JP3849468B2 - 空気調和機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、室内機と室外機を接続配管で接続した、分離型の空気調和機の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来分離型の空気調和機において電動膨張弁によって冷凍サイクルの冷媒循環量を制御する方法としては、例えば特許第2921254号公報を挙げることができる。
【0003】
この従来例においては、蒸発温度と凝縮温度と圧縮機単体の傾斜特性線により、モリエル線図上から目標吐出温度を設定し、圧縮機の吐出温度が目標吐出温度になるよう電動膨張弁によって冷媒循環量を制御している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年省エネルギや快適性といった観点から、圧縮機の回転数が大きく変化するインバータを搭載した分離型の空気調和機が多く普及している。また設置自由度の拡大という観点から接続可能な配管長に関しても、より短く、あるいはより長くまで接続できるよう要求されている。
【0005】
しかしながらこのような空気調和機においては、インバータにより冷媒循環量が大きく変化し、更に接続配管長も大きく変化するため、図4に示す冷媒循環量と配管長の圧損関係のように、暖房運転時に凝縮器の圧力と圧縮機の吐出側圧力との差(以後圧損という)も大きく変化する。
【0006】
その結果、蒸発温度と凝縮温度を把握するだけで目標吐出温度を設定し吐出温度制御を行っても、接続配管の圧損影響で吸入部での圧力・温度配管長などの影響を受けて変動し、圧縮機の吸入側の冷媒過熱度SHを適正過熱度SHmに保つことが困難であった。
【0007】
一般に圧縮機の吸入側の冷媒過熱度が適正過熱度SHm(冷媒の種類、運転モード、運転周波数などにより変化する)に保たれていれば、圧縮機の運転効率が高くなり、システムとしても効率的な運転が可能となる。しかし吸入部での冷媒過熱度が大きくなりすぎると、圧縮機の負荷は小さくなるものの、冷媒循環量が減少して必要な空調能力に対して能力不足となる課題が生じる。
【0008】
一方吸入冷媒が湿り過ぎる(冷媒過熱度がとれていない状態)と蒸発器からの液バックが生じる可能性があり、圧縮機の信頼性が低下するという課題が生じる。
【0009】
そこで蒸発温度と吸入温度との差により検出した吸入側の冷媒過熱度が所定値範囲から外れたら目標吐出温度を修正するという方法もある。
【0010】
しかし、この方法では運転条件(例えば圧縮機の回転数)が変わった場合には目標吐出温度を修正することで吸入側の冷媒過熱度を修正することはできても、施工条件(配管長)が変わった場合には吸入側の冷媒過熱度を修正することはできない。
【0011】
そこで、施工時にスイッチ等で施工者が確実に実配管長を設定する必要があり、製品コストが上がる、施工時間が長くなるといった課題が生じる。
【0012】
そこで本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、吐出温度制御で暖房運転を行う場合に、様々な運転条件下や施工条件下でも圧縮機の吐出側の冷媒圧力を高精度に推定することにより吸入側の冷媒過熱度を適正過熱度に制御し、運転効率を高め、必要能力を確保するとともに圧縮機の信頼性を高めることができる安価な空気調和機を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、容量可変形圧縮機と室外熱交換器と前記室外熱交換器の温度を検出する第1の温度検出手段と弁開度の制御可能な電動膨張弁とを有する室外機と、室内熱交換器と前記室内熱交換器の温度を検出する第2の温度検出手段とを有する室内機と、前記室外機と前記室内機を接続する接続配管を有する空気調和機において、前記接続配管の配管長を予め記憶する記憶手段と、暖房運