JP3859170B1 - コーティング組成物およびそれを用いた被膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のコーティング組成物は、ポリビニルアルコールと、Cu2+、Fe3+、Al3+、およびCr3+からなる群から選択される少なくとも一種の金属イオンの、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、蟻酸塩、および酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である金属塩と、溶媒としての水とを含んでなる。金属塩は、ポリビニルアルコールの単位構造の総モル量に対して、1/700〜1/15のモル比となる量で含有される。
【選択図】なし
Description
本発明は、常温で徐溶性被膜を形成することが可能な1液型のコーティング組成物およびそれを用いた被膜の製造方法に関する。
一般に、水洗トイレの便器内部や洗面器内部、浴室の洗い場における床や壁、台所のシンク内部のような、一時的に水が流れる環境には、各環境に特有の汚れが発生する。そのような汚れの例としては、水垢汚れ、便器における大便付着、黒ずみ、および黄ばみ、浴室における皮脂汚れおよび石鹸カス、ならびに台所のシンクにおける黒ずみおよび油汚れ等が挙げられる。これらの一時的に水が流れる環境特有の汚れの付着を防止ないし洗浄するために、ポリマーを塗布する技術が知られている。
ポリビニルアルコールと、
Cu2+、Fe3+、Al3+、およびCr3+からなる群から選択される少なくとも一種の金属イオンの、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、蟻酸塩、および酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である金属塩と、
溶媒としての水と
を含んでなり、前記金属塩が、前記ポリビニルアルコールの単位構造の総モル量に対して、1/700〜1/15のモル比となる量で含有されてなるものである。
基材上に上記コーティング組成物を塗布し、
該基材上に塗布された前記コーティング組成物を乾燥して被膜を形成させる
工程を含んでなる。
本発明によるコーティング組成物は、ポリビニルアルコールと、金属塩と、溶媒としての水とを含んでなる。金属塩は、Cu2+、Fe3+、Al3+、およびCr3+からなる群から選択される少なくとも一種の金属イオンの、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、蟻酸塩、および酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である。そして、金属塩が、ポリビニルアルコールの単位構造の総モル量に対して、1/700〜1/15のモル比となる量で含有されてなる。これにより、本発明のコーティング組成物は、一液型でありながら、優れた液安定性を有し、なおかつ常温で徐溶性被膜を形成することができる。
本発明のコーティング組成物を用いた被膜の製造は、基材上にコーティング組成物を塗布し、この基材上に塗布されたコーティング組成物を乾燥して被膜を形成させることにより行うことができる。そして、乾燥は常温で、加熱することなく行うことができる。
防汚性:例えばトイレの洗浄水が流れることで被膜表層部が溶解して付着していた汚れが剥離して表面が更新されるため、トイレ洗浄のたびに清浄な表面が得られる。同様の作用を利用して、屋内の水まわり物品としては、小便器、大便器のボウル面、洗面化粧台の洗面器のボウル面、キッチンのシンク、浴室内各部に適用できる。また、自動車車体の塗装面、屋内外に面した窓ガラス表面にも使用できる。大便、水垢、ウォーターマーク、皮脂汚れ、石鹸かす、油汚れなどの汚れ防止に効果を発揮する。
抗菌・抗カビ性/防臭性:上記の徐溶効果によって、水がかかるたびに清浄な表面が形成されるため、微生物の付着を抑制できる。また金属塩として抗微生物性を有する銅塩を用いたり、任意成分として抗菌・抗カビ剤を添加することにより、被膜表層部が溶解するたびに抗菌・抗カビ剤が徐放されるため、水と接する部位に発生しやすい菌・カビの微生物の繁殖を抑制することができる。また微生物繁殖が原因で発生する腐敗臭を防臭することもできる。このような用途としては、小便器、大便器のボウル面、洗面化粧台の洗面器のボウル面、キッチンのシンク、浴室内各部などに適用できる。
芳香性:任意成分として香料を添加すると、上記の徐溶効果によって、香料が徐放されるため、空間に芳香を付与することができる。適用できる用途としては、悪臭が気になる大便器や小便器、浴室やキッチンの排水口周辺部などが挙げられる。
消臭性:任意成分として消臭剤を添加すると、上記の徐溶効果によって、水がかかるたびに消臭剤が徐放されるため、水がかかるたびに悪臭を消臭することができる。適用できる用途としては、悪臭が気になる大便器や小便器、浴室やキッチンの排水口周辺部などが挙げられる。
光沢付与性:コーティング組成物は塗り重ねても良好な外観を維持するため、表面が劣化して新品時の光沢を失った表面にコートして平滑化し、光沢を回復することができる。水流と接しても被膜が瞬時に流れ去ることはなく、徐々に表層部から溶解するため、形成した膜厚と水流の程度に応じた期間、光沢を保持することができる。このような用途としては、長期使用で光沢低下が生じる衛生陶器の釉薬面が挙げられる。具体的には、大便器、小便器のボウル面や洗面化粧台の洗面ボウル面などである。また、長期使用で筋状の洗浄痕が発生する自動車車体の塗装面などにも利用できる。
(1)コーティング組成物の調製
コーティング組成物の原料として、以下のものを用意した。
被膜形成剤
・ポリビニルアルコール(PVA)(JC-33,VC-10,JF-10,JM-17,およびJP-10、いずれも日本酢ビポバール株式会社製;ならびにHR3010,RS3110,およびRS4104、いずれも株式会社クラレ製)
