JP3851519B2 - アルミニウム合金材の溶接方法 - Google Patents

アルミニウム合金材の溶接方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3851519B2
JP3851519B2 JP2001156998A JP2001156998A JP3851519B2 JP 3851519 B2 JP3851519 B2 JP 3851519B2 JP 2001156998 A JP2001156998 A JP 2001156998A JP 2001156998 A JP2001156998 A JP 2001156998A JP 3851519 B2 JP3851519 B2 JP 3851519B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
welding
series
alloy material
welded
alloy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001156998A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002346786A (ja
Inventor
松本  剛
誠二 笹部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2001156998A priority Critical patent/JP3851519B2/ja
Publication of JP2002346786A publication Critical patent/JP2002346786A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3851519B2 publication Critical patent/JP3851519B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Arc Welding In General (AREA)
  • Laser Beam Processing (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、継手側辺部の溶接部底面の溶接割れを防止した、過剰Si型6000系アルミニウム合金材の溶接方法 (以下、アルミニウムを単にAlと言う) に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車などの輸送機のパネル類、フレーム類、メンバー類などの部材には、成形した板材や形材などのAl合金材同士を溶接接合した継手 (溶接接合部材) が用いられるようになっている。
【0003】
これら溶接継手用Al合金としては、従来から溶接構造用Al合金として汎用されるAA乃至JIS 規格に規定される5000系や、6063、6061などの6000系 (以下、AA乃至JIS は省略) 、7N01、7003などの7000系などのAl合金展伸材 (圧延板材、押出形材、鍛造材などの総称、以下、単にAl合金材とも言う) がある。
【0004】
この6000系 (Al-Mg-Si系) のAl合金中でも、AA乃至JIS 規格で6061、6N01、6016、6111、6022などの、Si/Mg が1 以上の、Mg含有量に対しSiが過剰に含有されている、過剰Si型の6000系Al合金は、溶体化処理および焼き入れ処理 (質別記号T4) やその後の時効処理 (質別記号T6) 、過時効処理 (質別記号T7) 後の特性において特に時効硬化性に優れている。
【0005】
このため、過剰Si型6000系Al合金は、前記輸送機部材への成形時には低耐力で成形性を確保するとともに、成形後の部材の塗装焼き付け処理などにおいて、170 ℃など比較的低温の加熱でも高耐力化して要求強度を満たせる特性を有している。また、前記5000系や7000系などのAl合金に比して、合金元素量が少ないので、スクラップを元の6000系Al合金の溶解原料として再利用できるなどのリサイクル性にも優れている。
【0006】
しかし、6000系Al合金材、中でも過剰Si型6000系Al合金材は、その優れた時効硬化性ゆえに、前記5000系や7000系などのAl合金に比して、逆に溶接時には、その接合性(接合強度)が低下するという問題がある。そして、この接合性の問題は、特に、部材の溶接される部位の側辺部 (端部乃至縁部) から溶接線までの距離 (端長さ) が短い、溶接部位 (側辺部溶接部) を溶接施工する際に顕著となる。
【0007】
