JP2002346786A - アルミニウム合金材の溶接方法 - Google Patents

アルミニウム合金材の溶接方法

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 側辺部底面割れを防止した6000系Al合金材
の溶接方法を提供する。 【解決手段】 AA乃至JIS 規格に規定される6000系ア
ルミニウム合金材側辺部の溶接施工の際に、前記側辺部
溶接部底面の最高温度を550 ℃以下として、側辺部溶接
部底面の溶接割れを防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、継手側辺部の溶接
部底面の溶接割れを防止した、過剰Si型6000系アルミニ
ウム合金材の溶接方法 (以下、アルミニウムを単にAlと
言う) に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車などの輸送機のパネル類、フレー
ム類、メンバー類などの部材には、成形した板材や形材
などのAl合金材同士を溶接接合した継手 (溶接接合部
材) が用いられるようになっている。
【0003】これら溶接継手用Al合金としては、従来か
ら溶接構造用Al合金として汎用されるAA乃至JIS 規格に
規定される5000系や、6063、6061などの6000系 (以下、
AA乃至JIS は省略) 、7N01、7003などの7000系などのAl
合金展伸材 (圧延板材、押出形材、鍛造材などの総称、
以下、単にAl合金材とも言う) がある。
【0004】この6000系 (Al-Mg-Si系) のAl合金中で
も、AA乃至JIS 規格で6061、6N01、6016、6111、6022な
どの、Si/Mg が1 以上の、Mg含有量に対しSiが過剰に含
有されている、過剰Si型の6000系Al合金は、溶体化処理
および焼き入れ処理 (質別記号T4) やその後の時効処理
(質別記号T6) 、過時効処理 (質別記号T7) 後の特性に
おいて特に時効硬化性に優れている。
【0005】このため、過剰Si型6000系Al合金は、前記
輸送機部材への成形時には低耐力で成形性を確保すると
ともに、成形後の部材の塗装焼き付け処理などにおい
て、170 ℃など比較的低温の加熱でも高耐力化して要求
強度を満たせる特性を有している。また、前記5000系や
7000系などのAl合金に比して、合金元素量が少ないの
で、スクラップを元の6000系Al合金の溶解原料として再
利用できるなどのリサイクル性にも優れている。
【0006】しかし、6000系Al合金材、中でも過剰Si型
6000系Al合金材は、その優れた時効硬化性ゆえに、前記
5000系や7000系などのAl合金に比して、逆に溶接時に
は、その接合性(接合強度)が低下するという問題があ
る。そして、この接合性の問題は、特に、部材の溶接さ
れる部位の側辺部 (端部乃至縁部) から溶接線までの距
離 (端長さ) が短い、溶接部位 (側辺部溶接部) を溶接
施工する際に顕著となる。
【0007】即ち、隅肉溶接や突き合わせ溶接などで、
少なくともいずれかのAl合金材を過剰Si型6000系Al合金
として継手を溶接接合する際、側辺部の溶接部におい
て、溶接部の底面 (裏面) に、溶接線 (溶着線) に沿っ
て走る、マクロな溶接割れが生じ易いという問題があ
る。この側辺部溶接部の底面の割れは、6000系Al合金材
の顕著な傾向であるとともに、過剰Si型の6000系Al合金
材において、特にその傾向が強くなる。そして、他の50
00系や7000系などの、6000系以外のAl合金ではこの溶接
部底面割れが発生しない乃至しにくい。
【0008】また、この溶接部底面割れは、通常、溶接
施工の際にAl合金系全般において生じやすい、溶接金属
部 (溶着部) やその近傍乃至周囲の熱影響部 (以下、HA
Z と言う) などの溶接接合部に生じる、ミクロな溶接割
れとは、後述する発生機構を含めて全く異なる特異な現
