JP3856658B2 - 半導体増幅回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に高周波領域の半導体増幅回路に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来の高出力増幅回路の一例を図4に示す。この増幅回路は10GHzで動作し、5Wの信号を回路の外へ出力する構成となっている。また、初段から最終段までの各々の増幅器における電力利得は8dB程度である。
【0003】
この増幅回路は、初段から第3段までは増幅器401〜405、最終段は増幅器5によって構成されている。増幅器401〜405、増幅器5は、各々、シングルエンド型のトランジスタ一段の増幅器である。
【0004】
初段の増幅段を構成する増幅器401は、信号入力端子1に、ブロッキングコンデンサC1を介して接続されている。また、初段の増幅器401から最終段の増幅器5にかけても、同様にブロッキングコンデンサC2〜C4を介して、それぞれ接続されている。さらに最終段の増幅器5も、信号出力端子3に、ブロッキングコンデンサC5を介して接続されている。ここでこれらブロッキングコンデンサを用いるのは、信号の直流レベルを遮断するためである。
【0005】
その他、図4に示す構成において、7a及び7bは、それぞれ電源407及び409の低周波電圧変動を抑制するためのバイパスコンデンサである。
【0006】
ここで、この回路における信号の流れと動作を説明する。
【0007】
この増幅回路において、まず、図4の信号入力端子1に入力した信号は、ブロッキングコンデンサC1を介して増幅器401に入力し、ここで増幅され、出力される。その後、ブロッキングコンデンサC2を介して増幅器403に入力する。そして、ここで増幅され、出力された信号は、ブロッキングコンデンサC3を介して増幅器405に入力する。増幅器405で増幅され出力された信号は、最終段の増幅段である増幅器5に、ブロッキングコンデンサC4を介して入力され、5W程度に増幅され、ブロッキングコンデンサC5を介して信号出力端子3より出力される。
【0008】
ここで、図5を参照して、各増幅器の動作について説明する。図5は、増幅回路における場所を横軸にとり、それに対して、縦軸に信号電力レベル(W)をとったレベルダイアグラムである。このレベルダイアグラムは、各増幅器の電力利得能力及び電力獲得能力を表すものである。
【0009】
この図5に示す構成によれば、まず、増幅回路における場所501、すなわち図4に示す構成における信号入力端子1に入った信号電力レベルが0.0032Wの信号は、増幅回路における場所503即ち、図4に示す構成における増幅器401において0.020Wの信号出力レベルを得る。その後、増幅回路における場所505即ち図4に示す構成における増幅器403において、0.125Wに増幅される。続いて、この信号は増幅回路における場所507即ち図4に示す構成における増幅器405において、0.792Wに増幅される。そして最終段の増幅段である増幅器5、即ち増幅回路における場所509において、5W程度に増幅され、増幅回路における場所511即ち図4に示す構成における信号出力端子3より出力される。
【0010】
つぎにこの回路において、各段の増幅段を構成する増幅器について説明する。
【0011】
この回路において、最終段の増幅段では10GHzで、5Wの信号を出力する。よって増幅器5には、準ミリ波帯で高出力を容易に得ることができるガリウム窒素(GaN)とアルミニウムガリウム窒素(AlGaN)からなるHEMT素子を用いる。また、その電源の正側の端子電圧Vdd409は40V程度で、負側はグラウンドに接地されている。
【0012】
ところで、増幅器401〜405に搭載するトランジスタには、ノーマリオン型ガリウム砒素(GaAs)電界効果トランジスタ(FET)を一個以上用い、そして、各増幅器の内部においてこれらのGaAsFETを並列動作させるようにする。すなわち、各増幅器401〜405に搭載する各トランジスタは、フィンガー数が1以上の構成になっている。
【0013】
