから破断させて締結が完了する。
【0006】
通常、ブラインドリベットで板金と板金とを締結するとき、ブラインドリベットを挿通する穴径3a,4aをブラインドリベットの挿通部分の外径より充分に大きくして余裕をもたせている。その理由は、リベット54を入れやすくする点と、寸法精度を上げるとコスト増となる点と、穴径に余裕が少ないと反りを抑えるための治具が必要になる点とを避けるためである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなブラインドリベットを本体ユニット52や給紙ユニット53に使用するには、先ず、スキャナユニット51との荷重のかかり方の違いを考慮する必要がある。締結したときに従来のブラインドリベットでは、穴径に余裕をもたせた分、隙間が残っている。したがって、大きな荷重がかかるとずれてしまうという問題があった。
【0008】
即ち、図16に示すように、従来のブラインドリベットにおいては、締結後に環状ボディ55と締結される第1部材3及び第2部材4との間に隙間Sが発生していた。第1部材3及び第2部材4の穴径を環状ボディ55の外径と同径、またはそれに近い径にしておけば、隙間Sを少なくすることは可能である。しかし、隙間Sを少なくした場合には、加工性や組み付け性が悪くなるという欠点がある。
【0009】
第2部材4に関しては、環状ボディ55の変形による喰い付き部により、力を受けても環状ボディ55と第2部材4との相対的な位置関係は保たれるが、環状ボディ55と第1部材3との位置関係は、リベット締結により得た締結力F1に基づく力に依存している。つまり、図16、17に示すように第1部材3および第2部材4が、環状ボディ55に対してせん断力を与えるような力f2を受け、かつせん断力f2の大きさが締結力F1と摩擦係数との積を越えたときに、環状ボディ55と第1部材3は相対的に隙間Sの量だけ移動してしまう。
【0010】
締結力F1の大きさや、摩擦係数は、環状ボディ55、第1部材3および第2部材4の表面の状態などによる影響が大きく、小さい力によってでも移動が起きてしまう場合がある。つまり、第1部材3と第2部材4とを高位置精度でブラインドリベットにより締結する場合に、隙間Sがあることによって構造体、あるいは機構部品として位置関係が変化してしまうという問題があった。
【0011】
そこで本発明の目的は、締結後に生じていた隙間をなくし、加工性及び組み付け性を損なうことがなく、複写機の最下段等の荷重が大きくかかる部分に適用しても経時的に位置の変化の発生しない締結を行うことができるマンドレル、環状ボディ、ブラインドリベットおよびブラインドリベット構造体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1のブラインドリベットは、被締結部材に挿通される環状ボディと、該環状ボディに挿通して該環状ボディを塑性変形させるマンドレルとを備えたブラインドリベットにおいて、前記マンドレルは、前記環状ボディの一端部に当接されるヘッド部と、該ヘッド部に連結され、前記環状ボディに挿通されるシャフト部とを有し、該シャフト部は、前記ヘッド部に連結される太径の第1胴部と、第1胴部より細径に形成された第2胴部と、前記第1胴部と第2胴部との間に設けられた段差部とを備えるとともに、前記環状ボディは、太径の第1穴部と、該第1穴部に段差部を介して連続する、前記第1穴部より細径の第2穴部と、該第2穴部の端部に設けたフランジ部とを備え、かつ、前記環状ボディの段差部の傾斜角より前記マンドレルの段差部の傾斜角の方が緩やかであることを特徴とするブラインドリベットである。
【0013】
また、請求項2のブラインドリベットは、請求項1に記載のブラインドリベットにおいて、上記マンドレルのヘッド部とシャフト部との間に、シャフト部の先端径より小径の小径部分が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3のブラインドリベットは、請求項1または請求項2に記載のブラインドリベットにおいて、前記環状ボディは、前記第2穴部を構成する第2環状胴部における膨径による有効容積が被締結体の穴部と環状ボディの外周との間の隙間の容積より大きい場合に、この膨径による有効容積が隙間からはみ出した部分を吸収する吸収部