JP3845649B2 - 耐火パネル及びこれを用いた界壁構造 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板と石膏ボードとからなる耐火パネル及びこの耐火パネルを用いた建物の界壁構造に関する。なお、界壁とは、例えば集合住宅において隣り合う二つの家の境界壁を言うものとする。また、本発明の耐火パネルは、耐火性のみならず、遮音性をも有するパネルとする。
従来の耐火パネルとして、特許公報等の公知文献を具体的に挙げることは出来ないが、例えば、波形状鋼板の両面に石膏ボードを貼着した従来の耐火パネルは、強度が弱く、剛性も十分でないため、自立出来ず、従って取付けにあたってはスタッド等の支柱を必要とするため、現場施工に手間がかかって、施工費が高くつき、また火災時に石膏ボードが短時間で脱落するという問題がある。
本発明は、パネルとしての十分な強度と剛性を有し、自立することが出来て、スタッド等の支柱を使用することなく取付け出来ると共に、パネルどうしを隙間なく接合出来て、施工費の低廉化を図ることが出来、しかも火災時には石膏ボードが脱落し難く、この石膏ボードが有する結晶水を長時間封じ込めることが出来て、耐火性能の大幅な改善を図った耐火パネルを提供することを目的とする。更に本発明は、この耐火パネルを用いて、遮音性及び耐火性の向上を図ることが出来る界壁構造を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の耐火パネルは、周縁部を板厚方向に折曲した鋼板2の内面側に石膏ボード3を貼着すると共に、石膏ボード3の上下左右端面を鋼板2の折曲縁部2a,2b,2c,2cで覆うようにしてパネル部材4を形成し、このパネル部材4の二枚を左右方向に所定寸法だけ互いにずらした状態で両パネル部材4,4の石膏ボード3,3どうしを貼り合わせることによって、左右両端部にパネル接合用の係合段部5,5を形成してなることを特徴とする。
請求項は、請求項記載の耐火パネルにおいて、二枚のパネル部材4,4は、各鋼板2の上下折曲縁部2a,2bの夫々先端部から折曲縁部2a,2bと直交して上下方向に一体に延びる上部側及び下部側のパネル取付用平板部2d,2eを有し、上部側のパネル取付用平板部2d,2dどうし及び下部側のパネル取付用平板部2e,2eどうしを夫々互いに密着接合させてなることを特徴とする。
請求項は、請求項に記載の耐火パネルにおいて、二枚のパネル部材の互いに密着接合した上部側パネル取付用平板部2d,2d及び下部側パネル取付用平板部2e,2eに、複数のボルト取付用凹窪部6をボルト頭11aが平板部2d,2eから突出しない深さに形成し、各ボルト取付用凹窪部6にボルト挿通孔6aを設けてなることを特徴としている。
請求項は、請求項又はに記載の耐火パネルにおいて、上部側のパネル取付用平板部2d,2dどうし及び上部側のパネル取付用平板部2e,2eどうしは、カシメ、リベット又はスポット溶接によって、互いに密着接合してなることを特徴とする。
請求項に係る発明の界壁構造は、請求項1〜の何れかに記載の耐火パネルを用いた界壁構造であって、二枚の耐火パネル1,1を一定の空間部Sを隔てて並立させてなることを特徴とする。
請求項は、請求項に記載の界壁構造において、各耐火パネル1の壁外側面に石膏ボード13を貼り付けてなることを特徴とする。
請求項は、請求項又はに記載の界壁構造において、耐火パネル1を左右方向に複数枚接続するにあたって、各耐火パネル1の左右両端部に形成されたパネル接合用の係合段部5を互いに係合させてパネル1,1どうしを接合してなることを特徴とする。
請求項は、請求項の何れかに記載の界壁構造において、一定の空間部Sを隔てて並立させる両側の耐火パネル1,1は、各耐火パネル1の上部側パネル取付用平板部2d,2dのボルト取付用凹窪部6を、横向きH形鋼からなる胴差し9等の上部横架材に取り付けた取付金物10にボルト11止めすると共に、各耐火パネル1の下部側パネル取付用平板部2e,2eのボルト取付用凹窪部6を、横向きH形鋼からなる土台8等の下部横架材に取り付けた取付金物10にボルト11止めしてなることを特徴とする。
