JP3844881B2 - 厨芥処理器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、厨芥処理器に関し、さらに詳しくは、一般家庭や飲食店、あるいは学校、病院等の厨房で発生する生ゴミ等の厨芥を簡便に脱臭・乾燥処理する厨芥処理器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、一般家庭等の厨房で発生する生ゴミ等の厨芥を乾燥状態にして腐敗を防止すると共に、処理中に発生する臭い成分を脱臭処理するために、種々の厨芥処理器が提案されている。一般にこのような厨芥処理器は、厨芥を加熱することにより発生した水蒸気を臭い成分と共に凝縮させ、凝縮水を下水管に排水するようになっている。
【0003】
例えば、特開平5−146773号公報には、断熱材料からなる回転容器に厨芥を入れ、回転容器を傾けた状態で回転させながら厨芥を加熱し、厨芥から発生した水蒸気を大気と連通している凝縮部に誘導し、該凝縮部で水蒸気を凝縮させることにより厨芥を乾燥させる加熱乾燥装置が開示されている。
【0004】
また、本願出願人は、先に、密閉可能な加熱室に厨芥の入った処理槽を入れ、大気と連通している状態で処理槽を加熱し、厨芥から発生する水蒸気により加熱室内の空気を追い出し、次いで加熱室を密閉し、加熱室内に充満している水蒸気を凝縮部で凝縮させることにより厨芥を乾燥させる厨芥処理機を提案している。
【0005】
特開平5−146773号公報に開示された加熱乾燥処理装置によれば、斜めに傾けた回転容器を回転させながら厨芥の加熱が行われるので、厨芥が局部加熱されることがなく、厨芥の熱分解に起因する臭気の発生を低減できるという利点がある。
【0006】
しかし、同公報に開示された加熱乾燥装置は、大気圧下で乾燥が行われるために、短時間で厨芥の乾燥を行うためには、乾燥温度を高くする必要がある。そのため、エネルギーコストが高くなり、また、室内で使用した場合には、熱源により室内温度が上昇するという問題があった。さらに、厨芥の局部加熱を防止するために回転容器を回転させる回転機構が必要となり、装置が複雑になるという問題があった。
【0007】
これに対し、本願出願人により先に提案された厨芥処理機は、水蒸気を充満させた加熱室を密閉し、加熱室内の水蒸気を凝縮させることにより、減圧下において乾燥を行うようにしたので、水の沸点が下がり、厨芥に含まれる水分の蒸発が促進され、乾燥温度を低くすることができる。
【0008】
そのため、加熱室から臭気や水蒸気が漏出せず、しかも熱源による温度上昇が小さいので、台所等の室内で使用した場合でも、室内環境を悪化させることがないという利点がある。また、低温で乾燥させることができるために、厨芥の熱分解を考慮する必要がなく、回転機構が不要となるという利点がある。
【0009】
しかしながら、この厨芥処理機により高い乾燥効率を達成するためには、加熱室内の空気を完全に排出し、水蒸気の発生を促すと共に、加熱室で発生した水蒸気を凝縮部へスムーズに搬送する必要があるが、加熱室内の空気を完全に排出するのは、現実には困難である。
【0010】
そこで、本願出願人は、さらに、生ゴミ等の厨芥を加熱する密閉可能な加熱部と、該加熱部と連通され前記厨芥から発生した水蒸気を含む気体を冷却する凝縮部と、上記凝縮部で凝縮した水を外部に排水する排水路と、前記凝縮部で冷却した気体を前記加熱部に強制的に送り返す返還手段とを備えた厨芥処理機を提案している。
【0011】
このような返還手段を備えた厨芥処理機によれば、加熱室で発生した水蒸気を加熱室内に残留する空気をキャリアとして凝縮部に強制的に搬送し、水蒸気が凝縮した後の乾燥した空気を加熱室に強制的に戻す返還手段を備えているので、加熱室における水蒸気の発生が促されると共に、凝縮部への水蒸気の搬送がスムーズに行われる。そのため、加熱室の空気を完全に排出しない場合であっても、乾燥効率が高いという利点がある。
【0012】
