JP3850074B2 - 食器洗浄機の温水生成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食器洗浄機で使用されるすすぎ用の温水を生成する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食器洗浄機の分野においては、省エネを図ってランニングコストを下げると言う観点から、すすぎ完了後の排湯の熱を利用して新たに供給されるすすぎ水を昇温する技術が開発されつつある。従来その一例として、排湯を回収する回収槽内にすすぎ水の給水管を回曲して配管し、すすぎ水が回収槽内を通過する際に排湯との間で熱交換させることによって、すすぎ水を昇温するようにしたものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来のものは、排熱利用の効率が必ずしも良いとは言えなくて、すすぎ水を予熱する程度に留められ、この予熱したものを改めてヒータにより所定温度まで上げる必要があって、コスト低減についてさしたる効果が得られていないのが実状であった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、排熱をより効率良く回収してすすぎ用の温水を生成することができるようにした食器洗浄機の温水生成装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、洗浄タンク内の洗浄水により食器を洗浄したのち同洗浄水を前記洗浄タンクに回収する洗浄サイクルに続いて、貯湯タンクに溜められた温水によりすすぎを行い同温水を前記洗浄タンクに回収するすすぎサイクルが実行され、このすすぎサイクルの実行に伴って前記洗浄タンクから排湯がオーバーフローされる食器洗浄機において、前記すすぎ用の温水を生成するための装置であって、前記排湯を回収する排湯回収タンクと、前記貯湯タンクに接続され給湯弁が介設された給水管と、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を配管接続して冷凍サイクルを構成したヒートポンプとを備え、このヒートポンプにおける前記蒸発器を、前記排湯回収タンク内に熱交換可能に配設する一方、前記凝縮器を、前記給水管に供給されるすすぎ水の原水と熱交換可能に配設し、前記給湯弁を開放するとともに前記ヒートポンプを運転することにより、排湯から熱を回収しつつ原水を昇温することで温水を生成して前記貯湯タンクに供給する温水生成工程が実行可能であり、かつ前記貯湯タンクには、貯留された温水が所定量を下回ったときに検知信号を出すフロートスイッチが備えられ、すすぎサイクルに入って前記貯湯タンクの前記フロートスイッチから前記検知信号が得られたタイミングで前記ヒートポンプの運転が開始される構成となっているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記貯湯タンクに備えられた前記フロートスイッチは、温水の補給により所定の貯留量に回復したところで別の検知信号を出す機能を備えており、前記貯湯タンクに温水が供給されて前記フロートスイッチから前記別の検知信号が得られたタイミングで、前記ヒートポンプの運転が停止されかつ前記給湯弁が閉鎖されるようになっていることを特徴としている。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記排湯回収タンク内に残った熱回収後の排湯は、ヒートポンプの1回の稼働が停止するごとに同排湯回収タンクに設けられた排水弁が開放されることにより外部に排出される構成となっていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記排湯回収タンク内に残った熱回収後の排湯は、前記洗浄タンク側から新たな排湯が供給される前に完全に排出される構成となっていることを特徴としている。
【0007】
【発明の作用および効果】
<請求項1の発明>
食器洗浄機からの排湯は排湯回収タンク内においてヒートポンプの蒸発器で熱交換されてその排熱が回収され、その熱が凝縮器において給水管に給送されるすすぎ水の原水と熱交換されることで温水が生成されて、食器洗浄機の貯湯タンクに供給される。
