JP3864025B2 - 内視鏡システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、脳神経外科、耳鼻咽喉科、整形・形成外科、あるいは眼科などにおいて、微小な患部を手術する際に用いられる手術用顕微鏡と内視鏡とから構成される内視鏡システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
微小な患部を手術することにより治療する医療分野、例えば、脳神経外科、あるいは眼科などにおいては、手術用顕微鏡を用いて患部を拡大観察しつつ繊細な手術を行なう。そのような医療分野において用いられる医療用観察装置として、例えば、特開平8−140991号公報に開示されているような医療用観察装置が提案されている。
【0003】
この医療用観察装置は、手術用顕微鏡による患部の観察下において、エンドスコープを併用するものである。エンドスコープには、硬性の挿入部を有する内視鏡が用いられている。この内視鏡を用いて、手術用顕微鏡とは異なる光軸から患部を観察することにより、術部における手術用顕微鏡の死角を観察する。
【0004】
内視鏡は、手術に際して、例えば、術者の手の届く範囲に配置された台車上の滅菌トレーなどに載置される。術者が内視鏡を必要とする際に、術者自身が手を伸ばすことにより、内視鏡を手に取って使用する。この場合、術者の近傍に台車などが配置されると、術者の作業空間を狭めてしまい、手術の妨げとなるおそれがある。
【0005】
あるいは、内視鏡は、手術に際して、例えば、術者の手の届かない離れた位置に置かれた滅菌トレーなどに載置される。術者が内視鏡を必要とする際に、内視鏡は、助手などが手に取った後、術者に手渡される。術者は助手などから内視鏡を受け取った後、使用する。この場合、内視鏡を用いて患部を見る必要が生じた際に、術者が内視鏡を迅速に用いることが難しい。このため、手術が中断され易く、円滑な手術の進行の妨げになるおそれがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述したような手術の妨げが起こらないようにするために、手術用顕微鏡の筐体に内視鏡を保持する構成が考えられる。手術用顕微鏡の筐体に内視鏡を着脱自在に把持できる保持部を設け、この保持部に内視鏡を把持させる。術中に内視鏡を使用する場合には、術者自身が自分の手によって内視鏡を保持部から取り外して使用する。あるいは、術中に内視鏡を使用した後、内視鏡が不要になった際には、術者自身が自分の手によって内視鏡を保持部に取り付ける。
【0007】
このような場合、手術用顕微鏡の筐体の予め定められた位置に、決められた姿勢で内視鏡を取り付けるような構造の保持部では、内視鏡を保持部に取り付ける際に、内視鏡の位置および姿勢などを、保持部の位置および姿勢に正確に合わせる必要がある。このため、術中に術者が使用している内視鏡が不必要となった際に、術者は手術を一時中断して、内視鏡を保持部に慎重に取り付ける作業を強いられるおそれがある。
【0008】
また、一般には、手術用顕微鏡の筐体は、術中においては滅菌ドレープを被せられた状態で使用される。このため、手術用顕微鏡の筐体に設けられた保持部は、滅菌ドレープの内側もしくは外側のうちの少なくともいずれか一方に配置されることになる。
【0009】
保持部を滅菌ドレープの内側に配置する場合には、保持部は内視鏡をドレープ越しに保持することになる。このため、内視鏡を保持部に取り付ける際に、保持部と内視鏡との間に滅菌ドレープが挟み込まれる。よって、内視鏡の保持部への取り付けが不確実になるおそれがある。また、保持部を滅菌ドレープの外側に配置する場合には、滅菌ドレープの一部を開口して、この開口を通して保持部を滅菌ドレープの外側に突出させることが考えられる。この場合は、ドレープの開口により、滅菌領域と不潔領域との境界部分が増え、その境界部分を確実にシールすることが必要となる。
【0010】
よって、本発明が解決しようとする課題は、術部付近の衛生状態を損うことなく、手術中に術者が自分の手によって、内視鏡を手術用顕微鏡に容易かつ確実に保持させることができる内視鏡システムを得ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明に係る内視鏡システムは、手術用顕微鏡と、この手術用顕微鏡下で使用する内視鏡とを備えた内視鏡システムにおいて、前記内視鏡の挿入部は非磁性体、前記内視鏡の把持部は高磁性体によりそれぞれ形成し、前記手術用顕微鏡に磁力により前記内視鏡の把持部を吸着保持する保持部を設けたことを特徴とするものである。
請求項2の発明は、前記保持部は、前記手術用顕微鏡の筐体の壁面に複数列の溝部が形成され、隣接する前記溝部同士によって挟まれている前記壁面の平面部の内側に磁石が埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システムである。
請求項3の発明は、前記内視鏡の把持部は、前記保持部の平面部に接合される平面が形成されている突起を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システムである。
請求項4の発明は、前記内視鏡は、前記把持部に接続されているケーブルが樹脂製チューブと、高磁性体により形成された管体とを有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システムである。
請求項5の発明は、前記内視鏡は、前記ケーブルが高磁性体粒子が介在する樹脂製チューブを有することを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システムである。
【0012】
この内視鏡システムによれば、磁力が作用する範囲内であれば、手術用顕微鏡側の内視鏡を保持する部位が、特定の位置に限定されない。また、手術用顕微鏡に内視鏡を保持させる際の内視鏡の姿勢も、特定の姿勢に限定されない。さらに、手術用顕微鏡の筐体に、磁力を打ち消さないような材料で形成した滅菌ドレープなどの衛生備品を取り付けた場合においても、その衛生備品を介して、内視鏡を手術用顕微鏡の筐体に保持させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡システム1を、図1〜図3に基づいて説明する。
【0014】
内視鏡システム1は、図1(a),(b)に示すように、手術用顕微鏡2および内視鏡3などから構成されている。
【0015】
手術用顕微鏡2は、筐体4、接眼部5、対物部6、筐体4を操作するための各種スイッチが設けられたグリップ7、およびコネクタ受け部8などを具備している。このコネクタ受け部8には、後述する内視鏡3の接続コネクタ12が接続される。
【0016】
内視鏡3は、硬性挿入部9、把持部10、この把持部10の後端から延設された軟質なケーブル11、およびこのケーブル11の把持部10側とは反対の端部に設けられた接続コネクタ12などから構成されている。この接続コネクタ12は、前述した手術用顕微鏡2のコネクタ受け部8に接続される。
【0017】
内視鏡3の把持部10は、鉄またはフェライト系、あるいはマルテンサイト系ステンレス等の高磁性体により形成されていることが好ましい。また、内視鏡3の硬性挿入部9は、非磁性体で形成されていることが好ましい。
【0018】
手術用顕微鏡2の筐体3の一方の側壁13には、図1(a)および図2(a),(b)に示すように、その略全面にわたって溝部14が複数列形成されている。各溝部14は、それらの長手方向が筐体3の高さ方向に沿うように、かつ、筐体3の奥行き方向に沿って、互いに等間隔に離間されて複数列配置されている。また、各溝部14は、それらの平面視が長円形状に、かつ、それらの断面視が半円形状に形成されている。
【0019】
各溝部14は、本実施形態においては、その幅aが15mm〜30mmに、かつ、その深さbが5mm〜30mmにそれぞれ形成されている。それとともに、隣接する溝部14同士によって挟まれている側壁13の平面部15の幅cは、本実施形態においては、10mm〜20mmに形成されている。なお、筐体3のうち、少なくとも側壁13は、本実施形態においては、鉄板あるいは樹脂板で構成されていることが好ましい。
【0020】
各平面部15の内側には、直方体形状に形成されている永久磁石16が、その長手方向が平面部15の長手方向に沿うように、それぞれ1個ずつ埋設されている。
【0021】
なお、側壁13の構成は、前述した方法以外にも、以下のような構成としても構わない。例えば、筐体4の側壁13に溝部14を設けずに、側壁13の全面が平面部15となるように形成する。この全面が平面部15となるように形成された側壁13の外側面に直接、直方体形状に形成されている永久磁石16を前述と同様に等間隔に複数列配置してもよい。
【0022】
さらには、前述したように、全面が平面部15となるように形成された側壁13に永久磁石16を複数個設ける。それとともに、内視鏡3の把持部10の両端付近に、図3に示すように、一部に平面が形成されている突起17を片側、あるいは両側に2個ずつ設けてもよい。この場合、永久磁石16は、把持部10の位置に拘わらず、2個あるいは4個の突起17と互いに当接し合うように十分広い面積を有するものとする。
【0023】
前述した構成からなる本実施形態の内視鏡システム1によれば、内視鏡3は、筐体4に内設された永久磁石16の磁力によって、側壁13の略全面わたる任意の位置に任意の姿勢で吸着される。
【0024】
また、内視鏡3が側壁13に吸着された状態では、側壁13に設けられた溝部14、あるいは把持部10に設けられた突起17により、把持部10と側壁13との間に空間が設けられた状態となっている。これにより、内視鏡3を筐体4から容易に取り外すことができる。
【0025】
さらに、硬性挿入部9が非磁性体で形成されていることにより、硬性挿入部9が筐体4側に引き寄せられるおそれがない。よって、硬性挿入部9が筐体4側に不意に引き寄せられて側壁13に当たるなどして、その先端部などが破損したりするおそれが殆どない。
【0026】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る内視鏡システムを、図4に基づいて説明する。
【0027】
この第2実施形態の内視鏡システムは、内視鏡21の把持部22の構成が、前述の第1実施形態の内視鏡3の把持部10の構成と異なっている。よって、その異なっている部分について説明し、その他の説明は省略する。また、図面についても、図4において、前述の第1実施形態と同一部分には同一符号を付してある。
【0028】
内視鏡21の把持部22は、図4に示すように、本実施形態においては樹脂あるいは金属製のカバー23で覆われている。この把持部22の内部には、中空形状に形成されている把持部用永久磁石24が設置されている。
【0029】
図示しない手術用顕微鏡の筐体の側壁を含む外面は、高磁性体で形成されていることが好ましい。あるいは、第1実施形態と同様に、筐体の側壁に磁石を設けてもよい。この場合、把持部22に内蔵した把持部用永久磁石24と、側壁に設けた磁石とが、互いに引力を及ぼし合うように、側壁に設ける磁石の極の向きを揃える。その他の構成などは第1実施形態と同様である。
【0030】
この第2実施形態の内視鏡システムは、以上説明した点以外は、すべて第1実施形態の内視鏡システム1と同じであるので、この第2実施形態の内視鏡システムを用いることにより、本発明の課題を解決できるのは勿論であるが、前述した構成の内視鏡21を備えた第2実施形態は、以下の点で優れている。
【0031】
内視鏡21の把持部22に把持部用永久磁石24を内蔵したので、手術用顕微鏡の筐体を高磁性体により形成することにより、筐体の側壁に限らず、手術用顕微鏡の様々な箇所に内視鏡を吸着させて保持させることができる。これにより、内視鏡21を保持させる場所の制約が少なくなり、より広い範囲に内視鏡21を保持させることができる。よって、手術作業領域を狭めるなど、手術の妨げの要因となるおそれが低くなる。
【0032】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る内視鏡システムを、図5に基づいて説明する。
【0033】
この第3実施形態の内視鏡システムは、内視鏡31の把持部32の構成が、前述の第1実施形態の内視鏡3の把持部10の構成と異なっている。よって、その異なっている部分について説明し、その他の説明は省略する。また、図面についても、図5において、前述の第1実施形態と同一部分には同一符号を付してある。
【0034】
内視鏡31の把持部32は、図5に示すように、本実施形態においては樹脂あるいは金属製のカバー33で覆われている。この把持部32の内部には、電磁石34が設置されている。
【0035】
また、把持部32のケーブル側端部の外側面には、電磁石34の通電状態のオンおよびオフを切り替えるスイッチ35が設けられている。このスイッチ35は、図示しない手術用顕微鏡に設けても構わない。また、図示しない電磁石34の電源は、手術用顕微鏡本体の電源とは別系統とされることが好ましい。
【0036】
スイッチ35を操作して、電磁石34の通電状態をオンとすることにより、把持部32を手術用顕微鏡の筐体の側壁に接触させた際に、電磁石34は、把持部32が自分自身の重みで筐体の側壁からずれ落ちたりしない程度の強力な磁力を発生することができる。また、スイッチ35を操作して、電磁石34の通電状態をオフとすることにより、電磁石34の磁力を消すことができる。その他の構成などは第1実施形態と同様である。
【0037】
また、前述した構成は、手術用顕微鏡の筐体の側壁内に電磁石を設けるとともに、把持部32を第1実施形態と同様に高磁性体で形成する構成としてもよい。さらに、把持部32、もしくは手術用顕微鏡に、電磁石34の磁力の強弱を調節するコントローラなどを設けてもよい。
【0038】
この第3実施形態の内視鏡システムは、以上説明した点以外は、すべて第1実施形態の内視鏡システム1と同じであるので、この第3実施形態の内視鏡システムを用いることにより、本発明の課題を解決できるのは勿論であるが、前述した構成の内視鏡31を備えた第3実施形態は、以下の点で優れている。
【0039】
スイッチ35を操作して、電磁石34の通電状態をオンにすることにより、電磁石34に磁力を発生させる。これにより、内視鏡31の把持部32を筐体の側壁に吸着させて保持することができる。また、スイッチ35を操作して、電磁石34の通電状態をオフにすることにより、電磁石34の磁力を消す。これにより、内視鏡31の把持部32を筐体の側壁から容易に取り外すことができる。
【0040】
また、電磁石34の電源を、手術用顕微鏡本体の電源とは別体とすることで、例えば、電磁石34の通電状態のオンおよびオフの切り替えにともなって手術用顕微鏡本体に供給される電圧が上下して、その作動状態が不安定になるなどのおそれがない。また、電磁石34の電源の電圧を単独で上下させることができるので、電磁石34が発生する磁力の強さを変化させることができる。さらには、電磁石34の通電状態をオンにした場合の、電磁石34が発生する電磁波の強さを変化させることができる。これにより、手術用顕微鏡をはじめとする各種の医療機器、および手術を施す患者に対して、電磁波の影響をほとんどなくすことができる。
【0041】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る内視鏡システムを、図6に基づいて説明する。
【0042】
この第4実施形態の内視鏡システムは、内視鏡41が有するケーブル42の構成が、前述の第1実施形態の内視鏡3のケーブル11の構成と異なっている。よって、その異なっている部分について説明し、その他の説明は省略する。
【0043】
内視鏡41のケーブル42は、図6に示すように、本実施形態においては、高磁性体金属で螺旋形状に形成されている螺旋管43に、薄肉の樹脂によって中空形状に形成されている樹脂製チューブ44を被覆することで構成されている。その他の構成などは第1実施形態と同様である。
【0044】
また、螺旋管43は、高磁性体金属で形成されていれば、網目形状に形成された図示しない網状管でもよい。さらに、螺旋管43と網状管とを併用しても構わない。
【0045】
この第4実施形態の内視鏡システムは、以上説明した点以外は、すべて第1実施形態の内視鏡システム1と同じであるので、この第4実施形態の内視鏡システムを用いることにより、本発明の課題を解決できるのは勿論であるが、前述した構成の内視鏡41を備えた第4実施形態は、以下の点で優れている。
【0046】
内視鏡41のケーブル42内に、高磁性体金属からなる螺旋管43が配設されている。これにより、図示しない手術用顕微鏡の筐体の側壁に、図示しない内視鏡41の把持部のみならず、ケーブル42も吸着されて保持される。よって、手術中に内視鏡41を使用しない場合でも、筐体に保持させた内視鏡41のケーブル42が術部周辺に垂れ下るおそれが殆どない。すなわち、ケーブル42が手術の妨げになるおそれが殆どない。
【0047】
次に、本発明の第5の実施の形態に係る内視鏡システムを、図7に基づいて説明する。
【0048】
この第5実施形態の内視鏡システムは、内視鏡51が有するケーブル52の構成が、前述の第1実施形態の内視鏡3のケーブル11の構成と異なっている。よって、その異なっている部分について説明し、その他の説明は省略する。
【0049】
内視鏡51のケーブル52は、図7に示すように、本実施形態においては、フェライト磁石、あるいはその他の高磁性体金属からなる高磁性体粒子53が多量に介在する樹脂によって中空形状に形成されている樹脂製チューブ54により構成されている。その他の構成などは第1実施形態と同様である。
【0050】
なお、高磁性体粒子53にフェライト磁石の粒子を用いた場合には、第2実施形態と同様に、図示しない手術用顕微鏡の筐体7に磁石を設けない構成としても構わない。
【0051】
この第5実施形態の内視鏡システムは、以上説明した点以外は、すべて第1実施形態の内視鏡システム1と同じであるので、この第5実施形態の内視鏡システムを用いることにより、本発明の課題を解決できるのは勿論であるが、前述した構成の内視鏡51を備えた第5実施形態は、以下の点で優れている。
【0052】
内視鏡51のケーブル52内に、高磁性体金属からなる高磁性体粒子53が介在されている。これにより、図示しない手術用顕微鏡の筐体の側壁に、図示しない内視鏡51の把持部のみならず、ケーブル52も吸着されて保持される。よって、手術中に内視鏡51を使用しない場合でも、筐体に保持させた内視鏡51のケーブル52が術部周辺に垂れ下るおそれが殆どない。すなわち、ケーブル52が手術の妨げになるおそれが殆どない。
【0053】
なお、以上説明した第1〜第5の実施の形態に係る内視鏡システムは、以下に説明するような変形例を含めた構成としても構わない。
【0054】
第1に、図8に示すように、手術用顕微鏡61が備えている助手用の第2接眼鏡筒部62の長手方向両端部のうち、第2接眼部63とは反対側の端部に、図示しない内視鏡を保持させるための内視鏡保持部64を設けても構わない。
【0055】
第2接眼鏡筒部62を、手術用顕微鏡61に、これが備えている主手術者用の第1接眼鏡筒部65の第1接眼部66と対物部67とを結ぶ軸線(光軸)に対して垂直な方向に、360°回転自在に取り付ける。
【0056】
このような構成によれば、助手に対する内視鏡保持部64の相対的な位置は、180°反対側で一定である。よって、助手の位置に拘わらず、内視鏡が助手の作業の妨げになるおそれが殆どない。
【0057】
第2に、図9(a),(b)に示すように、手術用顕微鏡71に、これが備えている助手用の第2接眼鏡筒部72と、図示しない内視鏡を保持させるための内視鏡保持部73とを回転自在に取り付けても構わない。
【0058】
第2接眼鏡筒部72を、手術用顕微鏡71に、これが備えている主手術者用の第1接眼鏡筒部73の第1接眼部74と対物部75とを結ぶ軸線(光軸)に対して垂直な方向に、360°回転自在に取り付ける。それとともに、内視鏡保持部76を、前述した第2接眼鏡筒部72とは互いに独立に、第1接眼部74と対物部75とを結ぶ軸線(光軸)に対して垂直な方向に回転自在に取り付ける。
【0059】
内視鏡保持部76は、助手が主手術者に対してその左右方向付近に位置する場合には、主手術者の前方に位置しないように、第2接眼鏡筒部72に連動して動く機構とする。また、内視鏡保持部76は、助手が主手術者に対向して、その前方付近に位置する場合には、主手術者の左右どちらか一方付近に位置するような機構とする。
【0060】
このような構成によれば、主手術者に対する助手の位置に拘わらず、内視鏡保持部76が主手術者の前方に位置することがないので、内視鏡が主手術者の作業を妨げるおそれが殆どない。それとともに、主手術者に対する助手の位置に拘わらず、内視鏡保持部76が助手の前方に位置することがないので、内視鏡が助手の作業を妨げるおそれも殆どない。
【0061】
第3に、図10に示すように、内視鏡システム81が備えている内視鏡82のケーブルを、湾曲自在、かつ、その湾曲状態を保持できるフレキシブルパイプ83によって構成しても構わない。
【0062】
このような構成によれば、術中において内視鏡82が不要になった際に、手術用顕微鏡84の視野、あるいは主手術者および助手の手術作業領域の外に、内視鏡82をフレキシブルパイプ83ごと移動させればよい。フレキシブルパイプ83は、手を離した位置においてその湾曲状態を保持して静止するので、ケーブルのように術部付近に垂れ下るおそれがない。よって、内視鏡82が手術の妨げになるおそれが殆どない。
【0063】
また、内視鏡82を保持させるための内視鏡ホルダなども不要となるので、内視鏡システム81の構成を簡単にすることができる。それとともに、内視鏡ホルダが主手術者および助手の手術作業などを妨げるおそれをなくすことができる。なお、内視鏡82の代りに、フレキシブルパイプで構成されたUSプローブを用いた場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0064】
第4に、図11に示すように、内視鏡システム91が備えている内視鏡92を、その挿入部、把持部、およびケーブルの全てをフレキシブルパイプ93で構成しても構わない。
【0065】
このような構成によれば、前述した第3の変形例と同様に、術中に内視鏡92が手術の妨げになるおそれが殆どないとともに、この内視鏡を保持するための内視鏡ホルダなどが手術の妨げになるおそれも殆どない。
【0066】
また、この内視鏡92の挿入部までフレキシブルパイプ93で構成したことにより、挿入部の先端を様々な向きに向けることができる。これにより、内視鏡92の観察範囲の自由度を増すことができる。よって、手術用顕微鏡94の光軸を殆ど妨げることなく、手術用顕微鏡94の光軸とは異なる向きから、術部における手術用顕微鏡94の死角を観察することができる。
【0067】
第5に、図12に示すように、内視鏡システム101が備えている内視鏡102を、手術用顕微鏡103に予め設定した位置および姿勢で着脱自在に取り付ける構成としても構わない。
【0068】
手術用顕微鏡103が備えている筐体104に、内視鏡102の把持部105および硬性挿入部106などの形状に合わせて形成されている内視鏡接続部107を設ける。術者が手術中に使用していた内視鏡102が不要となった際には、術者自身が自分の手によって、内視鏡102をこの内視鏡接続部107に内視鏡102を予め設定した位置および姿勢で保持させる。あるいは、術者が手術中に内視鏡102を必要とする際には、術者自身が自分の手によって、内視鏡102をこの内視鏡接続部107から取り外す。
【0069】
このような構成によれば、例えば、術者が内視鏡102を内視鏡接続部107に保持させた場合に、内視鏡102の視野の向きを両手を用いて調整する必要がなくなる。すなわち、内視鏡102は、内視鏡接続部107に対して、予め定められている向きで保持されるので、その保持状態における内視鏡102の硬性挿入部106の視野の向きは一定である。これにより、内視鏡102が、例えば、その視野の向きが硬性挿入部106の長手方向に対して斜状に設定されている斜視鏡である場合においても、手術中に術者がそのような斜視鏡型内視鏡102を使用する際に、手術用顕微鏡103の接眼部108から一々目を離して斜視鏡型内視鏡102の視野の向きを確めることなく、かつ、斜視鏡型内視鏡102の使用頻度に拘わらず、斜視鏡型内視鏡102を迅速に使用することができる。
【0070】
第6に、図13に示すように、内視鏡システム111が備えている手術用顕微鏡112の筐体113に、内視鏡114を載置するトレー115を設け、このトレー115上に内視鏡114を載置する構成としても構わない。
【0071】
