JP3847762B2 - 電子線描画装置 - Google Patents

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Description

本発明は、測長技術、計測技術、評価技術、及び精密加工技術、微細加工技術、半導体加工技術、原盤加工技術に関係し、特に、ナノメートル・オーダの精度を必要とする測長技術に関係する。
例として、半導体装置製造のフォトリソグラフィー工程で用いられるステッパや、精密機械加工装置等におけるXYステージ等の制御のために、高精度測長手段として、レーザ測長計が多く使用されている。最も高精度な測長を得る測長システムの分解能の公称値としての値は0.3nmとなっており、ステッピング制御を主流に開発されたものである。
測長の高精度化に関しては、レーザ測長技術を使用しない一般的な測長技術においても、平均化によるノイズ処理を用いたものが、接触式の変位測定に関連して、特開平7−306034号公報に記載されている。光干渉計を用いた光測定については、位置ではなく波長の測定に関連して、特開平9−178567号公報に記載されている。
しかし、分解能0.3nmを公称値とする現在のレーザ測長計においても、測長の絶対精度は±2nm程度に留まる場合が多く見られる。分解能と絶対精度とは実質的に異なり、10nm程度の範囲では、測長計が0.3nmの精度を持っているように見えても、100〜300nmの範囲で見ると、全体的に緩やかな歪誤差のうねりがあり、その大きさが3nm以上の値にも達する場合がある。このような問題点が明らかになり始めたのは、高速のリアルタイム測長手法が開発されることによって、移動中の物体の変位を機械的振動以上の周波数で高精度に測定できるようになってからのことである。
測長精度向上のために、通常は、静止時の測長出力値の安定性(すなわち相対精度)の精度向上を狙って、前述のような時間平均によるノイズの処理が行われるが、近年の高精度化に対する要求が高くなるに従い、測長値の絶対精度が必要となってきた。本発明に至る検討の途中において、従来の平均化によるノイズ処理だけでは、十分な絶対精度が得られないという問題点が明らかになりはじめた。
本発明は、このような問題認識のもと、レーザ干渉を用いた変位測定値の絶対精度を、±2nmから±1nm以下に向上させた、高精度測長計を提供することを目的とする。
本発明では、レーザ測長の測長原理である光の干渉効果自体が誤差の原因となっていることに着目し、時間平均だけでは取り除けない、絶対精度に関する誤差を取り除く。このような誤差の原因に着目した高精度化手法は、目下の処、類例がない。より詳細には、レーザ測長計の変位出力に対して、変位量のレーザ波長周期に対応した補正値を加えることで、測定計の歪誤差を補正する。
本発明のレーザ測長計は、連続移動する物体を測定対象物として測距した時に、レーザ光の波長に一致する周期で現れる振動成分を、干渉効果による測定誤差として、これを記憶し、補正することで、高精度化を実現するものである。補正に用いる方法として、比較的単純な正弦波を加減算するだけでも、±2nm前後の絶対位置の誤差を、±1nm以内に縮小し、高精度化することができる。
すなわち、本発明によるレーザ測長計は、レーザ干渉を利用した測長機構と、測長機構の測長出力値に対し補正値を加減算する補正手段とを有し、補正手段は周期がレーザ光の波長周期に対応する周期的な補正値を用いることを特徴とする。
本発明によるレーザ測長計は、また、レーザ干渉を利用した測長機構と、測長機構の測長出力値に対し補正値を加減算する補正手段とを含み、補正手段は周期がレーザ光の波長周期に対応する周期的な補正値を記憶しておく記憶手段を有し、測長出力値に応じて記憶手段から補正値を読み出して測長出力値に加減算することを特徴とする。記憶手段としては、書換え可能なメモリを用いることができる。
本発明によるレーザ測長計は、また、レーザ光源と、レーザ光源から発生した波長λのレーザ光を参照光と測長光とに分割し参照光と被検体で反射されてきた測長光とを干渉させる干渉器と、干渉器で干渉した光を検出する光検出器と、光検出器の検出信号を測長出力値に変換して出力する測長値出力手段とを備え、被検体の変位が干渉器と被検体の間の測長光の光路長にn倍の光路長変化をもたらすレーザ測長計において、測長値出力手段の測長出力値に対して補正値を加減算する補正手段を備え、補正手段は測長出力値を変数としてλ/nの周期を有する周期関数あるいはλ/nの周期を基本周期とする複数の周期関数の和を補正値として用いることを特徴とする。λ/nの周期を基本周期とする複数の周期関数は、λ/nの周期を有する周期関数とその倍周期関数とすることができる。
前記レーザ測長計は、補正値の位相と振幅を追従調節できるようフィードバック制御する手段を備えることができる。
本発明によるレーザ測長計は、また、レーザ干渉を利用した測長機構と、測長機構の測長出力値に応じて測長出力値に対して補正値を加減算する補正手段とを有し、補正手段はレーザ光の波長周期に対応する周期を有する複数種類の周期関数を用意し、各周期関数に重み付けを行って測長出力値に対し加減算することを特徴とする。
複数種類の補正値の周期関数としては、数学的に直交した周期関数を用いることができる。数学的に直交した周期関数としては、例えば正弦関数(sin)、余弦関数(cos)及びそれらの倍周期関数からなる群を用いることができる。また、複数種類の補正値の周期関数として、三角波関数、及び直交化された三角波の倍周期関数からなる群を用いることができる。なお、複数種類の補正値の周期関数は、必ずしも数学的に直交した関数である必要はない。
複数種類の周期関数として各々直交した関数を用いる場合には、各周期関数について個別に測長出力値との積分によって測長出力値に含まれる周期的誤差における各周期関数の成分の大きさを演算する演算手段を設け、演算手段の出力によって前記重み付けを行うように構成することができる。
また、複数種類の周期関数の位相を一斉にシフトする位相シフト手段を有し、位相シフト手段によるシフト量をフィードバック制御するように構成することができる。
位相シフト手段によるシフト量のフィードバック時定数は、他の振幅のフィードバック時定数よりも短く設定するのが好ましい。被検体が一定速度以上で移動しているときのみフィードバック制御を許可する手段を設けるのが好ましい。
また、前記補正手段の後に時間平均の可能な平均化処理手段を設けることができる。平均化処理手段による平均化処理を、バイパスして出力できるよう構成することもできる。
本発明によるレーザ測長計は、また、レーザ干渉を利用した測長機構と、測長機構の測長出力値から等速度成分と加速度成分を除去して誤差信号成分を発生する誤差信号成分発生手段と、誤差信号成分発生手段から発生された誤差信号成分を測長出力値に対応させて記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された誤差信号成分を補正値として測長機構の測長出力値に加減算する手段とを含むことを特徴とする。
本発明によるレーザ測長計は、また、レーザ光源と、レーザ光源から発生した波長λのレーザ光を参照光と測長光とに分割し参照光と被検体で反射されてきた測長光とを干渉させる干渉器と、干渉器で干渉した光を検出する光検出器と、光検出器の検出信号を測長出力値に変換して出力する測長値出力手段とを備え、被検体の変位が干渉器と被検体の間の測長光の光路長にn倍の光路長変化をもたらすレーザ測長計において、測長値出力手段の測長出力値に対して補正値を加減算する補正手段を備え、補正手段は、測長出力値を変数としてλ/nの周期を有する周期関数あるいはλ/nの周期を有する周期関数とその倍周期関数とを記憶する手段あるいは演算する手段と、測長値出力手段の測長出力値から等速度成分と加速度成分を除去して誤差信号成分を発生する誤差信号成分発生手段と、λ/nの周期を有する周期関数あるいはλ/nの周期を有する周期関数とその倍周期関数との和の関数が誤差信号成分にフィッティングするように周期関数の振幅及び位相を調整する調整手段と、調整手段によって振幅及び位相が調整されたλ/nの周期を有する周期関数の関数値あるいはλ/nの周期を有する周期関数とその倍周期関数との和の関数の関数値を測長出力値に加減算する手段とを備えることを特徴とする。
補正処理は、ハードウェア的に実時間処理できるよう構成することもできるし、補正値の算出機構と共にソフトウェア的に一体化して構成することもできる。