即ち、隅肉溶接や突き合わせ溶接などで、少なくともいずれかのAl合金材を過剰Si型6000系Al合金として継手を溶接接合する際、側辺部の溶接部において、溶接部の底面 (裏面) に、溶接線 (溶着線) に沿って走る、マクロな溶接割れが生じ易いという問題がある。この側辺部溶接部の底面の割れは、6000系Al合金材の顕著な傾向であるとともに、過剰Si型の6000系Al合金材において、特にその傾向が強くなる。そして、他の5000系や7000系などの、6000系以外のAl合金ではこの溶接部底面割れが発生しない乃至しにくい。
【0008】
また、この溶接部底面割れは、通常、溶接施工の際にAl合金系全般において生じやすい、溶接金属部 (溶着部) やその近傍乃至周囲の熱影響部 (以下、HAZ と言う) などの溶接接合部に生じる、ミクロな溶接割れとは、後述する発生機構を含めて全く異なる特異な現象である。
【0009】
図7 は、6000系Al合金材の側辺部溶接部において生じる溶接部底面の溶接割れを示している。図7 は、後述する図3に示す過剰Si型のAA6022Al合金板試験片1aを、溶接される試験片1aの側辺部の側面2 から溶接線3 までの距離t ( 以下、端長さと言う) を種々変えて溶接した場合の、試験片底面1bの溶接状態を示している。なお、溶接法は簡易的にビードオン溶接法を用い、溶け込み深さを一定として溶接した。この図7 において、(a) は端長さが32mm、(b) は端長さが24mm、(c) は端長さが16mm、(d) は端長さが8mm の場合である。
【0010】
図7 に示す通り、端長さが比較的長い図7(a)(b) では、溶接線3aの部分 (溶接部底面) に溶接割れは生じていない。これに対し、図7(c)(d) のように端長さが短くなるにつれて、溶接線3aの部分に沿って走る、マクロな溶接割れ4a、4bが生じている。即ち、端長さが短くなるほど、特に過剰Si型などの6000系Al合金材の側辺部溶接部底面では、マクロな溶接割れが生じやすくなる。
【0011】
また、この6000系Al合金材側辺部の溶接部底面の割れ (以下、単に側辺部底面割れと言う) の傾向は、スポット溶接などの個々の溶接線がごく短い溶接接合方法では生じない。しかし、溶接線が比較的長い、アークなどの熱源を用いる溶融溶接方法、即ち、ティグ(TIG) 、ミグ(MIG) などの高速アーク溶接や、レーザー溶接、電子ビームなど溶接で溶接して継手を形成する際に顕著となる。更に、この傾向は、溶接接合部が比較的高温にならない接合方法である、摩擦攪拌接合(FSW) 方法においても生じる。
【0012】
そして、このような側辺部底面割れが起ると、Al合金溶接継手の強度が著しく低下し、自動車などの前記部材に適用できないという深刻な問題が生じる。
【0013】
なお、従来から、Al合金溶接継手の溶接部の前記軟化や割れに対しては、アークなどの溶接方法の側から、溶接施工条件などの種々の改善方法が行なわれてきた。例えば、▲1▼特開平11-104860 号公報などに例示される通り、極力低入熱で溶接する、あるいは冷却しながら溶接接合する方法、▲2▼溶接後の継手を焼き入れ焼き戻し処理する、あるいは特開平5-222498号公報などのように、時効硬化処理前の材料(T1 、T4材) を溶接後、時効硬化処理する、などの熱処理によって軟化を回復させる方法などがある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明で課題とする側辺部底面割れは、自動車などの前記部材にそれまで適用されていた、他の5000系や7000系などのAl合金では、前記した通り、発生しにくい。したがって、6000系Al合金材が自動車などの前記溶接適用部材に使用されて新たに生じた問題であり、しかも、前記した通り、6000系Al合金材に特有の問題でもある。
【0015】
従来から、特開昭61-23580号公報などで、Al合金材の大肉厚部材と小肉厚部材の溶接における、溶接材の肉厚差に起因する熱伝導の差 (小肉厚部材の方が熱放散少) による、両者の加熱速度の差 (大肉厚部材の方が温度上昇が遅く熱量不足になる) が生じることなどが課題として公知にはなっていた。
【0016】
しかし、これら公知技術の課題は、本発明の課題である側辺部底面割れとは異なる。また、側辺部底面割れとは、原因なり機構も異なるため、前記加熱速度格差を緩衝するため中肉厚部材を中間に設置する解決策も、側辺部底面割れ自体の解決策とはなり得ない。したがい、本発明の課題である側辺部底面割れは、これまで詳細に解明されておらず、また直接の解決策も提案されていなかった。
