JP3843847B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の空燃比制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、流入する排気の空燃比がリーンの時にNOx(窒素酸化物)をトラップし、該空燃比がリッチの時にトラップしたNOxを脱離、浄化するNOxトラップ触媒を備えた内燃機関において、リーン空燃比で運転した後、空燃比をリッチ化してNOxを還元している。
【0003】
特開2001−59440号には、前記触媒浄化のための空燃比リッチ化を、燃料の吸気行程での主噴射量を徐々に増量しつつ、該主噴射量の増量開始と同時に膨張行程での副噴射をステップ的に開始することが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、空燃比リッチ化の要求と同時に膨張行程での副噴射をステップ的に開始する方式では、排気通路内に残留した酸素と副噴射された燃料によりアフタバーンが発生しやすく、また、主噴射と副噴射とを合わせた全量での空燃比は矩形状であり、かつ、主噴射に比較して効率の劣る副噴射量を考慮していないため、NOxの脱離効率が悪く、燃費が悪化する。
【0005】
なお、SOx(硫黄酸化物)をトラップする触媒を備えたものでも、前記NOxと同様のことがいえる。
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、空燃比リッチ化の要求が生じた場合に、主噴射と副噴射とを適切量かつ適切なタイミングで行うことにより、アフターバーンの発生を防止できるようにした内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明は、
排気通路に備えられた触媒にトラップされた酸化物を放出するための空燃比リッチ化の要求が発生してから、所定期間は燃料の点火前に供給される主噴射のみでリッチ化するリッチ空燃比運転を行い、前記所定期間経過後前記主噴射と点火後に供給される副噴射とに分割してリッチ化するリッチ空燃比運転を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る発明によると、
空燃比リッチ化要求発生後、点火前の主噴射によるリッチ化で排気中の余剰酸素を消費してアフターバーン発生を防止した上で、所定期間経過後、主噴射によるリッチ化ではトルク変動限界により制限される不足分を、トルクへの影響が少ない点火後の副噴射を併用することによって補うことができる。なお、空燃比リッチ化要求は、排気通路に触媒を備える場合であれば、例えば、この触媒にトラップされたNOxやSOxを放出すべきときに発生する。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、
前記主噴射によるリッチ度合いをステップ的に大きくすることを特徴とする。
請求項2に係る発明によると、
空燃比のリッチ化が要求されて、リッチ度合いをステップ的に大きくすることが望ましい場合、排気中の余剰酸素を一度に消費するのでアフターバーンを生じやすいが、主噴射によるリッチ化ではトルク変動限界により制限される不足分を、所定期間が経過した後、点火後の副噴射により補うので、必要十分の還元剤をアフターバーンを防止しつつ、ステップ的に確保することができる。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、
前記主噴射によるリッチ度合いを、上限値以下に制限することを特徴とする。
請求項3に係る発明によると、
主噴射によるリッチ度合いを上限値以下に制限することにより、リッチ化によるトルク変動が過大となることを防止でき、運転性を良好に維持することができる。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、
排気通路を備え、前記主噴射によるリッチ度合いを、ステップ的に大きくした後、徐々に小さくすることを特徴とする。
請求項4に係る発明によると、
触媒でトラップされたNOxやSOxの放出特性は、放出開始時の放出量が大きく、その後は放出量が徐々に減少するので、この特性に合わせて主噴射によるリッチ度合いを、ステップ的に大きくした後、徐々に小さくすることにより、リッチ燃料によるNOxやSOxの放出処理効率を十分に高めることができる。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、
