JP3864537B2 - 温度センサの異常検出方法および温度検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度の変化に応じて抵抗値が変化する温度センサに断線が発生したことを検出する異常検出方法に関する。また、本発明は、温度センサの断線検出機能を有する温度検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、温度に応じて抵抗値が変化する温度センサが周知であり、各種の用途に用いられている。この種の温度センサは、温度の上昇に応じてその抵抗値が上昇する特性を有し、この特性を利用して温度が検出される。温度センサ(センサのための配線を含む)に断線が発生するとセンサの本来の機能が果たされなくなるので、温度センサを備えた装置は、断線を検出し、これに的確に対処する必要がある。
【0003】
図1は、サーミスタ等の温度センサを用いて温度を検出する装置の一例を示している。定電圧電源+Bとアースの間には、固定抵抗Rおよび温度センサTHが直列に配置されており、2つの抵抗の分圧比に基づいて温度が求められる。ここでは、電圧検出部2が、温度センサThの両端の電圧を検出する。この電圧値に基づき、図1のマップを用いて、温度が求められる。このように、温度センサThの抵抗値を電圧値に変換し、この電圧値から温度を求めることが多い。
【0004】
温度センサThに断線が発生すると、抵抗値が無限大になり、電圧検出部2で検出される電圧が+Bに等しくなる。そこで、+Bに近い断線検出基準電圧が設定され、断線検出基準電圧を越える電圧値が検出されたときには、断線が発生したと判断される。このような断線検出方法は、例えば、特開昭59−52724号公報の第6図に示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、温度センサの一種に、温度スイッチと呼ばれる温度センサがある。温度スイッチは、図2のような特性を持っている。センサ温度が作動温度Ton以下の領域では温度スイッチの抵抗値がほぼ一定であるが、センサ温度が作動温度Tonを越えると抵抗値が著しく大きくなる。例えば、ポリマー系PTC素子を有する温度スイッチが知られている。ポリマー系PTC素子は、樹脂材料からなり、温度が上がると抵抗値が増えるPTC特性をもつ。この種の温度センサは、温度が作動温度Tonより上か下かのみを検出することに適している。この温度スイッチを備えた装置では、温度スイッチの特性を利用して、測温対象物の温度に応じて装置の動作を切り替えるスイッチ機能を実現できる。
【0006】
上記のように、温度スイッチの抵抗は、作動温度Tonを越えると著しく大きくなる。通常の温度スイッチの作動状態の抵抗値は、非作動状態の抵抗値の1000倍以上になる。断線検出基準電圧(図1)を十分に高く設定しておいたとしても、温度スイッチが作動すると、スイッチ両端の電圧が前記基準電圧を越えてしまう。従って、断線検出基準電圧より大きな電圧が検出された場合に、温度スイッチが正常作動状態にあるのか断線状態にあるのかが分からない。このように、従来の断線検出手法を温度スイッチに適用しても、断線状態と作動状態を判別することが困難である。温度スイッチの断線を検出するために専用のハードウエア手段を設けることも考えられるが、付加的なコストが発生してしまうという問題がある。
【0007】
以上を要約すると、サーミスタ等の温度センサを有する温度検出回路では、電圧値が断線検出基準電圧より大きくなったとき、すなわち抵抗値が断線検出基準抵抗より大きくなったときに断線が発生したと判断される。しかし、温度スイッチは、作動状態においてその抵抗値が著しく大きくなる特性をもつので、抵抗値の大きさのみからは温度スイッチの作動状態と断線状態の判別ができない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度スイッチのような特性をもつ温度センサの断線を確実に検出する異常検出方法を提供することにある。