JP3853545B2 - アスファルト改質剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アスファルトに好適な性質を付与するアスファルト改質剤に関する。さらに詳しくは、アスファルト改質剤の主成分である熱可塑性エラストマーの乳化・分散に使用する乳化剤として特定の非イオン性乳化剤および陰イオン性乳化剤を使用することによって、水性乳化分散液よりなるアスファルト改質剤の経日安定性および使用時のポンプ輸送時の安定性(機械的安定性)が改良され、かつ、アスファルトに好適な性質を付与することができるアスファルト改質剤に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
近年、アスファルトに、ゴム、樹脂(熱可塑性エラストマーを含む、以下同様)などの高分子材料からなる改質剤を添加することにより、60℃粘度、タフネス、テナシティー、感温性などを改善したアスファルト(改質アスファルト)が開発され、舗装の耐流動性、耐磨耗性などの向上を目的として使用されてきている。
【0003】
前記改質剤として、熱可塑性エラストマーを有機溶剤に溶解させたのち、該エラストマーに対して10重量%(以下、%という)以下のポリアルキレンオキシド基含有陰イオン性界面活性剤を主成分とし、必要により非イオン性界面活性剤が使用される乳化分散剤を加え、ついで温水を加えて乳化分散させ、有機溶剤を除去して平均粒子径5μm以下の水性乳化分散体のアスファルト改質剤を得て使用することが開示されている(特開平2−292368号公報)。
【0004】
なお、前記ポリアルキレンオキシド基含有陰イオン性界面活性剤および必要により使用される非イオン性界面活性剤の具体例として、それぞれポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル硫酸エステルソーダ塩(エチレンオキシド4モル付加物)、ポリオキシエチレンドデシルエーテル酢酸ソーダ塩(エチレンオキシド3モル付加物)、およびポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(エチレンオキシド4モル付加物)があげられている。
【0005】
また、アスファルト改質剤を含む多くの用途に使用することができるブロック共重合体ラテックスとして、一般式:
A−B−A、(A−B)n、B−(A−B)n、(A−B)n−AまたはA−B−(B−A)n
(式中、Aは25℃以上の2次転移温度を有する非弾性重合体ブロック、Bは10℃以下の2次転移温度を有する弾性重合体ブロック、nは2以上の整数)で表わされるブロック共重合体を、乳化剤として、(a)ロジン酸塩または不均化ロジン酸塩、および(b)一般式:
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基または炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルフェニル基、R2は炭素数2〜5のアルキレン基、mは3〜50の整数)で表わされる化合物および必要により増粘剤(メチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カゼイン、ポリアクリル酸またはその誘導体)を用いて乳化したブロック共重合体ラテックスが開示されている(特公昭52−22651号公報)。
【0008】
さらに、前記ブロック共重合体ラテックスと類似の技術として、アスファルト改質剤を含む多くの用途に使用することができるスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとして、溶液重合法によって得られたスチレン−ブタジエンランダム共重合体またはスチレン−ブタジエン2元ブロック共重合体またはこれらの混合物を、乳化剤として(a)高級脂肪酸、ロジン酸または不均化ロジン酸、および(b)一般式:
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基またはアルキル基の炭素数8〜12のアルキルフェニル基、R2は炭素数2〜5のアルキレン基、nは3〜50の整数)で表わされる化合物を重合体溶液に溶解し、これをアルカリ水溶液と混合、乳化したスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスが開示されている(特公昭52−15100号公報、特開昭51−13847号公報)。
【0011】
しかし、前記アスファルト改質剤、アスファルト改質剤として使用し得るブロック共重合体ラテックスおよびスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスは、いずれも経日安定性または経日安定性が必ずしも充分ではないという問題を有している。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記のごとき従来の技術の課題、とくに特開平2−292368号公報に記載されているアスファルト改質剤および特公昭52−22651号公報に記載されているブロック共重合体ラテックスをアスファルト改質剤として使用する場合の問題を解決するためになされたものであり、
モノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、およびトリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物を含むスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ならびに、モノベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ジベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、およびトリ以上のベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物を含むベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の非イオン性乳化剤およびロジン酸塩の存在下で乳化分散させた熱可塑性エラストマーの水性乳化分散液よりなるアスファルト改質剤(請求項1)、