象である。
【0009】図7 は、6000系Al合金材の側辺部溶接部に
おいて生じる溶接部底面の溶接割れを示している。図7
は、後述する図3に示す過剰Si型のAA6022Al合金板試験
片1aを、溶接される試験片1aの側辺部2 から溶接線3 ま
での距離t ( 以下、端長さと言う) を種々変えて溶接し
た場合の、試験片底面1bの溶接状態を示している。な
お、溶接法は簡易的にビードオン溶接法を用い、溶け込
み深さを一定として溶接した。この図7 において、(a)
は端長さが32mm、(b) は端長さが24mm、(c) は端長さが
16mm、(d) は端長さが8mm の場合である。
【0010】図7 に示す通り、端長さが比較的長い図7
(a)(b) では、溶接線3aの部分 (溶接部底面) に溶接割
れは生じていない。これに対し、図7(c)(d) のように端
長さが短くなるにつれて、溶接線3aの部分に沿って走
る、マクロな溶接割れ4a、4bが生じている。即ち、端長
さが短くなるほど、特に過剰Si型などの6000系Al合金材
の側辺部溶接部底面では、マクロな溶接割れが生じやす
くなる。
【0011】また、この6000系Al合金材側辺部の溶接部
底面の割れ (以下、単に側辺部底面割れと言う) の傾向
は、スポット溶接などの個々の溶接線がごく短い溶接接
合方法では生じない。しかし、溶接線が比較的長い、ア
ークなどの熱源を用いる溶融溶接方法、即ち、ティグ(T
IG) 、ミグ(MIG) などの高速アーク溶接や、レーザー溶
接、電子ビームなど溶接で溶接して継手を形成する際に
顕著となる。更に、この傾向は、溶接接合部が比較的高
温にならない接合方法である、摩擦攪拌接合(FSW) 方法
においても生じる。
【0012】そして、このような側辺部底面割れが起る
と、Al合金溶接継手の強度が著しく低下し、自動車など
の前記部材に適用できないという深刻な問題が生じる。
【0013】なお、従来から、Al合金溶接継手の溶接部
の前記軟化や割れに対しては、アークなどの溶接方法の
側から、溶接施工条件などの種々の改善方法が行なわれ
てきた。例えば、特開平11-104860 号公報などに例示
される通り、極力低入熱で溶接する、あるいは冷却しな
がら溶接接合する方法、溶接後の継手を焼き入れ焼き
戻し処理する、あるいは特開平5-222498号公報などのよ
うに、時効硬化処理前の材料(T1 、T4材) を溶接後、時
効硬化処理する、などの熱処理によって軟化を回復させ
る方法などがある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかし、本発明で課題
とする側辺部底面割れは、自動車などの前記部材にそれ
まで適用されていた、他の5000系や7000系などのAl合金
では、前記した通り、発生しにくい。したがって、6000
系Al合金材が自動車などの前記溶接適用部材に使用され
て新たに生じた問題であり、しかも、前記した通り、60
00系Al合金材に特有の問題でもある。
【0015】従来から、特開昭61-23580号公報などで、
Al合金材の大肉厚部材と小肉厚部材の溶接における、溶
接材の肉厚差に起因する熱伝導の差 (小肉厚部材の方が
熱放散少) による、両者の加熱速度の差 (大肉厚部材の
方が温度上昇が遅く熱量不足になる) が生じることなど
が課題として公知にはなっていた。
【0016】しかし、これら公知技術の課題は、本発明
の課題である側辺部底面割れとは異なる。また、側辺部
底面割れとは、原因なり機構も異なるため、前記加熱速
度格差を緩衝するため中肉厚部材を中間に設置する解決
策も、側辺部底面割れ自体の解決策とはなり得ない。し
たがい、本発明の課題である側辺部底面割れは、これま
で詳細に解明されておらず、また直接の解決策も提案さ
れていなかった。
【0017】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、側辺部底面割れを防止した
