JP3854197B2 - 塑性変形可能なリングの周長補正方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機(CVT)用積層金属ベルトを構成する金属リング等の塑性変形可能なリングの周長補正方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
無段変速機(CVT)用積層金属ベルトは、複数の金属リングを積層することにより形成されており、次のような方法により製造されている。まず、マルエージング鋼等の超強力鋼の薄板の端部同士を溶接して円筒状のドラムを形成し、該ドラムに対して第1の溶体化処理を行う。次に、溶体化されたドラムを所定幅に裁断してリングを形成し、該リングを圧延した後、圧延されたリングに対して第2の溶体化処理を行う。
【0003】
次に、溶体化されたリングを所定の周長となるように周長補正した後、時効及び窒化処理して硬度を向上させ、前記積層金属ベルト用の金属リングとする。そして、少しずつ周長の異なる複数の前記金属リングを相互に積層することにより、前記積層金属ベルトを形成する。
【0004】
ここで、前記金属リングは前記積層金属ベルトを構成する際に積層される順番に対応して各層毎に互いに相違する周長値が設定されており、それぞれの前記周長値を目標として前記周長補正を行う。前記周長補正は、前記金属リングを所定の延引量で延引することにより該金属リングに塑性変形可能な荷重を付与して該金属リングを所望の周長に補正するようにして行われる。
【0005】
前記延引量は、前記金属リングの材料金属、例えばマルエージング鋼の物性に従って、該金属リングを周長補正する前の周長(以下、補正前周長と略記する)から前記積層金属ベルトの各層毎の所望の周長に周長補正できるように、補正前周長の関数として設定されている。そこで、前記金属リングの補正前周長を測定し、該補正前周長から前記関数により算出される延引量で該金属リングを延引すれば、所望の周長に周長補正できるものと考えられる。
【0006】
しかしながら、前記方法で周長補正を行うと、補正後の周長のバラツキが大きくなり、他層の金属リングと相互に積層することができない金属リングが多数発生するという不都合がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、複数の塑性変形可能なリングを所望の周長に補正するときに、補正後の周長のバラツキを小さくすることができる周長補正方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記金属リングの補正前周長を測定し、該補正前周長から補正しようとする層に対応する前記関数により算出される延引量で該金属リングを延引すると、周長補正した後の周長(以下、補正後周長と略記する)のバラツキが大きくなる原因について、種々検討を重ねた。この結果、前記金属リングは前記延引量で延引された後、該金属の硬度により原形に復帰しようとする性質(以下、スプリングバックと略記する)を備えており、該硬度は該金属リングの材料のロット、周長補正の前工程である溶体化処理の際の炉内における位置等により異なり、該硬度に対応してスプリングバック量もまた異なることを見出した。
【0009】
前記スプリングバックを考慮すると、補正前周長が同一の金属リングを同一の延引量で延引しても、スプリングバック量が異なれば、補正後周長が同一とはならないことが明らかである。従って、前記金属リングを所望の周長に周長補正するには、前記スプリングバックに対応する延引量を設定する必要がある。
【0010】
前記スプリングバックに対応する延引量は、前記金属リングの1本1本について設定することが理想的であるが、個々の金属リングのスプリングバック量を予測することは困難である。そこで、周長補正を行う複数の金属リングについて、補正後周長の平均値を予測して、該平均値に対応する延引量を設定することが考えられる。前記補正後周長は前記スプリングバック量を含むものであるので、前記補正後周長の平均値に対応する延引量を設定することにより、補正後周長が所望の周長に一致しないまでも、そのバラツキを小さくすることができると期待される。
【0011】
一般に、母集団に関する平均値を求めるために、該母集団から抽出した標本について平均値を求め、該標本の平均値を該母集団に関する平均値と見なすことが行われている。そこで、前記周長補正を行う複数の金属リングを母集団とし、該母集団から所定数の金属リングを標本として抽出する方法が考えられる。この場合、前記標本の各金属リングについて周長補正を行い、各金属リングの補正後周長を測定してその平均値を求め、該標本の補正後周長の平均値を該母集団に関する補正後周長の平均値として扱う。しかし、前記標本の数が少ないときには、該標本は必ずしも前記母集団を正確に反映するものとはならず、該標本の補正後周長の平均値が該母集団に関する補正後周長の平均値に十分に近似していない虞がある。