を備えているとともに、少なくとも被締結部材と環状ボディとにより形成される隙間の端部まで前記環状ボディの膨径により充填される大きさを有する環状溝部を備えていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4のブラインドリベット構造体は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のブラインドリベットにより被締結部材が締結されてなることを特徴とするブラインドリベット構造体である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、重複した繁雑な説明を避けるため、同一の構成、同様な構成は、共通の符号をもって示し、その説明を割愛する。
【0024】
図1は本発明の実施形態に係わるブラインドリベットの断面図である。
図1に示すように、このブラインドリベットは、塑性変形される環状ボディ2とこの環状ボディ2を塑性変形するマンドレル1とを備えている。
【0025】
前記環状ボディ2は、マンドレル1を挿通する第2環状胴部2gの基端に被締結部材(図2の第1部材3および第2部材4)に当接するフランジ部2hを備えるとともに、環状ボディ2の内径には膨径手段である環状の段差部2dを備えている。即ち、先端寄りの第1環状胴部2fに第1穴部である太径穴部2bが形成され、この太径穴部2bに段差部2dを介して第2環状胴部2gの第2穴部である細径穴部2cが連続し、太径穴部2b、段差部2dおよび細径穴部2cで貫通穴が形成されている。前記細径穴部2cの基端側には、膨径による有効容積が隙間S(図16参照)からはみ出した部分を吸収する吸収部である環状溝部2iが、細径穴部2cに対応する環状ボディ2の外周、即ち第2環状胴部2gに連続して形成されている。前記環状溝部2iは、被締結部材と環状ボディ2とにより形成される隙間Sの端部まで環状ボディ2の膨径により充分に充填される大きさを有している。前記段差部2dは所定角度、本実施形態ではマンドレル1の軸に対して45度の傾斜面である。
【0026】
前記マンドレル1は、環状ボディ2の一端部に当接されるヘッド部1fと、ヘッド部1fに連結され、環状ボディ2に挿通されるシャフト部1aとを有している。このシャフト部1aは、ヘッド部1fに連結される太径の第1胴部1bと、第1胴部1bより細径に形成された第2胴部1cと、第1胴部1bと第2胴部1cとの間に設けられた段差部1dとを備えている。この段差部1dは、マンドレル1の引き抜き方向αに対して傾斜面に形成されている。また、環状ボディ2の段差部2dもマンドレル1と同様にマンドレル1の引き抜き方向αに対して傾斜面に形成されている。
【0027】
前記マンドレル1には、段差部1dに連続してマンドレル1の最小径である破断部1eが段差部1dを挟んでヘッド部1fと反対側に配置されて形成されている。この破断部1eは本実施形態では段差部1dに連続してV溝に形成されている。この破断部1eはV溝以外にもU溝等でもよいが、V溝とすることにより破断位置を正確に設定することができる。前記段差部1dは所定角度、本実施形態ではマンドレル1の軸に対して45度の傾斜面である。
【0028】
前記第1胴部1bは、被締結部材の厚さに応じた締結用有効長さYを有している。また、前記第2胴部1cは図14に示すようなチャックで保持される。
前記第1胴部1bの断面積から第2胴部1cの断面積を除いた環状面積は、環状ボディ2を挿入する被締結部材の穴部4aの断面積から環状ボディ2の外形の断面積を除いた環状面積に比べて同一又は大きく形成されている。
【0029】
図2(A)に示すように、このようなブラインドリベットを用いて、被締結部材である第1部材3および第2部材4を締結するには、先ず、第1部材3および第2部材4の穴部3a,4aに環状ボディ2および環状ボディ2に挿通したマンドレル1を、マンドレル2を引き抜く側から差し込み、次に、マンドレル1を引き抜き方向αに引いて環状ボディ2を座屈させるとともに、図2(B)に示すように、環状ボディ2の段差部2dとマンドレル1の段差部1dとを圧接させる。これによりマンドレル1の段差部1dから環状ボディ2の段差部2dの内部へ外力f3を作用させる。
【0030】