すなわち本発明によれば、ヒートポンプを用いたことで、排湯の熱を効率良く回収してすすぎ水を必要温度にまで昇温することが可能となり、ランニングコストの低減を確実に図ることができる。
特に、排湯が食器洗浄機の洗浄タンクから排出されるタイミングと合わせてヒートポンプを稼働させるのであるから、自然放熱によるエネルギーロスがなく、さらなる省エネを図ることができる。
【0008】
<請求項2の発明>
貯湯タンクに温水が補給されて所定の貯留量に回復したところで、温水の生成並びに供給が停止される。すすぎ用の温水をそのつど必要な分だけ生成して供給し得るようにしたから、食器洗浄機に備えられた貯湯タンク以外には、生成された温水を貯めておくタンクを付設することが不要であって、製造コストを抑え、また省スペース化を図ることができる。
【0009】
<請求項3の発明>
排湯回収タンク内に残った熱回収後の排湯が毎回排出されるので、新たに供給される排湯の熱を有効に利用することができる。
<請求項4の発明>
新たに供給される排湯が残水と混じることが確実に阻止されて、排湯の温度低下を招くことがないから、排熱をより有効に利用することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を図1ないし図10によって説明する。
図1において、符号1は食器洗浄機であって、その側方に本発明に係る温水生成装置20が設置される。まず食器洗浄機1の構造について説明すると、その内部の上方側には、図示しないラックを介して食器が出し入れ可能に収納される洗浄室2が形成されており、この洗浄室2の上面側と下面側に、洗浄ノズル3とすすぎノズル4とが一対ずつ配設されている。洗浄室2の底面の一側には、アルカリ洗剤の混入された洗浄水を貯留する洗浄タンク6が形成され、そこに貯められた洗浄水は、洗浄ポンプ7により汲み上げられて上記した洗浄ノズル3から食器に向けて噴射され、そののち洗浄タンク6内に回収されるといったように循環供給される。
【0011】
洗浄タンク6の下方には、すすぎ用の温水を貯留する貯湯タンク8が装備されている。この貯湯タンク8内には、詳しくは後記するように温水生成装置20で生成された温水が、給湯弁9の介設された給水管10により供給されて貯留される。貯められた温水は、すすぎポンプ11により汲み上げられてすすぎノズル4から食器に向けて噴射され、上記の洗浄タンク6内に回収される。洗浄タンク6にはオーバーフローパイプ13が装備されており、このオーバーフローパイプ13は、洗浄タンク6からオーバーフローした排湯を取り込んで、排湯管14を通して温水生成装置20に設けられた排湯回収タンク30内に排出するようになっている。なお、洗浄タンク6と貯湯タンク8内にはそれぞれヒータ15,16と図示しないサーモスタットが装備されていて、洗浄水は約60℃に、すすぎ用の温水は約80℃に保温されるようになっている。
【0012】
すなわち食器が洗浄室2に収納されると、洗浄ノズル3から洗浄水が噴射されて食器が洗浄され、続いてすすぎノズル4から温水が噴射されてすすぎが行われる。そして、洗浄タンク6に回収し切れずにオーバーフローした排湯が温水生成装置20側に排出されて排熱が回収され、その回収した熱が、給水管10に給送される水道水等の原水と熱交換されることで温水が生成されて、上記した貯湯タンク8に供給されるようになっている。
【0013】
続いて温水生成装置20について詳細に説明する。この温水生成装置20はヒートポンプ21を備えており、箱状をなす本体22内に収納されるようになっている。ヒートポンプ21は、図6にも示すように、圧縮機24、凝縮器25、膨張弁26及び蒸発器27が循環接続され、その中に冷媒であるフロンガス(R−22)が流通可能に封入されることで冷凍サイクルを構成している。
【0014】
圧縮機24は比較的大型のものであって、図2,3に示すように、本体22内の底面上に設置されている。その圧縮機24の側方には蓋板31付きの排湯回収タンク30が設置されている。この排湯回収タンク30には、図4,5に示すように、上記の冷凍サイクルの構成部品であるパイプ状の蒸発器27が、その内周面に沿って螺旋状に巻装されており、その入り口27aと出口27bとが蓋板31の上面に突出されて冷媒配管21aと接続されている。排湯回収タンク30の上部の一側には排湯の導入口32が設けられ、食器洗浄機1における洗浄タンク6のオーバーフローパイプ13から引き出された排湯管14と接続されており、洗浄タンク6からオーバーフローした排湯を導入し得るようになっている。他側には、排湯回収タンク30自身のオーバーフロー水を排出する排出口33が設けられ、排水管34が接続されている。