6000系Al合金材の溶接方法を提供しようとするものであ
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明6000系Al合金材の溶接方法の請求項1 の要旨
は、AA乃至JIS 規格に規定される6000系アルミニウム合
金材側辺部の溶接施工の際に、前記側辺部溶接部底面の
最高温度を550 ℃以下として、側辺部溶接部底面の溶接
割れを防止したことである。
【0019】本発明者らは、6000系Al合金材の側辺部底
面割れの原因を究明した結果、前記端長さが短い側辺部
溶接部底面の最高温度と、溶接部凝固時のHAZ の粒界の
未凝固部分の存在 (挙動) とが相関して起因しているこ
とを知見した。
【0020】まず、6000系Al合金材の前記端長さが短い
側辺部溶接部では、端長さが充分長い他の溶接部より
も、溶接部近傍のAl合金材の質量が著しく少ない。この
ため、溶接による熱がAl合金材を通じた伝熱により放熱
されにくい。この結果、溶接時、側辺部溶接部底面は、
他の溶接部底面よりも、550 ℃を越えるより高温側に保
持されやすい傾向にある。
【0021】一方、6000系Al合金材では、その時効硬化
特性を発揮させるための、Al-Mg-Si系 (過剰Si型) 組成
とT4、T6、T7などの調質処理との関連で、母材の段階か
ら、側辺部溶接部底面のHAZ 粒界には、必然的に未凝固
部分 (未凝固の金属間化合物) が存在することとなる。
そして、この未凝固部分は過剰Si型6000系Al合金材にお
いて特に多い。
【0022】この側辺部溶接部底面の最高温度と、HAZ
粒界の未凝固部分との相関を図4 を用いて説明する。図
4 は側辺部溶接部の凝固過程を上から下のフェイズ1 〜
3 にかけて3 段階に分けて示す模式図である。図4 のフ
ェイズ1 と2 の図に示すように、例えば、Al合金材1 同
士の突き合わせ溶接の場合、溶接部3 の凝固に従って、
溶接部3 (溶融部) の収縮が起る際、矢印方向への収縮
応力が溶接部3 に作用する。この際、6000系Al合金材に
は、特に側辺部底面1bのHAZ 5 の粒界に未凝固部分6 が
存在する。
【0023】ここにおいて、側辺部溶接部底面の最高温
度が550 ℃を越える高温側に保持された場合、この未凝
固部分6 のみ凝固のタイミングが遅れるために、溶接部
3 の凝固収縮途中で、前記収縮応力が作用した場合に、
図4 のフェイズ2 の右側の図に示すように、未凝固部分
の粒界6 が耐えきれずにミクロな割れ6aとなって口を開
くことなる。このため、側辺部底面において、マトリッ
クスの拘束力が弱まるとともに、前記収縮応力の伝達や
吸収が不十分となり、図4 のフェイズ3 の右側の図に示
すように、側辺部底面割れ4 の発生に至るものである。
【0024】この傾向は、前記未凝固部分が多くなる過
剰Si型6000系Al合金材ほど、更に、溶接時の側辺部底面
の最高温度が550 ℃を越える高温となるほど、また、55
0 ℃を越える温度に保持される時間が長いほど、強くな
る。
【0025】一方、側辺部底面の最高温度が550 ℃以下
の場合、凝固過程での上記未凝固部分6 の凝固のタイミ
ング遅れは、前記収縮応力によるミクロな割れ6aとなる
ほど顕著には生じない。この結果、溶接部3 の凝固収縮
途中で前記収縮応力が作用した場合には、図4 のフェイ
ズ2 の左側の図に示すように、側辺部底面におけるマト
リックスの拘束力が弱まることなく、前記収縮応力の伝
達や吸収も順調に行われて、粒界凝固や溶融部収縮がス
ムースに進行、終了する。この過程なり結果は他のAl合
金材の凝固と同様であり、図4 のフェイズ3 の左側の図
に示すように側辺部底面割れが発生しない。
【0026】したがって、側辺部底面の最高温度550 ℃
には、以上のような臨界的意義がある。そして、前記し
たように、溶接時の側辺部底面の最高温度を550 ℃以下
とすれば、過剰Si型6000系Al合金材であっても、他のAl