前記主噴射によるリッチ度合いを、ステップ的に大きくした後、一定度合いに保持し、その後徐々に小さくすることを特徴とする。
請求項5に係る発明によると、
リッチ化制御の初期に、主噴射によるリッチ度合いを、ステップ的に大きい値で保持してNOxやSOxの放出処理効率を高く維持し、かつ、トルクの増大も抑制しつつ後期ではNOxやSOxの放出量減少に見合うようにリッチ度合いを徐々に小さくすることにより、無駄な燃料噴射を抑制できる。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、
前記副噴射によるリッチ度合いをステップ的に大きくすることを特徴とする。
また、請求項7に係る発明は、
前記副噴射によるリッチ度合いを、ステップ的に大きくした後、徐々に小さくすることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る発明は、
前記主噴射及び副噴射を合わせた全体のリッチ度合いを、ステップ的に大きくした後、徐々に小さくする略三角波状態とすることを特徴とする。
請求項6〜請求項8に係る発明によると、
副噴射についても主噴射と同様NOxやSOxの放出特性に見合うように、設定することで、効率よくNOxやSOxを放出させて還元処理することができ、さらには、主噴射及び副噴射を合わせた全体のリッチ度合いを、略三角波状態とすることで、最も効率よく処理することができる。
【0014】
また、請求項9に係る発明は、
排気通路内の酸素濃度を推定し、所定値を下回ったとき前記所定期間を経過したとして副噴射を開始することを特徴とする。
請求項9に係る発明によると、
推定した酸素濃度が所定値を下回ったときにアフターバーンを発生しないと判断して副噴射を開始させることにより、副噴射を速やかに開始ができる。
【0015】
また、請求項10に係る発明は、
前記主噴射の量と機関回転速度とに基づいて排気通路内の酸素濃度を推定することを特徴とする。
請求項10に係る発明によると、
主噴射の量と機関回転速度とにより、排気通路内の酸素を還元消費できる還元剤(CO)供給量を求められるため、リッチ化前の酸素量から酸素消費量を減算して酸素濃度を推定することができる。
【0016】
また、請求項11に係る発明は、
排気通路に備えられた触媒下流の空燃比を検出し、該空燃比がリッチになったことを検出したときに、前記所定期間を経過したとして副噴射を開始することを特徴とする。
請求項11に係る発明によると、
空燃比フィードバック制御に使用されるセンサを利用して空燃比のリッチを検出することにより、排気中酸素濃度の減少を検出して副噴射を開始させることができる。
【0017】
また、請求項12に係る発明は、
排気温度に相関するパラメータに基づいて前記所定期間を設定することを特徴とする。
また、請求項13に係る発明は、
排気温度に相関するパラメータが低温を示すほど前記所定期間を短く設定することを特徴とする。
【0018】
請求項12及び請求項13に係る発明によると、
排気温度が高くなるほどアフターバーンを発生しやすくなるので、排気温度に相関するパラメータに基づき設定し、具体的には該パラメータが低温を示すほど前記所定期間を短く設定設定することにより、副噴射を開始させる所定期間を適切に設定することができる。
【0019】
また、請求項14に係る発明は、
前記空燃比のリッチ化が要求されるのは、排気通路に備えられた触媒にトラップされたNOxを放出するときであることを特徴とする。
また、請求項15に係る発明は、
前記空燃比のリッチ化が要求されるのは、排気通路に備えられた触媒にトラップされたSOxを放出するときであることを特徴とする。
【0020】
請求項14及び請求項15に係る発明によると、
NOxやSOxを触媒から放出させて還元処理するときに、空燃比をリッチ化することにより、これらを処理できる。
また、請求項16に係る発明は、
前記主噴射は、吸気行程で行われることを特徴とする。
【0021】
請求項16に係る発明によると、
点火前の吸気行程で主噴射を行って均質燃焼によるリッチ化が行われる。
また、請求項17に係る発明は、
前記副噴射は、膨張行程で行われることを特徴とする。
点火後の膨張行程で副噴射が行われる。
【0022】
また、請求項18に係る発明は、
前記主噴射によるリッチ度合いを所定度合いに制限し、一部の気筒以外におけるリッチ化の不足分を、該一部の気筒の副噴射で賄うことを特徴とする。
請求項18に係る発明によると、
一部の気筒のみで主噴射での不足分の全量を賄うように副噴射を行うことにより、該一部の気筒での副噴射量を大きくすることができ、燃料噴射弁の開弁期間−噴射量特性のリニアリティが確保された領域で噴射できるため、良好な噴射量精度を得られNOxやSOxの放出要求量に見合った過不足の無い噴射量を供給することができる。