本発明のレーザ測長計は、装置の起動時または初期化時に、測長対象物の一定速度駆動を行い、その際に補正用のデータを取得するようにすることができる。また、本発明のレーザ測長計は、ステージ制御装置と組合せ、ステージの初期化動作時あるいは制御時にレーザ測長の補正用のテーブルの補正値をセットするようにしてもよい。
測長値補正手段または測長値補正方法を実現する手段は、レーザ測長用の測長ボード(カウンタボード、またはアクシスボード)上に一体化することができる。
本発明によるレーザ測長計は、一軸ステージあるいは多軸ステージ、XYステージに搭載することができる。
本発明による装置は、試料あるいは加工対象物を載置して移動するステージと、ステージを駆動する駆動手段と、ステージの位置を計測するレーザ測長計とを備える装置において、レーザ測長計として前述のレーザ測長計を用いたことを特徴とする。そのような装置の例としては、電子線描画装置、半導体デバイス製造用ステッパ(露光装置)、微細加工装置、金属加工装置、セラミック加工装置、マスクパターン転写装置、マスク作製装置、測長機能を備えた走査電子顕微鏡、測長機能を備えた透過電子顕微鏡、非接触形状測定装置等を挙げることができる。
本発明によるレーザ測長計の構成においては、干渉した光を検出する光検出器と、前記光検出器の検出信号より位相を検出する位相検出手段と、前記位相検出手段より得られた位相量の変化量を積算する積算手段と、前記積算手段より得られた積算値または前記位相量より補正値を生成する補正値生成手段と、前記補正値生成手段により生成された補正値を前記積算値または前記位相量に対して加算する補正手段を備える。前記補正値の生成手段においては、前記積算値または前記位相量を変数として、レーザ光の波長λに周期的な補正値を生成し、レーザ光の波長周期に同期して発生する信号成分を取り除く。
前記補正値の生成手段では、位相値ではなく、位相値の変化量である積算値を変数として補正値を生成することで、nによらずλ周期で、周期的な補正値を生成する。λを周期として補正値を生成することで、λの1〜2n倍波の各倍波成分に対応した複数の周期成分の誤差を抽出する。
Nを1〜2nの自然数(N≠n)として、被検体の速度vでの移動によって発生する前記光検出器の検出信号の、f=Nv/λの周波数成分のピークの、周波数スペクトルのベースラインに対する相対ピーク強度を抑圧する手段を備えることで、それらの周波数成分を除去して、レーザ測長計の測長精度を高精度化する。
以上のように、本発明によれば、レーザ波長周期に対応した測定誤差を補正できるので、ナノ・メートル級の高い絶対精度を必要とする高精度の測長・計測・評価技術において、あるいは半導体加工・原盤加工等の精密加工・微細加工技術において、試料や対象加工物の変位を測定する際に、精度を1nm未満まで向上することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
〔実施の形態1〕歪補正付きレーザ測長計の基本的構成
本発明によるレーザ測長計のシステムの全体構成例を図2に示す。図は、レーザ測長により、一軸ステージの精密測長と、フィードバック制御を行う場合の具体例である。一軸ステージは、モータ等をステージ駆動力源7とするもので、可動であるステージテーブル6の距離を、ステージテーブル上の反射鏡8の位置の変化で検出する。
レーザ電源1により気体レーザ光源2を駆動し、発生したレーザ光3を、ビームベンダ4で反射させて、干渉器5へ導入する。干渉器内部では、光路が2つに分けられる。一つは、ステージテーブル6上の反射鏡8へ到達して、反射され干渉器5に戻ってくる測長光路である。もう一つは、干渉器内部で反射される参照光路である。この例では、レーザ測長に4倍光路のもの(干渉器5と反射鏡8の間を光が2往復するもの)を用いている。測長光路の光と参照光路の光は干渉器5で混合される。二つの光が混合されることで、干渉が現れる。この干渉を起こした光が、干渉器5より射出され、受光器9により検出される。受光器9では、この光量を検知して、電気信号に変換する。変換された電気信号は、測長ボード10によって座標変位の値に変換され、測長出力値13として出力される。この測長出力値を、測長値高精度化手段11によって補正し、高精度化された測長値23が出力される。これを、データ収集及び制御を行うパーソナルコンピュータ12に取込み、ステージの位置や、補正機構へフィードバックする。なお、測長ボード10は、一般的に、カウンタボードまたはアクシスボードとも呼ばれているが、本明細書中では、これを測長ボードと統一して呼ぶことにする。
本発明は、主に、測長値高精度化手段11における補正方法と、その補正手段に関するものである。本実施の形態中では、これを図2のように、独立した処理手段として以後記述するが、これは電気的な信号処理の形で実現されるものであるため、この機能はハードウェア的にもソフトウェア的にも実現可能であり、ハードウェアとして測長ボード10の側に吸収することもできれば、ソフトウェア的にパーソナルコンピュータ12に吸収する形で実現することも可能である。また独立したハードウェアを用いて、図2の通りに独立した構成とすることもできるものである。
用いた気体レーザ光源2は、ヘリウム・ネオンの気体レーザであり、出力されるレーザ光の波長は633nmである。高周波の電磁波をガスに加えて励起している。なお、真空チャンバを用いて、干渉器5から先(干渉器5、ステージテーブル6、反射鏡8)までを真空チャンバ中に封入し、測長光路を真空とすることで、空気の揺らぎや湿度の変化に伴う屈折率の変化による測長誤差を防ぐことができる。また、測長精度を維持するために、ビームベンダ4や干渉器5、真空チャンバの壁面に取付けられる透明窓等の部品は、すべて不必要な多重反射を防ぐため、多層膜コートを施したものを使用している。
このように構成した、レーザ測長システムにおいては、測長出力値を、0.3nmの分解能で、かつ10MHzのサンプリングレートで高速に座標出力を得られるものが構成できる。図3にその具体的な信号例を示す。
図3(a)は、図2のシステム構成を用いて、0.3nmの分解能かつ10MHzのサンプリングレートで測定された、一軸ステージの一定速度(毎秒5mm)の移動中の測長出力値の変化である。一定速度で動いているため、測長出力値は、時間に対して直線的に動いているように見える。しかし、縮尺を拡大してみると、実はきれいな直線ではないことが分かる。図3(b)は、図3(a)の信号より、直線成分とわずかな加速度成分(放物線成分)を差引いて、縦軸の縮尺を拡大した信号である。なお、元の信号は、図3(a)と同一のものである。また、横軸の取り方は、時間軸から位置(長さ)に変えているが、同一の区間のデータを取り出したものである。図3(b)より分かるように、測長出力の値は±2nm近い揺らぎを持って、周期的にゆれていることが分かる。揺れの周期は、約630nmに対し、4周期である。
同様のデータを、ステージの移動速度を変えて取ったものを、図4に示す。図4(a)は、ステージを毎秒40mmで移動中に測定した、測定出力値の時間変化である。図4(b)は、図4(a)より直線成分と放物線成分を差引いたものである。その他は、図3(a)(b)と同様である。図4においても、図3と同様に、ステージは図4(a)では直線的に動いているように見えるものの、直線成分と放物線成分を除いた図4(b)では、±2nm近い振幅で、周期的に揺らいでいることが分かる。揺らぎの周期も、約630nmに4周期と、ほぼ一致している。この周期は、レーザ光源として用いているHe−Neレーザの波長が633nmであり、レーザ光が干渉により明暗を繰返す周期とぴったりと一致していることから、受光器8におけるレーザ光の光量が、高い周波数で変化することによる、測定誤差であることが分かった。
この測定誤差は、70nm以上の変位を測長する場合に、約±2nmの絶対精度の誤差を生じることになる。分解能は公称値0.3nmのレーザ測長計であっても、このように、絶対精度の値は数倍精度が落ちて測定される場合がある。 これを補正するためには、図3(b)、図4(b)のように得られた揺らぎの波形を予め補正値として記憶しておき、次回以降測定される測長出力値から差し引けばよい。これにより、高精度化を行うことができる。揺らぎの周期は、レーザの波長の周期に完全に対応している。従って、測長によって得られた値を元に、レーザの波長周期に対応して周期的な値を生成し、これを補正値として用いればよい。この補正は、リアルタイム性(実時間処理性)を重視してハードウェア的に行ってもよいし、補正値の算出機構(実施の形態2〜5に示す)と共にソフトウェア的な手段を用いて実現することもできる。
