JP3859178B2 - 高純度芳香族ジカルボン酸の製造方法とその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イソフタル酸、テレフタル酸およびナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の製造方法に係り、特に、製造工程を簡素化させて設備費を低減することができる高純度芳香族ジカルボン酸の製造方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ジカルボン酸の製造方法、特に、ポリエステル繊維やポリエステル樹脂等の原料や、PETボトル原料として用いられる高純度テレフタル酸の製造方法は、大別すると2段階の工程を経て製造するものである(可塑剤としてよく使用されるイソフタル酸もほぼ同様なプロセスで製造される)。
【0003】
すなわち、前段の生成・回収工程において、パラキシレンを、酢酸などの溶媒および重金属触媒の存在下において圧縮空気を吹き込んで、高温高圧で酸化反応させて粗製テレフタル酸(以下、CTAともいう)を得て、後段の精製・分離工程において、その粗製テレフタル酸を水素添加還元処理などにより精製を行い、高純度テレフタル酸(以下、PTAともいう)を製造している。
【0004】
この概要を図5により説明すると、酸化反応器50において、前述の条件下で粗製テレフタル酸(CTA)を生成する。次いで、これを結晶缶51において冷却晶析させた後、テレフタル酸の結晶と酸化反応時に生成した不純物および触媒とを含む反応溶媒のスラリーをロータリードラムフィルターなどの固液分離器52に供給し、酢酸を分離するとともに、テレフタル酸ケーキは水性酢酸または酢酸により洗浄して同伴する不純物および触媒を除去する。続いて、加熱管付回転乾燥機53によって残った酢酸を蒸発させて分離し、一旦、一時貯留サイロ54に送って貯留する。この貯留されたCTAは切り出されて懸濁器55にて懸濁化され、後段の精製・分離工程に送られる。
【0005】
懸濁器55からのスラリーは、高温高圧の水素添加塔56に供給し、CTAの一部または全部を溶解させて、固定触媒存在下で水素ガスと反応させて、CTAに同伴した不純物(大部分は4−カルボキシベンズアルデヒド:4CBA、パラトルイリル酸およびタール質の着色物質)を精製する。この精製は、4CBAをパラトルイリル酸または一部は安息香酸に転化させ、着色物質を脱色するものである。続いて、晶析缶57にて冷却晶析させ、固液分離器58A,58Bにより洗浄および固液分離を行い、母液に残存する不純物を最終的に除去し、加熱管付回転乾燥機59により乾燥させてサイロ60に送ってPTAとして貯留するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来法では、酸化反応器50で生成した不純物を含むスラリーを固液分離器にて結晶を分離し、洗浄した後に、後段の精製・分離工程に送る前に、残留する酢酸を完全に分離するために大型の加熱管付回転乾燥機53および一時貯留サイロ54を設置することが必須となり、その設備費が著しく嵩み、また、基本的に生成・回収を目的とする前段工程と精製・分離を目的とする後段工程とに分離され、一連の工程として組み立てることができず、製造効率が高いものではない。
【0007】
上述の欠点を改善し、連続的な回収工程を可能にした結晶の回収方法として、以下に示す先行例が提案されている。
【0008】
(1)特表平6−502653号には、CTAスラリーをいわゆるBHSフィルター形式のものにより固液分離する方法が開示されている。
【0009】
(2)特開平6−327915号には、円筒状の濾材を有するロータリーフィルターにCTAスラリーを供給し、濾過を行った後、上記濾材を回転させながら濾材上のウエットケーキを洗浄液で洗浄し、その濾液を循環させて、再度ウエットケーキを洗浄するプロセスを濾材の回転方向と逆向きに適当間隔を置いて繰り返し行う方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、上記各先行例においては、酢酸を完全に除去できず、十分に高純度のCTAを後段の精製・分離工程に送ることができない。したがって、最終的に得られる結晶の純度も満足できるものとは言いがたい。