【0017】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、側辺部底面割れを防止した6000系Al合金材の溶接方法を提供しようとするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明6000系Al合金材の溶接方法の請求項1 の要旨は、AA乃至JIS 規格に規定される6000系アルミニウム合金材側辺部の溶接施工の際に、前記側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下として、側辺部溶接部底面の溶接割れを防止したことである。
【0019】
本発明者らは、6000系Al合金材の側辺部底面割れの原因を究明した結果、前記端長さが短い側辺部溶接部底面の最高温度と、溶接部凝固時のHAZ の粒界の未凝固部分の存在 (挙動) とが相関して起因していることを知見した。
【0020】
まず、6000系Al合金材の前記端長さが短い側辺部溶接部では、端長さが充分長い他の溶接部よりも、溶接部近傍のAl合金材の質量が著しく少ない。このため、溶接による熱がAl合金材を通じた伝熱により放熱されにくい。この結果、溶接時、側辺部溶接部底面は、他の溶接部底面よりも、550 ℃を越えるより高温側に保持されやすい傾向にある。
【0021】
一方、6000系Al合金材では、その時効硬化特性を発揮させるための、Al-Mg-Si系 (過剰Si型) 組成とT4、T6、T7などの調質処理との関連で、母材の段階から、側辺部溶接部底面のHAZ 粒界には、必然的に未凝固部分 (未凝固の金属間化合物) が存在することとなる。そして、この未凝固部分は過剰Si型6000系Al合金材において特に多い。
【0022】
この側辺部溶接部底面の最高温度と、HAZ 粒界の未凝固部分との相関を図4 を用いて説明する。図4 は側辺部溶接部の凝固過程を上から下のフェイズ1 〜3 にかけて3 段階に分けて示す模式図である。図4 のフェイズ1 と2 の図に示すように、例えば、Al合金材1 同士の突き合わせ溶接の場合、溶接部3 の凝固に従って、溶接部3 (溶融部) の収縮が起る際、矢印方向への収縮応力が溶接部3 に作用する。この際、6000系Al合金材には、特に側辺部底面1bのHAZ 5 の粒界に未凝固部分6 が存在する。
【0023】
ここにおいて、側辺部溶接部底面の最高温度が550 ℃を越える高温側に保持された場合、この未凝固部分6 のみ凝固のタイミングが遅れるために、溶接部3 の凝固収縮途中で、前記収縮応力が作用した場合に、図4 のフェイズ2 の右側の図に示すように、未凝固部分の粒界6 が耐えきれずにミクロな割れ6aとなって口を開くことなる。このため、側辺部底面において、マトリックスの拘束力が弱まるとともに、前記収縮応力の伝達や吸収が不十分となり、図4 のフェイズ3 の右側の図に示すように、側辺部底面割れ4 の発生に至るものである。
【0024】
この傾向は、前記未凝固部分が多くなる過剰Si型6000系Al合金材ほど、更に、溶接時の側辺部底面の最高温度が550 ℃を越える高温となるほど、また、550 ℃を越える温度に保持される時間が長いほど、強くなる。
【0025】
一方、側辺部底面の最高温度が550 ℃以下の場合、凝固過程での上記未凝固部分6 の凝固のタイミング遅れは、前記収縮応力によるミクロな割れ6aとなるほど顕著には生じない。この結果、溶接部3 の凝固収縮途中で前記収縮応力が作用した場合には、図4 のフェイズ2 の左側の図に示すように、側辺部底面におけるマトリックスの拘束力が弱まることなく、前記収縮応力の伝達や吸収も順調に行われて、粒界凝固や溶融部収縮がスムースに進行、終了する。この過程なり結果は他のAl合金材の凝固と同様であり、図4 のフェイズ3 の左側の図に示すように側辺部底面割れが発生しない。
【0026】
したがって、側辺部底面の最高温度550 ℃には、以上のような臨界的意義がある。そして、前記したように、溶接時の側辺部底面の最高温度を550 ℃以下とすれば、過剰Si型6000系Al合金材であっても、他のAl合金と同様、溶接継手強度を、自動車などの部材に適用可能なレベルとすることができる。
【0027】
本発明は以上のような効果を有するため、請求項2 に記載の通り、6000系Al合金の中でも、特に側辺部底面割れの傾向が大きい過剰Si型6000系Al合金材に適用されることが好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
(対象Al合金母材)
本発明で用いる母材Al合金は、AA乃至JIS 規格に規定される6000系(Al-Mg-Si 系) Al合金が対象となる。特に側辺部底面割れの傾向が大きい、Si/Mg が1 以上の、Mg含有量に対しSiが過剰に含有されている、6N01、6016、6111、6022などの、過剰Si型の6000系Al合金が対象となる。
【0029】
