JP3862337B2 - ゴルフクラブ用ヘッド及びその製造方法 - Google Patents

ゴルフクラブ用ヘッド及びその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はゴルフクラブ用ヘッド及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、複数の部材を接合固着したヘッドの接合構造の改良、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属製のゴルフクラブ用ヘッド(以下ヘッドと省略する。)を製造する方法としては、例えばアイアンヘッドは、ヘッド全体を鋳造、鍛造等で一体に成形する方法が一般的であり、ウッドヘッドは、鋳造、鍛造等により複数の部材を形成し、その後それら各部材を溶接により接合一体化する方法が一般的であった。
【0003】
また、最近では、ゴルフクラブでボールを打った時に、ボールの方向性を安定させ、より大きな飛距離を得るために、たとえばアイアンヘッドでは、ヘッドのフェース部の一部であるフェース板をアルミニウム、チタン、チタン合金等の比較的比重の小さい材料で形成し、前記フェース板以外の部分であるヘッド本体を、ステンレス、軟鉄、銅、銅合金、タングステン、真鍮等の前記フェース板よりも比重の大きい材料で形成して一体化させたものや、ヘッドのフェース部の裏面にあたるバック部にヘッドを構成する材料より比重の大きい材料よりなるウエイト部材を取り付けたものなどがみられる。また、ウッドヘッドでは、ヘッドの底面を構成するソール部材を他の部材
よりも比重の大きい材料で形成し、両者を接合固着したものがみられる。
【0004】
前記構成とすることにより、ヘッドは該ヘッドの重心の周辺の慣性モーメントを大きくする事ができ、また、重心位置を深くするなどの調整をすることができることが知られている。
したがって、前記ヘッド本体とフェース板を構成する材料やソール板とヘッド本体を構成する材料、あるいは、ヘッドと取り付けるウエイト部材とは互いに異種金属材料で形成されていた。
前記異種金属材料からなる各部材を互いに接合固定してヘッドを形成するには、各部材をネジ等の結合部材で固定したもの、各部材に嵌合用の凹凸部を形成しておき、前記凹凸部に圧入、かしめなどで嵌合して取り付けて一体化する、あるいは接着剤を用いた接着、あるいはアーク溶接などのいわゆる溶融溶接等で一体化したものが公知である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記異種金属材料からなる各部材を接合固定して一体化したものでは、以下の問題点があった。
即ち、前記各部材を別部材である結合部材を用いて接合する場合、例えばヘッド本体にフェース板を取り付けるために、ヘッド本体のフェース板挿入用凹部にフェース板を挿入してネジなどの結合部材を用いて両者を固定した場合は、部品点数、工程数が多くなるばかりでなく、出来上がったヘッドのフェース面の表面にネジが現れるため美観が損なわれるという欠点があった。
また、ウエイト部材をヘッドのバック部に接合したり、ヘッド本体とフェース板を接合するのに、前記部材の接合部に両者を嵌合させるための凹凸部を形成しておき、両者を圧入によって嵌合したり、前記部材の周縁にかしめ部を形成しておき、両者をかしめにより嵌合して接合固定するものでは、両者の間が必ずしも密着しているわけではなく、使用時の衝撃などにより両者間に隙間が出来たり、フェース板が剥がれたりする恐れがあった。
【0006】
また、これら異種金属材料からなる各部材を溶融溶接にて接合する場合は、接合しようとする各部材自身が溶融して接合するものであるから、接合しようとする部材が異なる材料から成る場合は、溶融溶接が困難で、十分な溶接強度が得られ難いことや、溶融溶接後、表面に現れた溶接ビートが仕上げ研磨をしても残るため外観が好ましくなかった。
そこで、本発明は、異種金属材料から成る複数の部材を接合一体化して形成するヘッドの接合構造を改良し、前記各部材の接合が強固に出来、しかも美観を損ねないゴルフクラブ用ヘッド及びその製造方法を提供する事を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明では、複数の部材を溶加材を介して接合固着しようとするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明は、複数の部材を接合することにより形成されるゴルフクラブ用ヘッドにおいて、前記複数の部材は、ヘッド本体と、該ヘッド本体と異なる材料により形成された部材から成り、前記ヘッド本体には、前記異なる材料より成る部材が接合される各部材の接合部の間に、各部材を接合しようとする部材の変態温度よりも低い融点を有し、且つ、銅層を30重量%以下の銅を含む銀系ろう層で狭持した溶加材を介して接合固着されているゴルフクラブ用ヘッドである。
前記溶加材は、接合しようとする部材の変態温度よりも低い温度で溶ける金属であり、接合しようとする部材とのぬれが良好で、接合工程を経ることにより、接合部の脆化を招かない材料から選ばれる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のゴルフクラブ用ヘッドにおいて、前記複数の部材は、ヘッドのフェース部の一部を構成するフェース板と、前記ヘッドの前記フェース板以外の部分を構成するヘッド本体から成り、前記フェース板は、前記ヘッド本体を構成する材料よりも比重が小さく、かつ、異なる材料により形成されているゴルフクラブ用ヘッドである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2のゴルフクラブ用ヘッドにおいて、前記フェース板は純チタンよりなり、前記ヘッド本体はステンレスより形成されているゴルフクラブ用ヘッドである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のゴルフクラブ用ヘッドにおいて、前記複数の部材は、ヘッドのバック部又はソール部の一部を構成するウエイト部材と、前記ヘッドの前記ウエイト部材以外の部分を構成するヘッド本体から成り、前記ウエイト部材は、前記ヘッド本体を構成する材料よりも比重が大きく、かつ、異なる材料により形成されているゴルフクラブ用ヘッドである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のゴルフクラブ用ヘッドにおいて、前記ウエイト部材はタングステン合金よりなり、前記ヘッド本体はチタン合金より形成されているゴルフクラブ用ヘッドである。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1記載のゴルフクラブ用ヘッドにおいて、前記複数の部材は、ヘッドのフェース部の一部を構成するフェース板と、前記ヘッドのバック部又はソール部の一部を構成するウエイト部材と、それら以外の部分であるヘッド本体から成り、前記各部材を構成する材料の比重は、ウエイト部材>ヘッド本体>フェース板の関係を有し、かつ、それぞれ異なる材料により形成されているゴルフクラブ用ヘッドである。
【001
請求項7記載の発明は、複数の部材を接合することにより形成されるゴルフクラブ用ヘッドの製造方法であって、前記複数の部材は、ステンレス鋼より成るヘッド本体と、該ヘッド本体と異なる材料により形成された他の部材から成り、前記ステンレス鋼製ヘッド本体には、前記異なる材料より成る他の部材が接合される部分に、金属めっきを施し、接合すべき各部材の接合部の間に、各部材を接合しようとする部材の変態温度よりも低い融点を有し、且つ、銅層を30重量%以下の銅を含む銀系ろう層で狭持した構造の溶加材を設置した後、それらを、前記接合すべき部材の変態温度以下であって、前記溶加材が溶融する温度まで加熱し、前記溶加材を各部材の前記接合部にぬれさせることにより、これら複数の部材を接合一体化したゴルフクラブ用ヘッドの製造方法である。
【001
【実施例】
図1から図4は、本発明の好ましい実施例として、アイアンゴルフクラブ用ヘッドに適用した場合を示したものである。
図1〜図2に示すようにアイアンクラブ用ヘッド(以下単にアイアンヘッドと称す)1は、従来品と同様にホーゼル部5、フェース部3、バック部6等からなる。
そして、前記アイアンヘッド1は、該アイアンヘッド1のフェース部3の一部であるフェース板4と、バック部6の周縁部に接合されたウエイト部材7と、前記2つの部材以外の部分であるヘッド本体2からなり、前記各部材は異なる種類の金属材料で形成されている。
すなわち、本実施例では、前記ヘッド本体2はステンレスで形成されており、フェース部3には純チタンより成るフェース板4が接合されている。
また、ヘッド本体2のバック部6の周縁には、タングステン合金より成るウエイト部材7が接合されている。
【001
また、図3に示すように、フェース部3に設けられた凹部8aとフェース板4との間には、前記フェース板4とヘッド本体2の接合のための溶加材として、純銀ろうが配設されており、さらに、ウエイト部材7が装着される凹部8bとウエイト部材7の外周との間には、前記ヘッド本体2とウエイト部材7の接合のための溶加材として、銀系のJIS−BAg8ろうが配設されている。
本実施例における銀系のろうは、銅が30重量%以下含まれるものを用いている。銅が30重量%以上含まれる銀系のろうは、溶融温度は低下するが、ゴルフクラブとして繰り返しの打球したときの機械的強度に劣るため好ましくない。