転時に前記第2の温度検出手段により検出された凝縮温度と前記記憶手段に記憶されている配管長と前記圧縮機の回転数とに基づいて、前記圧縮機の吐出冷媒圧力を推定する第1の推定手段と、前記圧縮機の吐出温度を検出する第3の温度検出手段と、前記第1の温度検出手段により検出された蒸発温度と前記圧縮機の回転数に基づき前記圧縮機の吸入冷媒圧力を算出するとともに、その吸入冷媒圧力と前記第1の推定手段により推定された吐出冷媒圧力に基づいて前記圧縮機の目標吐出温度を算出する目標吐出温度算出手段と、前記電動膨張弁の開度を制御することにより、前記目標吐出温度を目指して、前記第3の温度検出手段により検出される吐出温度を変更させる膨張弁制御手段とを備えたものである。
【0014】
このように、凝縮器圧力に圧損を考慮することで運転条件が変化しても圧縮機の吐出冷媒圧力を高精度に推定することができ、その高精度に推定された吐出冷媒圧力を使って目標吐出温度を算出し吐出温度を制御するため、運転条件が変化しても高精度に実際の吸入冷媒過熱度を適正過熱度に制御することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、容量可変形圧縮機と室外熱交換器と前記室外熱交換器の温度を検出する第1の温度検出手段と弁開度の制御可能な電動膨張弁とを有する室外機と、室内熱交換器と前記室内熱交換器の温度を検出する第2の温度検出手段とを有する室内機と、前記室外機と前記室内機を接続する接続配管を有する空気調和機において、前記接続配管の配管長を予め記憶する記憶手段と、暖房運転時に前記第2の温度検出手段により検出された凝縮温度と前記記憶手段に記憶されている配管長と前記圧縮機の回転数とに基づいて、前記圧縮機の吐出冷媒圧力を推定する第1の推定手段と、前記圧縮機の吐出温度を検出する第3の温度検出手段と、前記第1の温度検出手段により検出された蒸発温度と前記圧縮機の回転数に基づき前記圧縮機の吸入冷媒圧力を算出するとともに、その吸入冷媒圧力と前記第1の推定手段により推定された吐出冷媒圧力に基づいて前記圧縮機の目標吐出温度を算出する目標吐出温度算出手段と、前記電動膨張弁の開度を制御することにより、前記目標吐出温度を目指して、前記第3の温度検出手段により検出される吐出温度を変更させる膨張弁制御手段とを備えたものである。
【0016】
このように、凝縮器圧力に圧損を考慮することで運転条件が変化しても圧縮機の吐出冷媒圧力を高精度に推定することができ、その高精度に推定された吐出冷媒圧力を使って目標吐出温度を算出し吐出温度を制御するため、運転条件が変化しても高精度に実際の吸入冷媒過熱度を適正過熱度に制御することができる。
【0017】
また、請求項2記載の本発明は、容量可変形圧縮機と室外熱交換器と前記室外熱交換器の温度を検出する第1の温度検出手段と弁開度を制御可能な複数の電動膨張弁とを有する室外機と、室内熱交換器と前記室内熱交換器の温度を検出する第2の温度検出手段とを有する複数の室内機とを接続配管により並列に接続したマルチタイプの空気調和機において、前記各室内機への各接続配管の配管長を予め記憶する記憶手段と、暖房運転時に前記各室内機の前記第2の温度検出手段により検出された各凝縮温度と前記記憶手段に記憶されている各接続配管の配管長と前記圧縮機の回転数とに基づいて、前記圧縮機の吐出冷媒圧力を推定する第1の推定手段と、前記圧縮機の吐出温度を検出する第3の温度検出手段と、前記第1の温度検出手段により検出された蒸発温度と前記圧縮機の回転数に基づき前記圧縮機の吸入冷媒圧力を算出するとともに、前記吸入冷媒圧力と前記第1の推定手段により推定された吐出冷媒圧力に基づいて前記圧縮機の目標吐出温度を算出する目標吐出温度算出手段と、前記電動膨張弁の開度を制御することにより、前記目標吐出温度を目指して、前記第3の温度検出手段により検出される吐出温度を変更させる膨張弁制御手段とを備えたものである。
【0018】
