JP3861475B2 - 3次元入力装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、物体にスリット光又はスポット光を照射して物体形状を非接触で計測する3次元入力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レンジファインダと呼称される非接触型の3次元計測システムは、接触型に比べて高速の計測が可能であることから、CGシステムやCADシステムへのデータ入力、身体計測、ロボットの視覚認識などに利用されている。
【0003】
レンジファインダに好適な計測方法としてスリット光投影法(光切断法ともいう)が知られている。この方法は、物体を光学的に走査して3次元画像(距離画像)を得る方法であり、特定の検出光を照射して物体を撮影する能動的計測方法の一種である。3次元画像は、物体上の複数の部位の3次元位置を示す画素の集合である。スリット光投影法では、検出光として断面が直線状のスリット光が用いられる。物体で反射したスリット光は受光センサ(撮像デバイス、イメージセンサ)の撮像面に結像する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなレンジファインダでは、受光センサに受光されるスリット光の光量は、物体の反射率によって変化する。したがって、受光センサの電荷蓄積時間を所定の時間に固定していると、反射率が高い場合には受光センサの出力が飽和してしまう。これとは逆に、反射率が低い場合には、受光センサの出力が低過ぎてSN比が悪くなるという問題がある。
【0005】
一方、物体の3次元形状(距離分布)を求めるには、スリット光の受光位置又は受光タイミングを正確に検出する必要がある。本出願人は、位置的又は時間的に前後にわたって出力されるセンサ出力に基づいて重心演算を行うことにより、受光位置又は受光タイミングを正確に検出する構成を提案した(特開平7−174536号、特開平9−145319号)。重心演算を行う場合には、受光センサの出力が正確である必要があるが、上記のようにSN比が悪い場合、又は受光センサの出力が飽和している場合には、正確な重心演算が行えない。
【0006】
この問題に対し、従来は、一度スリット光を投影してそのときの受光センサの出力を得て、その出力に基づいて、適切な蓄積時間を設定するようにしていた。しかし、このようにして設定された蓄積時間は、受光センサの全ての画素について共通の蓄積時間であるため、物体の反射率が局部的に低いか又は高い場合には、依然として上記の問題が生じていた。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、撮像デバイスからの飽和していない出力を得ることを目的とする。さらに、請求項3及び請求項4の発明では、撮像デバイスからSN比の良好な出力を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る装置は、物体までの距離に関する情報を取得することにより前記物体の形状を測定するために用いられる3次元入力装置であって、物体に検出光を照射する投光手段と、前記検出光の照射方向を偏向させて前記物体を光学的に走査するための走査手段と、2次元の撮像面を有し前記物体で反射した前記検出光を受光して光電変換する撮像デバイスと、前記撮像デバイスを、各画素について電荷の蓄積時間が互いに異なる複数の光電変換信号を出力するように制御する制御手段と、光電変換信号の飽和の判定を行い、前記複数の光電変換信号のうち、飽和していない光電変換信号を選択する選択手段と、を有する。
【0009】
請求項2の発明に係る装置では、前記制御手段は、第1の蓄積時間が経過すると、前記撮像デバイスに対して非破壊読み出しを行うとともに、さらに電荷蓄積を第2の蓄積時間まで継続するように制御する。
【0010】
請求項3の発明に係る装置では、前記選択手段は、飽和していない光電変換信号のうち、最も蓄積時間の長い光電変換信号を選択する。
請求項4の発明に係る装置は、物体に検出光を照射する投光手段と、前記検出光の照射方向を偏向させて前記物体を光学的に走査するための走査手段と、2次元の撮像面を有し前記物体で反射した前記検出光を受光して光電変換する撮像デバイスと、前記撮像デバイスを、各画素について、電荷の蓄積時間が所定の時間T/nである第1光電変換信号と、電荷の蓄積時間が前記第1光電変換信号のn倍の時間Tである第2光電変換信号とを出力するように制御する制御手段と、前記第2光電変換信号が飽和していない場合には前記第2光電変換信号を用い、前記第2光電変換信号が飽和している場合には前記第1光電変換信号のn倍の大きさの信号を用いて演算を行う演算手段と、を有する。
【0011】
請求項5乃至請求項7の発明に係る装置は、複数の光電変換信号から選択した飽和していない光電変換信号に基づいて物体までの距離に関する情報を取得し、物体の形状を測定する。
請求項8の発明に係る装置は、第2光電変換信号が飽和しているか否かの判定を行い、飽和していない第2光電変換信号または第1光電変換信号のn倍の大きさの信号を用いて、物体までの距離に関する情報を取得して物体の形状を特定する演算を行う演算手段を有する。
請求項9の発明に係る装置は、物体に検出光を照射する投光手段と、前記検出光の照射方向を偏向させて前記物体を光学的に走査するための走査手段と、2次元の撮像面を有し前記物体で反射した前記検出光を受光して光電変換する撮像デバイスと、前記撮像デバイスを、各画素について、電荷の蓄積時間が所定の時間T/nである第1光電変換信号と、電荷の蓄積時間が前記第1光電変換信号のn倍の時間Tである第2光電変換信号とを出力するように制御する制御手段と、前記第1光電変換信号のn倍の大きさの信号を生成する信号生成手段と、前記第2光電変換信号が飽和していない場合には前記第2光電変換信号を出力し、前記第2光電変換信号が飽和している場合には前記第1光電変換信号のn倍の大きさの信号を出力する信号選択手段と、前記信号選択手段の出力する信号を用いて物体までの距離に関する情報を取得するための演算を行う演算手段と、を有する。
なお、本明細書において、「非破壊読出し」とは、撮像デバイスから受光データを読み出した際に、リセット信号を別途与えない限りその受光データ(電荷)が撮像デバイスにそのまま残るような読み出し方法をいう。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る計測システム1の構成図である。
