JP3857635B2 - センタレス研削における表面仕上装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はセンターレス研削機に係り、特に、塑性流動し易い材質のワークを研削したとき、表面に顕微鏡的に微細なヒゲ状の突起が残留しないように研摩面を仕上げる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6はセンタレス研削機を説明するための模式図であって、(A)は概要的な正面図である。
ブレード1と調整砥石2とによってワーク3を支承しており、該調整砥石2は矢印a方向に右回り(時計方向)に回転する。図示を省略したが、回転駆動機構およびその制御系を備えている。
ワーク3は、摩擦伝動によって矢印b方向に回転せしめられる。砥石車である研削砥石4は、矢印c方向に回転しながらワーク3に接触して研削する。
符号Tを付して示した箇所は「ワーク3に対する、調整砥石2の接触点」である。符号tは研削砥石がワーク3を研削している部分を示している。
説明の便宜上、この図6(A)に図示した回転方向a,cを従来例の回転方向と呼び、1個の調整砥石と1個の研削砥石との組合わせをセンタレスユニットと呼ぶことにする。
【0003】
図から容易に理解されるように、接触点Tにおける調整砥石2の周速方向は上向きである。(注)図の投影方向を変えると、回転方向は右回りに見えたり左回り(反時計方向)に見えたりするが、接触点Tにおける周方向速度ベクトルが上向きであることは変わらない。
ワーク3は、基本的には円柱面を有する部材であるがテーパ面であっても良い。本発明において円柱状のワークとは、回転面を有する被研削物の意である。
切削部tにおいて有効な切削を行なうため、調整砥石2およびブレード1を搭載しているスライド7が、図の左方に切込み送りされる。切込み送りの反対方向の摺動をリトラクトと呼ぶ。
上記の切込み・リトラクトは一般に、調整砥石2をスライドさせて行なわれるが、研削砥石4を図の右方に切込み送りし、左方にリトラクトする例も有る。
【0004】
図6(B)は、前掲の(A)図における研削部t付近を拡大して描いた模式図である。読図容易なよう、微細寸法部分の倍率を大きくしてあるので、写実的な投影図ではない。
ワーク3の表層は、研削部tを矢印b方向に通過しつつ、t部で研削を受ける。このため、t部に到達するまで存在していた研削代3aは、t部を通過した後には無くなっている。この時、研削砥石4は矢印c方向に回転しているので、図から容易に理解できるようにダウンカット(下向き研削)が行なわれている。
いま仮に、調整砥石(図外)の回転方向を反転させて、ワーク3を図の左回りに回転させると図6(B)のようになり、アップカット(上向き研削)が行なわれる。図示を省略するが、調整砥石を逆転させずに研削砥石を逆転させてもアップカットが行なわれる。
センタレス研削機においては、アップカットに比してダウンカットすると切込角が大きくて研削能率が良いので、従来例のセンタレス研削機は総べて図6(A)に示した方向に回転するように設計製作されていて、調整砥石や研削砥石の逆転操作はできない構造である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上に説明したセンタレス研削は、高精度,高能率で円柱状ワークを研削することができ、広く用いられている。
ところが、ワークの材質がアルミニウムのように常温で塑性流動し易い金属である場合、研削仕上げされた面に極微細なヒゲ状の突起が残る(理解を容易ならしめるように譬えて言うならば、ケバ立ちのような極微細突起である)。
本発明の上述の事情に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、
センタレス研削の高精度,高能率という長所を損うこと無く、しかも、塑性流動し易い材質であっても研削された仕上面にヒゲ状突起を残さない技術を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者の永年に亙る試験研究で得られた知見によると、図6(B)に示したダウンカット方式のセンタレス研削は、高精度,高能率で研削できるが、ワークの材質によってはヒゲ状の突起を生じる場合が有る。
