液状クリーム、油、接着剤、塗料などの液状の物質(以下「吐出物」という。)を吐出して、基板などに塗布したり、注入したりする装置として、微量な吐出物を吐出する針状の吐出口を有する注入器(シリンジ)のような容器と、その容器に圧縮空気を供給する機構とを備えた吐出装置を提供できる。この吐出装置においては、容器へ送る圧縮空気を制御することで、適量の吐出物を、適切な適用領域へと吐出できるようになるので、液晶パネルの製造過程などにおいて極めて効果的な設備になる。
しかしながら、安定した吐出量を確保できる吐出装置を実現するためには、容器に送られる圧縮空気の量や圧力は、容器内の吐出物の性状や吐出量に応じて調整する必要がある。また、吐出口を開けたときに一時的に容器内の圧力が低下しないようにする必要もある。
容器内を加圧するために用いられる圧縮空気は、コンプレッサーで圧縮されたものが便利であるが、コンプレッサーの出口圧を吐出物の性質や吐出量に適した値に調整することは難しい。特に、吐出量が微量な場合は、それを押し出すために容器に送り込まれる空気の量も微量であり、容器内の圧力調整は非常に難しい。連続的に空気を供給できない場合は、断続的に空気を容器に供給してできるだけ容器の内圧を一定にする制御方法があるが、容器の内圧が変動するので吐出量は一定にならない。特に、微量の吐出量が要求される場合は、容器の内圧の変動は吐出量の変動に影響を及ぼす。
容器内の圧力変動を防止するために実開平3−15678号公報に開示されているようなアキュムレータを用いる方法もある。しかしながら、まず、アキュムレータという容器を追加しないといけないので、構造が複雑になり、製品コストが上昇するという問題がある。さらに、アキュムレータを取り付けた場合、さらに、アキュムレータ内の圧力を吐出物の性質や吐出量に合わせて維持あるいは調整することが要求され、制御はさらに複雑になる。
複数の吐出装置から同じ吐出物を同量だけ吐出するような吐出条件が同一の吐出装置が多くある場合は、個々の吐出装置の容器内の圧力を制御するのではなく、加圧用の空気を貯め、多少の空気の流量では圧力が変化しないようなヘッダーを設けておくことも可能である。しかしながら、そのような特殊な条件でしか使用できない吐出装置は商品価値が高いとは言えない。
また、実開平3−15678号公報に記載の塗着装置では、吐出口を開閉するニードル弁を、接着剤が入った容器を加圧するのとは別のエアーで動かしているが、同じ圧縮空気でバルブの操作と容器の加圧とを行えるようになれば、吐出装置の構成は簡易になり、吐出装置の操作も容易になるはずである。したがって、低コストで使い勝手の良い吐出装置を提供できる。たとえば、バルブの操作と容器を加圧するタイミングがずれて、容器内の圧力が十分でない状態で吐出口が開いたり、吐出口の閉止前に容器内の圧力が下がるなどの要因で均一な吐出量を確保することができないという問題を未然に防止できる。
実開平3−15678号公報に記載のような塗着装置において、吐出バルブ内に、接着剤を加圧用の空気を直に供給することにより、ピストンに連結されたニードル弁を操作することが可能かもしれない。しかしながら、圧縮空気が導入されて吐出バルブ内の圧力が上がるまでニードル弁は動かず、吐出開始のレスポンスが悪い。さらに、ニードル弁が動き出すときの吐出バルブ内の圧力が接着剤を適量吐出するのに適した圧力になるとは限らない。ニードル弁が動き出す圧力と吐出用の圧力とが一致するようにバネなどを調整することは困難であり、現実的ではない。また、ピストンが動くことによる吐出バルブ内の圧力変動を防止する必要があるが、そのために大きなアキュムレータを付けてその内圧を制御したのでは、吐出装置の構成を簡略化したり、制御を簡略化することはできない。
さらに、ニードル弁で吐出口を閉じるためには吐出バルブ内の圧力が低下する必要があるが、接着剤が流れ出て吐出バルブ内の圧力が減るのを待っていたのでは、吐出終了時に液切れが悪く、吐出終了時のレスポンスが悪すぎて微量の吐出量が要求される吐出装置として利用できない。吐出バルブ内の圧力を強制的に逃がすリリーフ弁を付けて吐出バルブ内の圧力を急激に減圧することも可能であるが、結局、制御が複雑になり、ニードル弁の操作用のエアーと接着剤の加圧用のエアーを同一にした意味はない。
そこで、本発明では、簡易な機構で、吐出物を保持する容器内の圧力を所望の圧力に保つことができる吐出装置を提供することを目的としている。そして、吐出物や吐出量といった吐出条件が異なる場合でも、それぞれの吐出装置において、安定した所望の吐出量を容易に得ることができる吐出装置を提供することを本発明の目的としている。
さらに、同じ圧縮空気でバルブの操作と容器の加圧とを行える簡易な機構の吐出装置であって、吐出開始および終了時のレスポンスの速い吐出装置を提供することも本発明の目的の1つである。そして、操作が容易で、操作ミスもなく、低コストで使い勝手の良い吐出装置を提供することも本発明の目的としている。