請求項は、請求項に記載の界壁構造において、各耐火パネル1の上部側パネル取付用平板部2d,2dの壁外側面には、この平板部2d,2dからH形鋼からなる胴差し9等の上部横架材を覆うように耐火ボード16を取り付け、各耐火パネル1の下部側パネル取付用平板部2e,2eの壁外側面には、この平板部2e,2eからH形鋼からなる土台8等の下部横架材を覆うように耐火ボード17を取り付けてなることを特徴とする。
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の耐火パネルは、周縁部を板厚方向に折曲した鋼板2の内面側に石膏ボード3を貼着すると共に、石膏ボード3の上下左右端面を鋼板2の折曲縁部2a,2b,2c,2cで覆うようにしてパネル部材4を形成し、このパネル部材4の二枚を石膏ボード3,3どうし貼り合わせたもので、両側の鋼板2,2とこれらの間に介在する二枚の石膏ボード3,3が互いに一体となるため、建築用パネルとしての十分な強度及び剛性が確保されて、パネル自体で自立出来る構造となり、従って取付けにあたって、スタッド等の支柱を用いることなく、施工現場で容易に取り付けることが出来る。また、二枚の鋼板2,2により二枚の石膏ボード3を挟み込んでほぼ全面的に被包した構造であるから、火災時には石膏ボード3が有する結晶水を長時間封じ込めることが出来る一方、加熱によって分解した結晶水の水蒸気が二枚の鋼板2,2間の隙間から徐々に発散するため、その水蒸気を100℃程度の温度に長時間維持出来、それにより耐火性能の大幅な改善を図ることが出来る。
また本発明の耐火パネルによれば、二枚のパネル部材4,4を左右方向に所定寸法だけ互いにずらした状態で両パネル部材4,4の石膏ボード3,3どうしを貼り合わて、左右両端部にパネル接合用の係合段部5,5を形成しているから、耐火パネル1をその幅方向である左右方向に複数枚接続するに際に、各耐火パネル1の左右両端部のパネル接合用係合段部5を互いに係合させることにより、パネル1,1どうしの接続部である目地部14の隙間を有効に塞ぐことが出来、耐火性能を高めることが出来る。
請求項に係る発明の耐火パネルによれば、二枚のパネル部材4,4は、各鋼板2の上下折曲縁部2a,2bの夫々先端部から折曲縁部2a,2bと直交して上下方向に一体に延びる上部側及び下部側のパネル取付用平板部2d,2eを有し、上部側のパネル取付用平板部2d,2dどうし及び下部側のパネル取付用平板部2e,2eどうしを夫々互いに密着接合させて、これらの互いに密着接合した平板部2d,2d及び2e,2eを耐火パネル1の取付部としているから、耐火パネル1の取付けが簡単容易となる。
請求項に係る発明の耐火パネルによれば、二枚のパネル部材の互いに密着接合した上部側パネル取付用平板部2d,2d及び下部側パネル取付用平板部2e,2eに、複数のボルト取付用凹窪部6をボルト頭11aが平板部2d,2eから突出しない深さに形成し、各ボルト取付用凹窪部6にボルト挿通孔6aを設けているから、施工現場での耐火パネル1のボルト11止め作業が容易となり、またこれらの平板部2d,2d及び2e,2eはボルト取付用凹窪部6を形成した側の側面にボルト11の頭11aが突出しないため、その側面には各パネル部材4の石膏ボード3と同じ厚さの石膏ボードを耐火パネル1の鋼板2と面一に貼り付けて、パネル取付部の耐火被覆を行うことが出来る。
請求項に係る発明の耐火パネルによれば、上部側のパネル取付用平板部2d,2dどうし及び上部側のパネル取付用平板部2e,2eどうしは、カシメ、リベット又はスポット溶接によって、互いに密着接合させることが出来る。
請求項に係る発明の界壁構造によれば、一定の空間部Sを隔てて並立する二枚の耐火パネル1,1が夫々自立可能なパネルであって、両耐火パネル1,1の間には、一方の耐火パネル1から他方の耐火パネル1へ音を伝える所謂サウンドブリッジとなる連結部分が無いため、遮音性が向上する。因みに、パネルの取付けにあたってスタッド等の支柱を必要とする従来の耐火パネルでは、スタッド等の支柱が上記サウンドブリッジを構成するために、遮音性が悪くなる。また、この発明の界壁構造によれば、二枚の耐火パネル1,1による二重壁の間に空間部Sが形成されることによって、遮音性と共に耐火性が向する。また、空間部S内には断熱材を装填する必要がなく、界壁内に柱18が立設されたり、柱18,18間にブレース19が張架されている場合も、所要の断熱材の使用による柱18及びブレース19の耐火被覆を省略することが出来、現場作業の簡略化を図って、施工費を節減出来る。
