JP3844847B2 - 離型シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物の強度を向上させる強化シートに用いる離型シートに関わり、特に、強化シートの状態を目視可能にしたタイプの離型シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリートの特性として、その引張強度は、圧縮強度と比較して1/10〜1/15程度である。このため、現在のコンクリート構造物には、断面に生じる軸方向引張力に対して繊維強化型素材の一つである鉄筋を配置した鉄筋コンクリート、高張力の鋼材(PC鋼材)の張力を利用して引張応力を相殺する大きな圧縮力を予めコンクリートに加えるプレストレストコンクリートを用いる。
一方、上記コンクリートを用いたコンクリート構造物は、経年劣化や耐震基準の変遷の理由から、地震に対して補強手段を採る必要性も生じている。
コンクリート構造物の耐震補強工法の一つとして、コンクリートより引張強度等に優れた炭素繊維シート等の強化シートをコンクリート面に接着して、構造物の耐応力および靱性能を高める工法がある。炭素繊維シート等の強化シートは、幅25〜50cm程度の長物をロール状にして使用する。また、製品により異なるが、強化シートと離型シートを僅かな接着力の接着剤で貼り重ねあわせてロール状に巻いた製品や、強化シートをそのまま巻いた製品がある。
ここで離型シートを使用する目的は、▲1▼強化シートを傷付けないこと、▲2▼強化シートの切断時に容易に墨出しができること、▲3▼強化シートを通常のはさみで精度よく切断できること、または、▲4▼強化シートの張り付け時に使用する接着剤が作業者に付着しにくいこと、のように考えられる。
この強化シートのコンクリート構造物への張り付け施工方法としては、強化シートに離型シートを重ねたまま所定の形状に切断し、接着剤を塗布したコンクリート構造物の下地面に離型シートを外側にして強化シートを張り付け、離型シートの上から専用ローラ等で押え付け、続いて離型シートを除去し、改めて強化シートを直接専用ローラ等により、繊維の間から接着剤がしみ出るまで押さえ付けて接着固定する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記施工方法において作業者は、離型シートを除去するまで強化シートへの接着剤の染み込み程度を確認できず、また、コンクリート構造物と強化シートの接着層に空隙や浮きが生じることがあっても、離型シートを除去するまで確認できない。故に、作業者にとっては、容易かつ確実に強化シートの張り付け作業を行えない一方、施工性は低下する。
【0004】
そこで、本発明は、以上の技術的課題を解決するためなされたものであって、その目的は、強化シートの張り付け作業を容易かつ確実にし、施工性を向上させる離型シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、以上の技術的課題を解決する手段は、コンクリート構造物の強度を補強する強化シートに対して剥離自在とされた離型シートにおいて、前記コンクリート構造物の下地面に前記強化シートを接着剤で接着した状態で前記接着剤の前記強化シートへの浸透状態を目視可能とする接着剤浸透状態目視機能を具備したことを特徴とする。
【0006】
この発明の作用としては、該離型シートによれば、コンクリート構造物に強化シートを接着した状態で、強化シートに対する接着剤の浸透状態を目視できるようにしたので、作業者は、接着剤の染み込み程度を確認でき、また、コンクリート構造物と強化シートとの接着層に空隙や浮きが生じた場合、離型シートを除去せずに施工不良を確認することができる。つまり、作業者は強化シートの張り付け作業を容易かつ確実に行うようになり、施工性は向上する。
【0007】
以上の解決手段にあって、コンクリート構造物には、コンクリート、鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリート、その他の強化コンクリートから造られる場合、並びに、以上のコンクリートを適宜組み合わせて造られる場合も含まれる。
【0010】
そして、請求項1記載の発明によれば、前記離型シートは、前記目視用の貫通穴を形成したことを特徴とする。
【0011】