そして、同図(C)に示したアップカット方式のセンタレス研削は、能率において劣るがヒゲ状の突起を生じにくい。
本発明の基本的原理を略述すると、高能率のダウンカット方式のセンタレス研削によって所望の寸法まで研削仕上げを行ない、その後、アップカット方式のセンタレス研削により、切込み寸法ほとんどゼロで、ワーク表面を撫でるように仕上て、ヒゲ状突起を除去する。
上記のタウンカット方式のセンタレス研削は従来例のセンタレス研削機によって行なうことができ、アップカット方式のセンタレス研削は、調整砥石または研削砥石の何れか片方を逆転させることによって行なうことができる。
【0007】
以上に説明した原理に基づいて創作した、請求項1の発明に係る表面仕上装置の構成は(図5参照)、1葉回転双曲面を有する調整砥石と、円柱状のワークを載せて軸心方向に通し送りするブレードと、上記のワークに接触してこれを研削する砥石車である研削砥石とから成るスルーフィード形のセンタレス研削機において、
1個の調整砥石(2A)と1個の研削砥石(4A)とを有する第1のセンタレスユニット(P)と、
1個の調整砥石(2B)と1個の研削砥石(4B)とを有する第2のセンタレスユニット(S)とが、共通のベースの上に並べて設置されており、
上記2組のセンタレスユニットのブレードが、1直線状に一体連設されて共用ブレード(1A)を形成していて、これら第1,第2のセンタレスユニットの間に搬送装置を介在させることなく、第1のセンタレスユニットで研削されたワークが直ちに第2のセンタレスユニットに供給されるようになっており、
かつ、第1のセンタレスユニット(P)の研削砥石(4A)の回転方向は、前記共用ブレードに対向する箇所の周速度が下向きとなる回転方向であり、
第2のセンタレスユニット(S)の研削砥石(4B)の回転方向は、前記共用ブレードに対向する箇所の周速度が上向きとなる回転方向であることを特徴とする。
【0008】
以上に説明した請求項1の発明方法によると、塑性流動し易い材質のワークであっても、2組のセンタレスユニットを有する1基のセンタレス研削機によって、連続的にセンタレス研削を施して高精度の表面仕上げが可能であり、特に微小突起を生じない。
しかも、調整砥石や研削砥石を逆転させる必要も無く、1基のセンタレス研削機の内部に搬送装置を設ける必要も無い。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明装置を創作する過程において実験したセンタレス研削、すなわち試案のセンタレス研削を模式的に描いた工程図である。図1(A)は、前掲の図6(A)に示した従来例のセンターレス研削機におけると同様の作動状態を表している。すなわち、調整砥石2は図において右回り(時計方向)している。図の縮尺が小さいので読図できないが、ワーク3は左回り(反時計方向)している。
これに対して研削砥石4は右回りしていて、ダウンカット方式の研削が行なわれている。
この状態(ダウンカット)で、ワーク3をほぼ所定寸法に研削仕上げする。ワークの製作図面に径寸法の上限,下限が示されているときは、上限付近を狙って研削仕上げすることが望ましい。この作業を寸法仕上工程と呼ぶ。
この寸法仕上工程は従来技術におけると同様であるから、ワーク材質が塑性流動し易いものである場合はヒゲ状突起を生じる。しかし、ヒゲ状突起は極微細であってフレキシブルであるから、通常の外径寸法計測にはほとんど影響を与えない。すなわち、ヒゲさえ無ければ所望の製品に相当する状態である。
【0030】
本試案に係るセンタレス研削機は自動制御装置を備えていて、以下に述べる操作が自動的に行なわれる。
図1(B)はリトラクト工程であって、調整砥石2がブレード1と一緒に、スライド7によって矢印e方向にリトラクトする。本図は読図の便宜上、リトラクト寸法を拡大して描いてあるが、実際のリトラクト寸法は1ミリメートル未満で足りる。調整砥石の代りに、研削砥石4を矢印fのようにリトラクトさせても良い。
図1(C)は逆転工程であって、調整砥石2を図の左回りになるように逆転させる。図では読み取り難いが、これによってワーク3は右回りに回転する。
【0031】
図1(D)は表面仕上工程である。リトラクトさせてあった調整砥石2を、矢印gのように、リトラクト前の位置に復元させる。
研削砥石4をリトラクトさせてあった場合は矢印hのように復元させる。