図5にその信号処理方法を示す。図5は、測長ボード10から出力された測長出力値13を取込み、高精度化された測長値23を出力する、測長値高精度化処理手段11の例である。取込まれた測長出力値13に応じて、メモリ機構19より補正値20が読出され、加減算器22により、補正が加えられた値が、高精度化された測長値23として出力される。25は放物線成分抽出フィルタであり、位相シフト値17を出力する。
補正値20は、以下のようにして生成される。まず、位相加算器16によって、位相シフト値17の値を測長出力値13に加算し、テーブル参照番地18として出力する。メモリ機構19は、テーブル参照番地18に従って、格納している補正値20の値を出力する。メモリ機構19には、補正値20として出力されるべき、レーザの波長周期に対応して周期的な値を持つデータが格納されており、この値は、メモリ格納値操作手段21によって自由に設定することができる。テーブル参照番地18は、レーザ波長の周期に応じて、周期的になることが望ましいが、この点は、レーザ測長の測長出力値が、2のN乗を波長周期としてデジタル的に出力されているものを用いる場合は、波長周期以上の上位ビットを無視するだけでよい。具体的に、テーブルに格納する値としては、図3(b)や図4(b)に示した波形(の一周期分)を、そのまま格納すればよい。またそれ以外にも、同じ周期の正弦波(sin)波形を用いることでも、補正による高精度化の効果が得られる。
図1に、本発明による高精度化の効果を示す。図1は、図3(b)の揺らぎの波形に対して、単一の正弦波の振動成分を補正値として差引くことにより、高精度化を行った場合を示している。元の波形に対し、十分に追従ができているこの場合は、元の精度に対し約3倍高精度化でき、±0.6nm程度まで精度が向上されることが分かる。この精度は、差引く補正値の波形を工夫することで、さらに改善が可能である。この方法については、実施の形態3〜5で述べる。実施の形態2〜3では、図1に示した高精度化を行った、自動追従で正弦波をフィッティングするシステムの構成を示す。
なお、本装置の構成において、メモリ機構19は必須ではなく、テーブルに相当する値を、その場で計算してもよい。しかし、一般的にはメモリ機構を併用した方が構成が楽な場合が多い。演算時間が必要なく、高速であり、また演算式によらずに自由な値を設定できるという自由度がある。位相加算器16と位相シフト値17は必須ではないが、補正値の位相のみをシフトしたい場合に、メモリ上のテーブルの値全てを書直さずに済むという点で利便性があり、あると自由度が高まる。
なお、図3(a)より、直線成分と加速度成分を差引いて図3(b)にする操作、及び同様に図4(a)より図4(b)に変換する操作は、具体的には、横軸を「x」、縦軸を「y」として、次の〔数1〕の形で表される二次関数を、統計的に最小二乗法によりフィッティングし、求めたフィッテングの平均的な変位の値を差引くことで実現できる。
Figure 0003847762
このフィッティングは、補正の中心としたい点の前後4周期分程度、または前後どちらか片側6周期分程度の測長出力値を「yi」とし、各点における座標「xi」に対して、統計的に、行列式を用いた〔数2〕に従って、定数a,b,cを求めることで行える。
Figure 0003847762
求まったa,b,cをもう一度二次式に代入し、誤差を求める点「x」に対する「y」を求める。この処理を行うのが、放物線成分抽出フィルタ25である。この様にして求まった「y」を、「yi」より差引くことで実現できる。
以上、手順をまとめると、まず連続して測長ボード10より出力される測長出力値13を、二次関数によりフィッティングし、フィッティングした平均的な変位を、実際の測長出力値より差引いて、図3(b)や図4(b)に示したような揺らぎ誤差量を求める。これを補正値として、次回以降の測長時に、この補正値を差引くことで、揺らぎの誤差が打ち消された高精度化された測長値を得ることができる。
これを、ハードウェア的な回路構成により、具体的に実現するための回路例を示したものが、図6である。レーザ測長計の測長出力値13を、レーザの波長周期数に対応した上位ビット14と、一波長周期中を分解した位置を示す下位ビット15に分ける。このうち、この下位ビットの信号だけを取り出して、位相加算器16にて、位相シフト値17を加算した後、シフト後の位相波長周期中の位置18を、デュアルポートRAM24のアドレスとして入力する。なお、ここでは、メモリ機構としてデュアルポートRAMを用いている。デュアルポートRAM24に、予め補正テーブル設定値21を記憶しておき、シフト後の位相値18に応じて、補正量20が読出される。この補正量を、元の測長出力値13(波長周期数に対応した上位ビット14と、一波長周期中を分解した位置を示す下位ビット15の両方を合わせた位置座標信号)に対して、加減算器22にて加算することで、歪補正された測長値23を得る。加算する補正値は、通常8ビット程度で十分であり、測長出力値のビット数(32ビット程度)に足りない上位ビットの部分は、8ビットを符号拡張して加算する。
通常、上記のように、レーザ測長計の測長出力値13は、ハードウェアの構成を簡単にするため、波長周期数をカウントし出力する構成をとるため、レーザの波長周期数に対応した上位ビット14のバスと、一波長周期中を分解した位置を示す下位ビット15のバスに分けることができる。上に述べた実施の形態では、この特徴を利用して、簡易な構成で周期的な補正の処理を実現している。
デュアルポートRAM24に格納するべき補正値は、測長出力値13から前述の放物線成分を差引く演算と同様であり、この図では、この計算の処理はパーソナルコンピュータ12を用いて行う構成となっている。処理すべき手順と数式も、前記と同様である。
なお、このように、書換え可能なメモリ上に補正値を格納する測長値補正手段の構成は、補正値として自由な周期関数を設定できるため、自由度が高く、これと組合せる補正値の算出手段における補正値の算出方法の工夫によって、この補正方法による限界に近いところまで精度を向上できるという利点を持っている。
〔実施の形態2〕自動位相追従式高精度化手段の構成
図7は、補正値の周期関数の位相をたえずフィードバック制御して、波長周期の歪誤差を補正する、自動位相追従式歪補正手段の構成例である。
測長ボードより得られた測長出力値13を取込み、放物線成分抽出フィルタ25を通った値との差引きにより、歪誤差信号26を得る。この計算方法は、行列式を用いて実施の形態1中で述べたのと同様である。また、測長出力値13に、位相加算器16にて位相シフト値17を加算して、シフト後の位相値18を発生する。これを、周期関数値を発生するメモリ機構19と、その周期関数と位相が直交する位相直交周期関数値テーブル36の入力とする。なお、ここではメモリ機構19は、記憶内容値の固定されたROM(リード・オンリ・メモリ)でもよい。また、メモリ機構19と、位相直交周期関数値テーブル36は、周期的な値を発生できるものであれば、メモリ機構に限ったものではなく、もっと一般的には関数の計算機構であっても良い。ただし、発生される関数の形は、補正に適したものである必要がある。
これらにより発生された周期関数値30と、位相直交周期関数値37を、各々乗算器31,38にて歪誤差信号26と乗算することで相関強度を計算し、成分相関値32と位相直交成分相関値39を得る。これらを時間平均フィルタ33、積分器40にて時間平均することで、平均的な、各々の信号成分の相関強度を得ることができる。
メモリ機構19と位相直交周期関数値テーブル36にて発生する周期関数のペアとして、適当なものの例を図8と図9に示す。図8の実線は正弦波(sin)、点線は余弦波(cos)で、レーザ測長に4倍光路のもの(干渉器と反射鏡の間を光が2往復するもの)を用いている場合は、このようにλ/4ごとに周期的な値をとる関数とすればよい(λはレーザ波長)。例えば、メモリ機構19にセットする値として正弦波を選び、位相直交周期関数値テーブル36にセットする値として余弦波を選ぶ。こうすると、歪誤差信号26に対し、メモリ機構19の発生する正弦波の位相が遅れている場合は、位相直交する余弦波成分との相関が正となり、位相直交成分相関値39は、正の値をとる時間が、負の値をとる時間よりも大きくなる。これが入力をなって積分器40に加わり、積分器から出力される位相加算値17は、徐々に大きい値となる。これに伴い、シフト後の位相値18が大きくなることで、遅れていた位相が回復される。逆に歪誤差信号26に対し、正弦波の位相が早すぎる場合には、逆の動作によって位相が遅めになるよう調節される。