合金と同様、溶接継手強度を、自動車などの部材に適用
可能なレベルとすることができる。
【0027】本発明は以上のような効果を有するため、
請求項2 に記載の通り、6000系Al合金の中でも、特に側
辺部底面割れの傾向が大きい過剰Si型6000系Al合金材に
適用されることが好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】(対象Al合金母材)本発明で用いる
母材Al合金は、AA乃至JIS 規格に規定される6000系(Al-
Mg-Si系) Al合金が対象となる。特に側辺部底面割れの
傾向が大きい、Si/Mg が1 以上の、Mg含有量に対しSiが
過剰に含有されている、6N01、6016、6111、6022など
の、過剰Si型の6000系Al合金が対象となる。
【0029】これらAl合金は、溶体化処理および焼き入
れ処理 (質別記号T4) やその後の時効処理 (質別記号T
6) 、過時効処理 (質別記号T7) されて、溶接継手乃至
溶接部材の母材として用いられる。
【0030】ただ、本発明母材Al合金の好ましい成分組
成として、前記溶接構造用としての必要強度などの要求
特性を満足するためには、Mg:0.2〜1.0% (質量% 、以下
同じ) 、Si:0.6〜1.6%の範囲から、Siが過剰となるよう
に選択することが好ましい。
【0031】この他、Mn、Cr、Zr、Ti、B 、Fe、Zn、N
i、V などのその他の合金元素は、基本的には不純物元
素である。しかし、6000系合金のリサイクルの観点か
ら、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系
合金や、その他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金な
どを溶解材として使用する場合を含む。このため、これ
ら元素が、本発明の目的とする諸特性向上効果を阻害し
ない範囲で、AA乃至JIS 規格内で含有されることを許容
する。したがって、本発明でAA乃至JIS 規格に規定され
るとは、これら規格を満足することを意味する。
【0032】本発明におけるAl合金母材自体は、溶解、
鋳造、均質化熱処理、熱間加工 (圧延、押出、鍛造) 、
必要により中間焼鈍、冷間加工 (圧延、鍛造) 圧延等の
常法工程により、板材や形材 (中空断面など断面形状が
長さ方向のどの位置でも本質的に同一である形材) 、鍛
造材として製造される。
【0033】(溶接方法)本発明が対象とする溶接方法
は、6000系Al合金材の溶接であって、前記端長さが短い
溶接施工部位を有し乃至溶接施工部位の中に前記端長さ
が短い溶接施工部位を含む、側辺部底面割れが生じやす
い、アークなどの熱源を用いる溶接線が長い溶融溶接方
法である。
【0034】6000系Al合金材の側辺部底面割れの原因乃
至機構は、前記した通り、端長さが短い側辺部溶接部底
面の最高温度と、溶接部凝固時のHAZ の粒界の未凝固部
分との相関関係という冶金的な問題である。したがっ
て、この冶金的な現象が共通して生じるような溶融溶接
方法で、溶接方法の種類の違いによらず生起する、共通
の問題である。
【0035】このような溶接方法としては、例えば、テ
ィグ(TIG) 、ミグ(MIG) などの高速アーク溶接やレーザ
ー溶接、電子ビームなどの溶接方法、あるいは摩擦攪拌
接合(FSW) 方法が例示される。したがって、スポット溶
接などの個々の溶接線が短く、6000系Al合金材溶接継手
の側辺部底面割れが生じないような溶接方法は対象とし
ない。
【0036】(溶接継手)また、本発明が対象とする溶接
継手は、前記端長さが短い溶接施工部位を有し、側辺部
底面割れが生じる可能性が大きい継手であれば、図5 に
示す板材や形材同士の隅肉溶接や、図6 に示す板材や形
材同士の突き合わせ溶接など、種々の溶接継手に適用で
きる。なお、図5 、図6 において、1 は溶接される6000
系Al合金材、7 は同じ6000系か他のAl合金材、1bはAl合
金材1 の側辺部底面、2 はAl合金材1 の側辺部、3 は溶
接部、t は側辺部2 から溶接線3aまでの端長さ、8 は溶
接トーチである。
【0037】これら溶接継手において、自動車部材など
の設計形状に応じて、板、形材、管等の適宜の形状が、
継手の組み合わせとして選択される。また、溶接継手
は、必ずしも6000系Al合金材や過剰Si型6000系Al合金材
同士でなくとも、通常のAl合金継手と同様に、あるいは
目的に応じて、3000系、5000系、6000系、7000系など成
分や合金系の違うAl合金材同士を接合しても良い。
【0038】(溶接条件)上記対象とする溶接方法におけ
る各溶接条件は、側辺部溶接部底面の温度を550 ℃以下
とする以外は、各々の溶接方法の常法の範囲で行う。例
えば、溶加材使用、開先形状、溶接姿勢、トーチ前進
角、シールド条件 (Arガス流量) 、溶接電流、溶接電
圧、溶接速度などの基本的な溶接条件は、各々の条件の
JIS 規格や各種溶接乃至アルミニウムハンドブックに従
う。
【0039】言い換えると、側辺部溶接部底面の温度を
550 ℃以下に制御する以外は、何ら特別な溶接方法や条
件を必要とせず、各々の溶接方法の常法の範囲で行える
点が、本発明の利点でもある。
【0040】なお、溶加材 (棒) は、JIS 規格に規定さ
れた5356などの5000系Al合金溶加材(棒) を、溶接継手
接合部の特性低下が特に生じやすい、過剰Si型6000系Al
合金材の溶融溶接に適用することが好ましい。4000系Al
合金溶加材は、過剰Si型6000系Al合金材の溶融溶接にお
いて、却って、溶接継手接合部の特性低下を招きやす
い。また、より低温の摩擦攪拌接合方法では、5000系Al
合金溶加材の適用は、要求成形性や継手の形状条件に応
じて、適用しないことも可能である。
【0041】前記5000系Al合金溶加材の適用は、継手の
溶接接合の際に、過剰Si型6000系Al合金材接合部に外部
からMgが供給され、特に過剰Si型6000系Al合金材溶接継
手の強度と伸びの低下を抑制する。また、溶接後の時効
処理を施す際には、溶接方法によらず、過剰Si型6000系
Al合金材溶接継手の強度と伸びの両者を著しく回復させ
得る。例えば、5000系Al合金材を相手側の接合材に選択
した場合、過剰Si型6000系Al合金材接合部に外部からMg
を供給する効果があり、5000系Al合金溶加材が不要とな
る効果もある。
【0042】(側辺部溶接部底面の温度)前記した通り、
側辺部溶接部底面の温度は550 ℃以下の、継手強度特性
などに悪影響がない (溶接不良や欠陥を生じない) 程度
の低い温度とする。
【0043】図2 は、6000系Al合金材の側辺部溶接部底
面における温度履歴と、側辺部底面割れとの関係を示し
ている。より具体的には、図2 は、図3(図3(a)は溶接
面、図3(b)は溶接底面) に平面図で示す2.2mm 厚の過剰
Si型のAA6022Al合金板(Si;0.9%、Mg;0.6%)試験片1 を、
溶接される試験片1aの側辺部2 から溶接線3 までの端長
さt を8mm ( 図2 のA)、16mm (図2 のB)、24mm( 図2 の
C)、と変えて MIG溶接 (溶接条件は後述する表2 に記
載) した場合の、試験片底面1aの温度履歴である。な
お、前記温度履歴は、図3(b)に示すように、試験片底面
1bの溶接線3(表の面) に沿った部分に熱電対を設け、溶
接部底面の温度を測定して行った。
【0044】図2 から分かる通り、端長さが比較的長い
C は、最高温度が550 ℃未満であり、側辺部底面割れは
生じていない。これに対し、端長さが短いA 、B は最高
温度が550 ℃を越え、側辺部底面割れが発生している。
【0045】更に、図2 の試験において、溶接入熱量を
制御して、溶接部底面の最高温度を種々変え、試験数を
増した試験を行い、側辺部底面割れに対し、臨界的な底