このように、マルチタイプの空気調和機においても、凝縮器圧力に圧損を考慮することで運転条件が変化しても圧縮機の吐出冷媒圧力を高精度に推定することができ、その高精度に推定された吐出冷媒圧力を使って目標吐出温度を算出し吐出温度を制御するため、運転条件が変化しても高精度に実際の吸入冷媒過熱度を適正過熱度に制御することができる。
【0019】
また、請求項3記載の本発明は、圧縮機の吸入温度を検出する第4の温度検出手段と、目標吐出温度算出手段により算出された吸入冷媒圧力から飽和温度を求めるとともに、その飽和温度と前記第4の温度検出手段により検出された吸入温度とに基づき圧縮機の吸入冷媒過熱度を推定する第2の推定手段と、第3の温度検出手段により検出された吐出温度が前記目標吐出温度算出手段により算出された目標吐出温度に対し所定の範囲内にあり、かつ前記第2の推定手段により推定された前記吸入冷媒過熱度が所定の範囲から外れた場合に、予め記憶手段に記憶されている配管長を修正するものである。
【0020】
このように、予め記憶されている配管長が実際に据付られている配管長と大きく異なる場合でも自動的に配管長を修正するため、修正を行う度に実際の配管長に近づくことになる。この結果、目標吐出温度が修正されるため、運転条件や施工条件が変化しても実際の吸入冷媒過熱度は適正過熱度近傍へと修正される。
【0021】
また、請求項4記載の本発明は、配管長修正手段により修正された配管長が所定配管長から外れた場合、据付配管長が適切ではない旨を使用者に知らせる異常検出手段を備えたものである。
【0022】
このように、実際に据付られている配管長が適正配管長から逸脱され、システムの運転に不具合が生じやすい場合に使用者にその旨を知らせることができ、この結果システムの重大な損傷等を間逃れることができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施形態の構成を示す構成図であり、室外機1と室内機2が接続配管8により接続され、冷凍サイクルを形成している。
【0024】
図1において、室外機1にはインバータ駆動の容量可変形圧縮機3(以下単に圧縮機と称す)と室外熱交換器5と冷暖房切換用の四方弁4とが設けられる一方、室内機2には室内熱交換器7が設けられている。また、室外機1の液側主管には、例えばステッピングモータ等により弁開度を制御可能な電動膨張弁6が介装されている。
【0025】
上記構成の冷凍サイクルにおいて、暖房時、圧縮機3から吐出された冷媒は、四方弁4より接続配管8のガス側配管を通って室内熱交換器7へと流れて、ここで室内空気と熱交換して凝縮液化し接続配管8の液側配管を通った後、電動膨張弁6を通過することにより減圧されて冷媒は蒸発しやすい状態となり、室外熱交換器5へと流れて室外空気と熱交換して蒸発した後、再び圧縮機3に吸入される。また、圧縮機3の回転数は、室内機2からの要求能力に応じて決定される(本発明と直接関係しないため、説明は省略する。)。
【0026】
次に、圧縮機3の吐出冷媒圧力を推定する方法について説明する。まず第1の推定手段(マイクロコンピュータ)は室内熱交換器温度センサ11により得られた凝縮温度Tcからの圧力変換に基づき凝縮器圧力Pc(Tcの関数)を求め、式(1)に示すように前記凝縮器圧力Pに圧損△Pを付加することにより吐出冷媒圧力Pdを推定する。
【0027】
ここで圧損△Pは、式(2)に示す圧縮機3の回転数Rと記憶手段(メモリ装置)に記憶されている接続配管8の長さH(例えば10m)とから推定する。
Pd=Pc+△P・・・・・式(1)
△P=a×R2 ×H・・・式(2)
このように、圧損を高精度で推定することで、吐出冷媒圧力も高精度に推定できる。
【0028】