また、加熱室は、排水路に溜まっている凝縮水を介して大気と遮断されているので、加熱室内部の気圧が一定の範囲内で自動的に調節される。そのため、運転条件を適正に制御すれば、加熱室を減圧状態に保つことができるので、加熱室からの臭気や水蒸気の漏出を防ぐことができるという利点があるものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような返還手段を備えた厨芥処理機は、返還手段の設置位置及び運転条件によっては、処理中に加熱室内が正圧になり、加熱室から臭気や水蒸気が漏れるおそれがあった。そのため、水蒸気の発生と凝縮が連続的に行われる定常状態において、加熱室内を常に減圧状態に保つためには、加熱室に投入する熱量と凝縮部で吸収される熱量をバランスさせる必要があり、操作がやや煩雑となる場合があった。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、加熱室で発生した水蒸気を含む気体を凝縮部に強制的に送り、凝縮部から排出される気体を加熱室に強制的に戻す返還手段と、凝縮水を外部に排出すると同時に、凝縮水により加熱室内の気圧を自動的に調節する自動調節排水手段とを備えた厨芥処理器において、加熱室に投入する熱量と凝縮部で吸収される熱量をバランスさせなくても、定常状態において加熱室内を常に減圧状態もしくは僅かな正圧状態以下に保つことが可能な厨芥処理機を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る厨芥処理器は、生ゴミ等の厨芥を加熱する加熱部と、前記加熱部と連通され前記厨芥から発生した水蒸気を含む気体を冷却する凝縮部と、前記凝縮部の後段に連通され前記凝縮部で冷却した気体をその高圧側に連通された前記加熱部に強制的に送り出す返還手段と、前記加熱部と共に前記返還手段の高圧側に連通され、前記凝縮部で凝縮した凝縮水を導水管を通じて貯留しながら該導水管の先端位置より高い位置で前記凝縮水を外部に排出する自動調節排水手段とを備え、前記導水管の先端から前記凝縮水が排出される水位までの位置水頭により決定される前記返還手段の高圧側の最高気圧が前記返還手段の高圧側と低圧側の差圧以下に設定されていることを要旨とするものである。
【0016】
上記構成を有する本発明に係る厨芥処理器によれば、返還手段の高圧側に自動調節排水手段を連通させたので、返還手段の高圧側の最大気圧が一定値以下に制限される。それ故、加熱室は減圧状態もしくは僅かな正圧状態以下に保たれ、臭気漏れは少なくなる。
【0017】
また、返還手段の高圧側の最大気圧が、返還手段により発生する差圧以下となるように返還手段及び/又は自動調節排水手段を構成すれば、低圧側である加熱部内は、定常状態において常に大気圧とほぼ等圧又は減圧状態に保たれる。これにより、加熱部に投入する熱量と凝縮部で吸収される熱量をバランスさせる必要がなくなり、厨芥処理器の操作が簡略化される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な一実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る厨芥処理器の概略構成図である。図1において、厨芥処理器10は、厨芥を加熱する加熱部20と、厨芥から発生した水蒸気を凝縮させる凝縮部30と、凝縮部30で冷却された空気を加熱部20に強制的に送り返す返還手段40と、凝縮部30で生じた凝縮水を外部に排出すると同時に、厨芥処理器10内部の気圧を自動的に調節する自動調節排水手段50とを備えている。
【0019】
加熱部20は、連通路12aを介して凝縮部30の一端に連結され、凝縮部30の他端は、連通路12bを介して返還手段40の低圧側に連結されている。また、返還手段40の高圧側は、連通路12c及び吹付けノズル46を介して加熱部20に連結されている。これにより、厨芥処理装置10内の空気が加熱部20と凝縮部30の間を循環するようになっている。さらに、返還手段40の高圧側には、自動調節排水手段50が連結されている。
【0020】
加熱部20は、断熱構造を有する密閉可能な加熱室22の底部に処理槽加熱用ヒータ24を設けたものである。加熱室22上部には、蓋22aが設けられ、厨芥26aを入れた処理槽26を加熱室22内に収納できるようになっている。なお、処理槽加熱用ヒータ24に代えて、ガスバーナやマイクロ波により厨芥26aを加熱するようにしても良い。
【0021】
