JP3864719B2 - 膜厚測定方法及び膜厚測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、膜厚測定方法及び膜厚測定装置に関するものであり、特に測定する薄膜の屈折率が波数依存性を有する場合であっても、当該薄膜の膜厚測定を精度良く行うことができる膜厚測定方法及び膜厚測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は、フーリエ変換赤外分光光度計の光学系の構成を説明する図である。フーリエ変換赤外分光光度計(以下FT−IRと称する)の光学系には、図6に示されるマイケルソン干渉計が一般的に用いられている。
図6において、1は光源、2はハーフミラー、3は固定ミラー、4は可動ミラー、5は反射ミラー、6はサンプルであり基板6a上に薄膜6bが形成されている。7は検知器である。
【0003】
FT−IRを用いた膜厚測定原理について、図6を用いて説明する。
図6において、光源1からでた連続光をハーフミラー2で分離し、一方は固定ミラー3に入射、他方は可動ミラー4に入射する。それぞれのミラーで反射した光は、ハーフミラー2に再び戻り、反射ミラー5で反射された後、サンプル6へ向かう。サンプル6で反射した光は反射ミラー5を経て検知器7で捉えられる。
【0004】
可動ミラー4を図6中の矢印方向に移動させて、検出器7で検出される光強度の可動ミラー4の移動距離依存性を測定する。このようにして得られる膜干渉スペクトルは、インターフェログラムと呼ばれる。可動ミラー4の移動距離は、光学距離に対応しており、インターフェログラムは、光学距離関数の膜干渉スペクトルと言える。図7は、インターフェログラムについて説明する図である。図7に示されるように、インターフェログラムは、横軸が可動ミラーの移動距離、縦軸が光強度であり、8がメインバースト、9がサイドバーストと呼ばれるピークであり、サイドバースト9は、メインバースト8を中心として対称な位置に見られる。
【0005】
次に、このメインバースト8と、サイドバースト9について説明する。図8は、サンプルでの光の反射について説明する図である。
図6において、サンプル6に入射する光には、光源1から、可動ミラー4、反射ミラー5を経てサンプル6に入射する経路(以下経路Aとする)と、光源1から、固定ミラー3、反射ミラー5を経てサンプル6に入射する経路(以下経路Bとする)とがある。図8に示すように、経路Aで入射した光がサンプルで反射する光10と、経路Bで入射した光がサンプルで反射する光11とがあり、それぞれ薄膜6bの表面での反射光10a、11aと、薄膜6bと基板6aの界面での反射光10b、11bとがある。経路Aの光がサンプルで反射後検知器7に到る光学距離と、経路Bの光がサンプルで反射後検知器7に到る光学距離が一致した場合には、全ての波数の光に対して、位相が一致し光が強めあうため、信号強度が強くなる。この光強度が強くなったピークがメインバースト8である。また、可動ミラーの位置をずらすことにより、上記2つの光学距離に違いが生じると、波数によって強め合うものや打ち消しあうものがあるため、上記2つの光学距離が一致した場合に比べて信号強度が小さくなる。
【0006】
しかし、経路Aの光が薄膜6bの表面での反射を経て検知器7に到る光学距離と、経路Bの光が薄膜6bと基板6aとの界面での反射を経て検知器7に到る光学距離が一致した場合には、全ての波数の光に対して位相が一致し光が強めあうため、信号強度が強くなる。同様に、経路Aの光が薄膜6bと基板6aとの界面での反射を経て検知器7に到る光学距離と、経路Bの光が薄膜6bの表面での反射を経て検知器7に到る光学距離が一致した場合にも、全ての波数の光に対して位相が一致し光が強めあうため、信号強度が強くなる。これらのピークがサイドバースト9である。
【0007】
つまり、インターフェログラムには、サンプル6の最表面同士および薄膜6aと基板6bの界面同士からの反射した光の干渉によるメインバースト8と、サンプル6の最表面から反射した光と薄膜6bと基板6aの界面から反射した光の干渉によるサイドバースト9が得られる。
