JP3847517B2

JP3847517B2 - 光エネルギーによる樹脂製部品溶着方法

Info

Publication number: JP3847517B2
Application number: JP2000092813A
Authority: JP
Inventors: 昭伊藤; 英二間野; 茂樹菅原
Original assignee: Stanley Electric Co Ltd
Current assignee: Stanley Electric Co Ltd
Priority date: 2000-03-30
Filing date: 2000-03-30
Publication date: 2006-11-22
Anticipated expiration: 2020-03-30
Also published as: JP2001277364A

Description

【０００１】
【発明が属する技術分野】
本発明は、レーザー光などの光エネルギーを利用した、樹脂製部品の溶接（溶着）手段及び装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来の光エネルギー照射による樹脂製部品の溶接（溶着）工法における溶接（溶着）に適した部品形状、樹脂製部品の溶接（溶着）の原理を図３に沿って説明する。
【０００３】
接合する一方の部品は、光学的に透明（可視光に限定することなく特定の波長域の光エネルギー３６を透過することを含める）な熱可塑性樹脂製部品３１（以下光学的に透明な部品）であり、もう一方の部品は、光学的に不透明（特定の波長域の光エネルギー３６を吸収することを含める）な熱可塑性樹脂部品３２（以下光学的に不透明な部品）である。溶接（溶着）しようとする二つの部品を重ね合わせる。
【０００４】
溶接（溶着）に利用する光エネルギー３６は、光学的に透明な部分側から接合部３３の溶接（溶着）部３５に照射する。光エネルギー３６は光学的に透明な部分を透過して部品の接合部３３に到達し、光学的に不透明な部品の接合部３３で吸収される。光学的に不透明な部品の接合部３３は、光エネルギー３６によって加熱され溶融する。光学的に不透明な部品の溶融熱は、光学的に透明な部品３１の接合部３３に伝わり、光学的に透明な部品３１の接合部３３も溶融することで、二つの部品は溶着し接合される。
【０００５】
また、光エネルギー３６とは、工業用に広く使用されている様々な波長のレーザー（金属の切断や溶接、またはマーキングや光学反応に広く使用されているＹＡＧレーザー、半導体レーザー、固体レーザー及び気体レーザーなど）や、集光して半田付け装置などの部材の加熱に利用される光源（白熱電球球，ハロゲンランプ，放電ランプなど）より得られるものを指す。
【０００６】
次に溶接（溶着）に適した接合部４３の状態について図４にて説明する。溶接（溶着）工程は、部材（部品）の接合部４３ができる限り接している状態で行われることが望ましい。光エネルギー４６によって加熱された光学的に不透明な部品４２の接合部４３は膨張する。このため、ほんのわずかな部品間の隙間４７（一般的な熱可塑性樹脂部品を平面同士で合わせた時に生じるレベルの部品間の隙間）を埋め、本溶接（溶着）は成立している。
【０００７】
光エネルギー４６を与え続けると、光学的に不透明な部品４２は気化，分解を始める。これが溶着部４５を押し上げることで０．１［ｍｍ］程度の隙間４７を埋める現象が見られる場合がある。
【０００８】
しかし、それ以上のレベルの隙間４７があると、光学的に不透明な部品４２の接合部４３は、光学的に不透明な部品４２の接合部４３に達せず、溶融熱は伝わらない。よって、この場合は溶接（溶着）不良となる。
【０００９】
図５は接合部５３がリブ先端面の場合を示す図であり、図５に沿って従来の形状の欠点及びその理由について説明する。接合部５３がリブ先端面の場合に、必要とされる接合部５３の条件（精度）は、接続外形寸法、（特にこの場合は、径と肉厚、）嵌合度（接合部５３全周に亘って隙間がない）が条件となる。一般に熱可塑性樹脂の射出成形品においては、成形収縮率を予め見込んでおくことや、嵌合時に矯正することで、接続外形寸法の条件はある程度満足できる。しかし、嵌合度については満足させることが難しい。但し、図５のように接合部５３が平板の溶接（図３のような関係）と同等に単一平面を構成する場合は比較的満足させ易く、通常は溶接（溶着）は行い易い。
【００１０】
一方、図６では、一般的な熱可塑性樹脂の射出成形品を示す図であり、金型から製品を取り出すための突き出し部位を設けており、通常はその跡が製品に残る。図５のような場合は、型抜き性や意匠性を考慮して製品のリブ部先端（接合部５３）に突き出し部位を設けることが多いため、接合部６３に突き出し跡６８が残る可能性が高い。突き出し跡６８は製品にへこみ形状で残ることが多いため、この部分は接合部６３の隙間６７となり易い。よって前述した図３の状態に反するため、このような場合は本溶接（溶着）工程には不向きである。
【００１１】
また、図７では、接合部７３がリブ先端面の場合で単一平面でないような曲面を持つ場合を自動車用信号灯具を例にして示しその要部断面をＳＥＣＴＡ−Ａ、ＳＥＣＴＢ−Ｂ、ＳＥＣＴＣ−Ｃとした図である。接合部７３がリブ先端面の場合は、前述同様の部品関係であり、尚接合面が単一平面でない場合は、前述したように嵌合度を満足させることが難しくなることは容易に想像できる。図７の場合の接合部７３は曲面（特にＳＥＣＴＡ−Ａ等の場合）となるため、隙間が開きやすく一様な部品間の接合を得にくい。従って、前述したような状態に反するため、このような場合は本溶接（溶着）工程には不向きであった。