凝縮部30は、多数の放熱フィン34、34…が設けられたフィンチューブ32からなっている。なお、凝縮部30は、水蒸気を含む湿った空気を冷却し、凝縮水と乾燥した空気に分離できるものであれば良いので、例えば、図2に示すように、複数のパイプ36、36…を斜めに併設し、ドラフト力によりパイプ36、36…を冷却するタイプの凝縮部30を用いても良い。また、自然冷却に限らず、例えば、送風ファンを設けて強制冷却させるようにしても良い。
【0022】
返還手段40は循環ファン42からなり、連通路12bと連通路12cとの間に所定の差圧を発生させることにより、低圧側に導かれた気体を高圧側に排出するようになっている。なお、循環ファン42の高圧側は連通路12cの一端に連結され、連通路12cの他端は加熱部20の加熱室22内部に設けられた吹付けノズル46に連結されている。また、連通路12cには、気体加熱用ヒータ44が設けられ、連通路12cを通る気体を加熱できるようになっている。
【0023】
自動調節排水手段50は、凝縮水を溜めるタンク52と、タンク52の底面に臨んで垂下している導水管54と、タンク52側面に設けられた排水管56からなっている。導水管54は、連通路12cに連結され、凝縮部30で凝縮し、返還手段40から排出された凝縮水をタンク52内に導くようになっている。
【0024】
また、排水管56は、タンク52内に溜まった凝縮水が一定量に達した時に、凝縮水の一部が下水管14に排水されるように、タンク52の底面から所定の高さに設けられている。
【0025】
さらに、循環ファン42の高圧側の最高気圧は、自動調節排水手段50に設けられたタンク52内の最大水位から導水管54の先端までの長さに相当する位置水頭によって決まるが、この位置水頭は、循環ファン42によって発生する差圧以下となるように構成されている。
【0026】
次に、図1に示す厨芥処理器10の作用について説明する。初めに、タンク52内に凝縮水が最大水位まで満たされている状態で厨芥処理器10を使用する場合について、図3を参照しながら説明する。
【0027】
まず、加熱室22の蓋22aを開けて、処理槽26内に厨芥26aを投入し、蓋22aを閉じる。この時、加熱室22内は空気で満たされ、加熱室22内の気圧は大気圧に等しいので、自動調節排水手段50のタンク52内の水位と、導水管54内の水位は同一である。この状態を示したのが図3(a)である。
【0028】
次に、処理槽加熱用ヒータ24をONにし、処理槽26を加熱すると共に、循環ファン42及び気体加熱用ヒータ44をONとする。処理槽加熱用ヒータ24がONになると、処理槽26が加熱され、厨芥26aから水蒸気が発生すると共に、加熱室22内の空気が加熱されて膨張するので、加熱室22内の気圧が上昇するが、循環ファン46が差圧を発生させ、高圧側に連通路12c及び導水管54が連結されているため、加熱室22内の圧力上昇は、ファン圧力を加圧されて導水管54内の凝縮水58に伝わり、導水管54内にある凝縮水58の水面を押し下げる。そして、導水管54内の水面が導水管54の先端に達したときに、導水管54の先端から加熱室22内の空気の一部が排出され、加熱室22内の圧力上昇が止まる。この状態を示したのが図3(b)である。
【0029】
従って、この循環経路中、吹付けノズル46が最も大きい圧力損失体であるので、言いかえれば、連通路12a及び凝縮部30は圧力損失が殆どないので、加熱室22内の圧力は、導水管54内の圧力よりファン圧を減じたものとなる。
【0030】
なお、処理槽加熱用ヒータ24は、処理槽26内の温度が所定の温度となるように、加熱室22底部に設けられたサーミスタ(図示せず)によりON−OFF制御される。また、厨芥26a中にラップ等が含まれている場合、処理槽26の温度が130℃を超えると、ラップ等が分解し、有害な塩素ガスが発生するので、処理温度は、130℃以下とするのが好ましい。
【0031】
また、循環ファン42がONになると、加熱室22内に残留している空気は、厨芥26aから発生した水蒸気と共に凝縮部30に強制的に搬送される。この時、水蒸気を含む湿った空気は、放熱フィン34、34…により冷却されて露点が下がるため、水蒸気が凝縮して水となる。
【0032】
また、厨芥26aから発生した臭い成分は、そのほとんどが凝縮水に溶け込むので、凝縮部30内の空気が脱臭される。さらに、加熱室22は、自動調節排水手段50のタンク52内に溜まっている凝縮水により大気と遮断されているため、水蒸気の凝縮により加熱室22から連通路12bに至る循環経路の気圧が低下する。