【0012】
本発明者らは、以上の事情に鑑みさらに検討を重ねた。この結果、複数の金属リングの周長補正を行う際に、所定数の金属リング群毎に補正された延引量で周長補正を行う一方、前記標本の金属リングと同一の延引量で周長補正したと仮定した場合の補正後周長の平均値を求め、前記標本の金属リングの補正後周長の平均値との全平均値を求めることにより、前記標本数を逐次増加することができ、標本の補正後周長の平均値を次第に母集団に関する補正後周長の平均値に近づけることができることに想到し、本発明に到達した。
【0013】
そこで、本発明の塑性変形可能なリングの周長補正方法は、かかる目的を達成するために、複数の塑性変形可能なリングを所定量延引することにより該リングに塑性変形可能な荷重を付与して該リングを所望の周長に補正する方法において、所定数の第1のリング群の各リングを予め設定された初期延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正した後、周長を測定して第1の補正後周長とし、第1のリング群の各リングの第1の補正後周長の平均値を第1の平均値として該第1の平均値と所望の周長との差を算出して第1の周長差とし、該第1の周長差に基づく補正量を該初期延引量に加算して第1の補正延引量を算出する第1の工程と、所定数の第2のリング群を第1の補正延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正する一方、第2リング群の各リングを前記初期延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正したと仮定した場合の各リングの周長を第2の補正後周長とし、各リングの第2の補正後周長の平均値を算出して第2の平均値とし、第1の平均値と第2の平均値との全平均値を算出し、全平均値と所望の周長との差を算出して第2の周長差とし、該第2の周長差に基づく補正量を該初期延引量に加算して第2の補正延引量を算出する第2の工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の方法は、まず、周長補正の対象とされる複数のリングのうち、所定数の第1のリング群の各リングを予め設定された初期延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正する。前記初期延引量は、例えば、前記リング群の最初のリングの補正前周長から、前記リングの材料の物性に従って該リングを補正前周長から所望の周長に周長補正できるように設定されている所定の関数により算出される。
【0015】
次に、前記初期延引量により周長補正されたリングの周長を測定して第1の補正後周長とする。そして、前記リング群の各リングについて、第1の補正後周長を求め、その平均値を第1の平均値とする。
【0016】
通常、前記第1の平均値と所望の周長との間には、前記リングを前記初期延引量により周長補正したときに、該リングのスプリングバックにより生じる誤差がある。前記誤差を無視して、周長補正の対象とされる他のリングも前記初期延引量により周長補正すると、該周長補正後のリングの補正後周長のバラツキが大きくなる。
【0017】
従って、前記初期延引量を、周長補正の対象とされる全リングの補正後周長の平均値に対応する延引量となるように補正する必要がある。ここで、現時点では、母集団である周長補正の対象とされる全リングに対し、標本とされるのは第1のリング群のみであるので、第1のリング群に関する前記第1の平均値が、前記母集団に関する補正後周長の平均値と見なし得る唯一の量である。
【0018】
そこで、前記第1の平均値と所望の周長との差を算出して第1の周長差とする。そして、該第1の周長差に基づく補正量を該初期延引量に加算して第1の補正延引量を算出する。前記補正量は、前記第1の周長差をそのまま用いてもよく、該第1の周長差に所定の係数を乗じたものを用いてもよい。
【0019】
次に、前記第1の補正延引量を用いて、所定数の第2のリング群を延引し、塑性変形せしめて周長補正する。この結果、第2のリング群については、第1のリング群に比較して、周長補正の対象とされる全リングの補正後周長の平均値に関してより確からしい延引量で周長補正が行われる。
【0020】
しかし、前記第1の補正延引量の算出の基準とされた前記第1の平均値は、周長補正の対象とされる全リングの補正後周長の平均値に十分に近似していない虞がある。
【0021】
そこで本発明の方法では、次に、第2リング群の各リングを前記初期延引量により周長補正したと仮定した場合の各リングの周長を求めて、第2の補正後周長とし、各リングの第2の補正後周長の平均値を算出して第2の平均値とする。