また、本発明の目的は、温度センサの断線を確実に検出する機能を有する温度検出装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明は、温度に応じて抵抗値が変化する温度センサの断線の発生を検出する温度センサの異常検出方法において、温度センサの抵抗値が上昇して所定の断線検出基準抵抗を越える前の抵抗上昇履歴を記憶する履歴記憶工程と、温度センサの抵抗値が前記断線検出基準抵抗を越えたか否かを判定する抵抗値判定工程と、前記抵抗値判定工程において温度センサの抵抗値が前記断線検出基準抵抗を越えたと判定された場合であって、前記抵抗上昇履歴に基づいて、温度センサの抵抗値が所定変化幅より大きな変化幅で瞬間的に急変化して前記断線検出基準抵抗を越えた場合には、断線が発生したと判定する断線判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
前述のように、温度スイッチの断線を抵抗値の大きさのみに基づいて検出することは難しい。しかし、温度スイッチに断線が発生した場合と温度スイッチが正常に作動した場合とでは、抵抗値の上昇の仕方が異なる。断線発生の場合には抵抗値が瞬時に無限大になるのに対し、一方、スイッチ作動の場合には、より長い時間をかけて抵抗値が上昇する。言い換えれば、スイッチ作動時には作動前電圧と断線検出基準電圧との間の中間電圧値が電圧上昇過程で検出されるが、一方、断線発生時にはこのような中間電圧値がほとんど検出されない。
【0011】
そこで、本発明の方法では、温度センサの抵抗値が上昇して所定の断線検出基準抵抗を越える前の抵抗上昇履歴を記憶する。断線検出基準抵抗は、十分に大きな値に設定されている。温度センサの抵抗値が断線検出基準抵抗を越えたと判定された場合であって、当該抵抗値が所定変化幅より大きな変化幅で瞬間的に急変化して断線検出基準抵抗を越えた場合には、抵抗値が瞬時に著しく大きくなっているので断線発生と判定される。これにより、温度スイッチの作動状態と断線状態の判別を確実に行うことが可能となる。
【0012】
なお、本発明は、上記のように温度スイッチのような特性をもつ温度センサに好適に適用される。しかし、本発明の適用範囲は温度スイッチには限定されず、本発明はサーミスタを含む任意の温度センサに適用可能であり、本発明により容易かつ確実に断線を検出することが可能となる。
【0013】
好ましくは、前記断線検出基準抵抗の低抵抗側に前記所定変化幅に対応する範囲をもつ抵抗上昇ゾーンが設定されており、前記断線判定工程は、抵抗値が前記抵抗上昇ゾーンを実質的に飛び越えるように変化した場合に断線が発生したと判定する。この判定は、上昇ゾーン内の抵抗値(抵抗値に対応する電圧値)の検出回数に基づいて容易に行うことができる。
【0014】
また好ましくは、本発明の方法は、温度センサの抵抗値を電圧値に変換する抵抗電圧変換工程を含み、この抵抗値に対応する電圧値と、前記抵抗上昇ゾーンに対応する電圧上昇ゾーンとに基づいて、断線判定を行う。この態様によれば、図1の温度検出回路または抵抗電圧変換タイプの他の温度検出回路に本発明を適用して、低コストで容易に温度センサの断線を検出することができる。
【0015】
(2)また、本発明は、温度に応じて抵抗値が変化する温度センサと、この温度センサの抵抗値を電圧値に変換する抵抗電圧変換手段とを有し、この電圧値に基づいて温度を検出する温度検出装置において、電圧値が上昇し、所定の断線検出基準電圧を上端にもつ所定電圧範囲の電圧上昇ゾーンを横切ったときの電圧上昇履歴を記憶する履歴記憶手段と、この電圧上昇履歴に基づいて、温度センサに断線が発生したか否かを判定する断線判定手段と、を含み、前記断線判定手段は、電圧上昇過程で電圧値が前記電圧上昇ゾーンに実質的に属さなかった場合に断線が発生したと判定することを特徴とする。
【0016】
この態様では、所定の電圧範囲をもつ上昇ゾーンが設定されている。上昇ゾーンの上端の断線検出基準電圧は十分に大きな値に設定されており、この基準電圧より大きな電圧値が検出されたときには断線発生の可能性がある。本発明を温度スイッチに適用する場合、上昇ゾーンの下端の電圧は、作動温度に対応する電圧またはその近傍に設定することが好適である。この態様では、電圧値が上昇して上昇ゾーンを横切り断線検出基準電圧を越えたときの電圧上昇履歴が記憶される。この上昇履歴を基に、電圧上昇過程で電圧値が前記上昇ゾーンに実質的に属さなかった場合には、電圧値が瞬時に大きくなって断線検出基準電圧を越えたことが分かり、断線が発生したと判定される。