前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、モノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれる請求項2記載の改質剤(請求項2)、および
前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、モノベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれる請求項1記載の改質剤(請求項3)
に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される熱可塑性エラストマーは、アスファルトとの相溶性が良好で、アスファルトに加えた場合にアスファルトの軟化点、粘弾性、強靭性、高温粘度、低温可撓性などを向上させることができる成分として使用されるものである。
【0014】
前記熱可塑性エラストマーとしては、従来からアスファルト改質剤に使用されているものであればとくに限定なく使用することができる。その例としては、たとえば一般式:
A−B−A、(A−B)n、B−(A−B)nおよび(A−B)n−A
(式中、Aは25℃以上の2次転移温度を有する非弾性重合体ブロック、Bは10℃以下の2次転移温度を有する弾性重合体ブロック、nは2以上の整数)で表わされるブロック共重合体があげられる。
【0015】
前記非弾性重合体ブロックとしては、たとえばスチレン、α−メチルスチレンなどのモノビニル芳香族炭化水素から選ばれた単量体の単独重合体ブロックまたは2種以上からなる共重合体ブロック、モノビニル芳香族炭化水素と下記Bブロック成分の脂肪族共役ジエン化合物とのテーパー型共重合体ブロック、モノビニル芳香族炭化水素と下記Bブロック成分の脂肪族共役ジエン化合物とのランダム共重合体ブロックなどがあげられる。該ブロックの具体例としては、スチレン重合体、スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体、スチレンとブタジエンあるいはイソプレンとのテーパー型共重合体、スチレンとブタジエンあるいはイソプレンとのランダム共重合体などのブロックがあげられ、その分子量としては、一般に1,000〜200,000、さらには10,000〜50,000のものが使用される。
【0016】
また、前記弾性重合体ブロックとしては、たとえばブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン化合物から選ばれた単量体の単独重合体ブロック、前記単量体の2種以上からなる共重合体ブロック、脂肪族共役ジエン化合物とモノビニル芳香族化合物とのテーパー型共重合体ブロック、脂肪族共役ジエン化合物とモノビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロック、これらの重合体ブロックを水添した重合体ブロックなどがあげられる。該ブロックの具体例としては、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、ブタジエンとイソプレンの共重合体、スチレンとブタジエンあるいはイソプレンのテーパー型共重合体、スチレンとブタジエンあるいはイソプレンのランダム共重合体、水添したブタジエン重合体、水添したスチレンとブタジエンの共重合体などのブロックがあげられ、その分子量としては、一般に5,000〜500,000、さらには100,000〜350,000のものが使用される。
【0017】
前記ブロック共重合体中における非弾性重合体ブロックの含有率は全重合体に対して10〜70%、さらには20〜40%であるのが好ましい。該含有率が前記範囲外の場合には熱可塑性エラストマーとしての特徴が発現しにくくなる。
【0018】
前記ブロック共重合体の分子量としては、10,000〜700,000、さらには100,000〜500,000であるのが好ましい。該分子量が小さすぎる場合には、ラテックスから得られる皮膜の機械的強度が充分でなくなる傾向が生じ、大きすぎる場合には、乳化時の粘度が高くなりすぎる、乳化が不完全になったり困難となり、得られるラテックスの性能に悪影響を及ぼす傾向が生じる。
【0019】
前記ブロック共重合体の具体例としては、たとえばSBSブロック共重合体、SISブロック共重合体、水添SBSブロック共重合体などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
前記ブロック共重合体は、リビング重合開始剤の存在下に、単量体をブロック毎に順次重合させる方法、反応性の異なる2種以上の単量体を同時に投入して重合させ、ブロック共重合体を得る方法、前記開始剤によるリビングブロック共重合体をカップリングする方法などにより得ることができる。
【0021】
前記ブロック重合体から該ブロック共重合体ラテックスを製造する際のポリマー溶液は重合溶液をそのまま用いてもよく、また該ブロック共重合体の固形状物をベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロオクタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクレン、二塩化メタンなどの溶剤に溶解させて使用してもよい。ポリマー溶液は通常5〜30%の濃度の範囲で用いるのが好ましい。
【0022】
本発明では、前記熱可塑性エラストマーを乳化・分散させるために、スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンポリアミンポリアルキレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルポリアルキレンオキシド付加物およびベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物のうちの1種以上(以下、特定の乳化剤ともいう)および陰イオン性乳化剤が使用される。熱可塑性エラストマーの乳化・分散に特定の乳化剤を使用するため、製造されるアスファルト改質剤の経時安定性および機械的安定性を良好にすることができる。さらに、強い乳化性を示す陰イオン性乳化剤を使用するため、ブロック共重合体に対する乳化剤の使用割合を小さくすることができ、得られるアスファルトの耐水性を向上させることができる。また、特定の乳化剤を使用する結果、熱可塑性エラストマーの乳化・分散時に熱可塑性エラストマー溶液の製造に使用される有機溶剤(たとえばトルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロオクタンなど)を減圧除去する際の泡立を抑制することにより、脱溶剤を短時間に容易に実施可能で、保存上安定な水性分散液を製造することができる。