計測システム1は、スリット光投影法によって立体計測を行う3次元カメラ(レンジファインダ)2と、3次元カメラ2の出力データを処理するホスト3とから構成されている。
【0013】
3次元カメラ2は、物体Q上の複数のサンプリング点の3次元位置を特定する計測データとともに、物体Qのカラー情報を示す2次元画像及びキャリブレーションに必要なデータを出力する。三角測量法を用いてサンプリング点の座標を求める演算処理はホスト3が担う。
【0014】
ホスト3は、CPU3a、ディスプレイ3b、キーボード3c、及びマウス3dなどから構成されたコンピュータシステムである。CPU3aには計測データ処理のためのソフトウエアが組み込まれている。ホスト3と3次元カメラ2との間では、オンライン及び可搬型の記録メディア4によるオフラインの両方の形態のデータ受渡しが可能である。記録メディア4としては、光磁気ディスク(MO)、ミニディスク(MD)、メモリカードなどがある。
【0015】
図2は3次元カメラ2の外観を示す図である。
ハウジング20の前面に投光窓20a及び受光窓20bが設けられている。投光窓20aは受光窓20bに対して上側に位置する。内部の光学ユニットOUが射出するスリット光(所定幅wの帯状のレーザビーム)Uは、投光窓20aを通って計測対象の物体(被写体)に向かう。スリット光Uの長さ方向M1の放射角度φは固定である。物体の表面で反射したスリット光Uの一部が受光窓20bを通って光学ユニットOUに入射する。なお、光学ユニットOUは、投光軸と受光軸との相対関係を適正化するための2軸調整機構を備えている。
【0016】
ハウジング20の上面には、ズーミングボタン25a,25b、手動フォーカシングボタン26a,26b、及びシャッタボタン27が設けられている。図2(b)のように、ハウジング20の背面には、液晶ディスプレイ21、カーソルボタン22、セレクトボタン23、キャンセルボタン24、アナログ出力端子32、ディタル出力端子33、及び記録メディア4の着脱口30aが設けられている。
【0017】
液晶ディスプレイ(LCD)21は、操作画面の表示手段及び電子ファインダとして用いられる。撮影者は背面の各ボタン21〜24によって撮影モードの設定を行うことができる。アナログ出力端子32からは、2次元画像信号が例えばNTSC形式で出力される。ディジタル出力端子33は例えばSCSI端子である。
【0018】
図3は3次元カメラ2の機能構成を示すブロック図である。図中の実線矢印は電気信号の流れを示し、破線矢印は光の流れを示している。
3次元カメラ2は、上述の光学ユニットOUを構成する投光側及び受光側の2つの光学系40,50を有している。光学系40において、半導体レーザ(LD)41が射出する波長685nmのレーザビームは、投光レンズ系42を通過することによってスリット光Uとなり、ガルバノミラー(走査手段)43によって偏向される。半導体レーザ41のドライバ44、投光レンズ系42の駆動系45、及びガルバノミラー43の駆動系46は、システムコントローラ61によって制御される。
【0019】
光学系50において、ズームユニット51によって集光された光はビームスプリッタ52によって分光される。半導体レーザ41の発振波長帯域の光は、計測用のイメージセンサ53に入射する。可視帯域の光は、モニタ用のカラーセンサ54に入射する。イメージセンサ53はMOS型センサであり、カラーセンサ54はCCDエリアセンサである。ズームユニット51は内焦型であり、入射光の一部がオートフォーカシング(AF)に利用される。AF機能は、AFセンサ57とレンズコントローラ58とフォーカシング駆動系59によって実現される。ズーミング駆動系60は電動ズーミングのために設けられている。
【0020】
イメージセンサ53による撮像情報は、ドライバ55からのクロックに同期して選択回路75を介してメモリ63に格納される。また、イメージセンサ53は、ドライバ55からの制御信号により、受光データの非破壊読出しが行われるように制御され、その結果、電荷の蓄積時間がT/4である受光データS(T/4)と、その4倍の時間Tである受光データS(T)とが出力される。
【0021】
カラーセンサ54による撮像情報は、ドライバ56からのクロックに同期してカラー処理回路67へ転送される。カラー処理を受けた撮像情報は、NTSC変換回路70及びアナログ出力端子32を経てオンライン出力され、又はディジタル画像生成部68で量子化されてカラー画像メモリ69に格納される。その後、カラー画像データがカラー画像メモリ69からSCSIコントローラ66へ転送され、ディジタル出力端子33からオンライン出力され、又は計測データと対応づけて記録メディア4に格納される。なお、カラー画像は、イメージセンサ53による距離画像と同一の画角の像であり、ホスト3側におけるアプリケーション処理に際して参考情報として利用される。カラー情報を利用する処理としては、例えばカメラ視点の異なる複数組の計測データを組み合わせて3次元形状モデルを生成する処理、3次元形状モデルの不要の頂点を間引く処理などがある。システムコントローラ61は、図示しないキャラクタジェネレータに対して、LCD21の画面上に適切な文字や記号を表示するための指示を与える。
【0022】
出力処理回路62は、イメージセンサ53の出力する各画素gの光電変換信号を増幅する増幅器、及び光電変換信号を8ビット又は10ビットの受光データに変換するAD変換部を有している。出力処理回路62からは、受光データS(T/4)及び受光データS(T)がディジタル値として出力される。
【0023】
選択回路75は、受光データS(T/4)及び受光データS(T)に対して次の処理を行う。すなわち、受光データS(T)が飽和していない場合にはその受光データS(T)を出力し、受光データS(T)が飽和している場合には、受光データS(T/4)の4倍の大きさのデータを出力する。選択回路75は本発明における選択手段に相当する。選択回路75の構成及び動作の詳細については後述する。
【0024】
メモリ63は、200×32×33Byteの記憶容量を持つ読み書き可能なメモリであり、出力処理回路62から出力される受光データを記憶する。メモリ制御回路63Aは、メモリ63への書込み及び読出しのアドレス指定を行う。
【0025】
重心演算回路73は、メモリ63に記憶された受光データに基づいて、計測対象の物体の形状に対応した濃淡画像を生成して表示用メモリ74に出力し、また、3次元位置を算出するための基となるデータを算出し出力用メモリ64に出力する。LCD21の画面には、表示用メモリ74に記憶された濃淡画像、カラー画像メモリ69に記憶されたカラー画像などを表示する。