【0033】
凝縮部30から排出された凝縮水と乾燥・脱臭された空気は、連通路12bを通って循環ファン42に至る。そして、凝縮水は、循環ファン42を素通りし、そのまま導水管54に流れ落ちてタンク52内に溜まる。また、タンク52から溢れた凝縮水は、排水管56を通って下水管14に排出される。
【0034】
一方、乾燥・脱臭された空気は、循環ファン42により増圧されて、連通路12cに至る。この時、凝縮部30において水蒸気が凝縮したことにより低圧側の気圧が下がっているので、循環ファン42の高圧側の気圧もその分だけ低下する。そのため、水蒸気の凝縮が進み、循環ファン42の高圧側の気圧が大気圧より小さくなると、タンク52内の凝縮水58が導水管54により吸い上げられ、導水管54内の水位が上昇する。この状態を示したのが、図3(c)である。
【0035】
そして、連通路12cに送られた空気は、気体加熱用ヒータ44により加熱されて吹付けノズル46に至り、加熱室22に納められた処理槽26内の厨芥26aに向かって吹付けノズル46から加熱された空気が噴射される。
【0036】
このように、加熱室22内が負圧になっている状態で、厨芥26aに気体加熱用ヒータ44により加熱された空気が直接噴射され、しかも、厨芥26aから発生した水蒸気は加熱室22内の空気と共に強制的に凝縮部30に搬送されるので、厨芥26aからの水蒸気の蒸発が促進される。また、連通路12c内が加熱されることにより、連通路12c内での結露も防止される。
【0037】
循環ファン42をONにした当初は、水蒸気の凝縮量が多いので、連通路12c内の気圧は低下の一途をたどり、タンク52内の凝縮水が導水管54に吸い上げられ続ける。そして、連通路12c内の気圧がさらに下がり、導水管54の先端がタンク52内に残留している凝縮水58の水面から露出したところで、導水管54の先端から導水管54内に空気が入り、連通路12c内の圧力低下が止まる。この状態を示したのが図3(d)である。
【0038】
このように、連通路12c内の気圧が一定値以下になったときに、連通路12c内に空気を入れるようにしたのは、加熱室22への凝縮水の逆流を防止すると同時に、処理槽26内の厨芥26aから発生する水蒸気をスムーズに凝縮部30に搬送するためである。水蒸気をスムーズに凝縮部30に搬送するためには、水蒸気のキャリアとなる空気が一定量以上必要となるためである。
【0039】
従って、自動調節排水手段50を設けたことにより、連通路12c内の気圧は、タンク52の容量、導水管54の長さ、断面積及び排水管56の取り付け位置により定まる最高気圧と最低気圧の範囲内で、自動的に調節される。
【0040】
以上のように、加熱室22内に残留している空気は、乾燥処理が終了するまで、厨芥26aから発生する水蒸気のキャリアとして、加熱部20と凝縮部30の間を循環することになる。そして、厨芥26a中の水分が完全になくなったところで、処理槽加熱用ヒータ24及び気体加熱用ヒータ44をOFFにし、さらに循環ファン42をOFFにすれば、厨芥26aの乾燥処理が終了する。
【0041】
次に、本発明に係る厨芥処理器により、定常状態において加熱室22内が負圧ないし僅かな正圧に保たれる原理について説明する。返還手段40の高圧側は、自動調節排水手段50に連結されているので、返還手段40の高圧側の最高気圧及び最低気圧は、自動調節排水手段50により決定される。すなわち、高圧側の気圧をP2とすると、P2の最大値は、タンク52内の凝縮水58の最大水位から導水管54の先端までの位置水頭h1(以下、単に「h1」という)に等しい。
【0042】
同様に、凝縮水58の最大水位から導水管54の先端までの間に蓄えられる凝縮水58の体積をV0、導水管54の断面積をaとすると、高圧側の気圧P2の最小値は、−V0/aに等しい。この値を−h2と置くと、P2の変動範囲は、次の数1の式で表される。
【0043】
【数1】
−h2≦P2≦h1
【0044】
これに対し、加熱室22内、すなわち返還手段40の低圧側の気圧をP1とし、返還手段40により発生する差圧をΔPとすると、P1、P2及びΔPの間には、次の数2の式が成り立つ。
【0045】
【数2】
P2=P1+ΔP
【0046】
数2の式から、次の数3の式が得られる。
【0047】