【0023】
前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物とは、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノールおよびトリ以上のスチレン化フェノールのうちの1種以上に炭素数2〜4のアルキレンオキシド(たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)を付加重合させたものである。たとえばジスチレン化フェノールポリエチレンオキシド付加物は次式で示される。
【0024】
【化3】
【0025】
前記トリ以上のスチレン化フェノールとは、トリスチレン化フェノールにテトラ以上のスチレン化フェノールが少量混入していてもよいことを意味する。
【0026】
前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の好ましい具体例としては、たとえばエチレンオキシド平均付加モル数が20モルのモノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれるものなどがあげられる。
【0027】
前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物は、モノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、トリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物をそれぞれ単独で使用してもよいが、乳化性は分布をもっている方が良好であるため、これらの混合物を用いる方が好ましい。
【0028】
前記ポリアルキレンポリアミンポリアルキレンオキシド付加物とは、たとえばポリエチレンイミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンなどのポリアルキレンポリアミンに、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加重合させたもの(たとえばエチレンオキシドとプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドとをブロックまたはランダム付加重合させたもの)である。
【0029】
前記ポリアルキレンポリアミンポリアルキレンオキシド付加物の好ましい具体例としては、たとえばポリエチレンイミン(たとえば分子量1200または1800のもの)にエチレンオキシドとプロピレンオキシドをランダムまたはブロック付加してなる多官能チッ素系ポリエーテル化合物などがあげられる。
【0030】
前記多価アルコール脂肪酸エステルとは、たとえば3〜8価の多価アルコールと炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸とからなり、ソルビタンを例にとれば水酸基が1分子当り平均2〜3個残存しているもの、ショ糖を例にとれば水酸基が1分子当り平均5〜7個残存しているものである。
【0031】
前記多価アルコールの具体例としては、たとえばグリセリン、ジグセリン、ソルビトール、ソルバイドや前述のソルビタン、ショ糖などがあげられる。
【0032】
また、前記飽和または不飽和脂肪酸の具体例としては、たとえばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、炭素数8〜22の直鎖状または分岐を有する合成飽和脂肪酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などの不飽和脂肪酸などがあげられる。
【0033】
前記多価アルコール脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、たとえばソルビタンオレイン酸エステル(モノ、ジ、トリ、テトラエステルの分布があり、1分子当り平均2〜3個の水酸基を有するもの)などがあげられる。
【0034】
前記多価アルコール脂肪酸エステルポリアルキレンオキシド付加物とは、たとえば3〜8価の多価アルコールと炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸とからなり、ソルビタンを例にとれば水酸基が1分子当り2〜3個残存している多価アルコール脂肪酸エステル、ショ糖を例にとれば水酸基が1分子当り平均5〜7個残存している多価アルコール酸エステルに、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)を付加重合させたものである。
【0035】
前記多価アルコールおよび飽和または不飽和脂肪酸としては、前記多価アルコール脂肪酸エステルの製造に使用したものと同じものが使用される。
【0036】
前記多価アルコール脂肪酸エステルポリアルキレンオキシド付加物の好ましい具体例としては、たとえばアトラス社のTween60、Tween80、Tween85、第一工業製薬(株)のソルゲンTW−20、ソルゲンTW−60、ソルゲンTW−80などがあげられる。
【0037】
前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物とは、モノベンジル化フェノール、ジベンジル化フェノール、トリ以上のベンジル化フェノールのうちの1種以上に、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキサイド)を付加重合させたものである。たとえばジベンジル化フェノールポリエチレンオキシド付加物は次式で示される。
【0038】
【化4】
【0039】
前記トリ以上のベンジル化フェノールとは、トリベンジル化フェノールにテトラ以上のベンジル化フェノールが少量混入していてもよいことを意味する。