これらAl合金は、溶体化処理および焼き入れ処理 (質別記号T4) やその後の時効処理 (質別記号T6) 、過時効処理 (質別記号T7) されて、溶接継手乃至溶接部材の母材として用いられる。
【0030】
ただ、本発明母材Al合金の好ましい成分組成として、前記溶接構造用としての必要強度などの要求特性を満足するためには、Mg:0.2〜1.0% (質量% 、以下同じ) 、Si:0.6〜1.6%の範囲から、Siが過剰となるように選択することが好ましい。
【0031】
この他、Mn、Cr、Zr、Ti、B 、Fe、Zn、Ni、V などのその他の合金元素は、基本的には不純物元素である。しかし、6000系合金のリサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金や、その他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解材として使用する場合を含む。このため、これら元素が、本発明の目的とする諸特性向上効果を阻害しない範囲で、AA乃至JIS 規格内で含有されることを許容する。したがって、本発明でAA乃至JIS 規格に規定されるとは、これら規格を満足することを意味する。
【0032】
本発明におけるAl合金母材自体は、溶解、鋳造、均質化熱処理、熱間加工 (圧延、押出、鍛造) 、必要により中間焼鈍、冷間加工 (圧延、鍛造) 圧延等の常法工程により、板材や形材 (中空断面など断面形状が長さ方向のどの位置でも本質的に同一である形材) 、鍛造材として製造される。
【0033】
(溶接方法)
本発明が対象とする溶接方法は、6000系Al合金材の溶接であって、前記端長さが短い溶接施工部位を有し乃至溶接施工部位の中に前記端長さが短い溶接施工部位を含む、側辺部底面割れが生じやすい、アークなどの熱源を用いる溶接線が長い溶融溶接方法である。
【0034】
6000系Al合金材の側辺部底面割れの原因乃至機構は、前記した通り、端長さが短い側辺部溶接部底面の最高温度と、溶接部凝固時のHAZ の粒界の未凝固部分との相関関係という冶金的な問題である。したがって、この冶金的な現象が共通して生じるような溶融溶接方法で、溶接方法の種類の違いによらず生起する、共通の問題である。
【0035】
このような溶接方法としては、例えば、ティグ(TIG) 、ミグ(MIG) などの高速アーク溶接やレーザー溶接、電子ビームなどの溶接方法、あるいは摩擦攪拌接合(FSW) 方法が例示される。したがって、スポット溶接などの個々の溶接線が短く、6000系Al合金材溶接継手の側辺部底面割れが生じないような溶接方法は対象としない。
【0036】
(溶接継手)
また、本発明が対象とする溶接継手は、前記端長さが短い溶接施工部位を有し、側辺部底面割れが生じる可能性が大きい継手であれば、図5 に示す板材や形材同士の隅肉溶接や、図6 に示す板材や形材同士の突き合わせ溶接など、種々の溶接継手に適用できる。なお、図5 、図6 において、1 は溶接される6000系Al合金材、7 は同じ6000系か他のAl合金材、1bはAl合金材1 の側辺部底面、2 はAl合金材1 の側辺部の側面、3 は溶接部、t は側辺部2 から溶接線3aまでの端長さ、8 は溶接トーチである。
【0037】
これら溶接継手において、自動車部材などの設計形状に応じて、板、形材、管等の適宜の形状が、継手の組み合わせとして選択される。また、溶接継手は、必ずしも6000系Al合金材や過剰Si型6000系Al合金材同士でなくとも、通常のAl合金継手と同様に、あるいは目的に応じて、3000系、5000系、6000系、7000系など成分や合金系の違うAl合金材同士を接合しても良い。
【0038】
(溶接条件)
上記対象とする溶接方法における各溶接条件は、側辺部溶接部底面の温度を550 ℃以下とする以外は、各々の溶接方法の常法の範囲で行う。例えば、溶加材使用、開先形状、溶接姿勢、トーチ前進角、シールド条件 (Arガス流量) 、溶接電流、溶接電圧、溶接速度などの基本的な溶接条件は、各々の条件のJIS 規格や各種溶接乃至アルミニウムハンドブックに従う。
【0039】
言い換えると、側辺部溶接部底面の温度を550 ℃以下に制御する以外は、何ら特別な溶接方法や条件を必要とせず、各々の溶接方法の常法の範囲で行える点が、本発明の利点でもある。
【0040】
なお、溶加材 (棒) は、JIS 規格に規定された5356などの5000系Al合金溶加材 (棒) を、溶接継手接合部の特性低下が特に生じやすい、過剰Si型6000系Al合金材の溶融溶接に適用することが好ましい。4000系Al合金溶加材は、過剰Si型6000系Al合金材の溶融溶接において、却って、溶接継手接合部の特性低下を招きやすい。また、より低温の摩擦攪拌接合方法では、5000系Al合金溶加材の適用は、要求成形性や継手の形状条件に応じて、適用しないことも可能である。