更に、これら増幅器401〜405の正側の電源端子は並列に接続され、共通の電源407に接続されている。この増幅器401〜405の共通の電源電圧Vdd407は、+10V程度である。尚、増幅器401〜405の負側の電源端子はそれぞれグラウンドに接地されている。
【0014】
初段から第3段の増幅段において、図5で説明したレベルダイアグラムからも明らかなように、信号の出力電力が第3段目に向かって大きくなる。さらに、先に述べたように各段における増幅段で8dBの電力利得は保たれる。
【0015】
このような条件を考慮すると、これらの増幅器401〜405のそれぞれに搭載するトランジスタは、増幅器405に向かって信号の出力電力が大きくなるような構成とする。
【0016】
すなわち、一般に良く知られているように、フィンガー数は出力信号の電力に比例するため、これらの増幅器401〜405のそれぞれに搭載するトランジスタは、増幅器405に向かってフィンガー数が増加するように構成される。
【0017】
ここで、特に、増幅器405を構成するGaAsFETはつぎのようになっている。
【0018】
すなわち、このトランジスタには、ゲート長0.5μm、フィンガー長100μmの、ノーマリオン型ガリウム砒素(GaAs)電界効果トランジスタ(FET)を、14本程度用いている。これら14本のGaAsFETは、並列動作するように、トランジスタに集積されている。よって、このトランジスタは、フィンガー数が14で、全ゲート幅が1400μm程度の構成である。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
このように、図4を参照して説明した従来の回路は、シングルチップの半導体で構成されている増幅器401〜405、増幅器5を用いている。これら増幅器に用いられる各半導体素子の電子の最大速度を引き出すための、それぞれの電界強度は異なる。
【0020】
また、1つの電源で増幅器401〜405及び増幅器5を駆動しようとすると、401〜405のような構成の増幅器においては、電源電流が一定とならず、安定した電圧の供給が困難となってしまう。よって、増幅器401〜405と増幅器5で、異なる電源電圧を用意しなければならない。
【0021】
また、一般に、GaAsFETはフィンガー数の増大とともに、その並列動作のために、出力インピーダンスは減少する。よって、増幅器405の構成においては、フィンガー数14のGaAsFETを用いているため、その出力インピーダンスは数Ωと低い値となっている。このため、増幅器5の入力と接続するには、数十Ωのインピーダンス整合を行わなければならない。
【0022】
そして、増幅器405は、上記のように、微細なトランジスタ14本を集積した構成となっている。このように細いゲートが何本も入ったFETを製作するのは、歩溜まりが悪くコストが嵩むという問題点がある。
【0023】
この発明の半導体増幅回路は、以上のような問題点を鑑みてなされたものであり、従ってこの発明の目的は、各段における増幅器を一電源にて駆動する高周波半導体増幅回路を提供することにある。
【0024】
また、この発明の他の目的は、コストを抑え、回路内のインピーダンス整合を行いやすくする高周波半導体増幅回路を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
この目的の達成を図るため、この発明の半導体増幅回路は、下記の構成上の特徴を有している。
【0026】
すなわちこの半導体増幅回路は、N行M列(但し、N、Mは正の整数)のマトリックス状に結合された差動増幅器を具え、第1列から第M列は、それぞれ、初段からM段までの増幅段を構成している。
【0027】
さらに、この半導体増幅回路は、1つの入力信号をN個の出力信号に分割する信号分波回路と、N個の入力信号を1つの出力信号に合成する信号合成回路と、最終の増幅段を構成する増幅器とを具えている。
【0028】
そして、初段の増幅段のN個の差動増幅器に、信号分波回路によって分割されたN個の出力信号がそれぞれ入力され、M段のN個の差動増幅器からの出力信号を信号合成回路のN個の入力信号とし、及び信号合成回路からの1つの出力信号は、最終の増幅段を構成する増幅器への入力信号とする。
