JP3847866B2 - スパッタリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスパッタリング技術にかかり、特に、スパッタリング粒子の飛行方向を制御できるスパッタリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体の技術分野では、DRAMの記憶容量が64Mから256Mビットに増加する等、半導体内に形成される電気素子は増々高密度化しており、それに伴って、半導体基板表面上の薄膜に設けられた微細なホールも高アスペクト比化している。
【0003】
半導体基板表面に薄膜を形成するためには、従来より、図11の符号100で示したスパッタリング装置が用いられており、チタン薄膜やアルミ合金薄膜等の薄膜によって、微細なホール内を導電性材料で埋め込むことが行われている。
【0004】
このスパッタリング装置100は、真空排気可能に構成された真空槽117を有しており、その真空槽117内の底壁側にはバッキングプレート116が配置され、バッキングプレート116上には、薄膜材料から成るターゲット106が固定されている。
【0005】
真空槽117の天井付近には、成膜対象である基板105を、ターゲット106と平行に対向配置できるように構成されており、他方、真空槽117外には、直流電源121と高周波電源122が配置され、バッキングプレート116は、ローパスフィルター125とマッチングボックス125とを介して直流電源121と高周波電源122とにそれぞれ接続されており、接地電位に置かれた真空槽117とバッキングプレート116上のターゲット106との間に電圧を印加できるように構成されている。
【0006】
バッキングプレート116の裏面には、ヨーク109に固定されたマグネトロン磁石107が配置されている。マグネトロン磁石107は、図12(b)に示すような、10×20×20mmの大きさの単位磁石108を複数配置して構成されており、バッキングプレート116上でリング状に設けられた第1の磁石部1071では、単位磁石108が42個用いられており、その第1の磁石部1071の内側に、リング状に設けられた第2の磁石部1072では、単位磁石108は24個用いられている(図12(a))。
【0007】
第1の磁石部1071を構成する単位磁石108は、同一極性の磁極(N極)がバッキングプレート109に向けられており、第2の磁石部1072を構成する単位磁石108は、第1の磁石部1071とは異なる極性の磁極(S極)がバッキングプレート109に向けられており、第1の磁極部1071のN極から出た磁力線はターゲット106表面に磁力線112のトンネルを形成した後、第2の磁極部1072のS極に入るように構成されている。
【0008】
このようなスパッタリング装置100の真空槽117内に基板105を搬入し、内部を真空雰囲気した後、ガス導入バルブ110を開けてスパッタリングガスを導入し、直流電源121と高周波電源122とを起動すると、ターゲット106表面のトンネル状の磁力線112に電子e-が絡まり、ターゲット106表面に高密度のスパッタリングガスプラズマが閉じ込められ、ターゲット106のスパッタリングが行われる。
【0009】
前述したマグネトロン磁石107では、トンネル状の磁力線112の強度を強めるため、第1の磁石部1071の磁気強度と第2の磁石部1072の磁気強度の比は近接していることが望ましいとされており、上述の第1の磁石部1071と第2の磁石部1072とでは、その磁気強度の比は、単位磁石108の個数比の42:24(1.75:1)と、1:1に近接した値にされている。
【0010】
しかしながら従来技術のスパッタリング装置100では、ターゲット106表面から飛び出したスパッタリング粒子の飛行方向は、矢印で示すように広範囲に散らばっており、基板105表面には、種々の方向から飛来したスパッタリング粒子が入射してしまう。
【0011】
ところが、基板105全面に高アスペクト比のホールが形成されている場合には、基板中央付近に位置するホール131では、図13に示すように、様々な方向からのスパッタリング粒子が均等に入射するが、基板の周辺に位置するホール132では、ターゲット106の存在しない方向からはスパッタリング粒子は入射せず、入射方向が偏ってしまう。
【0012】
そのため、中央位置のホール131底面に形成される薄膜の膜厚は均一であっても、周辺位置のホール132の底面に形成される薄膜135の膜厚は、外周方向が厚く、内周方向が薄くなってしまい、接続不良を招くため、問題視されるに到っている。