この外力f3により、第1部材3および第2部材4の穴部3a,4aに対応する第2環状胴部2gが膨径、即ち、第2環状胴部2gの外径が膨らむ。そして、マンドレル1の引き抜き量が大きくなるとともに、膨径量が増大して、第1部材3および第2部材4の穴部3a,4aの内径と第2環状胴部2gの外径との間の隙間Sが減少する。
【0031】
このとき前記細径穴部2cの基端側には、膨径による有効容積が隙間Sからはみ出した部分を吸収する吸収部である環状溝部2jが形成されているので、細径穴部2cを構成する第2環状胴部2gが膨径して有効容積が被締結体の穴部3a,4aと第2環状胴部2gの外周との間の隙間Sの容積より大きい場合に吸収することができる。したがって、膨径量を隙間Sより充分に大きくすることができる。
【0032】
このようにして、環状ボディ2の第1胴部1bを座屈する「ボディ座屈工程」と隙間Sを充填する「ボディ膨径工程」とがほぼ同時に終了する。この終了状態では、環状ボディ2の座屈部分とフランジ部2hとの間で第1部材3および第2部材4を締結することが出来るとともに、環状ボディ2の膨径部分により環状ボディ2の外径と第1部材3および第2部材4の穴部3a,4aとが密着される。次に、マンドレル1をさらに引き抜くことにより、図2(C)に示すように、マンドレル1の最小径である破断部1eで破断されて締結が完了する。
【0033】
この実施形態のブラインドリベットによれば、環状ボディ2の第2環状胴部2gの外径と第1部材3および第2部材4の穴部3a,4aとの間に隙間Sがほとんどないので、環状ボディ2に対してせん断力を与えるような外力f2(図17参照)を受けたときにも第1部材3および第2部材4が移動することがない。即ち、締結前の環状ボディ2の第2環状胴部2gの外径と穴部3a,4aとの間に余裕があっても、締結後の経時的な位置変化が発生することがない。また、経時的な位置変化を防止出来るにも拘わらず、ブラインドリベットを挿入する被締結部材の穴部3a,4aの穴径を充分に大きくすることができ、加工性や組み付き性を悪化させることがない。
【0034】
また、締結時に第1部材3および第2部材4の反りを矯正するための治具を用いる必要がない。その上、従来と比べて環状ボディ2と被締結部材との接触部分が多く、強固に固定されるので、リベットの打点数を少なくすることが出来る。
【0035】
さらに、膨径が環状ボディ2の径方向にほぼ均等に発生するので、第1部材3の穴部3aと第2部材4の穴部4aとが自動的に調芯されるので、穴部3a,4aに遊びがあっても締結後に第1部材3と第2部材4とがずれて締結されることがない。
【0036】
なお、環状ボディ2とマンドレル1とは、同じ硬さであっても良いが、マンドレル2の方が硬い方が望ましい。例えば、冷間圧造用炭素鋼線のJIS規格として、「JIS G 3539」があるが、この中の2種類のうち硬さ(HRB)の硬い方をマンドレル1に用い、軟らかい方を環状ボディ2に用いることが出来る。傾斜面の角度に応じて材料の硬さを適宜選択することができる。
【0037】
なお、図1のブラインドリベットの環状ボディ2は、少なくともフランジ部2hと反対側の端部が他の部分より強度が高い高強度部分2eとしたので、マンドレル1ヘッドが環状ボディ2の第1環状胴部2fの太径穴部2b内にもぐり込むことがなく、安定して座屈を行うことができる。なお、前記高強度部分2eはスウェージング加工(槌打ち鍛造)等により加工することができる。
【0038】
図3は他の実施形態に係わるブラインドリベットの断面図であり、(A)は全体図、(B)は段差部の拡大図である。図3の実施形態のブラインドリベットでは、図1の実施形態に比べて段差部1d,2dが異なっている。この実施形態では、図3(A),(B)に示すように、段差部1d,2dを断面円弧状に形成したものである。このように断面円弧状またはその他の曲線状に形成することにより、膨径する部分の形状を変えることが出来る。
【0039】
図4はその他の実施形態に係わるブラインドリベットの断面図であり、(A)、(B)、(C)はそれぞれブラインドリベットの断面図である。図4(A)の実施形態のブラインドリベットにおいて、図1の実施形態のブラインドリベットと異なる点は、マンドレル1の段差部1dをマンドレル1の引き抜き方向αに対して直交方向の面にしたことにある。このようにマンドレル1の段差部1dを引き抜き方向αに直交させてもマンドレル1の第1胴部1bの方が環状ボディ2の細径穴部2cより太いので環状ボディ2を膨径させることが出来る。