このため、本発明の吐出装置は、加圧された動作用気体を受け入れて減圧し、その一部を逃がす、いわゆる、逃がし圧力制御により一定の所望の圧力の加圧用気体を作り、その加圧用気体により吐出物を吐出する。すなわち、本発明の吐出装置は、内部に保持した液状の吐出物を吐出口から吐出可能な第1の区画と、加圧された動作用気体を受け入れて減圧し、減圧後の気体の一部を逃がして動作用気体より低圧の加圧用気体として第1の区画へ供給可能な第2の区画とを有する。
逃がし圧力制御では、第1の区画に供給する加圧用気体として必要となる量よりある程度多い量の動作用気体を受け入れ、加圧用気体と動作用気体の供給量の差分を逃がすことにより、加圧用気体の圧力を制御する。したがって、一定の圧力で制御できる流量の幅が広い。また、逃がし圧力制御では、常にある量の動作用気体を逃がす流れがあるので、加圧用気体の圧力制御は連続的となり、流量の変動に対して精度が高く、レスポンスの良い圧力制御が可能になる。
このため、本発明の吐出装置においては、第2の区画からは、微量の所望の圧力の加圧用気体から、動作用気体に近い流量の所望の圧力の加圧用気体までを、第1の区画に供給できる。したがって、微量の吐出量に対して微量の所望の圧力の加圧用気体を供給することにより第1の区画の圧力を適切な値に安定して維持することができる。このため、微量の吐出量が要求される吐出装置においても、オンオフ制御などの圧力変動が生じやすい制御は不要となり、その圧力変動を解消するためのアキュムレータなどの設備も不要となる。
また、通常の吐出時に対して吐出開始時にピストンが動くなどの要因により第1の区画の内容積が大きく変化する場合には、第2の区画から所望の圧力に制御された十分な量の加圧用気体を供給できる。したがって、この点でも、アキュムレータを設けなくても、吐出開始時の第1の区画の圧力変動を抑制することが可能である。
さらに、なんらかの要因により第1の区画から吐出物が吐出されない状態となったとしても、作動用気体の逃がし制御を行っている第2の区画からは過剰な加圧用気体が第1の区画に供給されることはない。したがって、第1の区画の圧力が異常に高くなり、吐出されない条件が解消されたときに大量の吐出物が吐出されるような事態も未然に防止できる。
そして、本発明の吐出装置においては、動作用気体の圧力が同じでも、変動しても、個々の吐出装置の第2の区画により、個々の吐出装置の第1の区画に対して、それぞれの吐出物を所望の量だけ吐出するのに適切な圧力の加圧用気体を供給できる。したがって、本発明の吐出装置により、簡易な機構で、吐出物を保持する第1の区画内の圧力を所望の圧力に保つことができる吐出装置を提供することができる。そして、吐出物や吐出量といった吐出条件が異なる場合でも、それぞれの吐出装置において、安定した所望の吐出量を容易に得ることができる。さらに、本発明の吐出装置は、第2の区画により、動作用気体の圧力変動に対しても加圧用気体の圧力を一定に保つことができるので、動作用気体に外乱がある場合でも、所望の吐出量を安定して得ることができる吐出装置を提供できる。
また、本発明の吐出装置においては、吐出物を保持した容器となる第1の区画と、それに対して加圧用の気体を供給する機能を有する第2の区画とが区画化されているので、これらを容易に分離することができる。したがって、吐出物の入れ替えや、それに伴う第1の区画のメンテナンスは容易である。また、第2の区画の機能が異常になったときもそのメンテナンスは容易である。さらに、異なる吐出物が保持された第1の区画に対して第2の区画を差し替えて利用することも可能となる。
動作用気体から所望の圧力の加圧用気体を逃がし圧力制御により得る機構としては、第2の区画に動作用気体を減圧する機構となる小径の流路と、その減圧後の気体の一部を外部に逃がす圧力調整弁を設けることができる。加圧された動作用気体を受け入れて減圧し、減圧後の気体の一部を逃がして動作用気体より低圧の加圧用気体を作るに当たって、動作用気体を減圧する機構としては減圧弁やラビリンスなど種々のものが考えられる。吐出装置に供給される動作用気体の必要量や圧力の変動はそれほど大きくないので、構造が簡単で場所を取らない小径の流路、例えば、気体流路に設けたオリフィスにより十分に減圧機能を得ることができ、簡単な構成で、信頼性の高い流量制御を目的とする本発明の吐出装置に適している。
また、動作用気体として用いられる空気や不活性ガスなどは、一般に無害のものであり、逃がし圧力制御により逃がす量は極めて微量なので、吐出装置の外部に逃がしても問題は生じない。したがって、圧力調整弁を介して吐出装置の外部に逃がすことにより、吐出装置の構成をシンプルにすることができる。
さらに、設定圧力が可変である圧力調整弁を用いれば、性状や吐出量が異なる各種の吐出物に対して、それぞれに適した圧力になるように加圧用気体の設定を変えることが可能であり、1台の吐出装置で異なる種類の吐出物を異なる条件で吐出できる。