【0013】
他方、いずれの位置のホール131、132についても、入射角が大きく、垂直方向から入射するスパッタリング粒子ばかりでなく、入射角が小さいスパッタリング粒子も飛来してくるため、各ホール131、132の開口部分に入射角が小さいスパッタリング粒子が付着し、オーバーハングが形成され易く、ホール131、132内を薄膜によって充填できない場合も生じるという問題があった。
【0014】
今後、基板は増々大口径化し、ホールは増々高アスペクト比化すると考えられるので、ホール底面の膜厚の偏りや、開口部のオーバーハングは深刻な問題となっている。
【0015】
このような、入射角が小さいスパッタリング粒子については、従来技術でもコリメーターと呼ばれるメッシュフィルターを用いたり、基板にバイアスを印加し、なるべく垂直なスパッタリング粒子だけが基板に入射するような対策が試みられている。
【0016】
コリメーター法は、ターゲットと基板の間にコリメーターを配置し、ターゲットから斜め方向に飛び出したスパッタリング粒子をコリメーター内メッシュに付着させ、ターゲットから垂直方向に飛び出したスパッタリング粒子だけをメッシュ内を通過させて基板に入射させるようにする技術であるが、コリメーターに付着したスパッタリング粒子が剥離するとダストになり、不良品が増加するという欠点がある。
【0017】
他方、基板バイアス法は、基板に直流又は交流バイアスを印加し、イオン化したスパッタリング粒子を電界で基板方向に加速させて、基板に入射する角度を大きくさせるものであるが、基板が受けるダメージが大きいため、実際の製品に適用することは疑問視されている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたもので、その目的は、オーバーハングが生じず、高アスペクト比のホール底面に偏りのない薄膜を形成できる技術を提供することにある。
また、基板面内の膜厚分布を制御できる技術を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、真空槽と、該真空槽内に配置されたターゲットと、該ターゲットの裏面に配置されたマグネトロン磁石とを有し、前記ターゲットに対して基板を対向配置して前記ターゲットをスパッタリングすると前記基板表面に薄膜を形成できるように構成されたスパッタリング装置であって、前記マグネトロン磁石は、リング状にされた第1の磁石部と、前記第1の磁石部の中央付近に配置された第2の磁石部とを有し、前記第1の磁石部と前記第2の磁石部とは、互いに異なる極性の磁極が前記ターゲットに向けられ、前記基板の裏面には、リング状にされ、前記第1の磁石部の前記ターゲットに向けられた磁極とは異なる極性の磁極が前記基板側に向けられた第3の磁石部が配置され、前記第3の磁石部の内側には磁石は配置されず、前記ターゲットと前記基板とを貫通し、前記ターゲットと前記基板とを結ぶ磁力線の密度は、基板の中央よりも周辺が密にされたスパッタリング装置である。
【0020】
請求項2記載の発明は、前記第1の磁石部の磁力の方が、前記第2の磁石部の磁力よりも2倍以上強くなるようにされた請求項1記載のスパッタリング装置である。
請求項3記載の発明は、前記ターゲットから飛び出したスパッタリング粒子が前記基板に到達する経路の周囲にコイルが巻き回わされ、該コイルに直流電流を流せるように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載のスパッタリング装置である。
請求項4記載の発明は、前記ターゲットから飛び出したスパッタリング粒子をイオン化するイオン化手段が設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のスパッタリング装置である。
請求項5記載の発明は、前記ターゲットと前記基板との距離は100mm以上にされたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のスパッタリング装置である。
【0021】
第1の磁石部が形成する磁力線が基板まで到達すると、ターゲット表面近傍で生成された電子がその磁力線に巻き付きながら基板方向に移動し、電子流を形成するので、スパッタリング粒子のうち、正電荷を有するものが、電子流に引きつけられて基板方向に加速されるので、基板への入射角度が大きくなる。従って、基板に設けられた微細なホールの開口部にはオーバーハングが形成されにくくなり、ホール底面に形成される薄膜の膜厚は均一になる。