【0015】
排湯回収タンク30内には、プロペラ状の攪拌具36が備えられており、蓋板31上に設けられた駆動モータ37によりシャフト38を介して回転駆動されるようになっている。また、排湯回収タンク30の底面には排水弁40が設けられている。この排水弁40は常開式のものであって、蓋板31を貫通して上下動自由に装備されたロッド41の先端に、底面に開口された弁口42の上面側に接離して開閉する弁体43が設けられ、常にはロッド41がばね部材44により上動付勢されて、図5の鎖線に示すように弁体43が引き上げられることで弁口42が開いており、蓋板31上にブラケット45を介して取り付けられたソレノイド46の励磁力により、同図の実線に示すようにロッド41並びに弁体43を付勢力に抗して押し下げることで弁口42が閉じられるようになっている。この排水弁40は上記した排水管34に合流して接続されている。また、排湯回収タンク30の蓋板31には、蒸発器27に向けて温水を散水することでそれを洗浄するための2個の散水ノズル48が設けられている。
【0016】
凝縮器25は大径のパイプ状に形成されており、その中に、すすぎ水の原水を給送する給水管10の途中部分が挿通され、熱交換を可能とした二重管部28が形成されている。この二重管部28が、図2,3に示すように、本体22の2つの側面の内側にわたって回曲しつつ張り巡らされている。給水管10の出口側は、上記のように食器洗浄機1の貯湯タンク8に接続されている。また膨張弁26は、感温筒26aが付設された温度式のものである(図6参照)。なお、本体22内には、ヒートポンプ21の冷凍サイクルや給排水等を制御するための装置を収納した制御ボックス49が備えられている。
【0017】
さらに図6によって冷凍サイクルについて言及する。圧縮機24の高圧側と低圧側との間にはバイパス管51が設けられ、そこに容量調整弁52が設けられている。この容量調整弁52は、熱負荷(熱源)が足りないときや、初期給湯時のようにまったく無いときに、圧縮機24の高圧側のガスを低圧側にバイパスして、低圧側の圧力が過剰に低下することを防止するように機能する。
給水管10における二重管部28から出たところには、自動給水弁53が設けられている。この自動給水弁53は、高圧側の圧力を検知してそれに応じて給水量を調節し、高圧側の圧力を一定に保つように機能する。それに伴い、略一定温度の温水を取り出すことができる。
【0018】
給水管10における自動給水弁53の上流側には、分流弁54を介設した散水ホース55が分岐して接続され、この散水ホース55が、前記した排湯回収タンク30の蓋板31に設けられた散水ノズル48に接続されている。この分流弁54は、運転の停止時に開弁することで、二重管部28内に残っている温水を排出し、蒸発器27の洗浄に利用するとともに、運転立上り時の過渡的な凝縮能力不足を防止するように機能する。
【0019】
凝縮器25の出口側の冷媒配管21aと、原水の給水管10における二重管部28に入る手前側の部分とが密着状に並列配管されることにより、第1の補助熱交換部57が構成されている。この第1補助熱交換部57は、凝縮器25から出た液冷媒とすすぎ水の原水との間で熱交換させることによって、原水を予熱するように機能する。
また、上記の第1補助熱交換部57を構成する部分の下流側の冷媒配管21aと、蒸発器27の出口側の冷媒配管21aとが同じく密着状に並列配管されることで、第2の補助熱交換部58が構成されている。この第2補助熱交換部58は、蒸発器27を経た低温冷媒を凝縮器25から出た高温液冷媒で加熱することにより、特に運転後半において圧縮機24側への液戻り現象が起きるのを抑制し、併せて熱利用効率を高めるように機能する。
【0020】
上記の第2補助熱交換部58を構成する部分と、膨張弁26との間における冷媒配管21aにはレシーバ59が介設されている。このレシーバ59は、例えば冷媒を過充填したときや、内部のバランスが崩れて液冷媒が過剰となった場合にそれを溜め、凝縮器25に液冷媒が滞留するのを防止するように機能する。
レシーバ59と膨張弁26との間には冷媒電磁弁60が介設されている。この冷媒電磁弁60は、運転停止時に膨張弁26から高圧ガスが低圧側に漏れることを防いで高圧力を維持するように機能する。
【0021】
またこの第1実施形態では、図7,8に示すような制御回路を備えている。同図において、SWは給湯開始用の押しボタンスイッチ、FMは、温水生成装置20の本体22内に装備されたファンの駆動モータ、CMはヒートポンプ21の圧縮機24である。SVは冷媒電磁弁60、Mは攪拌具36の駆動モータ37、Sは排水弁40のソレノイド46である。Th1は、圧縮機24の高圧側吐出口に設けられた保護用のサーモスタット、Th2は、圧縮機24内に設けられた同じく保護用のサーモスタットである。また、OCRは、圧縮機24の運転電流が過電流となったときに開放する過負荷継電器、PdSWは、圧縮機24の高圧側の圧力が異常上昇した際に開放する圧力スイッチである。
【0022】
本第1実施形態は上記のような構造であって、続いてその作動を説明する。まず説明の便宜上、食器洗浄機1の洗浄タンク6と貯湯タンク8とが満水であって、洗浄可能な状態にある場合からの作動について図9のタイミングチャートを参照して説明する。
初めに洗浄すべき食器をラックに収めて洗浄室2内に収容する(ラック作業)。ラック作業が完了すると洗浄サイクルが開始され、洗浄タンク6内の洗浄水が洗浄ポンプ7で汲み上げられて洗浄ノズル3から噴出されるといった洗浄作業が数十秒間にわたって行われる。5秒程度の停止時間(水切り時間)があったのち、引き続いてすすぎサイクルが開始され、貯湯タンク8内の温水がすすぎポンプ11で汲み上げられてすすぎノズル4から噴出されるといったすすぎ作業が7秒程度行われる。そののち5秒程度の停止時間(同じく水切り時間)が設定され、それにより1回の洗浄工程が完了する。
【0023】
上記において、すすぎサイクルが開始されると、貯湯タンク8内に備えられたフロートスイッチがオフとなることで給湯弁9が開弁されるとともに、圧縮機24がオンしてヒートポンプ21が稼働し始める。同時に冷媒電磁弁60も開弁される。また、排湯回収タンク30に設けられたソレノイド46が励磁されて常開式の排水弁40が閉弁されるとともに、攪拌具36が回転駆動される。すすぎサイクルの開始後に洗浄タンク6からオーバーフローしてくる排湯は、少し遅れて排湯回収タンク30に流入し、実際に蒸発器27が吸熱を始めるのは数秒後となる。
【0024】
さて排湯回収タンク30では、食器洗浄機1の洗浄タンク6からオーバーフローした排湯が少しずつ(数十秒をかけて)取り込まれる。排湯の取り込みの最中からヒートポンプ21はフル運転して蒸発器27に液冷媒を供給し、攪拌具36により排湯が攪拌されて熱交換が促進されつつ吸熱を始める。実際に吸熱に掛けることのできる時間は数十秒であるため、膨張弁26は比較的大きな流量(冷凍能力)のものが使用され、立上りからすぐに多くの冷媒が供給される。
その吸熱の最中に、まず洗浄タンク6からのオーバーフローが終わり、排湯回収タンク30が満水となる。吸熱はさらに継続されるが、蒸発器27に冷媒が十分に行き届くと、感温筒26aで検知される温度が低下することで膨張弁26が閉じ始める。しかしながら、膨張弁26の流量制御のタイミングがどうしても遅れるので少し液戻りぎみになる。そのため、第2補助熱交換部58で加熱されることで液戻りの抑制が図られ、それと併せて熱利用効率の向上が図られる。
【0025】
この間、給水管10に送給されたすすぎ水の原水は、第1補助熱交換部57で予熱されたのち、二重管部28において冷媒と熱交換されて昇温され、温水となって給湯弁9を介して食器洗浄機1の貯湯タンク8に次第に供給される。貯湯タンク8に所定量温水が溜まってフロートスイッチがオンすると、圧縮機24がオフとなるとともに、冷媒電磁弁60が閉弁してヒートポンプ21の運転が停止される。また排湯回収タンク30の排水弁40が開弁されるとともに、攪拌具36が停止される。これにより、排湯回収タンク30内の排湯が排出されるが、排湯は慣性力により渦流となって排出されるので、例えば排湯中に食材の細片等の異物が混じっていたとしても、渦流とともにすべて排出され、タンク30内が汚れるおそれがない。また上記のフロートスイッチがオンすることに伴って分流弁54が10〜15秒間開弁され、二重管部28内に残った温水が散水ホース55側に分流される。その温水は、排湯回収タンク30の散水ノズル48から蒸発器27に向けて散水され、蒸発器27の表面が洗浄される。そののち、排湯回収タンク30の排湯が完全に排出され、食器洗浄機1がすすぎ可能な状態とされる。
以上のようにして、洗浄作業と温水の生成とが繰り返し行われる。
【0026】
一方、食器洗浄機1は汚れを扱うものであるため、毎日業務終了時には洗浄タンク6を全部排水するようにしている。したがって毎朝業務を開始する際には、温水を新たに洗浄タンク6に供給する必要がある。この給湯を初期給湯と称しており、以下これについて図10のタイミングチャートを参照して説明する。
この初期給湯では、容量の大きい洗浄タンク6に温水を貯めねばならず、また一度に大容量の温水を供給することが難しいことから、基本的には以下のような手順で給湯が行われる。それは、温水生成装置20で生成された温水が貯湯タンク8に一旦取り込まれ、貯湯タンク8内のフロートスイッチがオンにしたところで、給湯弁9が閉弁されてすすぎサイクルが行われ、すすぎポンプ11が温水を汲み上げてすすぎノズル4から噴射させて洗浄タンク6に貯められる。この給湯のサイクルが、洗浄タンク6内に設けられた図示しない水位センサが検知するまで継続される。その後、上記の給湯サイクルが予め設定された回数だけ実行されて、初期給湯が完了する。
【0027】
この初期給湯時における温水も、同様にヒートポンプ21を運転することで生成されるが、初期給湯時では洗浄タンク6からオーバーフローされる排湯、すなわち熱源が無いため、そのままでは低圧側が極端に低圧となった運転か、異常運転(真空運転あるいは液バック運転)を行ってしまう。したがって初期給湯時には、圧縮機24に付設された容量調整弁52の作用によって、高圧側の冷媒ガスを低圧側にバイパスさせる。これにより低圧側の圧力が一定値に維持される。実際にはこの圧力は、4Kgf/cm2程度となるように設定され、高圧側の比較的温度の高い冷媒ガスは、上記の設定圧力となるように低圧側に供給される。一方膨張弁26からは漏れ冷媒があり、熱源が無いためにそれは圧縮機24側に戻っていく。圧縮機24の吸入直前では、高温のバイパスガスと、戻ってきた液冷媒とが混合されつつ圧縮機24に戻り、このことがより低圧側の圧力を増加させ、高圧側の圧力を自動給水弁53を適度に開くように維持させるのに役立っている。上記した圧力設定値4Kgf/cm2は、フロンガス(R−22)の0℃での蒸発圧力を意識しており、仮に排湯回収タンク30内に温度の低い水が残っていたとしても、凍り付くおそれはない。
【0028】
温水の生成に話を戻すと、すすぎサイクルが行われるごとにヒートポンプ21により温水が生成される。通常そのためには、ヒートポンプ21の運転と停止とに対応して圧縮機24を断続運転させることになるが、短周期での運転と停止とを嫌う圧縮機24に対して、頻繁な断続運転が予測されるにも拘らずそのままにしておくのは、品質、信頼性の上から問題がある。
そこでこの実施形態では、初期給湯の際には圧縮機24を運転し続けるようにしている。ただし、食器洗浄機1の給湯弁9が間欠的に閉弁されるとき、ヒートポンプ21の冷凍サイクル側では凝縮器25への水流が断たれるから、圧縮機24が連続運転されていると、僅かな時間でも高圧側の圧力の異常上昇を招くこととなる。
【0029】
そのため、図10のタイミングチャートに示されるように、給湯弁9の閉弁動作に同期して冷媒電磁弁60を閉弁制御し、その間は、容量調整弁52によるバイパス冷媒だけで運転する。冷媒電磁弁60が閉じられると、圧縮機24の低圧側への冷媒の供給量が減少するため、高圧側の圧力は逆に下がり気味となり、よって高圧側の圧力の異常上昇が防止される。もちろん、冷媒電磁弁60が閉弁し続けると、高圧側が圧力上昇することになるが、閉弁時間はせいぜい数秒から数十秒であるため、上記のように高圧側の圧力を有効に下げるように機能する。このようにして初期給湯が行われ、洗浄可能な状態にセットされることになる。
【0030】
以上説明したように本実施形態によれば、ヒートポンプ21を用いたことで、食器洗浄機1からの排湯の熱を効率良く回収して、すすぎ水の原水を必要温度にまで昇温することが可能となり、改めてヒータ等で加熱する必要がなくて消費電力が抑えられ、ランニングコストの低減を確実に図ることができる。しかも、排湯の排出時とタイミングを合わせて排出時のみにヒートポンプ21を稼働させるようにしたから、省エネを図る上でより効果的である。また、すすぎ用の温水は、1回の洗浄に必要な分だけ生成されて供給されるから、食器洗浄機1に予め備えられた貯湯タンク8以外に温水を貯めておくタンクを追加して設けることが不要であって、製造コストを抑え、また省スペース化を図ることが可能となる。さらに、排湯は排湯回収タンク30で熱回収されたらすぐに外部に排出されるので、クリーンな装置を実現することができる。
【0031】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第1実施形態の洗浄工程では、既述したとおりに、数十秒間の洗浄サイクルが行われたのち、5秒程度の停止時間(水切り時間)を経てすすぎサイクルが行われ、このすすぎサイクルが開始されるのに伴って、ヒートポンプ21により新たなすすぎ用の温水が生成されて貯湯タンク8に供給される。
ところでヒートポンプ21で生成される温水は、給水管10に介設された自動給水弁53(図6参照)の機能によって流量を制御されつつ略一定の温度で取り出されるようになっており、冬場のようにすすぎ水の原水が低温である場合には、流量が制限されて貯湯タンク8を満水とするまでには時間が掛かる。特に次の洗浄作業が連続して行われた場合には、その洗浄サイクルが終了してもなお貯湯タンク8が満水とならず、そのまますすぎサイクルに入ってしまう場合が有り得る。そうすると、すすぎ用の温水が不足するので、食器に付着した洗浄水を完全に流し切れないといった事態が生ずるおそれがある。
【0032】
そこで上記のような事態を回避するために、貯湯タンク8が満水となるまで洗浄サイクルを継続するといった手段が講じられている(実公平5−20286号参照)。すなわち、洗浄サイクルを設定時間が経過したら終了してしまうのではなく、図16のタイミングチャートに示すように、貯湯タンク8が満水となってフロートスイッチがオンする(タイミングA)まで洗浄サイクルを継続するというものである。洗浄サイクルの終了と同時に、ヒートポンプ21の運転が停止され、また排湯回収タンク30の排水弁40が開弁される。そうすると、5秒後にすすぎサイクルに入ったとしても、所定量のすすぎ用の温水が噴射できて、良好にすすぎ作業を行うことができる。
【0033】
しかしながら、上記のように洗浄サイクルの継続を行った場合には1つ問題が生ずる。同タイミングチャートに示すように、洗浄サイクルが終了したらその5秒後(タイミングB)にすすぎサイクルが開始されるのであるが、そのとき新たな温水を生成するために、ヒートポンプ21が稼働されるとともに、排湯回収タンク30の排水弁40も閉弁される。このことは排水弁40の開弁時間、すなわち排水時間が5秒程度しか取れないことを意味し、その間に熱回収後の排湯を全部排出することは難しい。そうすると、残水がある状態で新たに洗浄タンク6からオーバーフローした排湯が排湯回収タンク30に供給されることになり、残水と混じることで排湯の温度が下がってしまったり、排湯回収タンク30から溢れ出てしまって、排熱を有効に利用できないという問題が残る。
【0034】
そこでこの第2実施形態では、熱回収後の排湯が排湯回収タンク30から完全に排出されて初めて、新たな排湯を供給し得るようにした手段が講じられている。
そのためこの第2実施形態では、温水生成装置20側の制御回路が図11に示すように構成されている。この制御回路では、ヒートポンプ21の始動を一定時間(5秒程度)遅延させるために、タイマTMが介設されている。食器洗浄機1側の制御回路については、図8に示した第1実施形態のものと同様であるので割愛する。
【0035】
第2実施形態の作動を図12のタイミングチャートに基づいて説明する。
上記したように貯湯タンク8への温水の貯留が遅れていると、洗浄サイクルが継続される。貯湯タンク8が満水となってフロートスイッチがオンする(タイミングA)と、洗浄サイクルが終了すると同時に給湯弁9が閉弁し、また、圧縮機24がオフとなるとともに冷媒電磁弁60が閉弁してヒートポンプ21の運転が停止される。また排湯回収タンク30の排水弁40が開弁されるとともに、攪拌具36が停止され、排湯回収タンク30内の排湯が排出される。
上記の洗浄サイクルの終了から5秒の停止時間を経過する(タイミングB)と、すすぎサイクルが開始される。それに伴い給湯弁9は開弁されるが、タイマTMが作動して遅延時間が取られることで、圧縮機24はオフ、冷媒電磁弁60は閉弁したままでヒートポンプ21は運転停止状態に留められる。また排湯回収タンク30の排水弁40も開弁したままとされる。