【0040】
前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の好ましい具体例としては、たとえばエチレンオキシド平均付加モル数が20モルのモノベンジル化フェノールエチレンオキシド付加物:ジベンジル化フェノールエチレンオキシド付加物:トリ以上のベンジル化フェノールエチレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれるものなどがあげられる。
【0041】
前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物は、モノベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ジベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、トリ以上のベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物をそれぞれ単独で使用してもよいが、乳化性は分布をもっている方が良好であるため、これらの混合物を用いる方が好ましい。
【0042】
前記特定の乳化剤は、1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらのうちでは、スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、多分散度が高く(疎水基、親水基ともに幅広い分布をもっており)、乳化される熱可塑性エラストマーの多分散度が高いのとあいまって乳化性能が良好で泡トラブルが少なくなる点から好ましい。
【0043】
前記特定の乳化剤は、それらだけを非イオン性乳化剤として用いてもよいが、通常の非イオン性乳化剤と組み合わせて用いてもよい。
【0044】
前記通常の非イオン性乳化剤としては、たとえばアルキルポリオキシエチレンエーテル(アルキル基の炭素数は8〜22)、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテル(アルキル基の炭素数は8〜12)、アルキルポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル(アルキル基の炭素数は8〜22、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックはどちらが先に付加していてもよい、また、ランダム付加していてもよい)、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル(脂肪酸は炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸)、ポリオキシエチレン(硬化)ひまし油、アルキルポリオキシエチレンアミン(アルキル基の炭素数は8〜18)、アルキルポリオキシエチレンアミド(アルキル基の炭素数は8〜18)などがあげられる。
【0045】
前記特定の乳化剤と通常の非イオン性乳化剤とを組み合わせて用いる場合、目的に応じて適宜使用割合を定めて使用すればよい。
【0046】
本発明に用いられる陰イオン性乳化剤としては、前記熱可塑性エラストマーの水性乳化分散液の製造に使用することができるものであればとくに限定なく使用し得る。
【0047】
前記陰イオン性乳化剤としては、たとえばカルボン酸型陰イオン性乳化剤、硫酸エステル型陰イオン性乳化剤、スルホン酸型陰イオン性乳化剤、リン酸エステル型陰イオン性乳化剤などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
前記カルボン酸型陰イオン性乳化剤の具体例としては、たとえば一般式:
RCOOM
(式中、RはC7 〜 21の飽和または不飽和炭化水素基、MはNa、K、NH4、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン)で表わされる脂肪酸塩、松の木の抽出などによって得られる樹脂酸の塩で主成分はアビエチン酸塩(たとえば、
【0049】
【化5】
【0050】
で表わされる)であるロジン酸塩、石油に含まれるカルボン酸の塩で、たとえば一般式:
【0051】
【化6】
【0052】
(式中、MはNa、K、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン、nは1以上)で表わされる構造を有するナフテン酸塩、一般式:
R(OC2H4)nOCH2COOM
(式中、RはC10 〜 18のアルキル基、アルキルフェニル基、MはNa、Kなどの陽イオン、nは2以上)で表わされるエーテルカルボン酸塩、一般式:
【0053】
【化7】
【0054】
(式中、RはC8 〜 18の不飽和炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるアルケニルコハク酸塩、一般式:
RCON(CH3)CH2COOM
(式中、RはC11 〜 18の飽和または不飽和炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるN−アシルサルコシン塩、一般式:
【0055】
【化8】
【0056】
(式中、RはC11 〜 18の飽和または不飽和炭化水素基、MはNa、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン)で表わされるN−アシルグルタミン酸塩などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ロジン酸塩(ロジン石鹸)が脱溶媒(通常脱トルエン)時の泡立が少なく、エマルジョンの安定性もよくなる。
【0057】
前記硫酸エステル型陰イオン性乳化剤の具体例としては、一般式:
ROSO3M
(式中、RはC8 〜 18の飽和または不飽和炭化水素基、MはNa、K、NH4、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン)で表わされる硫酸第1アルキル塩、一般式:
【0058】
【化9】
【0059】