このサイドバースト9は、メインバースト8を中心として対称の位置に現れる。また、メインバースト8とサイドバースト9の距離が、光が薄膜6bを往復通過する光学距離に対応しているため、この光学距離に薄膜6bの屈折率を乗じることにより膜厚を求めることができる。
尚、以上の説明は、薄膜6bの屈折率が基板6aより小さい場合のものであり、薄膜6bの屈折率が基板6aより大きい場合は、薄膜6b表面で反射するときに位相が反転するのに対し、薄膜6bと基板6aの界面で反射するときには位相が反転しないため、全ての波数の光に対して弱めあい、信号強度が小さくなり、ピークは反転する。
【0008】
図9は従来の膜厚測定方法のフローを説明する図である。図9に示す従来の膜厚測定方法について説明する。
上述したインターフェログラムには、検知器7の感度の波数依存性、光源1からの光強度の波数依存性などの情報も含んでいるため、サイドバーストのピークが歪んでいる。そこで、検知器7および光源1の特性を除去するために、サンプルと同時にリファレンスについても測定を行う。
リファレンスとしては、薄膜が形成されていない基板のみのものを用いる。
サンプルについて上述の方法によりインターフェログラムI1(x1)を得る。このインターフェログラムI1(x1)をアポタイゼーション及びフーリエ変換することにより波数に依存した膜干渉スペクトルR1(ν)が得られる。これを波数関数の膜干渉スペクトルと呼ぶ。尚、アポタイゼーション処理とは、インターフェログラムの終端部で段差を持たないようにゼロに滑らかにつながるようにする処理である。
【0009】
一方、リファレンスについても、同様にインターフェログラムI2(x1)をアポタイゼーション及びフーリエ変換して、波数関数の膜干渉スペクトルR2(ν)を得る。前記サンプルにおける波数関数の膜干渉スペクトルR1(ν)を、前記リファレンスにおける波数関数の膜干渉スペクトルR2(ν)で割り算を行うことで、検知器7の特性および光源1の特性をキャンセルした、波数関数の膜干渉スペクトルR(ν)を得ることができる。この波数関数の膜干渉スペクトルをアポタイゼーション及びフーリエ変換することにより、光源1および検知器7の波数依存性を除去した光学距離関数の膜干渉スペクトルS(x1)を得ることができる。この膜干渉スペクトルS(x1)をスペーシャルグラムと呼ぶ。
【0010】
図10は、従来の膜厚測定方法により得られたスペーシャルグラムの例を示す図である。このスペーシャルグラムにおいて、上述したインターフェログラムでの説明と同様、メインバースト12とサイドバースト13の距離が、光が薄膜を往復通過する光学距離に対応しているため、薄膜の屈折率を与えることにより膜厚を求めることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
インターフェログラムまたはスペーシャルグラムにおけるサイドバーストのピーク幅は、使用している光の波数領域の逆数になる。つまり、波数領域を広くとればとるほどサイドバーストのピーク幅が狭くなるため、薄い膜の測定が可能になる。
一方、ほとんど全ての物質の屈折率は波数依存性がある。このため、光の波数により膜の光学距離が変わる。これは、先の従来例で述べたサイドバーストが、全ての位相について完全には一致しないことを意味する。このため、サイドバーストのピーク形状が歪む。また、膜厚を算出するために屈折率を与えなければならないが、波数依存性があるために、与えるべき屈折率が明確ではない。以上の原因により、測定精度が低下する。
【0012】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、膜厚を測定する薄膜の屈折率が波数により変化する場合であっても、精度よく薄膜の膜厚を測定することができる方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る膜厚測定方法は、薄膜が形成された基板に、この薄膜を透過しうる光を照射し、上記基板で反射される光強度を検出して上記光の波数に依存する波数関数の膜干渉スペクトルを得る工程と、この波数関数の膜干渉スペクトルの横軸である波数を、上記薄膜の屈折率の波数依存性データに基づき、上記波数に上記波数での上記薄膜の屈折率を乗じたものに補正することにより補正膜干渉スペクトルを得る工程と、この補正膜干渉スペクトルを波数関数から距離関数に変換することにより変換膜干渉スペクトルを得る工程と、この変換膜干渉スペクトルを用いて上記薄膜の膜厚を算出する工程と、を備えるものである。