・ポリビニルピロリドン(K-90、第一工業製薬株式会社製、比較例に使用)
・キサンタンガム(ケルザンT、三晶株式会社製、比較例に使用)
金属塩
・酢酸銅(II)(和光純薬工業株式会社製)
・ギ酸銅(II)(和光純薬工業株式会社製)
・硫酸銅(II)(和光純薬工業株式会社製)
・塩化銅(II)・2水和物(和光純薬工業株式会社製)
・塩化鉄(III)・9水和物(和光純薬工業株式会社製)
・硝酸アルミニウム(III)・9水和物(和光純薬工業株式会社製)
・グルコン酸銅(II)(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム銅(II)(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
・銅(II)クロロフィリンナトリウム(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
・ホウ砂(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
・硝酸マグネシウム(II)・6水和物(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
・硝酸ニッケル(II)・4水和物(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
・酢酸亜鉛(II)・2水和物(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
・硝酸コバルト(II)・6水和物(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
・酢酸銀(I)(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
・オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物(和光純薬工業株式会社製、比較例に使用)
溶剤
・エタノール(和光純薬工業株式会社製)
・2−プロパノール(和光純薬工業株式会社製)
界面活性剤
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(三洋化成工業株式会社製)
消泡剤
・鉱油、ポリエーテルを含む水系分散剤(サンノプコ株式会社製)
上記のようにして得られた例1〜38の各種コーティング液を直立させたスライドガラスにフローコートして、25℃で12時間乾燥させて、被膜が形成された試験片を得た。
上記のようにして得られた各種コーティング液および試験片についての評価を以下の通り行った。得られた評価結果は表5〜8に示される。
1重量%を超える高濃度のポリビニルアルコールを含有する例1〜19および23〜38のコーティング液を用いて作製した試験片の徐溶性を、被膜の膜厚保持率を代用特性として測定することにより評価した。具体的には、図1に示されるように、形成した被膜の一部を剥離し、被膜表面とスライドガラス基材表面とを探針で連続的に走査して断面形状を測定して膜厚Aを算出した。次いで、同試験片を図2に示される条件で20℃のイオン交換水に10分間浸漬した後に、膜厚Bを測定した。そして、膜厚保持率(%)を、膜厚Aに対する膜厚Bの割合として算出した。膜厚保持率20%以上を「G」(良好)と、膜厚保持率20%未満を「NG」(良好ではない)と評価した。
0.1重量%以上、1.0重量%以下の低濃度のポリビニルアルコールを含有する例20〜22のコーティング液を用いて作製した試験片の徐溶性を次のようにして評価した。具体的には、試験片を図2に示される条件で20℃のイオン交換水に10分間浸漬した後で、かつ水分が乾燥する前に、指先で浸漬した被膜面を摺動することにより行った。そして、ブランク(未コートガラス面)と比較して指先の抵抗が小さい場合を「G」(良好)と、ブランクと同等の場合を「NG」(良好ではない)と評価した。
0.1〜1.0重量%以下の低濃度のポリビニルアルコールを含有する例20〜22のコーティング液で作製した試験片の防曇性を次のようにして評価した。すなわち、試験片を図2に示される条件で20℃のイオン交換水に10分間浸漬し水分が乾燥した後に、浸漬した被膜面に吐息を吹きかけることにより行った。そして、浸漬面の吐息による曇りが30%未満の場合を「G」(良好)と、曇りが70%以上である場合を「NG」(良好ではない)と評価した。
例1、5〜7、9〜12、17、18、21、22、25、32、33、35、36、および38のコーティング液を用意した。これらのコーティング液を、(1)常温で3ヶ月間放置した後、(2)70℃で1ヶ月間放置した。続いて、(3)5℃で1ヶ月間放置した後、(4)−15℃と50℃との各温度条件下に1日につき2サイクルの頻度で2週間交互に放置した。こうして保管した後の各コーティング液の経時変化を評価した。
コーティング液の外観および粘度に顕著な変化が認められない場合を「G」(良好)と、外観あるいは粘度に顕著な変化が認められた場合を「NG」(良好ではない)と評価した。
洋式便器の溜水面上部の陶器面に大便が頻繁に付着して、洗浄水を流しても大便の洗浄残りが発生するため、3日間に1回以上の頻度でブラシを用いて便器を擦り洗いしている家庭を対象として、大便の洗浄残りに対するコーティング液の効果を把握するモニター試験を実施した。対象の家庭の家族構成は4人家族とし、設置されている便器は溜水面が狭い洗い落とし式便器とした。このモニター試験では、例2、7、25、および28のコーティング液を用いた。モニター人数は各液剤に対して3家庭ずつとし、予めブラシ清掃した便器内の陶器面に満遍なくコーティング液をスプレー噴霧し、60分間乾燥した後にトイレの使用を開始し、便の付着が原因で掃除するまでの日数を評価した。経過日数4日以上で掃除をした場合を「G」(良好)と、経過日数3日以内で掃除をした場合を「NG」(良好ではない)と評価した。
