JP3857341B2 - 陶磁器等の破損防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、地震等による陶磁器やガラス製品等の破損を防止し、且つ外部から陶磁器等を鮮明に見ることができる「陶磁器等の破損防止方法」に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
美術館等で美術品を展示や保管する場合、ナイロン糸等を用いて、陶磁器等が動かないように押さえている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、阪神大震災で美術館や個人コレクターが多大の被害を受けたことからも明らかなように、従来の方法では、地震が発生した場合に陶磁器等を有効に保護することができなかった。
これに対し、保険によるカバーも考えられるが、付保条件が厳格に過ぎるのみならず、付保限度額も小さ過ぎるといった問題がある。また、ほとんどの損害保険会社が地震保険を受け付けていないといった現実もある。そして、何よりもコレクター等にとってはコレクションである美術品は金銭には換えられないものである。よって、美術館や個人コレクター等は、自己防衛するしかなく、簡易で確実な破損防止方法が望まれていた。
この発明は、これらの課題を解決するためになされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、この発明に係る陶磁器又はガラス製品の破損防止方法は、陶磁器又はガラス製品の外周面に親水性の化合物からなる液体で覆われたコーティング層を形成し、次いで該コーティング層の周りに親油性のモノマー或いは半重合モノマーを重合させて塊状体を形成することを特徴とするものである。
また、この発明に係る陶磁器又はガラス製品の破損防止方法は、親油性の合成樹脂からなる複数個の塊状体を用い、前記塊状体同士を接合した際に、陶磁器又はガラス製品の形に適合するように前記塊状体の接合面をくり抜いたスペースを形成し、このスペースに前記陶磁器又はガラス製品を配置し、前記陶磁器又はガラス製品と前記塊状体との間に親水性の化合物からなる液体を注入し、その後、前記スペースを密封することを特徴とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の陶磁器等の破損防止方法の第1実施例の概略工程図を示している。
以下、この実施例の破損防止方法について、(1)から(3)まで時系列に説明する。
(1) 図1(A)に示すように、陶磁器等(図1では、皿を例にして示している)1を親水性の化合物からなる液体2、例えばポリプロピレングリコール或いはディグリセリン等の中へ浸す。なお、陶磁器等1を予め、後述する親油性のモノマーの重合温度まで温めておくと、次に述べる(2)の工程が容易に行われるので好ましい。
(2) 図1(B)に示すように、親水性の化合物からなる液体2で外周面がコーティングされた前記陶磁器等1を、親油性の合成樹脂、例えばメタクリル酸メチル樹脂等のモノマー或いは半重合モノマー3を注入した型枠4の中へ入れる。なお、型枠4の中に陶磁器等1を入れた後、前記モノマー或いは半重合モノマー3を注入してもよい。合成樹脂としては、透明性の高いものが好適に使用される。
(3) 図1(C)に示すように、陶磁器等1を埋没させた前記モノマー或いは半重合モノマー3を重合させた後、図1(D)に示すように、型枠4から取り出す。
これにより、親油性の合成樹脂30の中に親水基を持つ液体2を介して陶磁器等1が収納されることとなる。
【0006】
図2は、この発明の陶磁器等の破損防止方法の第2実施例を示している。
以下、この実施例の破損防止方法について、(1)から(5)まで時系列に説明する。
(1) 図2(B)に示すように、陶磁器等1のサイズに適した大きさの親油性の合成樹脂の塊状体を二個31,32用意する。
これには、第1実施例で述べたような型枠4内で重合させた合成樹脂の塊状体30を2つに切断して製作してもよいし(図2(A),(B) 参照)、或いは、それぞれ別々に型枠で重合させて製作してもよい。いずれにしても、二つの合成樹脂製の塊状体31,32は、互いに当接して接合可能とされている。
(2) 各塊状体31,32の接合面31a,32aにはそれぞれ、二つの塊状体31,32を接合した際に、陶磁器等1より若干大きなスペース31b,32bを形成する。すなわち、陶磁器等1に適合する大きさのスペース、及び緩衝の役割を果たす親水性の化合物からなる液体2を注入可能にするためのスペースを加えて、接合面の側から、くり抜く等して形成される。
(3) 前記スペース31b,32bに前記陶磁器等1を配置して各塊状体31,32の接合面31a,32a同士を当接し、前記合成樹脂30と同じモノマーか半重合モノマー3を注入して重合させるか接着剤で接着する。
(4) 前記陶磁器等1と前記塊状体31,32との間に親水性の化合物からなる液体2を注入する。これには、例えば、図2(C)に示すように、一端部から空気を排出させつつ他端部から親水性の化合物からなる液体2を注入することにより行われる。
親水性の化合物からなる液体2は、前記合成樹脂30(31,32)と同じか或いは近似した光屈折率のものが好適に使用される。
