JP3846386B2 - ガスセンサ素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,自動車用内燃機関の燃焼制御等に用いるガスセンサに内蔵されるガスセンサ素子に関する。
【0002】
【従来技術】
自動車エンジンの燃焼制御等に用いるガスセンサに内蔵されるガスセンサ素子として,例えば特許公報第2885336号等,多くの構成の素子が知られている。
その中の一例として以下に説明する素子が知られている。
【0003】
すなわち,図17に示すごとく,ヒータ基板15と,該ヒータ基板15に設けた通電により発熱する発熱体61と,該発熱体61と電気的に導通するヒータリード(図示略)とを有するヒータ部6と,基準ガスを導入する基準ガス室140用のスペーサ14と,ポンプセル2を形成するポンプセル用固体電解質板13と,外部から被測定ガスを導入する被測定ガス室122用のスペーサ12と,センサセル4やモニタセル3を形成する別の固体電解質板11と,更に別の基準ガス室160用のスペーサ16を積層して構成するガスセンサ素子9である。
【0004】
ここにセンサセル4とは,被測定ガス中のNOx濃度等の特定ガス濃度を測定するセルであり,モニタセル3とは被測定ガス中の酸素濃度をモニタリングするセルである。また,図18に示すごとく,ポンプセル2のポンプリード211,221は,ポンプセル用固体電解質板13の幅方向中央に設けてある。
【0005】
センサセル4を構成する電極の一方は被測定ガス室122に対面し,被測定ガス室122内の特定ガスを電極表面で分解し,発生した酸素イオンからなる電流を利用して特定ガス濃度の測定を行う。モニタセル3も同様に被測定ガス室122に対面する電極を有し,該電極表面で酸素をイオン化し,発生した酸素イオンからなる電流を利用して酸素濃度の測定を行う。
【0006】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記モニタセル3,センサセル4に流れる電流は非常に微弱で,通常は10μA以下である。そして,ヒータ部6の発熱体61やヒータリードに流れる電流は10A以下と非常に大きい。
【0007】
多くのガスセンサ素子において,ヒータ部6とセンサセル4やモニタセル3の電極との間には絶縁材料(図17にかかる構成ではスペーサ14やスペーサ12を絶縁材料で構成することができる)などが介在し,ヒータ部6とセンサセル4及びモニタセル3との間に形成される電気的経路の電気抵抗を高めてはいるが,ヒータ部6とセンサセル4及びモニタセル3との間でのリーク電流をゼロにすることはできない。
そして,上記センサセル4やモニタセル3を流れる酸素イオンからなる電流は上述したように非常に微弱であるため,僅かのリーク電流による影響も無視できず,リーク電流がガスセンサ素子の測定精度低下の原因となる。
【0008】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,ヒータ部からのリーク電流による測定精度の低下が生じ難いガスセンサ素子を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
第1の発明は,ヒータ基板と,該ヒータ基板に設けた通電により発熱する発熱体と,該発熱体とヒータリードを介して電気的に導通するヒータ端子とを有するヒータ部と,
外部から被測定ガスを導入する被測定ガス室用のスペーサと,
基準ガスを導入する基準ガス室用のスペーサと,
一対の電極を設けて,該一対の電極間を流れる酸素イオンによる微弱電流に基づいて特定ガス濃度を検出する電気化学的セルを有する固体電解質板とを積層して構成し,
上記ヒータ部と上記電気化学的セルとの間の電気的経路の途中に,上記ヒータ部からのリーク電流を上記電気化学的セル以外に導出するリーク電流用導電路を設けてなるガスセンサ素子において,
該ガスセンサ素子は,ポンプセル用固体電解質板と該ポンプセル用固体電解質板に設けた一対のポンプ電極よりなると共に上記被測定ガス室に対し酸素をポンピングするポンプセルを有し,
上記ポンプセル用固体電解質板は上記一対のポンプ電極と電気的に導通するポンプリードを有し,該ポンプリードは上記ガスセンサ素子の外部に露出するよう設けた端子と電気的に導通し,
上記リーク電流用導電路は上記ポンプリードよりなることを特徴とするガスセンサ素子にある(請求項1)。
【0010】
本発明にかかるガスセンサ素子は,ヒータ部と電気化学的セルとの間で,リーク電流の経路となる可能性のある場所,すなわち電気的経路の途中にリーク電流用の導電路を設けてある。従って,リーク電流はリーク電流用導電路を伝って導出され,電気化学的セルに到達しない。