【0026】
図4は投光レンズ系42の構成を示す模式図である。図4(a)は正面図であり、図4(b)は側面図である。
投光レンズ系42は、コリメータレンズ421、バリエータレンズ422、及びエキスパンダレンズ423の3つのレンズから構成されている。半導体レーザ41が射出したレーザビームに対して、次の順序で適切なスリット光Uを得るための光学的処理が行われる。まず、コリメータレンズ421によってビームが平行化される。次にバリエータレンズ422によってレーザビームのビーム径が調整される。最後にエキスパンダレンズ423によってビームがスリット長さ方向M1に拡げられる。
【0027】
バリエータレンズ422は、撮影距離及び撮影の画角に係わらず、イメージセンサ53に3以上の複数画素分の幅のスリット光Uを入射させるために設けられている。駆動系45は、システムコントローラ61の指示に従って、イメージセンサ53上でのスリット光Uの幅wを一定に保つようにバリエータレンズ422を移動させる。バリエータレンズ422と受光側のズームユニット51とは連動する。
【0028】
ガルバノミラー43による偏向の以前にスリット長を拡げることにより、偏向の後で行う場合に比べてスリット光Uの歪みを低減することができる。エキスパンダレンズ423を投光レンズ系42の最終段に配置することにより、すなわちガルバノミラー43に近づけることにより、ガルバノミラー43を小型化することができる。
【0029】
図5は計測システム1における3次元位置の算出の原理図である。同図では理解を容易にするため、受光量のサンプリングについて5回分のみが示されている。
【0030】
イメージセンサ53の撮像面S2上で複数画素分となる比較的に幅の広いスリット光Uを物体Qに照射する。具体的にはスリット光Uの幅を5画素分とする。スリット光Uは、サンプリング周期毎に撮像面S2上で1画素ピッチpvだけ移動するように、図5の上から下に向かって偏向され、それによって物体Qが走査される。イメージセンサ53からは、サンプリング周期毎に、受光データS(T/4)と受光データS(T)とが出力される。これらの出力は、1つの有効受光領域Aeについて、1フレーム分の受光データS(T/4)からなる第1フレームF(T/4)と、1フレーム分の受光データS(T)からなる第2フレームF(T)とが出力される。つまり、合計2フレーム分の受光データが出力されることになる。なお、このときの偏向は実際には等角速度で行われる。
【0031】
撮像面S2の1つの画素gに注目すると、本実施形態においては、走査中に行う32回のサンプリングによって32回分の受光データが得られる。これら32回分の受光データに対する重心演算によって、注目画素gがにらむ範囲の物体表面agをスリット光Uの光軸が通過するタイミング(時間重心Npeak又は重心ip)を求める。
【0032】
物体Qの表面が平面であって光学系の特性によるノイズがない場合には、注目画素gの受光量は、図5(b)に示すように、スリット光Uが通過するタイミングにおいて多くなり、通常、正規分布に近くなる。同図のようにn回目とその1つ前の(n−1)回目の間のタイミングで受光量が最大であった場合には、そのタイミングが時間重心Npeakとほぼ一致する。
【0033】
求めた時間重心Npeakにおけるスリット光の照射方向と、注目画素に対するスリット光の入射方向との関係に基づいて、物体Qの位置(座標)を算出する。これにより、撮像面の画素ピッチpvで規定される分解能より高い分解能の計測が可能となる。
【0034】
なお、注目画素gの受光量は物体Qの反射率に依存する。しかし、サンプリングの各受光量の相対比は受光の絶対量に係わらず一定である。つまり、物体色の濃淡は計測精度に影響しない。
【0035】
図6はイメージセンサ53の読出し範囲を示す図である。
図6に示すように、イメージセンサ53における1フレームの読出しは、撮像面S2の全体ではなく、高速化を図るために撮像面S2の一部である有効受光領域(帯状画像)Aeのみを対象に行われる。有効受光領域Aeは、スリット光Uのある照射タイミングにおける物体Qの計測可能距離範囲d’(図14参照)に対応する撮像面S2上の領域であり、スリット光Uの偏向に伴ってサンプリング周期毎に1画素分ずつシフトする。本実施形態では、有効受光領域Aeのシフト方向の画素数は32に固定されている。
【0036】
上に述べたように、イメージセンサ53としてMOS型センサが用いられており、ランダムアクセスが可能である。したがって、撮像データの必要な画素のみを部分的に選択することができ、不必要な部分を読み出すことなく高速に読出しが行える。
【0037】
図7はイメージセンサ53の構成の模式図である。
イメージセンサ53は、撮像面S2の各画素gを順に指定して受光情報を読み出すいわゆるX−Yアドレス走査型の撮像デバイスであって、各画素gに対応したスイッチの制御によって任意の範囲の読出しが可能である。一般的には、垂直走査回路531と水平走査回路532とを構成するディジタルシフトレジスタに所定のタイミングでシフト信号を入力することにより、ライン順次の読出しが行われる。ラインは水平方向の画素列である。本実施形態において、水平方向は物体Qの走査における主走査方向に相当する方向であり、垂直方向は副走査方向(スリット光の偏向方向)に相当する方向である。ただし、イメージセンサ53の配置の向きは光学系の構成に応じて変更可能であるので、ここでの垂直方向が必ずしも実空間での鉛直方向と一致するとは限らない。
【0038】
イメージセンサ53においては、垂直走査回路531に対して走査開始ラインを示すレジスタ初期値を与える走査開始セットレジスタ533が設けられ、これによって上述の有効受光領域Ae(帯状画像)の読出しが実現される。
【0039】
走査開始セットレジスタ533へは走査開始位置を表すデータ信号sgn1、及び走査終了位置を表すデータ信号sgn2を入力することで、どの位置の有効受光領域Aeの撮影像(帯状画像)を読み出すかを指示する。また、読み出し開始信号gsttとリセット信号grstとを別々に入力することにより、非破壊読出しが行われる。すなわち、読み出し開始信号gsttのみを入力することにより非破壊読出しが行われ、その後にリセット信号grstが入力されるまで電荷蓄積が継続される。
【0040】
また、撮像面S2の画素数が増加するとデータ信号sgn1のビット数が増えるので、入力端子の低減の上でデータ信号sgn1のデコーダ534を設けるのが望ましい。読出し開始時には、走査開始セットレジスタ533の内容を垂直走査回路531に並列転送することで走査開始位置及び走査終了位置がセットされたことになる。
【0041】
帯状画像の読出しは、水平走査を繰り返すのではなく垂直走査を繰り返すことにより行う。まず、イメージセンサ53は、水平方向に沿って配列された列の1列目に対して垂直走査を開始位置から終了位置まで行うことで垂直方向に並ぶ33(=32+1)個の画素からなる画素列から光電変換信号を出力する。ただし、メモリ63への格納の対象になるのは32画素分の光電変換信号である。続いて、読出しを行う列を水平方向に1画素分シフトさせ、2列目に対して垂直走査を行って33画素分の光電変換信号を出力する。このような動作を繰り返すことで指定された位置の帯状画像を出力する。
【0042】
以上の要領で読出しを行うことにより、撮像面S2の全領域の画像を読み出す場合よりはるかに短い時間(読み出す行の数/全領域の行数)で1フレームの読出しが完了する。
【0043】
垂直方向に並ぶ33画素分の範囲の読出しを行う理由は次のとおりである。
イメージセンサ53は、蓄積時間がTとなったときに受光データS(T)が読み出されると、その後にリセットされて次の電荷蓄積を開始するのに対し、そのときに読み出されなかった領域は電荷の蓄積が継続して行われる。次回の読み出しの対象が同じ領域であれば問題はないが、異なる領域を読み出す場合には、n回目と(n+1)回目の読出しで蓄積時間の異なる画像情報が混在することになる。すなわち、光投影法による3次元測定においては、スリット光Uの偏向とともに読み出しの必要な有効受光領域Aeが副走査方向(撮像面の垂直方向)にシフトする。したがって、n回目と(n+1)回目とで重複して読み出される領域の画像は前回(n回目)の読出しから今回(n+1)回目の読み出しまでの蓄積時間の画像が読み出されるのに対し、有効受光領域Aeのシフトによって今回に新たに読み出される領域の画像は1回目の撮影から継続して光電変換をした画像となってしまう。そこで、本実施形態においては、読み出し対象領域を今回に必要な領域と次回に必要な領域の双方を包含する領域に設定する。こうすることで、次回に読出しが必要な領域については必ず前回に電荷蓄積がクリアされることになり、蓄積時間の異なる画素からなる画像を取り込んでしまうという問題を回避することができる。
【0044】
図8はイメージセンサ53の撮像面S2におけるラインとフレームとの関係を示す図、図9〜11はメモリ63における各フレームの受光データの記憶状態を示す図である。
【0045】
図8に示すように、撮像面S2の最初のフレームであるフレーム1には、ライン1からライン32までの32(ライン)×200画素分の受光データが含まれる。フレーム2はライン2からライン33まで、フレーム3はライン3からライン34までというように、フレーム毎に1ライン分だけシフトされる。フレーム32はライン32からライン63までである。なお、上述したように1ラインを200画素としている。
【0046】
選択回路75から順次転送される画像データは、図9に示す状態でメモリ63に記憶される。つまり、メモリ63には、フレーム1、2、3…の順に受光データが記憶される。
【0047】
各フレームに含まれるライン32のデータは、フレーム1については32ライン目、フレーム2については31ライン目というように、フレーム毎に1ラインづつ上方にシフトされている。フレーム1からフレーム32までの受光データがメモリ63に記憶されると、ライン32の各画素について、時間重心Npeakの算出が行われる。
【0048】
ライン32についての演算が行われている間に、フレーム33の受光データがメモリ63に転送されて記憶される。図10に示すように、フレーム33の受光データは、メモリ63のフレーム32の次の領域に記憶される。フレーム33のデータがメモリ63に記憶されると、これらフレーム2からフレーム33までに含まれるライン33の各画素について、時間重心Npeakの算出が行われる。
【0049】
ライン33についての演算が行われている間に、フレーム34の受光データがメモリ63に転送されて記憶される。図11に示すように、フレーム34の受光データは、フレーム1の記憶されていた領域に上書きされる。この時点ではフレーム1のデータは処理済であるため、上書きにより消去しても差し支えないからである。フレーム34のデータがメモリ63に記憶されると、ライン34の各画素について、時間重心Npeakの算出が行われる。フレーム34の受光データについての処理が終わると、フレーム35の受光データがフレーム2の記憶されていた領域に上書きされる。
【0050】
このようにして、最終のラインであるライン231まで、合計200ライン分についての時間重心Npeakの算出が行われる。
上述のように、メモリ63に記憶された受光データのうち、順次不要になったデータの記憶された領域に新規の受光データを上書きして記憶するので、メモリ63の容量が低減される。
【0051】
表示用メモリ74に記憶された重心ipは、LCD21の画面に表示される。重心ipは、計測対象の物体Qの表面の位置に関連し、物体Qの表面の位置が3次元カメラ2に近い場合に重心ipの値が大きくなり、遠い場合に重心ipの値が小さくなる。したがって、重心ipを濃度データとして濃淡画像を表示させることにより距離分布を表現することができる。
【0052】
次に、3次元カメラ2及びホスト3の動作を計測の手順と合わせて説明する。上述したように、計測のサンプリング点数を200×262とする。すなわち、撮像面S2におけるスリットUの幅方向の画素数は262であり、実質的なフレーム数Nは231である。
【0053】
ユーザー(撮影者)は、LCD21が表示するカラーモニタ像を見ながら、カメラ位置と向きとを決め、画角を設定する。その際、必要に応じてズーミング操作を行う。3次元カメラ2ではカラーセンサ54に対する絞り調整は行われず、電子シャッタ機能により露出制御されたカラーモニタ像が表示される。これは、絞りを開放状態とすることによってイメージセンサ53の入射光量をできるだけ多くするためである。
【0054】
図12は3次元カメラ2におけるデータの流れを示す図、図13はホスト3における3次元位置演算の処理手順を示すフローチャート、図14は光学系の各点と物体Qとの関係を示す図である。
【0055】