(5) 前工程(4)で使用した空気抜きの通路と、液体注入のための通路との出入口に、塊状体31,32の製作に使用した合成樹脂30と同じモノマー或いは半重合モノマー3を注入して重合させて塞ぐ。なお、通路に適合した大きさで、且つ塊状体31,32の製作に使用した合成樹脂30で作られた栓体を用い、この栓体の周囲に前記モノマー或いは半重合モノマー3を塗布した後、通路に嵌め、その後、重合させて前記スペース31b,32bを密封してもよい。
これにより、図2(D)に示すように、親油性の合成樹脂30の中に親水基を持つ化合物からなる液体2を介して陶磁器等1が収納されることとなる。
第2実施例の方法によれば、予め重合させた合成樹脂30を使用し、且つ合成樹脂30との間に液体2を介在させるので、陶磁器等1に熱が加わらず好ましい。
【0007】
次に、これらの方法によって製作された合成樹脂30中に陶磁器等1が埋設されてなる製品の使用状態について説明する。
合成樹脂30として、メタクリル酸メチル樹脂のような透明性の高い材料を使用することにより、陶磁器等1を鮮明に見ることができる。
また、陶磁器等1は合成樹脂30内に収納されており、且つ陶磁器等1と合成樹脂30との間に介在する親水性の化合物からなる液体2が緩衝剤の役目を果たすので、地震が発生した場合でも、陶磁器等1を有効に保護する。
さらに、陶磁器等1を合成樹脂30により覆ったので、陶磁器等1の展示をより引き立たせることができ、また陶磁器等自体1を単品で展示する場合と比較して盗難を防止するのにも役立つ。
その上、合成樹脂30に難燃剤を添加したり、出来上がった合成樹脂に難燃性のものを塗布したりすれば、難燃効果を発揮して、火災から陶磁器等1を保護することもできる。
合成樹脂30から陶磁器等1を取り出したい場合には、陶磁器等1や親水性の化合物からなる液体2に近接させて合成樹脂30をカッティング等で除去した後、合成樹脂30に対して溶解力のある液体へ浸し、合成樹脂30を膨潤させて取り除くことにより、陶磁器等1を傷めずに取り出すことができる。なお、例えば、合成樹脂30がメタクリル酸メチル樹脂からなる場合には、溶解液としてトルエン等を使用することができる。
【0008】
なお、この発明の陶磁器等1の破損防止方法は、上記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。
例えば、上記各実施例においては、陶磁器等1を覆う合成樹脂30(モノマー或いは半重合モノマー)に親油性のものを用い、合成樹脂30と陶磁器等1との間に介在させる液体2に親水性のものを用いた例を示したが、これと逆の構成であってもよい。つまり、合成樹脂30に親水性のものを用い、液体2に親油性のものを用いるなど、両者は相反する性質のものを使用すればよい。
また、陶磁器等1を覆う合成樹脂30の底面等に鏡面加工を施してもよい。これにより、陶磁器等1をより一層容易に見ることができる。
さらに、合成樹脂30の材料としては、上記のメタクリル酸メチル樹脂に限られず、ポリカーボネートやポリスチレン等も使用可能である。
【0009】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明に係る陶磁器等の破損防止方法によれば、地震が発生した場合でも陶磁器等を有効に保護することができる。
また、合成樹脂の性質とは相反する性質の液体を介して陶磁器等が収納されているので、陶磁器等を取り出す際に陶磁器等に傷を付ける心配もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の陶磁器等の破損防止方法の第1実施例の概略工程図である。
【図2】 本発明の陶磁器等の破損防止方法の第2実施例の概略工程図である。
【符号の説明】
1 陶磁器等
2 親水性の化合物からなる液体
3 合成樹脂のモノマー或いは半重合モノマー
4 型枠
30 合成樹脂
31,32 合成樹脂製塊状体
31a,32a 接合面
31b,32b スペース
Claims (2)
- 陶磁器又はガラス製品の外周面に親水性の化合物からなる液体で覆われたコーティング層を形成し、次いで該コーティング層の周りに親油性のモノマー或いは半重合モノマーを重合させて塊状体を形成する
ことを特徴とする陶磁器又はガラス製品の破損防止方法。 - 親油性の合成樹脂からなる複数個の塊状体を用い、前記塊状体同士を接合した際に、陶磁器又はガラス製品の形に適合するように前記塊状体の接合面をくり抜いたスペースを形成し、このスペースに前記陶磁器又はガラス製品を配置し、前記陶磁器又はガラス製品と前記塊状体との間に親水性の化合物からなる液体を注入し、その後、前記スペースを密封する
ことを特徴とする陶磁器又はガラス製品の破損防止方法。
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AU73376/96A AU7337696A (en) | 1995-11-01 | 1996-10-28 | Method for preventing breaking of whiteware or the like |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
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1995
- 1995-11-01 JP JP30986895A patent/JP3857341B2/ja not_active Expired - Lifetime
-
1996
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