なお,電気的経路はヒータ部と電気化学的セルとの間に存在する固体電解質板を含む固体部分となる。後述する実施例1に記載するように絶縁性の材料がヒータ部と電気化学的セルとの間に存在する場合でも,この絶縁性の材料の部分でさえ微弱なリーク電流の流れる可能性があり,電気的経路となりうる。
【0011】
以上,本発明によれば,ヒータ部からのリーク電流による測定精度の低下が生じ難いガスセンサ素子を提供することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる電気化学的セルは,電極間に流れる酸素イオン電流の大きさが10μA以下となるセルである。後述する実施例1にかかるNOxと酸素濃度,λ点を測定するガスセンサ素子では,被測定ガス中のNOx濃度を測定するセンサセルと,被測定ガス中の酸素濃度をモニタリングするモニタセル,ガスセンサ素子の外部の被測定ガスを利用してλ点を検知するλセルが請求項1における『一対の電極間を流れる酸素イオンによる微弱電流に基づいて上記被測定ガス室における特定ガス濃度を検出する電気化学的セル』に該当する。
【0013】
また,上記NOx濃度以外にもHC濃度やCO濃度を測定するガスセンサ素子に本発明を適用することもできる。その場合,HC濃度やCO濃度を測定するセンサセルが請求項1における『一対の電極間を流れる酸素イオンによる微弱電流に基づいて上記被測定ガス室における特定ガス濃度を検出する電気化学的セル』に該当する。
【0014】
また,酸素濃度を測定するガスセンサ素子が有する,被測定ガス中の酸素濃度を測定する酸素センサセルも本発明にかかる電気化学的セルに該当する。
この酸素センサセルの場合,被測定ガス室と基準ガス室にそれぞれ対面する電極を備え,両電極によって生じる起電力から酸素濃度を測定する構成のセルと,両電極に電圧を印加して発生する限界電流から酸素濃度を測定する構成のセルとがある。
【0015】
また上記リーク電流用導電路は,電気的経路となる箇所を横切るなど,部分的に電気的経路と重なるように設けることで本発明の効果を得ることができる。
また,リーク電流用導電路をアースすることで,リーク電流をより確実にリーク電流用導電路側へ流してやることができる。またリーク電流用の導電路は,リーク電流が流れる電気的経路よりも,電気抵抗の低い材料で構成することが望ましい。また,電気の良導体で構成してやることがより望ましい。
【0016】
上記のごとく,上記ガスセンサ素子は,ポンプセル用固体電解質板と該ポンプセル用固体電解質板に設けた一対のポンプ電極よりなり,上記被測定ガス室に対し酸素をポンピングするポンプセルを有し,
上記ポンプセル用固体電解質板は上記一対のポンプ電極と電気的に導通するポンプリードを有し,該ポンプリードは上記ガスセンサ素子の外部に露出するよう設けた端子と電気的に導通し,
上記リーク電流用導電路は上記ポンプリードよりなる
【0017】
ポンプセルに流れる電流は通常10mA以下であり(mAオーダーである),仮にリーク電流が流れ込んでも無視できる。さらにポンプセルの役割は被測定ガス室に酸素を出し入れして,被測定ガス室内の酸素濃度を所定値に調整する,または被測定ガス室より酸素を排出して限りなく0に近い状態とすることである。よって,ポンプセルに流れる電流の大小はガスセンサ素子の測定精度にあまり関係がない。
そのため,リーク電流用導電路をポンプリードで兼用させてもポンプセルの動作に影響がなく,従来構成の素子からの仕様変更が最小限で済み,別部材で設ける場合よりも部品点数を少なく出来るため製造コストなどの面で有利となる。
【0018】
なお,ポンプリードはポンプセルのポンプ電極と,ポンプセル駆動用の電源等を接続するためにガスセンサ素子の外部に露出する端子との間を結ぶ導電路として使用する。
【0019】
また,上記ヒータ部,上記基準ガス室用のスペーサ,上記ポンプセル用固体電解質板,上記被測定ガス室用スペーサとがそれぞれ隣接して積層され,
ガスセンサ素子の一方の外側面と基準ガス室の内側面との間に位置する上記ポンプセル用固体電解質板と上記基準ガス室用のスペーサとの第1の境界面に一方のポンプリードを配置し,
ガスセンサ素子の他方の外側面と被測定ガス室の内側面との間に位置する上記ポンプセル用固体電解質板と上記被測定ガス室用のスペーサとの第2の境界面に他方のポンプリードを配置することが好ましい(請求項)。
【0020】