(式中、RR1CH−はC12 〜 16の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する第2級アルコールからOH基を除いた基、MはNaなどの陽イオン)で表わされる硫酸第2アルキル塩、一般式:
R(OC2H4)nOSO3M
(式中、RはC12 〜 18の飽和または不飽和炭化水素基、MはNa、K、NH4、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン、nは2以上)で表わされる硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、一般式:
【0060】
【化10】
【0061】
(式中、RはC8 〜 12のアルキル基、MはNaなどの陽イオン、nは2以上)で表わされる硫酸アルキルフェニルポリオキシエチレン塩、一般式:
RCOOCH2CH(OH)CH2OSO3M
(式中、RはC11 〜 17の飽和または不飽和炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされる硫酸モノアシルグリセリン塩、一般式:
RCONHC2H4OSO3M
(式中、RはC11 〜 17の飽和または不飽和炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるアシルアミノ硫酸エステル塩、オリブ油、ひまし油、綿実油、なたね油、牛脂などの油脂中の2重結合や水酸基が硫酸エステル化物の塩(一部アシルグリセリンの加水分解、硫酸化も起こっている)である硫酸化油、オレイン酸、リシノール酸などの2重結合、水酸基を有する脂肪酸のプロピル、ブチルエステルなどの硫酸エステル化物の塩である硫酸化脂肪酸アルキルエステルなどがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
前記スルホン酸型陰イオン性乳化剤の具体例としては、たとえばC14 〜 19のα−オレフィンのスルホン化物で一般にはRCH=CHCH2SO3M(アルケニル体)および
【0063】
【化11】
【0064】
(MはNa、Kなどの陽イオン)の混合物として得られるα−オレフィンスルホン酸(AOS)塩、C8 〜 20のn−パラフィンにSO2、Cl2のスルホオキシ化物あるいはスルホクロル化物をアルカリで中和して得られる第2アルカンスルホン酸塩、C12 〜 18の脂肪酸のメチル、イソプロピルエステルなどのα−スルホン化物の塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、一般式:
RCOOC2H4SO3M
(式中、RはC11 〜 17の飽和または不飽和炭化水素基、M、Naなどの陽イオン)で表わされるアシルイセチオン酸塩、一般式:
RCON(CH3)C2H4SO3M
(式中、RはC11 〜 17の飽和または不飽和の炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるN−アシル−N−メチルタウリン酸、一般式:
【0065】
【化12】
【0066】
(式中、RはC2 〜 20直鎖または分岐鎖アルキル基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるジアルキルスルホコハク酸、一般式:
【0067】
【化13】
【0068】
(式中、RR1CH−はC9 〜 13の直鎖または分岐鎖アルキル基、MはNa、Kなどの陽イオン)で表わされるアルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS、LAS)、一般式:
【0069】
【化14】
【0070】
(式中、RはC3 〜 5の直鎖または分岐鎖アルキル基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるアルキルナフタレンスルホン酸塩、一般式:
【0071】
【化15】
【0072】
(式中、RはC12のアルキル基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
前記リン酸エステル型陰イオン性乳化剤の具体例としては、たとえば一般式:
【0074】
【化16】
【0075】
(式中、RはC8 〜 18のアルキル基、MはH、Na、K、NH4、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン)で表わされるリン酸アルキル塩((1)リン酸モノエステル塩、(2)ジエステル塩、(3)(1)と(2)の混合物として存在する)、一般式:
【0076】
【化17】
【0077】
(式中、RはC12 〜 18のアルキル基、MはH、Na、K、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン、nは2以上)で表わされるリン酸アルキルポリオキシエチレン塩(通常はジエステル塩との混合物として存在する)、一般式:
【0078】
【化18】
【0079】
(式中、RはC8 〜 12のアルキル基、MはH、Na、K、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン、nは2以上)で表わされるリン酸アルキルポリオキシエチレン塩(通常はモノエステル塩とジエステル塩との混合物として存在する)などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
前記陰イオン性乳化剤に使用される原料のアルコールの具体例としては、たとえば2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、アルフォール、ドバノールなどの合成第1級アルコール、タージトールS、ソフタノール、オキソアルコールなどの合成第2級アルコール、ベンジルアルコール、およびフェノールとしてオクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどのC8 〜 22のもの、アミンの具体例としては、ラウリルアミン、ラウリルメチルアミン、ジオレイルアミンなどの高級アミン、カルボン酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ロジン酸などがあげられる。
【0081】
