JP3865515B2 - α−フェトプロテインの免疫学的測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、肝臓癌等の悪性腫瘍の診断に廣く用いられているα−フェトプロテイン(以下、必要に応じ「AFP」と略称する。)の血清中の濃度を化学発光法を利用して免疫学的に測定する方法に関するものであり、更に詳しくは、ペルオキシダーゼ酵素を標識物質として用い、特定の新規化学発光試薬によりAFPの血清中濃度を高感度に測定する免疫学的測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
AFPは、α−グロブリンの位置に泳動される胎児性タンパク質であり、分子量は約70,000、等電点は4.7で、アルブミンと非常に類似した物理化学的性状を示し、アミノ酸配列も両者で高い類似性を有することが知られている。しかし、AFPはアルブミンとは異なり約4%の糖を含む糖タンパク質であり、その機能については明らかではないが、胎生初期の主要血清タンパクであり、発生が進むにつれて減少して行き、それと平行してアルブミンの増加が見られ、血液の浸透圧の調節作用と共に、細胞性免疫を抑制して胎児が母性の免疫から免れる作用に関与していることが考えられる。この胎児性タンパクは、肝細胞癌、ヨークサック腫瘍等の悪性腫瘍の患者、肝炎、肝硬変等の肝疾患の患者、及び妊婦等の血清中に出現し、特に、悪性腫瘍患者の血清中に高率に出現するので、腫瘍マーカーとして廣く使用されている。血中AFPの測定には、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、一元免疫拡散法及びAFPの糖鎖の違いを分析するレクチン結合性分析等が行なわれているが、これらの方法は、0.1ng/ml以下の低濃度域での定量方法としては、必ずしも十分ではなく、健康成人では実際にどの程度の濃度で血中に存在するのか、悪性腫瘍の初期において低濃度のAFPを検出することにより、癌の早期発見が可能になるのか等の問題については未だ十分な知見は得られていない。
従って、肝細胞癌等の悪性腫瘍の早期発見、微妙な病態変化の観察等を行ない得る血清診断の可能性検討等に必要なAFPの超高感度測定方法の開発が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、前記事情に鑑みAFPの高感度の免疫学的測定方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するためにAFPを従来より高感度に測定する方法について鋭意検討を行なった結果、ペルオキシダーゼ酵素活性の超高感度測定が可能な新規化学発光試薬を用いてAFPを化学発光法を利用して免疫学的に測定することにより、血中AFPを数ピコグラムのオーダーで測定し得ることを見い出し、これらの知見に基づいて本発明の完成に到達したものである。
【0005】
即ち、本発明は、ペルオキシダーゼ酵素標識した抗α−フェトプロテイン抗体を試料中のα−フェトプロテインと接触させ、抗原抗体反応によりペルオキシダーゼ酵素標識−抗原抗体錯体からなる免疫複合体を形成させ、必要により、該免疫複合体を不溶性担体に固定化した抗α−フェトプロテイン抗体と反応させて該不溶性担体上に捕捉した後分離し、これに、
N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類をN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後にアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光試薬
を添加し、水素受容体の存在下において化学発光させ、その発光強度を測定することにより試料中のα−フェトプロテインの含有量を定量することを特徴とするα−フェトプロテインの化学発光法による高感度免疫学的測定方法に関するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のAFPの化学発光法による免疫学的測定方法は、抗原抗体反応により測定すべきAFPをペルオキシダーゼ酵素標識抗体を含む抗AFP抗体との免疫複合体として捕捉する免疫反応段階と、生成した該免疫複合体をその分子中に存在する標識酵素を用いる化学発光法により測定する化学発光反応段階とからなる。
【0007】
免疫反応段階を構成する抗原抗体反応の方法は任意であり、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物及びアミノアルコール化合物から得られる化学発光試薬を用いることができるものであれば、いずれの方法も採用することができる。
【0008】
例えば、
▲1▼不溶性担体に結合した抗AFP抗体に試料中の測定すべきAFPを捕捉させた後にペルオキシダーゼ酵素標識抗AFP抗体を反応させるサンドイッチ法、
▲2▼サンドイッチ法において、不溶性担体に結合した抗AFP抗体と異なる動物種に由来する抗AFP抗体を用い、生成したサンドイッチ錯体に対して、さらに、この抗AFP抗体に対する標識した第二抗AFP抗体を反応させる二抗体法、
▲3▼不溶性担体に結合した抗AFP抗体に試料中の測定すべきAFPをペルオキシダーゼ酵素標識抗AFP抗体の存在下で反応させる競合法、
▲4▼測定すべきAFPを含有する試料にこれらと特異的に反応する標識した抗AFP抗体を作用させて凝集沈殿させた後、遠心分離して分離した免疫複合体中の標識物質を検出する凝集沈殿法、
▲5▼ビオチン標識抗AFP抗体及びペルオキシダーゼ酵素標識アビジンを反応させるビオチン−アビジン法等
を非限定的に用いることができる。
【0009】
本発明のAFPの化学発光法による免疫学的測定方法に用いられる不溶性担体としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド等の高分子化合物、その他、ガラス、金属、磁性粒子及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。また、不溶性担体の形状としては、例えば、トレイ状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、マイクロプレート、試験管等の種々の形状で用いることができる。さらに、これら不溶性担体への抗原又は抗体の固定化方法は任意であるが、物理的吸着法、共有結合法、イオン結合法等を用いることができる。
【0010】
尚、本発明のAFPの化学発光法による免疫学的測定方法において用いられる抗体類はモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれを使うことも可能であり、その形態としては全抗体又はF(ab’)2 、Fab等の断片を用いることができる。また、抗体の起源は任意であるが、マウス、ラット、兎、羊、山羊、鶏等に由来する抗体が好適に用いられる。
【0011】
さらに、本発明のAFPの化学発光法による免疫学的測定方法の後段を構成する化学発光反応段階は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類をN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後にアミノアルコールを添加して得られる化学発光試薬を用い、更に所望により発光増強剤の存在下に水素受容体を作用させて不溶性担体上に捕捉された標識物質であるペルオキシダーゼ酵素の活性を測定するものであり、その測定方法は任意であるが、一般に、化学発光性物質及び発光増強剤を含有する化学発光試薬をペルオキシダーゼ酵素標識抗AFP抗体を免疫学的に捕捉した不溶性担体に添加し、特定塩基性pH領域において過酸化水素水溶液を添加して化学発光反応させ、その化学発光量を発光測定装置で測定する方法等が行なわれている。
【0012】
次に、本発明のAFPの化学発光法による免疫学的測定方法に用いられる化学発光試薬について説明する。
前記化学発光試薬は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類をN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後に特定のアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光性物質を含有する反応混合物である。
【0013】
前記アミノアルコール化合物は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類とN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物との混合物に対し光照射前に添加してもよいが、反応時及び/又は反応後、即ち、光照射時又は光照射後のいずれか或いは光照射時及び光照射後の両者において添加してもよい。特に、発光性能の安定性確立の観点からは光照射後、即ち、反応後に存在させることが肝要である。
前記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類は、下記一般式(1)
【0014】
【化4】
で表わされる。
【0015】
前記一般式(1)において、R1 及びR2 は、アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群より選択され、互いに同一でも又は異なるものでもよい。アルキル基としては炭素数1〜14の直鎖状又は分岐状のものを挙げることができ、特に、炭素数1〜10のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等を例示することができる。アリール基は炭素数6〜20のものであり、アリール基には炭素数1〜14のアルキル基が結合したものでもよい。具体的にはフェニル基、トリール基、キシリル基等を例示することができる。R3 、R4 、R5 及びR6 は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選択され、互いに同一でも又は異なるものでもよい。アルキル基は炭素数1〜14の直鎖状又は分岐状のものであり、特に、炭素数1〜10のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基等を例示することができる。アリール基は炭素数6〜20であり、アリール基には炭素数1〜14のアルキル基が結合したものでもよい。具体的には、フェニル基、トリール基、キシリル基等を例示することができる。アルコキシ基は炭素数1〜14の直鎖状又は分岐状アルキル基を有し、また、アリーロキシ基は、炭素数6〜20のアリール基を有する。
前記式(1)において、Xはn価の陰イオンであり、nは1又は2である。陰イオン(対イオン)としては、具体的には硝酸イオン、ハロゲンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン等が挙げられる。
【0016】
前記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の具体例としては、N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジエチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジフェニル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジ−m−クロロフェニル−9,9’−ビスアクリジニウム塩などが挙げられ特に、N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウムジナイトレート(ルシゲニン)が好適である。
前記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物は、下記一般式(2)
【0017】
【化5】
で表わされる。
【0018】
前記一般式(2)において、R1 は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜20のアリール基からなる群より選択され、アリール基はアルキル基、ニトロ基、水酸基、アミノ基及びハロゲン原子等で置換されていてもよく、R2 は、メチル基及びエチル基からなる群より選択され、R3 は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜20のアリール基からなる群より選択され、アリール基はアルキル基、ニトロ基、水酸基、アミノ基及びハロゲン基等で置換されていてもよく、また、R1 及びR3 は互いに結合して、それぞれが結合しているカルボニル基の炭素原子及びアミド基の窒素原子と共に環を形成していてもよい。
【0019】
前記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が非限定的に挙げられる。
前記アミノアルコール化合物は、下記一般式(3)
【0020】
【化6】
で表わされる。
【0021】
前記一般式(3)において、Rは、炭素数1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を表わし、mは、1〜3の整数を表わす。その具体的な例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等を非限定的に挙げることができる。
【0022】
化学発光試薬の製造に必要なアミノアルコール化合物の添加は、発光反応時において、ブランク値を低下させる効果及びペルオキシダーゼの高濃度領域における発光強度を上昇させる効果を有し、また、化学発光試薬の保存時において、その発光性能の低下を防ぐ保存安定性を改善する効果等を有し、化学発光試薬の感度や安定性等の性能の向上に寄与する処が大きい。
【0023】
前記化学発光試薬の製造に用いられる光照射用の光線としては、波長領域が約290〜800nmの範囲の紫外可視部が用いられ、特に、約400〜800nmの範囲の可視光が望ましい。これらの光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、殺菌灯、蛍光灯及び白熱電灯等を非限定的に用いることができ、特に、白熱電灯が好ましく用いられる。この光照射により得られる化学発光試薬は、光源を用いずに自然光の下で製造した化学発光試薬に較べて、同じ原料ルシゲニン濃度で製造し同量で使用した場合に短時間で非常に高い発光強度を示すことと、この反応を光遮断下に実施した場合にはペルオキシダーゼ濃度依存性を有する化学発光試薬が得られないことから、化学発光性化合物の生成には光照射が重要な役割を担っていることが認められる。
【0024】
前記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類は、pH8付近では過酸化水素ともペルオキシダーゼ存在下の過酸化水素とも顕著な発光反応は起こさないが、これはN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウムカチオンが対イオン、特に硝酸イオンと安定な塩を形成しているためと考えられる。しかし、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物等の極性の高い化合物の存在下で光照射を行なうことにより、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウムカチオンへの対アニオンからの電荷移動が促進され、イオン性の高い塩類からラジカル性を有する電荷移動錯体に変化し、この錯体がN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の配位若しくは溶媒和によって安定化され、この安定化されたビラジカル性化合物が過酸化水素の酵素分解により生成する活性酸素と反応して、励起状態のジオキセタン構造を経て発光するのでペルオキシダーゼ濃度に依存した発光強度が得られるものと考えられる。この光照射による反応において、アミノアルコール化合物の添加は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウムカチオンへの電荷移動に関与してその反応を促進し、発光反応時のブランク値を高める副生成物の生成を抑え、且つ生成するビラジカルを更に安定化する作用を有するものと考えられる。
【0025】
前記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物及びアミノアルコール化合物の混合割合(モル比)は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類に対してN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物を1〜1万倍モル、アミノアルコール化合物を1〜1万倍モルの量でそれぞれ用いることができ、さらに、同種及び/又は異種のN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物及び/又はその他の溶媒を反応溶媒として用いることもできる。
【0026】
前記光照射反応の反応温度は、用いられる溶媒の有無及び種類によって異なるが、一般的に−10〜+150℃、好ましくは0〜120℃、特に好ましくは20〜90℃の範囲の温度である。また、反応時間は1分〜一昼夜、好ましくは10分〜15時間、特に好ましくは30分〜10時間の範囲の時間である。
【0027】
前記化学発光試薬は、pH7.5〜13の塩基性条件下において、過剰の過酸化水素の存在下、ペルオキシダーゼの濃度に依存した量で発光する。この発光は、フェノール性化合物等の発光促進剤によって増強することが認められる。このようなフェノール性化合物としては、p−ヒドロキシ桂皮酸、p−フェニルフェノール、p−(4−クロロフェニル)フェノール、p−(4−ブロモフェニル)フェノール、p−(4−ヨードフェニル)フェノール、p−ヨードフェノール、p−ブロモフェノール、p−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、p−クマル酸、6−ヒドロキシベンゾチアゾール、2−ナフトール、ホタルルシフェリン等が非限定的に挙げられる。
【0028】
前記化学発光試薬の濃度は、10-8〜1M、好ましくは10-6〜1M、更に好ましくは10-4〜10-2Mの範囲であり、その使用量は10〜500μl、特に50〜300μlの範囲が望ましい。また、発光促進剤は、化学発光試薬の量の0.01〜100倍モル、好ましくは0.1〜10倍モルの範囲で用い、その濃度は10-6〜1M、特に10-4〜10-2Mの範囲で用いるのが望ましい。
【0029】
本発明のAFPの化学発光法による免疫学的測定方法における化学発光反応に用いられる水素受容体としては、ペルオキシダーゼ酵素の基質となり得るものであれば特に限定されるものではないが、有機過酸化物、無機過酸化物等が任意に用いられ、特に、過酸化水素が好ましい。この水素受容体の使用量は化学発光試薬に対して充分に過剰な量で用いることが必要であり、化学発光試薬に対して3〜1万倍モル、特に10〜1000倍モルの範囲で用いるのが望ましい。
また、ペルオキシダーゼを標識物質として抗体、核酸等を標識してAFPを定量する場合には、特に限定されるものではないが、ペルオキシダーゼとして、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が好ましく用いられる。
【0030】
前記化学発光反応に用いる塩基性緩衝液としては、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ほう酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液等を任意に用いることができる。これらの緩衝液の濃度は1mM〜1Mの範囲で用いるのが望ましい。また、反応時に界面活性剤、キレート剤等の添加剤を任意に用いることができる。
【0031】
前記化学発光反応の発光量の測定は発光光度計を用いて測定することができる。その際に、発光量測定の開始点及び積算時間は任意であるが、発光量が安定し且つ発光量の濃度依存性の高い時間を選択するのが望ましい。例えば、測定開始点は試薬混合後0〜1時間、好ましくは0〜30分、特に好ましくは0〜15分であり、測定の積算時間は1秒〜1分、好ましくは1〜30秒、特に好ましくは1〜10秒である。
【0032】
【実施例】
以下、参考例と共に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが本発明は下記に限定されるものではない。
尚、参考例及び実施例中の%は重量%を意味する。
【0033】
[参考例1]
化学発光試薬の調製
ルシゲニンを1.5mg試験管に採り、これにN,N−ジメチルアセトアミドを1ml加えて溶解させた後、30℃の温度の水浴中で250Wのコピーランプを7時間照射してから、トリエタノールアミン0.5mlを添加し混合することにより化学発光試薬を得た。次に、この化学発光試薬を8×10-4Mのp−ヨードフェノール75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液で500倍に希釈することにより化学発光試薬溶液を調製した。
【0034】
[参考例2]
不溶性担体固定化兎抗ヒトAFPポリクローナル抗体の製造