【0029】
さらに、初段から最終段の増幅段は、共通の電源と基準電位点との間に並列に接続されている。
【0030】
またこの半導体増幅回路において、初段からM段までの各段について、同一の段に含まれるN個の差動増幅器は互いに構成が同一である。
【0031】
そして、各段のN個の差動増幅器より出力されるN個の信号の電力は、初段からM段にかけて増加し、M段を構成するN個の差動増幅器から最大電力のN個の信号が出力される。なおこの際、初段からM段までの各段を構成する差動増幅器より得られる信号の電力利得は同一であることが好ましい。
【0032】
ここで、差動増幅器は、入力2相の信号の位相、すなわち第1及び第2入力信号間の位相が180°ずれている(このような関係にある第1及び第2入力信号を総称して、相補型の信号という。これと比較して、入力が一相の一つの信号を単相信号という。)ために、電源から当該差動増幅器に流れる電源電流は、時間的に比較的安定している。このため、この発明においては、各段に含まれるN個の差動増幅器の電源を直列に接続し、そして初段から最終段の増幅段は、共通の電源と基準電位点との間にその電源を並列に接続することができる。
【0033】
したがって、この発明によれば、最終段の増幅器の電源電圧と、それより前段の差動増幅器の電源電圧とで、異なる電圧をわざわざ用意しなくても、1つの電源電圧で、初段から最終段までの複数個の増幅器を共通に動作できる。
【0034】
さらに、この発明の半導体増幅回路によれば、信号分波回路によって分波されたN個の出力信号は、初段の増幅段のN個の差動増幅器に入力され、各段の差動増幅器によって増幅され、M段の増幅段のN個の差動増幅器より出力し、信号合成回路において合成される。このように、この発明の半導体増幅回路は、初段からM段までのそれぞれの段において、N個の差動増幅器を並列動作するしくみとなっている。このため、個々の差動増幅器から出力する信号の電力レベルは、従来の半導体増幅回路と比較して、並列動作させる差動増幅器の個数分だけ、小さくすることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照してこの発明の実施の形態における半導体増幅回路の構成、及び動作について併せて説明する。なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎず、従ってこの発明が図示例のみに限定されるものではないことは理解されたい。
【0036】
この発明の半導体増幅回路は、N行M列(但しN、Mは正の整数)のマトリックス状に結合された差動増幅器を具えている。ここでは、その実施の形態を示す一例として、N=4及びM=3の場合について説明する。
【0037】
(1)この発明の実施の形態における、半導体増幅回路の構成
図1は、この発明の実施の形態の構成を示す半導体増幅回路である。この実施の形態における半導体増幅回路は、4行3列のマトリックス状に結合された差動増幅器を具えている。
【0038】
図1に示す構成によれば、第1列〜第3列において、第1列は差動増幅器11〜17、第2列は差動増幅器21〜27、第3列は差動増幅器31〜37により構成されている。差動増幅器11〜17を囲った点線枠40、同様に差動増幅器21〜27を囲った点線枠42、31〜37を囲った点線枠44は、それぞれ、初段〜第3段までの増幅段を示す。
【0039】
初段40〜第3段44までのそれぞれの段に含まれる4個の差動増幅器11〜17、21〜27、31〜37は、隣接するそれぞれの次段の差動増幅器へ、ブロッキングコンデンサCを介して接続されている。尚、これらブロッキングコンデンサは、図1に示す構成において、容量の相違及び配置個所に係わらず、代表としてCの記号で示してある。
【0040】
さらにこの増幅回路は、信号分波回路51と、信号合成回路53と、最終の増幅段を構成する増幅器5とを具えている。信号分波回路51は、信号入力端子1に接続されていて、この信号入力端子1からの1つの入力信号を4個の出力信号に分割する。また、信号合成回路53は、4個の入力信号を1つの出力信号に合成する。
【0041】