このフィードバックによって、メモリ機構19から出力される正弦波の位相は、歪誤差信号26の基本波成分の位相とたえず一致した状態に保たれる。その上で、時間平均フィルタ33より得られる平均成分強度34に従って、補正量となるべき正弦波の振動成分が乗算器35より出力される。この補正量20が、加減算器22にて、元の測長出力値13より差引かれて、歪補正された測長値23が得られる。
なお、図3(b)や図4(b)より分かるように、歪誤差信号26に現れる歪信号の波形は、正弦波よりはむしろ三角波に近い形をしている。そこで、図8に示した正弦波と余弦波に代えて、図9に示すような、位相の90度ずれた三角波のペア(実線と点線)を用いると、より効率良く補正を行うことができる。このように、周期関数の選び方としては自由度がある。
なお、この自動位相追従による制御は、図6に示した構成を用いて、ハードウェアとソフトウェア的手段とを組合せる構成でも実現できる。メモリ機構19の前に位相加算器16が用意されているので、上に述べた位相フィードバックの処理を、パーソナルコンピュータ12上のソフトウェア的処理に置換えることによって、図7に示した歪補正の処理が、図6の構成でも実現可能である。その場合、振幅調節の機構がないが、これは、デュアルポートRAM24に振幅の異なる幾つかの周期関数値を用意しておき、補正テーブル設定値21と共にこれを選択することで実現される。
〔実施の形態3〕自動振幅追従式歪補正手段の構成(1)
図10は、2つの周期関数の振幅を自動制御して、測長出力値の歪誤差を補正する、自動振幅追従式歪補正手段の構成例である。
測長ボードより得られた測長出力値13を取込み、放物線成分抽出フィルタ25を通った値との差引きにより、歪誤差信号26を得る。この計算方法は、実施の形態2中にて述べたものと同じである。一方、測長出力値13をそのまま2つの周期関数を格納しているメモリ機構19と、位相直交周期関数テーブル36の入力とする。発生した周期関数値30と位相直交周期関数値37を、各々乗算器31,38により、歪誤差信号26との積をとることで、誤差信号に含まれる各々の周期関数の成分の相関が得られる。これが成分相関値32と、位相直交成分相関値39である。これらを各々、時間平均フィルタ33を通すことで、各々の周期関数の成分の大きさである平均成分強度34と、平均位相直交成分強度41が得られる。各々の成分の大きさに比例して、各々の周期関数値を足し合せる。このとき用いる周期関数が、正弦波と余弦波の組合せである場合には、どのような位相の正弦波も、この2つの波形の線形加算で表せる。従って、実施の形態2中で図7を用いて述べたような、位相のフィードバックは必ずしも必要ではなく、このように振幅制御だけで同様の効果を得ることができる。
各々の成分の信号強度である平均成分強度34と、平均位相直交成分強度41に応じて、周期関数値30、平均位相直交関数値37の振幅を変化させ、歪誤差信号26に含まれる各々の周期信号成分の大きさと一致させる。これを行うのが、乗算器35,42である。このようにして各々、乗算器の出力として周期関数信号成分43と、位相直交周期信号成分44が得られる。
これら各々の周期関数の信号成分を総加算器45にて足し合わせて得られた総歪補正値46を、加減算器22にて、元の測長出力値13から差引くことで、周期的な歪の取除かれた歪補正された測長値23を得ることができる。
このように、位相追従のためのフィードバック部を用いていない構成でも、位相に追従できる自動歪誤差補正手段を構成することができる。なお、ここで用いた2つの周期関数である、正弦波と余弦波は、図8(実線と点線)に示したものと同じである。
〔実施の形態4〕自動振幅追従式歪補正手段の構成(2)
図11は、実施の形態3にて述べた構成を拡張して、3つ以上の周期関数の振幅を自動制御することにより、より高精度化を行った、自動振幅追従式歪補正手段の構成例である。
実施の形態3で用いた、図8に示される正弦波・余弦波の2つに代えて、図12に示す、正弦波と余弦波と、その倍周期関数の群を用いる。
図11に示す様に、この自動振幅追従式歪補正手段の構成は、図10に示した2つの周期関数の発生機構を、用いる周期関数の数だけ並列させたものである。メモリ機構19、位相直交周期関数値テーブル36に代えて、メモリ機構19、複数の直交周期関数テーブル47,48を用いたものである。図11には、3つ分のみを示しているが、用いる周期関数の数だけ、これを並列して用いる。総加算器45以降の構成は図10と同様である。
正弦波と余弦波と、その倍周期関数は、各々数学的に直交している関数であるため、積分器による相関計算のみで、独立して各々の成分に対応した振幅強度が計算できるという利点がある。
このように、直交化された関数群を用いると、各周期関数に重み付けを行って、足し合せるだけで、任意の周期関数が生成される。直交化されているので、積分器により各々に対応する成分の強度を、別々に求めることができる。また、倍周期関数を含めた、3つ以上の周期関数値を足し合せることで、より細かな凹凸を持つ歪誤差信号に追従して、より歪誤差信号の形を忠実に再現し、差し引くことができ、残差である歪誤差を小さくすることができるという利点があり、高精度化に有利である。
〔実施の形態5〕自動振幅追従と位相追従の組合せ補正手段の構成
図13は、複数の直交する周期関数を用いた、自動振幅追従制御と、自動位相追従制御を組合せた、組合せ自動歪補正手段の構成例である。
本構成は、図7に示した位相追従のフィードバック部と、図11にて示した複数の周期関数の振幅制御を、組み合わせた構成となっている。信号の流れ及び各部の働きは、実施の形態2と実施の形態4に示したものと、同じ番号を付した部分について、各々同様である。このような構成をとると、用いる周期関数の群として、正弦波・余弦波以外の、任意の直交周期関数の群を選択することができる。
本実施の形態にて用いる周期関数の例としては、直交化された三角波の倍周期関数の群が挙げられる。すでに図9(実線)に示した三角波を、横軸をx、縦軸をyとして、次の〔数3〕の形で表す。
Figure 0003847762
直交化された三角波の倍周期間数の群を〔数4〕(但しnは自然数)の形で表すと、n=1〜8までの各倍周期関数は、〔数5〕の形で表される。
Figure 0003847762
Figure 0003847762
これを具体的に図示したのが、図14である。外観は全て三角波の倍周期間数であるが、三角波の各頂点が、直交化に伴い、わずかに上下にずれた関数となっている。これら、直交化された関数は、各関数同士の積の値を、0〜λ/4の区間で一周期分の積分した値が、お互いにゼロとなるように選ばれている。
位相直交周期関数値テーブル36からは、図14に破線で示すn=1の三角波関数、あるいは図12に破線で示すn=1の余弦波関数を発生すればよい。
実施の形態4に示した方法では、精度を上げようとすると、位相の自由度を出すために、正弦波の倍周期関数と、余弦波の倍周期関数の両方が必要であったため、多くの周期関数を発生するための構成が必要であったことに比較して、本実施の形態に示す方法では、位相に関しては一つのフィードバック系を追加するだけで、用いる周期関数の数を半分に減らせ、構成を単純にできる。さらに、足し合せによって位相が任意にシフトできる正弦波のような関数に縛られる必要がないため、最初から歪誤差波形に近い三角波を周期関数として用いることができる。このため、比較的少ない数の周期関数値の発生手段(メモリ機構19、または直交周期関数テーブル47・48)により、三角波成分を多く含む歪誤差信号の波形を効率良く再現することができる。このため、構成が簡素になり、コストを下げられるという利点を有する。
なお、この自動位相追従式の歪補正については、積分器40の積分時定数により決まる、位相の一致のためのフィードバック調節のフィードバック時間が、振幅制御のための時間平均フィルタ33の時定数よりも、少し短くなるよう設定すると、フィードバック制御が安定化しやすい。
〔実施の形態6〕ノイズ縮小用平均化手段との組合せ構成
図15は、実施の形態1〜5に述べた歪補正処理手段27と、ノイズ処理のための平均化処理手段28を組合せることで、本来の測長出力値13の最小分解能よりも高い分解能での測定を可能とする組合せ構成の構成例である。
平均化処理手段28は、歪補正処理手段27によって得られた、歪補正された測長値23を受取って、内部に持つデジタル平均化ユニットにて、レーザ発振の励起周期と同じ平均時間で、移動平均法により平均化して出力する。具体的に、我々の用いたハードウェア構成では、歪補正された測長値23が0.1μs周期の32ビットの座標データの形で得られるので、それをレーザ発振の励起周期と同じ14.6μsの平均時間で、移動平均法によりハードウェア的に平均化している。