【0022】
本発明のスパッタリング装置では、第1の磁石部と第3の磁石部とが磁力線で結ばれ、基板の周辺の磁力線密度が高くなり、電子流の流れも強くなるので、基板周辺部には、より垂直に近い角度でスパッタリング粒子が入射するようになる。
【0023】
なお、第1の磁石部と第2の磁石部との磁力の強度比は、2倍以上であれば効果があるが、3倍以上にすることが望ましい。
【0024】
またターゲットから飛び出したスパッタリング粒子が基板に到達する経路の周囲にコイルを巻き回し、そのコイルに直流電流を流せるように構成しておくと、第1の磁石部が形成する方向の磁力線強度をコイルに通電することで強めることができるので、ターゲットと基板とを貫通する磁力線密度が高くなり、より多くのスパッタリング粒子の基板への入射角度を大きくすることができる。この場合、磁力線強度はコイルへの通電量を制御することで、変えることができるので、ターゲット材料の種類や微細ホールのアスペクト比の大きさに従い、基板へ入射するスパッタリング粒子の入射角度を変え、最適な条件で薄膜を形成することが可能となる。
【0025】
本発明では、入射角を大きくできるスパッタリング粒子は電荷を有するものに限るのでターゲットから飛び出したスパッタリング粒子をイオン化するイオン化手段を設けておくと、一層効果的である。
【0026】
なお、スパッタリング粒子の基板への入射角を大きくするためには、基板とターゲットが近接していない方が効果的である。具体的にはターゲットと基板との距離を100mm以上にしておくことが望ましい。但し、余り遠すぎると、薄膜形成速度が低下するので、実用上は、300mm程度の距離が限界と考えられる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1の符号1は、本発明の動作原理を説明するためのスパッタリング装置であり、図示しない真空ポンプによって真空排気可能に構成された真空槽17を有している。
【0028】
真空槽17はグラウンド電位に置かれており、その内部の底壁上には、真空槽17とは電気的に絶縁した状態でバッキングプレート16が配置されている。バッキングプレート16の表面には、金属チタン(Ti)から成るターゲット6が固定されており、裏面にはヨーク9に固定されたマグネトロン磁石7が配置されている。
【0029】
真空槽17の天井側には、ターゲット6に対向して平行に基板5(シリコンウェハー)が保持されており、真空槽17内を真空状態にした後、ガス導入バルブ10を開けてスパッタリングガスを導入し、真空槽17外に配置された直流電源21と高周波電源22とを起動すると、ローパスフィルター24とマッチングボックス25とを介して、バッキングプレート16に直流バイアス電圧(負電圧)に高周波電圧が重畳された電圧が印加され、ターゲット6表面にスパッタリングガスプラズマが発生し、ターゲット6表面がスパッタリングされる。
【0030】
このマグネトロン磁石7は、10×20×20mmの大きさの単位磁石8(図12(b)に示した符号108の単位磁石と同じもの)が42個リング状に配置されて構成された第1の磁石部71と、その第1の磁石部71の内側中央付近に、単位磁石8が7個配置されて構成された第2の磁石部72とを有しており(図2)、第1の磁石部71内の単位磁石8と第2の磁石部72内の単位磁石8とでは異なる極性の磁極がバッキングプレート9側に向けられている。
【0031】
外周に位置する第1の磁石部1071とその内側に位置する第2の磁石部1072との磁力強度の比は、単位磁石8の個数比の42:7(6:1)になっており、第1の磁石部71の方の磁力強度が大きくされている。
【0032】
ここでは、第1の磁石部71ではN極が、第2の磁石部72ではS極がバッキングプレート16側に向けられており、第1の磁石部71のN極から出た磁力線のうち、一部の磁力線12は、ターゲット6表面でトンネルを作り、第2の磁石部72のS極に入るが、残る殆どの磁力線11は第2の磁石部72のS極に入ることができず、広がって基板5側まで到達して基板5を貫通し、大きなループを描いて第1の磁石部71自身のS極に入る。
【0033】
従って、ターゲット6表面で発生した電子e-のうち、トンネルを形成する磁力線12に巻き付いたものは、ターゲット6表面近傍に高密度プラズマを発生させるが、基板5方向に向かう磁力線11に巻き付いたものは、負電位に直流バイアスされているターゲット6と反発し、静電反力によって基板5側へ押しやられ、ターゲット6から基板5へ流れる電子流となる。