また図2は本発明の実施形態おけるマルチタイプの空気調和機の構成を示す構成図であり、マルチタイプの場合、第1の推定手段(マイクロコンピュータ)は記憶手段に記憶されている各配管長Ha、Hb(ここでは2室マルチの空気調和機を例としてあげているので、添え字としてa,bを使用している。以下、Tca,Tcb等も同様)から平均配管長Hr[=(Ha+Hb)/2]を算出し、圧縮機3の平均回転数Rr(=R/2)を算出するとともに、前記平均配管長Hrと前記平均回転数Rrから式(2)より1室当たりの平均圧損△Prを算出する。
【0029】
そして、各室内機2の凝縮温度Tcから平均凝縮温度Tcr[=(Tca+Tcb)/2)]を算出し、前記平均凝縮温度Tcrからの圧力換算により平均凝縮器圧力Prを求め、前記平均凝縮器圧力Prと前記平均圧損△Prから式(1)より吐出冷媒圧力Pdを推定する。このようにマルチタイプの空気調和機においては、平均配管長を用いて平均圧損を推定するため全体圧損を高精度に推定でき、その結果吐出冷媒圧力も高精度で推定できる。
【0030】
次に吸入冷媒過熱度を間接的に制御する吐出温度制御について説明する。まず目標吐出温度算出手段(マイクロコンピュータ)は室外熱交換器温度センサ10により検出された蒸発温度Teの圧力変換に基づき蒸発器圧力Pe(Teの関数)を算出し、前記蒸発器圧力Peと圧縮機3の回転数Rにより式(3)を用いて吸入冷媒圧力Psを算出する。式(3)においてb×Rの項は、室外機1内の配管圧損の項であり、圧縮機3の回転数Rにより近似している。
Ps=Pe−b×R・・・式(3) bは定数
ここで圧縮機3の圧縮原理はポリトロープ圧縮であることから、ポリトロープ圧縮の理論関係式を用いて適正過熱度SHmでの吐出温度が計算できる。そこで前記吸入冷媒圧力Psと、第1の推定手段により推定された圧縮機の吐出冷媒圧力Pdと、前記吸入冷媒圧力Psの飽和温度変換Tws(Psの関数)と、適正過熱度SHmから式(4)の理論関係式を用いて圧縮機3の目標吐出温度Tdmを算出する。
【0031】
Tdm=(Pd/Ps)(p-1/p)×(Tws+SHm+c)−d ・・・式(4)
ここで、pは実験で求められるポリトロープ指数であり、c、dは定数
更に膨張弁制御手段(マイクロコンピュータ)は、吐出温度センサ9により検出された吐出温度Tdと前記目標吐出温度Tdmとの温度差△Tに基づいて、電動膨張弁6の操作開度△Kを算出し、所定時間ごと、例えば60秒毎に電動膨張弁6を制御する。
△T=Td−Tdm・・・式(5)
△K=e×△T・・・・・式(6) eは定数
このように、高精度に推定された吐出冷媒圧力を使って目標吐出温度を算出し、フィードバック制御を行うため、運転条件が変化しても高精度に実際の吸入冷媒過熱度を適正過熱度SHmに制御することができる。
【0032】
ここでは電動膨張弁6の操作開度△Kの算出方法に温度差△Tを用いたが、PID制御やファジー制御といった制御方法を用いても同様の効果が得られる。
【0033】
次に実際に据付られている実配管長と記憶手段に記憶されている配管長が大きく異なる場合の冷凍サイクル挙動について説明する。図5は上記吐出温度制御を行った場合のモリエル線図であり、図5において実線で書かれた冷凍サイクルは実際に据付られている実配管長と記憶手段に記憶されている配管長が等しい時の冷凍サイクルを示している。
【0034】
ここから実配管長Htが配管長Hよりも短くなると、実際の吐出圧力は推定された吐出圧力A点よりも低いB点となり、この時の吸入冷媒過熱度は適正過熱度SHmよりも大きくなる。
【0035】
この結果、運転効率が低下したり能力不足といった問題が生じやすくなる。逆に実配管長Htが配管長Hよりも長くなると、実際の吐出圧力は推定された吐出圧力A点よりも高いC点となり、この時の吸入冷媒過熱度は適正過熱度SHmよりも小さくなる。この結果、運転効率が低下したり液バックといった圧縮機の信頼性低下問題が生じやすくなる。
【0036】
そこで、実際に据付られている実配管長Htと記憶手段に記憶されている配管長Hが大きく異なる場合の吐出温度制御について図3の本発明の実施形態を示すフローチャートを用いて説明する。
