JP3866254B2 - Dsrc車載器 - Google Patents

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Description

この発明は、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)の道路自動料金収受(ETC:Electronic Toll Collection)システムなどに用いられるDSRC(Dedicated Short-Range Communication:狭域通信)車載器に関するもので、特に、複数のアプリケーションに対応した場合においても、各アプリケーションの実行時に通信の信頼性を向上させるDSRC車載器に関するものである。
近年、DSRCを利用して課金等を行う、例えばETCシステムのようなアプリケーションが実用化されている。課金等を行うアプリケーションでは、セキュリティ確保の為にSAM(Secure Application Module)と呼ばれるセキュリティモジュールが搭載されている。このセキュリティモジュールは、一般的にはアプリケーションにより異なるので、DSRC車載器に複数個搭載される。あるいは、1チップ内に複数のセキュリティ方式を持たせたセキュリティモジュールがDSRC車載器に搭載される。このため、DSRC車載器はアプリケーションに応じてセキュリティモジュールを切り替え、アプリケーションに対応したセキュリティ方式を使用する必要がある。
この切り替えを行う方法として、DSRC無線を利用したアプリケーションにて使用される複数のICカード及びSAMが装着された車載器において、DSRC無線を介して受信したデータに含まれるID情報に従って、予め設定されたコマンドテーブルをサーチすることにより、その受信データを使用するアプリケーションを特定し、特定されたアプリケーションにて、使用すべきSAM及びICカードのアクセス先を、コマンドテーブルの登録内容に従って設定した後、アプリケーションプログラムを起動することで、アプリケーションに応じて、SAM、ICカードの設定を自動的に切り替え、ICカードの入替え操作を不要とするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−216543号公報(第1頁、図8)
DSRCを利用した複数のアプリケーションに対応した機能を車載器に搭載する場合、SAMには複数のアプリケーションに対応したセキュリティ方式が実装される。複数のアプリケーションが実装された車載器において、車載器は実行するアプリケーションに応じて、SAMのセキュリティ方式を切り替える必要がある。SAMはセキュリティ方式切り替え時に、認証状態等のセキュリティ属性を消去する。これらのデータはSAM内の不揮発性メモリに記憶されている。そのため、セキュリティ属性を消去し、セキュリティ方式を切り替えるまでに、20〜50msを要する。セキュリティ方式によっては、切り替えに数百msを要するものもある。
例えば、ETCアプリケーションと駐車場入出場管理アプリケーションを有するDSRC車載器に搭載されるSAMは、ETCアプリケーションと駐車場入出場管理アプリケーションのそれぞれのセキュリティ方式に対応していなければならない。そのためアプリケーションが実行される度にSAMのセキュリティ方式を、ETC方式か駐車場入出場管理方式のどちらかに切り替えなければならない。
セキュリティ方式の切り替えとして最も簡単な方法は、車載器が路側機の通信領域に侵入し、その通信領域で提供されるアプリケーション情報を受信することでセキュリティ方式を判明させ、セキュリティ方式の切り替えを実行する方法である。しかし、この方法では、通信可能になってからセキュリティの切り替えを行うので、アプリケーションが動作するまでに時間を要し、通信可能となってからアプリケーションが終了するまでの時間が延びてしまうという問題がある。DSRCを用いたアプリケーションには、通信領域内を走行しながら通信をおこなうETCのようなアプリケーションもある。こういったアプリケーションでは、所定の通信時間内にアプリケーションを完了させなければならない。
ETCアプリケーションは、路側機と車載器の通信領域が30m程度であり、車両が20〜60km/hで通過すると、通信(可能)時間T1は約1.8〜5.4秒間確保される。また、セキュリティ方式の切り替えがない場合においてアプリケーションを開始してから終了までに要する時間をT2とする。T2は、電波状況によってリトライなどが行われることで増大することもあるが、T1≧T2が確保されるように設定されており、アプリケーションは完了する。