前記特定の乳化剤(通常の非イオン性乳化剤と組み合わせて用いる場合は、特定の乳化剤および通常の非イオン性乳化剤をあわせたもの、以下同様)および陰イオン性乳化剤の使用割合としては、全量が100部となるように特定の乳化剤50〜80部、さらには55〜75部、とくには60〜70部使用するのが、熱可塑性エラストマー水性分散体の製造時の熱可塑性エラストマーと溶剤とからなる混合物の乳化性、溶剤留去工程での泡立防止、熱可塑性エラストマー水性分散体(本発明における水性乳化分散液に同じ)の保存安定性などの点から好ましい。前記特定の乳化剤の量が50部未満になると、特定の乳化剤を使用することによる溶剤留去工程の泡立防止の効果が充分得られにくくなる傾向が生じ、80部をこえると陰イオン性乳化剤を使用することによる熱可塑性エラストマー水性分散体の製造時の熱可塑性エラストマーと溶剤とからなる混合物の乳化性を充分良好にすることができにくくなる傾向が生じる。
【0082】
本発明のアスファルト改質剤は、特定の乳化剤(通常の非イオン性乳化剤と組み合わせて用いる場合は、特定の乳化剤および通常の非イオン性乳化剤をあわせたもの)および陰イオン性乳化剤(以下、特定の乳化剤および陰イオン性乳化剤をあわせたものを特定の乳化剤等ともいう)の存在下で前記熱可塑性エラストマーを乳化分散させ、水性乳化分散液にすることによって製造される。
【0083】
前記熱可塑性エラストマー100部に対する特定の乳化剤等の使用量は、5〜10部、さらには7〜9部が好ましい。特定の乳化剤等の使用量が少なすぎる場合には、熱可塑性エラストマー水性分散体製造時の熱可塑性エラストマーと溶剤とからなる混合物の乳化性が良好でなくなり、多すぎる場合には溶剤留去工程での泡トラブルおよびアスファルト性能が低下する傾向が生ずる。
【0084】
前記熱可塑性エラストマー水性分散体にしめる前記熱可塑性エラストマーおよび特定の乳化剤等の割合は、40〜65%、さらには45〜60%であるのが、熱可塑性エラストマー水性分散体の保存安定性、改質アスファルト製造の際にアスファルト改質剤をポンプ輪送しやすい粘性にすることができる点から好ましい。
【0085】
前記熱可塑性エラストマー水性分散体の製造は、たとえば熱可塑性エラストマーの有機溶剤溶液および特定の乳化剤等の溶融混合物と温水をラインミキサーで混合する、熱可塑性エラストマーの有機溶剤溶液および特定の乳化剤等の溶融混合物に温水を滴下するなどの方法により乳化・分散させたのち、有機溶剤をたとえば60℃、720〜640mmHgで除去することにより行なうことができる。
【0086】
前記有機溶剤の除去時、従来のアスファルト改質剤の場合には泡立がはげしく、脱溶剤に長時間を要するが、本発明では特定の乳化剤を使用するため泡立を少なくすることができ、容易に熱可塑性エラストマー水性分散体を製造することができる。
【0087】
製造された熱可塑性エラストマー水性分散体(本発明における水性乳化分散液に同じ)の粒径は、乳化のさせ方、使用する乳化剤の量、熱可塑性エラストマー水性分散体の濃度などによっても異なるが、通常5μm以下、さらには0.6〜3μm、ことには0.8〜2μmである。粒径が大きすぎる場合には、安定性が充分でなくなりやすく、逆に小さすぎる場合には、製造しにくく、粘度が高くなり、ポンプ輪送上の問題が生じやすくなる傾向にある。
【0088】
このようにして製造された本発明における水性乳化分散液よりなる本発明のアスファルト改質剤は、特定の乳化剤の乳化性および保護コロイド性が良好であるため経時安定性および機械的安定性が良好である。また、水性乳化分散液製造時の泡立が少なく、アスファルトに添加することにより、アスファルトの軟化点、粘弾性、強靭性、高温粘度、低温可撓性などを向上させることができる。
【0089】
本発明のアスファルト改質剤を製造する際に、増粘剤を添加してもよい。増粘剤を添加する場合には、長期間保存したときにも水と熱可塑性エラストマーの分離がさらに生じにくい保存安定性の良好な増粘剤入りの水性乳化分散液となる。
【0090】
前記増粘剤を添加する場合、熱可塑性エラストマー100部に対して0.5〜2部、さらには0.6〜1.0部添加するのが好ましい。添加量が少なすぎる場合には、増粘剤を使用することによる効果が充分得られず、多すぎる場合には、粘度が増大しすぎ、ポンプ輪送が行ないにくくなったり、改質アスファルト性能が低下する傾向が生ずる。
【0091】
前記増粘剤の具体例としては、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ベントナイト、アルミノシリケートなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
以上説明したごとき本発明のアスファルト改質剤は、一般に、固形分濃度が40〜65%、さらには45〜60%、粘度(25℃、B型粘度計で測定)が100〜700mPa・s、さらには150〜500mPa・sのごときものであり、増粘剤を添加することにより、一般に、固形分濃度が40〜65%、さらには45〜60%、粘度(25℃、B型粘度計で測定)が200〜6000mPa・s、さらには350〜4000mPa・sのごときものになる。
【0093】
本発明のアスファルト改質剤は、通常、アスファルトに対して固形分で1〜20%、さらには2〜14%添加される。添加量が少なすぎる場合には改質効果が充分得られず、多すぎる場合には改質アスファルトの粘度が高くなりすぎて実用的でなくなる。また、改質アスファルトが高価になる。
【0094】
本発明のアスファルト改質剤には、必要により酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐防黴剤、消泡剤、分散安定剤、可塑剤、顔料などを加えて使用してもよい。また、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系などのオイルを加えてもよい。さらに、SBRラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジエンラテックス、エチレンプロピレンゴムラテックスなどのゴムラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、EVAエマルジョン、ウレタンエマルジョンなどの高分子化合物のエマルジョンと混合して使用してもよく、あるいは別々に併用してもよい。さらに、セメント、石灰、イソシアネート化合物などの水反応性化合物と併用してもよい。