これにより、砥石車(2,4)とワーク3との関係位置は、寸法仕上工程末期の状態となる。この状態で表面を撫でる程度に仕上げ研削する。この工程においては、切込み寸法がほとんどゼロである。本発明において切込寸法がほとんどゼロであるとは、切込寸法が製作図における許容寸法誤差と同じオーダーもしくはそれ以下であることをいう。
調整砥石2の回転方向が反転されているので、この表面仕上工程ではアップカット方式のセンタレス研削が行なわれ、ヒゲ状突起が除去される。
【0032】
図2は前掲の図1と異なる試案に係るセンタレス研削を模式的に描いた工程図である。
次に、図1との異同について説明する。
図2(A)の寸法仕上工程および(B)のリトラクト工程は、前掲の図1におけると同様である。
図2(C)の逆転工程では、調整砥石2の回転方向は変えずに、研削砥石4の回転方向を図の左回り(反時計方向)に反転させる。
図2(A)の状態では、研削砥石4の回転方向が右回りであり、図2(C)の状態では左回りである。すなわち図2(A)における研削砥石がワーク3やブレード1に対向している箇所の周速は下向きであったのに比して、図2(C)においては周速が上向きになっている。
図2(D)の表面仕上工程では、研削砥石4の逆転によってアップカット方式のセンタレス研削により、切込寸法ほとんどゼロで微小突起を除去する。
以上に説明した図1,図2の実施形態は、シーケンス機能を有する自動制御装置によって遂行されるので、作業員に格別の知識や熟練を必要とせず、作業員の肉体的負荷や精神的負荷が軽く、人為的ミスを生じる虞れが無い。
【0033】
以上に説明した図1,図2の試案は、1基のセンタレス研削機を用いて実施することができる。
このようなセンタレス研削を実施するには、調整砥石および/または研削砥石を正,逆転操作し得る構造であることが便利である。
しかし、多数のワークを研削する場合、1本のワークごとに砥石車を正,逆転操作するには、回転している砥石車を制動して停止させたり反対方向に回転させたりしなければならないので、時間的なロスを生じ、エネルギーの損失も有る。
こうした事項を勘案して、多数のワークを研削するときは、図3を参照して次に説明するように施工すると高能率で研削することができる。
【0034】
図3は、前記と更に異なる試案を示す工程図である。
図3(A)は寸法仕上工程であって、図1(A),図2(A)の寸法仕上工程と同様の作業である。ただし、多数のワーク3を順次に寸法仕上して、矢印uのように仮置台5の上に並べてゆく。
多数のワーク3を寸法仕上し終えると、本図3(B)に示すように砥石逆転工程を行なう。本図では研削砥石を逆転させた矢印を描いてあるが、調整砥石を逆転させても良い。
本図3(C)に示したように、多数の寸法仕上げ済みワークを一つずつ、矢印Vのようにセンタレス研削機に供給して表面仕上げを行ない、ヒゲ状突起を除去する。
【0035】
以上に説明した図1〜図3の試案は、何れも1基のセンタレス研削機を用い、その調整砥石または研削砥石を正,逆転させたものである。図4は、複数のセンタレス研削機を用いて、寸法仕上げと表面仕上げとのそれぞれを分担させた試案を示す模式的な工程図である。
図4(A)に示したセンタレス研削機は、調整砥石2および研削砥石4が従来例の回転方向で回転している。
多数のワークは矢印kのように(A)図のセンタレス研削機に供給され、従来例と同様にダウンカット方式で寸法仕上げされた後、(B)図のセンタレス研削機に移送6される。
本図4の試案における(B)図のセンタレス研削機は、従来例に比して調整砥石2が逆転しており、アップカット方式で表面仕上げされて搬出qされる。
図示を省略するが(B)図の表面仕上工程において、調整砥石を従来例の方向に回転させるとともに、研削砥石4を逆転させてアップカット方式の研削により表面仕上げしても同様の効果(微小突起の除去)が得られる。
【0036】
以上に説明した第1〜第4の試案によると、ワークが塑性流動し易い材質であっても、微小突起を残さないという効果が得られた。しかし、これらの試案の装置においては、センタレス研削機を操作して研削砥石の回転方向を変えたり、又は、2台のセンタレス研削機の間でワークを搬送したりしなければならず、手数が掛かった。
これらの不具合を解消した本発明装置の1実施形態について、図5を参照しつつ以下に説明する。