【0023】
また、請求項19に係る発明は、
複数の気筒群を有し、気筒群毎に触媒を備え、各気筒群にそれぞれ前記一部の気筒を設けることを特徴とする。
請求項19に係る発明によると、
気筒群毎の触媒に対してそれぞれ本発明にかかるリッチ化制御を行うことにより、各触媒からのNOxやSOxの放出、還元処理を十分に遂行することができる。
【0024】
また、請求項20に係る発明は、
前記所定期間経過後、最初に副噴射のタイミングを迎える気筒を前記一部の気筒とすることを特徴とする。
請求項20に係る発明によると、
副噴射が可能となってから、最初の膨張行程となる気筒を、副噴射を行う一部の気筒とすることにより、可能な限り速やかにNOxやSOxの放出、還元処理を遂行できる。
【0025】
また、請求項21に係る発明は、
排気通路に備えられた触媒への距離が最も近い気筒を、前記一部の気筒とすることを特徴とする。
請求項21に係る発明によると、
触媒に最も近い気筒を、副噴射を行う一部の気筒とすることで、副噴射された燃料を速やかに、かつ、排気通路壁への付着による損失を少なく触媒に到達させてNOxやSOxの放出、還元処理を遂行できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明にかかる空燃比制御装置の一実施形態のシステム構成を示す。
内燃機関1は、運転モードを切り換えることで吸気行程噴射または圧縮行程噴射(主噴射)を実施可能な筒内噴射型火花点火ガソリン内燃機関を適用する。この内燃機関1は、理論空燃比(ストイキ)での運転やリッチ空燃比運転、リーン空燃比での運転が可能である。
【0027】
内燃機関1のシリンダヘッド2には、気筒毎に点火栓3、燃料噴射弁4が取り付けられる。前記燃料噴射弁4の上流には燃料ポンプ5が接続され、該燃料ポンプ5から吐出された燃料が燃料噴射弁4から燃焼室内に向けて任意の燃圧で直接噴射可能となっている。燃料噴射量は前記燃料ポンプ5の燃料吐出圧と燃料噴射弁4の開弁時間とで決定される。
【0028】
前記シリンダヘッド2には、気筒毎に吸気ポート6が形成され、該吸気ポート6と連通して吸気マニホールド7が接続される。該吸気マニホールド7の上流に接続される吸気管20には、上流側からエアクリーナ21、吸入空気量を検出するエアフローメータ22、吸入空気量を制御する電子制御式のスロットル弁23が配設され、前記スロットル弁23には該スロットル弁の開度を検出するスロットルセンサ24が装着されている。また、前記シリンダヘッド2の反対側には、気筒毎に排気ポート8が形成され、該排気ポート8と連通して排気マニホールド9が接続される。シリンダブロック25には、機関冷却水温度を検出する水温センサ26、機関回転速度Ne等を検出するためのクランク角センサ27が配設されている。
【0029】
前記吸気マニホールド7と排気マニホールド9の間に、EGR通路10が接続され、該EGR通路10に介装されたEGR弁11の開度を運転条件に応じて制御することにより、EGR(排気還流)量が制御される。
排気マニホールド9には、排気中の酸素量に基づいて燃焼室内の空燃比を検出する空燃比センサ12が設けられ、その下流側に三元触媒13が介装され、その下流側に接続された排気管14にNOxトラップ触媒15が介装される。前記三元触媒13は流入する排気の空燃比がストイキのときにHC,COを酸化すると共にNOxを還元して浄化する機能を有する。前記NOxトラップ触媒15は、流入する排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxをトラップするとともに、流入する排気の空燃比がストイキまたはリッチのときに、NOxを放出、還元するもので、典型的には、白金(Pt)等の貴金属とNOxトラップ剤とを担持した基材のコート層をハニカム担体上に形成したものである。上記NOxトラップ剤は、セシウム(Cs)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)等のアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)等のアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類から選ばれた少なくとも1つを含んでいる。
【0030】