【0095】
前記オイルを加える方法としては、オイルを油展した熱可塑性エラストマーを水性乳化分散液にする方法、熱可塑性エラストマーを前記溶剤に溶解し、ポリマー溶液とするときに同時にオイルを溶解して添加する方法、オイルの非イオン性および(または)陰イオン性乳化物をアスファルト改質剤に混合する方法などがあげられる。オイルは熱可塑性エラストマー100部あたり5〜300部が好ましい。
【0096】
本発明のアスファルト改質剤が加えられるアスファルトにはとくに制限はなく、たとえば石油アスファルト、天然アスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、脱色アスファルト(石油樹脂)、グースアスファルトなどのアスファルトに加えられる。
【0097】
本発明のアスファルト改質剤を用いてアスファルトを改質する場合として、以下の場合があげられる。
【0098】
(1)熱アスファルトの改質
撹拌できる粘度まで充分融解された熱アスファルトに撹拌しながら直接アスファルト改質剤を添加し、水を蒸発させ、熱可塑性エラストマーがほぼ均一にアスファルトに溶解、分散するまで撹拌する。
【0099】
(2)熱アスファルト混合物の改質
骨材と熱アスファルトを混合したのち、混合物に撹拌しながらアスファルト改質剤を添加し、水を蒸発させ、熱可塑性エラストマーがほぼ均一にアスファルトに溶解、分散するまで撹拌する。再生アスファルト混合物に使用される場合は、本発明の改質剤の添加前にさらに再生材(舗装道路の補修のために掘り起こしたときに発生するアスファルト混合物の廃棄物である発生材を粉砕して、もう一度新アスファルト混合物と混ぜて使用できるようにしたもの)が混合される。
【0100】
(3)アスファルト乳剤の改質
(a)アスファルトを陰イオン性、非イオン性またはこれらを組み合わせた乳化剤を用いて水性乳化分散液としたアスファルト乳剤と、アスファルト改質剤とを混合して均一になるまで撹拌する。
(b)加熱アスファルトにアスファルト改質剤を添加し、水分を蒸発させ、熱可塑性エラストマーがほぼ均一にアスファルトに溶解、分散するまで撹拌したのち、これと乳化剤および水を混合して改質アスファルトの水性乳化分散液とする。
(c)アスファル改質剤に陰イオン性、非イオン性またはこれらを組み合わせた乳化剤を添加し、加熱アスファルトを混合して水性乳化分散液とする。
【0101】
(4)常温アスファルト混合物の改質
前記(3)のアスファルト乳剤とアスファルト改質剤との混合物または改質アスファルト乳剤を骨材に散布して混合し、あるいはアスファルト乳剤とアスファルト改質剤とを別々に骨材に散布して混合し、ほぼ均一になるまで撹拌する。再生アスファルト混合物に使用される場合は、さらに再生材が混合される(ただし、アスファルト改質剤と陽イオン性アスファルト乳剤とを混合する場合には、作業性が得られる範囲で混合する)。
【0102】
本発明のアスファルト改質剤のごとき水性乳化分散液タイプの改質剤を使用する場合、一般的にはドラム缶やコンテナなどの容器に充填して運搬し、ポンプを使用してアスファルトに投入する方法が採られている。この場合、貯蔵・運搬中に容器内で熱可塑性エラストマーと分散媒である水とが分離して濃度が不均一になると、アスファルト改質剤の添加量が不均一になり、一定の改質効果が得られなかったり、添加されたアスファルト改質剤中の分離した熱可塑性エラストマーがアスファルトに溶解しにくいなどの問題が生じる。それゆえ、アスファルト改質剤中での熱可塑性エラストマーの保存安定性は重要である。また、アスファルト改質剤をポンプで投入する場合、ポンプの剪断力で乳化・分散状態が破壊され、熱可塑性エラストマーが分散媒である水から分離しても、アスファルトへの熱可塑性エラストマーの溶解不良や、ポンプ自体に熱可塑性エラストマーが詰まり、ポンプの能力低下、さらには使用不能になる場合があり、アスファルト改質剤の機械的安定性は重要である。
【0103】
本発明のアスファルト改質剤は、加熱アスファルト合材、フォームドアスファルト合材などのアスファルト合材、常温アスファルト合材用アスファルト乳剤およびタックコート、シールコート、アーマコートなどのコート材のアスファルトの改質に好適に使用され、道路、空港、港湾、鉄道、鉄道貨物ヤード、構内、駐車場、歩道、自転車道、スポーツ施設、レース場、テニスコート、石油タンク基礎、水利構造物、廃棄物処理場などの舗装に使用することができる。さらに、土木、屋上、屋根などの防水用アスファルト、防湿紙用アスファルト、住宅用床防音材、床材、鋼管塗布などの建築用アスファルト、その他電気絶縁用コウンパウンド、トンネル断熱材用などのアスファルトの改質に使用することができる。
【0104】
【実施例】
つぎに本発明のアスファルト改質剤を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
なお、実施例などで用いる評価方法を以下にまとめて説明する。
【0106】
(泡立)
熱可塑性エラストマー水性分散体を水で2倍に希釈した液を100mlネスラー管に50ml入れ、30回手で倒立撹拌し、静置したのちの泡の量を経時的に測定する。
【0107】
(熱可塑性エラストマー水性分散体の粒子径)
エマルジョン製造時のトルエン留去後に採取した熱可塑性エラストマー水性分散体を、(株)島津製作所製のSALD2000を用いた光回折法により評価。
【0108】
(貯蔵安定性)
日立卓上遠心機(CT5DL型)を使用し、試料と容器(27φ×90mm)風袋の合計重量が135gになるように試料(アスファルト改質剤)を採取した(試料:約45g)。
【0109】
遠心分離の条件は、3000rpm(1761g)×10分とし、遠心分離後の容器下層部のアスファルト改質剤をストローで約1g採取して精密天秤で計量し、電気オーブンを使用して200℃×15分蒸発乾燥後の重量を求め、下記計算式から全固形分濃度を求めた。
【0110】
【数1】
【0111】
(アスファルト物性)
ストレートアスファルト(コスモ60〜80)を170℃に加熱し、4枚羽根撹拌翼を付けた撹拌機により、回転数400〜500rpmの条件下でアスファルト改質剤を混合した。
【0112】
アスファルト改質剤の配合割合は、ストレートアスファルト(コスモ60〜80)100部に対し、固形分換算で6部とした。