また、第2の区画から第1の区画に加圧用気体を提供することが望ましい。第1の区画からの加圧気体の逆流を防止する機構を設けることにより、加圧用気体を常に第1の区画に供給しなくても第1の区画の圧力を保持できる。すなわち、加圧用気体の供給を一時的に停止しても、吐出操作を再開するときには第1の区画の圧力は十分高く保持されているので、吐出操作を再開すると第1の区画の圧力が上昇するのを待つことなく、即座に、レスポンス良く、吐出物を吐出できる。そして、加圧用気体は逃がし圧力制御されているので、加圧用気体を供給することにより、第1の区画の圧力は即座に所望の圧力に維持され、所望の条件で吐出物を吐出できる。したがって、本発明の吐出装置においては、加圧用気体を供給すればすぐに所望の量だけ吐出物を安定して出力することが可能であり、使い勝手の良い吐出装置を提供できる。
吐出する流体の粘度が比較的高い場合は、第1の区画の圧力を保持しておくことが望ましいが、吐出する流体の粘度が低い場合は、第1の区画に残圧が残らないようにすることにより吐出口の液切れを良くすることができる。したがって、吐出する流体の性質によっては、逆流防止機構を設けないことが望ましく、それにより、第1の区画の圧力を動作気体のオンオフに追従させることができる。
さらに、高粘度の吐出物に対して第1の区画の圧力を低下させずに加圧用気体の供給を停止できるということは、動作用気体を吐出口の開閉を行う制御用の気体としても利用できることを意味する。また、低粘度の吐出物に対しても動作用気体により吐出口の開閉を行うことは液切れを良くするために好ましい。そして、第2の区画では、動作用気体を減圧して加圧用気体を生成しているので、それらの差圧を駆動力として利用することができる。したがって、本発明の吐出装置として、第1の区画が、吐出口を開閉可能な出口弁と、その出口弁を第2の区画から制御可能な制御棒とを備えており、第2の区画が、動作用気体と加圧用気体との差圧によりその制御棒を介して出口弁を操作して吐出口を開にする制御機構を備えている吐出装置を提供できる。この吐出装置においては、動作用気体を第2の区画に供給することにより制御棒を介して第1の区画の出口である吐出口を出口弁により機械的に開くことができる。そして、所望の圧力に減圧された加圧用気体が第1の区画に供給される。第1の区画の圧力が逆流防止機構により維持されている場合は、高粘度の流体であってもきわめて短期間にレスポンス良く、所望の条件で吐出物を吐出できる。また、動作用気体の供給を停止することにより、制御棒を介して吐出口を出口弁により塞ぐことができ、第1の区画の圧力低下を待つ必要はなく、きわめてレスポンス良く吐出物の吐出を停止できる。低粘度の吐出物の場合は、第1の区画の内圧をそれほど上げなくても吐出できるので、むしろ第2の区画に残圧が残るような状態は液切れを良くする点では好ましくないことが多く、逆流防止機構は不要である。いずれの場合も、出口弁を操作することにより、さらに、吐出操作終了時に液切れが良く、液ダレもない使い勝手の良い吐出装置を提供できる。
この吐出装置においては、第1の区画を加圧する気体を生成する動作用気体をオンオフすることにより吐出口を開閉する出口弁を動かすため、加圧用気体と出口弁の制御用気体が同一であり、簡易な機構でレスポンスの良い吐出装置を提供できる。また、この吐出装置は、動作用気体の圧力そのものを使うのではなく、第1の区画を加圧するための気体を生成する際の差圧を利用して出口弁を操作する。この差圧は、動作用気体の圧力があっても、流量がなくなれば即座に低下する。また、差圧は流れがあれば即座に発生する。したがって、動作用気体の流れをオンオフするだけで、レスポンス良く出口弁の動きを制御できる。すなわち、本発明においては、内部に保持した液状の吐出物を吐出口から吐出可能な第1の区画であって、その吐出口を開閉可能な出口弁を備えた第1の区画と、その出口弁に繋がった制御棒を介して出口弁を制御可能な第2の区画であって、加圧された動作用気体が流れたときの差圧により制御棒を介して出口弁を操作して吐出口を開にする制御装置を備えた第2の区画を有する吐出装置を提供している。この差圧を利用して出口弁を操作する吐出装置は、出口弁のレスポンスが良く、吐出/停止を精度良く制御することができる。
また、第1の区画と第2の区画との間を開閉可能な仕切り機構を設け、この仕切り機構を制御棒に連動して動かし、第1の区画に第2の区画から圧縮空気を供給するときに開くようにすることができる。制御棒は、出口弁を開ける条件が整ったときに開くので、それに連動して仕切り機構を開けることにより、第1の区画に対して適切な圧力の空気を供給し、また、停止できる。また、第1の区画の姿勢によって吐出物が第2の区画に逆流するような状況になっても、加圧されていない状態では仕切り機構により第1の区画を分離できるので第2の区画が吐出物により汚染されるのを防止できる。 出口弁を操作する差圧の大きさは、差圧を得るための減圧機構を流れる流量に対応して抵抗の大きさを選ぶことにより自由に設定できる。出口弁の操作に必要なある程度の大きさの差圧を得るためには、ある程度の流れが必要になるが、本発明の吐出装置においては、第2の区画に、減圧後の気体の一部を外部に逃がす圧力調整弁と、制御機構を駆動した後の減圧された加圧用気体を第1の区画へ供給する供給口とを設けることにより、第1の区画を加圧する加圧用気体を逃がし制御することにより圧力制御することができる。したがって、ある程度の気体が圧力調整弁から放出されるので、出口弁を開にする間は出口弁を操作するのに必要な差圧を得るための動作用気体の流量を確実に維持できる。このため、安定して出口弁を操作できる。