請求項に係る発明の耐火パネルによれば、各耐火パネル1の壁外側面に石膏ボード13を貼り付けることによって、耐火性と遮音性を一層向上させることが出来る。
請求項に係る発明の耐火パネルによれば、耐火パネル1をその幅方向である左右方向に複数枚接続する際に、各耐火パネル1の左右両端部のパネル接合用係合段部5を互いに係合させた状態で耐火パネル1,1どうしを接合することによって、耐火パネル1,1どうしの接続部である目地部14の隙間を塞ぐことが出来、耐火性能を向上出来る。
請求項に係る発明の耐火パネルによれば、両耐火パネル1,1を一定の間隔に簡単容易に取り付けることが出来、施工能率の向上を図ることが出来る。
請求項に係る発明の耐火パネルによれば、胴差し9及び土台8に対し断熱材を被覆してそれらを耐火被覆する必要がなくなり、現場作業の簡略化を図って、施工費を節減することが出来る。
以下に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明すると、図1の(a) は本発明に係る耐火パネル1を用いて構成される界壁構造の縦断面図であり、図1の(b) は左側半分が(a) のX−X線断面図であり、右側半分は(a) のY−Y線断面図で、耐火ボード16,17を取り外した状態の断面図である。図2の(a) は図1の(a) のイ−イ線断面図、(b) は(a) の矢印ロで示される部分の拡大図であり、図3は耐火パネル1の拡大斜視図、図4は耐火パネル1の拡大縦断面図である。この界壁構造は、基本的には耐火パネル1,1を一定の空間部Sを隔てて並立させてなるものである。
先ず、耐火パネル1の構造について説明すれば、図3及び図4から分かるように、上下に長い矩形状の鋼板2の周縁部を板厚方向に折曲して、上下左右の折曲縁部2a,2b,2c,2cを形成すると共に、上下折曲縁部2a,2bの夫々先端部からこの折曲縁部2a,2bと直交して上下方向に一体に延びる上部側及び下部側のパネル取付用平板部2d,2eを形成し、このように形成した鋼板2の面板部2o内面側に石膏ボード3を貼着すると共に、石膏ボード3の上下左右端面を鋼板2の折曲縁部2a,2b,2c,2cで覆うようにしてパネル部材4を形成し、しかして二枚のパネル部材4,4を石膏ボード3,3どうし貼り合わせることによって、耐火パネル1が形成される。この場合、図2の(b)
及び図3から分かるように、鋼板2の折曲縁部2a,2b,2c,2cの、面板部2o内面からの突出高さを石膏ボード3の板厚より若干低くする必要があり、それによって両パネル部材4,4の石膏ボード3,3どうしを的確に貼り合わせることが出来る。
この耐火パネル1の形成にあたって、二枚のパネル部材4,4は、図3に示すように、左右方向に(パネル部材4の幅方向に)所定の寸法だけ、例えば石膏ボード3の厚さの約1.0〜1.5倍程度だけ互いにずらした状態で二枚のパネル部材4,4の石膏ボード3,3どうしを貼り合わせることによって、左右両端部にパネル接合用のL字状係合段部5,5を形成する。両側の係合段部5,5は互いに反対向きに位置することになる。また、この場合、二枚のパネル部材4,4を左右方向に所定寸法だけずらすと、左右両端部にパネル接合用L字状係合段部5,5が形成されると同時に、上部側及び下部側の各パネル取付用平板部2d,2eも夫々左右端部に段部が形成されることになるが、パネル取付用平板部2d,2eの左右端部には段部を形成しない方が望ましいため、図3に示すように、各パネル取付用平板部2d,2eの一端部を所定幅だけ延ばして補足部Zを一体形成しておくことにより、上部側パネル取付用平板部2d,2dの左右端部どうしを、また下部側パネル取付用平板部2e,2eの左右端部どうしを図示のように揃えることができる。