【0036】
すすぎサイクル開始から5秒経過する(タイミングC)と、タイマTMがタイムアップすることで、圧縮機24がオンするとともに、冷媒電磁弁60が開弁してヒートポンプ21の運転が開始され、また排湯回収タンク30の排水弁40が閉弁する。それとタイミングを合わせるようにして、洗浄タンク6からオーバーフローした排湯が排湯回収タンク30内に供給される。
上記により、排水弁40の開弁時間すなわち排水時間は、停止時間の5秒に遅延時間の5秒が加えられて合計10秒間取られることになり、この間に、熱回収した後の排湯は、排湯回収タンク30から完全に外部に排出される。これにより、次に供給される高温の排湯は、残水と混じることで温度低下を招いたり、排湯回収タンク30から溢れ出るといったことがなく、排熱が有効に利用されるところとなる。なお、ヒートポンプ21の始動も5秒遅れることになるが、オーバーフローした排湯も同程度遅れて排湯回収タンク30に排出されて来るので、温水生成について実質的に問題とはならない。むしろ、ヒートポンプ21を無駄なく運転できて、省エネに寄与し得る。
【0037】
<第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態を図13ないし図15によって説明する。
この第3実施形態は、上記の第2実施形態と同様に、排湯回収タンク30における熱回収後の排湯の排水時間を確保することを課題としており、そのための別の解決手段を示している。
この第3実施形態では、図13,14に示す制御回路を備えている。特徴的なところは、貯湯タンク8に備えられたフロートスイッチFSの信号を一定時間(5秒程度)遅延するためのタイマTMを設けているところにある。
【0038】
第3実施形態の作動を図15のタイミングチャートに基づいて説明する。
貯湯タンク8への温水の貯留が遅れていて、洗浄サイクルが継続されている場合において、貯湯タンク8が満水となってフロートスイッチFSがオンする(タイミングA)と、圧縮機24がオフとなるとともに冷媒電磁弁60が閉弁してヒートポンプ21の運転が停止される。また排湯回収タンク30の排水弁40が開弁されるとともに、攪拌具36が停止され、排湯回収タンク30内の排湯が排出される。一方、タイマTMの機能でフロートスイッチFSの信号が遅延させられることにより、洗浄サイクルはさらに継続され、また給湯弁9が開弁状態に留められる。
フロートスイッチFSがオンしてから5秒経過する(タイミングB)と、タイマTMがタイムアップすることで、洗浄サイクルが終了するとともに、給湯弁9が閉弁される。洗浄サイクルが終了後、5秒の停止時間が経過する(タイミングC)と、すすぎサイクルが開始される。それに伴い、圧縮機24がオンし、冷媒電磁弁60が開弁することでヒートポンプ21の運転が開始されるとともに、排湯回収タンク30の排水弁40が閉弁する。
上記により、排水弁40の開弁時間すなわち排水時間は、タイマTMによる遅延時間の5秒に停止時間の5秒が加えられて合計10秒間取られることになり、この間に、熱回収した後の排湯は完全に外部に排出される。これにより同様に、次に供給される高温の排湯は、残水と混じることで温度低下を招いたり、排湯回収タンク30から溢れ出るといったことがなく、排熱が有効に利用される。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)なお食器洗浄機から新たな排湯が供給される前に、排湯回収タンクから熱回収後の排湯を完全に排出できるようにするために、第2または第3実施形態に例示した他に、以下のような対策を講じてもよい。
図16で説明したように、排湯回収タンクの排水時間が不足するのは、給湯が遅れて洗浄サイクルが継続された場合に起きるのであるから、給湯能力を増大して、正規時間の洗浄サイクルが終了する前に貯湯タンクを満水にし得るようにすればよい。
給湯能力を増大するためには、ヒートポンプの圧縮機の能力を大きくするか、蒸発器側の吸熱能力を上げるようにすればよい。
【0040】
(2)別の手段として、洗浄サイクルからすすぎサイクルに移るまでの約5秒の停止時間の間に、排湯回収タンクの排湯を完全に排水できるようにすればよい。そのためには、排湯回収タンクに設けられた排水弁の弁口の開口面積を増大して、排水量を増大することが考えられる。
