JP3843707B2 - 有機分子膜パターンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板表面に形成する有機分子膜パターンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、機能性薄膜として、非常に多くの種類が実用化されている。例えば、半導体素子、ディスプレー、発光素子などへ適用されている。その中で、機能性薄膜は、配線、電極、絶縁層、発光層、光学薄膜などの用途に広く用いられている。通常、機能性薄膜のパターンニングは、フォトリソグラフィー法が用いられている。フォトリソグラフィーは、サブミクロンオーダーの高精細のパターンニングを可能とする。しかしながら、フォトリソグラフィーにおいては、パターンニングの工程数が多くなるという欠点がある。一般的、フォトリソグラフィーは次のような工程を経てパターンニングが行われる。まず、パターンニングを行う薄膜を基板全面に形成する。さらに、レジストコート、露光、現像、リンスなどを経てレジストパターンを形成する。その後に、レジストパターンをマスクとしてエッチングを行い不要な部分を除去して所望のパターン形状を得る。以上で述べたように、フォトリソグラフィーは非常に多くの工程を必要とする。
【0003】
本発明者は、特願平11-262663号において、基材と、該基材上にアミノ基あるいはチオール基を有する有機化合物からなる極薄膜パターンと、該極薄膜パターンに基づいた層パターンを有する微細構造体を提案した。この極薄有機分子膜を利用したパターンニング方法は、レジストコート、現像、リンスなどの工程が不要となるため、パターンニングプロセスを簡便にする。さらに、エッチングが不要であるため、エッチング工程及びそれに伴う機能性薄膜へのダメージなどから開放されるという利点がある。
【0004】
最近、基板表面に様々な官能基を有する有機分子を形成して、その表面特性の差を利用して選択的に機能性薄膜を形成する技術が確立されつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
複数の官能基を有する有機分子を基板上に形成する方法としては、あらかじめ清浄にした基板表面全体に第一の有機分子膜を形成し、所望の形状に第一の有機分子膜の一部を除去し、さらに、除去した領域にのみ第二の有機分子膜を形成するのが一般的である。3種類以上の官能基を有する有機分子膜を形成する場合には、さらに所望の形状に第一あるいは第二の有機分子膜を除去し、そこに、べつの有機分子膜を形成する。
【0006】
有機分子膜、特に極薄の自己組織化膜の一部を除去する方法としては、様々な手法が提案されている。光、電子ビーム、X線、走査型プローブ顕微鏡の導電性プローブによる電界印加、などによるパターンニングが実証されている。中でも紫外光によるパターンニングは、フォトマスクを用いることができるため、一括での処理が可能であることから実用上好ましい。フォトマスクのパターンサイズをミクロンオーダーとすれば、そのパターンサイズの有機分子膜のパターンが得られることから、微細化したパターンを比較的簡便に得ることが可能となる。
【0007】
しかしながら、フォトマスクを用いた有機分子膜のパターンニングを用いてデバイスを作製を行う場合、フォトマスクを介して紫外光を有機分子膜に照射する必要がある。この場合、有機分子膜の分解・除去には、紫外光を数十分程度照射する必要があることが明らかになっている。フォトマスクと基板の精密な位置合わせが必要なプロセスは、製造コストがかかるのにもかかわらず、処理時間が比較的長くなり、実用的な観点から望ましくない。
【0008】
以上述べたように、紫外光とフォトマスクを用いた有機分子膜パターンの作製には、タクトタイムが比較的長いため、製造コストが下がらないという課題がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、基板表面に、膜厚が3nm以下の有機分子膜を形成した後に、基板表面近傍にオゾンを供給しながら有機分子膜に紫外光を照射して、有機分子膜の一部を除去する有機分子膜パターンの製造方法であることを特徴とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、基板表面に、膜厚が3nm以下のヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリエトキシシラン膜を形成する工程と、前記基板表面近傍にオゾンを供給しながら前記ヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリエトキシシラン膜に紫外光を照射する工程と、前記ヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリエトキシシラン膜の一部を除去する工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記紫外光の波長が、200nm以上、380nm以下の範囲にあることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、表面に膜厚が3nm以下の有機分子膜を形成された基板と、基板上に紫外光を選択的に照射する手段と、前記基板近傍にオゾンを供給する手段、とを有する有機分子膜パターンの製造装置であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる基板材料としては、 Siウエハー、石英ガラス、ガラス、プラスチックフィルム、金属基板など各種のものを用いることができる。この基板上に有機分子膜が形成される。