また耐火パネル1の形成にあたっては、図4から分かるうよに、両パネル部材4,4の上部側パネル取付用平板部2d,2dどうし、及び下部側パネル取付用平板部2e,2eどうしを夫々互いに密着接合する。この密着接合は、図示は省略するが、パネル取付用平板部2d,2eの所要箇所をカシメたり、リベット接合したり、又はスポット溶接することによって行うことが出来る。
鋼板2に石膏ボード3を貼着するには、鋼板2の面板部2o内面及び又は石膏ボード3の貼着面に全面的又は部分的に接着剤を塗布して、鋼板2の面板部2o内面に石膏ボード3を接着する。この接着状態で、鋼板2の折曲縁部2a,2b,2c,2cは石膏ボード3の周面(上下左右端面)に当接して、その周面を被覆する。両パネル部材4,4の石膏ボード3,3どうしを貼り合わせる時も、両石膏ボード3,3の対向面に接着剤を全面的又は部分的に塗布して、両石膏ボード3,3を接着する。
また上記のように二枚のパネル部材4,4の互いに密着接合した上部側パネル取付用平板部2d,2d及び下部側パネル取付用平板部2e,2eには、図3及び図4から分かるように、複数のボルト取付用凹窪部6を、深絞り加工によって、ボルト頭が平板部2d,2eから突出しない深さに形成し、そして各ボルト取付用凹窪部6の底部にボルト挿通孔6aを開口形成する。このボルト挿通孔6aは、詳細な図示は省略するが、開口孔周辺部6ao(図3参照)をハゼ折りカシメ加工することによって、この開口孔周辺部でのパネル取付用平板部2d,2d及び2e,2eのめくれを防止すると共に、これら平板部2d,2d及び2e,2eの密着接合を良好なものにすることが出来る。
上記耐火パネル1を形成する鋼板2としては、亜鉛メッキ鋼板、塗装鋼板、あるいは亜鉛メッキ鋼板に塗装を施した鋼板を使用し、鋼板2の板厚は0.5mm〜1.2mm程度とし、また鋼板2の幅は500mm〜1500mm程度、長さは2400mm〜4000mm程度とする。尚、鋼板2の板厚に関して、耐火パネル1を構成する二枚のパネル部材4,4の鋼板2,2は、両方とも同じ板厚でよく、また界壁構造に使用する耐火パネル1の場合には、二枚の鋼板2,2のうち界壁の外側に配置する鋼板2は、界壁の内側に配置する鋼板2と同等又はそれ以上の板厚のものする。界壁の外側に配置する鋼板2の板厚を界壁の内側に配置する鋼板2よりも厚くするのは、外側に配置する鋼板2には後述するように石膏ボード13がタッピングビスで取り付けられたり、間仕切りパネルの端部が取付金具を介してビスで取り付けられることから、そのビスを保持し得るだけの板厚を必要とするためである。また、石膏ボード3としては、特別に形成された高価な石膏ボードを使用する必要はなく、普通に使用されている安価な石膏ボードでよく、その板厚は例えば9.5mmのものを使用する。
上記のように形成される耐火パネル1は、両側の鋼板2,2とこれらの間に介在する二枚の石膏ボード3,3が互いに一体となるため、建築用パネルとしての十分な強度及び剛性が確保されて、パネル自体で自立出来る構造となり、従って取付けにあたって、スタッド等の支柱を用いることなく、施工現場で容易に取り付けることが出来る。また二枚の鋼板2,2により二枚の石膏ボード3を挟み込んでほぼ全面的に被包した構造であるから、火災時には石膏ボード3が有する結晶水を長時間封じ込めることが出来る一方、加熱によって分解した結晶水の水蒸気が二枚の鋼板2,2間の隙間から徐々に発散するため、その水蒸気を100℃程度の温度に維持出来、それにより耐火性能の大幅な改善を図ることが出来る。
次に、本発明に係る界壁構造の一実施形態について詳細に説明すると、この界壁構造を示す図1の(a) 及び(b) において、7は建物の布基礎、8は布基礎7の上に載設された横向きH形鋼からなる土台(下部横架材)で、このH形鋼8の下部フランジ8bがアンカーボルト21及びナット22によって布基礎7上に緊締されている。また、9は建物の1階と2階との境界に横架された横向きH形鋼からなる胴差し(上部横架材)である。なお、この実施形態の建物は2階建てで、2階の天井側には横向きH形鋼からなる軒桁(上部横架材)が横架されているが、この軒桁については省略する。