【0041】
前記5000系Al合金溶加材の適用は、継手の溶接接合の際に、過剰Si型6000系Al合金材接合部に外部からMgが供給され、特に過剰Si型6000系Al合金材溶接継手の強度と伸びの低下を抑制する。また、溶接後の時効処理を施す際には、溶接方法によらず、過剰Si型6000系Al合金材溶接継手の強度と伸びの両者を著しく回復させ得る。例えば、5000系Al合金材を相手側の接合材に選択した場合、過剰Si型6000系Al合金材接合部に外部からMgを供給する効果があり、5000系Al合金溶加材が不要となる効果もある。
【0042】
(側辺部溶接部底面の温度)
前記した通り、側辺部溶接部底面の温度は550 ℃以下の、継手強度特性などに悪影響がない (溶接不良や欠陥を生じない) 程度の低い温度とする。
【0043】
図2 は、6000系Al合金材の側辺部溶接部底面における温度履歴と、側辺部底面割れとの関係を示している。より具体的には、図2 は、図3(図3(a)は溶接面、図3(b)は溶接底面) に平面図で示す2.2mm 厚の過剰Si型のAA6022Al合金板(Si;0.9%、Mg;0.6%)試験片1 を、溶接される試験片1aの側辺部の側面2 から溶接線3 までの端長さt を8mm ( 図2 のA)、16mm (図2 のB)、24mm( 図2 のC)、と変えて MIG溶接 (溶接条件は後述する表2 に記載) した場合の、試験片底面1aの温度履歴である。 なお、前記温度履歴は、図3(b)に示すように、試験片底面1bの溶接線3(表の面) に沿った部分に熱電対を設け、溶接部底面の温度を測定して行った。
【0044】
図2 から分かる通り、端長さが比較的長いC は、最高温度が550 ℃未満であり、側辺部底面割れは生じていない。これに対し、端長さが短いA 、B は最高温度が550 ℃を越え、側辺部底面割れが発生している。
【0045】
更に、図2 の試験において、溶接入熱量を制御して、溶接部底面の最高温度を種々変え、試験数を増した試験を行い、側辺部底面割れに対し、臨界的な底面最高温度を求めた。図1 に、Al合金材の側辺部溶接部底面における最高温度と側辺部底面割れ (割れ長さ) との関係、即ち、側辺部底面割れに対し、臨界的な底面最高温度を示す。
【0046】
図1 から分かる通り、最高温度が550 ℃近傍を境として、側辺部底面割れ無し(0mm) と側辺部底面割れ発生(30mm 以上) とが分かれる。したがって、図1 、2 から側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下とすることによって、溶接による熱が著しく放熱されにくい側辺部溶接部での、6000系Al合金材に特有の、前記凝固遅れに起因する側辺部底面割れが生じなくなることが分かる。
【0047】
また、前記図2 や図7 から、継ぎ手や溶接条件にもよるが、通常使用される継ぎ手や溶接条件の範囲では、一つの目安として、過剰Si型6000系Al合金材では、端長さt が20mm以下となった場合に、側辺部底面割れが生じやすくなると言える。
【0048】
以上説明した通り、図1 、2 から、側辺部溶接部底面の温度を550 ℃以下と制御することによって、溶接による熱が著しく放熱されにくい側辺部溶接部での、6000系Al合金材に特有の、前記凝固遅れに起因する側辺部底面割れが生じなくなることが分かる。
【0049】
なお、図1 、図2 での側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下とする意義の説明はMIG 溶接による試験結果に基づいて行った。しかし、6000系Al合金材の側辺部底面割れの原因乃至機構は、前記した通り、側辺部溶接部底面の最高温度とHAZ 粒界の未凝固部分との冶金的な相関関係である。したがって、550 ℃の温度条件は、この冶金的な現象が共通して生じるような溶融溶接方法で、溶接方法の種類の違いによらず、臨界的意義を持ちうるものである。
【0050】
側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下に制御する方法は、側辺部溶接部への入熱を少なくする、溶接部底面や側辺部面など、抜熱し易い部分に銅などの当て金を接触させて抜熱するなどの公知の手段が適宜選択される。言い換えると、側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下に制御する方法は、特別な手段を使わずとも、公知の手段が使用でき、溶接施工条件を大幅に変更することなく実施できる。
【0051】