尚、増幅器5は、図1に示す構成において点線枠46で囲まれているが、この点線枠46は、増幅器5が最終の増幅段であることを示している。
【0042】
そして、初段の増幅段40の4個の差動増幅器11〜17に、信号分波回路51において分割された4個の出力信号がブロッキングコンデンサCを介して、それぞれ入力される。また、第3段44の4個の差動増幅器31〜37からの出力信号は、ブロッキングコンデンサCを介して信号合成回路53へ4個の入力信号として、それぞれ入力される。信号合成回路53からの1つの出力信号は、最終の増幅段46を構成する増幅器5への入力信号とする。
【0043】
なお、この増幅回路において、初段から最終段の増幅段40〜46は、共通の電源19と基準電位点GRDとの間に並列に接続されている。ここで、基準電位点GRDは好ましくは接地とする。
【0044】
この実施の形態では、信号分波回路51はウィルキンソン型信号分波回路、信号合成回路53は、ウィルキンソン型信号合成回路を用いるのが好ましい。
【0045】
また、初段40から第3段44までの各段に含まれる4個の差動増幅器11〜17、21〜27、31〜37について、同一の段に含まれる差動増幅器は、互いに同一構成である。そして、これら差動増幅器の内部の回路には、ノーマリオン型ガリウム砒素(GaAs)電界効果トランジスタ(FET)を用いるのが望ましい。
【0046】
ここで、初段40から第3段44までの各段の4個の差動増幅器より出力される4個の信号の電力が、初段40から第3段44にかけて増加し、第3段44より最大電力の4個の信号が出力されるよう、これら各段の差動増幅器は構成されている。
【0047】
すなわち、これら各段に含まれる差動増幅器の内部の回路に用いるトランジスタのフィンガー数を、初段40から第3段44にかけて、増大するように構成する。先に述べたように、増幅器より出力される信号の電力は、その増幅器を構成するトランジスタのフィンガー数によるからである。
【0048】
よって、第3段44の差動増幅器31〜37の内部の回路に用いられるトランジスタのフィンガー数は、前段までの差動増幅器と比較して最大となる。この差動増幅器31〜37は、具体的には、ゲート長0.5μm、フィンガー長100μmのノーマリオン型ガリウム砒素(GaAs)電界効果トランジスタ(FET)を、5本並列動作するように集積した構成のFETを用いるのが最適である。即ち、このFETはフィンガー数が5で、全ゲート幅500μmの構成となっている。このとき、初段40及び第2段42の差動増幅器に用いられるトランジスタは、フィンガー数が5以下の構成となる。
【0049】
なお、好ましくは、各段において得られる電力利得が等しい構成とする。
【0050】
ところで、最終の増幅段46を構成する増幅器5は、具体的に、ガリウム窒素(GaN)とアルミニウムガリウム窒素(AlGaN)からなるHEMT素子であることが望ましい。
【0051】
このとき、差動増幅器11〜17、21〜27、31〜37内の回路は、10Vで動作する構成となっている。共通の電源19の電圧Vddは、設計に応じた任意好適な定電位点とすることができるが、最終段の増幅段を構成する増幅器5にGaNとAlGaNからなるHEMT素子を用いることから、好ましくは40Vとする。さらに、好ましくは電源における低周波電圧変動を抑制するために、バイパスコンデンサ7cを使用する。
【0052】
これら各部の回路51、53、増幅器5、差動増幅器11〜17、21〜27、31〜37、及びコンデンサの、それぞれ自体は、従来既知の構成のものを用いている。ウィルキンソン型の信号分波回路51、及びウィルキンソン型の信号合成回路53は、一般に、電源側の信号電力を、反射なしに、負荷側の複数の線路に分割して送り込めることをそれぞれ特徴としていて、その回路定数は50Ωである。さらに、ウィルキンソン型の信号合成回路53は、高周波の電気信号の電力をインピーダンス整合を損ねず、しかも、信号の電力損失を抑えて、合成することができる特徴を有している。
【0053】