界壁を施工するにあたって、土台(下部横架材)としてのH形鋼8の上部フランジ8a上面側にはその両側に夫々L字状の取付金物10をボルト23及びナット24で取付け固定し、また胴差し(上部横架材)としてのH形鋼9には上部フランジ9aの上面側及び下部フランジ9bの上面側に夫々L字状の取付金物10を、土台のH形鋼8と同様にボルト23及びナット24で取付け固定する。取付金物10は、比較的長さの短い金物であり、水平片10bの2〜3箇所をボルト23・ナット24でH形鋼8,9に固定する。この場合、ナット24は、取付金物10の水平片10bに予め溶接により固定しておくとよい。なお、図1の(b) の左側半分は(a) のX−X線断面図であり、また右側半分は(a) のY−Y線断面図であって、耐火ボード16,17を取り外した状態の図面である。また、この図1の(a) ,(b) には、L字状取付金物10を水平方向に連続した物のように図示しているが、実際には水平方向の長さが10cm程度の短い金物である。
しかして、左右両側一対の耐火パネル1,1を一定空間部Sを隔てて並立させるには、一方側の耐火パネル1の互いに密着接合した上部側パネル取付用平板部2d,2dを、H形鋼(胴差し)9の下部フランジ9bの一方側に取り付けてある取付金物10の垂直片10aにボルト11・ナット12で取付け固定すると共に、同耐火パネル1の下部側パネル取付用平板部2e,2eを、H形鋼(土台)8の上部フランジ8aの一方側に取り付けてある取付金物10の垂直片10aにボルト11・ナット12で取付け固定する。他方側の耐火パネル1も、その上部側パネル取付用平板部2d,2dを、H形鋼9の下部フランジ9bの他方側に取り付けてある取付金物10の垂直片10aにボルト11・ナット12で取付け固定すると共に、下部側パネル取付用平板部2e,2eを、H形鋼8の上部フランジ8aの一方側に取り付けてある取付金物10の垂直片10aにボルト11・ナット12で取付け固定する。なお、ナット12は取付金物10の垂直片10aに予め溶接によって固定しておくとよい。
各耐火パネル1の上部側パネル取付用平板部2d,2d及び下部側パネル取付用平板部2e,2eを取付金物10の垂直片10aに取り付ける際は、図4に示すように、上部側パネル取付用平板部2d,2d及び下部側パネル取付用平板部2e,2eの夫々のボルト取付用凹窪部6からそのボルト挿通孔6a及び取付金物10の垂直片10aのボルト挿通孔25へとボルト11を挿通させて、ナット12を締め付けばよい。この時、ボルト11の頭11aは、図示のようにボルト取付用凹窪部6内に没入することになる。
各耐火パネル1は、前記のように、建築用パネルとして十分な剛性及び強度を有して、パネル自体で自立出来る構造となっているから、上下両端部を胴差し9等の上部横架材と土台8等の下部横架材に取り付ければよく、スタッド等の支柱が不要となり、施工現場での取付施工が容易となる。
上記ように左右両側一対の耐火パネル1,1を一定空間部Sを隔てて並立させ、各耐火パネル1の上下両端部をH形鋼(胴差し)9及びH形鋼(土台)8に取付け固定した後、図1の(a) 及び図2の(a) ,(b) に示すように、各耐火パネル1の壁外側パネル部材4の鋼板2には石膏ボード13を、鋼板2を覆うように貼り付ける。この石膏ボード13は、通常はタッピングビス26によって鋼板2にビス止めするが、このタッピングビス26によるビス止めと接着剤による接着との併用によって貼り付けてもよい。
また、耐火パネル1は、パネル1の幅方向に複数枚接続するわけであるが、この接続に際しては、図2の(a) 及び(b) に示すように、各耐火パネル1の左右両端部に形成されたパネル接合用係合段部5を互いに係合させた状態で耐火パネル1,1どうしを接合する。これによって、耐火パネル1,1どうしの接続部である目地部14の隙間を有効に塞ぐことが出来て、耐火性能及び遮音性能を高めることが出来る。因みに、耐火パネル1の左右両端部に係合段部5が形成されていなければ、耐火パネル1を接続する時にパネル1,1の端面どうしが平面状に突き合わさるために、その目地部はパネル1の幅方向に貫通する隙間を生じることになり、耐火性能が低下する。