寸法仕上用と表面仕上用との2基のセンタレス研削機を用い、かつ、スルーフィールド技術を応用して自動的にワークを搬送するように構成してある。
第1センタレスユニットPは1葉回転双曲面調整砥石2Aを具備しており、第2センタレスユニットSは1葉回転双曲面調整砥石2Bを具備していて、それぞれスルーフィールド型のセンタレス研削機構を形成している。
【0037】
第1センタレス研削機Pの1葉回転双曲面調整砥石2Aは矢印aのように、同じく研削砥石4Aは矢印cのように、すなわち、それぞれ従来例の回転方向に回転してダウンカット方式でセンタレス研削する。
ワーク3は矢印mのように第1センタレス研削機Pに通し送りされ、寸法仕上げされた後、引き続いて第2センタレス研削機Sに、矢印mのように送り込まれる。
この第2センタレス研削機の研削砥石4Bは矢印bの方向に、すなわち従来例の回転方向と反対に回転していて、通し送られるワークをアップカット方式でセンタレス研削し、表面仕上げを行なう。これによってヒゲ状突起が除去される。
【0038】
【発明の効果】
以上に本発明の実施形態を挙げて、その構成,作用を明らかならしめたように、請求項1の発明方法によると、塑性流動し易い材質のワークであっても、連続的にセンタレス研削を施して高精度の表面仕上げが可能であり、特に、微小突起を生じない(第1のセンタレスユニットで微小突起が発生しても、第2のセンタレスユニットで除去されるので、製品には微小突起が残らない)。
しかも、研削作業中に調整砥石や研削砥石を逆転させる必要が無く、1基のセンタレス研削機の内部に搬送装置を設ける必要も無い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1原理を説明するために示した試案に係るセンタレス研削機の模式的な工程図である。
【図2】 前掲の図1と異なる試案の模式的な工程図である。
【図3】 前掲の図1,図2と更に異なる試案の模式的な工程図である。
【図4】 複数のセンタレス研削機を用いてセンタレス研削を行なう試案の模式的な工程図である。
【図5】 2基のスルーフィード方式のセンタレスユニットを並べて構成した本発明装置の1実施形態を模式的に描いた平面図である。
【図6】 従来例のセンタレス研削機の模式図に、研削方式の説明図を付記した図である。
【符号の説明】
1・・・ブレード
1A・・・共用ブレード
2・・・調整砥石
2A,2B・・・1葉回転双曲面調整砥石
3・・・ワーク
3a,3b・・・研削代
4・・・研削砥石
4A,4B・・・研削砥石
5・・・仮置台
6・・・移送
7・・・スライド
m・・・ワークの進行を表す矢印
P・・・第1センタレスユニット
S・・・第2センタレスユニット
Claims (1)
- 1葉回転双曲面を有する調整砥石と、円柱状のワークを載せて軸心方向に通し送りするブレードと、上記のワークに接触してこれを研削する砥石車である研削砥石とから成るスルーフィード形のセンタレス研削機において、
1個の調整砥石(2A)と1個の研削砥石(4A)とを有する第1のセンタレスユニット(P)と、
1個の調整砥石(2B)と1個の研削砥石(4B)とを有する第2のセンタレスユニット(S)とが、共通のベースの上に並べて設置されており、
上記2組のセンタレスユニットのブレードが、1直線状に一体連設されて共用ブレード(1A)を形成していて、これら第1,第2のセンタレスユニットの間に搬送装置を介在させることなく、第1のセンタレスユニットで研削されたワークが直ちに第2のセンタレスユニットに供給されるようになっており、
かつ、第1のセンタレスユニット(P)の研削砥石(4A)の回転方向は、前記共用ブレードに対向する箇所の周速度が下向きとなる回転方向であり、
第2のセンタレスユニット(S)の研削砥石(4B)の回転方向は、前記共用ブレードに対向する箇所の周速度が上向きとなる回転方向であり、
第1センタレスユニット(P)の1葉回転双曲面調整砥石(2A)の回転方向、及び、第2センタレスユニット(S)の1葉回転双曲面調整砥石(2B)の回転方向は、前記共用ブレードに対向する箇所の周速度が上向きとなる回転方向であることを特徴とする、センタレス研削機における表面仕上装置。
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