このように、この実施の形態においては、4行3列のマトリックス状に結合された差動増幅器11〜17、21〜27、31〜37を具え、第1列から第3列のそれぞれの列に含まれる差動増幅器は、それぞれ、初段から第3段までの増幅段40、42、44を構成している。差動増幅器は、第1および第2の入力信号すなわち、入力2相の信号の位相が180°ずれているために、電源から当該の差動増幅器に流れる電源電流は、時間的に比較的安定している。このため、各段に含まれる4個の差動増幅器の電源を直列に接続し、そして初段から最終段の増幅段は、共通の電源と基準電位点との間にその電源を並列に接続することができる。したがって、この発明の実施の形態の構成によれば、最終段の増幅器の電源電圧と、それより前段の差動増幅器の電源電圧とで、異なる電圧をわざわざ用意しなくても、1つの電源電圧で、初段から最終段までの複数個の増幅器を共通に動作できる。
【0054】
(2)この発明の実施の形態における半導体増幅回路の動作
つぎに、上述した図1の構成の半導体増幅回路における、信号の流れについて説明する。ここで、先に述べたように図1の半導体増幅回路は、この発明の実施の形態を示す一例にすぎない。よって、これから述べる説明も、この発明の実施の形態を示すただの一例にすぎず、この発明の動作を限定するものではないことを、先ず理解されたい。
【0055】
ところで、上述した半導体増幅回路の構成の説明の項、(1)で説明したように、図1において、ウィルキンソン型の信号分波回路51は、信号入力端子1に接続されている。一方、最終段の増幅段を構成する増幅器5は、信号出力端子3にブロッキングコンデンサCを介して接続されている。
【0056】
始めに、この発明の実施の形態における半導体増幅回路の外から、信号入力端子1に信号が入力されると、この入力信号は、ウィルキンソン型の信号分波回路51において、等しいパワー(電力)に4分割され出力される。
【0057】
続いて、この4個の出力信号は、初段の増幅段40の4個の差動増幅器11〜17に、それぞれブロッキングコンデンサCを介して単相入力される。つぎに、これらの信号は、差動増幅器11〜17において増幅され、この増幅段40からの4個の相補型の信号として出力され、隣接する次段42の4個の差動増幅器21〜27に、ブロッキングコンデンサCを介して、それぞれ入力されて、増幅される。その後、これらの信号は、増幅段42から同様にしてブロッキングコンデンサCを介して、隣接する次段44の4個の差動増幅器31〜37に入力されて、増幅され、その後出力される。このとき増幅段44から出力される信号は、4個の単相信号であり、ブロッキングコンデンサCを介して、4個の入力信号として、ウィルキンソン型の信号合成回路53に入力される。
【0058】
その後、ウィルキンソン型の信号合成回路53において、これら4個の入力信号は1つの出力信号に合成される。さらに、この1つの出力信号は、最終の増幅段46を構成する増幅器5へ入力されて、増幅される。その後ブロッキングコンデンサCを介して、信号出力端子3より、半導体増幅回路の外へ出力される。
【0059】
続いてレベルダイアグラムを用いて、上記のように動作する各増幅器の電力利得能力及び電力獲得能力を図2に示す。図2は、図5と同様に、横軸は図1中の増幅回路における場所を示し、縦軸は信号電力レベル(W)を示している。よって図2中、横軸について、グラフの始点201及び終点211はそれぞれ信号入力端子1及び信号出力端子3を示す。同様に横軸について、xは、ウィルキンソン型の信号分波回路51、yはウィルキンソン型の信号合成回路53を示し、203〜207は、差動増幅器11〜17、21〜27、31〜37をそれぞれ示し、209は増幅器5を示している。
【0060】
尚、図4及び図5を参照して説明した従来例の構成及び動作と比較するために、図2は、10GHzで図1の回路を動作し、5Wの信号を得ることを想定して、計算し、作成したものである。さらに、増幅段42、44に含まれる各差動増幅器21〜27、31〜37の各々の電力利得能力は、従来と同様の8dBであることを前提とする。但し初段の増幅段40に含まれる差動増幅器11〜17については、上記に述べたように単相信号が入力するため、4dBの電力利得能力であるとする。
【0061】