【0034】
このような状況の下、ターゲット6表面から飛び出したスパッタリング粒子のうち、正電荷を有するスパッタリング粒子(Ti+)は、基板5へ向かう電子流に引き寄せられ、基板5方向に加速される。中性のスパッタリング粒子(Ti)のうちには、バッキングプレート16を介してターゲット6に印加された高周波電圧によって、スパッタリングガスイオン(Ar+等の正電荷の不活性ガスイオン)から正電荷を受け取るものがあり、正電荷を受け取ると基板5方向に加速される。
【0035】
第1の磁石部71から基板5方向に伸びた磁力線11は、基板5を略垂直に貫通しており、正電荷のスパッタリング粒子は、そのような磁力線11に沿った方向に加速されるので、基板5へ入射するスパッタリング粒子(Ti+やTi)の入射角度は大きくなるので、基板5に設けられた微細なホールにオーバーハングが生じにくくなり、また、ホール底面に形成される膜厚の膜厚には偏りが少なくなる。
【0036】
次に、本発明の第1例のスパッタリング装置を説明する。
図3の符号2は、そのスパッタリング装置であり、上述のスパッタリング装置1に対し、基板5の裏面位置に、ヨーク36上に固定した第3の磁石部37を取り付けたものである。このスパッタリング装置2については、スパッタリング装置1と同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0037】
その第3の磁石部37は、20個の単位磁石8が用いられており、各単位磁石8は、第1の磁石部71とは引き合う極性の磁極(S極)を基板側に向け、反発する極性の磁極(N極)をヨーク38側に向けて配置されている。本例では、第3の磁石部37の中心部には単位磁石8は配置されておらず、ヨーク36中央のN極化した部分から出た磁力線13が、基板5の表面に漏洩した後、第3の磁石部37のS極に入るように構成されている。
【0038】
このような第3の磁石部37が基板5の裏面に配置されている場合には、ターゲット6の裏面に配置された第1の磁石部71から出て基板5方向に向かった磁力線11は、基板5を貫通し、第3の磁石部37のS極に入るようになる。従って、ターゲット6と基板5とを結ぶ磁力線11の密度は、基板5の中央付近は疎となり、周辺付近は密となる。
【0039】
このスパッタリング装置2と、図1に示したスパッタリング装置1とで、チタン薄膜を形成し、薄膜形成速度の基板面内分布を測定した。基板・ターゲット間距離は170mmにした。
【0040】
その結果を、従来技術のスパッタリング装置100の場合と併せて図7のグラフに示す。このグラフの横軸は基板の中心位置をゼロとした基板面内での位置を示しており、縦軸は投入電力1kW当たりのチタン薄膜の形成速度(Å/sec・kW)を示している。
【0041】
△のプロットを結んだグラフは従来技術のスパッタリング装置100、●のプロットを結んだグラフはスパッタリング装置1、○のプロットを結んだグラフは、スパッタリング装置2の結果である。
【0042】
従来技術のスパッタリング装置100では、様々な方向から基板表面にスパッタリング粒子が入射するため、基板面内の形成速度分布は中央が速く、周辺が遅い山型になる。このような速度分布では、微細なホール開口部にオーバーハングを生じ易く、また、周辺部のホールでは底面のチタン薄膜に偏りが生じ易い。
【0043】
スパッタリング装置1の場合は、基板面内の速度分布はM字型となり、スパッタリング装置2ではW字型となる。いずれの場合でも、スパッタリング粒子の基板表面への入射角度は大きくなっており、オーバーハングは生じにくく、底面の膜厚の偏りも生じにくくなっている。
【0044】
次に、ターゲット6裏面に配置されたマグネトロン磁石7の第1の磁石部71と第2の磁石部72との磁力の強度比を従来のスパッタリング装置100と同程度(1.75:1程度)にし、前述のスパッタリング装置2に用いた第3の磁石部37(直径150mm)を基板裏面に配置してスパッタリング装置を構成し(図示せず)、基板面内のチタン薄膜の膜厚分布を測定した。
【0045】
このときの薄膜形成条件は、チタンターゲットは直径400mm(厚さ12mm)、ターゲット・基板間距離は165mm、ターゲット裏面に配置された磁石からターゲット表面までの距離は38mm、第1、第2の磁石部71、72の回転速度は40rpm、スパッタリングガス(アルゴンガス)流量は14sccm、スパッタリングの際の圧力は1.1×10-1Pa、投入電力は8kWであった。
【0046】