さらに、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたC/U(コントロールユニット)16が設置されている。このC/U16により、内燃機関を含めた本発明に関わる排気浄化装置の総合的な制御が行われる。
C/U6の入力側には、前記各種センサからの検出情報が入力され、出力側には、燃料噴射弁4や点火栓5等が接続されており、各種センサからの検出情報に基づき演算された燃料噴射量や点火時期等の値が出力される。
【0031】
次に、本発明に関わる排気浄化装置の作用について説明する。なお、ここでは、内燃機関の圧縮行程で主噴射を行い、かつ、リーン空燃比運転している場合を例に説明を行う。
リーン空燃比で運転を行うときの酸化雰囲気の場合、NOxトラップ触媒15は、NOxをトラップするが飽和量に近づくとNOxトラップ量が低下するため、トラップしたNOxを放出、還元して除去する必要がある。そこで、NOxトラップ触媒を有した排気浄化装置では、例えば、予め設定された所定周期で目標空燃比を小さくして所定期間リッチ空燃比運転を行い(以下リッチスパイクという)、これにより、NOxトラップ触媒内に還元雰囲気を強制的に作り、トラップしたNOxを脱離、還元するようにしている。
【0032】
本発明では上記の制御を前提として空燃比のリッチ化を下記方法で行う。
第1の実施形態では、NOx処理のための燃料増量分を算出し、トルク変動の無いレベルあるいは運転上許容できるレベルまで主噴射である吸気行程での燃料噴射量を増量する。
主噴射増量を開始してから、排気管の酸素濃度が所定値以下に低下するまで一定時間この状態を保持する。
【0033】
前記一定時間経過後、トルク変動を回避するために増量できなかった燃料を副噴射である膨張行程での燃料噴射で補う。
該第1の実施形態のリッチスパイク制御を、図2のフローチャートに従って図3のタイムチャートを参照しつつ説明する。
ステップ1では、機関の回転速度、負荷(アクセル開度等)などの運転状態検出値を読み込む。
【0034】
ステップ2では、前記運転状態検出値に基づいて目標空燃比を算出する。ここでの目標空燃比には、後述するリッチスパイク時であっても燃料増量分を含めない燃料噴射量に対応して設定される。
ステップ3では、前記目標空燃比に応じた燃料噴射量を算出する。この燃料噴射量は、点火前の吸気行程(または圧縮行程)で噴射される主噴射量TP1である。
【0035】
ステップ4では、燃焼切換フラグの値に基づいて、成層燃焼(リーン燃焼)からストイキ燃焼(またはリッチ燃焼、以下ストイキ燃焼で代表する)へ切り換わったかを判定する。
ストイキ燃焼へ切り換わったと判定されたとき(図3のa参照)は、所定期間リッチスパイク制御を行うため、ステップ5で、NOxの脱離・還元に必要な主噴射の増量分要求値TP20を算出する。ここで、NOxトラップ触媒内にトラップされたNOxの還元効率は、始めほど大きく次第に減少していくので、この特性に合わせて増量分要求値TP20も初期値をステップ的に増大させ、時間と共に減少するように三角形状に設定する(図3のb参照)。
【0036】
ステップ6では、点火前に噴射される主噴射による増量は、燃焼に供せられるためトルクアップ(変動)を生じるので、許容できるトルク変動限界に相当する主噴射増量分であるトルク変動許容増量限界TP21(図3のc参照)を算出する。
ステップ7では、ステップ5で算出した主噴射の増量分要求値TP20が、ステップ6で算出したトルク変動限界TP21以下であるかを判定する。
【0037】
ステップ7で、TP20≦TP21と判定されたときは、要求値TP20どおりの主噴射増量を行ってもトルク変動を限界内に収められるので、ステップ8で、前記主噴射量TP1に増量要求値TP20を増量した燃料噴射量で主噴射を行う。この場合、点火後の副噴射は行わない。
一方、ステップ7で増量分要求値TP20が、トルク変動限界TP21を超えていると判定されたときは、ステップ9で主噴射の増量分をトルク変動限界TP21に設定する。
ステップ10では、該トルク変動限界TP21に増量分を抑えたことによる増量不足分TP22をTP20からTP21を減算して算出した後、前記主噴射での増量不足分TP22を、膨張行程での副噴射で賄うための副噴射量TP3を算出する。
【0038】
主噴射の場合は主として燃焼により生成されたCOによりNOxを還元するのに対し、点火後の膨張行程での副噴射の場合は燃焼に寄与できなかったHC(未燃燃料)の割合が増え、このHCでNOxを還元するため、主噴射に比較して還元効率が劣る。
【0039】
