JP3859555B2 - 自動分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液面検知センサを備えて成る試薬分注プローブを有する自動分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動分析装置に関する技術としては、例えば特公平1−47744号公報や特開平9−127136号公報などに教示されたものがあり、所定の試薬を用いて各種の分析に利用されている。装置に試薬をセットする際にその試薬の状態が不良となっていることがあるが、これは、その試薬をこぼしてしまったり、不良な試薬を追加することにより生じる。更には、試薬を煩雑に扱うことにより泡立ててしまうことによっても生じる。
【0003】
上述した試薬の状態変化のうち「試薬量の変化」については、次のような措置方法により、使用するテスト数を再計算する手段が従来からとられてきた。
▲1▼ 試薬に添付されたバーコード等により使用したテスト数を管理する事。
【0004】
▲2▼ 予め分注プローブの液面検知機構を利用し、分注プローブの下降量から、試薬ボトル内の残液量を求める事(参照:特公平1−47744号公報の「自動分析装置」)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の措置方法だけでは、不良な試薬を追加したことによる状態変化までを知り得るには不十分であった。
【0006】
さらに、「泡立ちによる試薬の状態変化」については、液面検知機構を利用した試薬残量検出において、液面検知の誤作動によって誤った試薬の残液量を算出してしまうなどの不具合を生じる場合もあった。
【0007】
よって、分析を開始する前に、試薬が前回使用時と同等の状態(但し手を加えられていないことを含む)である事、そして、泡などの分注動作に影響を与える要因が無い事、をそれぞれ予め検出する機能が必要とされていた。
【0008】
通常、試薬の状態変化は分析途中にも生じる。この不具合は、試薬の攪拌や、試薬格納部の分析動作に伴う移動時の振動などにより、試薬が泡立ってしまうことが主な状態変化の要因である。この状態変化は、分注時の液面検知の誤作動に大きく関与するものである。
【0009】
上記の不具合を解決するためには、分注時の液面検知機構が検知した時の分注プローブの下降量をモニタリングし、下降量が前回分注時と比較して大きく異なる位置に在るようであれば、液面検知誤作動による分注不良だと判定する方法が提案されている(参照:特開平9−127136号公報の「自動分析装置」)。しかし、この方法だけでは泡などの液面検知不良要因がある限り、分析測定が完了しないという問題点があり、泡などの液面検知不良要因があっても正常な分注が実施されることが望まれていた。
【0010】
そこで本発明は上述した現状に鑑みて成されたものであり、その第1の目的は、(例えば、分析開始前に、セットした試薬に泡や試薬の継ぎ足し等による不良要因の有無を確認し、オペレータに試薬状態の再確認を促すことにより)、測定データ不良の回避、試薬や測定時間の浪費を省くことのできる自動分析装置を提供することにある。
【0011】
また第2の目的は、分注時に発生する試薬に生じる泡による不良要因が生じても、分注不良なく試薬、試料を分注でき、測定データ不良の回避、試薬や測定時間の浪費を省くことのできる自動分析装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、液面検知センサを備えた試薬分注プローブを具備し、前記試薬分注プローブが試薬を分注する際に、前記試薬分注プローブが試薬を前記液面検知センサにより検知する地点まで前記試薬分注プローブを移動させ、その地点から分注動作を開始するように制御し、前記試薬分注プローブの移動に際し、分注プローブの基準位置から液面検知センサが検知するまでの移動距離を求め、この移動距離を記憶しておく機能を有する自動分析装置において、分析動作中に、該当試薬の前回分注量に応じた液面の下降量を計算し記憶しておく機能を有し、該当試薬の分注の際には、前記試薬分注プローブの移動距離における前回値を確認し、前記試薬分注プローブの移動距離が前回値に到達する前に、前記液面検知センサが液面を検知した場合はその検知信号を無視し、前記試薬分注プローブの移動距離を、前記移動距離の前回値と、前回分注量に応じた液面の下降量とを合わせた距離として該試薬分注プローブを移動させ、その地点から分注動作を開始するように制御する機能を更に有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明の(第1、第2)実施形態に共通する自動分析装置の構成とその動作および作用について説明する。
