JP3846304B2 - 電子ビーム照射装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子ビーム照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子ビームを利用して、印刷物のインキの乾燥、食品または医療品の殺菌などが行われるようになっている。
このような電子ビームを発生する電子ビーム管としては、図2に示すようなものが提案されている。
【0003】
図2は、電子ビーム管の構成の一例を正面方向から見た説明用断面図である。同図において、電子ビーム管10は、真空容器20と、この真空容器20内に設けられたスリーブ50と、このスリーブ50の内部に配設された電子ビーム発生器40とから構成されている。電子ビーム発生器40内にはフィラメント401が配されている。
【0004】
真空容器20は、後方(図で下方)側が封止されたガラス製の管部材21と、当該管部材21の前方側の開口を塞ぐよう設けられた蓋部材22とにより構成され、この蓋部材22には、後述する電子ビーム発生器40よりの電子ビームが通過する電子ビーム出射窓24が形成されている。23は開口部である。25はベース、26は給電端子である。
【0005】
以上のような構造の電子ビーム管10は、大規模な真空装置を必要とせずに電子ビームを照射することができる利点と共に、それ自体が、複雑な構造を有さず、小型であるという利点を有することから、広範な用途において実用化が検討されている。
【0006】
このような電子ビーム管10を使用した電子ビーム照射装置は図4に示す構成のものが考えられていた。100は電子ビーム管10を収納したハウジングであり、ハウジング100内には電子ビーム管10の電子ビーム発生器40内にあるフィラメント(不図示)へ電力を供給するフィラメントトランス8が具備されている。電子ビーム管10を駆動する為の電源1はハウジング100とは別に配置される。電源1内には高圧トランス4があり、電源1とハウジング100間には高電圧ケーブル2が高電圧コネクタ3を介して接続されている。
【0007】
この構成の電子ビーム照射装置には次のような問題点があった。
【0008】
▲1▼ 数十kVの高電圧ケーブル2を電源1とハウジング100間につなぐ必要があり作業者の安全上の問題がある。
【0009】
ハウジング100に高電圧ケーブル2を接続する部分には絶縁性オイル30でその周囲を覆われた高電圧コネクタ3を要し、高電圧コネクタ3はその周囲を絶縁する為に絶縁オイルを充填する必要があり、高電圧コネクタ3の寸法が大きいため、ハウジング100の仕上がり寸法が大きくなる。
【0010】
電子ビーム管10は電子ビーム放射窓24でX線を発生する。そのため、電子ビーム管10を備えたハウジング100は鉛やステンレス製のX線シールド構造を備える必要がある。図5にX線シールド構造200を示す。高電圧ケーブル2は絶縁のための被覆部分が厚く、その径は例えばφ20と太く、当該ケーブルは曲げにくく曲げ半径が大きい。それゆえ図5に示すように、高電圧ケーブル取り出し口200aはX線シールド構造の枠を折り曲げる必要があり、ハウジング100を収納するX線シールド構造200を大きくせざるを得ず、電子ビーム照射装置が大型化する。
【0011】
▲4▼ 電子ビーム管10の真空度の低下などで電子ビーム管10内の電子ビーム発生器40と蓋部材22との間でアーキングが起こったりして、配線されているケーブルにチャージされている電荷が放出されるため、放電電流が減衰振動波形となることにより、電源1、高電圧コネクター3にダメージを与えることがある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、従来の電子ビーム照射装置で行われていた、高圧トランスとハウジングを高電圧ケーブルで接続することによる上記の安全性および信頼性の問題点を解決し、電源とハウジングを一体に製作することで、小型で安全性の高い照射装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決する為の手段】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、真空容器内に配置された、電子ビーム発生器から放出された電子をビーム状に形成し、これを高電圧で加速して、電子ビーム放射窓を通して気中に出力として電子ビームを照射する電子ビーム管と、該電子ビーム管を駆動する高圧トランスとを有する電子ビーム照射装置において、該高圧トランスは樹脂モールドされたハウジングに納められており、該ハウジングの一部に穴があり、該穴内に前記電子ビーム管を着脱自在に取り付けたことを特徴とする電子ビーム照射装置とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記穴が貫通穴であることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム照射装置とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記穴の内面と電子ビーム管の間に絶縁性オイルが充填されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子ビーム照射装置とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、電子ビーム管の給電端子を取り囲む絶縁性筒状部材が真空容器の後方側に具備されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子ビーム照射装置とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記穴の内側に給電用ソケットが配置され、該給電用ソケットに電子ビーム管の給電端子が嵌合されて接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電子ビーム照射装置とする。
【0018】
【作用】
電子ビーム管部と高電圧電源部をモールド化したハウジング内に納め、電子ビーム管をそのモールド化したハウジング内の穴内に装着することで、高電圧コネクタが不要になり、加えて高電圧ケーブルが不要となる為、使用給電線を低電圧用の単線ケーブルとすることができ、電子ビーム管で必須なX線シールド部を小型化でき、ひいては装置全体が小型になる。さらに、高電圧コネクタが不要になる為、装置の安全性が大幅に向上する。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の電子ビーム照射装置の一例の構成図である。
【0020】
ハウジング100はエポキシ樹脂によるモールド化がされており、その内部に高圧トランス4、フィラメントトランス8、バイアストランス11を備え、ハウジング100には上部と底部(図1の上側が上部)を貫通する形で穴14が設けられている。
【0021】
モールド化とは次の処理により行われる。予め、高圧トランス4とフィラメントトランス8とバイアストランス11を保持し、配線を行った枠組みをモールド型内に設置し、エポキシ樹脂の注入、脱泡、加熱により成形される。そして穴14内に電子ビーム管10が電子ビーム放射窓24をハウジング100の外方(図1の下側、すなわち底部側)に向けて着脱自在に取り付けられている。そして穴14内には絶縁性オイル30が充填されている。
【0022】
穴14を中空穴とするのは、絶縁性オイル30中に存在する気泡が絶縁性能を低下させるのを、気泡を外部へ逃がすことによって防ぐのに効果的であるためであり、仮に気泡の発生が無ければ穴14はハウジング100内の途中までの有底の穴であってもよい。
【0023】
また、高圧トランス4と電子ビーム管10の間は被覆のない電線で結合すればよく、小さなハウジング内で折り曲げ自在に容易に配線できる。
また、図3はハウジング100内の電子ビーム管10の付近の拡大図であるが、図3(a)は絶縁性オイルを穴14内に充填したタイプであり、図3(b)は電子ビーム管10の給電端子を取り囲む絶縁性円筒部材60が具備されたタイプである。
【0024】
図3(b)のように、電子ビーム管10のガラス管とは別の部材を真空容器に樹脂製接着剤等で隙間無く接合してもよいし、あるいは、この絶縁性円筒部は電子ビーム管の真空容器のガラスを給電端子側に延在させたものでもよい。図3(b)は絶縁オイルを使用しなくてもよい。
【0025】
絶縁性円筒部材60の長さを調整することで、高圧部と接地部(=蓋部材)との間の必要な沿面距離をかせいで、沿面放電を防ぐことができる。また、図3(a)、(b)にあるように、給電用ソケット12をハウジング100の穴14内に固定して備えることで電子ビーム管の給電端子26を嵌合させて接続でき、電子ビーム管を着脱自在にできる。図3(a)の構造において、記号16はソケット保持部材である。図3(a)の構造においては、この穴14の側内面から、給電用ソケットをその先端に有する給電線17を直接引き出した構成も可能である。絶縁オイル中や樹脂モールド内では、高電圧用途であっても給電線17は低電圧用ケーブルでよい。
【0026】
なお、電子ビーム管の真空度の低下などで電子ビーム管内の電子ビーム発生器と蓋部材との間でアーキングが起こった場合でも、高電圧コネクターは存在しないので、当然高電圧コネクターにダメージを与えることは無く、高電圧ケーブルにチャージされている電荷の放電電流によるダメージを電源に与えることはない。