また、側辺部底面割れが生じる、前記端長さが短い側辺部溶接部底面以外の溶接部は、端長さが充分長いため、溶接熱がAl合金材を通じて放熱されやすい。このため、側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下とする手段は基本的には不要である。
【0052】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示すような6063、6061、6022、6111合金組成の種々の6000系のAl合金板(2mm厚) 同士を用い、一方のAl合金板1 の端長さt を10mmとして、この部分で前記図6 に示す突き合わせ溶接 (溶接長さ300mm)を、MIG 溶接、TIG 溶接、CO2 レーザー溶接により行った。
【0053】
そして、これらの溶接の際の溶接条件を表2 に示す通りとし、各々側辺部溶接部への入熱量を制御して、側辺部溶接部底面における最高温度を変え、最高温度と側辺部底面割れとの関係を調査した。
【0054】
なお、前記最高温度は、前記図3 に示したように、側辺部溶接部の底面1aの溶接線3(表の面) に沿った部分に熱電対を設け、溶接部底面の温度を測定して行った。また、比較のために、5182Al合金板(2mm厚) 同士を同様の条件で溶接した。
【0055】
このようにして得た溶接継手の側辺部底面割れの有無と長さ(mm)を調査した。そして、図8 に示すように側辺部溶接部3 を含む溶接継手の試験片9 を採取し、溶接継手の引張強度 (σB ) をJIS Z 2241に従い測定した。そして母材の引張強度から溶接継手の母材比効率 (継手効率) も算出した。これらの結果を表3 に示す。
【0056】
表3 から明らかな通り、側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下とした発明例No.1〜8 の種々の6000系のAl合金は、MIG 溶接、TIG 溶接、CO2 レーザー溶接などの溶接方法によらず、側辺部底面割れが発生せず、継手強度が母材比効率で95% 以上である。
【0057】
一方、これに対し、側辺部溶接部底面の最高温度が550 ℃を越える比較例No.9〜12の種々の6000系のAl合金は、溶接方法によらず共通して側辺部底面割れが発生しており、継手強度も母材比効率で90% 未満と著しく低い。
【0058】
また、比較例No.13 、14の5000系の5182Al合金材同士を母材とした場合、側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下とした比較例No.13 と、最高温度を550 ℃を越える温度とした比較例No.14 とでは、いずれも側辺部底面割れが発生していない。したがって、側辺部底面割れが6000系Al合金材に特有の問題であることが分かる。
【0059】
以上の実施例の結果から、過剰Si型を含め、6000系Al合金材溶接継手における側辺部底面割れを防止するための、側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃の臨界的な意義が裏付けられる。
【0060】
【表1】
Figure 0003851519
【0061】
【表2】
Figure 0003851519
【0062】
【表3】
Figure 0003851519
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、側辺部底面割れを防止した6000系Al合金材の側辺部溶接方法を提供することが可能となる。したがって、特性の優れた過剰Si型を含めた6000系Al合金展伸材の自動車用途などへの拡大を図れる点で、工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】6000系Al合金材の側辺部溶接部底面における最高温度と側辺部底面割れとの関係を示す説明図である。
【図2】6000系Al合金材の側辺部溶接部底面における温度履歴と側辺部底面割れとの関係を示す説明図である。
【図3】図1、2の試験に用いた溶接用試験片(板)を示す平面図である。
【図4】側辺部溶接部の凝固過程を4 段階に分けて示す模式図である。
【図5】板材や形材同士の隅肉溶接を示す説明図である。
【図6】板材や形材同士の突き合わせ溶接を示す説明図である。
【図7】過剰Si型のAA6022Al合金材の側辺部溶接部に生じた側辺部底面割れを示す平面図である。
【図8】実施例の試験に用いた溶接用試験片(板)を示す平面図である。
【符号の説明】
1;6000系Al合金材、2;Al合金材の側辺部の側面、3;溶接部 (溶接線) 、
4;側辺部底面割れ、5;HAZ 、6;粒界、7;Al合金材、8;溶接トーチ、
9;試験片、t;端長さ、