ユーザーによる画角選択操作(ズーミング)に応じて、ズームユニット51のバリエータ部514の移動が行われる。また、フォーカシング部512の移動による手動又は自動のフォーカシングが行われる。フォーカシングの過程でおおよその対物間距離d0 が測定される。
【0056】
このような受光系のレンズ駆動に呼応して、投光側のバリエータレンズ422の移動量が図示しない演算回路によって算出され、算出結果に基づいてバリエータレンズ422の移動制御が行われる。
【0057】
システムコントローラ61は、レンズコントローラ58を介して、フォーカシングエンコーダ59Aの出力(繰り出し量Ed)及びズーミングエンコーダ60Aの出力(ズーム刻み値fp)を読み込む。システムコントローラ61の内部において、歪曲収差テーブルT1、主点位置テーブルT2、及び像距離テーブルT3が参照され、繰り出し量Ed及びズーム刻み値fpに対応した撮影条件データがホスト2へ出力される。ここでの撮影条件データは、歪曲収差パラメータ(レンズ歪み補正係数d1,d2)、前側主点位置FH、及び像距離bである。前側主点位置FHは、ズームユニット51の前側端点Fと前側主点Hとの距離で表される。前側端点Fは固定であるので、前側主点位置FHにより前側主点Hを特定することができる。
【0058】
システムコントローラ61は、半導体レーザ41の出力(レーザ強度)及びスリット光Uの偏向条件(走査開始角、走査終了角、偏向角速度)を算定する。
この算定方法を詳しく説明する。まず、おおよその対物間距離d0 に平面物体が存在するものとして、イメージセンサ53の中央で反射光を受光するように投射角設定を行う。以下で説明するレーザ強度の算定のためのパルス点灯は、この設定された投射角で行う。
【0059】
次にレーザ強度を算定する。レーザ強度の算定に際しては、人体を計測する場合があるので、安全性に対する配慮が不可欠である。まず、最小強度LDminでパルス点灯し、イメージセンサ53の出力を取り込む。取り込んだ信号〔Son(LDmin)〕と適正レベルStypとの比を算出し、仮のレーザ強度LD1を設定する。
【0060】
LD1=LDmin×Styp/MAX〔Son(LDmin)〕
続いてレーザ強度LD1で再びパルス点灯し、イメージセンサ53の出力を取り込む。取り込んだ信号〔Son(LD1)〕が適正レベルStyp又はそれに近い値であれば、LD1をレーザ強度LDsと決める。他の場合には、レーザ強度LD1とMAX〔Son(LD1)〕とを用いて仮のレーザ強度LD1を設定し、イメージセンサ53の出力と適正レベルStypとを比較する。イメージセンサ53の出力が許容範囲内の値となるまで、レーザ強度の仮設定と適否の確認とを繰り返す。なお、イメージセンサ53の出力の取り込みは、撮像面S2の全面を対象に行う。これは、AFによる受動的な距離算出では、スリット光Uの受光位置を高精度に推定することが難しいためである。イメージセンサ53におけるCCDの積分時間は1フィールド時間(例えば1/60秒)であり、実際の計測時における積分時間より長い。このため、パルス点灯を行うことにより、計測時と等価なセンサ出力を得る。
【0061】
次に、投射角と、レーザ強度が決定したときのスリット光Uの受光位置から、三角測量により対物間距離dを決定する。
最後に、決定された対物間距離dに基づいて、偏向条件を算出する。偏向条件の算定に際しては、対物間距離dの測距基準点である受光系の前側主点Hと投光の起点AとのZ方向のオフセットdoffを考慮する。また、走査方向の端部においても中央部と同様の計測可能距離範囲d’を確保するため、所定量(例えば8画素分)のオーバースキャンを行うようにする。走査開始角th1、走査終了角th2、偏向角速度ωは、次式で表される。
【0062】
β:撮像倍率(=d/実効焦点距離freal)
pv:画素ピッチ
np:撮像面S2のY方向の有効画素数
L:基線長
このようにして算出された条件で次に本発光に移り、物体Qの走査(スリット投影)が行われ、上述の出力処理回路62、メモリ63、及び重心演算回路73を経て出力用メモリ64に記憶されたデータD62がホスト2へ送られる。同時に、偏向条件(偏向制御データ)及びイメージセンサ53の仕様などを示す装置情報D10も、ホスト3へ送られる。表1は3次元カメラ2がホスト3へ送る主なデータをまとめたものである。
【0063】
【表1】
【0064】
図13のように、ホスト3においては、3次元位置演算処理が実行され、これによって200×200個のサンプリング点(画素)の3次元位置(座標X,Y,Z)が算定される。サンプリング点はカメラ視線(サンプリング点と前側主点Hとを結ぶ直線)とスリット面(サンプリング点を照射するスリット光Uの光軸面)との交点である。
【0065】
図13において、まず3次元カメラ2から送られてきたxiの総和Σxiが所定値を上回っているかどうかを判定する(#11)。xiが小さい場合、つまりスリット光成分の総和Σxiが所定の基準に満たない場合には誤差を多く含んでいるので、その画素については3次元位置の算出を実行しない。そして、その画素については「エラー」を示すデータを設定して記憶する(#17)。Σxiが所定値を上回っている場合には十分な精度が得られるので、3次元位置の算出を実行する。
【0066】
3次元位置の算出に先立って、スリット光Uの通過タイミングnopを算出する(#12)。通過タイミングnopは、i=1〜32について(Σi・xi)/(Σxi)を計算して重心ip(時間重心Npeak)を求め、これにライン番号を加算することによって算出される。
【0067】
すなわち、算出された重心ipは、その画素の出力が得られている32フレーム内のタイミングであるので、ライン番号を加えることによって走査開始からの通過タイミングnopに変換する。具体的には、ライン番号は、最初に算出されるライン32の画素については「32」、次のライン33については「33」となる。注目画素gのラインが1つ進む毎にライン番号は1つ増大する。しかし、これらの値は他の適当な値とすることが可能である。その理由は、3次元位置を算出する際に、係数である後述の(6)式におけるX軸周りの回転角(the1)及びX軸周りの角速度(the4)などをキャリブレーションにより適切に設定することができるからである。
【0068】
そして3次元位置算出を行う(#13)。算出された3次元位置は、その画素に対応するメモリ領域に記憶し(#14)、次の画素について同様の処理を行う(#16)。総ての画素についての処理が終わると終了する(#15でイエス)。