【0022】
前記第2の平均値は、第2のリング群の各リングを第1の補正延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正したときの各リングの実際の補正後周長の平均値から、第1の周長差に基づく補正量を減算することにより算出する。前記第2のリング群の各リングの周長補正に用いられる第1の補正延引量は、前記初期延引量に第1の周長差に基づく補正量を加算したものである。従って、前記第2のリング群の各リングの実際の補正後周長の平均値から、第1の周長差に基づく補正量を減算すれば、第1の周長差に基づく補正量の作用が相殺され、第2のリング群の各リングを前記初期延引量により周長補正したと仮定した場合の各リングの補正後周長(第2の補正後周長)の平均値に相当する値となる。
【0023】
次に、第1の平均値と第2の平均値との全平均値を算出する。このようにすると、母集団である周長補正の対象とされる全リングに対し、第1、第2の両リング群が標本とされ、標本数が増加する。従って、前記全平均値は、前記母集団の補正後周長の平均値と見なすために、より確からしい値となる。
【0024】
次に、前記全平均値と所望の周長との差を算出して第2の周長差とし、該第2の周長差に基づく補正量を該初期延引量に加算して第2の補正延引量を算出する。前記補正量は、前記第1の補正延引量の算出の場合と同様に、前記第2の周長差をそのまま用いてもよく、該第2の周長差に所定の係数を乗じたものを用いてもよい。
【0025】
この結果、周長補正の対象とされる全リングの補正後周長の平均値に関してさらに確からしい延引量として前記第2の補正延引量を算出することができ、該第2の補正延引量を用いて第3のリング群以降のリング群の各リングを周長補正することにより、各リングの補正後周長のバラツキを小さくすることができる。
【0026】
本発明の方法では、所定数のリング群毎に、前記第2の工程を繰り返すことにより、補正延引量を逐次補正することができ、周長補正の対象とされる全リングの補正後周長の平均値と見なすために、さらに確からしい補正延引量を得ることができる。
【0027】
前記第2の工程の繰返しは、所定数の第(n(nは2以上の整数であり、前記第2の工程を繰り返す毎に1ずつ増加する)+1)のリング群を第nの補正延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正する一方、第(n+1)のリング群の各リングを前記初期延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正したと仮定した場合の各リングの周長を第(n+1)の補正後周長とし、各リングの第(n+1)の補正後周長の平均値を算出して第(n+1)の平均値とし、第1〜(n+1)の平均値の全平均値を算出し、全平均値と所望の周長との差を算出して第(n+1)の周長差とし、該第(n+1)の周長差に基づく補正量を前記初期延引量に加算して第(n+1)の補正延引量を算出する第(n+1)の工程により行うことができる。このとき、前記第(n+1)の平均値は、第(n+1)のリング群の各リングを第nの補正延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正したときの各リングの実際の補正後周長の平均値から、第nの周長差に基づく補正量を減算することにより算出する。
【0028】
本発明の方法は、例えば、前記塑性変形可能なリングが、無段変速機用積層金属ベルトを構成する金属リングである場合に適用することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1はCVT用積層金属ベルトの製造方法を示す説明図、図2は金属リングの周長補正方法を示す模式図、図3は金属リングの補正前周長と金属リングを所望の周長に周長補正するための延引量との関係を示すグラフである。また、図4は本実施形態の周長補正方法における金属リングの補正前周長と金属リングを所望の周長に周長補正するための延引量との関係を示すグラフ、図5は本実施形態の周長補正方法を適用する金属リング4の補正前周長を測定した結果を示すグラフ、図6は図5に示す補正前周長を備える金属リングを本実施形態の方法に従って周長補正したときのY値の変化を示すグラフ、図7は図5に示す補正前周長を備える金属リングを本実施形態の方法に従って周長補正したときの補正後周長を測定した結果を示すグラフである。
【0030】
本実施形態では、無段変速機(CVT)用積層金属ベルトを構成する金属リングの周長補正を行う場合を例として説明する。
【0031】
CVT用積層金属ベルトは、図1示のようにして製造される。
【0032】