図5に示すように、セキュリティ方式を切り替えるのに要する時間をT3とすれば、セキュリティ方式を切り替えた場合のアプリケーション実行時間は、セキュリティ方式の切り替えがない場合のアプリケーション実行時間T2にT3を加えたものとなり、T2+T3と表せる。このとき、T1≧T2+T3である場合において、アプリケーションは完了する。しかし、アプリケーションの種類によっては、T1≧T2であっても、セキュリティ方式を切り替えるために要する時間T3が生じることで、T1<T2+T3となり、アプリケーション未完了で通信領域を脱出してしまう可能性がある。
また、例えば図6に示すように、通信領域が5mといったアプリケーションの場合、車両速度が20km/hの場合の通信時間T1は0.9秒である。車両速度が30km/hになると、通信時間T1は0.6秒となる。このように、通信時間が非常に短いアプリケーションの場合、セキュリティ方式を切り替えるために要する時間T3が発生することによってアプリケーション未完了で通信領域を脱出してしまう可能性が大きくなる。例えば、ETCにおいて、アプリケーション未完了で通信領域を脱出してしまうと、料金所のバーが開かない。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、情報のセキュリティを確保しつつ、セキュリティ方式の切り替えに要する時間によりアプリケーション未完了で通信領域を脱出してしまうことを最小限に抑えることができるDSRC車載器を得るものである。
この発明に係るDSRC車載器は、路側に設置された路側機との間で無線により情報を送受信し、実行するアプリケーションに対応したセキュリティ方式をCPUによりセキュリティモジュールに設定するDSRC車載器であって、前記セキュリティモジュールは、複数のアプリケーションそれぞれに対応した複数のセキュリティ方式を有し、前記CPUは、DSRC通信領域内に進入した場合に、前記路側機から所定のアプリケーションIDを受信すると、所定のアプリケーションの実行を開始するとともに、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式が前記所定のアプリケーションに対応した所定のセキュリティ方式と異なる場合には、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を、前記所定のアプリケーションに対応した所定のセキュリティ方式に切り替え、前記路側機から所定のアプリケーション終了の情報を受信すると、前記所定のアプリケーションの実行を終了する時に、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を、前提条件に基づいたセキュリティ方式に切り替えるものである。
この発明に係るDSRC車載器は、情報のセキュリティを確保しつつ、セキュリティ方式の切り替えに要する時間によりアプリケーション未完了で通信領域を脱出してしまうことを最小限に抑えることができるという効果を奏する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るDSRC車載器について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係るDSRC車載器の構成を示す図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1において、DSRC車載器1は、路側機20との間で無線により情報を送受信するためのアンテナ2及び通信回路3と、マイクロコンピュータから構成されるCPU4と、DSRC無線を利用する複数のアプリケーションに対してそれぞれに対応した複数のセキュリティ方式を備え、セキュリティ情報の一部または全部を暗号化または復号するSAM(セキュリティモジュール)5と、EEPROM6と、車両側電源8から電源の供給を受け、CPU4および各回路に給電するための電源回路7と、着脱自在のICカード10が装着されるICカードI/F9とが設けられている。
CPU4は、ICカードI/F9およびSAM5を介して、ICカード10との間でセキュリティ情報などの読出および書込を行うようになっている。また、CPU4は、DSRCを利用した複数のアプリケーション(例えば、A、B、C)に対応した動作をする機能を備えたものである。SAM5は、複数のアプリケーションそれぞれに対応する複数のセキュリティ方式(例えば、A、B、C)を備えたものである。アプリケーションとセキュリティ方式は、一対一で対応付けられている。アプリケーションを識別する情報(アプリケーションID)は、路側機20からの情報に含まれる。さらに、CPU4は、実行中のアプリケーション終了時にセキュリティ方式を切り替える機能を備えたものである。
つぎに、この実施の形態1に係るDSRC車載器の動作について図面を参照しながら説明する。
図2は、この発明の実施の形態1に係るDSRC車載器の動作を示すフローチャートである。
この例では、「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」、「アプリケーションCの後に実行されるアプリケーションはAである」、「通信時間制約が最も短いアプリケーションはBである」という前提条件で説明する。この前提条件は、例えば、「駐車場の入口を通過した後は、駐車場の出口を通過する」である。
DSRC車載器1を搭載した車両において、車両側電源8からDSRC車載器1の電源回路7に電源が供給されており、SAM5はセキュリティ方式Bの状態である。この状態で、DSRC車載器1を搭載した車両が、路側機20とのDSRC通信領域内に進入したとする(ステップS101)。
このとき、DSRC車載器1は、アンテナ2、通信回路3を介して路側機20からの情報(アプリケーションIDはアプリケーションAとする)を受信し、アプリケーションAの実行を開始する(ステップS102)。
この際、CPU4は、受信したアプリケーションIDとSAM5のセキュリティ方式とを比較する(ステップS103)。
アプリケーションIDはAであり、SAM5はセキュリティ方式Bである。よって、CPU4は、SAM5のセキュリティ方式をアプリケーションAに対応しているセキュリティ方式Aに切り替える(ステップS104)。そして、アプリケーションAを実行してゆく。
路側機20より、アプリケーションAの実行の終了の情報を受信すると、アプリケーションA終了の処理を行う(ステップS105)。
この時、前提条件「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」、「アプリケーションCの後に実行されるアプリケーションはAである」、「通信時間制約が最も短いアプリケーションはBである」に基づき、CPU4はSAM5のセキュリティ方式を切り替える。
この場合、前提条件「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」が適用できるので、次回に実行されるアプリケーションが特定できる。従って、CPU4は、SAM5をセキュリティ方式Bに切り替える(ステップS106、S108)。そして、DSRC車載器1を搭載した車両は、DSRC通信領域内から脱出する(ステップS109)。
続いて、この車両が、路側機20とのDSRC通信領域内に進入し(ステップS101)、アプリケーションIDがアプリケーションBである情報を路側機20から受信し、アプリケーションBを開始したとする(ステップS102)。
この際、CPU4は、受信したアプリケーションIDとSAM5のセキュリティ方式とを比較する(ステップS103)。SAM5のセキュリティ方式は、前回のアプリケーションA終了時にセキュリティ方式Bに切り替えている。SAM5のセキュリティ方式はセキュリティ方式Bであり、アプリケーションIDはアプリケーションBであるので、セキュリティ方式を切り替える必要はない。よって、SAM5のセキュリティ方式を切り替えることなくアプリケーションBを実行でき、アプリケーションBの実行時間が増大することはない。
路側機20より、アプリケーションB終了の情報を受信すると、アプリケーションB終了の処理をする(ステップS105)。
この時、前提条件「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」、「アプリケーションCの後に実行されるアプリケーションはAである」、「通信時間制約が最も短いアプリケーションはBである」に基づき、CPU4は、SAM5のセキュリティ方式を切り替える。
この場合、上記前提条件からアプリケーションB実行後に次回実行されるアプリケーションが特定できない。このようにアプリケーション終了後に次回使用するセキュリティ方式が特定できない場合は、前提条件「通信時間制約が最も短いアプリケーションはBである」より、通信時間制約が最も短い、つまり最も厳しいアプリケーション用のセキュリティ方式に切り替えておけば(ステップS107)、次回のアプリケーション実行時にセキュリティ方式の切り替え時間による通信未完了の可能性を最小限に抑えることができる。
このように、この実施の形態1によれば、アプリケーション終了時にSAM5のセキュリティ方式を切り替える構成としたので、次回使用するセキュリティ方式が特定できる場合は、次回のアプリケーション実行時にSAM5のセキュリティ方式を切り替える必要がなくなり、セキュリティ切り替え時間による通信未完了の可能性を減らすことができる。次回使用するセキュリティ方式が特定できない場合には、通信時間制約が最も厳しいアプリケーション用のセキュリティ方式に切り替えておくことにより、セキュリティ切り替え時間による通信未完了の可能性を最小限に抑えることができる。
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るDSRC車載器について図3を参照しながら説明する。図3は、この発明の実施の形態2に係るDSRC車載器の動作を示すフローチャートである。なお、この発明の実施の形態2に係るDSRC車載器の構成は、上記実施の形態1と同様である。
上記実施の形態1は、路側機20からのアプリケーション終了情報の受信により、SAM5のセキュリティ方式の切り替えを行う構成としているが、通信環境が悪い状況下では路側機20からのアプリケーション終了情報を受信できない可能性があり、その場合、SAM5のセキュリティ方式を切り替えることが出来ない。そのため、この実施の形態2では、DSRC通信領域を脱出した事を車載器が認識した時点においても、セキュリティ方式を切り替る必要性を判定し、切り替えの必要がある場合のみセキュリティ方式を切り替える構成とする。
CPU4は、DSRCを利用した複数のアプリケーション(A、B、C)に対応した動作をする機能を備えたものである。SAM5は、複数のアプリケーションそれぞれに対応する複数のセキュリティ方式(A、B、C)を備えたものである。アプリケーションとセキュリティ方式は一対一で対応付けられている。アプリケーションを識別する情報(アプリケーションID)は路側機20からの情報に含まれる。また、CPU4は、DSRC通信領域を脱出した事を認識した時点でSAM5のセキュリティ方式を切り替える機能を備えたものである。
この例では、「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」、「アプリケーションCの後に実行されるアプリケーションはAである」、「通信時間制約が最も短いアプリケーションはBである」という前提条件で説明する。この前提条件は、例えば、「駐車場の入口を通過した後は、駐車場の出口を通過する」である。
DSRC車載器1を搭載した車両において、車両側電源8からDSRC車載器1の電源回路7に電源が供給されており、SAM5はセキュリティ方式Bの状態である。この状態で、DSRC車載器1を搭載した車両が、路側機20とのDSRC通信領域内に進入したとする(ステップS201)。
このとき、DSRC車載器1は、アンテナ2、通信回路3を介して路側機20からの情報(アプリケーションIDはアプリケーションAとする)を受信し、アプリケーションAを開始する(ステップS202)。
この際、CPU4は、受信したアプリケーションIDとSAM5のセキュリティ方式とを比較する(ステップS203)。アプリケーションIDはAであり、SAM5はセキュリティ方式Bである。よって、CPU4は、SAM5のセキュリティ方式をアプリケーションAに対応しているセキュリティ方式Aに切り替える(ステップS204)。そして、アプリケーションAを実行してゆく。
この車両が、規定速度以上の速度でDSRC通信領域を通過しようとした場合や、電波環境の悪さが原因で、路側機20からのアプリケーションA終了の情報を受信できずに通信未完了でDSRC通信領域を脱出したとする(ステップS205)。
この時、予め設定されている前提条件「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」、「アプリケーションCの後に実行されるアプリケーションはAである」、「通信時間制約が最も短いアプリケーションはBである」に基づき、CPU4はSAM5のセキュリティ方式を切り替える。
この場合、前提条件「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」が適用できるので、次回に実行されるアプリケーションが特定できる。従って、CPU4は、SAM5のセキュリティ方式をセキュリティ方式Bに切り替える(ステップS206、S208)。
続いて、この車両が、路側機20とのDSRC通信領域内に進入し(ステップS201)、アプリケーションIDがアプリケーションBである情報を路側機20から受信し、アプリケーションBを開始したとする(ステップS202)。
この際、CPU4は、受信したアプリケーションIDとSAM5のセキュリティ方式とを比較する(ステップS203)。
SAM5のセキュリティ方式は、前回の通信領域脱出時にセキュリティ方式Bに切り替えている。SAM5のセキュリティ方式はセキュリティ方式Bであり、アプリケーションIDはアプリケーションBであるので、セキュリティ方式を切り替える必要はない。よって、SAM5のセキュリティ方式を切り替えることなくアプリケーションBを実行でき、アプリケーションB実行時間が増大することはない。
この車両が、規定速度以上の速度でDSRC通信領域を通過しようとした場合や、電波環境の悪さが原因で、路側機20からのアプリケーションB終了の情報を受信できずに通信未完了でDSRC通信領域を脱出したとする(ステップS205)。
この時、予め設定されている前提条件「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」、「アプリケーションCの後に実行されるアプリケーションはAである」、「通信時間制約が最も短いアプリケーションはBである」に基づき、CPU4はSAM5のセキュリティ方式を切り替える。
この場合、上記前提条件からアプリケーションB実行後に実行されるアプリケーションが特定できない。このようにアプリケーション終了後に次回使用するセキュリティ方式が特定できない場合は、前提条件「通信時間制約が最も短いアプリケーションはBである」より、通信時間制約が最も短い、つまり最も厳しいアプリケーション用のセキュリティ方式に切り替えておけば(ステップS206〜S207)、次回のアプリケーション実行時にセキュリティ切り替え時間による通信未完了の可能性を最小限に抑えることができる。
このように、この実施の形態2によれば、DSRC通信領域脱出時にSAM5のセキュリティ方式を切り替える構成としたので、アプリケーション終了情報を受信できなくても、SAM5のセキュリティ方式を切り替える機会を確実に得ることができる。この時、次回使用するセキュリティ方式が判定できる場合は、セキュリティ方式を切り替えておくことで次回のアプリケーション実行時にSAM5のセキュリティ方式を切り替える必要はなくなる。従って、セキュリティ切り替え時間によって通信未完了となることを防ぐことができる。
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係るDSRC車載器について図4を参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態3に係るDSRC車載器の動作を示すフローチャートである。なお、この発明の実施の形態3に係るDSRC車載器の構成は、上記実施の形態1と同様である。
上記実施の形態2は、路側機20とのDSRC通信領域から脱出することで、SAM5のセキュリティ方式の切り替えの判定と実行を行う構成としているが、SAM5の構造によっては、車載器の電源を切る前にSAM5に設定されているセキュリティ方式と、車載器の電源を切り、再び電源を投入した際にSAM5に設定されるセキュリティ方式とが異なる場合が考えられる。例えば、DSRC通信領域を脱出し、セキュリティ方式Bへの切り替えを行っても、一旦、車載器の電源を切る(車のエンジンを切る)ことでセキュリティ方式がAに切り替えられてしまう可能性がある。すると、アプリケーションBのDSRC通信領域に侵入しアプリケーションBが開始された際に、セキュリティ方式をAからBに切り替えなければならない。そのため、この実施の形態3では、電源投入時にもセキュリティ方式を切り替える構成とする。
CPU4は、DSRCを利用した複数のアプリケーション(A、B、C)に対応した動作をする機能を備えたものである。SAM5は、複数のアプリケーションそれぞれに対応する複数のセキュリティ方式(A、B、C)を備えたものである。アプリケーションとセキュリティ方式は一対一で対応付けられている。アプリケーションを識別する情報(アプリケーションID)は路側機20からの情報に含まれる。また、CPU4は、車載器の電源投入時にSAM5のセキュリティ方式を切り替えることのできる機能を備えたものである。EEPROM(不揮発性メモリ)6は、セキュリティ方式毎の使用頻度、電源切断前のセキュリティ方式を記憶するためのメモリである。
この例では、「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」、「アプリケーションCの後に実行されるアプリケーションはAである」、「使用頻度が最も多いアプリケーションはBである」という前提条件で説明する。この前提条件は、例えば、「駐車場の入口を通過した後は、駐車場の出口を通過する」である。また、SAM5は、電源投入時にセキュリティ方式Aで起動するという前提条件で説明する。なお、「使用頻度が最も多いアプリケーションはBである」という前提条件を設定する場合に、EEPROM6に記憶されたセキュリティ方式毎の使用頻度を参照してもよい。
DSRC車載器1を搭載した車両において、車両側電源8からDSRC車載器1の電源回路7に電源が供給されており、SAM5はセキュリティ方式Bの状態である。この状態で、DSRC車載器1を搭載した車両が、路側機20とのDSRC通信領域内に進入したとする(ステップS304)。
このとき、DSRC車載器1は、アンテナ2、通信回路3を介して路側機20からの情報(アプリケーションIDはアプリケーションAとする)を受信し、アプリケーションAを開始する(ステップS305)。
アプリケーションが終了すると(ステップS309)、EEPROM6に記録されているセキュリティ方式の使用頻度を更新する(ステップS310)。そして、DSRC通信領域を脱出する(ステップS311)。