【0016】
自動分析装置は主に、試薬格納部、サンプル収納部および反応部に分かれて構成されており、上記反応部内に在る所定の反応容器に、上記試薬格納部内の所定の試薬と、上記サンプル収納部内の所定のサンプルとを分注し、各液を反応させた後にその反応生成物を検出するものである。
【0017】
図1には、本発明の自動分析装置の概略構成をブロック構成図で示している。この自動分析装置は、液面検知部6を備えた分注プローブ1と、情報コード(例えばバーコード10等)が付与された試薬容器(ボトル)8からそのバーコード10を読み取る読取装置(バーコードリーダ9)と、分注アーム2を介して分注プローブ1を駆動するパルスモータ3と、後で詳しく述べる記憶部4および判定部5と、これらを駆使して試薬分注作業を所定の制御プログラムに従って制御する分注制御部7と、を有して構成されている。
【0018】
上記試薬格納部に収納されている試薬容器8には、その試薬情報(例えば試薬項目、有効期限、ロットNo.およびボトルNo.等)が記録されたバーコード10が図示の如く貼付けシールなどで付与されており、その情報コードを光学的又は磁気的に読み取れる位置にバーコードリーダ9)が配設されている。
【0019】
記憶部4は、収納された試薬の情報コードの読取結果、即ちその試薬がもっている情報を、読み取った時間と共に記憶するため設けられており、これにより、その試薬がいつセットされたか、有効期限内か、何というテストが実施されたか、等々の各種情報を常に参照可能になっている。
【0020】
この自動分析装置の各部の動作とその役割機能について詳しく説明する。
【0021】
分注プローブ(分注ノズル)1の移動距離を検出する手段は次のように行なう。試液の分注(サンプル分注)において、分注アーム2に固定された分注プローブ1が、分注アーム2の駆動により分注位置に位置される。この駆動はパルスモータ3により行なわれ、駆動量はそのパルスモータ3のパルス数で検知できる。即ち、その分注プローブ1の液面検知するまでの移動量は、分注アーム2を駆動させるパルスモータ3のパルス数そのものである。
【0022】
液面検知の方法には以下のものが挙げられる。
【0023】
1.プローブが静電容量の変化を検知する方法;
2.プローブに電極を設けて電気的導通を検知する方法;
3.プローブの配管途中に圧力検知センサを設けて圧力の変化を検知する方法;
尚、この液面検知では、プローブを試薬に必要以上は接しないように制御し、プローブの洗浄効果の向上、洗浄方法の簡略化およびコスト低減を図る。
【0024】
試薬容器8の認識の手段としてここでは、試薬容器8に試薬情報や識別情報を提供するバーコード10が付けられ、バーコードリーダ9がその情報をスキャンして読み取る。その試薬の液面高さは、分注アーム2の駆動パルス数に換算でき、その試薬情報に基づいて呼び出し参照できるようになっている。
【0025】
ただし、試薬が新しい試薬であると認識された場合は、前回値情報も無いため、試薬容量に応じたデフォルト値を予め記憶部4に記憶させておき、その値を呼び出し参照できる。
【0026】
記憶部4には、上記試薬情報や、分注アーム2が駆動したパルスモータ3のパルス数などの情報が記憶される。
【0027】
このパルス数などの値は、各試薬の試薬情報に関連付けされて記憶され、分注が正常になされる都度にその値は新しく測定された値に更新されていく。分析終了後は最後の分注がなされた時点の数値が記憶される。
【0028】
また、分注量に基づいた試薬分注後の試薬の液面下降量は、使用する試薬容器(試薬ボトル)8の形状がわかっているので、分注動作完了後に、その分注した量に基づき、試薬や試料の液面高さがどのくらい下降するかを予め計算により求めることができる。その数値を予め記憶部4に記憶させておく。
【0029】
新規試薬セット時の分注アーム2の駆動パルス数および試薬残テスト数に応じた分注アーム2の駆動パルス数も同様である。即ち、新規試薬は、予め試薬ボトル8と内容量が明らかであるから試薬の液面高さが予め計算により求められるため、分注アーム2の液面までの駆動パルス数も予め求めることができ、その値を新規試薬用として記憶しておく。
【0030】
さらに、使用する試薬ボトル8の形状はわかっているため、完了した分注テスト数(又は、残テスト数)に応じたあるべき試薬残量までの試薬の液面高さまでの下降量は予め計算により求めることができる。その数値を予め記憶部4に同様に記憶しておく。