【0011】
そこで、本発明の主たる課題は、CTA回収工程の乾燥器およびサイロを省略し、その設備費の低減を図るとともに、前段と後段とを連続的な工程とすることによって製造効率を高め、さらに、得られる結晶の純度を高めることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成した本発明のうちで請求項1に記載の発明は、前段に酸化反応器において反応溶媒および触媒の存在下にて酸化反応による粗製芳香族ジカルボン酸の生成・回収工程、後段に前記粗製芳香族ジカルボン酸から高純度芳香族ジカルボン酸を得る精製・分離工程を有する芳香族ジカルボン酸の製造方法において、
前前記酸化反応により生成される反応溶媒中の粗製芳香族ジカルボン酸スラリーを、第1のロータリードラムフィルターに供給し、この第1のロータリードラムフィルターにおいて前記反応溶媒を分離するとともに、第1洗浄液により洗浄および濾過を行い、洗浄後のケーキを水を添加しながら再懸濁手段にて再懸濁した後、再懸濁スラリーを第2のロータリードラムフィルターに供給し、この第2のロータリードラムフィルターにおいて、水を主体とする水系溶媒を分離するとともに、第2洗浄液として水により洗浄および濾過を行い、水洗浄後のケーキを、そのまま前記後段の精製・分離工程に送るとともに、
前記第2のロータリードラムフィルターにおいて分離した前記水系溶媒は、前記第1洗浄液として使用し、
【0013】
前記第1のロータリードラムフィルターは、ハウジング内に、円筒形ドラムの外周面に濾材が張設されたドラム濾材を有し、前記ハウジング内下部にスラリー貯留部が設けられ、前記ドラム濾材は、その一部が前記スラリー貯留部に貯留されるスラリーに浸かるようにハウジング内に配設され、前記ハウジング内でかつ前記ドラム濾材の外部に離間して、前記第1洗浄液をスプレーする洗浄液スプレーが配設されるとともに、これに対応するドラム濾材内部位置に洗浄濾液を回収する洗浄濾液受部が配設され、前記ドラム濾材の回転方向の後方側に前記ケーキのケーキ排出口が形成されている構造を有し、
前記ハウジング内の前記ドラム濾材外部空間における前記ドラム濾材の回転方向の前方側のケーキピックアップ側空間と、後方側の前記洗浄液スプレーによる洗浄・濾過側空間とを仕切る仕切り手段を設け、
この仕切り手段により、前記ドラム濾材内の母液濾液から回収部に導き反応溶媒と第1ガスとに分離し、分離した反応溶媒は前記酸化反応器に返送して回収するとともに、前記ガスは前記ケーキピックアップ側空間に投入される第1の循環系と、前記ドラム濾材内の洗浄濾液受部からの洗浄濾液は洗浄濾液部に導き反応溶媒と第2ガスとに分離し、分離した反応溶媒は酸化反応器に返送して回収するとともに、前記第2ガスは前記洗浄・濾過側空間に投入される第2の循環系とに分離した構成とする、ことを特徴とする高純度芳香族ジカルボン酸の製造方法である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記第2のロータリードラムフィルターにおいて分離した前記水系溶媒は、前記第1洗浄液として使用するとともに、一部を再懸濁手段における再懸濁スラリーの媒体として用いる請求項1記載の方法である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記再懸濁手段に対して水を補充添加する請求項1または2記載の方法である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、第1のロータリードラムフィルターおよび第2のロータリードラムフィルターをそれぞれ加圧下で操作する請求項1記載の方法である。
【0017】
請求項5に記載の発明は、第1のロータリードラムフィルターを加圧下で操作し、第2のロータリードラムフィルターを常圧下で操作する請求項1記載の方法である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、第1のロータリードラムフィルターおよび第2のロータリードラムフィルターをそれぞれ常圧下で操作する請求項1記載の方法である。
【0019】