【0037】
まずステップS1では配管長Hを初期値10mに設定するとともに、カウンタMとNを0にセットする。ステップS2では制御間隔(60秒)をカウントするタイマをリセットし、ステップS3でタイマをスタートさせる。
【0038】
ステップS4では蒸発温度Teと凝縮温度Tcと吐出温度Tdと圧縮機回転数Rと吸入温度センサ12により吸入温度Tsを読み込む。ステップS5では第1の推定手段により吐出冷媒圧力Pdを推定し、ステップS6では目標吐出温度算出手段により目標吐出温度Tdmを算出し、スッテプS7では第2の推定手段により式(7)を用いて吸入冷媒過熱度SHsを推定する。
SHs=Ts−Tws・・・式(7)
ステップS8では吐出温度Tdが目標吐出温度Tdmに対し±h℃以内(例えば0.5℃以内)に入っているか判断し、Tdm±h℃に入っていれば、ステップS9に進む。一方ステップS8にて吐出温度TdがTdm±h℃以内に入っていなければ、ステップS27、S16、S17、S18と進み、吐出温度Tdが目標吐出温度Tdmになるよう膨張弁制御手段により膨張弁6の開度操作を行う。ステップS19ではタイマが60秒経過するのを待ってから、再びステップS2に戻りフィードバック制御を行う。
【0039】
またステップS9においては、吸入冷媒過熱度SHsが適正過熱度SHm+i(例えば3[K])を超えているか判断し、超えている場合は実配管長Htが配管長Hよりも短いとみなし、ステップS10にて短いと判断された回数をカウントするカウンタMをプラス1するのと同時に、長いと判断された回数をカウントするカウンタNを0にセットする。
【0040】
ステップS11ではカウンタMがα以上かを判断し、カウンタMがα以上であればα回(例えば10回)連続で吸入冷媒過熱度SHsが適正過熱度SHm+iを超えているため、本当に実配管長Htが配管長Hよりも短いと判断し、ステップS12にて配管長Hをjm(例えば5[m])短く修正する。
【0041】
ここで吐出温度Tdは圧縮機3の熱容量の影響で、蒸発温度Teや凝縮温度Tcが安定していてもすぐには安定しないため、α回連続でという条件を入れることで、冷凍サイクルが不安定な時の誤判定を防止することができる。
【0042】
ステップS13、S14では修正された配管長Hを用いて吐出冷媒圧力Pdおよび目標吐出温度Tdmを再計算し修正する。ステップS15ではカウンタMをリセットした後、ステップS16、S17、S18へと進み、吐出温度Tdが修正された目標吐出温度Tdmになるよう膨張弁6の開度操作を行う。
【0043】
またステップS9にて吸入冷媒過熱度SHsが適正過熱度SHm+iを超えていない場合は、ステップS20にて吸入冷媒過熱度SHsが適正過熱度SHm−iを下回っているか判断し、下回っている場合は実配管長Htが配管長Hよりも長いとみなし、同様にα回連続したらステップS23、S24、S25、S26にて配管長Hと吐出冷媒圧力Psおよび目標吐出温度Tdmを修正し、カウンタNを0にセットする。
【0044】
一方ステップS20にて吸入冷媒過熱度SHsが適正過熱度SHm−i以上であれば実配管長Htは配管長Hにほぼ近いとみなし、配管長Hは修正せずに制御を行う。
【0045】
上記のように配管長Hの修正を繰り返すことにより配管長Hは実配管長Htへと次第に近づいていく。その結果、図5に示す目標吐出温度が修正され、圧縮機3の吸入点はD点へと近づいていき、施工条件が変化しても実際の吸入冷媒過熱度を適正過熱度SHm近傍へと修正することができる。
【0046】
またマルチタイプの空気調和機の場合、全体冷媒循環量の制御と同時に各室内機への個別冷媒循環量も制御する必要がある。そこでマルチタイプの空気調和機の場合、まず各運転機の凝縮温度Tcn(n=a号機またはb号機)と室内熱交換器7の液側配管に設けられた室内液温度センサ13により検出された各液温度Tlnから式(8)を用いて各運転機の室内冷媒過冷却度SCinを算出する。