【0031】
判定部5は、分注プローブ1が液面検知した際に得られた上記のパルス数と、記憶部4のその試薬での前回値とを、予め設定された判定ロジックにより比較判定する。また、分析前と分析中とで各々異なる判定ロジックをもち、その判定ロジックに従った制御を実行する。
【0032】
以上の如き各部の役割機能により、次のような作用効果が生まれる。
【0033】
まず、所望する分析を開始する前に、試薬が前回使用時と同等の状態(手を加えられていないことを含む)、そして、泡などの分注動作に影響を与える要因を分注ノズルの液面検知機構を用いて予め検出する機能により、データ不良の発生を防ぎ、それに伴う検査工数、コストの削減、誤ったデータを提示することによる医療事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0034】
また、分析中にも試薬の状態の変化をモニタリングし、分注時に発生する試薬に生じる泡による不良要因が生じても、分注不良なく試薬、試料を分注でき、試薬や検査工数の浪費を省くことを可能にすることができる。
【0035】
続いて、分析のための試薬分注の実際について説明する。
【0036】
未開封の試薬は常に一定量の試薬液が封入されている。例えば1テスト当たり50μL、200テスト用の試薬には、試薬容器(試薬ボトル)8のデッドボリュームと合わせ、13mLが封入されている。試薬ボトルは予め定められた形状のボトルであり、13mL入れた時の液面高さは計算より求めることができる。そして例えば直径25mmの円筒状の試薬ボトルであれば、液面高さはそのボトル底より26.5mmに位置する。
【0037】
上述の如く、上記試薬ボトルからは50μLずつ液が採取されるため、液面高さは1テスト当たり0.1mm下がっていくことになる。
【0038】
試薬の分注をするための分注ノズルを有する分注プローブ1は、前述の説明の如く、その分注ノズルが装着した分注アーム2をパルスモータ3で駆動させるが、その駆動量は常にモニタリングし、記憶される。ここで云う駆動量とは、分注アーム2の基準位置から、液面検知手段(液面検知部6)により試薬液面に分注ノズルが接したことを検知し、分注アーム2の駆動が停止された位置までの駆動量である。その数値は、前述した試薬容器(試薬ボトル)8の情報と関連付けて記憶される。即ち、各試薬ボトル毎に分注時に駆動した分注アーム2の駆動量が記憶される。
【0039】
分注アーム2の基準位置からその試薬ボトルの底までの距離が800パルス(1パルス=0.1mm)と仮定すると、新規の試薬には前述の如く必ず13mL(26.5mm)の試薬が入っているため、分注アーム2の駆動量は535パルスとなるはずである。さらに、1テスト分注当たり1パルスずつ分注アーム2の駆動量は増え、100テスト分注後には635パルス、200テスト分注後には735パルスとなるはずである。
【0040】
すなわち、上記の液高さ位置から求められる分注アーム2の駆動量と、実際の分注アーム2との駆動量とを比較することで、正確な位置に分注ノズルが位置しているかを判定することで可能となる。実際には試薬ボトル形状のばらつき、試薬分注量のばらつき、メカニカル駆動のばらつきを考慮すると、上記パルス値は最大30パルスのずれがあり得る。したがって、計算値に対し、実測値が±30パルスを超える値を示した場合は「異常」と判断し得る。
【0041】
さらには、前テストにおける分注アーム2の駆動量を基準に、本分注における分注位置が正しいか否かを判定することもできる。
【0042】
先に例示した通り、1テスト分注当たり1パルス駆動量は増える。したがって、前回駆動量に対して本分注時の駆動量は+1パルスとなっているはずである。実際にはメカニカル駆動のばらつきが最大10パルスあるため、前回値に対して+11,−9パルスの範囲を外れる場合は異常と判断し得る。
【0043】
よって、上記の2つを組み合わせ、新規ボトルに対してはデフォルトで記憶した値に対しての判定を行ない、次テスト以降は前回値を基準として判定したほうが、より誤差が少なく正確に分注ノズルが位置しているか否かの判定が可能となることがわかる。
【0044】
以下、前述した構成の自動分析装置を用いて実施する、(A)試薬セット時の試薬状態検知、および、(B)分析途中での試薬状態検知のそれぞれの実施形態を具体的に複数の実施例を挙げながら順次説明する。
【0045】