まず、図1に示すようにマルエージング鋼等の超強力鋼の薄板1をベンディングしてループ化したのち、端部同士を溶接して円筒状のドラム2を形成する。このとき、前記マルエージング鋼は溶接の熱により時効硬化を示し、ドラム2の溶接の中心から両側に1mm前後の部分に硬度の高い部分が出現する。
【0033】
そこで、次に、ドラム2を加熱炉3に収容して、第1の溶体化処理を行う。そして、前記第1の溶体化が終了したならば、ドラム2を加熱炉3から搬出し、所定幅に裁断して金属リング4を形成する。金属リング4は、次いで圧下率40〜50%で圧延される。
【0034】
前記圧延の結果、金属リング4には金属結晶が潰された圧延組織が形成されていて、このままでは後続の窒化処理において金属組織に窒素が浸透しにくい。そこで次に、金属リング4を加熱炉5に収容して、第2の溶体化処理を行う。前記第2の溶体化が終了したならば、金属リング4を加熱炉5から搬出し、所定の周長に周長補正する。
【0035】
次に、前記周長補正が施された金属リング4に時効処理及び窒化処理を施す。前記時効処理は、図示しない加熱炉内で行う。また、前記窒化処理は、ガス窒化、ガス軟窒化、塩浴窒化等の方法により行う。そして、前記時効・窒化処理により所定の硬度とされた、少しずつ周長の異なる複数の金属リング4を相互に積層することにより、前記積層金属ベルトを形成する。
【0036】
金属リング4の周長補正は、例えば図2に模式的に示すように、まず、駆動ローラ6と従動ローラ7と、駆動ローラ6、従動ローラ7の中間位置に備えられた矯正ローラ8とに金属リング4を掛け回す。そして、図2に仮想線示するように従動ローラ7を駆動ローラ6から離間する方向に変位させて、金属リング4を緊張させ、駆動ローラ6と従動ローラ7との軸間距離から金属リング4の補正前周長を算出する。
【0037】
次に、矯正ローラ8を図2に矢示するように上方に変位することにより、従動ローラ7を駆動ローラ6側に移動せしめ、駆動ローラ6と従動ローラ7とが所定の間隔に保持された状態とする。この状態でさらに矯正ローラ8を上方に付勢することにより、金属リング4を前記補正前周長から算出される所定の延引量で延引し、金属リング4に塑性変形可能な荷重を付与する。
【0038】
金属リング4の補正前周長と、該金属リング4を所望の周長に周長補正するための前記延引量との間には、前記積層金属ベルトの各層毎に図3示のような関係がある。そこで、前記延引量は、前記補正前周長から図3示の関係に基づいて算出される。
【0039】
前記塑性変形可能な荷重を付与した後、矯正ローラ8を下方に変位することにより付勢を解除すると、金属リング4の周長補正が完了する。金属リング4は、前記周長補正後、再び従動ローラ7を駆動ローラ6から離間する方向に変位させることにより、前記と同一にして補正後周長が算出される。
【0040】
次に、本実施形態の周長補正方法について説明する。
【0041】
本実施形態では、前記延引量を次式(1)に基づいて算出する。
【0042】
延引量=(定数)−(X値)×(補正前周長)−(Y値) ・・・(1)
式(1)は、図3示の延引量と補正前周長との関係を変形したものであり、X値は金属リング4の材料(本実施形態ではマルエージング鋼)の物性に基づいて定められる係数、Y値はスプリングバック量に対応する変数である。
【0043】
式(1)による延引量と補正前周長との関係を図4に示す。図4から、補正前周長が同一であっても、Y値を変えることによりスプリングバック量に対応する延引量を選択することができることが明らかである。
【0044】
本実施形態では、図1示の加熱炉5における溶体化処理が終了した1ロットの金属リング4(例えば約10000本)を、例えば10本ずつのリング群とし、該リング群毎に周長補正を行う。
【0045】
まず、第1リング群に対しては、その最初の1本目の金属リング4について、図2示のようにして補正前周長を測定する。そして、図3のグラフを用いて、前記補正前周長の金属リングを所望の周長W0に周長補正するための初期延引量を求める。このとき、前記初期延引量について、式(1)から算出されるY値をY0とする。
【0046】
次に、前記Y0に対応する初期延引量で、第1リング群の各金属リング4を図2示のようにして周長補正し、補正後周長を測定する。そして、補正後周長の平均値を求め、該平均値をZ0とする。
【0047】
ここで、前記初期延引量は、金属リング4のスプリングバックを考慮していないので、平均値Z0と所望の周長W0との間には誤差がある。一方、前記1ロットの金属リング4の全数を母集団とすると、第1リング群は該母集団に対する標本である。そこで、該標本の平均値Z0を母集団の補正後周長の平均値と見なして、前記初期延引量を補正する。
【0048】
前記初期延引量の補正は、所望の周長W0と、補正後周長の平均値Z0との差を求めることにより行う。具体的には、所望の周長W0と、補正後周長の平均値Z0との差を第1周長差T0とし、Y0に第1周長差T0を加算した値をY1とする。そして、Y1を新しいY値として式(1)から算出される延引量を第1補正延引量とする。