【0013】
有機分子膜は基板に結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基板の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖を備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。この有機分子膜の膜厚は、分子鎖の長さによって決まるが、通常1nm程度、厚くとも3nm程度であり、従来フォトリソグラフィーで用いられているレジスト膜とは全く異なるオーダーである。
【0014】
本発明において基板表面に形成される自己組織化膜とは、基板など下地層等構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、該直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。前記自己組織化膜はフォトレジスト材等の樹脂膜とは異なり、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。即ち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性などの表面特性を付与することができ、微細なパターンニングをする際に特に有用である。
【0015】
例えば、前記化合物として、後述するフルオロアルキルシランを用いた場合には、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
【0016】
自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロテトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下、「FAS」という)を挙げることができる。使用に際しては、一つの化合物を単独で用いるのも好ましいが、2種以上の化合物を組み合わせて使用しても、本発明の所期の目的を損なわなければ制限されない。また、本発明においては、前記化合物として、前記FASを用いるのが、基板との密着性を付与する上で好ましい。FASが存在する部分が撥液部となる。また、FAS以外の材料では、アルキル基を有するアルキルシランも使用できる。フルオロアルキル基に比べて、アルキル基は撥水、撥インク特性は若干劣るものの、パターンニングプロセスには充分使用可能である。
【0017】
また、FAS以外の各種の官能基を有する有機分子膜についてもこのようなパターンニング技術は有効であることは言うまでもない。
【0018】
なお、自己組織化膜は、例えば、‘An Introduction to ULTRATHIN ORGANIC FILMS: Ulman, ACADEMIC PRESS’に詳しく開示されている。
【0019】
以下、本発明の微細構造体の製造方法を図面を参照して説明する。有機分子膜パターンを得るために、図1〜3に示すように、基板11表面に自己組織化膜12を基板前面に形成し、基板上にオゾンを供給しながら、基板上に選択的に紫外光を照射して、有機分子膜パターン13の形成が行われる。
【0020】
まず、図2に示すように、基板11表面に自己組織化膜12を形成する。自己組織化膜12は、既述の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温の場合は数日程度の間放置すると基板上に形成される。また、密閉容器全体を100℃程度に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。以上のプロセスにより、基板上の全面に自己組織化膜12が形成される。
【0021】
次いで、図1に示すように、フォトマスク20を介して紫外光を自己組織化膜12に選択的に照射する。この時、基板近傍には、オゾン発生器によりオゾンを供給しながら、紫外光を照射する。紫外光が照射された領域は、自己組織化膜12の一部が分解・除去され、紫外光が照射されない領域はそのまま有機分子膜が残るため、結果的に、基板上に有機分子膜パターン13が形成される。
【0022】
本発明者は、オゾンを供給しながら紫外光を照射することにより、短い処理時間で有機分子膜の分解・除去が行われることを見出した。その詳細な機構については現在のところ明らかになっていないが、次のような機構であると推定している。
【0023】
一般的には、紫外光を照射することにより有機分子膜の一部を分解・除去するためには、光の持つエネルギーが高い200nm以下の波長域の紫外光が望ましいと考えられる。しかしながら、この波長域の紫外光を用いる場合には、大気中の酸素により容易にオゾンが生成されることが知られている。従って、200nm以下の波長域の紫外光を用いる場合には、別途に基板周辺へオゾンを供給しながら紫外光を照射して有機分子膜の分解・除去する効果は乏しい。これに対して、200nm以上、380nm以下の波長域の紫外光では、光の持つエネルギーが若干小さくなるものの、有機分子膜の分解・除去は可能である。ただし、200nm以下の波長の紫外光を用いた場合に比べて基板近傍で生成されるオゾン量が非常に少なくなる。このため、有機分子膜の分解・除去に比較的長い時間を要する。この波長域の紫外光を用いる場合、基板近傍に別途オゾンを供給することにより、このオゾンのアシストで有機分子膜の分解・除去が短時間で行われるようになり、その改善の効果は著しいことがわかった。また、380nmより長い波長の紫外光を用いる場合には、光の持つエネルギーがかなり小さくなるため、有機分子膜の分解・除去が進まなくなる。このため、紫外光を照射しながらオゾンを供給しても、有機分子膜の分解・除去にはほとんど影響がないことがわかった。