面最高温度を求めた。図1 に、Al合金材の側辺部溶接部
底面における最高温度と側辺部底面割れ (割れ長さ) と
の関係、即ち、側辺部底面割れに対し、臨界的な底面最
高温度を示す。
【0046】図1 から分かる通り、最高温度が550 ℃近
傍を境として、側辺部底面割れ無し(0mm) と側辺部底面
割れ発生(30mm 以上) とが分かれる。したがって、図1
、2から側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下とす
ることによって、溶接による熱が著しく放熱されにくい
側辺部溶接部での、6000系Al合金材に特有の、前記凝固
遅れに起因する側辺部底面割れが生じなくなることが分
かる。
【0047】また、前記図2 や図7 から、継ぎ手や溶接
条件にもよるが、通常使用される継ぎ手や溶接条件の範
囲では、一つの目安として、過剰Si型6000系Al合金材で
は、端長さt が20mm以下となった場合に、側辺部底面割
れが生じやすくなると言える。
【0048】以上説明した通り、図1 、2 から、側辺部
溶接部底面の温度を550 ℃以下と制御することによっ
て、溶接による熱が著しく放熱されにくい側辺部溶接部
での、6000系Al合金材に特有の、前記凝固遅れに起因す
る側辺部底面割れが生じなくなることが分かる。
【0049】なお、図1 、図2 での側辺部溶接部底面の
最高温度を550 ℃以下とする意義の説明はMIG 溶接によ
る試験結果に基づいて行った。しかし、6000系Al合金材
の側辺部底面割れの原因乃至機構は、前記した通り、側
辺部溶接部底面の最高温度とHAZ 粒界の未凝固部分との
冶金的な相関関係である。したがって、550 ℃の温度条
件は、この冶金的な現象が共通して生じるような溶融溶
接方法で、溶接方法の種類の違いによらず、臨界的意義
を持ちうるものである。
【0050】側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以下
に制御する方法は、側辺部溶接部への入熱を少なくす
る、溶接部底面や側辺部面など、抜熱し易い部分に銅な
どの当て金を接触させて抜熱するなどの公知の手段が適
宜選択される。言い換えると、側辺部溶接部底面の最高
温度を550 ℃以下に制御する方法は、特別な手段を使わ
ずとも、公知の手段が使用でき、溶接施工条件を大幅に
変更することなく実施できる。
【0051】また、側辺部底面割れが生じる、前記端長
さが短い側辺部溶接部底面以外の溶接部は、端長さが充
分長いため、溶接熱がAl合金材を通じて放熱されやす
い。このため、側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃以
下とする手段は基本的には不要である。
【0052】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示
すような6063、6061、6022、6111合金組成の種々の6000
系のAl合金板(2mm厚) 同士を用い、一方のAl合金板1 の
端長さt を10mmとして、この部分で前記図6 に示す突き
合わせ溶接 (溶接長さ300mm)を、MIG 溶接、TIG 溶接、
CO2 レーザー溶接により行った。
【0053】そして、これらの溶接の際の溶接条件を表
2 に示す通りとし、各々側辺部溶接部への入熱量を制御
して、側辺部溶接部底面における最高温度を変え、最高
温度と側辺部底面割れとの関係を調査した。
【0054】なお、前記最高温度は、前記図3 に示した
ように、側辺部溶接部の底面1aの溶接線3(表の面) に沿
った部分に熱電対を設け、溶接部底面の温度を測定して
行った。また、比較のために、5182Al合金板(2mm厚) 同
士を同様の条件で溶接した。
【0055】このようにして得た溶接継手の側辺部底面
割れの有無と長さ(mm)を調査した。そして、図8 に示す
ように側辺部溶接部3 を含む溶接継手の試験片9 を採取