【0049】
次に、第2リング群の周長補正は、Y1から導かれた第1補正延引量により行われ、第2リング群の各金属リング4の補正後周長が測定される。しかし、前記第1補正延引量は、第1リング群の高々10本の金属リング4を標本とする補正後周長の平均値Z0を母集団の補正後周長の平均値と見なして補正されたものであり、第1リング群の各金属リング4が母集団を正確に反映していないことが懸念される。
【0050】
そこで、次に第1補正延引量をさらに補正する。第1補正延引量の補正は、第2リング群の各金属リング4について、第1補正延引量を用いずに、前記初期延引量で周長補正を行ったと仮定したときの補正後周長の平均値V1を推定することにより行う。平均値V1は、第2リング群の各金属リング4の補正後周長から該補正後周長の平均値Z1を求め、平均値Z1から第1周長差T0を減算することにより算出する。
【0051】
次に、第2リング群の各金属リング4について前記初期延引量で周長補正を行ったと仮定したときの補正後周長の平均値V1と、第1リング群の各金属リング4に関する補正後周長の平均値Z0との全平均値を求め、平均値S1とする。次に、所望の周長W0と平均値S1との差を第2周長差T1とし、Y0に第2周長差T1を加算した値をY2とする。そして、Y2を新しいY値として式(1)から算出される延引量を第2補正延引量とする。
【0052】
このようにすることにより、前記第1、第2の両リング群が、前記初期延引量により周長補正を行った標本となるので標本数が増加し、平均値S1は母集団の補正後周長の平均値と見なすために、より確からしい値となる。
【0053】
次に、第3リング群の周長補正は、Y2から導かれた第2補正延引量により行われ、第3リング群の各金属リング4の補正後周長が測定される。本実施形態では、第3リング群の各金属リング4についても、第2リング群の各金属リング4に対するものと同様の操作を繰返し、第2補正延引量をさらに補正する。
【0054】
前記補正は、次のようにして行う。まず、第3リング群の各金属リング4について、第2補正延引量を用いずに、前記初期延引量で周長補正を行ったと仮定したときの補正後周長の平均値V2を、第3リング群の各金属リング4の補正後周長の平均値Z2から第2周長差T1を減算することにより算出する。
【0055】
次に、第3リング群の各金属リング4について前記初期延引量で周長補正を行ったと仮定したときの補正後周長の平均値V2と、第2リング群の各金属リング4について前記初期延引量で周長補正を行ったと仮定したときの補正後周長の平均値V1と、第1リング群の各金属リング4に関する補正後周長の平均値Z0との全平均値を求め、平均値S2とする。次に、所望の周長W0と平均値S2との差を第3周長差T2とし、Y0に第3周長差T2を加算した値をY3とする。そして、Y3を新しいY値として式(1)から算出される延引量を第3補正延引量とする。
【0056】
本実施形態では、第4リング群以降のリング群についても、第2リング群の各金属リング4に対するものと同様の操作を繰返すことにより、各リング群毎に逐次延引量を補正する。この結果、金属リング4の補正後周長のバラツキを小さなものとすることができる。
【0057】
次に、本実施形態の方法に従って、周長補正したときの実施例を示す。
【0058】
図5は、図1示の加熱炉5における溶体化処理が終了した1ロットの金属リング4(約10000本)について、補正前周長を測定した結果を示すグラフである。図5に示す補正前周長は、平均値に対する標準偏差σがσ=0.181であった。
【0059】
図6は、図5に示す補正前周長を備える金属リング4を、本実施形態の方法に従って周長補正したときの、Y値の変化を示すグラフである。図6から、本実施形態の方法によれば、次第にY値が特定の値に収束する傾向を示すことが明らかであり、これに伴って補正延引量もまた特定の量に収束することが明らかである。
【0060】
図7は、図5に示す補正前周長を備える金属リング4を、本実施形態の方法に従って周長補正したときに、補正後周長を測定した結果を示すグラフである。図7に示す補正後周長は、平均値に対する標準偏差σがσ=0.016であり、図5に示す補正前周長の標準偏差がσ=0.181であることと比較して、バラツキが非常に小さくなっていることが明らかである。
【0061】
尚、本実施形態ではCVT用積層金属ベルトを構成する金属リングの周長補正を行う場合を例として説明しているが、本実施形態の方法は塑性変形可能なリングであればどのようなリングの周長補正にも適用することができる。
【0062】