【0017】
好ましくは、前記断線判定手段は、所定基準時間より長い時間をかけて電圧値が前記電圧上昇ゾーンを横切った場合には断線が発生していないと判定し、前記所定基準時間より短い時間で横切った場合には断線が発生していると判定する。好ましくは、温度センサの抵抗値に対応する電圧値は、所定の時間間隔で順次取得され、電圧値が前記電圧上昇ゾーンを前記所定基準時間より短い時間で通過したか否かは、前記電圧上昇ゾーンに属する中間電圧値が検出された回数に基づいて判定される。このように、上昇ゾーンを横切るのに要する通過時間、またはこの通過時間に対応する中間電圧値の検出回数を用いることにより、電圧値が上昇ゾーンに属したことを示す履歴の有無が容易に分かる。
【0018】
(3)また、本発明は、センサ温度が所定の作動温度を越えると抵抗値が著しく大きくなる特性をもつ温度センサと、この温度センサの抵抗値を電圧値に変換する抵抗電圧変換手段とを有し、この電圧値に基づいてセンサ温度が前記作動温度より大きいか否かを検出する温度検出装置において、温度センサの断線発生の可能性のある所定の断線検出基準電圧および前記作動温度に対応する所定の作動検出基準電圧に基づいて、順次得られる電圧値を分類する分類手段と、分類結果を電圧履歴として記憶する履歴記憶手段と、前記断線検出基準電圧を越える電圧値が検出された場合に、前記電圧履歴に基づいて、温度センサの断線が発生したか否かを判定する断線判定手段と、を含み、前記断線判定手段は、前記断線検出基準電圧を越える電圧値の検出前に、前記作動検出基準電圧と前記断線検出基準電圧の間の中間電圧値の検出履歴が無い場合に断線が発生したと判定することを特徴とする。この態様では、断線検出基準電圧および作動検出基準電圧を用いて分類を行うことにより、簡単かつ確実に断線発生の有無を判定することができる。
【0019】
以上に説明したように、本発明によれば、温度センサの抵抗値が著しく大きくなるまでの履歴を用いることにより、温度スイッチのような温度センサの正常作動状態と断線状態の判別を確実に行うことが可能となる。本発明の断線判定は、順次得られる抵抗値(電圧値)を用いて行うことができ、従って、従来の温度検出回路の応用により、低コストで容易に本発明の断線判定を実現可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)を図面を参照し説明する。図3は、本実施形態の温度検出装置を示している。温度測定対象物10の表面には温度スイッチRTが貼り付けられている。温度スイッチRTは、前述のように、ポリマー系PTC素子を有し、素子温度が作動温度を越えると抵抗値が著しく上昇する特性をもつ。温度スイッチRTの両側の配線12,14は、それぞれ温度検出コンピュータ16の端子18,20に接続されている。端子18は、固定抵抗R1を介して定電圧電源+Bに接続されている。一方端子20は、コンピュータ内でアース22に接続されている。これにより、温度スイッチRTおよび固定抵抗R1は、定電圧電源+Bおよびアース22の間に直列に配置されている。
【0021】
この温度検出装置では、図1と同様に、温度スイッチRTの抵抗値が、固定抵抗R1および温度スイッチRTの分圧比に基づいて検出される。電圧検出部24は端子18の電位を検出しており、これにより温度スイッチRTの両端の電圧値VTが求められる。この電圧値VTは温度スイッチRTの抵抗値に対応する値である。このように、この回路では温度スイッチRTの抵抗値が電圧値VTに変換される。電圧検出部24が検出した電圧値は、アナログデータからデジタルデータへ変換される。
【0022】