【0113】
アスファルトの物性試験は、「舗装試験法便覧」(昭和63年11月10日(社)日本道路協会刊行)に記述された方法に準拠して評価した。
【0114】
なお、このときに使用したストレートアスファルト(コスモ60〜80)単独の物性を参考例として表1に示した。
【0115】
(ポンプ安定性)
日機装エイコー(株)製モノフレックスポンプ(FP−25型、回転数1700rpm)を使用して、アスファルト改質剤(固形分50%)10kgを2000回間欠循環運転し、このとき発生した凝集物量を測定した。間欠運転は、タイマーにより「ポンプ運転5秒、停止5秒」の繰り返し運転条件に設定した。
【0116】
凝集物量は、2000回ポンプ循環終了後、全量を120メッシュ金網でろ過し、100℃×1時間乾燥後の重量を精密天秤で測定し、下記計算式から凝集物割合として求めた。
【0117】
【数2】
【0118】
つぎに、実施例などで使用する主要原料の内容および略号について以下に説明する。
【0119】
熱可塑性エラストマー
SBS:ジェイエスアール(株)製、TR2606C、分子量460000、スチレン含量30%
【0120】
増粘剤
CMC:第一工業製薬(株)製、セロゲンHE−1500F
【0121】
乳化剤
ベンジル化フェノールEOA:ベンジル基が平均2個付加したフェノールにエチレンオキシド20モルを付加したもの
スチレン化フェノールEOA:スチレン基が平均2個付加したフェノールにエチレンオキシド20モルを付加したもの
ロジン石鹸:荒川化学工業(株)製、ロジンスK−80
ノニルフェノールEOA硫酸Na:ノニルフェノールエチレンオキシド7モル付加物硫酸エステルナトリウム塩
ノニルフェノールEOAリン酸エステルNa塩:ポリオキシエチレン(EO 6モル)ノニルフェニルエーテルリン酸エステルナトリウム塩
【0122】
実施例1
ディスパーとミキサーおよびアンカーを備えた乳化機(特殊機化工業(株)製、TKコンビミックス型)へ、SBS100部(20kg)、トルエン400部(80kg)を投入し、60℃に昇温してSBSを溶解させた。
【0123】
溶解後、乳化剤としてベンジル化フェノールEOAの5部(1.0kg)およびロジン石鹸3部(0.6kg)を投入し、ミキサーの周速12.8m/s、ディスパーの周速9.6m/s、アンカーの回転数60rpm、乳化温度60℃で温水(60℃)250部(50kg)を30分間かけて均一に滴下した。滴下後10分間撹拌してSBS乳化分散体を得た。
【0124】
そののち、60℃、720〜640mmHgでトルエンを留去し、トルエン残存量を0.05%以下にした。得られたSBS水性分散体の泡立は直後25ml、1分後15ml、5分後6mlであった。
【0125】
得られたSBS水性分散体(固形分50%)の粒子径、粘度、貯蔵安定性、アスファルト物性、ポンプ安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0126】
実施例2〜3および比較例1〜3
表1記載の原料を表1記載の割合で使用し、実施例1と同様にしてSBS水性分散体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0127】
なお、実施例3と比較例3は、実施例1と比較例2で得られたSBS水性分散体(固形分55%)にCMC(カルボキシメチルセルロースNa塩)0.7部(140g)を粉体のまま添加し、固形分50%になるように水を添加し、撹拌(2000rpm)し、そののち、12時間放置してCMCを溶解させることにより調製した。
【0128】
実施例4
実施例2で得られた固形分50%のSBS水性乳化分散液80部と固形分50%のSBRエマルジョン20部とを混合したものについてアスファルト物性を測定した。結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
【発明の効果】
本発明のアスファルト改質剤は、経日安定性、機械的安定性が良好である。
【0131】
このような本発明のアスファルト改質剤は、アスファルトへの混合、溶解が簡便で、アスファルトの軟化点、粘弾性特性、強靭性、高温粘度などを向上させることができるので、舗装の耐流動性、耐磨耗性、強靭性などを改良し、舗装の長寿命化を図ることができる。また、従来の固形熱可塑性エラストマーでは困難であったアスファルト乳剤の改質を容易に行なうことができるので、常温舗装用合材やコート材の改質にも有効である。さらに熱アスファルトの低温可撓性を改善するので、防水材などの改質にも有効である。
Claims (3)
- モノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、およびトリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物を含むスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ならびに、モノベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ジベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、およびトリ以上のベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物を含むベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の非イオン性乳化剤およびロジン酸塩の存在下で乳化分散させた熱可塑性エラストマーの水性乳化分散液よりなるアスファルト改質剤。
- 前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、モノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれる請求項1記載の改質剤。
- 前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、モノベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれる請求項1記載の改質剤。
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