【001
前記ヘッド本体2とフェース板4およびウエイト部材7を構成する材料としては、上記の組み合わせの他、ヘッド本体を純チタン、チタン合金、軟鉄、銅、銅合金、フェース板をチタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、シリコンカーバイド強化チタン、ウエイト部材を銅、銅合金、タングステン合金の中から適宜選び、本体の材料よりも比重の小さい材料より成るフェース板、本体の材料よりも比重の大きい材料より成るウエイト部材という組み合わせで形成すればよい。
【001
図3で説明したろうの外、前記各部材を接合するために配設される溶加材としては、前記接合すべき各部材の変態温度より低い温度で溶ける溶加材であって、前記接合する各部材の構成材料との好適なぬれ性を有し、しかも接合したときの機械的強度を満足する材料から選ばれる低融点金属を用いることができる。
さらに、前記溶加材としては、その融点が450℃以上のろう材からえらばれる、銅ろう、黄銅ろう、純銀ろう、銀系ろう、りん銅ろう、金ろう、ニッケルろう、純アルミろう、アルミニウム合金ろう、チタン系ろうなどから前記接合する各部材の材料に合わせて選択する。
【0019
本発明のアイアンヘッドは、前記溶加材の内から、その融点が、接合しようとする各部材の変態温度よりも低く、かつぬれが良くて、接合時の機械的強度に優れた材料からなる溶加材をえらび、各部材の接合部すき間に配置させて一体化させたものであるから、接合しようとする各部材を構成している材料の特性が、接合時の熱により変化する恐れもなく、また、両者間のすき間は0.5〜0.01mmと狭くて良いので、溶融溶接したアイアンヘッドに較べ、接合一体化したアイアンヘッドの接合面は美しく仕上がる。
【002
前記のほか、前記タングステン合金製のウエイト部材7とステンレス製のヘッド本体2のように、熱膨張率の大きく異なる素材を用い、溶加材を介して接合する場合には、銅層を銀系のろう層で狭持した構造の溶加材を用いる。前記溶加材を溶かして接合すれば、熱膨張率の異なる両部材の間に該両部材よりも軟らかい金属が介在することになるから、ボールを打ったときの衝撃を緩和することが出来るほか、接合しようとする各部材間の熱による収縮歪を緩和することが出来るようになる。
【002
本発明のアイアンヘッドを製造する方法としては、図4に示すように、まず、アイアンヘッド2のフェース部3に、フェース板4を収納するための凹部8aを形成し、バック部6の周縁にはウエイト部材7を装着するための凹部8bを形成したヘッド本体2をステンレス鋼で形成する。そして、純チタン板によりフェース板4を形成し、タングステン合金によりウエイト部材7を形成する。この時、フェース板4、ウエイト部材7ともに、それらを収納する各々の凹部8a、8bより溶加材を配置させる分だけ小さく形成しておく。本実施例では、両者の間に0.2mmの隙間が出来る大きさとした。
【002
前記フェース板4とウエイト部材7を所定の位置に溶加材により接合固定するにあたり、まず、前記ヘッド本体2にフェース板4を接合するには、前記ヘッド本体2の凹部8aの周壁面及び底面をアセトン等の有機溶剤で脱脂する。
次に前記凹部8aの周壁面及び底面をペーパー等により研磨して、表面の酸化物を除去する。その後、前記凹部8aが水平となるように治具により固定し、前記凹部8aに、0.2mm厚の純銀ろうの箔、フェース板4の順で載置し、その上に前記フェース板4が凹部8a内にきちんと納まるように重りを載せる。本実施例では、ヘッド本体2も前記凹部8aも研磨した後、前記凹部8a表面に電解ニッケルメッキを2〜3μmの厚みとなるように施してから、両者を接合固定する。
【002
前記のように組み合わせた各部材をアルゴン雰囲気中ににて980℃、1時間加熱し、溶加材を溶融させ両者を接合する。その後徐冷し、表面を軽く研磨し、余分な溶加材を除去することにより、フェース部3が完成する。
更に、前記アイアンヘッド1のバック部6にウエイト部材7を接合するには、図示はしなかったが、前記フェース部3の接合同様に、前記アイアンヘッド1のバック部6の凹部8bが水平となるように治具により固定し、そこに、0.2mm厚さのJIS−BAg8ろうの箔、ウエイト部材7の順で載置し、同様のアルゴン雰囲気中にて880℃、1時間加熱し、溶加材を溶融させ、両者を接合する。
徐冷後、表面を研磨し、フェース部3には、純チタン製のフェース板4、バック部6にはタングステン合金製のウエイト部材7が接合されたステンレス製のアイアンヘッド1が形成される。
【002
【発明の効果】
