JP3843175B2 - 既設地下構造物を貫通する杭の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は既設地下構造物を貫通する杭の形成方法に関し、更に詳細には既に地下構造物が形成されている位置に新たに別な地下構造物を開削工法により建設する際、既に建設されている地下構造物を貫通させて例えば中間杭などを形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トンネル等の地下構造物が既に建設されている場所に、新たに別な地下構造物、例えば駅などを建設することがある。このような工事を開削工法で施工する場合、掘削範囲の外側に土砂が崩れないように地下連続壁を鉄骨又はコンクリートで形成した後に地面を覆工板で敷きつめ、この覆工板を順番にあけながら地面を掘削する。
【0003】
この掘削工事は、地下連続壁の中を上から下へ掘り進みながら、約2〜3mごとに山留をかけながら行う。その際に、覆工板の路面荷重や建設される地下構造物の荷重を受けるために中間杭が地下連続壁間に予め形成される。そして、既設の地下構造物を露出させた後、これを所定長さに亘って解体し、その場所に新たな地下構造物を建設する。
【0004】
このような工事において、前述した中間杭は既設の地下構造物を縦断して形成されるため、この既設地下構造物を貫通させて形成しなければならない。そのような時、地盤に所定の直径の孔をボーリングし、既設の地下構造物に中間杭を貫通させるための孔を直接開けると、地下水が既設の地下構造物に流れ込んで既設の地下構造物が崩壊する危険がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、既設の地下構造物の内部に地下水が浸入しないようにしながら中間杭のための孔を既設の地下構造物に形成する工事の例は今までなく、従ってまったく新しい工法を考えなくてはならないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、既設の地下構造物内部への地下水の浸入を防ぎながら杭形成のための孔を開けてこの既設地下構造物を貫通する杭を形成する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は既設地下構造物を貫通する杭の形成方法であり、前述の技術的課題を解決するために以下のような構成とされている。すなわち、本発明の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法は、既設の地下構造物を貫通して杭を打設する際、前記地下構造物まで地盤を削孔すること、その掘削孔の少なくとも前記地下構造物の壁面側に管を入れ、その下端を前記地下構造物の上面に食い込ませること、次いでこの管内に止水材を充填し、前記止水材の充填工程の前後に、前記地下構造物内における前記杭の形成予定位置にガイド管を立て、その上端及び下端を前記地下構造物の内壁に密着させ、その密着部に目地コーキングを施すこと、次いで、穿孔用のコアチューブにより既設の前記地下構造物の上部及び下部に所定の大きさの孔を開けて前記ガイド管の内部と連通させ、この孔を介して鉄骨又は鉄筋を配置し、これをモルタル又はコンクリートで覆うことから構成される。
【0008】
<本発明における付加的構成>
本発明の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法は、前述した必須の構成要素からなるが、その構成要素に更に以下のような構成を加えた場合であっても成立する。その付加的構成要素とは、前記管内に止水材を充填した後、ボーリングロッドにより前記止水材を介して既設の地下構造物の上部にチェック用の穴をあけ、この穴の位置を測量して設計通りかどうかを確認する工程を更に含むことを特徴する。
【0009】
また、本発明の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法は、前記地下構造物内における前記杭の形成予定位置にガイド管を立て、その上端及び下端を前記地下構造物の内壁に密着させ、その密着部に目地コーキングを施した後、このガイド管内に流体を充填して水密性を確認する工程を更に含むように構成することも好ましい。
【0010】
本発明の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法によると、地下構造物まで地盤を掘削し、その掘削孔の少なくとも一部にコアチューブと称する管を入れる。そして、そのコアチューブの下端を地下構造物の上面に食い込ませる。すなわち、このコアチューブの下端にビットを形成しておき、このコアチューブを回転させながら既設の地下構造物の上部を数センチ切り込んで食い込ませる。
【0011】
次いで、このコアチューブ内に止水材を充填する。そして、地上からボーリングロッドを止水材を介して挿入し、地下構造物の上部に比較的に小さな穴(チェック穴)を開け、位置の確認を行う。その後、既設の地下構造物内における杭形成予定位置にガイド管を立て、その上端及び下端を地下構造物の内壁に密着させ、その密着部に目地コーキングを施す。