請求項7に記載の発明は、第2のロータリードラムフィルターからの水洗浄後のケーキは、このケーキ中の芳香族ジカルボン酸に対して0.1重量%以下の酸化反応溶媒を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法である。
【0020】
請求項8に記載の発明は、前記芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法である。
【0021】
請求項9に記載の発明は、前段に酸化反応器において反応溶媒および触媒の存在下にて酸化反応による粗製芳香族ジカルボン酸の生成・回収手段、後段に前記粗製芳香族ジカルボン酸から高純度芳香族ジカルボン酸を得る精製・分離手段を有する芳香族ジカルボン酸の製造装置において、
前記酸化反応により生成される反応溶媒中の粗製芳香族ジカルボン酸スラリーを、第1のロータリードラムフィルターに供給する手段と、この第1のロータリードラムフィルターにおいて前記反応溶媒を分離するとともに、第1洗浄液により洗浄および濾過を行う手段と、洗浄後のケーキを水を添加しながら再懸濁手段にて再懸濁する手段と、再懸濁スラリーを第2のロータリードラムフィルターに供給する手段と、この第2のロータリードラムフィルターにおいて、水を主体とする水系溶媒を分離するとともに、第2洗浄液として水により洗浄および濾過を行う手段と、水洗浄後のケーキを、そのまま前記後段の精製・分離工程に送る手段と、前記第2のロータリードラムフィルターにおいて分離した前記水系溶媒は、前記第1洗浄液として使用する手段とを有し、
前記第1のロータリードラムフィルターは、ハウジング内に、円筒形ドラムの外周面に濾材が張設されたドラム濾材を有し、前記ハウジング内下部にスラリー貯留部が設けられ、前記ドラム濾材は、その一部が前記スラリー貯留部に貯留されるスラリーに浸かるようにハウジング内に配設され、前記ハウジング内でかつ前記ドラム濾材の外部に離間して、前記第1洗浄液をスプレーする洗浄液スプレーが配設されるとともに、これに対応するドラム濾材内部位置に洗浄濾液を回収する洗浄濾液受部が配設され、前記ドラム濾材の回転方向の後方側に前記ケーキのケーキ排出口が形成されている構造を有し、
前記ハウジング内の前記ドラム濾材外部空間における前記ドラム濾材の回転方向の前方側のケーキピックアップ側空間と、後方側の前記洗浄液スプレーによる洗浄・濾過側空間とを仕切る仕切り手段を設け、
この仕切り手段により、前記ドラム濾材内の母液濾液から回収部に導き反応溶媒と第1ガスとに分離し、分離した反応溶媒は前記酸化反応器に返送して回収するとともに、前記ガスは前記ケーキピックアップ側空間に投入される第1の循環系と、前記ドラム濾材内の洗浄濾液受部からの洗浄濾液は洗浄濾液部に導き反応溶媒と第2ガスとに分離し、分離した反応溶媒は酸化反応器に返送して回収するとともに、前記第2ガスは前記洗浄・濾過側空間に投入される第2の循環系とに分離した構成とした、
ことを特徴とする高純度芳香族ジカルボン酸の製造装置である。
【0022】
請求項10記載の発明は、前記第2のロータリードラムフィルターは、ハウジング内に、円筒形ドラムの外周面に濾材が張設されたドラム濾材を有し、前記ハウジング内下部にスラリー貯留部が設けられ、前記ドラム濾材は、その一部が前記スラリー貯留部に貯留されるスラリーに浸かるようにハウジング内に配設され、前記ハウジング内でかつ前記ドラ ム濾材の外部に離間して、前記第2洗浄液をスプレーする洗浄液スプレーが配設されるとともに、これに対応するドラム濾材内部位置に洗浄濾液を回収する洗浄濾液受部が配設され、前記ドラム濾材の回転方向の後方側に前記ケーキのケーキ排出口が形成されている構造を有し、
【0023】
前記ハウジング内の前記ドラム濾材外部空間を、前記ドラム濾材の回転方向の前方側のケーキピックアップ側空間と、後方側の前記洗浄液スプレーによる洗浄・濾過側空間と、に仕切る仕切り手段を設け、
【0024】