SCin=Tcn−Tln・・・式(8)
そしてステップS17にて各運転機の電動膨張弁6の操作開度△K(全運転機同じ)を算出した後、前記操作開度△Kを付加した全運転機の電動膨張弁6の合計開度(Σ(現在開度+△K))を算出し、前記合計開度を保ちながら各上記室内冷媒過冷却度SCinが同じ値になるよう各電動膨張弁6の開度を新開度に補正し(a号機の新開度+b号機の新開度=合計開度)、ステップS18にて各電動膨張弁6の開度を新開度に操作することで、全体冷媒循環量の制御と各室内機への個別冷媒循環量の制御を同時に行うことができる。この点については種々の制御が提案されて公知であるのでフローチャートからは省略する。
【0047】
また実際に据付られる配管長には、圧縮機3のオイルと冷媒の比率やオイルの戻り具合といった圧縮機の信頼性等を加味し最小配管長Hminおよび最大配管長Hmaxが規定される。一方上述したように配管長修正手段により実配管長Htが推測できる。そこで異常検出手段(マイクロコンピュータ)は、配管長修正手段により修正された配管長Hが、前記最小配管長Hminから最大配管長Hmaxまでの適正配管長内であるか判断し、前記適正配管長内から外れた場合に室内機2に設けられているLEDランプ20(図示せず)を用いて据付配管長が適切ではない旨を表示する。
【0048】
これにより据付配管長が適切ではない旨を施工者や使用者に知らせることができ、配管施工の修正を促すことができる。ここで前記LEDランプ20の他にブザーによる音やリモコン等に表示しても、据付配管長が適切ではない旨を知らせることができる。
【0049】
このように、実際に据付られている配管長が適正配管長から逸脱され、システムの運転に不具合が生じやすい場合に、配管施工の修正を促すことでシステムの重大な損傷等を間逃れることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0051】
請求項1に記載の本発明は、容量可変形圧縮機と室外熱交換器と前記室外熱交換器の温度を検出する第1の温度検出手段と弁開度の制御可能な電動膨張弁とを有する室外機と、室内熱交換器と前記室内熱交換器の温度を検出する第2の温度検出手段とを有する室内機と、前記室外機と前記室内機を接続する接続配管を有する空気調和機において、前記接続配管の配管長を予め記憶する記憶手段と、暖房運転時に前記第2の温度検出手段により検出された凝縮温度と前記記憶手段に記憶されている配管長と前記圧縮機の回転数とに基づいて、前記圧縮機の吐出冷媒圧力を推定する第1の推定手段と、前記圧縮機の吐出温度を検出する第3の温度検出手段と、前記第1の温度検出手段により検出された蒸発温度と前記圧縮機の回転数に基づき前記圧縮機の吸入冷媒圧力を算出するとともに、その吸入冷媒圧力と前記第1の推定手段により推定された吐出冷媒圧力に基づいて前記圧縮機の目標吐出温度を算出する目標吐出温度算出手段と、前記電動膨張弁の開度を制御することにより、前記目標吐出温度を目指して、前記第3の温度検出手段により検出される吐出温度を変更させる膨張弁制御手段とを備えたものである。
【0052】
配管長と圧縮機の回転数とに基づいて圧損を高精度に推定し、凝縮器圧力に前記圧損を付加することで、様々な運転条件下で圧縮機の吐出冷媒圧力を常に高精度に推定することができるとともに、吸入冷媒圧力と高精度に推定された圧縮機の吐出冷媒圧力と前記吸入冷媒圧力での飽和温度と適正過熱度に基づいて圧縮機の目標吐出温度を算出し、更に吐出温度が前記目標吐出温度になるよう電動膨張弁の開度を制御することで、様々な運転条件下で実際の吸入冷媒過熱度を常に適正過熱度に制御することができる。
【0053】
これにより省エネ運転が可能となるとともに、能力不足や液バックといった圧縮機の信頼性低下問題を回避することができる。
【0054】
また、請求項2記載の本発明は、容量可変形圧縮機と室外熱交換器と前記室外熱交換器の温度を検出する第1の温度検出手段と弁開度を制御可能な複数の電動膨張弁とを有する室外機と、室内熱交換器と前記室内熱交換器の温度を検出する第2の温度検出手段とを有する複数の室内機とを接続配管により並列に接続したマルチタイプの空気調和機において、前記各室内機への各接続配管の配管長を予め記憶する記憶手段と、暖房運転時に前記各室内機の前記第2の温度検出手段により検出された各凝縮温度と前記記憶手段に記憶されている各接続配管の配管長と前記圧縮機の回転数とに基づいて、前記圧縮機の吐出冷媒圧力を推定する第1の推定手段と、前記圧縮機の吐出温度を検出する第3の温度検出手段と、前記第1の温度検出手段により検出された蒸発温度と前記圧縮機の回転数に基づき前記圧縮機の吸入冷媒圧力を算出するとともに、前記吸入冷媒圧力と前記第1の推定手段により推定された吐出冷媒圧力に基づいて前記圧縮機の目標吐出温度を算出する目標吐出温度算出手段と、前記電動膨張弁の開度を制御することにより、前記目標吐出温度を目指して、前記第3の温度検出手段により検出される吐出温度を変更させる膨張弁制御手段とを備えたものである。
【0055】
1室当たりの平均配管長と圧縮機の平均回転数に基づいて平均圧損を高精度に推定し、平均凝縮器圧力に平均圧損を付加することで、マルチタイプの空気調和機においても様々な運転条件下で圧縮機の吐出冷媒圧力を常に高精度に推定することができるとともに、吸入冷媒圧力と高精度に推定された圧縮機の吐出冷媒圧力と前記吸入冷媒圧力での飽和温度と適正過熱度に基づいて圧縮機の目標吐出温度を算出し、更に吐出温度が前記目標吐出温度になるよう電動膨張弁の開度を制御することで、様々な運転条件下で実際の吸入冷媒過熱度を常に適正過熱度に制御することができる。
【0056】
さらに、請求項3に記載の本発明によれば、圧縮機の吸入温度を検出する第4の温度検出手段と、目標吐出温度算出手段により算出された吸入冷媒圧力から飽和温度を求めるとともに、その飽和温度と前記第4の温度検出手段により検出された吸入温度とに基づき圧縮機の吸入冷媒過熱度を推定する第2の推定手段と、第3の温度検出手段により検出された吐出温度が前記目標吐出温度算出手段により算出された目標吐出温度に対し所定の範囲内にあり、かつ前記第2の推定手段により推定された前記吸入冷媒過熱度が所定の範囲から外れた場合に、予め記憶手段に記憶されている配管長を修正する配管長修正手段を備えたものである。
【0057】
吐出温度制御時に吸入冷媒過熱度を用いて予め記憶されている配管長を修正するため、実際に据え付けられている配管長が様々に変化しても実際の配管長を推定することができる。
【0058】
これにより様々な運転条件下や施工条件下でも実際の吸入冷媒過熱度を常に適正過熱度近傍に制御することができる。この結果省エネ運転が可能となるとともに、能力不足や液バックといった圧縮機の信頼性低下問題を回避することができる。
【0059】
また自動的に配管長を推定することで、施工者が電気回路上に設けたスイッチ等により手動で配管長を設定する必要がなくなり、スイッチ等が不要となることで製品のコストを下げることができる。更に吐出冷媒圧力を直接検知する圧力センサの変わりにコストの安い温度センサで済むため、製品のコストを下げることができる。
【0060】
さらに、請求項4に記載の本発明によれば、配管長修正手段により修正された配管長が所定の配管長から外れた場合、据付配管長が適切ではない旨を使用者に知らせる異常検出手段を備えたものである。
【0061】
配管施工の不備によるシステムの重大な損傷等を間逃れることができるとともに、さらに据付配管長は適正配管長内ではあるが、据付時に配管を変形してしまい冷媒流通抵抗が増大した場合でも異常を検知でき、配管施工の修正を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における空気調和機の構成図
【図2】本発明の他の実施形態における空気調和機の構成図