図16は、歪補正された測長値23の信号の周波数スペクトルで、ステージ静止時のものである。このように、1MHz付近の細かなノイズの他に、68kHz付近に鋭く大きな気体レーザの励起周波数に対応したノイズ成分がよく出るので、例えば次の〔数6〕に示すような周波数特性を持つフィルタを用いて平均化する。式中、Δτはフィルタの時定数、fは周波数である。
Figure 0003847762
上の式のような特性を持つフィルタとしては、具体的には移動平均フィルタを用いればよく、その平均時間を、68kHzの周期に対応させた14.6μsにとることで、上記気体レーザの励起ノイズを取除くことができる。なお、上記平均時間は2Δτに相当する。
平均化フィルタは、応答の遅れと位相のズレを生じるので、実施の形態1〜5に述べたような歪補正の処理は、この平均化操作の前に行なわなければならない。従って、平均化処理を組合せて用いる場合は、図16のように、歪補正処理は、平均化処理の前に行わなければならない。
また、最終出力である高精度化された測長値29のみが、座標出力値として外部で検出できるようなシステム構成としてある場合は、平均化処理手段28を通すことで上記のように位相のズレを生じるので、補正値の算出時は、これをバイパスできるよう構成されていることが望ましい。また同様に、補正値の算出時に、前の補正値による補正が行われた出力値が参照されることは、補正値の算出をさらに複雑にする。これを防ぐために、歪補正処理手段27自体において、補正値の加算の可否を制御できるようになっていると、より自由度が高まる。
なお、このような歪誤差の予測(補正値の算出)の処理が有効に働くのは、ある一定速度(具体的には毎秒2mm以上程度)でステージが連続的に滑らかに動いている時であり、それ以外の時に測定された連続的な座標の出力値を、補正値の算出に用いようとすると、ステージの機械的な振動や、加速度・減速度によって含まれる誤差が大きくなってしまう。従って、実施の形態2〜5に示したような歪誤差の自動追従補正処理においては、ある一定速度以下の速度でステージが移動する際には、図7,10,11,13中にて示した時間平均フィルタ33,40が、移動速度が低い際には、その入力値を参照せずに平均値をロックするか、または移動速度が一定値以上となっている時のみ優先的に平均化処理の入力として参照する、といった手段が備えられていることが望ましい。そのためには、例えば図7に対応する図17に図示するように、測長出力値13を微分フィルタ50によって微分し、その値(ステージ移動速度)がある一定の閾値を超えているときだけ時間平均フィルタ33,40等に動作許可信号を出すような構成をとればよい。
また、その観点から、本発明による測長値高精度化処理手段を用いた装置においては、その補正値のセット時または初期化時に、ステージまたは測定対象物が、一定とみなせる速度(具体的には、速度変動率0.05%以下)にて、滑らかに連続移動できることが望ましく、そのためのステージまたは測長対象物の移動と、計測の処理が、初期化時または補正時のプロセス(手順)として組入れられていることが望ましい。即ち、このプロセス(手順)は、レーザ測長計と駆動手段とが一体化した装置において、はじめて可能になるものである。また、ステージが滑らかに動いていれば、一定速度である必要は必ずしもないが、一定に近い速度ならば、放物線の差引きによる誤差計算の精度が出やすく、また、放物線フィッティングの代わりに直線のフィッティングで済むなど、楽に計算できる場合がある。
以上示したように、本発明による方法を用いると、レーザ干渉計にて、レーザの干渉効果による周期的な測長誤差を減少することができ、従来より高い測長の絶対精度を実現することができる。なお、上記では、本発明を、レーザ測長に4倍光路のもの(干渉器5と反射鏡8の間を光が2往復するもの)を用いた例で説明したため、周期関数の基本周期としてλ/4(λはレーザ波長)を採用した。
レーザ測長が2倍光路(干渉器5と反射鏡8の間を光が1往復するもの)を用いていれば、周期関数の基本周期はλ/2となり、一般にレーザ測長がn倍光路(干渉器5と反射鏡8の間を光がn/2往復するもの)を用いていれば、周期関数の基本周期はλ/nとなる。
本発明によると、レーザ測長計を用いた装置一般にて、その測定精度を向上することが可能であり、絶対精度について特に正確さの要求される一軸ステージ、または、XYステージ、多軸ステージ、電子線描画装置、半導体製造用ステッパ、微細加工装置、精密加工装置、金属加工装置、セラミック加工装置、マスクパターン転写装置、マスク作製装置、測長機能を備えた走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、非接触形状測定装置といった機構または装置にて利用可能である。
レーザ測長計は、レーザの波長に比べ大きな距離のスケールでは、本来高い絶対精度を有しているので、本発明を併用することにより、波長以下のスケールにおいても、絶対精度を向上することができる。これによって、高精度装置の加工精度の向上が可能である。
また、レーザ測長計の測長結果を元に、ステージや測定対象物を移動制御する際に、本発明による歪補正処理を行うと、フィードバック制御に用いた際に、周期的なレーザ測長の測定歪の成分により、余計な発振が生じるのを防ぐことができるため、制御が安定化しやすくできるという利点を有する。
〔実施の形態7〕位相検出によるレーザ測長計構成
図18〜図22は、位相追従回路(PLL:フェイズ・ロックト・ループ)を備えた位相計を用いて、レーザ測長計を構成する際の、レーザ測長計の構成例である。図18〜図21の構成例は、反射鏡8を備えた被検体の変位が、干渉器と被検体の間の測長光の光路長に、4倍の光路長変化をもたらすレーザ測長計である。図22は、被検体の変位が、8倍の光路長変化をもたらす光学系の構成例である。なお、4倍のものも、8倍のものも、受光器9以降の信号処理系の構成は同様である。
本発明による上記レーザ測長計の原理を説明する。まず、図21を用いて、光学系の構成を説明する。
気体レーザ光源2よりレーザ光3を出射し、偏光ビームスプリッタ51aに入射する。このレーザ光は、偏光ビームスプリッタ51aに対し45°傾いた偏光方向を持つ、直線偏光の光である。このレーザ光は、偏光ビームスプリッタ51aにて、三角プリブム52aへ向けて反射される光(参照光)と、そのまま偏光ビームスプリッタ51bへ向けて透過する光(測長光)の二つに分けられる。三角プリズム52aの側に反射された参照光は、三角プリズム内を二回反射して、偏光ビームスプリッタ51aの上側の光路へ戻されて、偏光ビームスプリッタ51aの反射面で右側へ反射されて受光器9へ入る。一方、偏光ビームスプリッタ51bの側へ透過した測長光は、そのまま次の偏光ビームスプリッタ51bも通過して、λ/4板53を通過し、円偏光となって、反射鏡8に到達する。この測長光は、反射鏡8で反射され、再びλ/4板53を通過する際に、円偏光から、元の偏光方向に対し90°回転した偏光の光へ変換される。この光は、偏光方向が90°回転しているために、偏光ビームスプリッタ51bの反射面によって三角プリズム52bに向けて反射される。続いて、この光は、三角プリズム52b内を2回反射して、偏光ビームスプリッタ51bの上側の光路へ戻される。この光の偏光方向は、まだ90°回転したままであるため、偏光ビームスプリッタ51bの反射面で左側へ反射されて、λ/4板53を通過し、円偏光となって再び反射鏡8に到達する。続いて、この光は、反射鏡8で反射され、もう一回λ/4板53を通過する際に、再び90°偏光方向が回転し、元と同じ偏光方向となって、偏光ビームスプリッタ51bをそのまま通過する。さらに、この光は、偏光ビームスプリッタ51aもそのまま通過して、受光器9に達する。この時、最初に三角プリズム52a経由で到達した参照光と混じり合って、光の干渉を起こす。この干渉によって明滅する光を、受光器9にて集光し、検知する。なお、ここでは、受光器9は、光検出器の機能を兼ね備えているものとする。光検出器の検出信号で、受光光量に比例するアナログ量を示す信号を、受光光量信号と呼ぶことにする。
λ/4板と反射鏡8の間を測長光路70と呼ぶ。測長光は、この測長光路70を2往復しているため、反射鏡8が変位すると、測長光の通る光路長は、元の反射鏡8の変位に対して4倍変化する(n=4)。これによって、反射鏡8がλ/4だけ変位すると、その変位が測長光と参照光の位相差を生じて、レーザ光の干渉を起こして、受光器9にて検出される光が1回明滅する。この明滅の回数を数えることで、測長光路の長さの変化が測定できる。光の波長が633nmである場合、一回の明滅は158nmの変位に相当する。1nm単位の精度で変位を測定するためには、我々はこの光の明滅を、一波長より細かな分解能で、精度良く測定する必要がある。このために、通常、位相追従回路(PLL)等の同期検出を用いて位相計などの位相検出手段を構成する。この信号処理によって、測長光と参照光の位相変化を、正確に測定する。