【0027】
【実施例】
次に具体的実施例について説明する。装置の構成は図1に示した通りであり、縦96mm、横210mm、高さ280mmのハウジング100内に、高圧トランス4、フィラメントトランス8、バイアストランス11をモールドし、ハウジング100の一部分に、電子ビーム管10を挿入するφ55の穴14を設けている。各トランスへの入力は、別置きの制御ユニット70からDC+24Vの電圧で供給されている。
【0028】
電子ビーム管10の大きさは(直径45mm、長さ130mm)であり、印加電圧は60kVである。電子ビーム管10の周りには絶縁性オイル30として植物油が充填されている。この絶縁性オイルとしては、ほかに鉱物油なども使用される。
【0029】
ハウジング100の底部側、すなわち電子ビーム照射側には、不図示であるが、例えば真空チェンバを備えたワーク処理室が配置され、実用に供される。また、本実施例においては電子ビーム管が1本の装置で説明をしたが、ハウジングをモールド化することで1つの電子ビーム照射装置がコンパクトになることから、複数の電子ビーム照射装置を近接して並べることで電子ビーム照射エリアを広く取ることも可能となる。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、高圧トランスをモールド化したハウジング内に納め、電子ビーム管をそのモールド化したハウジング内に設けた穴内に着脱自在に装着することで、高電圧コネクタが不要になり、加えて高電圧ケーブルが不要となる為、使用ケーブルを低電圧用の単線ケーブルとすることができ、電子ビーム管装置で必須なX線シールド構造を小型化でき、ひいては装置全体が小型になる。さらに、高電圧コネクタが不要になる為、装置の安全性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子ビーム装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の電子ビーム装置に使用される電子ビーム管の構成の一例を正面方向からみた説明用断面図である。
【図3】本発明の電子ビーム装置の電子ビーム管周辺の拡大図である。
【図4】従来の電子ビーム装置の構成を示す図である。
【図5】X線シールド構造を示す図である。
【符号の説明】
1 電源
2 高電圧ケーブル
3 高電圧コネクタ
4 高圧トランス
5 制御ケーブル
8 フィラメントトランス
10 電子ビーム管
11 バイアストランス
12 給電ソケット
14 穴
15 絶縁性接着剤
16 ソケット保持部材
17 給電線
20 真空容器
21 管部材
22 蓋部材
23 開口部
24 電子ビーム放射窓
25 ベース
26 給電端子
30 絶縁性オイル
31 空隙
35 Oリング
40 電子ビーム発生器
50 スリーブ
60 絶縁性円筒部材
70 制御ユニット
100 ハウジング
200 X線シールド構造
200a 高電圧ケーブル取り出し口
401 フィラメント

Claims (5)

  1. 真空容器内に配置された、電子ビーム発生器から放出された電子をビーム状に形成し、これを高電圧で加速して、電子ビーム放射窓を通して気中に出力として電子ビームを照射する電子ビーム管と、該電子ビーム管を駆動する高圧トランスとを有する電子ビーム照射装置において、該高圧トランスは樹脂モールドされたハウジングに納められており、該ハウジングの一部に穴があり、該穴内に前記電子ビーム管を着脱自在に取り付けたことを特徴とする電子ビーム照射装置。
  2. 前記穴が貫通穴であることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム照射装置。
  3. 前記穴の内面と電子ビーム管との間に絶縁性オイルが充填されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子ビーム照射装置。
  4. 電子ビーム管の給電端子を取り囲む絶縁性筒状部材が真空容器の後方側に具備されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子ビーム照射装置。
  5. 前記穴の内側に給電用ソケットが配置され、該給電用ソケットに電子ビーム管の給電端子が嵌合されて接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電子ビーム照射装置。
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