以上のように、本発明では、複数の部材を接合してなるアイアンヘッドにおいて、各部材を接合しようとする部材の変態温度よりも低い融点を有する材料からなる溶加材を介して接合固着したものであるから、接合しようとする部材がほとんど溶けず、接合一体化したアイアンヘッドの寸法精度がよく出来上がり、歪みの少ないアイアンヘッドとなる。
溶加材は、部材とのぬれが良いものを選んで配設するため、部材の接合すき間が狭くても十分に強固に接合できるので、各部材に接合のための凹凸部を形成しておくなどの特別な接合のための加工を必要とせず、一体化した後工程が少なくて済む。
また、接合する部材の接合すき間に溶加材が溶けて介在して両者を固着するので、各部材そのものは溶融せず接合固着するから、各部材が異なる材料で形成されたものであっても、接合強度が充分に得られる。
【002
本発明の製造方法によれば、接合のための溶加材が、接合する部材の変態温度よりも低い融点を有するものであるから、溶融溶接したアイアンヘッドに較べ、接合一体化したアイアンヘッドの接合面は美しく仕上がり、後工程が簡素化できる。
また、すべての部材を同時に接合する必要がなく、アイアンヘッド成形用の各部材を接合一体化してアイアンヘッドを形成し、必要に応じてバック側にウエイト部材を固着するなどのステップ接合をする事が出来るので、必要に応じてウエイトの配分を変えるなどの設計誤差の調整可能なアイアンヘッドが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明をアイアンヘッドに実施した一例を示す正面図である。
【図2】 図1に示すアイアンヘッドの背面図である。
【図3】 図1に示すアイアンヘッドのA−A線切断端面図である。
【図4】 図1に示すアイアンヘッドの製造方法の一工程の説明図である。
【符号の説明】
1 アイアンヘッド
2 ヘッド本体
3 フェース部
4 フェース板
5 ホーゼル部
6 バック部
7 ウエイト部材
8a 凹部
8b 凹部
9 溶加材

Claims (7)

  1. 複数の部材を接合することにより形成されるゴルフクラブ用ヘッドにおいて、前記複数の部材は、ヘッド本体と、該ヘッド本体と異なる材料により形成された部材から成り、前記ヘッド本体には、前記異なる材料より成る部材が接合される各部材の接合部の間に、各部材を接合しようとする部材の変態温度よりも低い融点を有し、且つ、銅層を30重量%以下の銅を含む銀系ろう層で狭持した溶加材を介して接合固着されているゴルフクラブ用ヘッド。
  2. 前記複数の部材は、ヘッドのフェース部の一部を構成するフェース板と、前記ヘッドの前記フェース板以外の部分を構成するヘッド本体から成り、前記フェース板は、前記ヘッド本体を構成する材料よりも比重が小さく、かつ、異なる材料により形成されている請求項1記載のゴルフクラブ用ヘッド。
  3. 前記フェース板は純チタンよりなり、前記ヘッド本体はステンレスより形成されている請求項2記載のゴルフクラブ用ヘッド。
  4. 前記複数の部材は、ヘッドのバック部又はソール部の一部を構成するウエイト部材と、前記ヘッドの前記ウエイト部材以外の部分を構成するヘッド本体から成り、前記ウエイト部材は、前記ヘッド本体を構成する材料よりも比重が大きく、かつ、異なる材料により形成されている請求項1記載のゴルフクラブ用ヘッド。
  5. 前記ウエイト部材はタングステン合金よりなり、前記ヘッド本体はチタン合金より形成されている請求項4記載のゴルフクラブ用ヘッド。
  6. 前記複数の部材は、ヘッドのフェース部の一部を構成するフェース板と、前記ヘッドのバック部又はソール部の一部を構成するウエイト部材と、それら以外の部分であるヘッド本体から成り、前記各部材を構成する材料の比重は、ウエイト部材>ヘッド本体>フェース板の関係を有し、かつ、それぞれ異なる材料により形成されている請求項1記載のゴルフクラブ用ヘッド。
  7. 複数の部材を接合することにより形成されるゴルフクラブ用ヘッドの製造方法であって、前記複数の部材は、ステンレス鋼より成るヘッド本体と、該ヘッド本体と異なる材料により形成された他の部材から成り、前記ステンレス鋼製ヘッド本体には、前記異なる材料より成る他の部材が接合される部分に、金属めっきを施し、接合すべき各部材の接合部の間に、各部材を接合しようとする部材の変態温度よりも低い融点を有し、且つ、銅層を30重量%以下の銅を含む銀系ろう層で狭持した溶加材を設置した後、それらを、前記接合すべき部材の変態温度以下であって、前記溶加材が溶融する温度まで加熱し、前記溶加材を各部材の前記接合部にぬれさせることにより、これら複数の部材を接合一体化したゴルフクラブ用ヘッドの製造方法。
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