【0012】
このようにすれば、既設の地下構造物内への地下水の浸入が完全に防止できる。そして、穿孔用のコアチューブを用いてチェック穴を中心として所定径の孔を既設の地下構造物における上部及び下部にあける。この孔を介して鉄骨又は鉄筋を配置し、これをコンクリートで覆うことにより既設の地下構造物を貫通する杭を、当該地下構造物内に地下水の浸入を許すことなく形成することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法を図に示される実施形態に沿って更に詳細に説明する。図1〜図8は、本発明の一実施形態に係る既設地下構造物を貫通する杭の形成方法を工程順に示している。
【0014】
最初に、杭を形成する位置にボーリングマシンを設置する。マシンの据付精度がそのまま杭の打設位置精度を支配するので、下げ振り等で2方向より垂直度を確認し、水平器でマシンの水平度を確認する。図1に示されるように地盤の表面から所定深さに亘って崩壊性に富む砂質土層がある場合には、ウイングビットでその層に達するまで削孔した後、その孔に崩壊防止用パイプ11を設置する。
【0015】
次いで、崩壊防止用パイプ10をそのままにして、その内部にシルト・土丹用のコアチューブ12を入れ、図1に示されるように既設の地下構造物10の上部まで削孔(一次削孔)する。その後、シルト・土丹用のコアチューブ12を引抜いて撤去し、これに代えてチェック用のコアチューブ13を挿入して図2に示されるように既設の地下構造物10の上部まで降ろす。そして、このチェック用のコアチューブ13の下端を既設の地下構造物10の上部から約200mmの深さまで食い込ませる。
【0016】
すなわち、このコアチューブ13の下端にはビットが形成されおり、このコアチューブ13を回転させながら既設の地下構造物10の上部を200mm切り込んで食い込ませる。このコアチューブ13の回転軸13aは中空状になっており、この中空部に止水材注入ロッド14を、その下端が既設の地下構造物10の上部付近に位置するように挿入する。
【0017】
次いで、この止水材注入ロッド14を介してコアチューブ13内に止水材15を充填しながら止水材注入ロッド14を引き抜く。これによりコアチューブ13内は止水材15で完全に満たされる。そして、図3に示されるようにコアチューブ13の中空回転軸13a内にボーリングロッド16を入れ、止水材15を介して既設の地下構造物10にチェック用の穴10aをあけ、この穴10aの位置を測量して設計通りかどうかを確認する。
【0018】
穴10aの位置確認が終了したら、図4に示されるように既設の地下構造物10の内側からこの穴10aにパッカー17を取り付けると同時に、ボーリングロッド16を完全に引き抜いて撤去する。次に、既設の地下構造物10の内壁に溝18を位置確認用の穴10aの中心軸線を中心とした所定の直径のリング状に形成する。
【0019】
その後、図5に示されるように鋼管19がその上端部をこのリング状の溝18に差し込んで設置される。この鋼管19は、2つの部材19a、19bから構成されているので、地下構造物10の内部で組み立てながら容易に設置できる。鋼管19の下端部は、この地下構造物10がトンネルの場合にはインバート上にボルトなどで固定される。その後、リング状の溝18に差し込まれた鋼管19の上端部周囲に目地コーキング20が施されて水密に封止される。
【0020】
この鋼管19の上部には、エア抜きバルブ21と給水バルブ22が取り付けられており、鋼管19の上端部周囲に目地コーキング20が施された後、給水バルブ22から鋼管19の内部に水が注入される。その際、鋼管19内部の空気はエア抜きバルブ21から排気される。これにより、目地コーキング20の施工状態が検査され、その封止効果が予め検査される。鋼管19内に検査のために注入された水は、検査終了後にも排水されることはなくそのままの状態に置かれる。
【0021】
次いで、図6に示されるように、チェック用のコアチューブ13が引き抜かれ、これに代えて既設の地下構造物10に穴をあけるための穿孔用コアチューブ23が降ろされ、この地下構造物10の上部を穿孔し、そして鋼管19を通って下部も穿孔する。その後、穿孔用コアチューブ23を引き抜いて、図7に示されるように再びシルト・土丹用のコアチューブ12を用いて、更に既設の地下構造物10の下側地盤も所定深度まで削孔する。
【0022】
このようにして実質的に既設の地下構造物10を貫通して、中間杭打設用の孔が形成されると、その孔内にH鋼25がクレーン車を用いて建て込まれる。このH鋼の側部における凹部に沿ってモルタル注入パイプが孔底まで降ろされ、モルタルによる根固め充填注入が施される。この根固め充填注入が終了したら、このモルタル注入パイプを所定位置まで引き上げて、H鋼周辺固定充填が行われる。
【0023】
これにより、図8に示されるように中間杭24(H鋼25の周囲をモルタルで固められて形成された中間杭24は図8において全体を影線で示されている)が既設の地下構造物10を貫通して形成される。そして、最後に崩壊防止用パイプ11をクレーン車等により引き抜いて、中間杭形成工事が終了する。このような中間杭24は、所定の範囲に亘って複数本形成するので、前述した一連の工程の中で適時に機械を移動して次の中間杭打設の準備並びに施工をすることが好ましい。