上述した順番でスペーサやポンプセル用固体電解質板が積層される場合,ヒータ部からのリーク電流は,上記積層方向に,基準ガス室用のスペーサ,ポンプセル用固体電解質板,被測定ガス室用スペーサを経て,電気化学的セルを設けた固体電解質板に到達する。
よって,上記第1と第2境界面は,ヒータ部と電気化学的セルとの間の電気的経路を横断する位置にある。ここにそれぞれポンプリードを配置することで,リーク電流をポンプリードに流してやり,リーク電流の電気化学的セルへの到達を防止できる。
【0021】
また,上記ガスセンサ素子の長手方向と直交する幅方向に沿った上記第1の境界面の最小幅をA,上記幅方向に沿った上記第1の境界面に配置したポンプリードの最大幅をa,
上記幅方向に沿った第2の境界面の最小幅をC,上記幅方向に沿った上記第2の境界面に配置したポンプリードの最大幅をcとすると,0.1≦a/A,0.1≦c/Cであることが好ましい(請求項)。
これにより,より効果的にリーク電流が流せるポンプリードを得ることができる。
a/A,c/Cが0.1未満である場合は,細すぎてリーク電流が流れ難くなるおそれがある。
また,a/A,c/Cの上限は0.99とすることが好ましい。
これより大きい場合は,ガスセンサ素子の外側から被測定ガスが電流経路である被測定ガス室に入り込み,ポンプセルで(センサセルにおける特定ガス濃度の測定を妨害する)妨害ガスである酸素を充分に排出できないなどポンピングが不十分となるおそがある。また,センサセルにおいて濃度を測定する特定ガスの濃度が変動するおそれもある。また,第1の境界面や第2の境界面において剥離が生じるおそれもある。
さらに,ポンプリードは,ガスセンサ素子の外側の表面で,被測定ガスと接触しないように,埋設形成することが好ましい。
【0022】
第2の発明は,ヒータ基板と,該ヒータ基板に設けた通電により発熱する発熱体と,該発熱体とヒータリードを介して電気的に導通するヒータ端子とを有するヒータ部と,
外部から被測定ガスを導入する被測定ガス室用のスペーサと,
基準ガスを導入する基準ガス室用のスペーサと,
一対の電極を設けて,該一対の電極間を流れる酸素イオンによる微弱電流に基づいて特定ガス濃度を検出する電気化学的セルを有する固体電解質板とを積層して構成し,
上記ヒータ部と上記電気化学的セルとの間の電気的経路の途中に,上記ヒータ部からのリーク電流を上記電気化学的セル以外に導出するリーク電流用導電路を設けてなるガスセンサ素子において,
ガスセンサ素子は,ポンプセル用固体電解質板と該ポンプセル用固体電解質板に設けた一対のポンプ電極よりなると共に上記被測定ガス室に対し酸素をポンピングするポンプセルを有し,
また上記ポンプ電極は,上記ポンプセル用固体電解質板に上記電気化学セルにかかる一対の電極を投影した電極投影面を覆うように構成し,
上記リーク電流用導電路は上記ポンプ電極よりなることを特徴とするガスセンサ素子にある(請求項)。
【0023】
ポンプ電極を延設することで,リーク電流の電気的経路をポンプ電極が横断する位置関係を得る。
ポンプセルに流れる電流は通常10mA以下であり(mAオーダーである),仮にリーク電流が流れ込んでも無視できる。さらにポンプセルの役割は被測定ガス室に酸素を出し入れして,被測定ガス室内の酸素濃度を所定値に調整する,または被測定ガス室より酸素を排出して限りなく0に近い状態とすることである。よって,ポンプセルに流れる電流の大小はガスセンサ素子の測定精度にあまり関係がない。
そのため,リーク電流用導電路をポンプ電極で兼用させてもポンプセルの動作に影響がなく,従来構成の素子からの仕様変更が最小限で済み,別部材で設ける場合よりも部品点数を少なく出来るため製造コストなどの面で有利となる。
なお,1対のポンプ電極の中で少なくとも1枚の電極を上述したような構成とすることで本発明にかかる効果を得ることができる。
【0024】
また,上記リーク電流導電路は,上記ヒータ部に絶縁板を介して積層した導電層よりなることもできる
これにより,ヒータ部と電気化学的セルとの間の電気的経路を導電層が横断し,リーク電流は導電層を流れて,電気化学的セルに達しない。
よって,本発明にかかる効果をより確実に得ることができる。
【0025】
また,上記ガスセンサ素子の長手方向と直交する幅方向に沿った上記ガスセンサ素子の幅をB,上記導電層の幅をbとすると,0.5≦b/Bであることが好ましい
これにより,より効果的にリーク電流を導電層に流してやることができる。
b/Bが0.1未満である場合は,導電層の幅が細すぎて,リーク電流が流れ難くなるおそれがある。