し、溶接継手の引張強度 (σB ) をJIS Z 2241に従い測
定した。そして母材の引張強度から溶接継手の母材比効
率 (継手効率) も算出した。これらの結果を表3 に示
す。
【0056】表3 から明らかな通り、側辺部溶接部底面
の最高温度を550 ℃以下とした発明例No.1〜8 の種々の
6000系のAl合金は、MIG 溶接、TIG 溶接、CO2 レーザー
溶接などの溶接方法によらず、側辺部底面割れが発生せ
ず、継手強度が母材比効率で95% 以上である。
【0057】一方、これに対し、側辺部溶接部底面の最
高温度が550 ℃を越える比較例No.9〜12の種々の6000系
のAl合金は、溶接方法によらず共通して側辺部底面割れ
が発生しており、継手強度も母材比効率で90% 未満と著
しく低い。
【0058】また、比較例No.13 、14の5000系の5182Al
合金材同士を母材とした場合、側辺部溶接部底面の最高
温度を550 ℃以下とした比較例No.13 と、最高温度を55
0 ℃を越える温度とした比較例No.14 とでは、いずれも
側辺部底面割れが発生していない。したがって、側辺部
底面割れが6000系Al合金材に特有の問題であることが分
かる。
【0059】以上の実施例の結果から、過剰Si型を含
め、6000系Al合金材溶接継手における側辺部底面割れを
防止するための、側辺部溶接部底面の最高温度を550 ℃
の臨界的な意義が裏付けられる。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、側辺部底面割れを防止
した6000系Al合金材の側辺部溶接方法を提供することが
可能となる。したがって、特性の優れた過剰Si型を含め
た6000系Al合金展伸材の自動車用途などへの拡大を図れ
る点で、工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】6000系Al合金材の側辺部溶接部底面における最
高温度と側辺部底面割れとの関係を示す説明図である。
【図2】6000系Al合金材の側辺部溶接部底面における温
度履歴と側辺部底面割れとの関係を示す説明図である。
【図3】図1、2の試験に用いた溶接用試験片(板)を
示す平面図である。
【図4】側辺部溶接部の凝固過程を4 段階に分けて示す
模式図である。
【図5】板材や形材同士の隅肉溶接を示す説明図であ
る。
【図6】板材や形材同士の突き合わせ溶接を示す説明図
である。
【図7】過剰Si型のAA6022Al合金材の側辺部溶接部に生
じた側辺部底面割れを示す平面図である。
【図8】実施例の試験に用いた溶接用試験片(板)を示
す平面図である。
【符号の説明】
1;6000系Al合金材、2;Al合金材の側辺部、3;溶接部 (溶
接線) 、4;側辺部底面割れ、5;HAZ 、6;粒界、7;Al合金
材、8;溶接トーチ、9;試験片、t;端長さ、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B23K 103:10 B23K 103:10 Fターム(参考) 4E001 AA03 BB07 BB08 CB01 EA01 EA03 EA08 EA09 4E068 BE00 BF00 CB06 DB04

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 AA乃至JIS 規格に規定される6000系アル
    ミニウム合金材側辺部の溶接施工の際に、前記側辺部溶
    接部底面の最高温度を550 ℃以下として、側辺部溶接部
    底面の溶接割れを防止したことを特徴とするアルミニウ
    ム合金材の溶接方法。
  2. 【請求項2】 前記6000系アルミニウム合金材が過剰Si
    型である請求項1に記載のアルミニウム合金材の溶接方
    法。
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