ヒトAFPに特異的反応性を有する兎等の動物由来の抗ヒトAFPポリクローナル抗体を10mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4) に10μg/mlの濃度で溶解した溶液を、白色マイクロプレート(ラボシステム社)の各ウェルに0.1mlずつ加え、37℃の温度で1時間放置した後、PBSで洗浄してから、1%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を0.4mlずつ加えて37℃の温度で1時間放置してポストコーティング処理を実施して兎抗ヒトAFPポリクローナル抗体固定化白色マイクロプレートを得た。
【0035】
[参考例3]
ペルオキシダーゼ酵素標識マウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体の製造
ヒトAFPに特異的反応性を有するマウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体を10mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4) に1.0mg/mlの濃度で溶解した溶液1mlに、N−(m−マレイミド安息香酸)−N−サクシンイミドエステル(MBS)の10mg/mlの濃度のジメチルホルムアミド溶液0.1mlを添加し、25℃の温度で30分間反応させた。次いで、この反応混合液をセファデックスG−25を充填したカラムを用い、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0) でゲル濾過を行ない、マレイミド化マウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体と未反応MBSとを分離した。
【0036】
一方、ペルオキシダーゼ酵素としてホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)の5.0mg/mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5) 溶液1mlに、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物(SAMS)の35mg/mlの濃度のジメチルホルムアミド溶液50μlを添加し、25℃の温度で2時間反応させた。次いで、この反応混合液に1Mヒドロキシルアミンの5mMエチルジアミン四酢酸(EDTA)含有0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0) 0.8mlを添加して30℃の温度で4分間攪拌してHRP分子中に導入したS−アセチルメルカプト基を脱アセチル化した後、セファデックスG−25を充填したカラムを用い、5mMEDTA含有0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0) でゲル濾過して精製し、チオール化HRPを含有する画分を得た。
【0037】
次に、マレイミド化マウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体とチオール化HRPとを混合し、コロジオンバックを用いて氷冷下に4mg/mlの蛋白質濃度まで濃縮し、4℃で一昼夜放置した後、ウルトロゲルAcA44(SEPRACOR社)を充填したカラムを用いてゲル濾過し、ペルオキシダーゼ酵素標識マウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体を得た。
【0038】
[実施例1]
同時サンドイッチ法CLEIAによるα−フェトプロテイン(AFP)の測定
兎抗ヒトAFPポリクローナル抗体を固定化した白色マイクロプレートに、精製したヒトAFP(標準物質)を0〜800ng/mlの範囲で含有する2%BSA含有PBS溶液(pH7.2) 50μlとペルオキシダーゼ酵素標識マウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体を約2μg/mlの濃度で含有する2%BSA含有PBS溶液(pH7.2) 100μlとを加え、37℃の温度で1時間インキュベートした。次に、ウェル内の溶液を吸引除去した後、ウェル内を生理食塩水で洗浄してから、各ウェルに75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8) 100μlを加え、これに参考例1で調製した化学発光試薬溶液100μl及び0.0017%過酸化水素を含む75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8) 50μlを順次注入して発光させた後、この発光量をルミノメーター(ダイアヤトロン社製ルミナスCT−9000D)で1〜5秒間積算して測定し、この値を標準物質濃度に対してプロットすることにより、図1に示される濃度依存性の良い検量線を得た。この検量線を用いて血清検体中のヒトAFPを0.01ng/mlの濃度まで測定することが可能であった。
【0039】
[参考例4]
不溶性担体固定化マウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体の製造
ヒトAFPに特異的反応性を有するマウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体を10mMPBS(pH7.2) に10μg/mlの濃度で溶解した溶液を、白色マイクロプレート(ラボシステム社)の各ウェルに0.1mlずつ加え、37℃の温度で1時間放置した後、PBSで洗浄してから、1%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を0.4mlずつ加えて37℃の温度で1時間放置してポストコーティング処理を実施してマウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体固定化白色マイクロプレートを得た。