この時、予め設定されている前提条件「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」、「アプリケーションCの後に実行されるアプリケーションはAである」、「使用頻度が最も多いアプリケーションはBである」に基づき、CPU4はSAM5のセキュリティ方式を切り替える。
この場合、前提条件「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」が適用できるので、次回に実行されるアプリケーションが特定できる。従って、CPU4は、SAM5のセキュリティ方式をセキュリティ方式Bに切り替える(ステップS312、S314)。
この際、CPU4は、現在設定されているSAM5のセキュリティ方式の種別「B」をEEPROM6に記憶する(ステップS315)。このステップS315やS308のように、セキュリティ方式を切り替える毎に、切り替えたセキュリティ方式をEEPROM6に記憶する。図示していないが、ステップS303の後でも切り替えたセキュリティ方式をEEPROM6に記憶してもよい。
ここで、車載器1の電源を切り、再度電源が投入されると、CPU4はEEPROM6に記憶されているセキュリティ方式の種別を読み込み(ステップS301)、現在のSAM5に設定されているセキュリティ方式と比較する(ステップS302)。
EEPROM6に記憶されているセキュリティ方式は「B」、SAM5はセキュリティ方式Aとなっているので、CPU4はセキュリティ方式をBに切り替える(ステップS303)。
続いて、この車両が、路側機20とのDSRC通信領域内に進入し(ステップS304)、アプリケーションIDがアプリケーションBである情報を路側機20から受信し、アプリケーションBを開始したとする(ステップS305)。
この際、CPU4は、受信したアプリケーションIDとSAM5のセキュリティ方式とを比較する(ステップS306)。SAM5のセキュリティ方式は、電源投入時にセキュリティ方式Bに切り替えている。SAM5のセキュリティ方式はセキュリティ方式Bであり、アプリケーションIDはアプリケーションBであるので、セキュリティ方式を切り替える必要はない。よって、SAM5のセキュリティ方式を切り替えることなくアプリケーションBを実行でき、アプリケーションB実行時間が増大することはない。
アプリケーションが終了すると(ステップS309)、EEPROM6に記録されているセキュリティ方式の使用頻度を更新する(ステップS310)。そして、DSRC通信領域を脱出したとする(ステップS311)。
この時、予め設定されている前提条件「アプリケーションAの後に実行されるアプリケーションはBである」、「アプリケーションCの後に実行されるアプリケーションはAである」、「使用頻度が最も多いアプリケーションはBである」に基づき、CPU4はSAM5のセキュリティ方式を切り替える。
この場合、上記前提条件からアプリケーションB実行後に次回実行されるアプリケーションが特定できない。このようにアプリケーション終了後に次回使用するセキュリティ方式が特定できない場合は、「使用頻度が最も多いアプリケーションはBである」より、使用頻度が最も多いアプリケーション用のセキュリティ方式Bに切り替えることで(ステップS312〜S313)、次回のアプリケーション実行時にセキュリティ切り替え時間による通信未完了の可能性を最小限に抑えることができる。
また、この際、CPU4は、現在設定されているSAM5のセキュリティ方式の種別「B」をEEPROM6に記憶する(ステップS315)。
このように、この実施の形態3によれば、電源投入時に、EEPROM6から読み込んだ電源切断前のセキュリティ方式に基づいて、SAM5のセキュリティ方式を切り替える構成としたので、次回のアプリケーションのためにセキュリティ方式を切り替えた後で車載器1の電源が切られても、再度電源を投入した際にSAM5のセキュリティ方式を、電源切断前のセキュリティ方式に切り替えることができる。電源切断前に、次回使用するセキュリティ方式が判定できていた場合は、セキュリティ方式を切り替えておくことで次回のアプリケーション実行時にSAM5のセキュリティ方式を切り替える必要はなくなる。従って、セキュリティ切り替え時間によって通信未完了となることを防ぐことができる。電源切断前に、次回使用するセキュリティ方式が判定できなかった場合は使用頻度が最も多いアプリケーション用のセキュリティ方式に切り替えることで、次回のアプリケーション実行時にセキュリティ切り替え時間による通信未完了の可能性を最小限に抑えることができる。