第2の区画に設ける制御機構としては、出口弁を操作して吐出口を開にする制御機構が、動作用気体を受けて動くピストンと、動作用気体によりそのピストンが押し下げられたときに、ピストンにより押し上げられて制御棒を介して出口弁を開方向に動かすリンクとを備えており、ピストンに動作用気体が通過可能の小径の流路が設けられた機構を採用できる。この制御機構によれば、ピストンが押し下げられる方向に第1の区画を接続することが可能であり、動作用気体はピストンの小径の流路を通過することにより減圧され、差圧によりピストンが押し下げられて出口弁が開き、減圧された加圧用気体は第1の区画に供給されて吐出物が吐出口から出力される。したがって、動作用気体から加圧用気体が生成されて第1の区画に供給される経路をほぼ直線的に配置することができ、第2の区画に配置される制御機構をコンパクトに纏めることができる。
液を吐出する先の精度を上げたり、液滴のサイズを小さくするなどの目的で、第1の区画を形成する容器には、吐出口の先端を構成する吐出針を着脱可能に接続できるようになっていることが望ましい。流動性の高い吐出物、たとえば、機械油、アルコールなどを使用する場合は、出口弁は、吐出針に内接して閉鎖することが望ましい。液切れが良くなるからである。一方、吐出物が、溶剤などの流動性の若干低いもの、条件により固化しやすいもの、あるいは若干液切れが悪くても良いものの場合は、出口弁は吐出口の容器の側に内接して閉鎖することが望ましい。液を止めた状態で吐出針を交換することが可能となるので、吐出針の種類の交換や、目詰まりしたときの交換が極めて容易である。また、吐出針の内部に制御棒を通さなくて良いので、吐出針内における目詰まりを防止でき、針先から液が出やすくなる。
以上に説明したように、本発明の吐出装置は、逃がし圧力制御により吐出物を押し出す加圧用気体の圧力を一定に保つことができるので吐出量が常に安定し、吐出開始時からその容器内の圧力を十分高く保持することができ、吐出終了時には液切れが良くて液ダレが少ない。
また、逃がし圧力制御で発生する差圧を用いて出口弁の開閉を行わせることにより、加圧用の気体を用いて出口弁を操作できる簡易で機構の吐出装置を提供できる。したがって、本発明により、作業員は動作用気体の導入の開始および停止操作のみ行えば吐出物の吐出/停止を制御できる、操作が容易で取り扱いやすい吐出装置を提供できる。
以下に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1に、本発明の吐出装置の一実施例の構成を断面図により示してある。この吐出装置10は全体がペンシル状であり、半透明なガラス製またはプラスチック製の容器(シリンジ)であって、内部に吐出物3を保持する吐出用のシリンジ11と、シリンジ11の上端11aに接続された金属製のシリンダ21とを備えている。本発明の吐出装置10の第1の区画1を形成するシリンジ11の下端11bは吐出口12となり、吐出口12の先端12aを形成する吐出針13が装着されている。吐出口12には出口弁37が設けられており、第2の区画2から延びた制御棒39により出口弁37が上下に動き、吐出針13の内面に接して吐出口12を開閉できるようになっている。
本発明の吐出装置10の第2の区画2を形成するシリンダ21は、上方から外部の空気源装置から供給される動作用気体(空気)6を受け入れ、動作用気体6を減圧して加圧用気体(空気)4として第1の区画1を形成するシリンジ11に供給する機構を収納している。まず、シリンダ21の上端21aはシリンダキャップ23により塞がれており、シリンダキャップ23には動作用気体6を受け入れる導入孔22が形成されている。シリンダ21の下端21bはシリンジ11の上端11aに接続される出口端21bとなっており、シリンジ11の上端11aがO−リングなどのパッキン14を挟み、外側からネジ式のフィッティング15により機械的に繋がっている。したがって、本例の吐出装置10においては、第1の区画1であるシリンジ11と第2の区画2であるシリンダ21とは容易に着脱することが可能であり、シリンジ11に油や接着剤などの液状の吐出物3を入れた後に、フィッティング15を用いてシリンダ21を取付けることにより、シリンダ21の内部で減圧された加圧用気体4をシリンジ11の内部に供給できる状態となる。その後、動作用気体6を供給することにより、シリンジ11に加圧用気体4が供給されることにより、シリンジ11の吐出口12から吐出物3が出力される。