【0014】
また、多層膜が形成された基板に、上記多層膜を透過しうる光を照射し、上記基板で反射される光強度を検出して上記光の波数に依存する波数関数の膜干渉スペクトルを得る工程と、上記多層膜を構成する測定層よりも上にある全ての上層膜の仮膜厚を設定し、上記全ての上層膜の屈折率の波数依存性データに対して上記各上層膜の仮膜厚により重み付けをした第1の屈折率の波数依存性データに基づき、上記膜干渉スペクトルの横軸である第1の波数を、上記第1の波数に上記第1の波数での上記第1の屈折率を乗じたものに補正することにより第1の補正膜干渉スペクトルを得るとともに、上記測定層の仮膜厚を設定し、上記測定層及び上記全ての上層膜の屈折率の波数依存性データに対して上記測定層の仮膜厚及び上記各上層膜の仮膜厚により重み付けをした第2の屈折率の波数依存性データに基づき、上記膜干渉スペクトルの横軸である第2の波数を、上記第2の波数に上記第2の波数での第2の屈折率を乗じたものに補正することにより第2の補正膜干渉スペクトルを得る工程と、上記第1の補正膜干渉スペクトルと上記第2の補正膜干渉スペクトルをそれぞれに波数関数から距離関数に変換することにより第1の変換膜干渉スペクトルと第2の変換膜干渉スペクトルを得る工程と、上記第1の変換膜干渉スペクトルと上記第2の変換膜干渉スペクトルを用いて上記多層膜の上記測定層の膜厚を算出する工程と、を備えるものである。
【0015】
この発明に係る膜厚測定装置は、薄膜が形成された基板に、この薄膜を透過しうる光を照射し、上記基板で反射される光強度を検出して上記光の波数に依存する波数関数の膜干渉スペクトルを得る手段と、この波数関数の膜干渉スペクトルの横軸である波数を、上記薄膜の屈折率の波数依存性データに基づき、上記波数に上記波数での上記薄膜の屈折率を乗じたものに補正することにより補正膜干渉スペクトルを得る手段と、この補正膜干渉スペクトルを波数関数から距離関数に変換することにより変換膜干渉スペクトルを得る手段と、この変換膜干渉スペクトルを用いて上記薄膜の膜厚を算出する手段と、を備えるものである。
【0016】
また、多層膜が形成された基板に、上記多層膜を透過しうる光を照射し、上記基板で反射される光強度を検出して上記光の波数に依存する波数関数の膜干渉スペクトルを得る手段と、上記多層膜を構成する測定層よりも上にある全ての上層膜の仮膜厚を設定し、上記全ての上層膜の屈折率の波数依存性データに対して上記各上層膜の仮膜厚により重み付けをした第1の屈折率の波数依存性データに基づき、上記膜干渉スペクトルの横軸である第1の波数を、上記第1の波数に上記第1の波数での上記第1の屈折率を乗じたものに補正することにより第1の補正膜干渉スペクトルを得るとともに、上記測定層の仮膜厚を設定し、上記測定層及び上記全ての上層膜の屈折率の波数依存性データに対して上記測定層の仮膜厚及び上記各上層膜の仮膜厚により重み付けをした第2の屈折率の波数依存性データに基づき、上記膜干渉スペクトルの横軸である第2の波数を、上記第2の波数に上記第2の波数での第2の屈折率を乗じたものに補正することにより第2の補正膜干渉スペクトルを得る手段と、上記第1の補正膜干渉スペクトルと上記第2の補正膜干渉スペクトルをそれぞれに波数関数から距離関数に変換することにより第1の変換膜干渉スペクトルと第2の変換膜干渉スペクトルを得る手段と、上記第1の変換膜干渉スペクトルと上記第2の変換膜干渉スペクトルを用いて上記多層膜の上記測定層の膜厚を算出する手段と、を備えるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1の膜厚測定方法のフローを説明する図である。図1に示すこの発明の実施の形態1の膜厚測定方法について説明する。
実施の形態1においても、従来例で説明した、図6に示す光学系を用いる。
まず、検知器および光源の特性を除去するために、サンプルと同時にリファレンスについても従来例で説明した、図6と同様の光学系を用いて測光を行う。