【0040】
図4(B)の実施形態のブラインドリベットでは、図1の実施形態のブラインドリベットと異なる点は、環状ボディ2の段差部2dをマンドレル1の引き抜き方向αに対して直交方向の面にしたことにある。このように環状ボディ2の段差部2dを引き抜き方向αに直交させてもマンドレル1の第1胴部1bの方が環状ボディ2の細径穴部2cより太いので環状ボディ2を膨径させることが出来る。
【0041】
図4(C)の実施形態のブラインドリベットでは、図1の実施形態のブラインドリベットと異なる点は、環状ボディ2の段差部2dおよびマンドレル1の段差部1dを共にマンドレル1の引き抜き方向αに対して直交方向の面にしたことにある。このように環状ボディ2の段差部2dおよびマンドレル1の段差部1dを共に引き抜き方向αに直交させてもマンドレル1の第1胴部1bの方が環状ボディ2の細径穴部2cより太いので環状ボディ2を膨径させることが出来る。
【0042】
図5はその他の実施形態に係わるブラインドリベットの断面図であり、(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれブラインドリベットの断面図である。図5(A)の実施形態のブラインドリベットでは、図3(A)の実施形態のブラインドリベットと異なる点は、破断部1eを段差部1dに連続させずにマンドレル1の引き抜き方向αに分離させたことにある。このようにマンドレル1の破断部1eを引き抜き方向αに分離させることにより、段差部1dと独立して破断位置を設定することができる。
【0043】
図5(B)の実施形態のブラインドリベットでは、図4(A)の実施形態のブラインドリベットと異なる点は、破断部1eを段差部1dに連続させずにマンドレル1の引き抜き方向αに分離させたことにある。このようにマンドレルの破断部を引き抜き方向αに分離させることにより、段差部1dと独立して破断位置を設定することができる。
【0044】
図5(C)の実施形態のブラインドリベットでは、図4(B)の実施形態のブラインドリベットと異なる点は、破断部1eを段差部1dに連続させずにマンドレル1の引き抜き方向αに分離させたことにある。このようにマンドレル1の破断部1eを引き抜き方向αに分離させることにより、段差部1dと独立して破断位置を設定することができる。
【0045】
図5(D)の実施形態のブラインドリベットでは、図4(C)の実施形態のブラインドリベットと異なる点は、破断部1eを段差部1dに連続させずにマンドレル1の引き抜き方向αに分離させたことにある。このようにマンドレル1の破断部1eを引き抜き方向αに分離させることにより、段差部1dと独立して破断位置を設定することができる。
【0046】
図6はその他の実施形態に係わるブラインドリベットの断面図であり、(A)、(B)はそれぞれブラインドリベットの断面図である。
図6(A)の実施形態のブラインドリベットでは、図5(A)の実施形態のブラインドリベットと異なる点は、環状ボディ12の細径穴部12cと太径穴部12bとを同一の円錐状にして貫通穴を構成したことにある。即ち、環状ボディ12は、その穴部12b,12cがフランジ12h側から他端に向かってテーパ状に拡開しているので、環状ボディ12の貫通穴を容易に加工することができる。
【0047】
図6(B)の実施形態のブラインドリベットでは、図6(A)の実施形態のブラインドリベットと異なる点は、環状ボディ22の細径穴部22cと太径穴部22bとを同径の円柱状にして貫通穴を構成するとともに、マンドレル11のシャフト部21aの段差部21dと第2胴部21cとを同一の円錐状にしたことにある。このように構成することにより、環状ボディ22およびマンドレル21を容易に加工することができる。
【0048】
なお、図6(A),(B)に示すように、マンドレル11,21のヘッド部11f,21fとシャフト部11a,21aとの間にはシャフト部11a,21aの先端径より小径の小径部分11k,21kを形成したので、締結後に環状ボディ12,22の先端部がこの凹部にくい込み一体化される。
【0049】