そこで次式のように、前記主噴射の増量不足分TP22に、前記NOx還元効率の低下に見合った係数K(>1、例えば、K=COによるNOx還元効率/HCによるNOx還元効率)を乗じることにより、副噴射量TP3を算出する。なお、増量不足分TP22が時間と共に減少する三角形状になるので、副噴射量TP3も三角形状となる(図3のd参照)。
【0040】
TP3=TP22×K
ステップ11で前記副噴射開始のディレイ時間tdが経過したかを判定し、経過前は、このルーチンを終了し主噴射のみを行うが、経過後はステップ12で前記吸気行程での主噴射の後、膨張行程で前記算出したTP3の燃料を副噴射する。
【0041】
前記副噴射の開始を遅らせるのは、副噴射されたHC(未燃燃料)がNOx還元に使用される前に、燃焼切換前のリーン燃焼時に排気管内に溜まった過剰な酸素と反応してアフターバーンを発生するのを防止するためであり、主噴射増量分TP21により生じるCOで前記排気管内の過剰酸素分が消費される(図3のe参照)のを待って副噴射を開始させるのである。
【0042】
このようにすれば、NOx還元効率の高い主噴射による増量でトルク変動を許容値内に抑え、かつ、アフターバーンの発生も回避しつつ、要求値に対する不足分を副噴射で賄うことにより、NOxトラップ触媒でトラップされたNOxを十分に脱離・還元処理することができ、この間のNOx排出を効果的に抑制できる(図3のf参照)。
【0043】
本実施形態では、前記アフターバーン防止のためのディレイ時間tdを固定値に設定し、その場合、排気管内に残存する酸素量が多い場合でも確実にアフターバーンを回避できるように大きめの値に設定する必要がある。
そこで、第2の実施形態では、排気管内の残存酸素量を推定しつつ、該酸素量が所定値以下に減少したときに副噴射を開始するようにする。
【0044】
図4は、第2の実施形態におけるリッチスパイク制御のフローチャートを示す。第1の実施形態を示す図2のステップ11でのディレイ時間経過判定に代えて、ステップ11’で副噴射許可判定を行う。該副噴射許可判定は、副噴射許可フラグの値で判別し、1のときはステップ12で副噴射を行い、0のときは副噴射を停止する。
【0045】
図5は、上記副噴射許可フラグの値を設定するサブルーチンのフローチャートである。
ステップ21では、機関回転速度Neを読み込む。
ステップ22では、前記主噴射増量分TP21による排気管内酸素消費量O2dを次式により算出する。
【0046】
O2d=TP21×Ne×A
ここで、係数Aは酸素の消費効率に応じた値であり、単位時間あたりに増量される燃料量(TP21×Ne)に比例した値として、単位時間あたり酸素消費量O2dが算出される。
ステップ23では、リッチスパイク制御つまり主噴射増量開始後に消費される排気管内酸素量の総量O2dtを、前記単位時間あたり酸素消費量O2dを積算することにより、次式のように算出する。
【0047】
O2dt=O2dt(前回値)+O2d
ステップ24では、リッチスパイク制御開始時にそれまでのリーン燃焼によって排気管内に残存していた酸素量の初期値O2sを読み込む。直前のリーン燃焼におけるリーン空燃比は、一定である場合が多いので、そのときは予め算出された初期値O2sを読み込めばよいが、リーン空燃比が可変となる場合は該リーン空燃比に応じて可変に算出(マップ参照等)すればよい。
【0048】
ステップ25では、前記酸素量の初期値O2sから前記消費酸素量の総量O2dtを減算することにより、現在の排気管内酸素量O2rを算出する(次式参照)。
O2r=O2s−O2dt
ステップ26では、前記排気管内酸素量O2rが副噴射を開始してもアフターバーンを発生しない許容値B以下に減少したかを判定する。
【0049】
ステップ26で排気管内酸素量O2rが許容値B以下に減少したと判定されたときは、ステップ27で副噴射許可フラグFTP3を1にセットし、まだ許容値Bを超えていると判定されたときは、ステップ28で副噴射許可フラグFTP3を0に維持する。
このようにすれば、排気管内に残存する酸素量を推定しつつ副噴射を開始させるため、ディレイ時間を一定の大きめに設定する場合に比較して副噴射の開始を早めることができ、燃費、排気エミッションをより改善できる。
【0050】
上記第2の実施形態では、排気管内酸素量のみで副噴射の開始時期を決定したが、アフターバーンは排気温度が高いほど発生しやすくなる。したがって、排気温度が最も高温となる場合を想定して許容値Bを設定する必要があり、排気温度が低温であるときには副噴射開始が必要以上に遅れる。
そこで、第3の実施形態では、排気温度も考慮して副噴射の開始時期を決定する。
【0051】