(3)また、排湯回収タンクの排水時間として確保し得る洗浄サイクルとすすぎサイクルの間の停止時間自体を、10秒程度に延長してもよい。
(4)なお上記各実施形態では、フロンガスを冷媒として用いたものを例示したが、他の冷媒を用いて冷凍サイクルを構成したヒートポンプを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の全体構造を示す概略図である。
【図2】 温水生成装置の上面から見た断面図である。
【図3】 その正面から見た断面図である。
【図4】 排湯回収タンクの上面から見た断面図である。
【図5】 その正面から見た断面図である。
【図6】 ヒートポンプの冷凍サイクル図である。
【図7】 温水生成装置の制御回路図である。
【図8】 食器洗浄機の制御回路図である。
【図9】 洗浄運転時のタイミングチャートである。
【図10】 初期給湯時のタイミングチャートである。
【図11】 第2実施形態に係る温水生成装置の制御回路図である。
【図12】 その洗浄運転時のタイミングチャートである。
【図13】 第3実施形態に係る温水生成装置の制御回路図である。
【図14】 その食器洗浄機の制御回路図である。
【図15】 その洗浄運転時のタイミングチャートである。
【図16】 排湯回収タンクの排水時間を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
1…食器洗浄機 6…洗浄タンク 8…貯湯タンク 10…給水管 13…オーバーフローパイプ 20…温水生成装置 21…ヒートポンプ 21a…冷媒配管 24…圧縮機 25…凝縮器 26…膨張弁 27…蒸発器 28…二重管部 30…排湯回収タンク 40…排水弁 TM…タイマ FS…フロートスイッチ
Claims (4)
- 洗浄タンク内の洗浄水により食器を洗浄したのち同洗浄水を前記洗浄タンクに回収する洗浄サイクルに続いて、貯湯タンクに溜められた温水によりすすぎを行い同温水を前記洗浄タンクに回収するすすぎサイクルが実行され、このすすぎサイクルの実行に伴って前記洗浄タンクから排湯がオーバーフローされる食器洗浄機において、前記すすぎ用の温水を生成するための装置であって、
前記排湯を回収する排湯回収タンクと、前記貯湯タンクに接続され給湯弁が介設された給水管と、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を配管接続して冷凍サイクルを構成したヒートポンプとを備え、このヒートポンプにおける前記蒸発器を、前記排湯回収タンク内に熱交換可能に配設する一方、前記凝縮器を、前記給水管に供給されるすすぎ水の原水と熱交換可能に配設し、前記給湯弁を開放するとともに前記ヒートポンプを運転することにより、排湯から熱を回収しつつ原水を昇温することで温水を生成して前記貯湯タンクに供給する温水生成工程が実行可能であり、
かつ前記貯湯タンクには、貯留された温水が所定量を下回ったときに検知信号を出すフロートスイッチが備えられ、すすぎサイクルに入って前記貯湯タンクの前記フロートスイッチから前記検知信号が得られたタイミングで前記ヒートポンプの運転が開始される構成となっていることを特徴とする食器洗浄機の温水生成装置。 - 前記貯湯タンクに備えられた前記フロートスイッチは、温水の補給により所定の貯留量に回復したところで別の検知信号を出す機能を備えており、前記貯湯タンクに温水が供給されて前記フロートスイッチから前記別の検知信号が得られたタイミングで、前記ヒートポンプの運転が停止されかつ前記給湯弁が閉鎖されるようになっていることを特徴とする請求項1記載の食器洗浄機の温水生成装置。
- 前記排湯回収タンク内に残った熱回収後の排湯は、ヒートポンプの1回の稼働が停止するごとに同排湯回収タンクに設けられた排水弁が開放されることにより外部に排出される構成となっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の食器洗浄機の温水生成装置。
- 前記排湯回収タンク内に残った熱回収後の排湯は、前記洗浄タンク側から新たな排湯が供給される前に完全に排出される構成となっていることを特徴とする請求項3記載の食器洗浄機の温水生成装置。
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