図7はその他の実施形態に係わるブラインドリベットの断面図である。図8は図7のブラインドリベットを被締結体に挿入した状態を示す断面図、図9は図8の状態からマンドレルを少し引き抜いて膨径が開始した状態を示す断面図、図10は図9の状態からマンドレルをさらに引き抜いて膨径が終了した状態を示す断面図、図11は図10の状態からマンドレルをさらに引き抜いて座屈が終了して締結が完了した状態を示す断面図である。
【0050】
図7に示すように、このブラインドリベットは、塑性変形される環状ボディ32とこの環状ボディ32を塑性変形するマンドレル31とを備えている。
前記環状ボディ32は、マンドレル31を挿通する筒部32bの基端に被締結部材に当接するフランジ部32hを備えるとともに、筒部32bの内径には膨径手段である環状の段差部32dを備えている。即ち、先端寄りの第1環状胴部32fに太径穴部32bが形成され、この太径穴部32bに段差部32dを介して第2環状胴部32gの細径穴部32cが連続し、太径穴部32b、段差部32dおよび細径穴部32cで貫通穴が形成されている。前記細径穴部32cの基端側には、膨径による有効容積が隙間Sからはみ出した部分を吸収する吸収部である環状溝部32jが形成されている。
【0051】
前記マンドレル31は、環状ボディ32の一端部に当接されるヘッド部31fと、ヘッド部31fに連結され、環状ボディ32に挿通されるシャフト部31aとを有している。このシャフト部31aは、ヘッド部31fに連結される太径の第1胴部31bと、本実施形態ではこの第1胴部31bとほぼ同径であって破断部31eを介して連結される第3胴部31mと、第1胴部31bより細径に形成された第2胴部31cと、第1胴部31bと第2胴部31cの間に設けられた段差部31dとを備えている。この段差部31dは、マンドレル31の引き抜き方向αに対して傾斜面に形成されている。また、環状ボディ32の段差部32dもマンドレル31と同様にマンドレル31の引き抜き方向αに対して傾斜面に形成されている。前記破断部31eは、マンドレル31の最小径である。また、図7に示すように、環状ボディ32に備える段差部32dのマンドレル31の軸に対する傾斜角よりマンドレル31に備える段差部31dのマンドレル31の軸に対する傾斜角の方が緩やかである。
【0052】
前記ブラインドリベットにおいて、図7に示すように、Wはマンドレル31のヘッド部31fの後面と環状ボディ32の先端との距離、Xは膨径用締結有効部の長さで被締結部材の合計厚さに依存する長さ、Yは座屈用締結有効部の長さでXと同様に被締結部材の合計厚さに依存する長さ、Z1は膨径開始位置からフランジ32hの後端までの距離、Z2は膨径開始位置からフランジ面までの距離である。ここで、X≧Z2は充分に膨径するための条件であり、W≧Vは膨径後に座屈させるための条件である。
【0053】
このようなブラインドリベットを用いて、被締結部材である第1部材および第2部材を締結するには、先ず、図8に示すように、第1部材3および第2部材4の穴部3a,4aに環状ボディ32および環状ボディ32に挿通したマンドレル31を、マンドレル31を引き抜く側から差し込む。この差し込んだ状態では、第1部材3および第2部材4の穴部内周と環状ボディ32の第2環状筒部32gの外周との間には隙間Sが生じている。
【0054】
次に、図9に示すように、マンドレル31を引き抜き方向αに引いてマンドレル31の段差部31dを環状ボディ32の段差部32dに圧接させ、膨径を開始する。これによりマンドレル31の段差部31dから環状ボディ32の段差部32dの内部へ外力f3を作用させる。この外力f3により、第1部材3および第2部材4の穴部3a,4aに対応する環状ボディ32の部分が膨径する。そして、マンドレル31の引き抜き量が大きくなるとともに、膨径量が増大して、第1部材3および第2部材4の穴部3a,4aの内径と環状ボディ32の外径との間の隙間Sが減少する。
【0055】
このとき前記細径穴部32cの基端側には、膨径による有効容積が隙間Sからはみ出した部分を吸収する吸収部である環状溝部32jが形成されているので、第2穴部4aを構成する第2環状胴部32gが膨径して有効容積が被締結体の穴部3a,4aと環状ボディ32の外周との間の隙間Sの容積より大きい場合に吸収することができる。
【0056】