ゾーン判定部26は、電圧検出部24が検出した電圧値VTに基づいて、下記のゾーン判定を行う。図4は、温度スイッチRTの特性を示している。素子温度が作動温度Ton以下の領域では、電圧値VTはほぼ一定の低い値である。素子温度が作動温度Tonを越えると電圧値VTが著しく大きくなり、1000倍以上になる。断線検出スレッショルドV1(以下、断線しきい電圧V1という)は、定電圧電源の電圧+Bよりも少し低い値に設定されている。また、温度スイッチ作動検出スレッショルドV2(以下、作動しきい電圧V2という)が、作動温度Tonに対応する電圧よりも少しだけ高い値に設定されている。断線ゾーンは、断線しきい電圧V1以上の電圧のゾーンである。上昇ゾーンは、断線しきい電圧V1未満で作動しきい電圧V2以上の電圧のゾーンである。
【0023】
温度スイッチRTの断線(本発明では、温度スイッチの配線の断線も、温度スイッチの断線に含まれる)が発生すると、電圧値VTが著しく大きくなり、断線ゾーンに飛び込む。しかしながら、温度スイッチRTが正常に作動した場合でも、電圧値VTは著しく上昇し、断線ゾーンに進入する。従って、断線ゾーンは断線発生の可能性を示すものの、断線ゾーンに属する電圧値VTが検出されたからといって必ず断線が発生しているとは限らない。むしろ、温度スイッチRTが正常に作動した結果として断線ゾーンの電圧値VTが検出されることが多いと考えられる。
【0024】
図3に戻り、ゾーン判定部26は、順次得られる電圧値VTが、断線ゾーンに属するか、上昇ゾーンに属するか、どちらのゾーンにも属さないか(非作動ゾーン)を判定する。判定結果は、履歴記憶部28に記憶される。この履歴記憶部28は、常に、過去の所定履歴期間分の判定結果を記憶しており、この履歴期間分の判定結果が電圧値VTの上昇履歴を表す。このように、本実施形態では、断線しきい電圧V1および作動しきい電圧V2(断線ゾーンおよび上昇ゾーン(作動ゾーン))を用いて電圧値VTを分類し、分類結果を上昇履歴として記憶している。この分類手法の適用により、以降の断線・作動判定処理が簡素化され、効率よく容易かつ確実に行われる。
【0025】
断線判定部30は、履歴記憶部28に記憶された電圧上昇履歴に基づいて、温度スイッチ作動と断線発生との判別を行う。図5は、スイッチ作動時および断線発生時に電圧値VTが上昇する様子を時間の経過とともに示している。温度スイッチRTが正常に作動した場合、電圧値VTは、作動しきい電圧V2以下の値から上昇し、上昇ゾーンを経由して、断線ゾーンに進入する。通常、上昇ゾーンを通過するのには数秒程度の時間がかかる。一方、温度スイッチRTに断線が発生した場合、電圧値VTは、作動しきい電圧V2以下の値から瞬時に上昇し、断線ゾーンに飛び込む。このとき電圧値VTは、上昇ゾーンを飛び越すようにして横切り、上昇ゾーンに属する中間電圧値はほとんど検出されない。従って、電圧値VTが断線ゾーンに進入するまでの電圧上昇の速さに基づいて、より具体的には、上昇ゾーンを横切るのに要した時間が適当な所定の判断基準時間よりも長いか短いかによって、スイッチ作動と断線発生とを判別することができる。
【0026】
本実施形態では、上記の判定を、上昇ゾーンに属する電圧値VTが検出された回数に基づいて行う。原則として、上昇ゾーンに含まれる電圧値VTの検出回数が0であれば断線発生と判定され、検出回数が0でなければスイッチ正常作動と判定される。ただし、好ましくは、ノイズ等の影響を考慮して、上昇ゾーンに属する電圧値VTの検出回数が、所定の適当な少ない回数以下の場合には、断線が発生したと判定される。
【0027】
図6は、本実施形態の作動・断線判定処理を示すフローチャートである。所定の間隔で電圧データが取得され(S10)、ゾーン数カウント処理が行われる(S12)。ここでは、ゾーン判定部26により、電圧値がどのゾーンに属するかが判定される。電圧値が上昇ゾーンに属する場合、履歴記憶部28の上昇ゾーンのカウント数がインクリメントされる。同様に電圧値が断線ゾーンに属する場合には、断線ゾーンのカウント数がインクリメントされる。電圧値が非作動ゾーンに属する場合には、ゾーン数のカウントは行われない。次に、電圧値VTが断線しきい電圧V1を越えたか否かが判定され(S14)、NOの場合にはS10へ戻る。S14がYESの場合、断線判定部30が、断線判定を行う(S16)。ここでは、履歴記憶部28が記憶しているカウント数が参照され、上昇ゾーンのデータが存在するか否かが判定される。