図2に、シリンダ21の内部の構成を拡大して示してある。シリンダ21の内部には、上下に摺動するピストン25と、このピストンを上方に押す弾性部材であるコイルバネ26とが収納されている。ピストン25の周囲にはゴム製のパッキン27がシリンダ21の内面と接触するように取付けられており、シリンダ21の内部はピストン25により上側と下側の二つの領域28および29に仕切られる。ピストン25には小径の流路31が開けられており、この流路31により上側の領域28と下側の領域29とが結ばれている。したがって、導入孔22から導入された動作用空気6は、シリンダ21の上側の領域28から小径流路31を通って下側の領域29に流れることにより減圧される。このため、小径の流路31は動作用空気6の減圧機構として機能し、小径流路31に空気が流れるとピストン25の上側領域28と下側領域29との間に圧力差が生じ、その差圧よりピストン25が下方に移動する。この小径流路31は、非常に簡易な機構ではあるが、吐出装置10に供給される動作用空気6の圧力や、流れる空気量はそれほど大きく変動しないので、減圧機構として十分に機能する。
ピストン25の下側の領域29は、通気孔32を介してシリンダ21の下端の出口端21bに繋がっており、シリンジ11に対して動作用気体6を減圧した加圧用気体4を供給できるようになっている。通気孔32には、吐出装置10の外部に通じる排気口32aが設けられており、そこにピストン25の下側の領域29の圧力を一定にする圧力調整弁33が設けられている。この圧力調整弁33は、スチール球33aをテーパバネ33bで排気口32aに押し付ける自働式圧力調整弁である。この圧力調整弁33は、調整ネジ33cを回してテーパバネ33bにあらかじめ掛ける力を加減することにより、設定圧力を変えることができる。
したがって、吐出装置10に導入孔22から導入された動作用空気6は、ピストン25に設けられた小径の流路31を流れて減圧され、その一部はこの圧力調整弁33を通って吐出装置10の外部に排気5として逃がされることにより、ピストン25の下側の領域29の圧力は常にその設定圧力になるように調整される。すなわち、シリンダ21においては、逃がし圧力制御が行われ、その結果として、シリンダ21の下端21bからシリンジ11に対し、吐出物3の加圧用として圧力調整弁33の設定圧力に保たれた加圧用気体4が供給され、吐出装置10から所望の量の吐出物3が安定して出力される。
加圧用気体4の圧力は、圧力調整弁33の設定圧力を変えることにより調整することが可能であり、吐出物3の性状や吐出量に見合った圧力にセットできる。したがって、本例のシリンダ21に内蔵された圧力調整機構は、簡易なものであるが、逃がし制御を行うことにより、広い流量範囲で圧力の安定した加圧用気体4を供給することが可能であり、さらに、圧力調整弁33により加圧気体4の設定圧力が可変になっているので、吐出物の性状や吐出量が異なる場合であっても簡単に対処できる。さらに、逃がし制御を行うことにより、ピストン25を動作させるために必要な差圧を確保できる量の排気5を、圧力調整弁33を介して外部に放出することができる。したがって、動作用気体6を供給することにより、ピストン25の前後に差圧をつくり、即座にピストン25を動かすことができる。
シリンダ21の下端21bには、シリンジ11の方にだけ変形できるように取り付けられたシリコンマット35が取り付けられており、加圧用気体4がシリンジ11からシリンダ21へ逆流しないようになっている。したがって、シリンダ21からは加圧用気体4がシリコンマット35からなる逆流防止機構を介してシリンジ11に供給される。また、シリンジ11の吐出口12は、吐出しないときは出口弁37により機械的に閉鎖されるので、この逆流防止機構35の存在によりシリンジ11の内圧は加圧用気体4を供給していったん加圧すれば、その後、加圧用気体4の供給を停止しても内圧は維持される。したがって、吐出操作を再開するときは、シリンジ11の内圧が高くなるのを待つことはなく、即時に作業を再開できる。このため、頻繁に吐出の開始・停止を繰り返すことが多い環境では、非常に使いやすく、作業員の負担を軽減できる吐出装置10を提供できる。
そして、シリンダ21に動作用気体6が供給されると、加圧用気体4がシリンジ11に供給され、また、加圧用気体4の圧力制御を行うために圧力調整弁33から排気5が出力されるので、ピストン25の前後で差圧が発生し、その動きが制御棒39を介して出口弁37に伝達され、シリンジ11の吐出口12が開閉される。制御棒39を駆動する制御機構42は、前述のピストン25、ピストン25を上方に押す弾性部材であるコイルバネ26、ピストン25が押し下げられたときにそのピストンの力により制御棒39を押し上げて出口弁37を開方向に動かすリンク43、ピストン25が上にあるときに、出口弁37を吐出口12の内側に押し付ける弾性部材であるコイルバネ44などから成っている。
ピストン25が押し下げられたときに制御棒39を押し上げて出口弁37を開方向に動かすリンク43の構成の一例を図3に示してある。このリンク43は、ピストン25の下端25bに押されて梃子のように動く引き上げレバー式のものであり、制御棒39の上端39cを把持する部分43aと、その把持する部分43aを支持する平面状の部分43bと、この平面状の部分43bから途中で屈曲して斜め上に延びる腕43cの部分とを備えている。したがって、動作用気体6が供給されて、ピストン25が下がり、ピストン25の下端25bがアーム43cの端43dに接触してアーム43cを下に押すと、平面状の部分43bからアーム43cが延びたコーナ43eを支点としてリンク43は旋回し、制御棒39を上方に引き上げる。その結果、出口弁37が吐出口12から離れ、吐出口の先端12aから吐出物3が吐出される。