光源からの光路差を有する2つの光を薄膜に形成された基板に照射し、この基板で反射された2つの光の反射光強度を光路差を変えて検出することにより、基板上に薄膜が形成されたサンプルと、基板上に薄膜が形成されていないリファレンスについて、それぞれ距離関数の膜干渉スペクトルI1(x1)、I2(x1)(インターフェログラム)を求める。このインターフェログラムは、従来と同様に光学距離関数の膜干渉スペクトルと言える。
【0018】
次いで、サンプル及びリファレンスのインターフェログラムI1(x1)、I2(x1)を距離関数から波数関数に変換して、サンプル及びリファレンスの波数関数の膜干渉スペクトルR1(ν)、R2(ν)を求める。
この距離関数から波数関数への変換にはフーリエ変換を用いる。また、インターフェログラムの終端部で段差を持たないようにゼロに滑らかにつながるようにするようにアポタイゼーションを行う。
【0019】
サンプルの波数関数の膜干渉スペクトルR1(ν)を、リファレンスの波数関数の膜干渉スペクトルR2(ν)で割り算を行うことで、検知器の特性および光源の特性をキャンセルした、波数関数の膜干渉スペクトルR(ν)を得ることができる。
以上の処理は従来の膜厚測定方法と同様である。
【0020】
従来と異なるのは、得られた波数関数の膜干渉スペクトルR(ν)を、薄膜の屈折率の波数依存性データに基づき補正を行う点である。波数関数の膜干渉スペクトルにおいて、横軸は波数であるが、その横軸を、波数にその波数での薄膜の屈折率を乗じたものに補正する。このようにして得られる膜干渉スペクトルを補正膜干渉スペクトルR(ν*n(ν))と呼ぶ。
【0021】
尚、薄膜の屈折率の波数依存性データは、予め別の装置を用いて測定したもの、ハンドブックなどに記載された既知のデータ、薄膜の組成から理論式により求めたもの、などを用いることができ、上記補正ができるように、予め入力しておく。勿論、膜厚測定装置に、薄膜の屈折率の波数依存性データを測定する機能を備えておき、これによって得られたデータを用いてもよい。
【0022】
次に、この補正膜干渉スペクトルR(ν*n(ν))を波数関数から距離関数に変換することにより変換膜干渉スペクトルS(x2)を得る。波数関数から距離関数への変換にはフーリエ変換を用いる。また、インターフェログラムの終端部で段差を持たないようにゼロに滑らかにつながるようにするようにアポタイゼーションを行う。このようにして得られる変換膜干渉スペクトルS(x2)は実距離関数の膜干渉スペクトルである。
このようにして得られた変換膜干渉スペクトルS(x2)におけるメインバーストとサイドバーストの距離は、光が薄膜を往復通過する実距離、即ち膜厚の2倍に対応している。したがって、変換膜干渉スペクトルS(x2)におけるメインバーストとサイドバーストの距離を求めて、それを2で割ることにより、薄膜の膜厚を求めることができる。
【0023】
ここで、この波数に依存した屈折率を波数に乗じる操作は、光学距離を実距離に変換することに相当する。従来のスペーシャルグラムは、光学距離関数の膜干渉スペクトルであり、各波数に対し光学距離が一定でなかったため、サイドバーストが歪む。一方、本発明で得られるスペーシャルグラムは、実距離関数の膜干渉スペクトルであり、いかなる波数においても実距離、即ち実膜厚は一定であるため、サイドバーストは歪まない。
したがって、屈折率が波数依存性を有する場合であっても、サイドバーストが歪まないので、サイドバーストのピーク位置を正確に求めることができ、これによって薄膜の膜厚を精度よく求めることができる。
【0024】
ここで、フーリエ変換の方法として、高速フーリエ変換(以下FFTと称する)を用いる場合には次の点を考慮する必要がある。
FFTを用いる場合には、データ点が等間隔である必要がある。しかし、通常波数関数の膜干渉スペクトルにおいてデータ点が等間隔であるため、本発明における、波数に依存する膜の屈折率を波数に乗じた補正膜干渉スペクトルにおいては、データ点が等間隔ではなくなる。そこで、この補正膜干渉スペクトルにおいては、補間によりデータ点を等間隔に取り直おす必要がある。補間方法としては、一般的な補間方法である、スプライン補間、ラグランジュ補間等を用いることができる。
【0025】