また,b/Bの上限は0.99であり,これより大きい場合は導電層を設けた部分でガスセンサ素子の剥離が生じるおそれがある。
なお,bやBは平均値である。
【0026】
また,上記リーク電流用導電路は,少なくとも貴金属を含む材料よりなる,または貴金属とセラミックとを含むサーメットよりなることが好ましい。
これにより,リーク電流が流れやすい良導体のリーク電流導電路を得ることができる。
また,上記貴金属としては,Pt,Au,Rh,Pdを用いることができる。上記セラミックとしては,アルミナ,ジルコニア等を用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下に,図面を用いて本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本例のガスセンサ素子1は,図1〜図6に示すごとく,ヒータ基板15と,該ヒータ基板15に設けた通電により発熱する発熱体61と,該発熱体61とヒータリード611を介して電気的に導通するヒータ端子613とを有するヒータ部6と,外部から被測定ガスを導入する被測定ガス室用のスペーサ12と,基準ガスを導入する基準ガス室用のスペーサ14,16と,一対の電極を設けて,該一対の電極間を流れる酸素イオンによる微弱電流に基づいて特定ガス濃度を検出する電気化学的セルであるモニタセル3,センサセル4,λセル5を持つ固体電解質板11とを積層して構成する。
【0028】
そして,上記ヒータ部6と上記モニタセル3,センサセル4,λセル5との間における電気的経路の途中に,上記ヒータ部6より流れ出すリーク電流19を外部に導出するリーク電流用導電路を設ける。
なお,本例のリーク電流用導電路は後述するポンプリード211,221からなる。
【0029】
以下,詳細に説明する。
本例のガスセンサ素子1は,自動車エンジンの排気系に設置してエンジンの燃焼制御に利用するガスセンサに内蔵して用いる。そして,排気ガス中のNOx濃度を測定し,また酸素濃度を測定し,またエンジンにおけるλ点(理論空燃比点)を検出する。
【0030】
図1に示すごとく,本例は,図面下方から順にヒータ部6,第1基準ガス室140用スペーサ14,ポンプセル用固体電解板13,第1及び第2被測定ガス室121,122形成用スペーサ12,固体電解質板11,第2基準ガス室160形成用スペーサ16及び拡散抵抗層17を順に積層して構成したガスセンサ素子1である。
第1及び第2被測定ガス室121,122には外部から排気ガスを導入し,第1及び第2基準ガス室140,160には大気を導入する。
【0031】
ガスセンサ素子1は,第1及び第2被測定ガス室121,122と第1及び第2基準ガス室140,160を備え,第1被測定ガス室121に対して酸素をポンピングするポンプセル2,第2被測定ガス室122の酸素濃度を監視するモニタセル3,第2被測定ガス室122のNOx濃度を検知するセンサセル4,ガスセンサ素子1外部の被測定ガス中の酸素濃度に基づいてエンジンのλ点を検出するλセル5を有する。
【0032】
固体電解質板11,ポンプセル用固体電解質板13,スペーサ12との間に第1及び第2被測定ガス室121,122が形成され,第1被測定ガス室121は,固体電解質板11に設けた導入穴10において外部と連通する。第1被測定ガス室121と第2被測定ガス室122との間には拡散通路120を設ける。
また,本例のガスセンサ素子1は,上記固体電解質板11の導入穴10を覆う拡散抵抗層17を有し,該拡散抵抗層17と隣接して,第2基準ガス室160を形成するスペーサ16を配置する。
また,ポンプセル用固体電解質板13,スペーサ14,ヒータ部6との間に第1基準ガス室140が形成される。
【0033】
上記ヒータ部6は,ヒータ基板15と該ヒータ基板15上に設けた発熱体61を有する。
そして,上記固体電解質板11,ポンプセル用固体電解質板13はジルコニアセラミック,ヒータ基板15,スペーサ14,12,16,拡散抵抗層17は絶縁性のアルミナセラミックよりなる。
【0034】
図1,図2に示すごとく,上記ポンプセル2はポンプセル用固体電解質板13に設けた第1被測定ガス室121と対面する第1ポンプ電極21,第1基準ガス室140と対面する第2ポンプ電極22とよりなる。両電極21,22は可変電源251及び電流計252を備えたポンプ回路25に接続される。
【0035】
上記モニタセル3は固体電解質板11に設けた第2被測定ガス室122と対面する被測定ガス側電極32,第2基準ガス室160と対面する基準電極31とよりなる。両電極31,32は電源351及び電流計352を備えたモニタ回路35に接続される。