前記ドラム濾材内の母液濾液を回収部に導き前記水系溶媒と第3ガスとに分離し、分離した前記水系溶媒は前記第1洗浄液として使用するとともに、分離した前記第3ガスは前記ケーキピックアップ側空間に投入される第3の循環系と;前記ドラム濾材内の前記洗浄濾液受部の洗浄濾液を洗浄濾液部に導き水系溶媒と第4ガスとに分離し、分離した水系溶媒は前記再懸濁する手段に返送するとともに、分離した前記第4ガスは前記洗浄・濾過側空間に投入される第4の循環系と;に分離した、請求項9記載の高純度芳香族ジカルボン酸の製造装置である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る高純度結晶の回収方法について詳説する。
【0026】
図1は高純度テレフタル酸を得る場合における、CTAの生成・回収工程を示したもので、原料としてとのパラキシレンPXy を、例えば酢酸および重金属触媒とともに、酸化反応器1に供給する。この酸化反応器1には空気が吹き込まれ、これによってパラキシレンPXy が酸化され、CTAが生成される。
【0027】
このCTAは反応時に一部は結晶として析出するが、残部は酢酸に分散したスラリーとして蒸発結晶缶2A,2Bに順次供給され、ここで冷却されて殆どのテレフタル酸が析出される。
【0028】
結晶缶2BからのCTAの酢酸スラリーは、主に第1ロータリードラムフィルター3と、第2ロータリードラムフィルター4と、これらの間に配置されたリスラリー(再懸濁スラリー)槽5とを備えた固液分離・洗浄系に供給され、反応溶媒としての酢酸を水により置換するとともに、結晶の洗浄を行いながら、結晶純度を高めている。
【0029】
ここで、本発明でいうロータリードラムフィルターとしては、例えば、BHSフィルター、ヤング型フィルター、オリバー型フィルター等を好適に用いることができる。
【0030】
第1および第2ロータリードラムフィルターとしては、基本的に同一の構造の物を使用でき、その構造を主に第1ロータリードラムフィルター3について説明すると、ハウジング3A内下部にスラリー貯留部3Bが設けられ、このスラリー貯留部3BにCTAの酢酸スラリーを導入するためのスラリー導入口3Cが形成され、円筒形ドラムの外周面に濾材が張設されたドラム濾材3Dは、その一部がスラリー貯留部3Bに貯留されるスラリーに浸かるようにハウジング3A内に配設され、図示しないモーターと減速機により図1の時計方向に回転させられる。また、ハウジング3A内でかつドラム濾材3Dの上方に離間して洗浄液スプレー3Eが配設されるとともに、これに対応するドラム濾材3D内部位置に洗浄濾液を回収する洗浄濾液受皿3Fが配設され、さらに、ドラム濾材3Dの回転方向の後方部にケーキ剥離用ガスノズル3Gが内部からドラム濾材3Dに臨んで設けられている。ケーキ剥離用ガスノズル3Gの吹込み位置のほぼ下方にケーキ排出口3Hが形成されている。
【0031】
CTAの酢酸スラリーHは、供給路F1を通してスラリー導入口3Cからスラリー貯留部3Bに供給される。スラリー貯留部3Bのスラリーは、ハウジング3A内が加圧状態に、ドラム濾材3D内が真空または低圧状態に維持されることにより、ドラム濾材3D外から内に向かっての吸引濾過がなされ、ケーキとなってピックアップされ、ドラム濾材3Dに付着しながらその時計方向の回転に伴って移動する。このケーキに対して、洗浄液スプレー3Eから(第1)洗浄液がスプレーされ、洗浄が行われるとともに、その濾液は吸引されて洗浄濾液受皿3Fに貯留される。さらに、ドラム濾材3Dが回転すると、ケーキ剥離用ガスノズル3Gからたとえば窒素ガスが吹き付けられ、ケーキの剥離が行われ、ケーキ排出口3Hから排出される。
【0032】
洗浄濾液受皿3Fにて回収された洗浄濾液は、導管6Aを通して第1洗浄濾液タンク6に貯留され、その洗浄濾液はポンプ7により返送路8を通して複数の脱水蒸留塔9からなる脱水蒸留塔群に導かれ、この脱水蒸留塔9において水蒸気と酢酸とに分離され、酢酸については返送路10および11を介して酸化反応器1に返送される。水蒸気は、コンデンサー12により凝縮されて排水とされる。9Aは加熱器である。
【0033】
第1洗浄濾液タンク6には第1真空ポンプ13が接続され、ここでガスの吸引・圧縮が行われ、さらにガス冷却器14にてガスの冷却が行われた後、ハウジング3A内に投入されて、ハウジング3A内を加圧状態にドラム濾材3D内を真空または低圧に維持している。
【0034】