【図3】同空気調和機の制御を示すフローチャート
【図4】冷媒循環量と配管長の変化による吸入部の圧損特性変化を示す概念図
【図5】空気調和機の冷凍サイクル挙動を示すモリエル線図
【符号の説明】
1 室外機
2 室内機
3 圧縮機
5 室外熱交換器
6 電動膨張弁
7 室内熱交換器
8 接続配管
9 吐出温度センサ
10 室外熱交換器温度センサ
11 室内熱交換器温度センサ
12 吸入温度センサ
13 室内液温度センサ
H,Ha、Hb 配管長
Tc、Tca、Tcb 凝縮温度
Claims (4)
- 容量可変形圧縮機と室外熱交換器と前記室外熱交換器の温度を検出する第1の温度検出手段と弁開度の制御可能な電動膨張弁とを有する室外機と、室内熱交換器と前記室内熱交換器の温度を検出する第2の温度検出手段とを有する室内機と、前記室外機と前記室内機を接続する接続配管を有する空気調和機において、前記接続配管の配管長を予め記憶する記憶手段と、暖房運転時に前記第2の温度検出手段により検出された凝縮温度と前記記憶手段に記憶されている配管長と前記圧縮機の回転数とに基づいて、前記圧縮機の吐出冷媒圧力を推定する第1の推定手段と、前記圧縮機の吐出温度を検出する第3の温度検出手段と、前記第1の温度検出手段により検出された蒸発温度と前記圧縮機の回転数に基づき前記圧縮機の吸入冷媒圧力を算出するとともに、その吸入冷媒圧力と前記第1の推定手段により推定された吐出冷媒圧力に基づいて前記圧縮機の目標吐出温度を算出する目標吐出温度算出手段と、前記電動膨張弁の開度を制御することにより、前記目標吐出温度を目指して、前記第3の温度検出手段により検出される吐出温度を変更させる膨張弁制御手段とを備えた空気調和機。
- 容量可変形圧縮機と室外熱交換器と前記室外熱交換器の温度を検出する第1の温度検出手段と弁開度を制御可能な複数の電動膨張弁とを有する室外機と、室内熱交換器と前記室内熱交換器の温度を検出する第2の温度検出手段とを有する複数の室内機とを接続配管により並列に接続したマルチタイプの空気調和機において、前記各室内機への各接続配管の配管長を予め記憶する記憶手段と、暖房運転時に前記各室内機の前記第2の温度検出手段により検出された各凝縮温度と前記記憶手段に記憶されている各接続配管の配管長と前記圧縮機の回転数とに基づいて、前記圧縮機の吐出冷媒圧力を推定する第1の推定手段と、前記圧縮機の吐出温度を検出する第3の温度検出手段と、前記第1の温度検出手段により検出された蒸発温度と前記圧縮機の回転数に基づき前記圧縮機の吸入冷媒圧力を算出するとともに、前記吸入冷媒圧力と前記第1の推定手段により推定された吐出冷媒圧力に基づいて前記圧縮機の目標吐出温度を算出する目標吐出温度算出手段と、前記電動膨張弁の開度を制御することにより、前記目標吐出温度を目指して、前記第3の温度検出手段により検出される吐出温度を変更させる膨張弁制御手段とを備えた空気調和機。
- 圧縮機の吸入温度を検出する第4の温度検出手段と、目標吐出温度算出手段により算出された吸入冷媒圧力から飽和温度を求めるとともに、その飽和温度と前記第4の温度検出手段により検出された吸入温度とに基づき圧縮機の吸入冷媒過熱度を推定する第2の推定手段と、第3の温度検出手段により検出された吐出温度が前記目標吐出温度算出手段により算出された目標吐出温度に対し所定の範囲内にあり、かつ前記第2の推定手段により推定された前記吸入冷媒過熱度が所定の範囲から外れた場合に、予め記憶手段に記憶されている配管長を修正する配管長修正手段を備えた請求項1または2記載の空気調和機。
- 配管長修正手段により修正された配管長が所定の配管長から外れた場合、据付配管長が適切ではない旨を使用者に知らせる異常検出手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の空気調和機。
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