また、各耐火パネル1の壁外側面に貼り付ける石膏ボード13を幅方向に接続する際には、図2の(a) に示すように、石膏ボード13,13の目地部15が、耐火パネル1,1どうしの接続部である目地部14と重なり合わないようにし、それによってパネル相互の一体化、平滑性及び隙間防止を図る。
図1の(a) に示すように、各耐火パネル1の上部側パネル取付用平板部2d,2dの壁外側面には、この平板部2d,2dからH形鋼からなる胴差し9(上部横架材)を覆うように耐火ボード16を取り付け、また各耐火パネル1の下部側パネル取付用平板部2e,2eの壁外側面には、この平板部2e,2eからH形鋼からなる土台8(下部横架材)を覆うように耐火ボード17を取り付ける。耐火ボード16,17は、各耐火パネル1の壁外側面に沿って貼着される石膏ボード13によって覆われることになる。この耐火ボード16,17としては、普通の石膏ボード、ガラス繊維混入石膏ボード、珪酸カルシウム板、あるいはこれらのボード又は板の外側面に鋼板を貼り付けたものを使用することができる。この耐火ボード16,17は、耐火性のみならず、遮音性をも有する。また、この実施形態では、耐火ボード16,17を石膏ボード13で覆うようにしているが、この耐火ボード16,17は、石膏ボード13(普通の石膏ボードからなる)以外の、例えばガラス繊維混入石膏ボードや珪酸カルシウム板等によって覆ってもよい。
図2の(a) において、18は土台8上に立設されて胴差し9(上部横架材)支える角形鋼管製の柱、19は隣り合う柱18,18間に張架された鋼材製のブレースである。
以上、図1に示す2階建て建物の1階部分の界壁構造について説明したが、2階部分の界壁構造は、耐火パネル1の下端部をH形鋼からなる胴差し9に取付け、上端部を図示しないH形鋼からなる軒桁(上部横架材)に取付けるようにしたもので、上述した1階部分の界壁構造と同様であるため、その説明は省略する。
以上説明した実施形態の界壁構造は、一定の空間部Sを隔てて並立する二枚の耐火パネル1,1が夫々自立可能なパネルであって、両耐火パネル1,1の間には上下両端部を除き、一方の耐火パネル1から他方の耐火パネル1へ音を伝える所謂サウンドブリッジとなる連結部分が無いため、遮音性が向上する。因みに、パネルの取付けにあたってスタッド等の支柱を必要とする従来の耐火パネルでは、スタッド等の支柱が上記サウンドブリッジを構成するために、遮音性が悪くなる。また、この界壁構造によれば、二枚の耐火パネル1,1による二重壁の間に空間部Sが形成されることによって、遮音性と共に耐火性が向する。また、空間部S内には断熱材を装填する必要がなく、図2の(a) に例示されるように界壁内に柱18が立設されたり、この柱18間にブレース19が張架されている場合には、所要の断熱材による柱18及びブレース19の耐火被覆を省略することが出来、現場作業の簡略化を図って、施工費を節減出来る。そして、各耐火パネル1の壁外側面に石膏ボード13を貼り付けることによって、遮音性及び耐火性を一層向上させることが出来る。
この界壁構造では、耐火パネル1をその幅方向に複数枚接続するにあたって、各耐火パネル1の左右両端部に形成されたパネル接合用の係合段部5,5を互いに係合させて耐火パネル1,1どうしを接合することによって、パネル1,1どうしの接続部である目地部14の隙間を有効に塞いで、耐火性能及び遮音性能を高めることが出来る。
また、各耐火パネル1は、周縁部を板厚方向に折曲した鋼板2の内面側に石膏ボード3を貼着すると共に、石膏ボード3の上下左右端面を鋼板2の折曲縁部2a,2b,2c,2cで覆うようにしてパネル部材4を形成し、このパネル部材4の二枚を石膏ボード3,3どうし貼り合わせることによって形成されるもので、二枚の鋼板2,2によって二枚の石膏ボード3を挟み込んでほぼ全面的に被包した構造であるから、火災時には、石膏ボード3が有する結晶水(20%程度の重量比の結晶水を有する)を長時間封じ込めることが出来る一方、加熱によって分解した結晶水の水蒸気が二枚の鋼板2,2間の小さな隙間から発散するため、その水蒸気を100℃程度の温度に維持することが出来、それによって耐火性能の大幅な改善が図られる。