Claims (2)

  1. AA乃至JIS 規格に規定される6000系アルミニウム合金材側辺部の溶接施工の際に、前記側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下として、側辺部溶接部底面の溶接割れを防止したことを特徴とするアルミニウム合金材の溶接方法。
  2. 前記6000系アルミニウム合金材が過剰Si型である請求項1に記載のアルミニウム合金材の溶接方法。
JP2001156998A 2001-05-25 2001-05-25 アルミニウム合金材の溶接方法 Expired - Fee Related JP3851519B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001156998A JP3851519B2 (ja) 2001-05-25 2001-05-25 アルミニウム合金材の溶接方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001156998A JP3851519B2 (ja) 2001-05-25 2001-05-25 アルミニウム合金材の溶接方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002346786A JP2002346786A (ja) 2002-12-04
JP3851519B2 true JP3851519B2 (ja) 2006-11-29

Family

ID=19000927

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001156998A Expired - Fee Related JP3851519B2 (ja) 2001-05-25 2001-05-25 アルミニウム合金材の溶接方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3851519B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008018436A (ja) 2006-07-11 2008-01-31 Yorozu Corp 溶接方法および溶接物
CN104439642A (zh) * 2014-11-27 2015-03-25 芜湖中集瑞江汽车有限公司 一种适用于4~6mm板厚的铝及其合金惰性气体保护焊焊接工艺
CN112247358A (zh) * 2020-11-07 2021-01-22 齐齐哈尔金车工业有限责任公司 一种用于铝合金构件的激光成形工艺方法
CN114799586B (zh) * 2022-03-10 2023-04-11 中国电子科技集团公司第二十九研究所 一种多功能复合构件连接与去应力的组合工艺方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002346786A (ja) 2002-12-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2533936B1 (en) Aluminum alloy welding wire
US20170304958A1 (en) Aluminum welding filler metal, casting and wrought metal alloy
US20050028897A1 (en) Process for avoiding cracking in welding
US20160289802A1 (en) Aluminum alloy
US10654135B2 (en) Aluminum alloy welding wire
US6153854A (en) Aluminum sheet product and method of welding structural components
US20170136584A1 (en) Aluminum Welding Filler Metal
JP3851519B2 (ja) アルミニウム合金材の溶接方法
EP3470167B1 (en) Method for forming a weld joint
Sharma et al. Effect of welding processes on tensile behavior of aluminum alloy joints
JP2004360054A (ja) 延性に優れた熱処理型アルミニウム合金接合材
JP3726034B2 (ja) アルミニウム合金溶接継手および溶接継手用アルミニウム合金板母材
EP2837704B1 (en) Aluminium alloy
JP3726033B2 (ja) アルミニウム合金溶接継手および溶接継手用アルミニウム合金展伸材
AU2017204285A1 (en) Aluminum welding filler metal, casting and wrought metal alloy
JP2008207249A (ja) 耐溶接割れ性に優れたアルミニウム合金材の溶接方法およびアルミニウム合金材の耐溶接割れ性評価方法
Derbiszewski et al. Studies on the Quality of Joints and Phenomena Therein for Welded Automotive Components Made of Aluminum Alloy—A Review
CA2993306C (en) Aluminum alloy welding wire
JP6679269B2 (ja) 高エネルギービーム溶接用Al合金材
JP6679296B2 (ja) 高エネルギービーム溶接用Al合金材及びその製造方法
JP2002115019A (ja) 耐溶接割れ性に優れたアルミニウム合金材
JP2005131679A (ja) 熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法及びそれによって得られるプレス成形用接合材
JP4038368B2 (ja) アルミニウム合金溶接接合材
JP2002294381A (ja) 成形用アルミニウム合金溶接継手
Fujiwara et al. Welded joint strength of thin aluminium structures

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040401

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060214

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060329

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060822

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060901

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3851519

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090908

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100908

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100908

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110908

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110908

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120908

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120908

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130908

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees