JP3853012B2 - 配水管用着色樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、配水管用着色樹脂組成物に係り、特に塩素含有水により水泡剥離が生ずることのない配水管用着色樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、日本における上水道配水管用パイプは、鋼管、ダクタイル鋳鉄管及び塩化ビニル管等の材料で構成されている。しかしながら、先の阪神淡路大震災等ではこの様な材料で構成された配水管は、地震によってヒビ割れ、亀裂等が生じ、耐震性に弱いことが確認された。
一方、ガス管や水道管で使用されているポリエチレン管は、近年の大地震、例えば、1993年1月の北海道釧路沖地震(M:7.8)、1993年7月の北海道南西沖地震(M:7.8)及び1995年1月の阪神淡路大震災(M:7.2)等においてヒビ割れ、亀裂等の被害が殆どなく、耐震性に優れていることが判明している。ポリエチレン製の水道管は、通常、原料樹脂としてLDポリエチレン、LLDポリエチレン等を使用し、これをカーボンブラックで着色したものが実用化されている。しかし、カーボンブラックで着色した一層管は、水の殺菌のため塩素を使用すると塩素の酸化作用(カーボンブラックが触媒作用をしている)により、埋設して数年で該一層管の内側に水泡が発生し、最悪の場合には、水泡が原因と見られる剥離現象が生じ、それが原因で吸水弁等の閉塞が発生した。このような水泡発生を防止する手段として行われているのは、カーボンブラックで着色されたポリエチレン管の内側に未着色のポリエチレン管を構成した二層管にしたものである。しかし、二層管はコストアップとなるため欧米諸国では上水道配水管は青色顔料で着色した一層管主体となっている。
日本においても青色で着色した比較的安価な一層管の開発が行われている。
ポリエチレンを青色に着色する顔料としては耐候性に優れた銅フタロシアニンブルーやコバルトブルー顔料が使用されるが、青色顔料として塩素化銅フタロシアニン顔料を使用すると、耐塩素水試験を行った際の退色が少ないとする特許等も公開されている(例えば、特開平7−76639号公報)。
しかし、その一方、塩素数の多い銅フタロシアニン顔料を使用すると水泡が発生しやすい傾向にあることも知られている。
ポリエチレンの上水道配水管を青色に着色するために、上記の銅フタロシアニンブルーやコバルトブルーが使用されているが、顔料の分散を向上させる目的で一般的に分解型ポリエチレンワックス、一般重合型ポリエチレンワックスが使用されている。
しかしながら、このようなポリエチレンワックスを分散剤としたポリエチレン着色樹脂組成物により成形した上水道配水管をJIS K 6762−1993による耐塩素水試験(塩素濃度:2000±100ppm、塩素水温度:60±1℃、試験時間:168時間)を行うと、短時間で水泡が発生する欠陥があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、銅フタロシアニンブルー、コバルトブルー等の青色顔料を調色成分として用いたポリエチレン上水道配水管において、殺菌用の塩素水による水泡剥離の発生しない耐塩素含有水性に優れた着色ポリエチレン樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような現状を克服するため研究を行った結果、銅フタロシアニンブルー、コバルトブルー等の顔料分散剤として特に変性型ポリエチレンワックスを使用することにより、水の殺菌用塩素水によって水泡発生が生じない着色ポリエチレン樹脂組成物が得られるという知見を得て本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)MFRが0 . 05〜1 . 0g/10 min のポリエチレン樹脂100重量部、複合酸化物系顔料及び/又は銅フタロシアニン系顔料0 . 005〜50重量部及び酸価0 . 1〜100 . 0 KOHmg /gの変性型ポリエチレンワックス0 . 005〜50重量部からなる組成物であり、該組成物により作成した試験片が塩素濃度2000 ppm 、塩素水温度60℃におけるJIS K6762−1993の塩素水試験方法による500時間後の判定で水泡発生がないことを特徴とする配水管用着色樹脂組成物、及び、
(2)変性型ポリエチレンワックスが分子量100〜10000、密度0 . 910〜0 . 980g/ cm 3 、酸価0 . 1〜100 . 0 KOHmg /gである請求項1記載の配水管用着色樹脂組成物、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するポリエチレン樹脂としては、押出成形や射出成形等で用いられる従来公知のポリエチレン樹脂であり、その密度は0.910〜0.980g/cm3、好ましくは0.940〜0.960g/cm3、MFRが0.01〜10.0g/10min、好ましくは0.05〜1.0g/10minのものである。
本発明で使用する顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、イソインドリノン系顔料、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料及びペリレン系顔料等の有機顔料、複合酸化物系顔料(例えば、C.I.ピグメントイエロー157、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー119、C.I.ピグメントブラウン24、C.I.ピグメントブラウン33、C.I.ピグメントブラウン34、C.I.ピグメントグリーン26、C.I.ピグメントグリーン50、C.I.ピグメントブルー28、C.I.ピグメントブルー36、C.I.ピグメントブラック26、C.I.ピグメントブラック27、C.I.ピグメントブラック28等)、酸化チタン系顔料、カーボンブラック、群青、ベンガラ等の無機顔料が挙げられる。上記顔料の中でも特に好ましく用いられるのは、耐塩素水性が良好なC.I.ピグメントブルー28(コバルトブルー)等の複合酸化物系顔料或いは、着色力がありコスト的に安価な銅フタロシアニン系顔料である。上記の顔料は単独又は二種以上用いることができる。
【0006】
上記顔料の配合量は、ポリエチレン樹脂100重量部に対して、0.005〜50重量部好ましくは0.01〜1.0重量部である。
本発明で使用する変性型ポリエチレンワックスとは、ポリエチレンワックスにカルボキシル基等の極性基が導入されたもので、その製造法は、一般成型用ポリエチレンを酸化分解したり、チーグラー触媒を用いて低圧下で重合した後酸素で酸化するなどされる。なお分解型ポリエチレンワックスは一般成型用ポリエチレンを熱分解して製造され、一般重合型ポリエチレンワックスはラジカル触媒を用い高温高圧下で重合したもので、これらはカルボキシル基等の極性基を含有していないものである。具体的な変性型ポリエチレンワックスとしては、分子量100〜10000、密度0.910〜0.980g/cm3、酸価0.1〜100.0KOHmg/g、好ましくは、分子量1500〜4000、密度0.930〜0.960g/cm3、酸価1.0〜60.0KOHmg/gである。酸価が100KOHmg/g以上になると、生産性が悪くコスト的に問題がある。上記の酸価(KOHmg/g)とは、ポリエチレンワックス1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。
なお、本発明の配水管用着色樹脂組成物には、必要に応じて上記の成分の他、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、安定剤、架橋剤、ポリエチレン以外のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びタルク、クレー、シリカ、アルミナ等の無機質充填剤が配合される。
本発明の配水管用着色樹脂組成物を調整するには、例えばポリエチレン樹脂に顔料、変性型ポリエチレンワックスを配合し、更に必要に応じて上記したその他の添加剤を添加して混合機[商品名:ヘンシェルミキサー 三井三池製作所]に入れ、常温または加熱混合し、混練物を更に加熱した三本ロールミルで混練して冷却後粉砕機で粉砕して粉末状にするか、押出成形機に供し、押出成形してビーズ状、柱形状に形成する方法によりなされる。
【0007】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例1
高密度ポリエチレン(密度:0.949g/cm3、MFR:0.10g/10min.)100重量部、銅フタロシアニンブルー[商品名:クロモファインブルーSR5020 大日精化工業(株)製品]0.05重量部、変性型ポリエチレンワックスA(分子量:3000、密度:0.92g/cm3、酸価:1.0KOHmg/g)0.05重量部を二本ロールにより185℃2分間混練し配水管用着色樹脂組成物を得た。
次いで、上記の混練物を加熱プレスし、厚さ2mmのプレスシートを作成した。プレスシートの作成条件は、230℃で予熱2分間(20kg/cm2)、加圧2分間(200kg/cm2)冷却温度20℃で5分間行った。得られたプレスシートから20mm×120mmの試験片を作成した。
この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第1表に示す。
実施例2〜5
実施例1における変性型ポリエチレンワックスを第1表の変性型ポリエチレンワックスB〜Eのものに代え、他は実施例1と同様にして試験片を作成した。