ドラム濾材3D内の母液濾液は導管15Aを通して第1回収タンク15に導かれ、酢酸を多く含む母液濾液はポンプ16により返送路11を通して酸化反応器1に返送される。この第1回収タンク15にも第1真空ポンプ13が接続され、同様に第1回収タンク15のガスが第1真空ポンプ13により吸引・圧縮され、さらにガス冷却器14にてガスの冷却が行われた後、ハウジング3A内に投入される。
【0035】
ケーキ排出口3Hから排出されたケーキは、リスラリー槽5に投入され、このリスラリー槽5に供給される純水、第2ロータリードラムフィルター4からの洗浄濾液および母液濾液、後述する後段の固液分離工程からの洗浄濾液および母液濾液などの実質的にきれいな水により攪拌機5Aにより再スラリー化され、供給路F2を通して第2ロータリードラムフィルター4に供給される。この第2ロータリードラムフィルター4においても、第1ロータリードラムフィルター3と同様に固液分離および洗浄が行われる。すなわち、スラリー導入口4Cからスラリー貯留部4Bに供給され、スラリー貯留部4Bでのスラリーは、ハウジング4A内が加圧状態に、ドラム濾材4D内が真空または低圧に維持されることによりケーキとなってピックアップされ、ドラム濾材4Dに付着しながらその時計方向の回転に伴って移動する。このケーキに対して、純水による洗浄液スプレー4Eから純水がスプレーされ、洗浄が行われるとともに、その濾液は吸引されて洗浄濾液受皿4Fに貯留される。さらに、ドラム濾材4Dが回転すると、ケーキ剥離用ガスノズル4Gから例えば窒素ガスが吹き付けられ、ケーキの剥離が行われ、ケーキ排出口4Hから排出される。
【0036】
洗浄濾液受皿4Fでの洗浄濾液は、導管17Aを通して第2洗浄濾液タンク17に貯留され、その洗浄濾液はポンプ18により返送路19を通してリスラリー槽5に導かれる。第2洗浄濾液タンク17に第2真空ポンプ20が接続され、ここでガスの圧縮が行われ、さらにガス冷却器21にてガスの冷却が行われた後、ハウジング4A内に投入されて、ハウジング4A内を加圧にドラム濾材4D内を真空または低圧状態に維持している。
【0037】
ドラム濾材4D内の母液濾液は導管22Aを通して第2回収タンク22に導かれ、母液濾液はポンプ23により返送路24を通して、第1ロータリードラムフィルター3における洗浄液として洗浄スプレー3Eに導かれ、残部は、返送路25を通してリスラリー槽5に供給される。これらの返送路24,25の返送量は流量調節弁などを設けて適宜コントロールすることができる。リスラリー槽5に洗浄濾液を返送路19を介して供給するほか、母液濾液をも返送路25を通して供給すると、理由は定かではないが、きわめて高い洗浄効率が得られることを知見している。また、返送路25の途中に純水を供給することにより、あるいは直接にリスラリー槽5に純水を供給することにより、リスラリー槽5の水供給量を一定に保持できる。
【0038】
ケーキ排出口4Hから排出されたケーキは、純水で洗浄されて酢酸系から純水系に溶媒が転換されているので、乾燥機およびサイロを通すことなく、直接、後段の精製・分離工程に供給できる。したがって、乾燥機およびサイロの設備費が低減する。
【0039】
上記例においては、第1および第2ロータリードラムフィルター3,4の両者を、それらのハウジング3A,4A内を加圧する加圧状態で運転したが、両者を常圧下で運転してもよい。ただ、第1ロータリードラムフィルター3を常圧下で運転するために、ドラム濾材3D内を真空または低圧化させると、濾液の一部が断熱蒸発することにより濾液温度が低下し、ドラム濾材3Dの目詰まりが生じ易くなり、不純物の析出割合が高くなり、分離結晶の純度が低下するのに対して、加圧状態で運転すると実質的にかかる問題がなく、高い純度の分離結晶を得ることができる。
【0040】
また、上記例においては、ケーキのピックアップに使用されるガスと、洗浄液による洗浄・濾過に使用されるガスとは同一のガス循環系にて混合され循環される。さらに、ロータリードラムフィルターのハウジング内は、ケーキのピックアップを行う空間、洗浄液による洗浄・濾過を行う空間、およびケーキの排出を行う空間が連通した構造となっている。しかし、ケーキのピックアップに使用されたガスは、洗浄液による洗浄・濾過に使用されたガスよりも多量の酢酸蒸気を含み、これらのガスを混合して再びロータリードラムフィルターに投入した場合、洗浄・濾過中もしくは洗浄・濾過後のケーキに不要な酢酸が混入してしまい、効果的な洗浄・濾過を行うことができない。