そして,モニタセル3でポンプセル2の動作を制御するため,電流計352から電源251に向かうフィードバック回路255を設ける。
【0036】
上記センサセル4は固体電解質板11に設けた第2被測定ガス室122と対面する被測定ガス側電極42,第2基準ガス室160と対面する基準電極41とよりなる。両電極41,42は電源451及び電流計452を備えたセンサ回路45に接続する。
【0037】
図1に示すごとく,上記λセル5は固体電解質板11と拡散抵抗層17との間に設け,拡散抵抗層17を通じて素子外部の被測定ガスに接する被測定ガス側電極52,第2基準ガス室160と対面する基準電極51とよりなる。両電極51,52は電圧計552を備えたλセル回路55に接続する。
また,ヒータ部6にかかる発熱体61は,後述するヒータリードや端子を通じて電源651を備えたヒータ回路65に接続する。
モニタセル3,センサセル4,λセル5の基準電極31,41,51は,図1,図5(b)に示すごとく一体に形成された共通電極よりなる。
また,電源351,451は0.4V,可変電源251は0.3V〜0.5V,電源651は0〜16Vという電圧を各セル2,3,4や発熱体61に付与する。
【0038】
図4(a)はガスセンサ素子1を拡散抵抗層17とスペーサ16側から見下ろした平面図,図4(b)はガスセンサ素子1の側面図,図4(c)はガスセンサ素子1をヒータ部6側から見上げた平面図である。
拡散抵抗層17,スペーサ16側では端子312,523,423,323が露出し,ヒータ部6側では端子613,213,223がそれぞれガスセンサ素子1の素子外部に露出する。これらの端子よりヒータ部6,ポンプセル2,モニタセル3,センサセル4,λセル5にかかる各回路65,25,35,45,55が接続される。
【0039】
図5,図6はガスセンサ素子1を構成する各固体電解質板11等の平面図である。(表)と記した図は図1の拡散抵抗層17,スペーサ16側から見下ろした状態を,(裏)と記した図は図1のヒータ部6側から見上げた状態を記載した図面である。
【0040】
図5(a)は,拡散抵抗層17と基準ガス室用スペーサ16で,該スペーサ16は,楕円形の基準ガス室160と該基準ガス室160に外部から大気を導入する導入路161を有する。
図5(b)は,固体電解質板11の表側で,λセル5の被測定ガス側電極52と,モニタセル3,センサセル4,λセル5の基準電極31,41,51を兼用する共通電極がある。また,被測定ガス側電極52と一体のλセルリード521,端子523を,共通電極と一体の共通リード311,端子312がある。また,図5(c)の端子322,422と導電スルーホールで導通した端子323,423がある。
【0041】
図5(c)は,固体電解質板11の裏側で,モニタセル3,センサセル4の被測定ガス側電極32,42がある。また,被測定ガス側電極32,42とそれぞれ一体のモニタセルリード321,センサセルリード421,端子322,422がある。
また,端子322,422は導電スルーホールによって,図4(a)に示すごとく,ガスセンサ素子1の外部に露出する面に設けた端子323,423と導通する。
図5(d)は,スペーサ12の表側で,第1被測定ガス室121,第2被測定ガス室122,両者を連通させる拡散通路120がある。
【0042】
また,図6(a),(b)に示すごとく,ポンプセル用固体電解室板13は第1,第2ポンプ電極21,22と一体のポンプリード211,221を有する。各ポンプリード211,221はポンプセル用固体電解質板13の縁側で,図2,図3より明らかであるが,スペーサ14と固体電解質板13,固体電解質板13とスペーサ12との間に形成される第1及び第2の境界面105,106にそれぞれ配置される。
【0043】
上記ポンプリード211について説明する。
図2,図3に示すごとく,ガスセンサ素子1の長手方向と直交する幅方向に沿ったガスセンサ素子1の外側面101と基準ガス室140の内側面102との間で,スペーサ14とポンプセル用固体電解質板13との間に第1の境界面105が形成される。外側面101とは別の外側面102と被測定ガス室122の内側面104との間で,スペーサ12とポンプセル用固体電解質板13との間に第2の境界面106が形成される。
【0044】
第1の境界面105の最小幅をA,上記幅方向に沿ったポンプリード221の最大幅をaとすると,0.1≦a/Aが成り立つ。
第2の境界面106の最小幅をC,上記幅方向に沿ったポンプリード211の最大幅をcとすると,0.1≦c/C,が成り立つ。