【００１２】
更に図８は、接合部８３がリブ壁面である場合を斜視図と断面図で示す図である。壁面を溶接（溶着）する接合部８３の位置関係の場合、前述の接続外形寸法、嵌合度を満足し易く、いわゆる「はめあい」の関係が作り易いため、リブ先端で接合させた場合に比べて接合部８３の隙間が矯正し易い。しかしながら、この場合の光エネルギー８６は側面からの照射となり、光エネルギー８６は光学的に透明な部品８１の外側（はめあいを逆にすれば内側）より照射する必要があるため、図７の断面のような製品には適用できなかった。従ってこの場合は意匠上の制約が欠点となっていた。
【００１３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したように、接合部がリブ先端面の場合は、前述同様の部品関係で、尚接合面が単一平面でない場合は、前述の嵌合度を満足させることが難しく、自動車用信号灯等の接合部は曲面となるため、隙間が開きやすく一様な部品間の接合を得にくく、そのため、接合部をリブ壁面とすると、光エネルギーは側面からの照射となり、光エネルギーは光学的に透明な部品の外側（はめあいを逆にすれば内側）より照射する必要があるため、接合部が曲面となる製品では意匠上の制約があり、それらを解決することを課題とするものである。
【００１４】
【課題を解決する手段】
他の樹脂部材と嵌合するためのリブを有する熱可塑性樹脂からなる透明樹脂部材と、前記リブと嵌合するためのハウジングを有する熱可塑性樹脂からなる他の樹脂部材とを接合する工程において、光エネルギー発生装置が、前記リブ側面に設けられた傾斜面に形成される光エネルギー反射面及びリブ底面方向に向けて、前記他の樹脂部材の吸収波長域に適合する一定波長域の光エネルギーを前記透明樹脂部材表面側から照射し、前記光エネルギー反射面が、前記照射された光エネルギーを前記リブ底面及びリブ側面方向に反射し、前記エネルギー反射面から反射した光エネルギー及び前記光エネルギー発生装置から照射された光エネルギーが、前記傾斜面と前記ハウジング底面に設けられた嵌合位置矯正リブとが嵌合することで接合した前記リブ及びハウジング双方の底面と側面とを溶着する、光エネルギーによる樹脂製部品溶着方法を提供することで課題を解決している。
【００１５】
他の樹脂部材と嵌合するリブ側面に傾斜面を有する熱可塑性の透明樹脂部材と、前記リブと嵌合するハウジングの底面に嵌合位置矯正リブを有する熱可塑性の他の樹脂部材とが溶着される樹脂製部品であって、当該透明樹脂部材表面側から直接照射された当該他の樹脂部材の吸収波長域に適合する一定波長域の光エネルギー及び前記傾斜面に設けられた光エネルギー反射面によって反射された前記光エネルギーを、前記傾斜面と前記嵌合位置矯正リブとが嵌合することで接合した前記リブ及びハウジング双方の底面並びに側面に照射して溶着される、樹脂製部品を提供することで課題を解決している。
【００１６】
【発明の実施形態】
本発明における実施形態を図１にて断面図及びそのＡ部詳細を示し説明する。図１の１は、熱可塑性樹脂からなる透明樹脂部材（以下光学的に透明な部品）であり、２は、熱可塑性樹脂からなる不透明樹脂部材（以下光学的に不透明な部品）である。尚３は、そのリブ壁面（側面）における接合部、３^'は、そのリブ底面における接合部、４は光エネルギ−発生装置、６は、光エネルギ−を示す。
【００１７】
図１においての光軸反射仕様について説明する。光軸反射面の設定は、光学的に透明な部品１のリブ先端に光エネルギー６の反射面９を設ける。この反射面は、光学的に透明な部品１のリブ先端に傾斜面として、光エネルギー６が反射するようにしている。この反射面９は、光学的に不透明な部品２の吸収波長域に適合する光エネルギ−６を選択して、その光エネルギ−６を反射すればよく、光学的反射物を薄膜として被覆しり、ただの傾斜面であっても選択された光エネルギ−６が反射するようであればよい。
【００１８】
嵌合位置矯正リブ１０の設定について説明する。リブ壁面における接合部３のはめあいが確実に行われることを目的として、嵌合位置矯正リブ１０を光学的に不透明な部品２の側に設ける。図１の要部断面に示すようにリブ底面における接合部３^’については、リブ底面にも幾ばくかの光エネルギー６が抜けるようにした底面の接合部３^’を設けている。
【００１９】
光軸反射面の設定では、前述に記すように、溶接（溶着）のリブ壁面の接合部３をリブ壁面とした方が、溶接（溶着）性は有利である。従って、接合面は壁面とする接合部３となる。その上で、欠点である『意匠上の制約』を解決するために、光エネルギー６を光学的に透明な部品１の上側から照射する。しかし、通常の形状での光エネルギー６は壁面反射による導光１１などにより、リブを通過して下側に抜けてしまうため、リブ先端に光エネルギー６の反射面９を設け、光軸を曲げることでハウジング壁面の接合部３に光エネルギー６を照射し、リブ壁面での溶接（溶着）５を可能に出来る。
【００２０】
嵌合位置矯正リブ１０は、リブ壁面における接合部３のはめあいが確実に行われることを目的として、嵌合位置矯正リブ１０を光学的に不透明な部品２の側に設け、１、２の部品同士の嵌合を補助するために、通常は部品のあわせ方向に外力を加える。嵌合位置矯正リブ１０は、光学的に透明な部品１のリブ壁面の接合部３を光学的に不透明な部品２の同一部分に押さえつける方向に変えるため、リブ壁面の接合部３の「はめあい」を助けることとなる。
【００２１】