その結果を図8の○のプロットを結んだグラフで示す。従来技術のスパッタリング装置100についても、上述の条件でチタン薄膜を形成し、面内膜厚分布を測定した。従来技術の結果は、●のプロットを結んだグラフで示す。
【0047】
基板裏面に第3の磁石部37を配置した場合には膜厚分布はM型になり、スパッタリング粒子の入射方向が制御できているが、従来のスパッタリング装置100では、膜厚分布は山型になっており、入射角の小さいスパッタリング粒子があることが分かる。
【0048】
なお、第3の磁石部37を基板裏面に配置した場合には、析出速度は104.3nm/minであったのに対し、従来技術のスパッタリング装置100では、析出速度は88.4nm/minであり、第3の磁石部37を用いた場合の方が優れている。
【0049】
同様に、第3の磁石部37を基板裏面に配置したスパッタリング装置と、従来技術のスパッタリング装置100とを用い、チタン薄膜の形成条件を変えてスパッタリングを行った。前述の形成条件のうち、ターゲット・基板間距離を170mm、スパッタリングガス(アルゴンガス)流量を40〜50sccm、スパッタリング圧力を約3.0×10-1Paに変えた。チタン薄膜の形成時間は180秒にした。第3の磁石部37の配置は、図4に示す。単位マグネット8が円形のヨーク36の縁付近に37個配置されて構成されている。
【0050】
膜厚分布を測定した結果を図9のグラフに示す。第3の磁石部37を用いた場合(○のプロット)の析出速度は160.5nm/min、膜厚分布は17.3%であり、従来技術のスパッタリング装置100の場合(●のプロット)は、析出速度は162.2nm/min、膜厚分布は35.9%であった。第3の磁石部37を用いる場合には、基板・ターゲット間距離を大きくすると、膜厚分布をより一層改善できることが分かる。
【0051】
図5は、コイルを使用したスパッタリング装置3である。
このスパッタリング装置3は、図3に示したスパッタリング装置2の真空槽17内にコイル40を設けたものである。そのコイル40は、真空槽17内で、スパッタリング粒子がターゲット6から基板5へ到達する経路の周囲に巻回された導線で構成されており、その両端が真空槽17外に配置された直流電源41に接続され、所望の通電量で直流電流を流せるように構成されている。
【0052】
このスパッタリング装置3は、ターゲット6の裏面に配置されたマグネトロン磁石7の第1の磁石部71と、第2の磁石部72との磁力強度比は6:1にしてある。また、第1の磁石部71のN極と第2の磁石部72のS極がターゲット6側に向けられ、第3の磁石部37のS極が基板5側に向けられており、第1の磁石部71から出た磁力線は、ターゲット6と基板5を貫通して第3の磁石部37のS極に入るように構成されている。
【0053】
このような構成のスパッタリング装置3において、コイル40に直流電流を流し、第1の磁石部71から出て第3の磁石部37に入る磁力線の向きと同じ向きの磁力線を発生させた場合、ターゲット6と基板5とを結ぶ磁力線の密度を高めることができる。
【0054】
このスパッタリング装置3を用い、ターゲット・基板間距離を170mm、ターゲット6裏面のマグネトロン磁石7からターゲット6表面までの距離を20mm、投入電力を6kW、スパッタリングガス(アルゴンガス)圧力を0.4Paに設定し、コイル40への通電量を制御して磁場強度を種々の値に異ならせてチタン薄膜を形成した。
【0055】
異なる磁場強度でチタン薄膜を形成した場合の形成速度と基板面内位置との関係を図10のグラフに示す。●のプロットを結んだグラフはコイル40に電流を流さなかった場合(0Gauss)、□のプロットを結んだグラフは44Gaussの磁力線を発生させた場合、△のプロットを結んだグラフは110Gaussの磁力線を発生させた場合である。磁場強度を制御することで基板面内のチタン薄膜の形成速度分布を制御できることが分かる。
【0056】
なお、コイル40は、ターゲット6裏面に配置されたマグネトロン磁石7の第1の磁石部71と、基板5裏面に配置された第3の磁石部37との間で形成される磁力線と同じ方向の磁力線を発生させればよく、必ずしも真空槽17内に配置されている必要はなく、真空槽17に巻回されているものも含む。
【0057】
また、図6の符号4に示した本発明の第2例のスパッタリング装置のように、コイル40と第3の磁石部37とを併用し、膜厚制御性を更に高めることができる。
【0058】