尚、フーリエ変換方法としてFFTを用いず、そのままの積分形でコンピューター計算することも可能である。この場合には、計算時間は要するが、データを等間隔に取り直す必要はない。
【0026】
次に、実際に実施の形態1の方法により膜厚測定した例として、GaAs基板上にAl0.6Ga0.4As膜を2μm成膜したサンプルについて膜厚測定を行った結果を説明する。
図2は、実施の形態1の膜厚測定方法を用いて得られたスペーシャルグラムである。尚、図2のスペーシャルグラムにおいて、横軸は、上述した実距離を膜厚に換算するために2で割ったものである。
従来の測定方法では、図10と同様に、サイドバーストのピークが歪み、上下にピークが出る。また測定した波数範囲の2000cm-1から12000cm-1では膜の屈折率が3.1〜3.4と変化し、与えるべき屈折率値が不確定である。このため、膜厚測定が精度よく行なえない。これに対し、本発明の方法では、サイドバーストのピークの歪みが改善され、メインバースト中心からサイドバースト中心までの距離から求めた膜厚値は、既知の膜厚値2μmと一致し、本発明の有効性を確認できた。
【0027】
以上、FT−IRを用いた膜厚測定方法について説明したが、光源を分光して異なった波数の光を直接サンプルに照射し、波数を順次スキャンすることにより波数関数の膜干渉スペクトルを得る、従来型の赤外分光光度計を用いる場合についても同様に適用できることは言うまでもない。
尚、従来型の赤外分光光度計を用いる場合には、測定により直接波数関数の膜干渉スペクトルを得ることができるので、図1において、光学距離関数の膜干渉スペクトルを求めて、その後にアポタイゼーション、フーリエ変換を行う処理は不要である。
【0028】
実施の形態2.
実施の形態1では、薄膜が単層膜の場合の膜厚測定方法について説明したが、実施の形態2では、薄膜が多層膜であって、多層膜を構成する各膜の屈折率および屈折率の波数依存性が大きく異なる場合の膜厚測定方法について説明する。
図3はこの発明の実施の形態2のサンプルの構成を説明する図である。図3に示すように、サンプル23は、基板23a上に上層膜23bと下層膜23cの2層からなる多層膜が形成されたものである。
まず、上層膜23bと下層膜23cの仮膜厚値を設定する。仮膜厚値の設定方法として、従来のFT−IRを用いた測定法により得られた膜厚を用いてもよく、また、薄膜形成時の設定膜厚等を用いてもよい。便宜上、これらを仮膜厚と呼ぶ。これらの仮膜厚は、上述のように誤差を含んでいる。
次に、サンプル23の最表面から上層膜23b/下層膜23c界面までの距離を求める。実施の形態1と同様にして、補正膜干渉スペクトルを求める際に、屈折率の波数依存性データとして、上層膜23bの屈折率の波数依存性データを用いる。
【0029】
図4は、このようにして得られるスペーシャルグラムの例を示す図である。図4のように、多層膜のスペーシャルグラムには、メインバースト24側から順に、上層膜23b/下層膜23c界面に起因するサイドバースト25(以下セカンドバーストと称する)、下層膜23c/基板23a界面に起因するサイドバースト26(以下サードバーストと称する)が見られる。
図4に示されるように、下層膜23c/基板23a界面での反射に起因するサードバースト26の歪みは見られるものの、上層膜23b/下層膜23c界面での反射に起因するセカンドバースト25の歪みは見られなくなる。メインバースト24とセカンドバースト25の距離より、上層膜23bの膜厚を求めることができる。
【0030】
次に、サンプル23の最表面から下層膜23c/基板23a界面までの距離を求める。実施の形態1と同様にして、補正膜干渉スペクトルを求める際に、屈折率の波数依存性データとして、上層膜23b及び下層膜23cの屈折率の波数依存性データを、先に設定した仮膜厚により重み付けしたものを用いる。
【0031】
図5は、このようにして得られるスペーシャルグラムの例を示す図である。図5に示されるように、上層膜23b/下層膜23c界面での反射に起因するセカンドバースト28の歪みは見られるものの、下層膜23c/基板23a界面での反射に起因するサードバースト29の歪みは見られなくなる。メインバースト27とサードバースト29の距離より、上層膜23bと下層膜23cの合計の膜厚を求めることができる。したがって、この合計膜厚から図3により得られた上層膜23bの膜厚を引くことにより下層膜23cの膜厚を求めることができる。