【0069】
次に、3次元位置の算出方法について説明する。
カメラ視線方程式は次の(1)式及び(2)式である。
(u−u0)=(xp)=(b/pu)×〔X/(Z−FH)〕 …(1)
(v−v0)=(yp)=(b/pv)×〔Y/(Z−FH)〕 …(2)
b:像距離
FH:前側主点位置
pu:撮像面における水平方向の画素ピッチ
pv:撮像面における垂直方向の画素ピッチ
u:撮像面における水平方向の画素位置
u0:撮像面における水平方向の中心画素位置
v:撮像面における垂直方向の画素位置
v0:撮像面における垂直方向の中心画素位置
スリット面方程式は(3)式である。
【0070】
【数1】
【0071】
幾何収差は画角に依存する。歪はほぼ中心画素を中心として対称に生じる。したがって、歪み量は中心画素からの距離の関数で表される。ここでは、距離の3次関数で近似する。2次の補正係数をd1、3次の補正係数をd2とする。補正後の画素位置u’,v’は(4)式及び(5)式で与えられる。
【0072】
上述の(1)式及び(2)式において、uに代えてu’を代入し、vに代えてv’を代入することにより、歪曲収差を考慮した3次元位置を求めることができる。なお、キャリブレーションについては、電子情報通信学会研究会資料PRU91-113[カメラの位置決めのいらない画像の幾何学的補正]小野寺・金谷、電子情報通信学会論文誌D-II vol. J74-D-II No.9 pp.1227-1235,'91/9 [光学系の3次元モデルに基づくレンジファインダの高精度キャリブレーション法]植芝・吉見・大島、などに詳しい開示がある。
【0073】
次に、選択回路75の構成及び動作の詳細について説明する。
図15は選択回路75の構成を示すブロック図である。
図15に示すように、選択回路75は、スイッチ回路751,756、メモリ752、積算回路753、判定値回路754、及び比較回路755から構成される。
【0074】
スイッチ回路751は、出力処理回路62から転送される第1フレームF(T/4)の受光データS(T/4)を受光データS11としてメモリ752に、第2フレームF(T)の受光データS(T)を受光データS21としてスイッチ回路756及び比較回路755に送る。
【0075】
メモリ752は、200×32Byteの記憶容量を持つ読み書き可能なメモリであり、受光データS11の全てを記憶する。
積算回路753は、受光データS11に対し4倍の値の受光データS12を算出し、スイッチ回路756に送る。
【0076】
判定値回路754は、受光データS21の飽和判定の基準となる判定値S23を比較回路755に設定する。判定値S23の値の具体例は「255」である。
【0077】
比較回路755は、受光データS21と判定値S23とを比較し、その比較結果に基づいた制御信号CP1を生成し、スイッチ回路756に送る。制御信号CP1は、スイッチ回路756を次のように制御する。
【0078】
すなわち、受光データS21が飽和していない場合には、受光データS21をスイッチ回路756を介してメモリ63へそのまま転送する〔図17(D)における実線部分参照〕。これと異なり、受光データS21が飽和している場合には、受光データS12、つまり第1フレームF(T/4)の受光データS(T/4)を4倍した値をスイッチ回路756を介してメモリ63へ転送する〔図17(D)における破線部分参照〕。
【0079】
このようにして、第2フレームF(T)の全ての画素についての受光データS(T)は、判定値「255」に達しているか否かによって飽和しているか否かが判定される。受光データS(T)が飽和していない場合には、その受光データS(T)を用い、受光データS(T)が飽和している場合には、受光データS(T/4)の4倍の大きさの信号が、8ビット又は10ビットの受光データS30としてメモリ63に送られることになる。
【0080】
つまり、イメージセンサ53から得られる受光データをノイズの影響を受けにくい大きな値として読み出すことができる。
このため、受光データS30に対して重心演算を行い3次元画像を求めた場合に、精度のよい3次元画像を求めることができる。
【0081】
なお、上に述べた実施形態では、蓄積時間をTとT/4との2段階に設定したが、さらに多くの段階の蓄積時間を設定してもよい。例えば、T,T/2,T/4,T/8、又はT,T/3,T/9など、3段階以上の蓄積時間を設定することが可能である。このように設定された蓄積時間によって得られた信号のうち、最も蓄積時間の長い信号、換言すれば出力レベルの高い信号を選択するようにすればよい。
【0082】
次に、図16乃至19を参照して、受光データS(T),S(T/4)に具体的な数値を用いて、選択回路75から受光データS30が出力され、受光データS30に対して時間重心演算及び空間重心演算を行う場合の処理について説明する。
【0083】
初めに、時間重心演算を行う場合の処理について説明する。
図16は有効受光領域Aeにおける互いに異なる注目画素g1,g2を示す図、図17は注目画素g1,g2に対し電荷の蓄積時間がT/4,Tであるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図である。
【0084】
図17(A)は注目画素g1に対し電荷の蓄積時間がT/4であるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図、図17(B)は注目画素g1に対し電荷の蓄積時間がTであるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図、図17(C)は注目画素g2に対し電荷の蓄積時間がT/4であるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図、図17(D)は注目画素g2に対し電荷の蓄積時間がTであるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図である。
【0085】
図17(A)に示すように、注目画素g1に対し蓄積時間がT/4後に読出しを行った受光データのピーク値が30の場合、つまり、ピーク値が受光データの飽和値「255」に対してかなり小さい場合に、注目画素g1について時間重心演算を行うと、得られる演算結果は精度が悪いものとなる。注目画素g1のSN比が悪いからである。
【0086】