次に、図18を用いて、受光器9以降の構成を説明する。
受光器9にて検知した明滅の強度変化は、光検出器の検出信号54となって、位相検出手段55に入力される。位相検出手段55では、上記にて述べたように、光の明滅に相当する干渉光の強度変化より、測長光と参照光の位相差を正確に測定し、位相量56を求める。この位相量56の変化量を、積算手段57にて積算し、反射鏡の変位量に相当する積算値58を求める。この積算値58は、測長出力値13に近い値であるが、光学系や回路系による誤差を含んでいる。高精度なレーザ測長計を構成するためには、補正を加えて、積算値58に含まれる誤差を取除く必要がある。本発明のレーザ測長計の構成では、この誤差を小さくするための補正機能を備えている。前記積算値58には、実施の形態1中にて示したように、多くの場合、レーザ光の波長λ、またはその倍波を主成分とする誤差が含まれている。通常、レーザ測長計においては、前記積算値58は、波長の整数倍と、一波長に対する分周比との、和という形で得られる。これは、レーザ測長計では、波長の数を単位として距離を計数しているためである。したがって、前記積算値から、レーザ光の波長λの周期成分を得ることは、一般に簡易である。積算値58より、レーザ光の波長λの周期成分を、同期検出により検出し、機械的に通常有得ない高い周波数の振動成分が含まれていれば、それがレーザ測長計の誤差と判別できる。補正値生成手段61はこれを行う。この手法としては、実施の形態1〜6に述べた手法が利用できる。この補正値生成手段61により得られた補正値60を、補正値加算器59により、前記積算値58に加えることにより、高精度化された測長出力値13が得られる。
なお、図18の別の構成として、図19に示すように、補正値加算器59を、位相検出手段55と積算手段57との間に挿入し、位相量56を変数として補正値60を生成して、位相量56自身に加算する構成がある。また図20は、補正値加算器59を積算手段57の後ろに配置して、積算値58に加算するという構成である。ただし、これらの構成では、位相量56を変数として補正値60を生成しているため、加算する補正値の周期が、λ/4より短く限定される。図18に示す構成の方が、より長い周期の誤差に対応できるという長所がある。
つぎに、測長誤差の発生原因について、ふたたび図21を用いて説明する。
図21のレーザ測長計の光学系の構成において用いられる光学部品は、通常、不要な光反射を防ぐため、無反射コートを施したものが使われる。しかし無反射コート膜の膜厚誤差や不均一により、空気と光学部品の各所の境界面において、しばしば1〜2%の光反射が生じる。このうち、本光学系にて、測定誤差に直接影響するのは、λ/4板53の反射鏡側の端面での端面反射光71である。この端面反射光71は、測長光路70を往復しないこと以外は、通常の測長光と同様に偏光回転され、同じ光路を経て受光器9にて検知される。同様のことは、2回目のλ/4板の通過時においても起こり、端面反射光72を生じる。各成分の光の、被検体の移動によって生じる測長光の光路長変化を、当該被検体の変位に対してN倍であると表記すると、この様にして、本来測長光路70を2往復するべき測長光(N=4)に混じって、1往復(N=2)の端面反射光71、72が受光器9に検出され、測長誤差の原因となる。
同様のことは、図22のように、測長光路を3往復以上とした場合でも起こる。図22は、測長の分解能を高めるために、測長光路の往復数を増やした場合の例であり、測長光が測長光路70を4往復する光学系の構成例である。この場合、4往復(N=8)の光に混じって、3往復の光(N=6)が、4〜8%近く受光器9にて検出され、測長誤差の原因となる。同様に、N=4の光や、N=2の光も含まれ、誤差となる。
これらの光学的な誤差は、現在の技術では、光学系で完全に取除くことができない。従って、これらの誤差は、信号処理にて取除くことが望ましい。具体的には、図18のような構成を用いて取除くことができる。また、上記に述べたように、N=8の光に混じって、N=6やN=4の光が含まれる。例えば、N=2とN=4の光が混ざると、N=(4+2)÷2=3の成分の波と、N=(4−2)÷2=1の成分の波が、ビートとして生じる。このため、N=1(すなわちλ周期)に相当する長い周期の誤差が生じる。これを取除くためには、N=8の周期で検出される位相量56ではなく、積算値58を変数として補正値60を生成する方が望ましい。また、誤差の波形が、図4に示したように三角波の形をしている場合、N倍波の成分に加えて、2N倍波の正弦波成分が多く含まれていることに相当する。これを取り除くため、補正値として用いる複数の正弦波としては、1〜2n倍波の正弦波成分が含まれることが望ましい。
これらに対処したのが、実施の形態4に示したような、複数の倍周期関数の和を補正値として用いる補正方法である。この補正方法の効果の実例を図23に示す。図1にて±0.6nmであった測長精度が、1〜2n倍波の正弦波と余弦波の和を補正値60として用いることで、さらに±0.4nmまで高精度化される。1〜2n倍波の成分の各々を補正する構成をとることで、単一の正弦波成分のみを補正する場合に比べて、このように、さらなる高精度化が可能である。
また、実施の形態2〜5に示したような自動追従式の補正手段の構成では、必然的に、ステージの移動によってこれら周期的な誤差の成分を検知してから、最適な補正値に収束するまでに、時間遅れが生じる。具体的には、装置立上げの後に、ステージを移動し、λ周期成分の信号を検知し、補正値を算出または調整してから、補正値による高精度化された測長出力値が出力される。このため、装置立上げ直後に、ステージを移動すると、最初はλ周期の誤差成分を多く含む測長出力値が出力され、少し時間が経過してから、補正された誤差の少ない測長出力値が出力される。その遅れ時間は、実施の形態5にて述べた、自動追従系のフィードバック時間により決まる。ただし、ステージの停止中や速度の遅い時は、光干渉による振動信号と、機械的な振動による振動信号とを、判別できない。そこで、補正値の更新を、ステージの移動速度によって、許可したり禁止する手段が必要となる。これをより具体的に図示したものが、図26である。微分手段63によって、積算値58の変化より、ステージの速度を検知し、一定速度を超えている時に更新許可信号64を出力し、補正値の更新を行う。図27は、測長出力値13に含まれる、補正後に残った波長λ周期の誤差を、波長λ同期成分抽出手段62にて検知して、これを最小化するようにフィードバック制御する場合の構成例である。被検体(ステージ)の速度に応じて、補正値の更新を、更新許可信号64によって制御する。これにより、速度の遅い時に誤って補正値が更新されることを防ぐことができる。このように構成することで、ステージの減速後も、λ周期の誤差を抑圧しつづけることができ、静止測長時における測長精度を向上することができる。
以上述べたように、本発明によるレーザ測長計の構成の特徴は、被検体の変位の測定値に対して、補正値の算出手段と、補正値の加算機構を備え、レーザ光の基本波長λに同期した周期的な補正値を加減算する点にある。多倍長光路のレーザ測長計においても、その測長値を高精度化できる。この構成では、必然的に、位相検出の後方において、補正値の算出手段と加減算手段が備えられる。測長値に含まれる誤差信号を求め、求めた誤差信号を補正値として加減算することで測長値を高精度化する。誤差信号の特徴より、nによらず、レーザ光の波長λを基本周期とする周期的な補正値を用いて、レーザ光の波長λの1〜2n倍波の成分を差し引くことで、誤差±0.4nm以下の高精度な非接触測長が可能となる。補正値の生成手段としては、レーザ光の波長λの周期を有する周期的な補正値を、位相量や積算値を変数として生成する方法を用いることができる。また、その補正値の生成においては、時間変化する積算値に含まれる波長λ周期の周波数の信号成分を同期検知するという手法が利用可能である。また、補正後の信号に含まれる波長λ周期の信号成分を最小化するよう自動的に追従せしめることで、補正値の生成を自動化することができる。この場合、被検体が移動してから、測長値に含まれるλ周期の周波数成分の信号成分が小さくなるよう追従するので、その測長出力値は、時間変化に伴って周波数成分が変化する。