(第1実施形態):(A)試薬セット時の試薬状態検知;
(実施例A1)
図2には、第1実施形態の実施例A1における、(A)試薬セット時の試薬状態検知に係わる分析開始動作からの処理手順をフローチャートで表わしており、次のような順序で実施される。
【0046】
(1) 試薬セットに伴い試薬容器8に添付されたバーコード(試薬情報コード)10を読み、その試薬が新規のものか以前に使用されたものかを記憶部4に問い合わせ(S1)、何れであるかを判定する(S2)。
【0047】
(2) 新規と判定された場合は、分注アーム2の基準位置からの距離が535パルスのデフォルト値が呼び出される(S3)。一方、以前に使用されたものである場合は、記憶部4に記憶されている▲1▼ 前回分析時の最終テストにおける液面検知時の分注アーム2の基準位置からの距離の値、又は、▲2▼ 試薬ボトル開封時の初期試薬量から前回分注時までの総試薬分注量を差し引いた試薬残量から求まる基準値位置からの距離の値、のうちの1つが前回値として呼び出される(S7、S8)。
【0048】
尚、この2つの前回値のうち、試薬残量が最少となるような基準値を採用してもよい。この理由は、試薬の泡の影響のほかに試薬の蒸発等を考慮すると、試薬残量が最も少なくなる基準値が真の値に最も近いと推定する事もできるからである。また、この他の論理で採用する基準値を決定する事ができる事は言うまでもない。
【0049】
(3) 分析開始前動作で、各試薬に対し、分注アーム2の分注動作(但し試薬液の吸引は行なわない)を実施し、分注アーム2が液面検知信号を得て停止した基準位置からの距離を計測する(S4、S9)。
【0050】
(4) 上記(2)での値と上記(3)での測定値とが判定部5により比較判定される。新規試薬の場合の判定式は、±30パルス以内であれば正常、それ以上であると、異常(例えば試薬が追加されたか、試薬をこぼしてしまったか、著しい蒸発があったか、或いは、セット時に泡が発生し液面検知部6が誤検知してしまった等)と判定される(S5)。一方、以前に使用された試薬の場合の判定式は、−9〜+11パルス以内であれば正常、それ以外であると異常(例えば試薬が追加されたか、試薬をこぼしてしまったか、著しい蒸発があったか、或いは、セット時に泡が発生し液面検知が誤検知してしまった等)と判定される(S10)。
【0051】
(5) 異常と判定された場合は、試薬が異常である可能性を示す警報をオペレータに知らせる。例えば、操作画面上に警告文を表示するか、ブザー音などで知らせる。
【0052】
さらにもう1つの実施例について、図3を参照しながら説明する。
【0053】
(実施例A2)
図3には、第1実施形態の実施例A2における、(A)試薬セット時の試薬状態検知に係わる、分析開始動作からの処理手順をフローチャートで表わしている。前述の実施例A1において、上記▲1▼、▲2▼に対応する処理操作が以下の通り実行される。すなわち、試薬情報コードより、その試薬の残テスト数を記憶部4に問合せをする(S21)。もし新規の試薬であれば200テストであり、例えば過去に50テスト使用された試薬であれば150テストである。
【0054】
前述のとおり、ボトル容量は既知なため、試薬残量xが求まる(S22)。
【0055】
その試薬残量xより、試薬の液面高さが計算によって、その時の分注アーム2の基準位置からの距離の値が求められる(S23)。例えばもし新規の試薬であれば535パルスであり、試薬残量が150テストであれば485パルスとなる。この試薬残量より求められる分注アーム2の基準位置からの距離の値(パルス数)に対し、続いて、上記(3)以降に対応する判定処理を同様に実行する(S24,S25)。
【0056】
このように第1実施形態として2つ例示した如く、この自動分析装置は、分析開始前(試薬セット時)において、基準位置からその試薬液面まで分注プローブの移動距離を測定し、予め記憶されていたその試薬までの距離もしくは当該試薬ボトル内の試薬残量から計算した距離の値とを比較して、セットされた試薬の初期状態の異常を判断することができる。
【0057】
その結果、例えば、分析開始前に、セットした試薬に泡や試薬の継ぎ足し等による不良要因の有無を確認し、オペレータに試薬状態の再確認を促すことができ、よって、測定データ不良の回避、試薬や測定時間の浪費を省くことが可能となる。
【0058】
(第2実施形態):(B)分析途中での試薬状態検知;
次に、本発明の第2実施形態について実施例を3つ挙げ説明する。但し、装置構成は図1に例示したものと等価であるものとする。
【0059】