【数3】
P1=P2−ΔP
【0048】
ここで、数1の式より、P2の最大値は、自動調節排水手段50によりh1以下となるように規制されているので、数3の式より、P1はP2よりΔPだけ減じたものであり、僅かな正圧以下となる。また、h1がΔP以下であれば、P1は、常に大気圧と等圧又は大気圧より負圧となることがわかる。
【0049】
従って、例えば、返還手段40として、ΔPが50mmAqである循環ファン42を用いる場合には、h1が40mmとなるように自動調節排水手段50を設計すれば、P2は40mmAq以上になることはないので、P1は常に負圧となり、加熱室22内を減圧状態に保つことができる。
【0050】
図4は、このように構成された厨芥処理器10の加熱室22内の気圧P1、及び循環ファン42の高圧側の気圧P2の経時変化の一例を示したものである。初めに、処理槽26に厨芥26aを入れ、蓋22aを閉じる。この時、P1及びP2はいずれも0mmAq、すなわち大気圧と等圧である。この状態で、処理槽加熱用ヒータ24、循環ファン42及び気体加熱用ヒーター44をONにする。
【0051】
処理槽加熱用ヒータ24がONになると、加熱室22内の温度が上昇すると共に、P1及びP2も次第に上昇し、やがて、h1に相当する圧力となったところで飽和する。
【0052】
また、循環ファン42がONになることにより、厨芥26aから発生した水蒸気が凝縮部30に強制的に送られ、冷却されるので、P1及びP2は急激に低下し、やがてP1及びP2は共に負圧になる。また、P2とP1の差は、循環ファン42により発生する差圧ΔPにほぼ等しくなる。
【0053】
水蒸気の凝縮が進行するに伴い、P2は下がり続け、さらにP2が−h2に相当する圧力に達したところで、導水管54の先端から空気が入り込む。これにより、P1及びP2の圧力低下が止まる。さらに、処理槽用ヒータ24に投入する熱量を一定にしたまま厨芥26aの加熱を続けると、厨芥26aから発生する水蒸気が次第に少なくなるに伴い、凝縮部30で奪われる熱量が少なくなる。
【0054】
その結果、厨芥処理器10内を循環する空気が膨張し、P1及びP2が次第に増加する。しかしながら、厨芥処理器10内を循環する空気を加熱し続けても、P2の上限値は上述したようにh1に制限されているので、循環ファン42により発生する差圧ΔPがh1以上である場合は、P1が正圧になることはない。
【0055】
これにより、加熱部20における水蒸気の発生と凝縮部30における水蒸気の凝縮が連続的に進行する定常状態においては、加熱部20に投入する熱量と凝縮部30で奪う熱量をバランスさせなくても、加熱室22内の気圧は常に負圧もしくは僅かな正圧に保たれる。また、定常状態において、加熱室22内の気圧が常に負圧もしくは僅かな正圧に保たれることにより、加熱室22の気密性がそれほど高くない場合であっても、加熱室22から臭気や水蒸気が漏れることはない。
【0056】
なお、乾燥処理の初期状態において、加熱室22は正圧になっているが、その値は比較的小さく、また、厨芥26aの乾燥処理に要する通算時間と比べればごく短時間であるので、安価なシール部材を用いた場合であっても臭気及び水蒸気が漏出することはない。
【0057】
次に、タンク52内に凝縮水が溜まってない状態で厨芥処理器10を使用する場合について説明する。処理槽26に厨芥26aを入れて蓋22aを閉じ、処理槽加熱用ヒータ24、循環ファン42及び気体加熱用ヒータ44をONにすると、水蒸気が発生すると共に加熱室22内の空気が膨張する。膨張した空気は、そのまま連通孔12cを介して自動調節排水手段40から下水管14に排出される。従って、加熱室22内の気圧は、大気圧よりΔPだけ低い値になるので、加熱室22から臭気及び水蒸気が漏れることはない。
【0058】
また、厨芥26aから発生した水蒸気は、凝縮部30により凝縮して凝縮水となり、凝縮水は、返還手段40及び導水管54を通ってタンク52内に溜まる。そして、導水管54の先端がタンク52内に溜まった凝縮水58の水面以下となったところで加熱室22が大気と遮断される。
【0059】