【0032】
以上は多層膜が2層の場合について説明したが、多層膜が3層以上の異なる膜から構成される場合についても、同様に、サンプルの最表面からある着目界面までについて、仮膜厚により重み付けをした屈折率の波数依存性データを、実施の形態1で説明した屈折率の波数依存性データとして用いることで、スペーシャルグラムにおいてある着目界面に起因するサイドバーストの歪みを少なくし、サンプルの最表面からある着目界面までの厚さを精度よく測定することができる。この着目する界面を、全ての面に適用することで、サンプルの最表面から全ての界面までの厚さが求められる。即ち、多層膜を構成する薄膜の全ての膜厚を求めることができる。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態2では、薄膜が多層膜であって、多層膜を構成する各膜の屈折率および屈折率の波数依存性が大きく異なる場合の膜厚測定方法について説明したが、実施の形態3では、薄膜が多層膜であって、多層膜を構成する各膜の屈折率および屈折率の波数依存性が近い場合の膜厚測定方法について説明する。例えば、レーザーダイオード用エピタキシャル膜のように、組成比を変えた層構造をもつ場合、各膜の屈折率の差は小さい。このような多層膜の場合に実施の形態3の方法を用いることができる。
実施の形態3においては、実施の形態1と同様にして、補正膜干渉スペクトルを求める際に、屈折率の波数依存性データとして、もっとも代表的な膜の屈折率の波数依存性データを用いる。
【0034】
実施の形態1と同様にして得られるスペーシャルグラムには、実施の形態2と同様に、メインバースト側から順に、上層膜/下層膜界面に起因するセカンドバースト、下層膜/基板界面に起因するサードバーストが見られる。
実施の形態3においては、上層膜と下層膜の屈折率が近く、且つ上層膜と下層膜の屈折率の波数依存性も近いので、得られるスペーシャルグラムのセカンドバーストとサードバーストの両方の歪みを同時に改善できる。
【0035】
メインバースト−セカンドバースト間の距離、セカンドバースト−サードバースト間の距離は、それぞれ上層膜、下層膜の膜厚の2倍に対応しており、これらの距離から各膜厚を求めることができる。このような方法によって、スペーシャルグラムでのサイドバーストの歪みを改善することができ、多層膜を構成する各膜の膜厚を精度よく求めることができる。
多層膜が3層以上の異なる膜から構成される場合についても同様の方法により各膜の膜厚を求めることができる。
【0036】
【発明の効果】
この発明に係る膜厚測定方法及び膜厚測定装置は、膜厚を測定する薄膜の屈折率が波数により変化する場合であっても、精度よく薄膜の膜厚を測定することができる。また、多層膜においても、スペーシャルグラムにおいてある着目界面に起因するサイドバーストの歪みを少なくし、サンプルの最表面からある着目界面までの厚さを精度よく測定することができ、その精度のもとで、この着目する界面を、全ての面に適用することで、多層膜を構成する薄膜の全ての膜厚を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の膜厚測定方法のフローを説明する図である。
【図2】 この発明の実施の形態1において得られたスペーシャルグラムの例を示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態2のサンプルの構成を説明する図である。
【図4】 この発明の実施の形態2の膜厚測定方法により得られるスペーシャルグラムの例を示す図である。
【図5】 この発明の実施の形態2の膜厚測定方法により得られるスペーシャルグラムの例を示す図である。
【図6】 フーリエ変換赤外分光光度計の光学系の構成を説明する図である。
【図7】 インターフェログラムについて説明する図である。
【図8】 サンプルでの光の反射について説明する図である。
【図9】 従来の膜厚測定方法のフローを説明する図である。
【図10】 従来の膜厚測定方法により得られたスペーシャルグラムの例を示す図である。