また,ポンプリード211,221は,ガスセンサ素子1外部に露出したヒータ基板15の端子213,223に導電スルーホールによって電気的に接続される。
【0045】
図6(c)は,スペーサ14の表側で,基準ガス室140がある。
図6(d)は,ヒータ基板15の表側で,発熱体61と該発熱体61と一体に形成したヒータリード611,端子612がある。端子612は導電スルーホールによって,図4に示すごとく,ヒータ基板15の裏側で,ガスセンサ素子1の外部に露出する面に設けた端子613と導通する。
【0046】
ガスセンサ素子1において,リーク電流19は図2に示すごとくスペーサ14,ポンプセル用固体電解質板13,スペーサ12,固体電解質板11を通じて電気化学的セルであるモニタセル3,センサセル4,λセル5に向かう。
本例にかかるガスセンサ素子1では,ポンプリード211,221を図2,図3に示す位置に設けたため,ポンプリード211,221がヒータ部6と上記電気化学的セルとの間の電気的経路を横断する位置関係となる。従って,ヒータ部6からのリーク電流19を電気化学的セル以外に導出するリーク電流用導電路としてポンプセル2のポンプリード211,221が機能する。
【0047】
なお,第1ポンプ電極21,被測定ガス側電極32はNOxに対して不活性なPt−Au電極よりなる。Auの含有率は3wt%である。被測定ガス側電極42はNOxに対して活性なPt−Rh電極よりなる。その他の電極22,31,41,51,52はPt電極である。
【0048】
本例にかかるガスセンサ素子1と従来構成の素子とを性能比較した。
従来構成にかかるガスセンサ素子9として,図17,図18を準備した。
長手方向の断面図は実施例1の図1と同様であるが,A−Aにかかる断面は図17に示す状態である。またポンプセル用固体電解質板13の表側や裏側は図18に示す状態である。このように,従来構成にかかるガスセンサ素子9は,ポンプリード211,221はポンプセル用固体電解質板13の中央にある。
【0049】
このため,ヒータ部6からのリーク電流19は,図17に示すごとく,ヒータ部6からスペーサ14,固体電解質板13,スペーサ12,固体電解質板11を経てモニタセル3やセンサセル4,図示を略したλセルに流れ込む。
【0050】
従来構成のガスセンサ素子9と本例にかかるガスセンサ素子1のセンサセル4に対してオフセット電流の温度依存性について測定したところ,図7に示す結果を得た。
ここにオフセット電流とは被測定ガスのNOx濃度がゼロである場合のセンサセル4における電流値である。本来NOx濃度がゼロであればセンサセル4に酸素イオン電流は流れないはずであるが,実際は第2被測定ガス室122の残存酸素によって所定の電流が流れる。
【0051】
また,リーク電流の経路の電気抵抗は温度が高くなればなるほど低くなり,より大きなリーク電流がセンサセル4に流れ込むと考えられる。
よって,リーク電流が流れ込む構造である従来タイプのガスセンサ素子9では素子の温度と共にオフセット電流が増大する。
反対に本例にかかるガスセンサ素子1はリーク電流がポンプリード211,221に流れ込むため,素子の温度が上昇しても,オフセット電流の値は殆ど変化しない。
【0052】
このように,本例にかかるガスセンサ素子1は,ヒータ部6と電気化学的セルであるモニタセル3,センサセル4,λセル5との間で,リーク電流の経路となる第1や第2の境界面105,106にリーク電流用の導電路となるポンプリード211,221を設けてある。
従って,リーク電流はリーク電流用導電路であるポンプリード211,221を伝って導出され,電気化学的セルとなるモニタセル3,センサセル4,λセル5に到達しない。
【0053】
また,本例のガスセンサ素子1では,ポンプリード211,221を用いてリーク電流の経路としており,従来構成からの仕様変更が最小限で済み,別部材で設ける場合よりも部品点数を少なく出来るため製造コストなどの面で有利となる。
【0054】
以上,本例によれば,ヒータ部からのリーク電流による測定精度の低下が生じ難いガスセンサ素子を提供することができる。
【0055】
(実施例2)
本例のガスセンサ素子1は,図8,図9に示すごとく,ポンプセル2を構成するポンプ電極21,22をセンサセル4やモニタセル3を設けた位置まで延設して,図10に示すように,上記ポンプセル用固体電解質板13にλセル5,センサセル4やモニタセル3にかかる各電極31,32,41,42,51,52を投影した電極投影面(=図11において破線で各電極の外形を示したが,この破線の部分が電極投影面となる。)を覆うように構成した。このため,ポンプ電極21,22がリーク電流用導電路となって,リーク電流19を流し出す。