図1中、各差動増幅器は、4行3列のマトリックス状に結合されている。これより先の説明においては、理解を分かりやすくするため、前記のような構成中、初段40から第3段44にかけて1つの行に含まれる17〜37の各差動増幅器の動作に注目する。そして、最終段の増幅段46を構成する増幅器5より5Wの出力を得ることを鑑み、差動増幅器37から17、そして信号入力端子1へ、信号の流れを逆に辿って説明を行う。
【0062】
図2に示す構成において、増幅回路における場所207即ち差動増幅器37では、0.0396Wの入力を0.25Wまで増幅する。しかし、その増幅回路における場所y、即ち信号合成回路53の電力合成損が1dB程度あるため、差動増幅器31〜37の4台の0.25Wの出力を合成しても、1.0Wとならない。この結果、増幅回路における場所209即ち増幅器5に、信号合成回路53より0.8Wの信号が供給される。
【0063】
同様に、増幅回路における場所205即ち差動増幅器27には0.0063Wの信号入力を加えてやれば、0.0396Wの信号を出力する。増幅回路における場所203すなわち差動増幅器17において、0.0063Wの出力を得るには、0.0025W以上の入力があればよい。このため、信号入力端子1の入力レベルは、増幅回路における場所x、即ち信号分波回路51の電力分配損(1dB程度)を考慮して、0.0125W程度とすればよい。
【0064】
このように、この発明の実施の形態によれば、信号分波回路によって分波された4個の出力信号は、初段の増幅段の4個の差動増幅器に入力され、各段の差動増幅器によって増幅され、第3段の増幅段の4個の差動増幅器より出力し、信号合成回路において合成される。すなわち、この発明の実施の形態における半導体増幅回路は、初段から第3段までのそれぞれの段において、4個の差動増幅器を並列動作するしくみとなっている。
【0065】
このため、従来の半導体増幅回路と比較して、個々の差動増幅器から出力する信号の電力レベルは、並列動作させる差動増幅器の個数分だけ、小さくすることができる。この結果、従来と比較してフィンガー数を小さくしたトランジスタを、差動増幅器内の回路に用いることができるため、各差動増幅器の製造コストを抑えることができる。よって、この発明においては、従来の半導体増幅回路の構成と比較して、回路全体のコストを低くすることができる。
【0066】
また、一般に、GaAsFETはフィンガー数の増大とともに、その並列動作のために、出力インピーダンスは減少する。しかし、この発明は、特に第3段の差動増幅器内の回路に、先に述べたような構成のトランジスタを用いることができるため、これら差動増幅器における入出力インピーダンスもあまり下がらない。よって、この発明における半導体増幅回路においては、従来の半導体増幅回路の構成と比較して、回路内のインピーダンス整合もとりやすい。
【0067】
(3)差動増幅器の回路の構成と動作の参考例
ここで、図1を参照して説明した半導体増幅回路で用いられる差動増幅器内の回路の構成と、その動作の一例を、参考例として紹介する(図1は、(1)の項で説明したように構成され、(2)の項で説明したように動作する。)。
【0068】
図3は、本発明における差動増幅器11〜37の回路を示したものである。この回路は、GaAsFET305、307、313、315、321、323、329〜337と、抵抗309および311、ダイオードで構成されるレベルシフタ317および319からなる。
【0069】
また、343は、電源安定化のためのバイパスコンデンサであり、FET329〜337は定電流回路を形成している。
【0070】
図1中、差動増幅器11、21、31において、341に当たるそれぞれの正側の電源端子は、隣接する差動増幅器13、23、33のそれぞれの負側の電源端子339に、接続されている。差動増幅器13、23、33および15、25、35についても同様である。
【0071】
一方、差動増幅器13、23、33において、339に当たるそれぞれの負側の電源端子は、隣接する差動増幅器11、21、31のそれぞれの正側の電源端子341に、接続されている。差動増幅器15、25、35および17、27、37についても同様である。
【0072】