【0041】
そこで、本発明においては、図3に示す態様が提案される。すなわち、第1ロータリードラムフィルター3によって説明すれば、ハウジング3A内には、ケーキのピックアップを行う空間と洗浄液による洗浄・濾過を行う空間とを実質的に二分する仕切り板または仕切り壁などの仕切り手段S1 が設けられる。これにともない、第1回収タンク15からの第1ガスがハウジング3A内のケーキピックアップ側に投入されるように、真空ポンプ13B、ガス冷却器14Bがこの順に接続され、さらに第1洗浄濾液タンク6からの第2ガスが洗浄液による洗浄・濾過が行われる側の空間に投入されるように、真空ポンプ13A、ガス冷却器14Aがこの順に接続される。その他は、図1に示す態様と同様である。この場合、ケーキのピックアップに使用される第1ガスと、洗浄液による洗浄・濾過に使用される第2ガスとは別系統にて循環されるとともに、これら第1ガス及び第2ガスが混合しないようにハウジング3A内は仕切り手段S1 によって二分されるため、洗浄・濾過後のケーキの酢酸含有量を効果的に低減することができる。
【0042】
このようにして前段の粗製芳香族ジカルボン酸の生成・回収工程により得られたCTAケーキは、後段の前記粗製芳香族ジカルボン酸に水素添加還元処理して高純度芳香族ジカルボン酸を得る精製・分離工程に送られる。この後段の精製・分離工程としては、公知の方法、例えば水素添加還元処理、精密酸化処理、または再結晶処理などをそのまま適用できる。このうち水素添加還元処理の例を図2によって説明する。
【0043】
すなわち、溶媒が酢酸から水に転換されたCTAケーキは、第2リスラリー槽30で再懸濁された後に、水素添加還元反応器31に供給され、この水素添加還元反応器31での水素添加反応による還元処理により、CTA中の不純物が精製される。すなわち、4CBAはパラトルイリル酸または一部は安息香酸に変換され、タール質の着色物質は脱色される。次に、適宜数(たとえば5段)の直列配置の結晶缶32にて蒸発・冷却による結晶化を行い、結晶スラリーを、加圧操作で運転される第3ロータリードラムフィルター33および常圧操作で運転される第4ロータリードラムフィルター34に順次通して固液分離を図る。第3ロータリードラムフィルター33の代わりに遠心分離器を用いてもよい。これらの後段の固液分離手段にて、固液分離および洗浄を行い、最終的に不純物を除去した後に、乾燥機35で乾燥し、サイロ36に貯蔵し、製品として貯留する。
【0044】
以下、本発明に係る高純度テレフタル酸の製造方法の実施例を示し、本発明の効果を明らかにする。
【0045】
<実施例>
図4は、本発明に係る、CTAの生成・分離工程の操作例を示している。本例においては、蒸発結晶缶2B、リスラリー槽5および第2ロータリードラムフィルター4から排出されるケーキの、テレフタル酸(T.A.)、酢酸(A.A.)および液体(Liq.)の含有量を測定し、酢酸(A.A.)/テレフタル酸(T.A.)比を算出した。
【0046】
この結果、図4に示すように、蒸発結晶缶2B内のスラリーではA.A./T.A.=127.5 %であったのが、リスラリー槽5内のスラリーではA.A./T.A.=11.75 %となり、さらに、第2ロータリードラムフィルター4から排出されるケーキにおいてはA.A./T.A.=0.1 %以下となった。すなわち、酢酸の含有量は処理の進行にともなって減少し、第2ロータリードラムフィルター4から排出されるケーキは、酢酸が完全に水で置換されたものであった。
【0047】
したがって、従来用いていたドライヤーによる乾燥およびサイロによる貯留工程を必要とせず、CTAの製造・回収工程と精製・分離工程とを連続的に行うことができる。
【0048】
一方、上記の説明では、テレフタル酸の製造を中心に述べたが、イソフタル酸やナフタリンジカルボン等の他の芳香族ジカルボン酸の製造にも用いることができることは、実施例を示すまでもなく、当業者が容易に理解できよう。