前述のように、ノイズの影響を考慮して、上昇ゾーンのカウント数が極少ない場合も、上昇ゾーンのデータが存在しないとみなされる。上昇ゾーンのデータが存在しなかった場合、電圧値が瞬時に上昇して断線ゾーンに飛び込んでいるので、断線が発生したと判定される(S18)。そして、断線発生に対応するためのフェールセーフ処理が行われる(S20)。一方、S16にて上昇ゾーンのデータが存在する場合には、温度スイッチが正常に作動した結果として電圧値VTが上昇し断線ゾーンに進入している。そこで、温度測定対象物の温度が高温になったことに対応するための所定のフェールセーフ処理が行われる(S22)。なお、S16での判定の後は、履歴記憶部28は、記憶しているカウント数をクリアする。
【0028】
次に、本実施形態の好ましい数値設定例を示す。温度スイッチRTが正常に作動した場合に、電圧値VTが上昇ゾーンを横切るのに少なくとも2秒程度の時間がかかるとする。電圧検出タイミングの間隔としては、2秒間よりも十分に短い値、例えば100msec程度が適している。過去の2秒間程度の温度上昇履歴を用いれば正確な断線判定が可能であり、従って、履歴記憶部28は、2秒以上前のゾーン判定結果を消去してよい。上昇ゾーンに属する電圧値の検出回数が0〜2回の場合には、断線判定部30により断線が発生したと判定される。
【0029】
図7は、上記の数値設定例に対応する好適な作動・断線判定処理を示すフローチャートである。電圧データが、100msec毎に取得され(S30)、順次得られる電圧データを基に、ゾーン数カウント処理が、図6のS12と同様にして行われる(S32)。そして、上昇ゾーンおよび断線ゾーンのカウント数の合計が20に到達したか否かが判定される(S34)。これは、電圧値VTが作動しきい電圧V2を越えてから2秒間が経過したか否かを判定することを意味する(20=2秒/100msec)。S34がNOの場合はS30へ戻る。S34がYESの場合、断線判定部30により、上昇ゾーンのカウント数が2つ以下であるか否かが判定される(S36)。この判定は、上昇ゾーンおよび断線ゾーンのカウント数の合計に対する上昇ゾーンカウント数の比率が10%以下であるか否かを判定することを意味する。上昇ゾーンのカウント数が2つ以下の場合、断線発生と判定され(S38)、断線時フェールセール処理が行われる(S40)。S36にて、上昇ゾーンのカウント数が2つを越える場合には、温度スイッチ作動に対応するフェールセーフ処理が行われる(S42)。
【0030】
図8は、図7の処理を行ったときのゾーンカウント数の変化を示すタイムチャートである。図8(a)では、時点t1にて断線が発生している。t1より前の2秒間にはゾーン数がカウントされていない。時点t1にて断線が発生すると電圧値VTが瞬時に著しく上昇し断線ゾーンに飛び込む。従って、時点t1以降は、順次得られる電圧値VTに基づいて断線ゾーンのカウント数がインクリメントされる。時点t1から2秒が経過した時点t2にて、断線ゾーンのカウント数が20になる。この時点で上昇ゾーンのカウント数が調べられる。上昇ゾーンのカウント数がないので、断線が発生したと判定される。
【0031】
一方、図8(b)では、時点t3にて温度スイッチが作動している。時点t3より前の2秒間にはゾーン数がカウントされていない。時点t3で温度スイッチが作動すると、まず、上昇ゾーンに属する電圧値VTが検出される。電圧値VTが上昇ゾーンを横切るのには少なくとも2秒程度はかかるので、時点t3から2秒後の時点t4には、上昇ゾーンのカウント数が20に達する。さらに時間が経過し、時点t5にて電圧値VTが断線ゾーンに進入すると、断線ゾーンのカウントが発生する。断線・作動判定は、時点t4または時点t5にて行えばよい。この場合は、上昇ゾーンのカウント数の比率が10%より大きいので、温度スイッチが正常に作動したものと判定される。