Claims (4)
- 薄膜が形成された基板に、この薄膜を透過しうる光を照射し、上記基板で反射される光強度を検出して上記光の波数に依存する波数関数の膜干渉スペクトルを得る工程と、この波数関数の膜干渉スペクトルの横軸である波数を、上記薄膜の屈折率の波数依存性データに基づき、上記波数に上記波数での上記薄膜の屈折率を乗じたものに補正することにより補正膜干渉スペクトルを得る工程と、この補正膜干渉スペクトルを波数関数から距離関数に変換することにより変換膜干渉スペクトルを得る工程と、この変換膜干渉スペクトルを用いて上記薄膜の膜厚を算出する工程と、を備えてなる膜厚測定方法。
- 多層膜が形成された基板に、上記多層膜を透過しうる光を照射し、上記基板で反射される光強度を検出して上記光の波数に依存する波数関数の膜干渉スペクトルを得る工程と、上記多層膜を構成する測定層よりも上にある全ての上層膜の仮膜厚を設定し、上記全ての上層膜の屈折率の波数依存性データに対して上記各上層膜の仮膜厚により重み付けをした第1の屈折率の波数依存性データに基づき、上記膜干渉スペクトルの横軸である第1の波数を、上記第1の波数に上記第1の波数での上記第1の屈折率を乗じたものに補正することにより第1の補正膜干渉スペクトルを得るとともに、上記測定層の仮膜厚を設定し、上記測定層及び上記全ての上層膜の屈折率の波数依存性データに対して上記測定層の仮膜厚及び上記各上層膜の仮膜厚により重み付けをした第2の屈折率の波数依存性データに基づき、上記膜干渉スペクトルの横軸である第2の波数を、上記第2の波数に上記第2の波数での第2の屈折率を乗じたものに補正することにより第2の補正膜干渉スペクトルを得る工程と、上記第1の補正膜干渉スペクトルと上記第2の補正膜干渉スペクトルをそれぞれに波数関数から距離関数に変換することにより第1の変換膜干渉スペクトルと第2の変換膜干渉スペクトルを得る工程と、上記第1の変換膜干渉スペクトルと上記第2の変換膜干渉スペクトルを用いて上記多層膜の上記測定層の膜厚を算出する工程と、を備えてなる膜厚測定方法。
- 薄膜が形成された基板に、この薄膜を透過しうる光を照射し、上記基板で反射される光強度を検出して上記光の波数に依存する波数関数の膜干渉スペクトルを得る手段と、この波数関数の膜干渉スペクトルの横軸である波数を、上記薄膜の屈折率の波数依存性データに基づき、上記波数に上記波数での上記薄膜の屈折率を乗じたものに補正することにより補正膜干渉スペクトルを得る手段と、この補正膜干渉スペクトルを波数関数から距離関数に変換することにより変換膜干渉スペクトルを得る手段と、この変換膜干渉スペクトルを用いて上記薄膜の膜厚を算出する手段と、を備えてなる膜厚測定装置。
- 多層膜が形成された基板に、上記多層膜を透過しうる光を照射し、上記基板で反射される光強度を検出して上記光の波数に依存する波数関数の膜干渉スペクトルを得る手段と、上記多層膜を構成する測定層よりも上にある全ての上層膜の仮膜厚を設定し、上記全ての上層膜の屈折率の波数依存性データに対して上記各上層膜の仮膜厚により重み付けをした第1の屈折率の波数依存性データに基づき、上記膜干渉スペクトルの横軸である第1の波数を、上記第1の波数に上記第1の波数での上記第1の屈折率を乗じたものに補正することにより第1の補正膜干渉スペクトルを得るとともに、上記測定層の仮膜厚を設定し、上記測定層及び上記全ての上層膜の屈折率の波数依存性データに対して上記測定層の仮膜厚及び上記各上層膜の仮膜厚により重み付けをした第2の屈折率の波数依存性データに基づき、上記膜干渉スペクトルの横軸である第2の波数を、上記第2の波数に上記第2の波数での第2の屈折率を乗じたものに補正することにより第2の補正膜干渉スペクトルを得る手段と、上記第1の補正膜干渉スペクトルと上記第2の補正膜干渉スペクトルをそれぞれに波数関数から距離関数に変換することにより第1の変換膜干渉スペクトルと第2の変換膜干渉スペクトルを得る手段と、上記第1の変換膜干渉スペクトルと上記第2の変換膜干渉スペクトルを用いて上記多層膜の上記測定層の膜厚を算出する手段と、を備えてなる膜厚測定装置。
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