また、この界壁構造では、一定の空間部Sを隔てて並立する両側の耐火パネル1,1は、各耐火パネル1の上部側パネル取付用平板部2d,2dのボルト取付用凹窪部6を、横向きH形鋼からなる胴差し9に取り付けた取付金物10にボルト11止めすると共に、各耐火パネル1の下部側パネル取付用平板部2e,2eのボルト取付用凹窪部6を、横向きH形鋼からなる土台8に取り付けた取付金物10にボルト11止めするようにしたから、両耐火パネル1,1を一定の間隔に精度良く簡単容易に取り付けることが出来、施工能率の向上を図ることが出来る。
また、この界壁構造では、各耐火パネル1の上部側パネル取付用平板部2d,2dの壁外側面には、この平板部2d,2dからH形鋼からなる胴差し9を覆うように石膏ボード16を取り付け、各耐火パネル1の下部側パネル取付用平板部2e,2eの壁外側面には、この平板部2e,2eからH形鋼からなる土台8を覆うように石膏ボード17を取り付け、これらの石膏ボード16,17は、各耐火パネル1の壁外側面に沿って貼着される石膏ボード13によって覆われるようにしているから、胴差し9及び土台8に対し断熱材を被覆してそれらを耐火被覆する必要がなくなり、現場作業の簡略化を図って、施工費を節減出来る。
下記の表は、図1に示した実施形態の界壁構造を加熱試験した試験結果を示すもので、この表中の数値をプロットした温度曲線を図5に示し、加熱試験における熱伝対による温度測定箇所A〜E及びa〜dは図6の(a) 及び(b) に示す。図5において、最上部の曲線は加熱温度曲線を示し、A〜E及びa〜dは各測定箇所(地点)での温度曲線を示している。
Figure 0003845649
この加熱試験に使用した界壁構造は、図1及び図2に示す実施形態と同じ構造もので、その一部を図6に示しているが、この界壁構造の寸法を例示すれば、耐火パネル1の壁外側(表面側)鋼板2の板厚は0.8mm、壁内側(裏面側)鋼板2の板厚は0.5mm、各石膏ボード3の板厚は9.5mm、耐火パネル1の壁外側鋼板2に貼り付けた石膏ボード13の板厚も9.5mm、また両耐火パネル1,1の対向間隔、即ち空間部Sの間隔は90.4mmである。また界壁内にある柱18は一辺が60mm、厚さが3.2mmの角形鋼管である。図6の(a) は界壁構造を示す図2の(a) と同様な断面図で、同図に示すように図の上側が加熱側としている。(b) は(a) の界壁を加熱側と反対側から見た石膏ボード13の正面図である。
この加熱試験において、図6の(a) に示す界壁の一方側の石膏ボード13の壁外側面を矢印で示すように加熱する時、例えば30分経過後にその加熱温度が844℃となると、界壁内のパネル加熱側目地部A、即ち耐火パネル1,1間の目地部における鋼板2の温度は表に示す114℃、このA地点から鋼板2に沿って横方向に10cm離れたB地点の鋼板2の温度は100℃、界壁内にある角形鋼管製柱18の加熱側に面する地点Cの温度は63℃、この柱18から横方向に例えば7cm離れたD地点の温度は76℃、また柱18の、C地点と反対側のE地点の温度は64℃である。また、同時点における界壁外のパネル裏面側のa地点、即ちE地点と反対側にあって石膏ボード13,13の目地部上にある地点の温度は表に示す39℃であり、このa地点から石膏ボード13に沿って上方へ10cm隔たったb地点の温度は40℃、またa地点から石膏ボード13に沿って右方へ10cm隔たったc地点の温度39℃、またa地点から石膏ボード13に沿って下方へ10cm隔たったd地点の温度は38℃であった。
上記のようにして90分が経過した時の加熱温度は1005℃となり、そして界壁内のA地点の温度は575℃、B地点の温度は466℃、C地点の温度は316℃、D地点の温度は304℃、E地点の温度は197℃となり、また界壁外のa地点の温度は85℃、b地点の温度は85℃、c地点の温度は84℃、d地点の温度は83℃であった。