第3の実施形態におけるリッチスパイク制御のフローチャート(メインルーチン)は、第2の実施形態の図4と同一であり、前記副噴射許可フラグの値を設定するサブルーチンのフローチャートを図6に示す。図6は、図5と一部異なる。すなわち、ステップ21〜ステップ25は同一であり、ステップ31で、センサにより検出されまたは機関運転状態に基づいて推定された排気温度TEMPを読み込み、ステップ32で該排気温度TEMPに基づいて図示のように、設定された特性マップから残存酸素量の許容値Bを参照する。ここで、排気温度が高いときほどアフターバーンを発生しやすいので、許容値Bが小さい値に設定されている。以下第2の実施形態と同様に、ステップ26〜28で現在の排気管内酸素量O2rと前記許容値Bとを比較しつつ副噴射許可フラグFTP3の値をセットする。
【0052】
第4の実施形態は、三元触媒上流の空燃比センサ12の検出値に基づいて上記副噴射許可フラグFTP3の値をセットするものであり、リッチスパイク制御のフローチャート(メインルーチン)は、第2の実施形態の図4と同一である。
図7に示す副噴射許可フラグの値を設定するサブルーチンのフローチャートにおいて、ステップ41で空燃比センサの検出値を読み込み、ステップ42で該検出値がリッチに反転したかを判定し、リッチに反転したと判定されたときに、ステップ43で副噴射許可フラグFTP3の値を1にセットし、それ以外のときは0に維持する。
【0053】
このように、空燃比フィードバック制御に用いられる空燃比センサを利用して簡易に排気管内酸素量が低下したことを検出して、副噴射を開始させることができる。
第5の実施形態は、排気温度のみを用いて副噴射の開始時期を決定するものであり、リッチスパイク制御のフローチャート(メインルーチン)は、第1の実施形態の図2と同一である。
【0054】
図8に示す副噴射許可フラグの値を設定するサブルーチンのフローチャートにおいて、ステップ51で機関回転速度、負荷を読み込み、ステップ52でこれら機関回転速度、負荷に基づいて検出される運転状態に基づいて、排気管内の排気温度TEMPを推定し、ステップ53で副噴射開始のディレイ時間tdeを前記排気温度TEMPに基づいてマップ参照等により算出する。上述のように排気温度が高いときほどアフターバーンを発生しやすいので、ディレイ時間tdeが大きい値に算出される。
【0055】
以上の実施形態では、全気筒で副噴射を行うものを示したが、主噴射の不足分を賄うだけの副噴射量は少量であるため、全気筒に分割して副噴射を行うと気筒あたりの副噴射量はさらに少量となり、図9の燃料噴射弁の噴射量ばらつきが大きい小噴射量領域が使用されることにより、噴射量誤差が増大する。
そこで、以下の実施形態では、一部の気筒のみで副噴射を行うようにして噴射量誤差を抑制するようにしたものを示す。
【0056】
図10は、第6の実施形態におけるリッチスパイク制御のフローチャートを示す。ステップ1〜ステップ10’までは図2と同様であるが、ステップ10’で算出される副噴射量TP3’は、次式のように算出され、第1〜第5の実施形態のように各気筒で副噴射を行う場合に設定される気筒毎の副噴射量TP3に気筒数を乗じた値となる。
【0057】
TP3’=TP22(主噴射の増量不足分)×K×気筒数
ステップ11で副噴射開始ディレイ時間が経過したことを判定した後(または第2〜第4の実施形態のように副噴射許可判定された後)、ステップ61で副噴射を行う気筒を特定し、ステップ62で該特定気筒のみで前記副噴射量TP3’分の副噴射を行う。
【0058】
図11は、前記ステップ61で副噴射を行う気筒を特定するサブルーチンのフローチャートを示す。
ステップ71では、前記クランク角センサ27からの信号を入力する。
ステップ72では、前記クランク角センサ27からの信号に基づいて、前記副噴射開始ディレイ時間が経過したことを判定した直後(または第2〜第4の実施形態のように副噴射許可判定された直後)の時点において、次に膨張行程となる気筒を、副噴射を行う気筒として特定する。
【0059】
図12は、本実施形態を直列4気筒機関に適用したときの副噴射を行う気筒が特定されて副噴射が開始されるときの様子を示し、図13は、同じくリッチスパイク制御開始から終了までの様子を示す。
このように、特定気筒のみで副噴射を行うことにより、該特定気筒での副噴射量を大きくすることができ、図9に示された燃料噴射弁の開弁期間−噴射量特性のリニアリティが確保された領域で噴射できるため、良好な噴射量精度を得られNOx脱離要求量に見合った過不足の無い噴射量を供給することができる。また、副噴射が可能となってから、最初の膨張行程となる気筒を、副噴射を行う特定気筒とすることにより、可能な限り速やかにNOxの脱離還元処理を遂行できる。