【0032】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明した。本実施形態によれば、温度スイッチRTの抵抗値が電圧値VTに変換され、電圧値VTの上昇履歴を表すゾーンカウント数に基づいて、スイッチ作動と断線発生の判別が行われる。ここでは、電圧値VTが瞬時に大きくなり断線ゾーンに飛び込んだのか、ある程度の時間をかけて上昇し断線ゾーンに進入したのかが判定されており、これにより断線発生とスイッチ作動の判別を確実に行うことが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態では、本発明が温度スイッチの断線検出に好適に適用されたが、本発明の適用範囲は本実施形態に限られるものではない。サーミスタ等の任意の温度センサに本発明を適用可能であり、本発明により温度センサの断線発生を確実に検出することができる。
【0034】
また、本実施形態では、固定抵抗R1と温度スイッチRTの分圧比に基づいて、温度スイッチRTの抵抗値が電圧値に変換される。しかし、温度スイッチRTの抵抗値を電圧値に変換する他の任意のタイプの温度検出回路に本発明を同様に適用可能である。
【0035】
また、本実施形態において、温度検出コンピュータ16内で各種の処理を行う構成は、ソフトウエア手段によって実現することが好適である。
【0036】
図9は、本発明の温度検出装置を電気自動車のバッテリの充放電制御装置に適用した場合の構成例を示す。負荷(車両駆動用モータ)42には、多数のバッテリセル40・1〜40・nが直列に接続されている。これらのバッテリセルの直列配置により高電圧が得られ、この高電圧により負荷42が駆動される。また電気自動車の減速時には、負荷42で回生制動が行われ、回生制動により得られた電力はバッテリに充電される。バッテリセルの両端の電圧は電圧計44により検出され、電池ECU50に入力される。なお、各バッテリセルの電圧が個別に検出されてもよい。また、バッテリセル40・1〜40・nを複数のブロックに分け、各ブロックの電圧が個別に検出されてもよい。
【0037】
また、各バッテリセル40・1〜40・nには、それぞれ、温度スイッチ46・1〜46・nが貼り付けられている。これらの温度スイッチ46・1〜46・nは直列に接続されており、スイッチ群の両端は、電池ECU50の端子52,54にそれぞれ接続されている。電池ECU50は、前述の図3の温度検出コンピュータ16内の温度検出のための構成と同等の構成を含んでいる。
【0038】
図9の構成によれば、いずれか1つのバッテリセルの温度が作動温度を越えれば、そのセルに貼り付けられた温度スイッチが作動し、電池ECU50の端子52の電位が著しく大きくなる。また、温度スイッチの断線(配線の断線を含む:例えば点Xでの断線)が発生した場合にも端子52の電位が著しく大きくなる。従って、実施形態1と同様の方法により、温度スイッチの作動および断線の発生を検出できる。この構成では、各バッテリセル毎に、個別に温度検出のための電圧判定回路を設ける必要がない。従って、簡単な構成により、すべてのバッテリセルの温度を監視し、いずれか1つのセルの温度が上昇したことを検出可能である。
【0039】
電池ECU50は、このようにして検出されたバッテリ温度とバッテリの電圧値に基づいて、バッテリの状態を判断し、判断結果に基づいてバッテリの充放電量を制御する。温度スイッチが作動した場合のフェールセーフ処理の一例としては、充放電量が抑制され、また、バッテリ冷却装置を作動させる。また、温度スイッチの断線発生に対するフェールセーフ処理の一例としては、インジケータ点灯によるドライバへの報知が行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の温度センサを用いて温度を検出するための回路を示す図である。
【図2】 温度スイッチの特性を示す図である。
【図3】 本発明の実施の形態の温度検出装置の構成を示す図である。
【図4】 温度スイッチの特性とともに本発明の上昇ゾーンおよび断線ゾーンを示す図である。
【図5】 温度スイッチ作動時および断線発生時における温度スイッチの電圧値上昇の様子を示す図である。
【図6】 本実施形態の作動・断線判定処理を示すフローチャートである。
【図7】 本実施形態の作動・断線判定処理を示すフローチャートである。
【図8】 図7の処理が行われた場合のゾーンカウント数の変化を、断線発生時および温度スイッチ作動時について示す図である。