この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第1表に示す。
実施例6
高密度ポリエチレン(密度:0.949g/cm3、MFR:0.10g/10min.)100重量部、銅フタロシアニンブルー[商品名:ファーストゲンブルー4GN 大日本インキ化学工業(株)製品]0.05重量部、変性型ポリエチレンワックスA(分子量:3000、密度:0.92g/cm3、酸価:1.0KOHmg/g)0.05重量部を二本ロールにより185℃2分間混練し配水管用着色樹脂組成物を得た。
次いで、上記の混練物を加熱プレスし、厚さ2mmのプレスシートを作成した。プレスシートの作成条件は、230℃で予熱2分間(20kg/cm2)、加圧2分間(200kg/cm2)冷却温度20℃で5分間行った。得られたプレスシートから20mm×120mmの試験片を作成した。
この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第1表に示す。
実施例7
高密度ポリエチレン(密度:0.949g/cm3、MFR:0.10g/10min.)100重量部、銅フタロシアニンブルー[商品名:ファーストゲンブルー4GN 大日本インキ化学工業(株)製品]0.05重量部、変性型ポリエチレンワックスE(分子量:1500、密度:0.94g/cm3、酸価:60.0KOHmg/g)0.05重量部を二本ロールにより185℃2分間混練し配水管用着色樹脂組成物を得た。
次いで、上記の混練物を加熱プレスし、厚さ2mmのプレスシートを作成した。プレスシートの作成条件は、230℃で予熱2分間(20kg/cm2)、加圧2分間(200kg/cm2)冷却温度20℃で5分間行った。得られたプレスシートから20mm×120mmの試験片を作成した。
この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第1表に示す。
実施例8
高密度ポリエチレン100重量部(密度:0.949g/cm3、MFR:0.10g/10min.)、コバルトブルー[C.I.ピグメントブルー28、商品名:ダイピロキサイドブルー#9450 大日精化工業(株)製品]0.5重量部、変性ポリエチレンワックスA(分子量:3000、密度:0.92g/cm3、酸価1.0KOHmg/g)0.25重量部を二本ロールにより185℃2分間混練し配水管用着色樹脂組成物を得た。
次いで、上記の混練物を加熱プレスし、厚さ2mmのプレスシートを作成した。プレスシートの作成条件は、230℃で予熱2分間(20kg/cm2)、加圧2分間(200kg/cm2)冷却温度20℃で5分間行った。得られたプレスシートから20mm×120mmの試験片を作成した。
この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第1表に示す。
実施例9〜10
実施例8における変性型ポリエチレンワックスを第1表の変性型ポリエチレンワックスB、Cのものに代え、他は実施例8と同様にして試験片を作成した。
この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第1表に示す。
比較例1
高密度ポリエチレン(密度:0.949g/cm3、MFR:0.10g/10min.)100重量部、銅フタロシアニンブルー[商品名:クロモファインブルーSR−5020 大日精化工業(株)製品]0.05重量部、分解型ポリエチレンワックス(分子量:2800、密度:0.92g/cm3)0.05重量部を二本ロールにて185℃2分間混練し配水管用着色樹脂組成物を得た。
次いで、上記の混練物を加熱プレスし、厚さ2mmのプレスシートを作成した。プレスシートの作成条件は、230℃で予熱2分間(20kg/cm2)、加圧2分間(200kg/cm2)冷却温度20℃で5分間行った。得られたプレスシートから20mm×120mmの試験片を作成した。
この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第2表に示す。
比較例2
高密度ポリエチレン(密度:0.949g/cm3、MFR:0.10g/10min.)100重量部、銅フタロシアニンブルー[商品名:クロモファインブルーSR−5020 大日精化工業(株)製品]0.05重量部、一般重合型ポリエチレンワックス(分子量:4000、密度:0.95g/cm3)0.05重量部を二本ロールにて185℃2分間混練し配水管用着色樹脂組成物を得た。
次いで、上記の混練物を加熱プレスし、厚さ2mmのプレスシートを作成した。プレスシートの作成条件は、230℃で予熱2分間(20kg/cm2)、加圧2分間(200kg/cm2)冷却温度20℃で5分間行った。得られたプレスシートから20mm×120mmの試験片を作成した。
この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第2表に示す。