このような構成によれば、術者が手術中に使用していた内視鏡102が不要となった際には、術者自身が自分の手によって、内視鏡114をこのトレー115上に載置する。これにより、内視鏡114は、術者が手術中に再び内視鏡114を使用する際に、手術用顕微鏡112の接眼部116から一々目を離すことなく、術者自身が自分の手を伸ばすことによって迅速に使用できるように、トレー115上に保持される。すなわち、内視鏡114の取り回しが極めて簡単となる。よって、手術中における内視鏡114の使用あるいは不使用の繰り返しにともなう手術の進行を妨げるおそれが殆どなくなる。
【0072】
また、手術用顕微鏡112を、例えば、滅菌ドレープ117などの衛生備品で覆った場合においても、滅菌ドレープ117をトレー115の形状に沿って装着させることにより、内視鏡114の取り扱い易さと、手術作業領域の衛生状態の保持とを両立することができる。
【0073】
第7に、図14(a)および(b)に示すように、前述した第6の変形例に加えて、手術用顕微鏡121を覆っている滅菌ドレープ122のうち、トレー123上に位置する部分に粘着剤124を塗布しても構わない。このような構成によれば、前述した第6の変形例と同様の効果を得ることができるとともに、滅菌ドレープ122を介してトレー123上に載置される図示しない内視鏡が、トレー123上から落ち難くなる。これにより、トレー123が筐体125から張り出す面積の大きさを小さくできる。よって、手術作業領域付近の空間を狭くするおそれが低くなり、内視鏡の取り回しをよくできるとともに、手術をより行ない易くなる。
【0074】
第8に、図15に示すように、前述した第7の変形例に加えて、さらに滅菌ドレープ131の内側とトレー132の上面とを粘着剤133によって固定しても構わない。このような構成によれば、前述した第7の変形例と同様の効果を得ることができるとともに、滅菌ドレープ131がトレー132に対してずれ難くなるため、滅菌ドレープ131を介してトレー132上に載置される図示しない内視鏡が、トレー132上からより落ち難くなる。よって、図示しない内視鏡システムの使い勝手をさらによくすることができる。
【0075】
また、図示は省略するが、滅菌ドレープのうち、トレー上に位置する部分にマジックテープを貼りつけるとともに、内視鏡の把持部にもマジックテープを貼りつけても構わない。あるいは、内視鏡を前述した第1〜第6実施形態のような構成とするとともに、トレーの内部に磁石を内蔵しても構わない。これらのような構成としても、前述した第7実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
なお、本発明に係る内視鏡システムは、前記第1〜第5の実施の形態、および各変形例には制約されない。前記各実施形態および各変形例の説明によれば、例えば、以下に示す各付記のような構成、あるいはそれら各付記同士の任意の組み合わせとしてもよい。
【0077】
<付記>
付記1. 手術用顕微鏡と、この手術用顕微鏡下で使用する内視鏡とを備えた内視鏡システムにおいて、前記手術用顕微鏡に対し前記内視鏡が磁力により保持されることを特徴とする内視鏡システム。
【0078】
付記2. 前記顕微鏡と、前記内視鏡との、少なくともいずれか一方に磁石を設け、他方に高磁性体よりなる部材を設けたことを特徴とする付記1記載の内視鏡システム。
【0079】
付記3. 前記内視鏡が磁力により保持される部分は、前記内視鏡の保持部を含むことを特徴とする付記1記載の内視鏡システム。
【0080】
付記4. 前記内視鏡が磁力により保持される部分は、前記内視鏡のケーブルを含むことを特徴とする付記1記載の内視鏡システム。
【0081】
付記5. 前記磁石は永久磁石であることを特徴とする付記2記載のに内視鏡。
【0082】
付記6. 前記磁石は電磁石であることを特徴とする付記2記載のに内視鏡。
【0083】
【発明の効果】