以上説明したように、本発明のスパッタリング装置1〜4では、スパッタリング粒子のうち、正電荷を有するものの基板への入射角を大きくするので、スパッタリング粒子のイオン化率が高い程効果的である。上述のスパッタリング装置1〜4では、高周波電源22を用い、ターゲット6に高周波電圧を印加することでスパッタリング粒子のイオン化を促進していたが、他のイオン化促進手段を用いてもよい。例えば、ターゲット6表面に平行に形成される磁力線の強度を400Gauss以上の強磁界にしても効果的である。また、高周波コイルを配置する等、種々のイオン化促進手段を用いることができる。
【0059】
上述の例は、チタン薄膜を形成する場合であったが、本発明は、銅薄膜やタングステン薄膜等の金属薄膜の他、窒化チタン薄膜等の種々の薄膜に広く適用することができる。
【0060】
【発明の効果】
基板状の微細孔の開口部にオーバーハングが生じず、また、高アスペクト比のホール底面に偏りのない薄膜を形成できる。
基板面内の膜厚分布や成膜速度分布を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の動作原理を説明するためのスパッタリング装置
【図2】そのスパッタリング装置のターゲット裏面に配置する磁石の例を説明するための図
【図3】本発明の第1例のスパッタリング装置を説明するための図
【図4】そのスパッタリング装置の基板裏面に配置する磁石の例を説明するための図
【図5】コイルを使用したスパッタリング装置を説明するための図
【図6】本発明の第2例のスパッタリング装置を説明するための図
【図7】図1のスパッタリング装置、又は本発明の第1例スパッタリング装置を用いた場合のチタン薄膜の形成速度の面内分布を示すグラフ
【図8】基板裏面に磁石を配置した場合のチタン薄膜の膜厚分布の一例を示すグラフ
【図9】基板裏面に磁石を配置した場合のチタン薄膜の膜厚分布の他の例を示すグラフ
【図10】異なる磁場強度でチタン薄膜を形成した場合の形成速度と基板面内位置との関係を説明するためのグラフ
【図11】従来技術のスパッタリング装置を説明するための図
【図12】(a):従来技術のスパッタリング装置のターゲット裏面に配置されていた磁石を説明するための図 (b):その磁石の単位磁石を説明するための図
【図13】従来技術のスパッタリング装置のホール内の薄膜の偏りを説明するための図
【符号の説明】
1、4……スパッタリング装置 5……基板 6……ターゲット 7……マグネトロン磁石 71……第1の磁石部 72……第2の磁石部 17……真空槽 37……第3の磁石部 40……コイル

Claims (5)

  1. 真空槽と、該真空槽内に配置されたターゲットと、該ターゲットの裏面に配置されたマグネトロン磁石とを有し、
    前記ターゲットに対して基板を対向配置して前記ターゲットをスパッタリングすると前記基板表面に薄膜を形成できるように構成されたスパッタリング装置であって、
    前記マグネトロン磁石は、リング状にされた第1の磁石部と、前記第1の磁石部の中央付近に配置された第2の磁石部とを有し、
    前記第1の磁石部と前記第2の磁石部とは、互いに異なる極性の磁極が前記ターゲットに向けられ、
    前記基板の裏面には、リング状にされ、前記第1の磁石部の前記ターゲットに向けられた磁極とは異なる極性の磁極が前記基板側に向けられた第3の磁石部が配置され、
    前記第3の磁石部の内側には磁石は配置されず、
    前記ターゲットと前記基板とを貫通し、前記ターゲットと前記基板とを結ぶ磁力線の密度は、基板の中央よりも周辺が密にされたスパッタリング装置。
  2. 前記第1の磁石部の磁力の方が、前記第2の磁石部の磁力よりも2倍以上強くなるようにされた請求項1記載のスパッタリング装置。
  3. 前記ターゲットから飛び出したスパッタリング粒子が前記基板に到達する経路の周囲にコイルが巻き回わされ、該コイルに直流電流を流せるように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載のスパッタリング装置。
  4. 前記ターゲットから飛び出したスパッタリング粒子をイオン化するイオン化手段が設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のスパッタリング装置。
  5. 前記ターゲットと前記基板との距離は100mm以上にされたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のスパッタリング装置。
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