また、本実施形態では10本ずつのリング群に対して処理を行っているが、本実施形態の方法は1本ずつのリングに対して同様の処理を行ってもよい。但し、補正後の周長のバラツキを小さくするためには、数本ずつのリング群に対して、本実施形態の方法を適用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】無段変速機用積層金属ベルトの製造方法を示す説明図。
【図2】金属リングの周長補正方法を示す模式図。
【図3】金属リングの補正前周長と金属リングを所望の周長に周長補正するための延引量との関係を示すグラフ。
【図4】本実施形態の周長補正方法における金属リングの補正前周長と金属リングを所望の周長に周長補正するための延引量との関係を示すグラフ。
【図5】本実施形態の周長補正方法を適用する金属リング4の補正前周長を測定した結果を示すグラフ。
【図6】図5に示す補正前周長を備える金属リングを本実施形態の方法に従って周長補正したときのY値の変化を示すグラフ。
【図7】図5に示す補正前周長を備える金属リングを本実施形態の方法に従って周長補正したときの補正後周長を測定した結果を示すグラフ。
【符号の説明】
1…超強力鋼の薄板、 4…リング、 6,7,8…周長補正装置。
Claims (5)
- 複数の塑性変形可能なリングを所定量延引することにより該リングに塑性変形可能な荷重を付与して該リングを所望の周長に補正する方法において、
所定数の第1のリング群の各リングを予め設定された初期延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正した後、周長を測定して第1の補正後周長とし、第1のリング群の各リングの第1の補正後周長の平均値を第1の平均値として該第1の平均値と所望の周長との差を算出して第1の周長差とし、該第1の周長差に基づく補正量を該初期延引量に加算して第1の補正延引量を算出する第1の工程と、
所定数の第2のリング群を第1の補正延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正する一方、第2リング群の各リングを前記初期延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正したと仮定した場合の各リングの周長を第2の補正後周長とし、各リングの第2の補正後周長の平均値を算出して第2の平均値とし、第1の平均値と第2の平均値との全平均値を算出し、全平均値と所望の周長との差を算出して第2の周長差とし、該第2の周長差に基づく補正量を該初期延引量に加算して第2の補正延引量を算出する第2の工程とを備えることを特徴とする塑性変形可能なリングの周長補正方法。 - 前記第2の平均値は、第2のリング群の各リングを第1の補正延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正したときの各リングの実際の補正後周長の平均値から、第1の周長差に基づく補正量を減算することにより算出することを特徴とする請求項1記載の塑性変形可能なリングの周長補正方法。
- 所定数のリング群毎に、前記第2の工程を繰り返し、
所定数の第(n(nは2以上の整数であり、前記第2の工程を繰り返す毎に1ずつ増加する)+1)のリング群を第nの補正延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正する一方、第(n+1)のリング群の各リングを前記初期延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正したと仮定した場合の各リングの周長を第(n+1)の補正後周長とし、各リングの第(n+1)の補正後周長の平均値を算出して第(n+1)の平均値とし、第1〜(n+1)の平均値の全平均値を算出し、全平均値と所望の周長との差を算出して第(n+1)の周長差とし、該第(n+1)の周長差に基づく補正量を前記初期延引量に加算して第(n+1)の補正延引量を算出する第(n+1)の工程を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の塑性変形可能なリングの周長補正方法。 - 前記第(n+1)の平均値は、第(n+1)のリング群の各リングを第nの補正延引量で延引することにより塑性変形せしめて周長補正したときの各リングの実際の補正後周長の平均値から、第nの周長差に基づく補正量を減算することにより算出することを特徴とする請求項3記載の塑性変形可能なリングの周長補正方法。
- 前記塑性変形可能なリングは、無段変速機用積層金属ベルトを構成する金属リングであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の塑性変形可能なリングの周長補正方法。
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