制御棒39は、コイルバネ44により下方に押されており、ピストン25が上がった状態では、出口弁37を吐出口12の内側に押し付けて吐出口12を閉鎖する。したがって、ピストン25の前後の差圧が小さくなりピストン25を押し下げる力が弱くなると、コイルバネ44の働きにより制御棒39が動いて出口弁37におり吐出口12を塞ぐ。さらに、吐出物3がコイルバネ44に付着してその伸縮機能を阻害しないように、バネ44は保護カバー45で覆われており、動作用気体6をとめれば確実に吐出口12が閉じるようになっている。
制御棒39は、シリンダ21の内部から延びた上部39aと、シリンジ11の内部を延びた下部39bに分割されており、両者は接続部39dで結合されている。したがって、接続部39dを外すと、制御棒39は2つに分割される。したがって、シリンジ11とシリンダ21とを分解するときに、制御棒39も容易に分解できる。また、接続部39dの部分で制御棒全体の長さを調整でき、さらに、出口弁37の交換も容易であり、吐出物3に応じて種々の形状の弁37を取り付けできる。シリンダ21の内部では、制御棒39の上側39aがシリンダ21の下端21bの壁を貫通して延びており、上端39cがリンク43に保持されて上下に動く。また、制御棒39は、シリンダ21の内部の制御棒軸受41などにより、上下方向に摺動可能に支持されている。
図4に、動作用気体6が本例の吐出装置10に供給された状態を示してある。導入孔22から供給された動作用気体6は、ピストン25の小径流路(オリフィス)31を通ってシリンダ21の内部に供給され、殆ど瞬時にシリンダ21の内圧は上がり、ピストン25の下流に設けられた圧力調整弁33から排気5が出力される。したがって、ピストン25を貫通するオリフィス31を通る空気の流れが形成されるので、オリフィス31で動作用気体6は減圧され、上方の領域28と下方の領域29で圧力差が生じ、上方の領域28に対して下方の領域29の圧力が低くなる。この圧力差により、ピストン25は下がり、この状態は、空気の流れがある限り維持される。
あるいは、動作用気体6が供給されると、その圧力により、まず、ピストン25が動くケースもあるが、その後、オリフィス31を通過する空気の流れが瞬時に確立されるので、ピストン25がバネ26により上下にハンチングすることはなく、ピストン25を安定して操作できる。これらの動作は、動作用気体6の圧力などの条件に合わせてピストン25に設ける小径の流路31の径を適切に選ぶことが可能である。たとえば、十分な圧力差が確保できる程度に大きなオリフィス31を設定することにより、シリンダ21の内圧を上昇するための時間を短縮できる。
押し下げられたピストン25は、リンク43を操作し、制御棒39を上方に引き上げる。これにより、出口弁37が上がって、吐出口12が開くと、吐出口12から吐出物3が、その塗布対象である基板9などに向けて吐出される。ピストン25の中心部には、制御棒の頭部39cおよびバネ26を収納できる程度の空間25aが用意されており、ピストン25が下降したときに、制御棒の頭部39bとは干渉しないようになっている。本例では、ピストン25は、減圧機構の一部を成すと共に、出口弁37を動かす動力を発生する役目を果たしている。前者のためには小径の孔31を有すれば良く、後者のためにはわずかなストロークがあればよいから、構造は簡単で、場所も取らない。また、そのピストン25が押し下げられたときに、ピストン25により押し上げられて制御棒39を介して出口弁37を開方向に動かすリンク43は、回転中心を有するレバーのように、その一端を押し下げると、他端が上がるものであればよいから、これも簡単な構造で、場所を取らない。したがって、これらによって構成される本例の制御機構42は、コンパクトなシリンダ21に内蔵することができ、コンパクトな吐出装置10を提供できる。
吐出口12から吐出物3が出力されるとシリンジ11の内の吐出物3の容量が減少するので、内圧は低くなる。このとき、シリンダ21には、シリンジ11の内圧を調整するのに適した圧力に減圧された加圧用気体4が圧力調整弁33の逃がし制御により準備されているので、シリンジ11の内圧が低下すると瞬時に、通気孔32から逆流防止機構であるシリコンマット35を抜けて加圧用気体4がシリンジ11に供給される。したがって、シリンジ11の内圧は所望の値に維持され、所望の量の吐出物3を安定して出力できる。また、減圧された気体の余剰分は排気口32aから圧力調整弁33を通って常に吐出装置10の外部に逃がされ、その逃がし量を加減することにより加圧用気体4の圧力が一定に制御されているので、吐出量の大小によりシリンジ11が要求する空気量が変わっても、安定した圧力の加圧用気体4をシリンジ11に供給できる。