次に、図10に示すように、図9の状態からさらにマンドレル31を引き抜き方向αに引いて膨径を終了させ、「ボディ膨径工程」が終了する。この「ボディ膨径工程」が終了した状態では、第1部材3および第2部材4の穴部3a,4a内周と環状ボディ32の第2環状筒部32gの外周との間に生じていた隙間Sに第2環状筒部32gの膨径した部分が充填している。また、環状ボディ32のフランジ部32hの根元に設けられた環状凹部32iにより、第2環状筒部32gの膨径した部分が隙間Sの端部まで拡大する。これにより、第1部材3および第2部材4と環状ボディ32の第2環状筒部32gとは密着する。そして、マンドレル31のヘッド部31fが環状ボディ32の先端部に当接する。
【0057】
次に、図11に示すように、図10の状態からさらにマンドレル31を引き抜き方向αに引いて環状ボディ32の第1環状胴部32fを座屈させて「ボディ座屈工程」を終了させ、さらにマンドレルを引き抜き方向αに引いて破断部31eで破断させることにより、締結が完了する。
【0058】
この実施形態のブラインドリベットによれば、環状ボディ32の外径と第1部材3および第2部材4の穴部との間に隙間Sがほとんどないので、環状ボディ31に対してせん断力を与えるような外力を受けたときにも第1部材3および第2部材4が移動することがない。即ち、締結前の環状ボディ32の外径と穴部3a,4aとの間に余裕があっても、締結後の経時的な位置変化が発生することがない。
【0059】
また、締結時に第1部材3および第2部材4の反りを矯正するための治具を用いる必要がない。その上、従来と比べて環状ボディ32と被締結部材との接触部分が多く、強固に固定されるので、リベットの打点数を少なくすることが出来る。
【0060】
さらに、膨径が環状ボディ32の径方向にほぼ均等に発生するので、第1部材3の穴部3aと第2部材4の穴部4aとが自動的に調芯されるので、穴部3a,4aに遊びがあっても締結後に第1部材3と第2部材4とがずれて締結されることがない。
【0061】
さらに、「ボディ膨径工程」が終了した後に「ボディ座屈工程」を開始させるので、「ボディ膨径工程」に必要なマンドレル31の引き抜き力と「ボディ座屈工程」に必要なマンドレル31の引き抜き力とを同時に作用させる必要がなく、締結時にマンドレル31にかかる負荷を分割することができ、これにより、締結時に必要な引き抜き力を小さくすることができる。また、マンドレル31自体の引っ張り強度も少ないものを使用することができる。
【0062】
なお、本発明のブラインドリベットが有している環状ボディ32とマンドレル31との段差部32d,31dの形状は図7のようなテーパ形状以外に、図12のような断面円弧状を有した形状の段差部32d,31dとしてもよい。
【0063】
以上において、段差部は、第1胴部と第2胴部との間に形成された所定角度の傾斜面であるので、マンドレルの引き抜きをスムーズ且つ効率的に行うことが出来る。
【0064】
マンドレルは、前記環状ボディに挿通されるシャフト部と、該シャフト部の一端に連結されるヘッド部とを備えるとともに、前記シャフト部は、前記ヘッド部側から順に、被締結部材の締結用有効長さを有する第1胴部と、前記環状ボディの外径を膨径する膨径部と、該膨径部に連結され、前記環状ボディを塑性変形するために保持される第2胴部とを備えているので、強度上有利である。
【0065】
シャフト部は、締結後に破断される破断部を有しているので、締結後に任意の長さとすることができる。
破断部は段差部に連続しているので、加工が容易である。
破断部はV溝であるので、破断位置を正確に設定することができる。
破断部の径はマンドレル全体の最小径であるので、マンドレルに張力を作用させることにより破断することができる。
【0066】
第1胴部の断面積から前記第2胴部の断面積を除いた環状面積は、前記環状ボディを挿入する被締結部材の穴の断面積から環状ボディ外形の断面積を除いた環状面積に比べて同一又は大きいので、膨径により隙間を充分に埋めることができる。
段差部と第2胴部とは、先細テーパ形状に連続しているので、加工が容易である。
段差部は傾斜面であるので、効率的に膨径することができる。
環状ボディのフランジ部には被締結部材が接触する面に環状溝部が設けられているので、隙間の端部まで膨径することができる。
【0067】