波長λの周期で生じる信号の周波数fは、ステージの移動速度vによって、f=Nv/λ(Nは自然数)のように決まるため、他の要因の振動信号と、明確に区別することができる。平均化フィルタを用いた場合では、周波数fの成分を取除くようカットオフ周波数を設定すると、f以上の周波数帯域の信号も同時に減衰してしまい、本来検知すべき他の振動要因の信号が失われてしまう。これに対し、本発明による補正手段を用いた場合では、レーザ光の光干渉に起因する誤差の信号のみを、ロックイン検知等の同期検知で検出し、取り除くことができるため、本来検知すべき機械的振動の信号を、減衰させることなく補正できるという特徴がある。この実例を図28に示す。ステージの変位を計る場合、ステージの移動中に、補正前と補正後の信号の周波数スペクトル上で比較すると、補正前の信号では図28(a)のように、f=Nv/λのピークが等間隔に観測されるが、補正後のスペクトル上では、図28(b)のように、それらの等間隔のピークが取り除かれ、その他の高周波域成分の信号は減衰していない信号スペクトルが得られる。波長λに同期した、f=Nv/λの周波数のピークのみを選択的に取り除くことができるため、他の要因による周波数成分のピークは、減衰させることなく補正できている。通常、ノイズ処理に用いられる平均化の場合は、特定の周波数のピークを平均化によって減衰するよう処理すると、その周波数以上の帯域の信号ピークも同時に減衰してしまう。これに対し、本発明によるレーザ測長計の測長出力値では、機械的な要因による振動信号の大きさを保ったまま、選択的にλ周期の光学ノイズのみを除去することができる。本発明による補正方法を用いている場合、受光器にて検知される受光光量信号にてλ周期の誤差が生じているので、この周波数スペクトルを測定すれば、図28(a)と(b)の比較と同様に、補正の効果が現れる。またその特徴としては、λ周期の周波数に相当するピークのみが、バックグラウンド成分に比較して、選択的にスペクトル上で減衰するという点である。これは、周波数fのピーク近傍のスペクトルのベースライン(バックグラウンド成分)に対し、当該ピークが相対的に減衰されるという形で観察される。このピークのベースラインに対する強度比を、相対ピーク強度と呼ぶことにする。すなわち本発明による高精度化においては、f=Nv/λのピークの相対ピーク強度が、選択的に抑圧または減衰される。これに比較して、平均化(時間平均)によるノイズ処理の場合では、周波数に対する利得の変化は緩やかであり、平均化によってピークとベースラインが同時に、ほぼ同じ比率で減衰するので、相対ピーク強度は一定に保たれる。このため、本発明によるλ周期の信号の除去とは明確に区別できる。また、本発明によるλ周期の信号の除去と平均化を組み合わせた場合でも、平均化によるピークとベースラインの相対的な強度比は保たれるので、λ周期の信号の除去のみに対して相対ピーク強度の変化が起こる。このため、やはり相対的な強度関係によって本手法の利用を判別可能である。また、測長出力値の周波数スペクトルを、光検出器の受光光量信号と比較する場合、受光光量信号のf=nv/λのピークすなわちN=nの周波数成分については、レーザ測長の測長原理に基づく光干渉の信号そのものであるので、これはステージの等速直線運動の成分に相当し、測長出力値の直線的な増加として出力される。従って、N≠nの周波数成分が、測長誤差に対応する。つまり、N=1〜2nかつN≠nのピークがベースラインに対し相対的に減衰される点に、本発明による補正手段を用いることの特徴が現れる。
ただし、ステージの停止中は、λ周期の誤差を測定することができないため、λ周期の誤差は、移動開始後に検知して補正される。このため、観測される測長出力値の周波数スペクトルには、初めてのステージの移動中または加速中に、当該のピークが現れ、補正値がセットされまたは適した値に追従されると、これらのピークが減少するように観測される。
本発明によるレーザ測長計は、実施の形態6にて述べた、高精度の加工を必要とする各種装置にて利用でき、特に多倍長光路のレーザ測長計を用いる装置において、その測長精度や加工精度を大幅に向上することができる。
〔実施の形態8〕縮小投影露光装置の構成例
図24は、本発明によるレーザ測長計を、縮小投影露光装置(半導体ステッパ)に用いた場合の、装置の構成例である。ウエハ81およびレチクル82を搭載するステージは、除振台80上に設置され、装置外部から除振されている。露光光源83より出射された露光光84は、シャッタ85を通り、ビームベンダ4で反射され、装置上部へ導かれる。続いて、ビーム拡散手段86によりビーム径を広げられて、レンズ87を経て、レチクル82に照射される。レチクル82は、レチクルステージ88上に搭載されており、移動できるよう構成されている。レチクルステージ88は反射鏡8を備えており、その位置は、実施の形態1〜7に記したレーザ測長計を備える3つのレーザ測長ユニット89によって計測されており、ステージの変位と回転誤差を検知することができる。なお、レーザ測長ユニット89の内部には、干渉器と受光器が内蔵されており反射鏡までの距離を測定することができる。レチクル82を通過した露光光は、縮小投影レンズ90により、一定の縮尺に縮小された後、ウエハ81上に照射される。これによって、レチクル82上のパターンが、ウエハ81上へ投影される。露光の時間はシャッタ85の開閉により制御される。ウエハ81を搭載するウエハステージ91も、反射鏡8を備えており、その位置と回転誤差は、3つのレーザ測長ユニット89によって計測されている。レチクルステージ88とウエハステージ91は、モータによって移動できるほか、圧電素子によって微動できる、微動機構を備えていることが望ましい。ウエハとレチクルの精密な位置関係は、アライメント検出手段92によって検出される。アライメント検出手段92は、発光素子と受光素子を備え、ウエハ上やレチクル上にあらかじめ準備される位置合わせ用パターンを検出することで、パターンの位置関係のずれを、2nm以下の精度で正確に測定することができる。この最初の位置合わせ信号を基準として、ステージの移動を繰り返す。測長精度の高いレーザ測長計を用いることで、正確な位置合わせが可能となり、ウエハ上に露光するパターンの重合せ精度を上げることができる。なお、装置全体を排気手段93を用いて減圧できるように構成すると、露光光として、波長の短い真空紫外線を用いることができ、微細な加工が可能になる他、測長光路における空気の屈折率揺らぎの影響を防ぐことができるため、パターンの重ね合わせ精度を、さらに向上することができる。
また、露光装置として一まとめの装置を構成する場合、ステージの移動を含めて統一して制御できるので、あらかじめ装置の初期化時に、ステージの移動を行って、測長レーザ光の波長周期で発生する誤差を検知して、補正値をセットしておくことができる。この場合、補正値はかならずしも自動追従や自動フィードバックによる実時間更新を行わなくてよいため、補正値の生成手段・更新手段の構成がずっと簡素化できるという利点がある。
本発明によるレーザ測長計を装置に用いることで、特に利点が大きいのは、測長精度として2nm未満の精度が要求される、0.07μmルール幅以降の、微細な回路パターンの製造においてである。このルール幅の露光に必要な露光光の波長は、160nm以下になるものと予測され、そのような短い波長を用いる露光装置にて特に有用である。
〔実施の形態9〕電子線マスク描画装置の構成例
図25は、本発明によるレーザ測長計を電子線によるリソグラフィーマスク(レチクル)の描画装置に用いた場合の、装置の構成例である。装置は除振台80を備え、電子銃部100、ステージ部120、制御系130の大きく三部より成る。電子銃101と、加速電極102の間に高電圧を加えることで、電子線が発生する。この電子線を、成形偏向器103で第一成形マスク104の任意の位置に当て、一回目のビーム成形を行う。第一成形マスク104を通過した電子線は、成形レンズ105とブランキング電極106を通過した後、第二成形マスク107にてもう一度ビーム成形される。第二成形マスク107を通過した後、位置決め偏向器108により偏向され、対物レンズ109にて描画点へ向けて収束される。補助偏向電極110を通過した後、XYステージ121上に載置されたレチクル原盤122上に照射される。レチクル原盤122上に照射する位置を前記位置決め偏向器108と前記補助偏向電極110で選択し、前記ブランキング電極106に加える電圧を制御して電子線の照射をON・OFFすることで、レチクル原盤上に希望のパターンを描画する。これらの信号制御を、制御系130が行う。レチクル原盤上で描画する領域は、XYステージ121の移動により選択できる。XYステージ121の位置は、レーザ測長ユニット89で正確に測定する。このレーザ測長ユニットは、干渉器と受光器(光検出器)を内蔵しており、XYステージ121上の反射鏡8の変位を測定する。XYステージは、モータによって駆動される。XYステージの目標位置に対する制御誤差を、前記レーザ測長ユニットによって測定し、補助偏向電極110に加える電圧を制御して、偏向補正する。基板高さ検出器111が備えられており、レチクル原盤の高さの変化を検出して、前記対物レンズを調節し、基板上に照射される電子線を自動焦点制御することで、微細なパターンを解像度良く描画できる。レーザ測長ユニット89により測定される、光検出器の検出信号を、実施の形態1〜7に述べたレーザ測長計の信号処理方法を用いて処理することで、高精度な測長値を得ることができ、正確な位置検出が可能となる。これにより、レチクル原盤上に描画されるするパターンの描画精度を上げることができる。