この発明の実施の形態1に係るDSRC車載器の構成を示す図である。 この発明の実施の形態1に係るDSRC車載器の動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態2に係るDSRC車載器の動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態3に係るDSRC車載器の動作を示すフローチャートである。 DSRC車載器の通信可能時間とセキュリティ方式切り替え時間及びアプリケーション実行時間との関係を説明するための図である。 通信領域と通信時間との関係を説明するための図である。
符号の説明
1 DSRC車載器、2 アンテナ、3 通信回路、4 CPU、5 SAM、6 EEPROM、7 電源回路、8 車両側電源、9 ICカードI/F、10 ICカード、20 路側機。

Claims (6)

  1. 路側に設置された路側機との間で無線により情報を送受信し、実行するアプリケーションに対応したセキュリティ方式をCPUによりセキュリティモジュールに設定するDSRC車載器であって、
    前記セキュリティモジュールは、複数のアプリケーションそれぞれに対応した複数のセキュリティ方式を有し、
    前記CPUは、DSRC通信領域内に進入した場合に、前記路側機から所定のアプリケーションIDを受信すると、所定のアプリケーションの実行を開始するとともに、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式が前記所定のアプリケーションに対応した所定のセキュリティ方式と異なる場合には、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を、前記所定のアプリケーションに対応した所定のセキュリティ方式に切り替え、前記路側機から所定のアプリケーション終了の情報を受信すると、前記所定のアプリケーションの実行を終了する時に、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を、前提条件に基づいたセキュリティ方式に切り替える
    ことを特徴とするDSRC車載器。
  2. 前記CPUは、DSRC通信領域から脱出した場合に、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を、前提条件に基づいたセキュリティ方式に切り替える
    ことを特徴とする請求項1記載のDSRC車載器。
  3. 前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を記憶する不揮発性メモリをさらに備え、
    前記CPUは、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を切り替えたときには、切り替えたセキュリティ方式を前記不揮発性メモリに記憶するとともに、電源投入時に、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式が、前記不揮発性メモリに記憶されたセキュリティ方式と異なる場合には、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を、前記不揮発性メモリに記憶されたセキュリティ方式に切り替える
    ことを特徴とする請求項1又は2記載のDSRC車載器。
  4. 前記CPUは、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を、前提条件に基づいたセキュリティ方式に切り替える場合に、次回に実行されるアプリケーションが特定できるときには、前記特定できるアプリケーションに対応するセキュリティ方式に切り替える
    ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のDSRC車載器。
  5. 前記CPUは、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を、前提条件に基づいたセキュリティ方式に切り替える場合に、次回に実行されるアプリケーションが特定できないときには、通信時間制約が最も短いアプリケーションに対応するセキュリティ方式に切り替える
    ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のDSRC車載器。
  6. 前記CPUは、前記セキュリティモジュールに設定された現在のセキュリティ方式を、前提条件に基づいたセキュリティ方式に切り替える場合に、次回に実行されるアプリケーションが特定できないときには、使用頻度が最も多いアプリケーションに対応するセキュリティ方式に切り替える
    ことを特徴とする請求項3記載のDSRC車載器。
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