(実施例B1)
図4で、第2実施形態の実施例B1における、(B)試薬ボトルを始めてセットした後の分析途中での試薬状態検知に係わる処理を説明する。これは、分析開始動作からの処理手順をフローチャートで表わしており、次の順序で実施される。
【0060】
(1) 試薬の分注を行なう際、その試薬の、▲1▼ 記憶部4に記憶されている前回テストにおける液面検知時の分注アーム2の基準位置からの距離の値、又は、▲2▼試薬セット時の初期試薬量から分注された総試薬分注量を差し引いた量から算出される基準位置、(図4のS32の※2では▲1▼と▲3▼)の内の1つを基準値とする。尚、基準値選択の基準としてこれら2つの基準値を基準とした場合の試薬残量が最小値となるような基準値を採用する事もできる(S31〜S33)。ここで最小値を採用する理由は、例えば泡以外に、試薬の蒸発やその試薬をこぼしてしまった場合を考慮した時、最小値が最も真の値に近いと推定する事もできるからである。また、この他の論理で採用する基準値を決定する事ができる事は言うまでもない。
【0061】
(2) 分注動作で各試薬に対し、分注アーム2の分注動作を実施し、分注アーム2が液面検知信号を得て停止した基準位置からの距離を計測する(S34)。
【0062】
(3) 上記▲1▼の値と上記▲2▼の測定値との差が、判定部5により範囲比較判定される(S35)。もし上記▲1▼の値が試薬セット時の試薬状態検知で測定された値であった場合、±10パルス以内であれば「正常」と判定されるが(S36)、それ以外である場合は「異常」(例えば分析途中に泡が発生し液面検知が誤検知してしまったか、又は著しい蒸発があった等)と判定される。
【0063】
なお、上記▲1▼の値が前回値である場合の判定式は、−9〜+11パルス以内であれば正常、それ以外であると異常(分析途中に泡が発生し液面検知が誤検知してしまったか、著しい蒸発があった等)と判定される。
【0064】
(4) 異常と判定された場合は、その検知信号により次の動作に移る制御を行わず、分析動作開始後の第1テストであるか否かを判断し(S37)、そうであれば後述するS40へ移行するが、否であれば次のように実施される。
【0065】
(5) 分析途中の液面検知である場合は、上述の基準値cである▲1▼もしくは▲2▼に対して前回分注分の1パルス多い値としての(c+1)パルスだけアームを移動させる(S38)。その値が新しい基準値cとして記憶され(S39)、その後、分注動作に入る。
【0066】
(実施例B2)
図4で、第2実施形態の実施例B2における、(B)試薬ボトル再セット後の分析途中での試薬状態検知に係わる処理を説明する。これは、分析開始動作からの処理手順をフローチャートで表わしており、次の順序で実施される。
【0067】
(1) 試薬の分注を行なう際、その試薬の、▲1▼ 記憶部4に記憶されている前回テストにおける分注アーム2の基準位置からの距離の値、もしくは、▲2▼ 試薬再セット時の試薬液面検知で測定された基準位置、又は、▲3▼ 最初の試薬セット時の初期試薬量から前回分注時まで分注された総試薬量を差し引いた量から算出される基準位置、の内の1つを基準値とする。試薬初回セット時には、上記▲1▼の値と上記▲3▼の値のみが適用され、再セット時には、上記▲1▼〜▲3▼の値から選択可能である。もしくは、これら3つの基準値を基準とした場合の試薬残量が最小値となるような基準値を採用してもよい(S31〜S33)。ここで最小値を採用する理由は、例えば泡以外に、試薬の蒸発やその試薬をこぼしてしまった場合を考慮した時、最小値が最も真の値に近いと推定する事もできるからである。また、この他の論理で採用する基準値を決定する事ができる事は言うまでもない。
【0068】
尚、試薬の初回セット時には、上記▲1▼の値と上記▲3▼の値のみが適用され、再セット時には、上記▲1▼〜▲3▼の値の基準値から選択可能である。
【0069】
(2) 分注動作で各試薬に対し、分注アーム2の分注動作を実施し、分注アーム2が液面検知信号を得て停止した基準位置からの距離を計測する(S34)。
【0070】
(3) 上記▲1▼の値と上記▲2▼の測定値との差が判定部5により範囲比較判定される(S35)。もし上記▲1▼の値が試薬セット時の試薬状態検知で測定された値であった場合、±10パルス以内であれば「正常」と判定されるが(S36)、それ以上である場合は「異常」(例えば分析途中に泡が発生し液面検知が誤検知してしまったか、著しい蒸発があった等)と判定される。
【0071】