その他詳細は実施例1と同様の構成を有する。
【0056】
本例のガスセンサ素子1では,リーク電流用導電路をポンプ電極21,22で兼用させている。従って従来構成からの仕様変更が最小限で済み,別部材で設ける場合よりも部品点数を少なく出来るため製造コストなどの面で有利となる。
その他詳細は実施例1と同様の作用効果を有する。
【0057】
(実施例3)
本例のガスセンサ素子1は,図11,図12に示すごとく,上記ヒータ部6に絶縁板71を介して積層した導電層7よりなるリーク電流導電路を設けてある。この導電層7はガスセンサ素子1の長手方向について,少なくともモニタセル3,センサセル4を設けた位置まで延設される。
そして,図13に示すごとく,上記ガスセンサ素子1の長手方向と直交する幅方向に沿った上記ガスセンサ素子1の幅をB,上記導電層の幅をbとすると,0.5≦b/Bが成立する。
その他詳細は実施例1と同様の構成を有する。
【0058】
本例のガスセンサ素子1でリーク電流の電気的経路となるスペーサ14のヒータ部6側の面に導電層7があり,リーク電流19は導電層7を流れて,電気化学的セルであるモニタセル3,センサセル4,λセル5に達しない。
その他詳細は実施例1と同様の作用効果を有する。
【0059】
また,図14に示すごとく,上記導電層7を導電スルーホール72を介して,ヒータ回路65のマイナス側に接続する端子612と電気的に導通させることもできる。この場合,導電層7の電位が下げり,リーク電流をより流れやすくすることができる。
【0060】
(実施例4)
図15に示すガスセンサ素子1は,ガスセンサ素子1の長手方向にモニタセル3とセンサセル4とを配列した構成である。その他詳細は実施例1と同様の構成である。
また,図16に示すガスセンサ素子1は,実施例1に示したガスセンサ素子1と同じ構成であるが,ヒータ基板15,スペーサ12,14,16が固体電解質板11,13と同じ材料からなる。そして,発熱体61だけが絶縁材料で包まれている。その他詳細は実施例1と同様の構成である。
そして,図15,図16にかかるガスセンサ素子は,共に実施例1と同様の作用効果を有する。
また,図16については,ガスセンサ素子1の主要な部分が同じ材料で構成されているため,ガスセンサ素子1を複数枚のグリーンシートを積層圧着して焼成して作成する際に,異種材料の熱膨張率の違いから起こる焼成割れが生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,ガスセンサ素子長手方向の要部断面説明図。
【図2】実施例1における,図1のA−A矢視断面図。
【図3】実施例1における,ポンプリードの幅と第1,第2の境界面の幅とを示す説明図。
【図4】実施例1における,ガスセンサ素子の(a)拡散抵抗層側の平面図,(b)側面図,(c)ヒータ部側の平面図。
【図5】実施例1における,(a)拡散抵抗層とスペーサとの平面図,(b)ポンプセル用固体電解質板の表側の平面図,(c)ポンプセル用固体電解質板の裏側の平面図,(d)スペーサの平面図。
【図6】実施例1における,(a)ポンプセル用固体電解質板の表側の平面図,(b)ポンプセル用固体電解質板の裏側の平面図,(c)スペーサの平面図,(d)ヒータ基板の平面図。
【図7】実施例1における,本例と従来例のオフセット電流の温度依存性にかかる線図。
【図8】実施例2における,センサセルやモニタセルの位置まで延設されたポンプ電極を有するガスセンサ素子長手方向の要部断面説明図。
【図9】実施例2における,図8のB−B矢視断面図。
【図10】実施例2における,導電層を有するガスセンサ素子長手方向の要部断面説明図。
【図11】実施例3における,各電極をポンプセル用固体電解質板に投影した状態を示す模式図。
【図12】実施例3における,図9のC−C矢視断面図。
【図13】実施例3における,導電層の幅と素子の幅との関係を示す線図。
【図14】実施例3における,導電層が導電性スルーホールを介して端子に電気的に接続されたガスセンサ素子の長手方向断面説明図。
【図15】実施例4における,長手方向にモニタセルとセンサセルが配列したガスセンサ素子の断面説明図。
【図16】実施例4における,発熱体が絶縁材料で包まれたガスセンサ素子の要部断面説明図。
【図17】従来構成のガスセンサ素子における幅方向への断面説明図。
【図18】従来構成のガスセンサ素子における,(a)ポンプセル用固体電解質板の表側の平面図,(b)ポンプセル用固体電解質板の裏側の平面図。