【0040】
[実施例2]
同時サンドイッチ法CLEIAによるα−フェトプロテイン(AFP)の測定
マウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体を固定化した白色マイクロプレートに、精製したヒトAFP(標準物質)を0〜800ng/mlの範囲で含有する2%BSA含有PBS溶液(pH7.2) 50μlとペルオキシダーゼ酵素標識マウス抗ヒトAFPモノクローナル抗体を約2μg/mlの濃度で含有する2%BSA含有PBS溶液(pH7.2) 100μlとを加え、37℃の温度で1時間インキュベートした。次いで、ウェル内の溶液を吸引除去した後、ウェル内を生理食塩水で洗浄してから、各ウェルに75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8) 100μlを加え、これに参考例1で調製した化学発光試薬溶液100μl及び0.0017%過酸化水素を含む75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8) 50μlを順次注入して発光させた後、この発光量をルミノメーター(ダイアヤトロン社製ルミナスCT−9000D)で1〜5秒間積算して測定し、この値を標準物質濃度に対してプロットすることにより、図2に示される濃度依存性の良い検量線を得た。この検量線を用いて血清検体中のヒトAFPを0.01ng/mlの濃度まで測定することが可能であった。
【0041】
【発明の効果】
本発明のα−フェトプロテイン化学発光法を利用する免疫学的測定方法は、入手が容易であり取り扱いも比較的に容易なペルオキシダーゼ酵素を標識物質として用い、安価で入手が容易であるルシゲニン等を出発原料とし、且つ容易に製造できる新規化学発光試薬を用いる化学発光法により、血清等の試料中のα−フェトプロテインを免疫学的に高感度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1記載の反応系を用いて化学発光させた化学発光量をヒトAFP(標準物質)の濃度の関数としてプロットして作成したヒトAFP測定用のポリクローナル抗体系検量線である。
【図2】 実施例2記載の反応系を用いて化学発光させた化学発光量をヒトAFP(標準物質)の濃度の関数としてプロットして作成したヒトAFP測定用のモノクローナル抗体系検量線である。
Claims (10)
- ペルオキシダーゼ酵素標識した抗α−フェトプロテイン抗体を試料中のα−フェトプロテインと接触させ、抗原抗体反応によりペルオキシダーゼ酵素標識−抗原抗体錯体からなる免疫複合体を形成させた後分離し、これに、
N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類をN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後にアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光試薬
を添加し、水素受容体の存在下において化学発光させ、その発光強度を測定することにより試料中のα−フェトプロテインの含有量を定量することを特徴とするα−フェトプロテインの化学発光法による免疫学的測定方法。 - 前記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類が、N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウムジナイトレート(ルシゲニン)である請求項1または2に記載のα−フェトプロテインの化学発光法による免疫学的測定方法。
- 前記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物が、下記一般式(2)
で表わされる化合物である請求項1ないし3のいずれかの1項に記載のα−フェトプロテインの化学発光法による免疫学的測定方法。 - 前記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドである請求項1ないし4のいずれかの1項に記載のα−フェトプロテインの化学発光法による免疫学的測定方法。
- 前記アミノアルコール化合物が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項1ないし6のいずれかの1項に記載のα−フェトプロテインの化学発光法による免疫学的測定方法。
- 前記抗原抗体反応を不溶性担体に固定化した抗体の存在下に行ない、標識化された免疫複合体を該不溶性担体上に形成させる請求項1ないし7のいずれかの1項に記載のα−フェトプロテインの化学発光法による免疫学的測定方法。
- 前記水素受容体が、過酸化水素又は過酸化水素源である請求項1ないし8のいずれかの1項に記載のα−フェトプロテインの化学発光法による免疫学的測定方法。
- 前記化学発光反応を行なう際に、更に、発光増強剤を含有させてなる請求項1ないし9のいずれかの1項に記載のα−フェトプロテインの化学発光法による免疫学的測定方法。
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