【図9】 本実施形態の温度検出装置を電気自動車のバッテリ充放電制御装置に適用した場合の構成例を示す図である。
【符号の説明】
10 温度測定対象物、12,14 配線、16 温度検出コンピュータ、18,20 端子、22 アース、24 電圧検出部、26 ゾーン判定部、28
履歴記憶部、30 断線判定部。
Claims (8)
- 温度に応じて抵抗値が変化する温度センサの断線の発生を検出する温度センサの異常検出方法において、
温度センサの抵抗値が上昇して所定の断線検出基準抵抗を越える前の抵抗上昇履歴を記憶する履歴記憶工程と、
温度センサの抵抗値が前記断線検出基準抵抗を越えたか否かを判定する抵抗値判定工程と、
前記抵抗値判定工程において温度センサの抵抗値が前記断線検出基準抵抗を越えたと判定された場合であって、前記抵抗上昇履歴に基づいて、温度センサの抵抗値が所定変化幅より大きな変化幅で瞬間的に急変化して前記断線検出基準抵抗を越えた場合には、断線が発生したと判定する断線判定工程と、
を含むことを特徴とする温度センサの異常検出方法。 - 請求項1に記載の方法において、
前記断線検出基準抵抗の低抵抗側に前記所定変化幅に対応する範囲をもつ抵抗上昇ゾーンが設定されており、
前記断線判定工程は、抵抗値が前記抵抗上昇ゾーンを実質的に飛び越えるように変化した場合に断線が発生したと判定することを特徴とする温度センサの異常検出方法。 - 請求項2に記載の方法において、
温度センサの抵抗値を電圧値に変換する抵抗電圧変換工程を含み、この抵抗値に対応する電圧値と、前記抵抗上昇ゾーンに対応する電圧上昇ゾーンとに基づいて、断線判定を行うことを特徴とする温度センサの異常検出方法。 - 温度に応じて抵抗値が変化する温度センサと、この温度センサの抵抗値を電圧値に変換する抵抗電圧変換手段とを有し、この電圧値に基づいて温度を検出する温度検出装置において、
電圧値が上昇し、所定の断線検出基準電圧を上端にもつ所定電圧範囲の電圧上昇ゾーンを横切ったときの電圧上昇履歴を記憶する履歴記憶手段と、
この電圧上昇履歴に基づいて、温度センサに断線が発生したか否かを判定する断線判定手段と、
を含み、前記断線判定手段は、電圧上昇過程で電圧値が前記電圧上昇ゾーンに実質的に属さなかった場合に断線が発生したと判定することを特徴とする温度検出装置。 - 請求項4に記載の装置において、
前記断線判定手段は、所定基準時間より長い時間をかけて電圧値が前記電圧上昇ゾーンを横切った場合には断線が発生していないと判定し、前記所定基準時間より短い時間で横切った場合には断線が発生していると判定することを特徴とする温度検出装置。 - 請求項5に記載の装置において、
温度センサの抵抗値に対応する電圧値は、所定の時間間隔で順次取得され、
電圧値が前記電圧上昇ゾーンを前記所定基準時間より短い時間で通過したか否かは、前記電圧上昇ゾーンに属する中間電圧値が検出された回数に基づいて判定されることを特徴とする温度検出装置。 - 請求項4〜6のいずれかに記載の装置において、
前記上昇ゾーンの下端の電圧が、温度に対する抵抗値の勾配が急に大きくなるときの電圧値またはその近傍に設定されていることを特徴とする温度検出装置。 - センサ温度が所定の作動温度を越えると抵抗値が著しく大きくなる特性をもつ温度センサと、この温度センサの抵抗値を電圧値に変換する抵抗電圧変換手段とを有し、この電圧値に基づいてセンサ温度が前記作動温度より大きいか否かを検出する温度検出装置において、
温度センサの断線発生の可能性のある所定の断線検出基準電圧および前記作動温度に対応する所定の作動検出基準電圧に基づいて、順次得られる電圧値を分類する分類手段と、
分類結果を電圧履歴として記憶する履歴記憶手段と、
前記断線検出基準電圧を越える電圧値が検出された場合に、前記電圧履歴に基づいて、温度センサの断線が発生したか否かを判定する断線判定手段と、
を含み、前記断線判定手段は、前記断線検出基準電圧を越える電圧値の検出前に、前記作動検出基準電圧と前記断線検出基準電圧の間の中間電圧値の検出履歴が無い場合に断線が発生したと判定することを特徴とする温度検出装置。
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