このような吐出状態は、動作用気体6が供給されている限り連続する。したがって、作業員は吐出作業を行うに当たり、出口弁の開閉操作と、シリンジ内の圧力制御とを個別に行う必要はなく、それらの操作のタイミングに配慮する必要もない。このため、作業員にとって操作が容易で取り扱いやすい吐出装置10を提供できる。
さらに、この構成を取ることにより、差圧によりピストン25が押し下げられたときに出口弁37が開となり、シリンジ11の内圧が下がり易い状況となる。そのとき、ピストン25が押し下げられると、ピストンの下側の領域の容積29はピストンの面積とそのストロークの積の分だけ減少するので、シリンダ21の内圧は高くなる状態となり、シリンジ11の内圧の減少を大量の加圧用気体4により補償しやすい状態となる。したがって、この点でも、本例の吐出装置10は、吐出開始直後の吐出量の変動を抑えることができ、吐出を断続的に繰り返す用途においても、安定した吐出量を維持できる吐出装置10を提供できる。
また、高粘度の吐出物3を吐出する場合は、出口弁37が開になっても直ぐには吐出物3が吐出されないので、ピストン25の動きにより圧縮され、逃がし圧力制御が追随してくるまでの間の比較的高い加圧用気体4がシリンジ11に供給され、シリンジ11の内圧が一時的に上昇する可能性がある。この一時的な圧力の上昇は、粘性の高い吐出物を取り扱う場合に吐出開始直後の吐出量を十分確保するのに有効である。
吐出装置10から吐出を停止するときは、動作用気体6の供給を停止する。動作用気体6の供給を停止すると、シリンダ21の内容積は非常に小さいので、殆ど瞬時に圧力調整弁33からの排気5はなくなり、オリフィス31を通過する空気の流れはなくなる。したがって、オリフィス31による減圧は作用せず、ピストン25の上下の差圧はなくなるので、ピストン25はバネ26の力により上方に復帰する。これにより、リンク43はピストン25から開放され、制御棒39はバネ44により下方に動き、出口弁37により吐出口12は閉になる。このため、図2に示した状態に復帰し、吐出口12のすぐ近くが出口弁37により機械的に閉鎖される。したがって、本例の吐出装置10は、差圧によりピストン25を制御しているので、動作用気体6を操作することにより、レスポンス良く吐出を停止でき、吐出作業終了時に液切れがよい。また、シリンジ11の内圧とは関係なく、機械的に吐出口12を閉鎖できるので、作業終了後の液ダレも少ない。
一方、シリコンマット35が逆流防止機構としてシリンダ21の内圧が低下してもシリンジ11の内圧が低下しないように機能するので、動作用気体6を停止してもシリンジ11の内圧は低下せず、次に動作用気体6を供給すると直ぐに、殆ど遅延なく、高粘度の戸出物3であってもシリンジ11から吐出できる。このような逆流防止機構は、シリンジ11の内部を高圧しないと吐出しない高粘度の吐出物を取り扱うには便利であるが、低圧でも吐出する低粘度あるいは流動性の高い吐出物、例えば機械油やアルコールなどを吐出する場合は、シリンジ11に残圧があると出口弁37と対応するシリンジ11または吐出針13の面精度が高くない液切れが悪くなる可能性がある。したがって、シリコンマット35を省いて、オフの状態ではシリンジ11の圧力が開放されるようすることが望ましい。
このように、この吐出装置10では、動作用気体6がピストン25に設けられた小径の流路31を流れることにより生ずる差圧を利用して吐出口の開閉を行い、その差圧を確保するように圧力調整された加圧用気体4でシリンジ11を加圧する。したがって、動作用気体6をオンオフ制御するだけで、極めて簡単に吐出物3を吐出/停止することができる。さらに、高粘度の吐出物の場合は逆流防止機構をシリンジ11と加圧装置10との間に配置することにより、また、低粘度の吐出物の場合は逆流防止機構を配置しないことにより、吐出/停止のレスポンスの高い吐出装置を提供できる。したがって、作業員にとって操作が容易で取り扱いやすい吐出装置である。
図5に、上記と異なる吐出装置10aの概略構成を断面図により示してある。この吐出装置10aは、上記の吐出装置10と基本的な構成および動作は同じであるので、異なる部分を以下では説明する。本例の吐出装置10aは、第1の区画1を形成するシリンジ11と、第2の区画を形成するシリンダ21との間を開閉可能な仕切り機構50を備えている。この仕切り機構50は、シリンジ11の側に取り付けられたリング状の板51と、リング状の板51の中心の開口部分を開閉可能なシール部材52とを備えており、シール部材52が制御棒39により上下に駆動される。本例においては、シール部材52は、制御棒39を下方に押すコイルバネ44のストッパ39dとしての機能も兼ねている。シリンジ11の内部は先端に向かって徐々に細くなるようにテーパー状になっているので、適当な外形のリング状の板51を挿入すると適当な位置で止まり、そのリング状の板51と当たる位置にシール部材52を取り付ける。また、シール部材52の上方には、円筒状のシール部材52の上下の動きをガイドする部材56が取り付けられている。