なお、時間重心Npeakを演算するに当たっては、各画素毎に、所定期間内におけるイメージセンサ53からの出力(x)を一定の周期でサンプリングし、サンプリング値である出力(x)とサンプリングのタイミング(i)との積(x・i)の総計Σ(x・i)、及び出力(x)の総計Σ(x)を算出する。これらから、時間重心Npeak=Σ(x・i)/Σ(x)を算出する。
【0087】
一方、図17(B)に示すように、注目画素g1の前回の読出し(電荷の蓄積時間T/4)に対して、4倍の蓄積時間であるT後に読出しを行った受光データは、ピーク値が128になる。なお、この「128」は30の約4倍である。
【0088】
このように、蓄積時間がT後に読出しを行った受光データS21は、蓄積時間がT/4後に読出しを行った受光データS11よりもSN比が大きくなる。
また、図17(C)に示すように、注目画素g2に対し蓄積時間がT/4後に読出しを行った受光データのピーク値が110の場合には、注目画素g1について行ったのと同じ方法、つまり注目画素g2の前回の読出し(電荷の蓄積時間T/4)に対して4倍の蓄積時間のT後に読出しを行った受光データS21を用いて時間重心演算を行う方法をそのまま適用することはできない。そのまま適用した場合には、図17(D)の実線に示すように、区間SRでは複数のフレームに対して受光データS21が飽和してしまうからである。
【0089】
この場合には、区間SRにおける受光データS21の値として受光データS11に4を乗じた値S12を用いる。こうすることで、注目画素g2についてもSN比が大きい受光データを得ることができる。
【0090】
有効フレームAe内の任意の注目画素について上述した処理を行うことにより、得られる時間重心演算の結果は、ノイズ信号の影響が小さいものとなり、精度のよい3次元画像を求めることができる。
【0091】
次に、空間重心演算を行う場合の処理について説明する。
図18は有効受光領域Aeにおける互いに異なる注目画素列L1,L2を示す図、図19は注目画素列L1,L2に対し電荷の蓄積時間がそれぞれT/4,Tであるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図である。
【0092】
図19(A)は注目画素列L1に対し電荷の蓄積時間がT/4であるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図、図19(B)は注目画素列L1に対し電荷の蓄積時間がTであるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図、図19(C)は注目画素列L2に対し電荷の蓄積時間がT/4であるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図、図19(D)は注目画素列L2に対し電荷の蓄積時間がTであるときの各フレームにおける受光データの分布の一例を示す図である。
【0093】
図19(A)に示すように、注目画素列L1に対し電荷の蓄積時間がT/4であるときの各フレームにおける受光データのピーク値が30の場合、つまり、受光データの飽和値「255」に対してかなり小さい場合に、注目画素列L1について空間重心演算を行うと、その演算結果は精度が悪いもとなる。注目画素列L1のSN比が悪いからである。
【0094】
なお、空間重心Mpeakを演算するに当たっては、イメージセンサ53からの出力(x)を一定の周期でサンプリングする。各サンプリングのタイミングに対応して、所定の受光幅内の画素について、その位置(i)と出力(x)との積(x・i)の総計Σ(x・i)、及び出力(x)の総計Σ(x)を算出する。これらから、空間重心Mpeak=Σ(x・i)/Σ(x)を算出する。
【0095】
この場合には、上述した時間重心演算のところで説明した注目画素g1,g2をそれぞれ注目画素列L1,L2と読み変えることにより、得られる空間重心演算の結果は、ノイズ信号の影響が小さいものとなり、精度のよい3次元画像を求めることができることになる。
【0096】
上述の実施形態において、イメージセンサ53から受光データS(T/4)が1フレーム分だけ第1フレームF(T/4)として、受光データS(T)が1フレーム分だけ第2フレームF(T)として別々に出力されるが、各フレーム分の受光データを画素毎に順次記憶していくためのバッファメモリをイメージセンサ53とは別個に設け、そのバッファメモリから各フレームの受光データをまとめて出力するように構成してもよい。
【0097】
上述の実施形態において、電荷の蓄積時間がT/4である受光データS(T/4)と、その4倍の時間Tである受光データS(T)とを用いているが、受光データS(T)に代えて、受光データS(T/4)に対して電荷の蓄積時間が例えば2倍、3倍、6倍、8倍などの受光データを用いることも可能である。それらの場合に、受光データS11に対してそれらの倍率に応じた値の受光データS12を算出するために、データ変換テーブルを用いてもよい。
【0098】
上述の実施形態において、3次元カメラ2、ホスト3、又は計測システム1の全体又は各部の構成、処理内容又は順序、処理タイミングなどは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。
【0099】
【発明の効果】
本発明によると、撮像デバイスからの飽和していない出力を得ることができる。請求項3及び請求項4の発明によると、撮像デバイスからSN比の良好な出力を得ることができる。
【0100】
したがって、MOS型イメージセンサなどの非破壊読出しが可能なイメージセンサから出力される受光データのSN比を向上させて精度のよい3次元画像を求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る計測システムの構成図である。
【図2】3次元カメラの外観を示す図である。
【図3】3次元カメラの機能構成を示すブロック図である。
【図4】投光レンズ系の構成を示す模式図である。
【図5】計測システムにおける3次元位置の算出の原理図である。
【図6】イメージセンサの読出し範囲を示す図である。
【図7】イメージセンサの構成の模式図である。
【図8】イメージセンサの撮像面におけるラインとフレームとの関係を示す図である。
【図9】メモリにおける各フレームの受光データの記憶状態を示す図である。
【図10】メモリにおける各フレームの受光データの記憶状態を示す図である。
【図11】メモリにおける各フレームの受光データの記憶状態を示す図である。