反射面９を設けたことで、光学的に透明な部品１から照射される光エネルギー６のほとんどは、光学的に不透明な部品２のリブにおける壁面に設けられた接合部３に到達する。しかし、リブ底面にも幾ばくかの光エネルギー６が抜けるようになっており、リブの底面における接合部３^'を設ける。こうすることで接合部の断面はＬ字構造型となるため、従来の接合仕様（断面が−字またはＩ字、いずれにしても直線）よりも溶接（溶着）部位の強度が大きくなることが期待できる。
【００２２】
以上の結果、意匠上の制約を減らしながら、安定して高品質な溶接（溶着）状態を保ち、尚且つ従来品に比べより溶接（溶着）強度を上げられる部品形状が提供できる。また、ここでは反射面を透明樹脂部材のリブ先端として断面図に示される傾斜面に設け、底面は反射面を持たないものとしている。更に、反射面を作製するにあたり、一定波長域の光エネルギ−が反射できればどのような手段を用いてもよい。例えば、反射面作製方法として光学的反射物を被覆してもよくそれが、光学的反射膜であれば、塗布、蒸着、メッキ等どのような手段で被覆しても良い。
【００２３】
次に、光エネルギ−による樹脂製品溶着装置について、図２にて説明する。光エネルギ−発生装置２４を備え、それは、工業用に広く使用されている様々な波長のレーザー（金属の切断や溶接、またはマーキングや光学反応に広く使用されているＹＡＧレーザー、半導体レーザー、固体レーザー、及び気体レーザーなど）や、集光して半田付け装置などの部材の加熱に利用される光源（白熱電球，ハロゲンランプ，放電ランプなど）より形成されている。次に光エネルギ−発生装置２４と、熱可塑性樹脂からなる不透明樹脂部材２２（以下不透明な部品）の吸収波長域に適合する一定波長の光エネルギ−２６をそのつど選択できる光エネルギ−選択装置を備えており、不透明な部品２２の吸収端を測定し、光エネルギ−選択装置によって不透明な部品２２に適合する一定波長域の光エネルギ−２６を選択する。この時、必ずしも不透明な部品２２の吸収端を測定する必要はない。何故なら、複数の不透明な部品２２が予め定められたものであれば、その不透明な部品２２が選択されるたびに、その不透明な部品２２の吸収波長域に適合する一定波長の光エネルギ−が照射される、光エネルギ−２６を光エネルギ−選択装置にプログラムしておけばよいからである。
【００２４】
次に用意された不透明な部品２２のハウジングの壁と透明な部品２１のリブとが嵌合する部分を接合するため、透明な部品２１の上側から光エネルギ−選択装置によって選択された光エネルギ−２６を照射する。リブ先端の接合部２３、２３^’に光エネルギ−２６を集めて溶融するＬ字型の溶着部を形成することで樹脂製部品溶着装置が形成されている。
【００２５】
従って、このような光エネルギ−による樹脂製部品溶着装置を開発することで意匠上の制約を減らしながら、安定して高品質な溶接（溶着）状態を保ち、尚且つ従来品に比べより溶接（溶着）強度を上げられる部品形状が提供できる。また、前記の傾斜面は光エネルギ−が反射できればよく必ずしも傾斜面に被覆しなくともよい。また傾斜面に被覆する反射膜は、特に限定されるものではない。
【００２６】
更にここでは、一方を透明部材とし他方を不透明部材として説明してきたが、透明部材同士を溶接する場合は、光エネルギ−を照射しない側の部材の背面側に光エネルギ−の吸収波長域を有する物を置いて溶接している。この場合においても透明部材は、熱可塑性樹脂からなり、互いに嵌合するように一方の透明部材に前述同様にリブを設けるなどしてもよい。このように、基本的な構造は前述同様なので省略している。
【００２７】
【発明の効果】
光エネルギ−による樹脂製部品溶着方法及び光エネルギ−による樹脂製部品溶着装置を提供することで自動車用信号灯具のような接合部が曲面であっても、隙間が設けられることなく意匠上の制約を減らしながら、安定して高品質な溶接（溶着）状態を保ち、尚且つ従来品に比べより溶接（溶着）強度を上げられる部品形状が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の光エネルギ−による樹脂製品溶着方法を示す断面図及びその要部としてＡ部詳細を示す図である。
【図２】本発明の光エネルギ−による樹脂製品溶着装置を簡略化して示した図である。
【図３】従来の光エネルギー照射による樹脂製部品の溶接（溶着）工法における溶接（溶着）に適した部品形状、樹脂製部品の溶接（溶着）の原理を示す図である。
【図４】従来の樹脂製品に適した接合部の状態を示す図である。
【図５】従来の樹脂製品の接合部がリブ先端で単一平面の場合における斜視図及び断面図を示す図である。
【図６】従来の樹脂製品の一般的な射出成形品を示す図である。
【図７】従来の樹脂製品の接合部がリブ先端面の場合で単一平面でないような曲面を持つ場合を自動車用信号灯具を例にして示した図である。
【図８】従来の樹脂製品の、接合部がリブ壁面である場合を斜視図と断面図で示す図である。
【符号の説明】
１．２１．３１．４１．５１．６１．７１．８１…熱可塑性樹脂からなる透明樹脂部材（光学的に透明な部品）
２．２２．３２．４２．５２．６２．７２．８２…熱可塑性樹脂からなる不透明樹脂部材（光学的に不透明な部品）
３．２３．…リブ壁面（側面）における接合部（ハウジング壁面（側面）における接合部）
３^’．２３^’…リブ底面における接合部（ハウジング底面における接合部）
４．２４．３４．５４．８４…光エネルギ−発生装置
５．３５．４５…溶接（溶着）部
６．２６．３６．４６．５６．８６…光エネルギ−
９．２９…光エネルギ−反射面
１０．２０…嵌合位置矯正リブ
１１…壁面反射による導光
１２…反射面による反射
３３．４３．５３．６３．７３．８３…接合部
４７．６７…隙間
６８…突き出し跡