図6に示すように、仕切り機構50においては、差圧が確保されてピストン25が下がり、制御棒39が上がり、出口弁37がオープンする状態になると、シール部材52も上がり、リング状の板51から離れるので、仕切り機構50はオープンとなり、シリンダ12から圧縮気体4がシリンジ11に供給される。差圧が下がりピストン25が上がり、制御棒39が下がり、出口弁37がクローズすると共に、シール部材52が下がり、リング状の板51と接して仕切り機構50は閉じる。
したがって、この仕切り機構50は、シリンダ21にシリンジ11に供給するのに適した圧力が準備されたときにだけ開き、また、シリンダ21に残圧があってもそれをシリンジ11に供給しない機能を持ち、シリンジ11の内部の圧力を常に適正に制御できる。このため、仕切り機構50は、高粘度の流体の場合は、逆流防止機構に代わりシリンジ11の内圧を保持する機能も果し、粘度が低く、ほとんどシリンジ11の圧力を上げる必要ない流体の場合は、加圧装置10の残圧によりシリンジ11の流体が吐出口に向って加圧され液切れが悪化するのを防止する機能も果たす。低粘度の流体を使用する場合であって、動作用気体6の圧力変化にほとんど連動してシリンジ11の内部の圧力を制御した方が、吐出口における液切れが良いことがある。そのような場合は、本例の仕切り機構50の仕切り板51をシリンジ11から取り外すだけで仕切り機構を除くことができ、吐出物の物性によりフレキシブルに運用できる。
さらに、本例の吐出装置10aのシリンジ11の上方に吐出物3を供給するための供給口57が設けられており、逆止弁58などを介して吐出物の供給源59からシリンジ11に吐出物3を注入できるようになっている。このため、シリンジ11とシリンダ21を分離しなくても吐出物を補給できるので作業性が向上する。
また、本例の吐出装置10aでは、出口弁37が吐出口12を構成する吐出針13の内側ではなく、シリンジ11の先端11bの内側に接して吐出口12を開閉するようになっている。このため、図7に示すように、シリンジ11の内部に吐出物3が入っていても、制御棒39により制御される出口弁37で吐出口12を閉じた状態で、吐出針13を取り外すことができる。したがって、吐出針13の取り付け、取り外しが自由になり、吐出先によって吐出針13の形状や径を変えたり、目詰まりが発生したときに吐出針13を交換したりすることが簡単に行える。さらに、吐出装置10aを使わないときに吐出針13を外して漏れ防止用のキャップを装着しておくことが可能であり、目詰まりを防止するためにその都度、シリンジ11から吐出物3bを出して空にしておくような手間も省くことができる。
さらに、針穴に制御棒39を通して開閉する必要がないので、針穴の形状が自由になり、針穴の大小を自由に加工できるというメリット、針穴に制御棒39が通らないので、針穴の面積を大きく確保でき、液が出やすくなり、穴詰まりなどのトラブルが減るなどのメリットも得られる。したがって、機械油やアルコールなどの流動性の非常に高い吐出物ではなく、溶剤のような流動性が若干低く、固まりやすく、若干、液切れが悪くても支障のないような吐出物を使用する場合は、本例のようにシリンジ11の先端11bに出口弁37を接して吐出口12を開閉することは非常に有効である。
一方、流動性の高い機械油、アルコールなどを使用する場合は、目詰まりという心配はほとんどなく、吐出停止後の針穴からの液漏れの事態が発生しうることから、上記の実施例に示したように、吐出針13の内部に出口弁37を接して吐出口12を開閉する方法を採用することが望ましく、さらに、精度の高い吐出停止性能を得ることができる。
なお、本吐出装置で用いられる気体としては、一般に空気が用いられるが、吐出物の性状によっては窒素やアルゴンなどの不活性気体を使用することも可能である。また、上記では、減圧機構としてピストン25にオリフィス31を設けた例を説明しているが、動作用気体を減圧する機構としてはキャピラリ、減圧弁あるいはラビリンスなどであっても良い。しかしながら、ピストンに設けられたオリフィスは、新たな場所や流路を設ける必要がなく、構造が簡易であり、信頼性も高いので、動作用気体の必要量や圧力はほぼ一定している本例の吐出装置においては、好適な減圧機構である。
また、減圧後の気体の一部を逃がす機構として、気体を吐出装置10の外部に逃がす圧力調整弁を採用しているが、外界に対して悪影響を与える気体や、高価な気体であれば、気体の供給源に戻すようにすることも可能である。この点、空気は、無害でコストも低いので、動作用気体として優れている。また、圧力調整弁として、スチール球をテーパバネで排気口に押し付ける構成を例示しているが、この形式に限定されるものではなく、適量の気体を逃がし制御できる構成であれば公知のいずれの圧力調整弁も採用できる。また、設定圧力が可変である圧力調整弁を用いれば、性状や吐出量が異なる各種の吐出物に対して、それぞれに適した圧力になるように設定を変えることにより、1台の吐出装置で異なる種類の吐出物を多数処理することができる。