【図12】3次元カメラにおけるデータの流れを示す図である。
【図13】ホストにおける3次元位置演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】光学系の各点と物体との関係を示す図である。
【図15】選択回路の構成を示すブロック図である。
【図16】有効受光領域における注目画素を示す図である。
【図17】蓄積時間がT/4及びTであるときの受光データの分布の例を示す図である。
【図18】有効受光領域における注目画素列を示す図である。
【図19】蓄積時間がT/4及びTであるときの受光データの分布の例を示す図である。
【符号の説明】
2 3次元カメラ(3次元入力装置)
40 光学系(投光手段)
43 ガルバノミラー(走査手段)
53 イメージセンサ(撮像デバイス)
61 システムコントローラ(制御手段)
75 選択回路(選択手段、演算手段)
Ae 有効受光領域(有効領域)
S2 撮像面
U スリット光(検出光)
Q 物体
S(T/4) 受光データ(第1光電変換信号)
S(T) 受光データ(第2光電変換信号)
Claims (9)
- 物体までの距離に関する情報を取得することにより前記物体の形状を測定するために用いられる3次元入力装置であって、
物体に検出光を照射する投光手段と、
前記検出光の照射方向を偏向させて前記物体を光学的に走査するための走査手段と、
2次元の撮像面を有し前記物体で反射した前記検出光を受光して光電変換する撮像デバイスと、
前記撮像デバイスを、各画素について電荷の蓄積時間が互いに異なる複数の光電変換信号を出力するように制御する制御手段と、
光電変換信号の飽和の判定を行い、前記複数の光電変換信号のうち、飽和していない光電変換信号を選択する選択手段と、
を有することを特徴とする3次元入力装置。 - 前記制御手段は、第1の蓄積時間が経過すると、前記撮像デバイスに対して非破壊読み出しを行うとともに、さらに電荷蓄積を第2の蓄積時間まで継続するように制御する、
請求項1記載の3次元入力装置。 - 前記選択手段は、飽和していない光電変換信号のうち、最も蓄積時間の長い光電変換信号を選択する、
請求項1又は請求項2記載の3次元入力装置。 - 物体までの距離に関する情報を取得することにより前記物体の形状を測定するために用いられる3次元入力装置であって、
物体に検出光を照射する投光手段と、
前記検出光の照射方向を偏向させて前記物体を光学的に走査するための走査手段と、
2次元の撮像面を有し前記物体で反射した前記検出光を受光して光電変換する撮像デバイスと、
前記撮像デバイスを、各画素について、電荷の蓄積時間が所定の時間T/nである第1光電変換信号と、電荷の蓄積時間が前記第1光電変換信号のn倍の時間Tである第2光電変換信号とを出力するように制御する制御手段と、
前記第2光電変換信号が飽和しているか否かの判定を行い、前記第2光電変換信号が飽和していない場合には前記第2光電変換信号を用い、前記第2光電変換信号が飽和している場合には前記第1光電変換信号のn倍の大きさの信号を用いて演算を行う演算手段と、
を有することを特徴とする3次元入力装置。 - 物体までの距離に関する情報を取得することにより前記物体の形状を測定するために用いられる3次元入力装置であって、
物体に検出光を照射する投光手段と、
前記検出光の照射方向を偏向させて前記物体を光学的に走査するための走査手段と、
2次元の撮像面を有し前記物体で反射した前記検出光を受光して光電変換する撮像デバイスと、
前記撮像デバイスを、各画素について電荷の蓄積時間が互いに異なる複数の光電変換信号を出力するように制御する制御手段と、
光電変換信号の飽和の判定を行い、前記複数の光電変換信号のうち、飽和していない光電変換信号を選択する選択手段と、
を有しており、
選択された光電変換信号に基づいて物体までの距離に関する情報を取得し、前記物体の形状を測定する
ことを特徴とする3次元入力装置。 - 前記制御手段は、第1の蓄積時間が経過すると、前記撮像デバイスに対して非破壊読み出しを行うとともに、さらに電荷蓄積を第2の蓄積時間まで継続するように制御する、
請求項5記載の3次元入力装置。 - 前記選択手段は、飽和していない光電変換信号のうち、最も蓄積時間の長い光電変換信号を選択する、
請求項5又は請求項6記載の3次元入力装置。 - 物体までの距離に関する情報を取得することにより前記物体の形状を測定するために用いられる3次元入力装置であって、
物体に検出光を照射する投光手段と、
前記検出光の照射方向を偏向させて前記物体を光学的に走査するための走査手段と、
2次元の撮像面を有し前記物体で反射した前記検出光を受光して光電変換する撮像デバイスと、
前記撮像デバイスを、各画素について、電荷の蓄積時間が所定の時間T/nである第1光電変換信号と、電荷の蓄積時間が前記第1光電変換信号のn倍の時間Tである第2光電変換信号とを出力するように制御する制御手段と、
前記第2光電変換信号が飽和しているか否かの判定を行い、前記第2光電変換信号が飽和していない場合には前記第2光電変換信号を用い、前記第2光電変換信号が飽和している場合には前記第1光電変換信号のn倍の大きさの信号を用いて、物体までの距離に関する情報を取得して物体の形状を特定する演算を行う演算手段と、
を有することを特徴とする3次元入力装置。 - 物体までの距離に関する情報を取得することにより前記物体の形状を測定するために用いられる3次元入力装置であって、
物体に検出光を照射する投光手段と、
前記検出光の照射方向を偏向させて前記物体を光学的に走査するための走査手段と、
2次元の撮像面を有し前記物体で反射した前記検出光を受光して光電変換する撮像デバイスと、
前記撮像デバイスを、各画素について、電荷の蓄積時間が所定の時間T/nである第1光電変換信号と、電荷の蓄積時間が前記第1光電変換信号のn倍の時間Tである第2光電変換信号とを出力するように制御する制御手段と、
前記第1光電変換信号のn倍の大きさの信号を生成する信号生成手段と、
前記第2光電変換信号が飽和していない場合には前記第2光電変換信号を出力し、前記第2光電変換信号が飽和している場合には前記第1光電変換信号のn倍の大きさの信号を出力する信号選択手段と、
前記信号選択手段の出力する信号を用いて物体までの距離に関する情報を取得するための演算を行う演算手段と、
を有することを特徴とする3次元入力装置。
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