本発明のレーザ測長計の効果は、XYステージを連続的に移動した状態で電子線を落射して描画するという、連続移動描画において特に高い効果が得られる。上記の電子線描画装置では、ステージの目標位置と、レーザ測長計で測定した現在位置に差があると、その差を電子線を曲げて偏向補正する。本発明のレーザ測長計における測長値の高精度化手法を用いていない場合は、ステージの移動に伴って、レーザ光の波長λの周期の誤差信号が偏向補正に加えられて、この測長誤差が直接、パターンの描画誤差となる。それに対し、本発明のレーザ測長計における高精度化手法を用いた場合は、λ周期の測長誤差が補正されるため、正常なパターンが描画される。また、平均化によるノイズ処理と異なり、レーザ測長計の光学誤差のみを選択的に取除くことができるため、その他(機械的な振動等)の信号については、周波数帯域を損なうことなく検知できる。このため、応答時間の遅れによる制御誤差を、最小限に抑えることができる。これによって、高い描画精度が実現できる。
また、電子線描画装置として一まとめの装置を構成する場合、ステージの移動を含めて制御を統一できるので、あらかじめ装置の初期化時にステージの移動を行って、測長レーザ光の波長周期で発生する誤差を検知して、補正値をセットしておくことができる。この場合、補正値はかならずしも自動追従や自動フィードバックによる実時間更新を行わなくてよいため、補正値の生成手段・更新手段の構成がずっと簡素化できるという利点がある。
本発明による補正の方法の原理を示す図である。 本発明による高精度測長系の、レーザ測長計・駆動系を含む全体構成を示す図である。 補正を行わずに、一定速度(毎秒5mm)で動かしたステージの変位を、レーザ測長計で測定した場合の、測長出力値の時間変化を示す図である。 補正を行わずに、一定速度(毎秒40mm)で動かしたステージの変位を、レーザ測長計で測定した場合の、測長出力値の時間変化を示す図である。 本発明による歪誤差補正処理手段の構成例における信号の流れ図を示す図である。 本発明による歪誤差補正処理手段の構成例で、高速性の要求される部分をハードウェアで構成した場合の、ハードウェア部の回路構成と、フィードバックの経路を示した図である。 本発明による歪誤差補正処理で、自動追従補正を可能とする比較的簡単な構成例を示す図である。 本発明による自動追従式歪誤差補正処理で用いる位相直交した2つの周期関数の例(実線と点線)を示す図である。 本発明による自動追従式歪誤差補正処理で用いる位相直交した2つの周期関数の例(実線と点線)を示す図である。 本発明による自動追従式歪誤差補正処理手段の構成例で、位相直交した2つの周期関数を用いる場合の例を示す図である。 本発明による自動追従式歪誤差補正処理手段の構成例で、3つ以上の数学的に直交した周期関数を用いる場合の例を示す図である。 図11の構成例にて用いる周期関数の群の一例を示す図である。 本発明による自動追従式歪誤差補正処理手段の構成例で、直交する複数の周期関数の振幅制御と、位相追従制御を組合せた場合の構成例を示す図である。 図13の構成例にて用いる周期関数の群の一例を示す図である。 本発明による歪補正処理手段と、平均化処理手段の組合せにおける信号処理の接続順を示す図である。 平均化処理手段にて処理される前の、ステージ静止時の座標変位信号の周波数スペクトルを示す図である。 歪誤差の自動追従補正処理において、ステージ移動速度が一定値以上の時のみ平均化処理の入力として参照する手段を備えた構成例を示す図である。 本発明によるレーザ測長計を、位相計測手段(位相計)を用いて構成する際の、全体構成例を示す図である。 位相量を変数として補正値を生成し、位相値に加算する補正方法による、レーザ測長計の全体構成例を示す図である。 位相量を変数として補正値を生成し、積算値に加算する補正方法による、レーザ測長計の全体構成例を示す図である。 n=4の測長光路を持つレーザ測長計の光学系における光誤差の発生を示す図である。 n=8の測長光路を持つレーザ測長計の光学系における光誤差の発生を示す図である。 1〜2n倍波までの周期関数の和を補正値として用いた場合の補正結果の実例である。 本発明によるレーザ測長計を用いた、露光装置の構成例である。 本発明によるレーザ測長計を用いた、電子線描画装置の構成例である。 補正値の自動追従を行って、更新し、高精度化を行う方法を用いた、本発明によるレーザ測長計の全体構成例である。 補正値の自動フィードバックを行って、高精度化を行う方法を用いた、本発明によるレーザ測長計の全体構成例である。 本発明によるレーザ測長計の測長出力値において、(a)本高精度化の方法を用いない場合と、(b)用いた場合の、測長出力値の周波数スペクトルの例を示す図である。
符号の説明
1…レーザ電源
2…気体レーザ光源
3…レーザ光
4…ビームベンダ
5…干渉器
6…ステージテーブル
7…ステージ駆動力源
8…反射鏡
9…受光器
10…測長ボード
11…測長値高精度化手段
12…パーソナルコンピュータ
13…測長出力値
14…波長周期数に対応した上位ビット
15…一波長周期中を分解した位置を示す下位ビット
16…位相加算器
17…位相シフト値
18…シフト後の位相値
19…メモリ機構
20…歪補正量
21…補正テーブル設定値
22…加減算器
23…歪補正された測長値
24…デュアルポートRAM
25…放物線成分抽出フィルタ
26…歪誤差信号
27…歪補正処理手段
28…平均化処理手段
29…高精度化された測長値
30…周期関数値
31…乗算器
32…成分相関値
33…時間平均フィルタ
34…平均成分強度
35…乗算器
36…位相直交周期関数値テーブル
37…位相直交周期関数値
38…乗算器
39…位相直交成分相関値
40…積分器
41…平均位相直交成分強度
42…乗算器
43…周期関数信号成分
44…位相直交周期信号成分
45…総加算器
46…総補正値
47…直交周期関数テーブル
48…直交周期関数テーブル
50…微分フィルタ
51、51a、51b…偏光ビームスプリッタ
52、52a、52b、52c…三角プリズム
53…λ/4板
54…光検出器の検出信号
55…位相検出手段
56…位相量
57…積算手段
58…積算値
59…補正値加算器
60…補正値
61…補正値生成手段
62…波長λ同期成分抽出手段
63…微分手段
64…更新許可信号
70…測長光路
71、72…端面反射光
80…除振台
81…ウエハ
82…レチクル
83…露光光源
84…露光光
85…シャッタ
86…ビーム拡散手段
87…レンズ
88…レチクルステージ
89…レーザ測長ユニット
90…縮小投影レンズ
91…ウエハーステージ
92…アライメント検出手段
93…排気手段
100…電子銃部
101…電子銃
102…加速電極
103…成形偏向器
104…第一成形マスク
105…成形レンズ
106…ブランキング電極
107…第二成形マスク
108…位置決め偏向器
109…対物レンズ
110…補助偏向電極
111…基盤高さ検出器
120…ステージ部
121…XYステージ
122…レチクル原盤
130…制御系

Claims (1)

  1. 試料を設置するための台と、前記試料に電子線を照射するための電子線源と、前記台の変位測定用のレーザ測長計と、前記レーザ測長計の測長値に基づいて電子線を偏向補正する偏向制御手段とより成る電子線描画装置において、
    前記台の連続移動中に電子線を照射して描画を行う機能を有し、かつ前記レーザ測長計より出力される測定出力値のうちの、レーザ光の波長周期に同期した信号成分を抑圧して、前記偏向制御手段に加える手段を備えることを特徴とする電子線描画装置。
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