【符号の説明】
1...ガスセンサ素子,
101,103...ガスセンサ素子外側面,
102,104...内側面,
105...第1境界面,
106...第2境界面,
12,14,16...スペーサ,
121...第1被測定ガス室,
122...第2被測定ガス室,
13...ポンプセル用固体電解質板,
140...第1基準ガス室,
15...ヒータ基板,
160...第2基準ガス室,
19...リーク電流,
2...ポンプセル,
3...モニタセル,
4...センサセル,
5...λセル,
6...ヒータ部,
61...発熱体,

Claims (5)

  1. ヒータ基板と,該ヒータ基板に設けた通電により発熱する発熱体と,該発熱体とヒータリードを介して電気的に導通するヒータ端子とを有するヒータ部と,
    外部から被測定ガスを導入する被測定ガス室用のスペーサと,
    基準ガスを導入する基準ガス室用のスペーサと,
    一対の電極を設けて,該一対の電極間を流れる酸素イオンによる微弱電流に基づいて特定ガス濃度を検出する電気化学的セルを有する固体電解質板とを積層して構成し,
    上記ヒータ部と上記電気化学的セルとの間の電気的経路の途中に,上記ヒータ部からのリーク電流を上記電気化学的セル以外に導出するリーク電流用導電路を設けてなるガスセンサ素子において,
    該ガスセンサ素子は,ポンプセル用固体電解質板と該ポンプセル用固体電解質板に設けた一対のポンプ電極よりなると共に上記被測定ガス室に対し酸素をポンピングするポンプセルを有し,
    上記ポンプセル用固体電解質板は上記一対のポンプ電極と電気的に導通するポンプリードを有し,該ポンプリードは上記ガスセンサ素子の外部に露出するよう設けた端子と電気的に導通し,
    上記リーク電流用導電路は上記ポンプリードよりなることを特徴とするガスセンサ素子。
  2. 請求項1において,上記ヒータ部,上記基準ガス室用のスペーサ,上記ポンプセル用固体電解質板,上記被測定ガス室用スペーサとがそれぞれ隣接して積層され,
    ガスセンサ素子の一方の外側面と基準ガス室の内側面との間に位置する上記ポンプセル用固体電解質板と上記基準ガス室用のスペーサとの第1の境界面に一方のポンプリードを配置し,
    ガスセンサ素子の他方の外側面と被測定ガス室の内側面との間に位置する上記ポンプセル用固体電解質板と上記被測定ガス室用のスペーサとの第2の境界面に他方のポンプリードを配置することを特徴とするガスセンサ素子。
  3. 請求項2において,上記ガスセンサ素子の長手方向と直交する幅方向に沿った上記第1の境界面の最小幅をA,上記幅方向に沿った上記第1の境界面に配置したポンプリードの最大幅をa,
    上記幅方向に沿った第2の境界面の最小幅をC,上記幅方向に沿った上記第2の境界面に配置したポンプリードの最大幅をcとすると,0.1≦a/A,0.1≦c/Cであることを特徴とするガスセンサ素子。
  4. ヒータ基板と,該ヒータ基板に設けた通電により発熱する発熱体と,該発熱体とヒータリードを介して電気的に導通するヒータ端子とを有するヒータ部と,
    外部から被測定ガスを導入する被測定ガス室用のスペーサと,
    基準ガスを導入する基準ガス室用のスペーサと,
    一対の電極を設けて,該一対の電極間を流れる酸素イオンによる微弱電流に基づいて特定ガス濃度を検出する電気化学的セルを有する固体電解質板とを積層して構成し,
    上記ヒータ部と上記電気化学的セルとの間の電気的経路の途中に,上記ヒータ部からのリーク電流を上記電気化学的セル以外に導出するリーク電流用導電路を設けてなるガスセンサ素子において,
    該ガスセンサ素子は,ポンプセル用固体電解質板と該ポンプセル用固体電解質板に設けた一対のポンプ電極よりなると共に上記被測定ガス室に対し酸素をポンピングするポンプセルを有し,
    また上記ポンプ電極は,上記ポンプセル用固体電解質板に上記電気化学セルにかかる一対の電極を投影した電極投影面を覆うように構成し,
    上記リーク電流用導電路は上記ポンプ電極よりなることを特徴とするガスセンサ素子。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において,上記リーク電流用導電路は,少なくとも貴金属を含む材料よりなる,または貴金属とセラミックとを含むサーメットよ りなることを特徴とするガスセンサ素子。
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