【0024】
従って、本発明においては、200nm以上、380nm以下の波長域の紫外光を用いる場合に、改善の効果が顕著であることから望ましい。この波長域の紫外光の光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、222nm、308nmのエキシマ光源や、KrFエキシマ光源、NdYAGレーザの2次高調波などが挙げられる。これらの光源を用いることにより、比較的短い照射時間で有機分子膜のパターンニングが可能となる。
【0025】
尚、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。
【0027】
石英ガラス基板上に172nmの波長の紫外光を10分間照射して、前処理としてクリーンニングを行った。
【0028】
次いで、パターン形成工程を以下のように行った。
【0029】
即ち、前記石英ガラス基板とFAS原料の一つであるヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリエトキシシランとを、同一の密閉容器に入れて96時間室温で放置することにより、該石英ガラス基板表面にフルオロアルキル基を有する自己組織化膜を形成した。そして、メタルハライドランプを光源として用いたプロジェクションタイプのアライナーにより有機分子膜パターンの作製を行った。所定のパターンを有するフォトマスクを介して、主に260nmから320nmの波長を含む紫外光を照射して、フォトマスクで遮光されていない部位の自己組織化膜のみを選択的に除去して、FASのパターンを形成した。遮光されていない領域における基板面上での光強度は、約5mW/cm2であった。また、ここで用いたオゾン発生器は、沿面放電を利用したセラミックオゾナイザーである。オゾン発生量は、0.5g/hである。
【0030】
また、ここで、用いたフォトマスクの詳細は次の通りである。基板は、厚さ約3mmの石英を用い、この厚みにおいて260nmから320nmの波長の紫外光を90%以上を透過する。遮光部はCr膜を用いており、ラインアンドスペースと呼ばれる線状のパターンが形成されている。ラインの幅及びピッチは10mmとした。
【0031】
オゾン発生器を作動しないで紫外光を照射した場合と、オゾン発生器によりオゾンを発生させた場合の紫外光による自己組織化膜の分解・除去の変化を、基板表面の水に対する接触角の違いで調べた。
【0032】
オゾン発生器を動作させた場合において、紫外光を15分照射した後に、紫外光が照射された領域は接触角の値が16度であった。一方、オゾン発生器を動作させない場合においては、紫外光を15分照射した後には、紫外光が照射された領域は接触角の値が61度であった。また、いずれの場合も、遮光パターン上、即ち、紫外光が照射されていない領域においては、接触角の値が110度であった。紫外光照射による接触角の変化は、自己組織化膜の分解・除去に起因するものと考えられる。従って、オゾン発生器を動作させた場合、15分の紫外光の照射により自己組織化膜が良好にパターンニングできたと考えられる。しかしながら、オゾン発生器を動作させない場合には、15分の紫外光照射では自己組織化膜の分解・除去は不充分であり、接触角が20度以下になるまでには、60分以上の紫外光の照射が必要であった。
【0033】
以上の結果から、オゾンを基板近傍に供給しながら、基板に対して紫外光を照射することにより、自己組織化膜の分解・除去がより短時間で行えることがわかる。
【0034】
本実施例においては、紫外光の光源として260nmから320nmの波長のメタルハライドランプを用いたが、波長域が、200nmから380nmの水銀ランプを用いた場合においても、基板近傍へのオゾンの供給により、より短時間の紫外光照射での良好な有機分子膜のパターンニングが確認できた。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、紫外光の照射時間が短くとも、良好にパターンニングが可能な有機分子膜のパターンニング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自己組織化膜のパターンニングの工程を示す断面図である。
【図2】基板上に有機分子膜が形成されている状態を示す断面図である。
【図3】基板上に有機分子膜パターンが形成されている状態を示す断面図である。
【符号の説明】
11 基板
12 有機分子膜
13 有機分子膜パターン
15 オゾン発生器
20 フォトマスク
Claims (2)
- 基板表面に、膜厚が3nm以下のヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリエトキシシラン膜を形成する工程と、
前記基板表面近傍にオゾンを供給しながら前記ヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリエトキシシラン膜に紫外光を照射する工程と、
前記ヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリエトキシシラン膜の一部を除去する工程と、を有することを特徴とする有機分子膜パターンの製造方法。 - 前記紫外光の波長が、200nm以上、380nm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の有機分子膜パターンの製造方法。
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