これ以後は、初めからタンク52内に凝縮水が満たされている場合と同様に、加熱室22内の気圧が自動調節排水手段50により自動的に調節されながら、厨芥26aの乾燥が進行する。また、h1がΔP以下である場合は、定常状態においてP1が常に負圧に保たれる点も同様である。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態では、処理槽用ヒータ24をONすると同時に、循環ファン42及び気体加熱用ヒータ44を作動させているが、処理槽加熱用ヒータ24により加熱を開始してから所定時間経過後に、循環ファン42及び気体加熱用ヒータ44を作動させてもよい。また、凝縮部30内や加熱室22内の温度、湿度、圧力、自動調節排水手段50のタンク52の水位等を検知し、その検出値に基づいて循環ファン42及び気体加熱用ヒータ44を作動させても良い。
【0062】
また、上記実施の形態では、連通路12cを流れる気体を気体加熱用ヒータ44を用いて加熱することにより、厨芥26aからの水蒸気の発生を促進させるようにしているが、気体加熱用ヒータ44は、必ずしも必要ではない。また、処理槽用ヒータ24を用いずに、気体加熱用ヒータ54のみを用いて加熱した熱風により厨芥26aに含まれる水分を蒸発させるようにしても良い。
【0063】
さらに、上記実施の形態では、自動調節排水手段50は、タンク52とタンク52の底面に臨んで垂下している導水管54及び排水管56により構成されているが、凝縮部30から流れ込む凝縮水を下方に流す下り流路と、下り流路から一旦上がる上り流路と、上り流路から再び下り、下水管に連通する排水流路からなるS字管を用いても良く、これにより上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
【発明の効果】
本発明は、加熱室で発生した水蒸気を含む気体を凝縮部に強制的に送り、凝縮部から排出される気体を加熱室に強制的に戻す返還手段と、凝縮水を外部に排出すると同時に、加熱室内の気圧を自動的に調節する自動調節排水手段とを備えた厨芥処理器において、前記返還手段の高圧側に前記自動調節排水手段を連通させるようにしたので、加熱室内の気圧は、僅かな正圧以下となり、加熱室からの臭気や水蒸気の漏出を防ぐことができるという効果がある。
【0065】
また、前記返還手段の高圧側の最大気圧と大気圧との差が、前記返還手段で発生する差圧以下となるようにした場合には、定常状態において加熱部内の気圧を常に負圧にすることができ、加熱部に投入する熱量と凝縮部から奪う熱量をバランスさせなくても、加熱部からの臭気や水蒸気の漏出を防ぐことができ、厨芥処理器の操作が簡略化されるという効果がある。
【0066】
そのため、これを例えば、一般家庭の室内で使用する厨芥処理器として用いれば、臭気漏れ、水蒸気の排出による湿度上昇、熱源に起因する温度上昇等に起因する室内環境の悪化を起こすことなく生ゴミ等の腐敗防止・脱臭処理が可能となるものであり、産業上その効果の極めて大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る厨芥処理器の概略構成図である。
【図2】 複数のパイプを備えた凝縮部の概略構成図である。
【図3】 加熱室内の気圧とタンク内の水位の変化の関係を説明する図である。
【図4】 乾燥処理の際の加熱室内の気圧、及び循環ファンの高圧側の気圧の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
10 厨芥処理器
20 加熱部
26a 厨芥
30 凝縮部
40 返還手段
50 自動調節排水手段
Claims (1)
- 生ゴミ等の厨芥を加熱する加熱部と、前記加熱部と連通され前記厨芥から発生した水蒸気を含む気体を冷却する凝縮部と、前記凝縮部の後段に連通され前記凝縮部で冷却した気体をその高圧側に連通された前記加熱部に強制的に送り出す返還手段と、前記加熱部と共に前記返還手段の高圧側に連通され、前記凝縮部で凝縮した凝縮水を導水管を通じて貯留しながら該導水管の先端位置より高い位置で前記凝縮水を外部に排出する自動調節排水手段とを備え、前記導水管の先端から前記凝縮水が排出される水位までの位置水頭により決定される前記返還手段の高圧側の最高気圧が前記返還手段の高圧側と低圧側の差圧以下に設定されていることを特徴とする厨芥処理器。
Priority Applications (9)
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