【0024】
前述した工程により複数の中間杭24が既設の地下構造物10を貫通して形成され、次いで地面に敷き詰めた覆工板をあけながら地面を掘削し、地下連続壁の中を上から下へ約2〜3mごとに山留をかけながら掘り進む。そして、既設の地下構造物10を露出させた後、これを所定長さに亘って解体し、その場所に新たな地下構造物を建設する。
【0025】
前述した本発明の実施形態では、地面に敷き詰めた覆工板の荷重を主に受けるための中間杭が既設のトンネルを貫通して形成される場合についてのものであったが、本発明はこのような中間杭の形成に限定されるものではなく、あらゆる目的のために既設の地下構造物を貫通して杭を形成する場合に適用されることは言うまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法によれば、既設の地下構造物を貫通して杭を打設する際、既設の地下構造物内に地下水が浸入するのを完全に防止できるため、地下水の浸入による既設の地下構造物の崩壊などの発生を防止して安全に杭の形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る既設地下構造物を貫通する杭の形成方法において最初の工程を概略的に示す構成説明図である。
【図2】前述した実施形態の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法において図1に引き続く次の工程を概略的に示す構成説明図である。
【図3】前述した実施形態の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法において図2に引き続く次の工程を概略的に示す構成説明図である。
【図4】前述した実施形態の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法において図3に引き続く次の工程を概略的に示す構成説明図である。
【図5】前述した実施形態の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法において図4に引き続く次の工程を概略的に示す構成説明図である。
【図6】前述した実施形態の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法において図5に引き続く次の工程を概略的に示す構成説明図である。
【図7】前述した実施形態の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法において図6に引き続く次の工程を概略的に示す構成説明図である。
【図8】前述した実施形態の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法において図7に引き続いて、最終的に既設の地下構造物を貫通して中間杭を形成した状態を概略的に示す構成説明図である。
【符号の説明】
10 既設の地下構造物
10a チェック用の穴
11 崩壊防止用パイプ
12 シルト・土丹用のコアチューブ
13 チェック用のコアチューブ
14 止水材注入ロッド
15 止水材
16 ボーリングロッド
17 パッカー
18 溝
19 鋼管
20 目地コーキング
21 エア抜きバルブ
22 給水バルブ
23 穿孔用コアチューブ
24 中間杭
25 H鋼
Claims (3)
- 既設の地下構造物を貫通して杭を打設する際、前記地下構造物まで地盤を削孔すること、その掘削孔の少なくとも前記地下構造物の壁面側に管を入れ、その下端を前記地下構造物の上面に食い込ませること、次いでこの管内に止水材を充填し、前記止水材の充填工程の前後に、前記地下構造物内における前記杭の形成予定位置にガイド管を立て、その上端及び下端を前記地下構造物の内壁に密着させ、その密着部に目地コーキングを施すこと、次いで、穿孔用のコアチューブにより既設の前記地下構造物の上部及び下部に所定の大きさの孔を開けて前記ガイド管の内部と連通させ、この孔を介して鉄骨又は鉄筋を配置し、これをモルタル又はコンクリートで覆うことからなる既設地下構造物を貫通する杭の形成方法。
- 前記管内に止水材を充填した後、ボーリングロッドにより前記止水材を介して既設の地下構造物の上部にチェック用の穴をあけ、この穴の位置を測量して設計通りかどうかを確認する工程を更に含む請求項1に記載の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法。
- 前記地下構造物内における前記杭の形成予定位置にガイド管を立て、その上端及び下端を前記地下構造物の内壁に密着させ、その密着部に目地コーキングを施した後、このガイド管内に流体を充填して水密性を確認する工程を更に含む請求項1又は2に記載の既設地下構造物を貫通する杭の形成方法。
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