本発明に係る内視鏡システムによれば、磁力により内視鏡を手術用顕微鏡に保持させることができる。これにより、内視鏡を手術用顕微鏡に保持させる際の、内視鏡と内視鏡を保持する保持部との厳密な位置合わせは不要である。また、内視鏡を手術用顕微鏡に保持させる際の、内視鏡の姿勢も特定の姿勢に制約されない。さらに、手術用顕微鏡に取り付ける滅菌ドレープなどの衛生備品が、磁力を打ち消さない材料によって形成されていれば、その効力を失わせることなく、衛生備品を介して内視鏡を手術用顕微鏡に保持させることができる。
【0084】
よって、術部付近の衛生状態を損うことなく、手術中に術者が自分の手によって、内視鏡を手術用顕微鏡に容易かつ確実に保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡システムを示し、(a)は側面図、(b)は正面図。
【図2】図1に示されている内視鏡システムが具備する手術用顕微鏡の筐体の一部を示し、(a)は側面図、(b)は断面図。
【図3】図1に示されている内視鏡システムが具備する内視鏡が有する把持部を示す側面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る内視鏡システムが具備する内視鏡が有する把持部を一部断面にして示す側面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る内視鏡システムが具備する内視鏡が有する把持部を一部断面にして示す側面図。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る内視鏡システムが具備する内視鏡が有するケーブルを示す断面図。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る内視鏡システムが具備する内視鏡が有するケーブルを示す断面図。
【図8】図1および図4〜図7に示されている内視鏡システムの第1の変形例を示す正面図。
【図9】図1および図4〜図7に示されている内視鏡システムの第2の変形例を示し、(a)は正面図、(b)は平面図。
【図10】図1および図4〜図7に示されている内視鏡システムの第3の変形例を示す斜視図。
【図11】図1および図4〜図7に示されている内視鏡システムの第4の変形例の一部を示す斜視図。
【図12】図1および図4〜図7に示されている内視鏡システムの第5の変形例を示す斜視図。
【図13】図1および図4〜図7に示されている内視鏡システムの第6の変形例を示す斜視図。
【図14】図1および図4〜図7に示されている内視鏡システムの第7の変形例の一部を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図。
【図15】図1および図4〜図7に示されている内視鏡システムの第8の変形例の一部を示す正面図。
【符号の説明】
1…内視鏡システム
2…手術用顕微鏡
3,21,31,41,51…内視鏡
Claims (5)
- 手術用顕微鏡と、この手術用顕微鏡下で使用する内視鏡とを備えた内視鏡システムにおいて、
前記内視鏡の挿入部は非磁性体、前記内視鏡の把持部は高磁性体によりそれぞれ形成し、
前記手術用顕微鏡に磁力により前記内視鏡の把持部を吸着保持する保持部を設けたことを特徴とする内視鏡システム。 - 前記保持部は、前記手術用顕微鏡の筐体の壁面に複数列の溝部が形成され、
隣接する前記溝部同士によって挟まれている前記壁面の平面部の内側に磁石が埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。 - 前記内視鏡の把持部は、前記保持部の平面部に接合される平面が形成されている突起を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
- 前記内視鏡は、前記把持部に接続されているケーブルが樹脂製チューブと、高磁性体により形成された管体とを有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
- 前記内視鏡は、前記ケーブルが高磁性体粒子が介在する樹脂製チューブを有することを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
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