環状溝部は、少なくとも被締結部材と環状ボディとにより形成される隙間の端部まで前記環状ボディの膨径により充填される大きさを有しているので、隙間の端部まで十分に膨径することができる。
【0068】
環状溝部は、第2穴部に対応する環状ボディの外周に連続しているので、環状ボディの膨径のはみ出し量を効率的に吸収することができる。
環状ボディは、少なくともフランジ部と反対側の端部が他の部分より強度が高い高強度部分であるので、安定した座屈を行うことができる。
吸収部は、フランジの穴部開口部に穴部の内径に連通して形成された環状溝部であるので、隙間の充填を充分に行うことができる。
【0069】
マンドレルは、前記環状ボディの一端部に当接されるヘッド部と、該ヘッド部に連結され、前記環状ボディに挿通されるシャフト部とを有し、該シャフト部は、前記ヘッド部に連結される太径の第1胴部と、第1胴部より細径に形成された第2胴部と、前記第1胴部と第2胴部との間に設けられた段差部とを備え、前記段差部は、前記第1胴部と第2胴部との間に形成された所定角度の傾斜面であるとともに、前記環状ボディは、太径の第1穴部と、該第1穴部に段差部を介して連続する、前記第1穴部より細径の第2穴部と、該第2穴部の端部に設けたフランジ部とを備え、前記段差部は傾斜面であり、前記環状ボディの傾斜面より前記マンドレルの傾斜面の方が緩やかであるので、マンドレルが環状ボディにくい込みにくく効率的に膨径することができる。
マンドレルのヘッド部とシャフト部との間にはシャフト部先端径より小径の小径部分があるので、締結後に環状ボディの先端部がこの凹部にくい込みマンドレルと一体化される。
【0070】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな如く本発明のブラインドリベットによれば、被締結部材により形成されている隙間を環状ボディにより充填させる手段を備えているので、環状ボディと被締結手段との隙間を小さくすることができ、環状ボディに対するせん断力を受けたときにも被締結部材の移動を防止することができる。
【0071】
マンドレルは、前記環状ボディの一端部に当接されるヘッド部と、該ヘッド部に連結され、前記環状ボディに挿通されるシャフト部とを有し、該シャフト部は、前記ヘッド部に連結される太径の第1胴部と、第1胴部より細径に形成された第2胴部と、前記第1胴部と第2胴部との間に設けられた段差部とを備えているので、マンドレルを引き抜くことにより環状ボディに対するせん断力を受けたときにも被締結部材の移動を防止することができる。
【0072】
環状ボディは、太径の第1穴部と、該第1穴部に段差部を介して連続する、前記第1穴部より細径の第2穴部と、該第2穴部の端部に設けたフランジ部とを備えているので、環状ボディの段差部にマンドレルを係合させることにより膨径することができる。
【0073】
環状ボディの段差部の傾斜角よりマンドレルの段差部の傾斜角の方が緩やかであるので、効率良く膨径することができる。
【0074】
環状ボディは、その穴部がフランジ側から他端に向かってテーパ状に拡開しているので、環状ボディの加工が容易である。
第2穴部を構成する第2環状胴部における膨径による有効容積が被締結体の穴部と環状ボディの外周との間の隙間の容積より大きい場合に、この膨径による有効容積が隙間からはみ出した部分を吸収する吸収部を備えているので、隙間の充填を充分に行うことができる。
【0075】
マンドレルは、環状ボディの一端部に当接されるヘッド部と、該ヘッド部に連結され、前記環状ボディに挿通されるシャフト部とを有し、該シャフト部は、前記ヘッド部に連結される太径の第1胴部と、第1胴部より細径に形成された第2胴部と、前記第1胴部と第2胴部との間に設けられた段差部とを備えるとともに、前記環状ボディは、太径の第1穴部と、該第1穴部に段差部を介して連続する、前記第1穴部より細径の第2穴部と、該第2穴部の端部に設けたフランジ部とを備えているので、隙間のない締結を行うことができる。
【0076】
環状ボディは、前記第2穴部を構成する第2環状胴部における膨径による有効容積が被締結体の穴部と環状ボディの外周との間の隙間の容積より大きい場合に、この膨径による有効容積が隙間からはみ出した部分を吸収する吸収部を備えているとともに、少なくとも被締結部材と環状ボディとにより形成される隙間の端部まで前記環状ボディの膨径により充填される大きさを有する環状溝部を備えているので、隙間の端部まで充填することができる。