【0049】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、従来用いられてきたCTAドライヤーによる乾燥工程およびCTAサイロによる貯留工程を省略することができ、これらに必要な設備費を削減することができるとともに、前段と後段とを連続的な工程とすることによって製造効率を高め、さらに、得られる結晶の純度が高まるなどの利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るテレフタル酸の生成・回収工程のフローシートである。
【図2】後段の精製・分離工程のフローシートである。
【図3】本発明に係るテレフタル酸の生成・回収工程の他の態様を示すフローシートである。
【図4】操作例の説明図である。
【図5】従来例の概要フローシートである。
【符号の説明】
1…酸化反応器、2A,2B…蒸発結晶缶、3…第1ロータリードラムフィルター、4…第2ロータリードラムフィルター、5…リスラリー(再懸濁スラリー)槽、6…第1洗浄濾液タンク、9…脱水蒸留塔、13…第1真空ポンプ、15…第1回収タンク、16…ポンプ、17…第2洗浄濾液タンク、20…第2真空ポンプ、22…第2回収タンク、S1 ,S2 …仕切り手段。
Claims (10)
- 前段に酸化反応器において反応溶媒および触媒の存在下にて酸化反応による粗製芳香族ジカルボン酸の生成・回収工程、後段に前記粗製芳香族ジカルボン酸から高純度芳香族ジカルボン酸を得る精製・分離工程を有する芳香族ジカルボン酸の製造方法において、
前記酸化反応により生成される反応溶媒中の粗製芳香族ジカルボン酸スラリーを、第1のロータリードラムフィルターに供給し、この第1のロータリードラムフィルターにおいて前記反応溶媒を分離するとともに、第1洗浄液により洗浄および濾過を行い、洗浄後のケーキを水を添加しながら再懸濁手段にて再懸濁した後、再懸濁スラリーを第2のロータリードラムフィルターに供給し、この第2のロータリードラムフィルターにおいて、第2洗浄液として水により洗浄および濾過を行い、水洗浄後のケーキを、そのまま前記後段の精製・分離工程に送るとともに、母液濾液から水を主体とする水系溶媒を分離し、
前記第2のロータリードラムフィルターにおける洗浄濾液から分離した前記水系溶媒は、前記第1洗浄液として使用し、
前記第1のロータリードラムフィルターは、ハウジング内に、円筒形ドラムの外周面に濾材が張設されたドラム濾材を有し、前記ハウジング内下部にスラリー貯留部が設けられ、前記ドラム濾材は、その一部が前記スラリー貯留部に貯留されるスラリーに浸かるようにハウジング内に配設され、前記ハウジング内でかつ前記ドラム濾材の外部に離間して、前記第1洗浄液をスプレーする洗浄液スプレーが配設されるとともに、これに対応するドラム濾材内部位置に洗浄濾液を回収する洗浄濾液受部が配設され、前記ドラム濾材の回転方向の後方側に前記ケーキのケーキ排出口が形成されている構造を有し、
前記ハウジング内の前記ドラム濾材外部空間を、前記ドラム濾材の回転方向の前方側のケーキピックアップ側空間と、後方側の前記洗浄液スプレーによる洗浄・濾過側空間と、に仕切る仕切り手段を設け、
前記ドラム濾材内の母液濾液を回収部に導き反応溶媒と第1ガスとに分離し、分離した前記反応溶媒は前記酸化反応器に返送して回収するとともに、分離した前記第1ガスは前記ケーキピックアップ側空間に投入される第1の循環系と;前記ドラム濾材内の前記洗浄濾液受部の洗浄濾液を洗浄濾液部に導き反応溶媒と第2ガスとに分離し、分離した反応溶媒は酸化反応器に返送して回収するとともに、分離した前記第2ガスは前記洗浄・濾過側空間に投入される第2の循環系と;に分離する、
ことを特徴とする高純度芳香族ジカルボン酸の製造方法。 - 前記第2のロータリードラムフィルターにおいて分離した前記水系溶媒は、前記第1洗浄液として使用するとともに、一部を再懸濁手段における再懸濁スラリーの媒体として用いる請求項1記載の方法。
- 前記再懸濁手段に対して水を補充添加する請求項1または2記載の方法。
- 第1のロータリードラムフィルターおよび第2のロータリードラムフィルターをそれぞれ加圧下で操作する請求項1記載の方法。
- 第1のロータリードラムフィルターを加圧下で操作し、第2のロータリードラムフィルターを常圧下で操作する請求項1記載の方法。
- 第1のロータリードラムフィルターおよび第2のロータリードラムフィルターをそれぞれ常圧下で操作する請求項1記載の方法。