また、図1において、差動増幅器11、21、31の負側の電源端子339は接地され、差動増幅器17、27、37の正側の端子341は、増幅器5の正側の電源端子と並列に接続されて、電源19に接続される。
【0073】
次に、この差動増幅器における信号の流れについて説明する。図3において、この差動増幅回路の入力端子を301及び303とする。始めに301及び303に入力された相補型の信号は、続いて、FET305、307のゲートに入力される。
【0074】
続いて、抵抗309および311の電圧の変化として出力された信号は、FET313および315のゲートに入力される。FET313および315のソースは、レベルシフタ317および319に接続されており、レベルシフタ317および319でシフトされた相補型の信号は、それぞれFET321および323のゲート端子に入力されて、それぞれのソース端子325及び327に出力される。
【0075】
なお、図1及び図3において、差動増幅器11〜17の信号入力は単相であり、入力端子301に入力される。一方、FET307のゲート、すなわち差動増幅器の信号入力端子303には入力が無く、接地されている。
【0076】
また、図1、及び図3において、信号合成回路53への信号入力は各差動増幅器からの単相信号であるため、差動増幅器31〜37においては、ソース出力端子325からの出力信号が信号合成回路53に入力され、図3におけるFET323のソース出力端子327からの出力信号は使用していない。
【0077】
なお、この差動増幅器内の回路の構成例において、305、307以外のGaAsFETの構成は、スィッチングFETの大きさによって、フィンガー数が換えられる。
【0078】
以上のように、この実施の形態においては、最終的に出力端子より、10GHzで5Wの信号を得る場合について述べた。一方、この実施の形態における半導体増幅回路の構成例では、2GHz以上の高周波数で駆動し、20W以上の出力信号を得ることができる。
【0079】
また、この実施の形態では、ウィルキンソン型信号分波回路において、信号が等しいパワー(電力)に4分割されて、出力される。しかし、この発明の半導体増幅回路においては、マトリックス状に結合されたN行M列の差動増幅器へ、1〜N個の任意の数の信号を信号分波回路より、分配することができる。
【0080】
【発明の効果】
この発明の半導体増幅回路によれば、N行M列のマトリックス状に結合された差動増幅器を具え、第1列から第M列は、それぞれ、初段からM段までの増幅段を構成している。そして、各段に含まれるN個の差動増幅器の電源を直列に接続し、初段から最終段の増幅段は、共通の電源と基準電位点との間にその電源を並列に接続する。したがってこの発明によれば、回路中に含まれる複数個の増幅器を、1電源で動作することが可能である。
【0081】
さらに、この発明の半導体増幅回路によれば、信号分波回路によって分波されたN個の出力信号は、初段の増幅段のN個の差動増幅器に入力され、各段の差動増幅器によって増幅され、M段の増幅段のN個の差動増幅器より出力し、信号合成回路において合成される。このように、この発明の半導体増幅回路は、初段からM段までのそれぞれの段において、N個の差動増幅器を並列動作するしくみとなっている。このため、個々の差動増幅器から出力する信号の電力レベルは、従来の半導体増幅回路と比較して、並列動作させる差動増幅器の個数分だけ、小さくすることができる。
【0082】
よって、この発明においては、従来と比較してフィンガー数を小さくしたトランジスタを用いることができるため、その製造コストを抑えることができる。そして、従来の半導体増幅回路の構成と比較して、回路全体のコストを低くすることができる。
【0083】
また、このような構成のトランジスタを用いると、入出力インピーダンスもあまり下がらず、この発明の半導体増幅回路においては、回路内のインピーダンス整合もとりやすい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の構成例を説明するための図である。
【図2】この発明の実施の形態における動作を説明するための、レベルダイアグラムである。