なお、上記▲1▼の値が前回値の場合の判定式は、−9〜+11パルス以内であれば正常、それ以外であると異常(例えば分析途中に泡が発生し液面検知が誤検知してしまったか、著しい蒸発があった等)と判定される。
【0072】
(4) 異常と判定された場合は、その検知信号により次の動作に移る制御を行わず、分析動作開始後の第1テストであるか否かを判断し(S37)、分析動作開始後の第1テストである場合には、▲1▼ 試薬セット時の液面検知値が存在しなく、且つ新規の試薬であるか否かの判定で(S41)、新規の試薬である場合は、デフォルト値(例えば538パルス)分だけアームを移動させる(S42)。また、▲2▼ 試薬セット時の液面検知値がなく、且つ試薬ボトルが再セットされたものである場合には、前回分注時の基準値cに前回吸引量の1パルス分を加えた値(c+1)パルス分だけアームを移動させる(S38)。更に、▲3▼ 試薬セット時の液面検知値Dがある場合は、その値Dパルス分だけアームを移動させる(S44)。
【0073】
また、異常と判断された場合において、そのテストが分析動作開始後の第2テスト以降である場合には、前回分注時の基準位置cが参照され、このcに前回吸引分1パルスを加えた値(c+1)パルス分だけアームを移動させる。
【0074】
(5) 尚、これらそれぞれの場合のアーム移動後においては、そのアーム移動後のアーム位置が、新しい基準値(新前回値)として記憶される(S39,S43,S45)。
【0075】
さらにもう1つの実施例について図5を参照しながら説明する。
【0076】
(実施例B3)
図5には、第2実施形態の実施例B3における、(B)分析途中での試薬状態検知に係わる、分析開始動作からの処理手順をフローチャートで表わしており、次の順序で実施される。
【0077】
(1) 試薬の分注を行なう際、その試薬に関し、記憶部4に記憶されている、試薬ボトル開封時の初期試薬量から総試薬分注量を差し引いた試薬残量に基づいて、分注アーム2の基準位置からの距離の値を求める(S51、S52)。但し、その求め方は前述同様とする。
【0078】
(2) 分注動作で、該当試薬に対し、分注アーム2の分注動作を実施し、分注アーム2が液面検知信号を得て停止した基準位置からの距離を計測する(S53,S54)。
【0079】
(3) 上記▲1▼の値と上記▲2▼の測定値が判定部5により判定される。±30パルス以内であれば正常、それ以上であると異常(例えば、分析途中に泡が発生し液面検知が誤検知してしまったか、著しい蒸発があった等)と判定される(S55)。
【0080】
(4) 異常と判定された場合は、その検知信号により次の動作に移る制御を行なわず、先の▲1▼の値まで分注アーム2を移動させる(S56)。
【0081】
(5) 上記(4)の位置から、液面検知信号により次の動作に移るはずの動作、即ち分注動作を実施し、分注を完了させ、次テストの分注動作に移行する。
【0082】
このように、第2実施形態として3つ例示した如く、自動分析装置は例えば、分析途中(分析動作中)での試薬状態検知において、基準位置からその試薬液面まで分注プローブの移動距離を測定し、その試薬ボトル内の試薬残量から算出した距離に基づき、セットされた試薬の分析中の状態異常を判断することができる。また、試薬の前回分注量に応じた液面の下降量を算出し記憶しておき、その試薬の分注の際にその分注プローブの移動距離の前回値を確認し、その移動距離の前回値に到達する前に液面を検知した場合にはその検知信号を無視し、その移動距離の前回値分と、前回分注量に応じた液面の下降量分とを合算した距離を移動させ、その地点から分注動作を開始するように制御することができる。
【0083】
その結果、分注時に発生する試薬に生じる泡による不良要因が生じても、分注不良なく試薬、試料を分注でき、測定データ不良の回避、試薬や測定時間の浪費を省くことができるようになる。
【0084】
(変形例)
さらに、第2実施形態の実施例は次のように変形実施してもよい。
【0085】
前述した各実施例においては、試薬液面状態チェックを毎テスト実施している例を示したが、例えば、予めチェックするテスト間隔を定めておき、その時のみチェックを行なうように実施してもよい。
【0086】
具体的には10テストおきに前述の実施例で示したチェックを行なう。もしくはテスト残量が100、50、20、10テストとなった時に行なうように予めプログラムしておいてもよい。
【0087】
このときの実施例B1の前回値と測定値との判定は、複数回分(例えば10テストおきであれば10テスト分)の吸引量分、液面が下がっているか、あるいは下がり過ぎていないかを判断することになる。