この発明の作用として、この離型シートによれば、作業者は、コンクリート構造物に強化シートを接着した状態で、離型シートに形成した目視用の貫通穴を通して接着剤の強化シートへの浸透状態を確認できる。
【0012】
また、請求項2記載の発明によれば、前記離型シートは、前記目視用の網目部を有する網目形状に形成したことを特徴とする。
【0013】
この発明の作用として、この離型シートによれば、作業者は、コンクリート構造物に強化シートを接着した状態で、網目形状の網目部を通して接着剤の強化シートへの浸透状態を確認できる。
【0014】
ここで、前記離型シートは、強化シートからの剥離性を向上させる観点から、さらに、透明かつ剥離容易な透明フィルムを備えてもよい。
【0015】
なお、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の離型シートにおいて、前記強化シートは炭素繊維からなることを特徴とする。
【0016】
この発明の作用として、炭素繊維は、他の材質の強化シートよりもコンクリート構造物の耐応力および靱性能を向上させる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図4を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。
{参考形態}
図1は、補強シートに適用した参考形態を示すものである。
補強シートは、渦巻状に巻かれた強化シート11と、強化シート11の外側に剥離自在にされた離型シート12から構成されている。
【0018】
図2(a)は、補強シートの断面構造を、図2(b)は補強シートの平面構造を示すものである。
強化シート11は、肉厚の薄いシート状であり、例えば、炭素繊維を用いる。この理由として、炭素繊維は、他の材質より引張強さおよび靱性能等強度的に優れており、コンクリート構造物への補強効果が大きいからである。また、炭素繊維の他に、鋼繊維、アラミド繊維などを用いてもよい。
【0019】
離型シート12は、強化シート11と同様な肉厚の薄いシート状であり、例えば、透明性のプラスチック素材を用いる。作業者が、離型シート側12から目視すると、強化シート11の表面の状態を観察できるようになっている。
【0020】
次に、図1、2に基づいて強化シートをコンクリート構造物に接着する施工方法について説明する。
強化シート11に離型シート12を重ねたまま所定の形状に切断し、コンクリート構造物の下地面に接着剤を塗布して、この下地面に補強シートを離型シート12を外側に向けて張り付ける。
補強シートを離型シート12の上から専用ローラ等で押え付け、続いて離型シート12を除去する。
このとき、離型シート12を通して、接着剤の強化シート11への浸透状態を透視できるようにしたので、作業者は、接着剤の染み込み程度を確認でき、また、コンクリート構造物と強化シート11との接着層に空隙や浮きが生じた場合、離型シート12を除去せずに施工状態を確認することができる。
そして、直接専用ローラ等により、改めて強化シート11を繊維の間から接着剤がしみ出るまで押さえつけて接着固定する。
【0021】
以上により、参考形態によれば、作業者は、強化シート11への接着剤の染み込み程度を確認でき、また、コンクリート構造物と強化シート11との接着層に空隙や浮きが生じた場合、離型シート12を除去せずに施工状態を確認できるので、作業者は強化シート11の張り付け作業を容易かつ確実に行うようになり、施工性は向上する。
【0022】
{実施の形態1}
図3は、本発明を補強シートに適用した実施の形態1を示し、図3(a)は補強シートの断面構造を、図3(b)は補強シートの平面構造を示す。
本補強シートは、参考形態と同様に、強化シート11の上に、離型シート13を剥離自在にした構成であるが、離型シート13自体に不透明の離型紙を用い、さらに、強化シート11を目視するための複数の目視用貫通穴13aを形成した点に特徴を有する。
【0023】
これによれば、作業者は、強化シート11をコンクリート構造物へ接着するときに、離型シート13に形成した目視用貫通穴13aを通して接着剤の強化シート11への浸透状態を確認できるので、作業者は強化シート11の張り付け作業を容易かつ確実に行い、施工性は向上する。
【0024】
{実施の形態2}
図4は、本発明を補強シートに適用した実施の形態2を示し、図4(a)は補強シートの断面構造を、図4(b)は補強シートの平面構造を示す。