【0060】
次に、一部の気筒のみで副噴射を行う別の実施形態(第7の実施形態)について説明する。
本実施形態は、気筒群毎に副噴射を行う特定気筒を有し、また、触媒に最も近い気筒を特定気筒とするものであり、V型内燃機関に適用したものを示す。
図14は、本実施形態のシステムにおける触媒と気筒の位置関係を示す。図において、V型6気筒内燃機関1’は、左右のバンクに接続された排気マニホールド31,32のそれぞれの下流部分に、三元触媒33,34及びその下流側にNOxトラップ触媒35,36が配設されている。
【0061】
左バンクの気筒群(♯1,♯3,♯5)において、触媒に最も近い気筒は♯5気筒であるので、該気筒群の特定気筒を♯5気筒とし、右バンクの気筒群(♯2,♯4,♯6)において、触媒に最も近い気筒は♯6気筒であるので、該気筒群の特定気筒を♯6気筒とする。
本実施形態におけるリッチスパイク制御のフローチャートは、第6の実施形態の図10と同様である。副噴射を行う特定気筒は上記のように決まっており、これらの気筒の膨張行程で副噴射を行う。
【0062】
このようにすれば、気筒群毎の触媒に対してそれぞれ本発明にかかるリッチスパイク制御を実施でき、また、V型内燃機関では触媒からの距離が気筒間で大きく異なるので触媒に最も近い気筒を特定気筒とすることで、副噴射された燃料を速やかに、かつ、排気通路壁への付着による損失を少なく触媒に到達させてNOxの脱離還元処理を遂行できる。
【0063】
なお、高速時など副噴射が可能となってから最初の膨張行程となる気筒で副噴射を行う方が先に触媒に到達するような場合は、当該気筒を特定気筒とし、そうでない場合は触媒に近い気筒を特定気筒とするように、運転状態によって特定気筒を切り換えるようにしてもよい。
また、以上示した実施形態ではリッチスパイク制御中は、特定気筒を固定とするが、可変とすることもできる。例えば、副噴射の効果が大きい最初に副噴射される気筒については、前記実施形態同様に特定気筒を設定するが、2回目以降は気筒数とは異なる数の膨張行程毎に特定気筒を設定するようにしてもよい。例えば、4気筒機関で3気筒毎に副噴射を行わせて副噴射のサイクルを早めたり、逆に、5気筒毎に副噴射を行わせて最初の副噴射量をより大きくしたりするようにしてもよい。
【0064】
さらに、以上の実施形態ではNOxトラップ触媒でトラップしたNOxを、空燃比リッチ化により放出させて還元処理するものを示したが、SOxをトラップする触媒を備え、該触媒でトラップしたSOxを、空燃比リッチ化により放出させて還元処理するものにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態のシステム構成を示す図
【図2】 第1の実施形態におけるリッチスパイク制御のフローチャート
【図3】 上記リッチスパイク制御中の様子を示すタイムチャート
【図4】 第2の実施形態におけるリッチスパイク制御のメインルーチンのフローチャート
【図5】 同上リッチスパイク制御における副噴射許可フラグの設定ルーチンのフローチャート
【図6】 第3の実施形態における副噴射許可フラグの設定ルーチンのフローチャート
【図7】 第4の実施形態における副噴射許可フラグの設定ルーチンのフローチャート
【図8】 第5の実施形態におけるディレイ時間の設定ルーチンのフローチャート
【図9】 燃料噴射弁の噴射量特性を示す図
【図10】 第6の実施形態におけるリッチスパイク制御のメインルーチンのフローチャート
【図11】 同上リッチスパイク制御における副噴射を行う気筒を特定するルーチンのフローチャート
【図12】 第6の実施形態のリッチスパイク制御中の副噴射開始時の様子を示すタイムチャート
【図13】 第6の実施形態のリッチスパイク制御時の様子を示すタイムチャート
【図14】 第7の実施形態における触媒と各気筒の位置関係を示した平面図
【符号の説明】
1 内燃機関
1’ V型内燃機関
4 燃料噴射弁
9 排気マニホールド
13 三元触媒
15 NOxトラップ触媒
16 コントロールユニット
22 エアフローメータ
26 水温センサ
27 クランク角センサ
33,34 三元触媒
35,36 NOxトラップ触媒
Claims (21)