以上のような加熱試験の結果、界壁構造を構成する一方の耐火パネル1側を加熱して、90分後にその加熱温度が1000℃を越えても、加熱側と反対側の耐火パネル1の温度は84℃前後であり、また界壁内部にある角形鋼管製柱18の加熱側の温度が310℃前後であることから、この界壁構造の耐火性能は非常に優れたものと言える。
(a) は本発明に係る耐火パネルを用いた界壁構造の縦断面図、(b) は左側半分が(a) のX−X線断面図であり、右側半分は(a) のY−Y線断面図で、耐火ボード16,17を取り外した状態の断面図である。 (a) は図1の(a) のイ−イ線断面図、(b) は(a) の矢印ロで示される部分の拡大図であり、 耐火パネルの拡大斜視図である。 耐火パネルの拡大縦断面図である。 界壁構造の耐火試験における経過時間と各測定箇所での温度上昇の変化を示すグラフである。 (a) は図2の(a) と同様な界壁構造の拡大断面図で、加熱試験の各測定箇所を示し、(b) は加熱側と反対側の耐火パネルの石膏ボードの拡大正面図である。
符号の説明
1 耐火パネル
2 鋼板
2a 折曲縁部
2b 折曲縁部
2c 折曲縁部
2d パネル取付用平板部
2e パネル取付用平板部
3 石膏ボード
4 パネル部材
5 係合段部
6 ボルト取付用凹窪部
8 土台
9 胴差し
10 取付金物
16 石膏ボード
17 石膏ボード
18 界壁内部にある角形鋼管製柱

Claims (9)

  1. 周縁部を板厚方向に折曲した鋼板の内面側に石膏ボードを貼着すると共に、石膏ボードの上下左右端面を鋼板の折曲縁部で覆うようにしてパネル部材を形成し、このパネル部材の二枚を左右方向に所定寸法だけ互いにずらした状態で両パネル部材の石膏ボードどうしを貼り合わせることによって、左右両端部にパネル接合用の係合段部を形成してなる耐火パネル。
  2. 二枚のパネル部材は、各鋼板の上下折曲縁部の夫々先端部から折曲縁部と直交して上下方向に一体に延びる上部側及び下部側のパネル取付用平板部を有し、上部側のパネル取付用平板部どうし及び下部側のパネル取付用平板部どうしを夫々互いに密着接合させてなる請求項1に記載の耐火パネル。
  3. 二枚のパネル部材の互いに密着接合した上部側パネル取付用平板部及び下部側パネル取付用平板部に、複数のボルト取付用凹窪部をボルト頭が平板部から突出しない深さに形成し、各ボルト取付用凹窪部にボルト挿通孔を設けてなる請求項2に記載の耐火パネル。
  4. 上部側のパネル取付用平板部どうし及び上部側のパネル取付用平板部どうしは、カシメ、リベット又はスポット溶接によって、互いに密着接合してなる請求項2又は3に記載の耐火パネル。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の耐火パネルを用いた界壁構造であって、二枚の耐火パネルを一定の空間部を隔てて並立させてなる界壁構造。
  6. 各耐火パネルの壁外側面に石膏ボードを貼り付けてなる請求項5に記載の界壁構造。
  7. 耐火パネルを左右方向に複数枚接続するにあたって、各耐火パネルの左右両端部に形成されたパネル接合用の係合段部を互いに係合させてパネルどうしを接合してなる請求項5又は6に記載の界壁構造。
  8. 一定の空間部を隔てて並立させる両側の耐火パネルは、各耐火パネルの上部側パネル取付用平板部のボルト取付用凹窪部を、横向きH形鋼からなる胴差し等の上部横架材に取り付けた取付金物にボルト止めすると共に、各耐火パネルの下部側パネル取付用平板部のボルト取付用凹窪部を、横向きH形鋼からなる土台等の下部横架材に取り付けた取付金物にボルト止めしてなる請求項5〜7の何れかに記載の界壁構造。
  9. 各耐火パネルの上部側パネル取付用平板部の壁外側面には、この平板部からH形鋼からなる胴差し等の上部横架材を覆うように耐火ボードを取り付け、各耐火パネルの下部側パネル取付用平板部の壁外側面には、この平板部からH形鋼からなる土台等の下部横架材を覆うように耐火ボードを取り付けてなる請求項8に記載の界壁構造。
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