本補強シートは、参考形態と同様に、強化シート11の上に、離型シート14を剥離自在にされた構成であるが、離型シート14は、網目状の網目シート14aと、網目シート14aに固着した離型用透明フィルム14bから構成される点に特徴を有する。
ここで、網目シート14aは、強化シート11の状態を目視するための網目部14cを有し、例えば、繊維材質を用いる。離型用透明フィルム14bは、透明であり、強化シート11に対して剥離容易な程度の接着性を有する。
【0025】
次に、図4に基づいて強化シートをコンクリート構造物に接着する施工方法について説明する。
強化シート11に網目シート14aおよび離型用透明フィルム14bを重ねたまま所定の形状に切断し、コンクリート構造物の下地面に接着剤を塗布して、この下地面に補強シートを網目シート14aを外側に向けて張り付ける。
補強シートを網目シート14aの上から専用ローラ等で押え付け、続いて離型シート14を除去する。
このとき、網目シート14aの網目部14cおよび離型用透明フィルム14bを通して、接着剤の強化シート11への浸透状態を目視できるようにしたので、作業者は強化シート11の張り付け作業を容易かつ確実に行い、施工性は向上する。
そして、直接専用ローラ等により、改めて強化シート11を繊維の間から接着剤がしみ出るまで押え付けて接着固定する。
【0026】
【発明の効果】
以上より、本発明によれば、接着剤の強化シートへの浸透状態を目視できるようにしたので、作業者は、接着剤の染み込み程度を確認でき、また、コンクリート構造物と強化シートとの接着層に空隙や浮きが生じた場合、離型シートを除去せずに施工不良を確認することができる。つまり、作業者は強化シートの張り付け作業を容易かつ確実に行うようになり、施工性は向上する。
即ち、請求項1記載の発明によれば、離型シートに形成した目視用の貫通穴を通して接着剤の強化シートへの浸透状態を確認できるようにしたので、作業者は強化シートの張り付け作業を容易かつ確実に行うようになり、施工性は向上する。
また、請求項2記載の発明によれば、網目形状の網目部を通して接着剤の強化シートへの浸透状態を確認できるようにしたので、作業者は強化シートの張り付け作業を容易かつ確実に行うようになり、施工性は向上する。
なお、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明において、炭素繊維は、他の材質の強化シートよりも耐応力および靱性能に優れ、コンクリート構造物の耐応力および靱性能を向上させるので、コンクリート構造物の耐震性を著しく向上させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 補強シートに適用した参考形態を示す説明図である。
【図2】 (a)は、図1に係わる離型シートの断面構造を、(b)は、図1に係わる離型シートの平面構造を示す説明図である。
【図3】 本発明を補強シートに適用した実施の形態1を示し、(a)は、離型シートの断面構造を、(b)は、離型シートの平面構造を示す説明図である。
【図4】 本発明を補強シートに適用した実施の形態2を示し、(a)は離型シートの断面構造を、(b)は離型シートの平面構造を示す説明図である。
【符号の説明】
11 強化シート
12 離型シート
13 離型シート
13a 目視用貫通穴
14 離型シート
14a 網目状シート
14b 離型用透明フィルム
14c 網目部
Claims (3)
- コンクリート構造物の強度を補強する強化シートに対して剥離自在とされた離型シートにおいて、
前記コンクリート構造物の下地面に前記強化シートを接着剤で接着した状態で前記接着剤の前記強化シートへの浸透状態を目視可能とする目視用の貫通穴を形成したことを特徴とする離型シート。 - コンクリート構造物の強度を補強する強化シートに対して剥離自在とされた離型シートにおいて、
前記コンクリート構造物の下地面に前記強化シートを接着剤で接着した状態で前記接着剤の前記強化シートへの浸透状態を目視可能とする目視用の網目部を有する網目形状に形成したことを特徴とする離型シート。 - 前記強化シートは炭素繊維からなることを特徴とする請求項1または2記載の離型シート。
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