例5および28のコーティング液を、表面にガラス質の釉薬層を有する施釉タイル面にスポンジで塗り広げ、25℃で12時間乾燥させて試験片を作製した。試験片を図2に示される条件で20℃のイオン交換水に10分間浸漬することにより溶解試験を行い、溶解試験前後の防カビ性能を評価した。試験には実際の浴室から単離したCladosporium sp.を供試した。試験片上に、グルコース0.8%、ペプトン0.2%含有する栄養液500μlとCladosporium sp.の胞子5×103を接種して、気温27℃湿度90%以上で1週間培養した。目視で菌糸の発育が確認できないものを「防カビレベル3」と、目視で菌糸の発育を確認できるが液剤をコートしていないタイル面に比べて発育量が少ないものを「防カビレベル2」と、液剤をコートしていないタイル面と同程度の菌糸の発育が認められたものを「防カビレベル1」として評価した。溶解試験後の防カビレベルがレベル3もしくはレベル2であるものを「G」(良好)と、レベル1のものを「NG」(良好ではない)と評価した。
例2、7、28、33、および35の試験片を図2に示される条件で20℃のイオン交換水に10分間浸漬することにより溶解試験を行った後に、JIS Z 2801に準拠して大腸菌(ISO3972)を用いて抗菌性能を評価した。
抗菌活性値R=Log10(Cs/Cb)
(式中、Csは24時間培養後の液剤コート面の大腸菌数であり、Cbは24時間培養後の未コートガラス面の大腸菌数である。)
JIS Z 8741に準拠して測定した60°光沢値が92のタイルを基材として、未コートのタイル表面と、例2および7のコーティング液をフローコートして25℃で60分間乾燥して得た被膜表面とに、水垢付着を促進させるために、硬度297.5のミネラルウォーター(エビアン(登録商標)を噴霧した。5回噴霧して25℃で60分間乾燥を1サイクルとする工程を10サイクル繰り返して、噴霧前と10サイクル後の表面の60°光沢をJIS Z 8741に従い測定した。光沢値85以上を維持しているものを「G」(良好)、光沢値が85未満に低下したものを「NG」(良好ではない)と評価した。
表面に電着アクリル被覆を施したアルミニウム板(株式会社パルテック製)の表面に、例7のコーティング液を、スポンジで塗り広げ、25℃にて12時間乾燥させた。こうして得られた試験片と、未コートのアルミニウム板を用いて、結露形成試験を実施した。具体的には、まず、気温20℃相対湿度70%に設定した室内に水温5℃の水を充填した水槽を設置した。水槽の外側側面に試験片を密着させて120分間放置した後に60分間乾燥させる工程を1サイクルとして、3サイクル繰り返した。擬似汚物として実際の窓枠表面に付着した汚れをふき取ったガーゼを試験片上部の水槽側面に設置した。経時的な試験片表面の変化を観察し、3サイクル完了後に試験片上に目視で汚れが認められないものを「G」(良好)と、目視でスポット状に汚物が残留したものを「NG」(良好でない)と評価した。
Claims (12)
- ポリビニルアルコールと、
Cu2+、Fe3+、Al3+、およびCr3+からなる群から選択される少なくとも一種の金属イオンの、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、蟻酸塩、および酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である金属塩と、
溶媒としての水と
を含んでなり、前記金属塩が、前記ポリビニルアルコールの単位構造の総モル量に対して、1/700〜1/15のモル比となる量で含有されてなる、コーティング組成物。 - 前記ポリビニルアルコールが、500〜5000の重合度を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
- 前記ポリビニルアルコールが、80.0モル%以上100モル%未満のケン化度を有する、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
- 前記金属塩が、Cu2+またはFe3+の金属イオンの金属塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
- 前記金属塩が、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、蟻酸塩、および酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
- 3〜30重量%の炭素数1〜3の1価のアルコールをさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
- 0.1〜10重量%の前記ポリビニルアルコールと、0.0005〜3.00重量%の前記金属塩とを含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
- 組成物の温度が20℃である場合におけるpHが4〜7である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
- 常温において、単独で、コーティング膜を形成するために用いられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
- 水と一時的に接する部位にコーティング膜を形成するために用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載のコーティング組成物を用いた被膜の製造方法であって、
基材上に前記コーティング組成物を塗布し、
該基材上に塗布された前記コーティング組成物を乾燥して被膜を形成させる
工程を含んでなる、方法。 - 前記乾燥は常温で、加熱することなく行われる、請求項11に記載の方法。
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