比較例3
比較例1における銅フタロシアニンブルーを塩素化銅フタロシアニンブルー(塩素置換基数4)のものに代え、他は比較例1と同様にして試験片を作成し、この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第2表に示す。
比較例4
比較例2における銅フタロシアニンブルーを塩素化銅フタロシアニンブルー(塩素置換基数4)のものに代え、他は比較例2と同様にして試験片を作成し、この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第2表に示す。
比較例5
高密度ポリエチレン100重量部(密度:0.949g/cm3、MFR:0.10g/10min.)、コバルトブルー[C.I.ピグメントブルー28、商品名:ダイピロキサイドブルー#9450 大日精化工業(株)製品]0.5重量部、分解型ポリエチレンワックス(分子量:2800、密度:0.92g/cm3)0.25重量部を二本ロールにより185℃2分間混練し配水管用着色樹脂組成物を得た。
次いで、上記の混練物を加熱プレスし、厚さ2mmのプレスシートを作成した。プレスシートの作成条件は、230℃で予熱2分間(20kg/cm2)、加圧2分間(200kg/cm2)冷却温度20℃で5分間行った。得られたプレスシートから20mm×120mmの試験片を作成した。
この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第2表に示す。
比較例6
比較例5における分解型ポリエチレンワックスを一般重合型ポリエチレンワックスに代え、他は比較例5と同様にして試験片を作成し、この試験片により耐水泡発生の評価を行った。その結果を第2表に示す。
実施例及び比較例の試験は次の通り行った。
耐塩素水試験は、試験時間を500hrs、1000hrsとした。これは、JISK6762−1993の解説中に記載されている耐塩素水性促進試験のように、カーボンの一種ポリエチレン(低密度又は中密度ポリエチレン)単層管の水泡発生時間は、塩素水濃度及び塩素水温度に依存しており、水泡発生時間の対数と塩素濃度の対数は直線関係にあることが知られている。(図1参照)ただし、その傾きは温度によらず一定になる。これは銅フタロシアニン系顔料や焼成コバルトブルー顔料の単層管においても成立することが想像できる。カーボンブラックを着色剤として使用した場合における単層管の水泡発生状況は、23℃で塩素濃度1ppmにおいては、約6.7×104時間(約7.6年)と推定できるが、実際は約2〜3年で発生する場合がある。これは、水道管中の流水と滞留の繰り返しに起因していると考えられている。つまり安全率を考慮し、試験結果の20%位が実際の水泡発生時間と考えるのが妥当である。現在、水泡発生時間の目標は50年とされている。また、図2の一種二層管における水泡発生時間は、塩素水温度23℃、塩素水濃度1ppmにおいて、約270万時間(約300年)となり、安全率を考慮しその寿命は約60年と推測できる。そこで塩素濃度:2000ppm、塩素水温度:60℃では、安全率も考慮し試験時間は最低500hrs、好ましくは1000hrsは必要と考えた。その他の条件は、JIS K6762−1993に準拠して試験片の水泡発生状況を確認した。
評価基準
○:水泡完全に無し
△〜○:わずかに水泡発生
△:水泡発生
×:大量に水泡発生
【0008】
【表1】
【0009】
【表2】
【0010】
【発明の効果】
本発明の配水管用着色樹脂組成物は、塩素含有水に対する耐水泡発生性に優れているため、上水道配水管用ポリエチレンパイプ等の調色成形材料とした場合、長期間にわたり耐塩素含有水性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、1種単層管の耐塩素水性を示すグラフである。
【図2】図2は、1種二層管の耐塩素水性を示すグラフである。
Claims (2)
- MFRが0 . 05〜1 . 0g/10 min のポリエチレン樹脂100重量部、複合酸化物系顔料及び/又は銅フタロシアニン系顔料0 . 005〜50重量部及び酸価0 . 1〜100 . 0 KOHmg /gの変性型ポリエチレンワックス0 . 005〜50重量部からなる組成物であり、該組成物により作成した試験片が塩素濃度2000 ppm 、塩素水温度60℃におけるJIS K6762−1993の塩素水試験方法による500時間後の判定で水泡発生がないことを特徴とする配水管用着色樹脂組成物。
- 変性型ポリエチレンワックスが分子量100〜10000、密度0.910〜0.980g/cm3、酸価0.1〜100.0KOHmg/gである請求項1記載の配水管用着色樹脂組成物。
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