【0088】
このような実現の手法は、1回の吸引で液面が下がる量は小さい(先の実施例B1、実施例B2では1パルスとした)ため、メカニカル駆動のばらつきに対し埋もれてしまう可能性があり、このような問題を解決するための1つの手段となり得る。
【0089】
よって、この変形例によれば、実施例B1又は実施例B2と同等またはそれ以上の効果も期待できる。
【0090】
このほかにも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【0091】
以上、実施形態に基づき説明したが、本明細書中には次の発明が含まれる。液面を検知する液面検知部6を備えた分注プローブ1と、バーコード10が付与された試薬容器8からそのコードを光学的に読み取るバーコードリーダ9と、分注アーム2を介して前記分注プローブを駆動するパルスモータ3と、これらを駆使して試薬分注作業を制御する分注制御部7と、を有し、
前記分注制御部は、前記分注プローブが試薬を分注する際に、前記分注プローブが試薬を前記液面検知部により検知する地点まで前記分注プローブを移動させ、その地点から分注動作を開始するように前記分注プローブを制御し、その移動に際し前記分注プローブの基準位置から前記液面検知部が検知するまでの移動距離を求め、
該移動距離を記憶しておくための記憶部4と、
分析開始前に、前記分注プローブによって測定された、基準位置から試薬液面までの移動距離の値と、前記記憶部4に予め記憶されていた試薬までの距離、又は前記試薬容器内の試薬残量から計算した距離の値とを比較して、セットされた当該試薬の初期状態の異常を判断する判定部5と、を更に有することを特徴とする自動分析装置を提供できる。
【0092】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によれば、分注不良なく、試薬や試料を分注でき、測定データ不良の回避、試薬や測定時間の浪費を省けることのできる自動分析装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる自動分析装置の構成を概略的に示すブロック構成図。
【図2】 第1実施形態の実施例A1における(A)試薬セット時の試薬液面検知に係わる、分析開始動作からの処理手順を表わすフローチャート。
【図3】 第1実施形態の実施例A2における(A)試薬セット時の試薬液面検知に係わる、分析開始動作からの処理手順を表わすフローチャート。
【図4】 第2実施形態の実施例B1,B2における(B)分析途中での試薬液面検知に係わる、分析開始動作からの処理手順を表わすフローチャート。
【図5】 第2実施形態の実施例B3における(B)分析途中での試薬液面検知に係わる、分析開始動作からの処理手順を表わすフローチャート。
【符号の説明】
1…分注プローブ(分注ノズル)、
2…分注アーム、
3…パルスモータ、
4…記憶部、
5…判定部、
6…液面検知部、
7…分注制御部、
8…試薬容器(試薬ボトル)、
9…バーコードリーダ(読取装置)、
10…バーコード(試薬情報)。
S1〜S11…分析開始からの処理手順、
S21〜S25…分析開始からの処理手順、
S31〜S45…分注開始からの処理手順、
S51〜S56…分注開始からの処理手順。
Claims (1)
- 液面検知センサを備えた試薬分注プローブを具備し、
前記試薬分注プローブが試薬を分注する際に、前記試薬分注プローブが試薬を前記液面検知センサにより検知する地点まで前記試薬分注プローブを移動させ、その地点から分注動作を開始するように制御し、前記試薬分注プローブの移動に際し、分注プローブの基準位置から液面検知センサが検知するまでの移動距離を求め、この移動距離を記憶しておく機能を有する自動分析装置において、
分析動作中に、該当試薬の前回分注量に応じた液面の下降量を計算し記憶しておく機能を有し、
該当試薬の分注の際には、前記試薬分注プローブの移動距離における前回値を確認し、前記試薬分注プローブの移動距離が前回値に到達する前に、前記液面検知センサが液面を検知した場合はその検知信号を無視し、前記試薬分注プローブの移動距離を、前記移動距離の前回値と、前回分注量に応じた液面の下降量とを合わせた距離として該試薬分注プローブを移動させ、その地点から分注動作を開始するように制御する機能を更に有することを特徴とする自動分析装置。
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