- 排気通路に備えられた触媒にトラップされた酸化物を放出するための空燃比リッチ化の要求が発生してから、所定期間は燃料の点火前に供給される主噴射のみでリッチ化するリッチ空燃比運転を行い、前記所定期間経過後前記主噴射と点火後に供給される副噴射とに分割してリッチ化するリッチ空燃比運転を行うことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記主噴射によるリッチ度合いをステップ的に大きくすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記主噴射によるリッチ度合いを、上限値以下に制限することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 排気通路に触媒を備え、前記主噴射によるリッチ度合いを、ステップ的に大きくした後、徐々に小さくすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記主噴射によるリッチ度合いを、ステップ的に大きくした後、一定度合いに保持し、その後徐々に小さくすることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記副噴射によるリッチ度合いをステップ的に大きくすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記副噴射によるリッチ度合いを、ステップ的に大きくした後、徐々に小さくすることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記主噴射及び副噴射を合わせた全体のリッチ度合いを、ステップ的に大きくした後、徐々に小さくする略三角波状態とすることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 排気通路内の酸素濃度を推定し、所定値を下回ったとき前記所定期間を経過したとして副噴射を開始することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記主噴射の量と機関回転速度とに基づいて排気通路内の酸素濃度を推定することを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 排気通路に備えられた触媒下流の空燃比を検出し、該空燃比がリッチになったことを検出したときに、前記所定期間を経過したとして副噴射を開始することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 排気温度に相関するパラメータに基づいて前記所定期間を設定することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 排気温度に相関するパラメータが低温を示すほど前記所定期間を短く設定することを特徴とする請求項11に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記空燃比のリッチ化が要求されるのは、排気通路に備えられた触媒にトラップされたNOxを放出するときであることを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記空燃比のリッチ化が要求されるのは、排気通路に備えられた触媒にトラップされたSOxを放出するときであることを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記主噴射は、吸気行程で行われることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記副噴射は、膨張行程で行われることを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記主噴射によるリッチ度合いを所定度合いに制限し、一部の気筒以外におけるリッチ化の不足分を、該一部の気筒の副噴射で賄うことを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 複数の気筒群を有し、気筒群毎に触媒を備え、各気筒群にそれぞれ前記一部の気筒を設けることを特徴とする請求項18に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記所定期間経過後、最初に副噴射のタイミングを迎える気筒を前記一部の気筒とすることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 排気通路に備えられた触媒への距離が最も近い気筒を、前記一部の気筒とすることを特徴とする請求項18〜請求項20のいずれか1つに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
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