【0077】
環状ボディは、被締結部材と環状ボディとにより形成される隙間に前記環状ボディの膨径による充填がなされているものであるので、締結後に生じていた隙間をなくし、加工性及び組み付け性を損なうことがなく、複写機の最下段等の荷重が大きくかかる部分に適用しても経時的に位置の変化の発生しない締結を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係わるブラインドリベットの断面図である。
【図2】図1のブラインドリベットの締結を説明するための図である。
【図3】図1のブラインドリベットの変形例を説明するための図である。
【図4】図1のブラインドリベットの変形例を説明するための図である。
【図5】図1のブラインドリベットの変形例を説明するための図である。
【図6】本発明のブラインドリベットの他の実施形態を説明するための図である。
【図7】本発明のブラインドリベットの他の実施形態を説明するための図である。
【図8】図7のブラインドリベットの締結を説明するための図である。
【図9】図7のブラインドリベットの締結を説明するための図である。
【図10】図7のブラインドリベットの締結を説明するための図である。
【図11】図7のブラインドリベットの締結を説明するための図である。
【図12】図7のブラインドリベットの変形例を説明するための図である。
【図13】複写機の各ユニットの概略を説明するための図である。
【図14】従来のブラインドリベットの締結を説明するための図である。
【図15】従来のブラインドリベットの断面図である。
【図16】従来のブラインドリベットの締結状態を説明するための図である。
【図17】従来のブラインドリベットに作用するせん断力を説明するための図である。
【符号の説明】
1 マンドレル
1a シャフト部
1b 第1胴部
1c 第2胴部
1d 段差部
1e 破断部
1f ヘッド部
2 環状ボディ
2b 太径穴部
2c 細径穴部
2d 段差部
2e 高強度部分
2f 1環状胴部
2g 第2環状胴部
2h フランジ部
3 第1部材
4 第2部材
Claims (4)
- 被締結部材に挿通される環状ボディと、該環状ボディに挿通して該環状ボディを塑性変形させるマンドレルとを備えたブラインドリベットにおいて、
前記マンドレルは、前記環状ボディの一端部に当接されるヘッド部と、該ヘッド部に連結され、前記環状ボディに挿通されるシャフト部とを有し、該シャフト部は、前記ヘッド部に連結される太径の第1胴部と、第1胴部より細径に形成された第2胴部と、前記第1胴部と第2胴部との間に設けられた段差部とを備えるとともに、
前記環状ボディは、太径の第1穴部と、該第1穴部に段差部を介して連続する、前記第1穴部より細径の第2穴部と、該第2穴部の端部に設けたフランジ部とを備え、かつ、
前記環状ボディの段差部の傾斜角より前記マンドレルの段差部の傾斜角の方が緩やかであることを特徴とするブラインドリベット。 - 上記マンドレルのヘッド部とシャフト部との間に、シャフト部の先端径より小径の小径部分が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブラインドリベット。
- 前記環状ボディは、前記第2穴部を構成する第2環状胴部における膨径による有効容積が被締結体の穴部と環状ボディの外周との間の隙間の容積より大きい場合に、この膨径による有効容積が隙間からはみ出した部分を吸収する吸収部を備えているとともに、少なくとも被締結部材と環状ボディとにより形成される隙間の端部まで前記環状ボディの膨径により充填される大きさを有する環状溝部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラインドリベット。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のブラインドリベットにより被締結部材が締結されてなることを特徴とするブラインドリベット構造体。
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