【図3】この発明の実施の形態において用いる差動増幅器の参考例を示すための図である。
【図4】従来の高出力増幅回路の構成を説明するための図である。
【図5】従来の高出力増幅回路の動作を説明するための、レベルダイアグラムである。
【符号の説明】
1:信号入力端子
3:信号出力端子
5:HEMT素子を用いた増幅器
7a,7b,7c:バイパスコンデンサ
11〜17,21〜27,31〜37:差動増幅器
19:電源
C:ブロッキングコンデンサ
GRD:基準電位点
40〜46:初段〜最終段の増幅段
51:ウィルキンソン型信号分波回路
53:ウィルキンソン型信号合成回路
201:信号入力端子1
203:差動増幅器11〜17
205:差動増幅器21〜27
207:差動増幅器31〜37
209:増幅器5
211:信号出力端子3
x:ウィルキンソン型信号分波回路51
y:ウィルキンソン型信号合成回路53
301,303:信号入力端子
305,307,313,315,321,323,329〜337:GaAsFET
309,311:抵抗
317,319:レベルシフタ
325,327:ソース出力端子
339:電源端子(負側)
341:電源端子(正側)
343:バイパスコンデンサ
401〜405:GaAsFETを用いた増幅器
407:増幅器401〜405の電源
409:増幅器5の電源
C1〜C5:ブロッキングコンデンサ
501:信号入力端子1
503:増幅器401
505:増幅器403
507:増幅器405
509:増幅器5
511:信号出力端子3
Claims (5)
- N行M列(但しN、Mは正の整数)のマトリックス状に結合された差動増幅器を具え、第1列から第M列は、それぞれ、初段からM段までの増幅段を構成しており、
さらに、1つの入力信号をN個の出力信号に分割する信号分波回路と、N個の入力信号を1つの出力信号に合成する信号合成回路と、最終の増幅段を構成する増幅器とを具えており、
前記初段の増幅段のN個の差動増幅器に、前記N個の出力信号がそれぞれ入力され、
前記M段のN個の差動増幅器からの出力信号を前記N個の入力信号とし、
前記1つの出力信号は、前記最終の増幅段を構成する増幅器への入力信号とし、
前記初段から最終段の増幅段は、共通の電源と基準電位点との間に並列に接続されていることを特徴とする半導体増幅回路。 - 請求項1に記載の半導体増幅回路において、
前記初段からM段までの各段について、同一の段に含まれるN個の差動増幅器は、互いに構成が同一であるとし、
各段のN個の差動増幅器より出力されるN個の信号の電力が、前記初段からM段にかけて増加し、前記M段を構成するN個の差動増幅器から最大電力のN個の信号が出力されること
を特徴とする半導体増幅回路。 - 請求項1または2に記載の半導体増幅回路において、
前記初段からM段までの各段を構成するそれぞれの差動増幅器より得られる信号の電力利得は同一であること
を特徴とする半導体増幅回路。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体増幅回路において、
前記信号分波回路は、ウィルキンソン型の信号分波回路であり、
前記信号合成回路は、ウィルキンソン型の信号合成回路であり、
前記初段の増幅段のN個の差動増幅器は、前記信号分波回路から前記N個の出力信号がそれぞれ単相入力されて、増幅されたN個の相補型の信号を隣接する次段のN個の差動増幅器にそれぞれ出力し、
前記次段からM−1段までの各段のN個の差動増幅器は、それぞれの前段のN個の差動増幅器から、N個の相補型の信号が入力されて、増幅されたN個の相補型の信号を隣接するそれぞれの次段のN個の差動増幅器に出力し、
前記M段のN個の差動増幅器は、それぞれ増幅されたN個の単相信号を前記N個の入力信号として、前記信号合成回路に出力する
ことを特徴とする半導体増幅回路。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体増幅回路において、前記基準電位点は接地であることを特徴とする半導体増幅回路。
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