Claims

他の樹脂部材と嵌合するためのリブを有する熱可塑性樹脂からなる透明樹脂部材と、前記リブと嵌合するためのハウジングを有する熱可塑性樹脂からなる他の樹脂部材とを接合する工程において、
光エネルギー発生装置が、前記リブ側面に設けられた傾斜面に形成される光エネルギー反射面及びリブ底面方向に向けて、前記他の樹脂部材の吸収波長域に適合する一定波長域の光エネルギーを前記透明樹脂部材表面側から照射し、
前記光エネルギー反射面が、前記照射された光エネルギーを前記リブ底面及びリブ側面方向に反射し、
前記エネルギー反射面から反射した光エネルギー及び前記光エネルギー発生装置から照射された光エネルギーが、前記傾斜面と前記ハウジング底面に設けられた嵌合位置矯正リブとが嵌合することで接合した前記リブ及びハウジング双方の底面と側面とを溶着する、光エネルギーによる樹脂製部品溶着方法。
前記光エネルギー反射面が、
選択された光エネルギーを反射する光学的反射物で被覆されている、請求項１記載の光エネルギーによる樹脂製部品溶着方法。
他の樹脂部材と嵌合するリブ側面に傾斜面を有する熱可塑性の透明樹脂部材と、前記リブと嵌合するハウジングの底面に嵌合位置矯正リブを有する熱可塑性の他の樹脂部材とが溶着される樹脂製部品であって、
当該透明樹脂部材表面側から直接照射された当該他の樹脂部材の吸収波長域に適合する一定波長域の光エネルギー及び前記傾斜面に設けられた光エネルギー反射面によって反射された前記光エネルギーを、前記傾斜面と前記嵌合位置矯正リブとが嵌合することで接合した前記リブ及びハウジング双方の底面並びに側面に照射して溶着される、樹脂製部品。