- 第2のロータリードラムフィルターからの水洗浄後のケーキは、このケーキ中の芳香族ジカルボン酸に対して0.1重量%以下の酸化反応溶媒を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前段に酸化反応器において反応溶媒および触媒の存在下にて酸化反応による粗製芳香族ジカルボン酸の生成・回収手段、後段に前記粗製芳香族ジカルボン酸から高純度芳香族ジカルボン酸を得る精製・分離手段を有する芳香族ジカルボン酸の製造装置において、
前記酸化反応により生成される反応溶媒中の粗製芳香族ジカルボン酸スラリーを、第1のロータリードラムフィルターに供給する手段と、この第1のロータリードラムフィルターにおいて前記反応溶媒を分離するとともに、第1洗浄液により洗浄および濾過を行う手段と、洗浄後のケーキを水を添加しながら再懸濁手段にて再懸濁する手段と、再懸濁スラリーを第2のロータリードラムフィルターに供給する手段と、この第2のロータリードラムフィルターにおいて、第2洗浄液として水により洗浄および濾過を行う手段と、水洗浄後のケーキを、そのまま前記後段の精製・分離工程に送る手段と、前記第2のロータリードラムフィルターにおける母液濾液から水を主体とする水系溶媒を分離する手段と、分離した前記水系溶媒は前記第1洗浄液として使用する手段とを有し、
前記第1のロータリードラムフィルターは、ハウジング内に、円筒形ドラムの外周面に濾材が張設されたドラム濾材を有し、前記ハウジング内下部にスラリー貯留部が設けられ、前記ドラム濾材は、その一部が前記スラリー貯留部に貯留されるスラリーに浸かるようにハウジング内に配設され、前記ハウジング内でかつ前記ドラム濾材の外部に離間して、前記第1洗浄液をスプレーする洗浄液スプレーが配設されるとともに、これに対応するドラム濾材内部位置に洗浄濾液を回収する洗浄濾液受部が配設され、前記ドラム濾材の回転方向の後方側に前記ケーキのケーキ排出口が形成されている構造を有し、
前記ハウジング内の前記ドラム濾材外部空間を、前記ドラム濾材の回転方向の前方側のケーキピックアップ側空間と、後方側の前記洗浄液スプレーによる洗浄・濾過側空間と、に仕切る仕切り手段を設け、
前記ドラム濾材内の母液濾液を回収部に導き反応溶媒と第1ガスとに分離し、分離した前記反応溶媒は前記酸化反応器に返送して回収するとともに、分離した前記第1ガスは前記ケーキピックアップ側空間に投入される第1の循環系と;前記ドラム濾材内の前記洗浄濾液受部の洗浄濾液を洗浄濾液部に導き反応溶媒と第2ガスとに分離し、分離した反応溶媒は酸化反応器に返送して回収するとともに、分離した前記第2ガスは前記洗浄・濾過側空間に投入される第2の循環系と;に分離した、
ことを特徴とする高純度芳香族ジカルボン酸の製造装置。 - 前記第2のロータリードラムフィルターは、ハウジング内に、円筒形ドラムの外周面に濾材が張設されたドラム濾材を有し、前記ハウジング内下部にスラリー貯留部が設けられ、前記ドラム濾材は、その一部が前記スラリー貯留部に貯留されるスラリーに浸かるようにハウジング内に配設され、前記ハウジング内でかつ前記ドラム濾材の外部に離間して、前記第2洗浄液をスプレーする洗浄液スプレーが配設されるとともに、これに対応するドラム濾材内部位置に洗浄濾液を回収する洗浄濾液受部が配設され、前記ドラム濾材の回転方向の後方側に前記ケーキのケーキ排出口が形成されている構造を有し、
前記ハウジング内の前記ドラム濾材外部空間を、前記ドラム濾材の回転方向の前方側のケーキピックアップ側空間と、後方側の前記洗浄液スプレーによる洗浄・濾過側空間と、に仕切る仕切り手段を設け、
前記ドラム濾材内の母液濾液を回収部に導き前記水系溶媒と第3ガスとに分離し、分離した前記水系溶媒は前記第1洗浄液として使用するとともに、分離した前記第3ガスは前記ケーキピックアップ側空間に投入される第3の循環系と;前記ドラム濾材内の前記洗浄濾液受部の洗浄濾液を洗浄濾液部に導き水系溶媒と第4ガスとに分離し、分離した水系溶媒は前記再懸濁する手段に返送するとともに、分離した前記第4ガスは前記洗浄・濾過側空間に投入される第4の循環系と;に分離した、請求項9記載の高純度芳香族ジカルボン酸の製造装置。
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