JP3842947B2 - 弾性表面波デバイス用基板および弾性表面波デバイス - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)デバイス用基板および弾性表面波デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
SAWデバイスには、SAW共振器、トランスバーサル型SAWフィルタおよび共振器型SAWフィルタなどがあり、それぞれ用途に応じて使い分けられている。以下、SAWデバイスの1つとしてたとえばSAWフィルタについて説明する。
【0003】
図6は、一般的なSAWフィルタの構成を概略的に示す斜視図である。図6を参照して、SAWフィルタ104の基本構造は、弾性表面波デバイス用基板である圧電基板102と、その圧電基板102の表面上に形成された表面波の励振用および受信用の1対の櫛型電極101とを有する4端子構造からなっている。また、このような電極101を交差指形電極(interdigital electrode)といい、この種の変換素子をIDT(interdigital transducer)という。
【0004】
一般に、励振用の櫛型電極101にインパルス電圧を印加すると、図7に示すように圧電効果により隣り合う電極101間に互いに逆位相の歪みが生じ弾性表面波(SAW)が励起される。このSAWが圧電基板102の表面を伝搬し、このSAWによる歪みで圧電基板102上に表面電荷が生じ、受信用の櫛型電極101により電気信号として取出される。図7は、図6に示したSAWフィルタの動作を説明するための模式図である。
【0005】
従来、このようなSAWフィルタ104などのSAWデバイスは、図8に示すように圧電基板102の表面にそれぞれのデバイスに応じた電極101を配置した構造となっている。図8は、従来のSAWデバイスの断面模式図である。SAWデバイス104の特性は圧電基板102の特性に大きく依存し、圧電基板102もまた用途に応じて使い分けられている。表1に代表的な圧電基板102の材質と圧電基板102上を伝搬するSAWの特性とを示す。
【0006】
【表1】
【0007】
表1より、水晶基板では温度特性が小さく良好であるが、電気−機械結合係数K2(以下、結合係数K2と呼ぶ)が小さい。またLiTaO3(LT)基板では結合係数K2が大きいが、遅延時間温度係数(Temperature Coefficient of Delay time:TCD)に代表される温度特性が悪い。また、水晶基板およびLT基板の双方とも、SAWの伝搬速度は3000m/秒以上となっている。
【0008】
このように各基板はそれぞれ長所と短所とを持っており、デバイスの用途に応じて使い分けられている。近年、TVなどの映像機器および携帯電話などの通信機器の発達に伴い、それらに用いられるSAWデバイスにもまた、これまで以上に優れた特性が要求されている。そのため、従来より優れた特性を有する圧電基板が求められている。また、携帯電話などの通信機器の小型化に伴い、SAWデバイスも小型化することが求められている。
【0009】
なお、表1におけるオイラー角について以下に図9を用いて説明する。図9は、オイラー角を説明するための図である。
【0010】
図9を参照して、まずZ軸を回転軸としてX軸をY軸方向にφだけ回転させた軸を第1軸100とする。次に第1軸100を回転軸としてZ軸を反時計回りにθだけ回転させた軸を第2軸200とする。この第2軸200を法線として第1軸100を含む面方位でカットし、基板とする。上記面方位にカットした基板において、第2軸200を回転軸として第1軸100を反時計回りにψだけ回転させた軸を第3軸300とし、この第3軸300をSAW伝搬方向とする。面上の第3軸300と直交する軸を第4軸400とする。このようにオイラー角(φ,θ,ψ)が規定される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
SAWデバイスの中心周波数f0は、
f0=V/λ
(V:SAWの伝搬速度、λ:SAWの波長(IDTの電極101のピッチ(図6参照)))
で決定される。このため、同じ中心周波数f0を持つデバイスを作製する場合、SAWの伝搬速度Vが遅い圧電基板を用いれば、SAWの波長λ、すなわちIDTの電極101のピッチを小さくできる。このため、SAWデバイスを小型化することができる。
【0012】
また一般的に圧電基板の結合係数K2が大きいほど帯域幅の広いデバイスが設計しやすいとされている。さらに、結合係数K2が大きいほど、同じ強度のインパルス電圧を電極101に印加した場合、圧電基板102の表面においてより大きな歪みを発生させることができるので、より効率的にSAWを励起することができる。このため、所定の強度のSAWを励起するために必要な電極102の本数を減らすことができる。このため、結合係数K2が大きいほど、SAWデバイスの小型化に有利である。
【0013】
そのため、本発明の目的は、従来の圧電基板よりSAWの伝搬速度を遅くできるとともに、従来より結合係数K2が大きく、SAWデバイスを小型化することが可能な圧電基板(弾性表面波デバイス用基板)およびその圧電基板を用いたSAWデバイスを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明の1の局面における弾性表面波(SAW)デバイス用基板は、単結晶ZnO基板を備え、ZnOがオイラー角表示で(φ,70°〜110°,70°〜110°)である。
【0015】
このように、ZnOがオイラー角表示で上記のような範囲であれば、後述するようにSAWの伝搬速度が2600m/秒〜2800m/秒となり、従来の水晶基板やLT基板などよりSAWの伝搬速度を遅くできる。このため、IDTの電極ピッチを従来の基板を用いた場合より小さくできるので、SAWデバイスの小型化を図ることができる。
【0016】
また、ZnOがオイラー角表示で上記のような範囲であれば、後述するように結合係数K2を0.01(1.0%)以上とすることができる。このため、従来の圧電基板よりSAWの伝搬速度を遅くできると同時に、結合係数K2を従来の圧電基板の結合係数K2と同等以上の値とすることができるので、帯域幅の広いデバイスを設計する際に有利であるとともに、SAWデバイスをより小型化することが可能になる。
【0017】
なお、上記オイラー角表示において、(φ,70°〜110°,70°〜110°)とは、φは任意の値をとることが可能(特に限定は無い)であり、θが70°以上110°以下、ψが70°以上110°以下であることを意味している。
【0018】
上記1の局面における弾性表面波デバイス用基板では、ZnOがオイラー角表示で(φ,85°〜95°,75°〜85°)または(φ,85°〜95°,95°〜105°)であることが好ましい。
【0019】
この場合、ZnOがオイラー角表示で上記のような範囲となっていれば、結合係数K2を0.012(1.2%)以上と、従来のLT基板の結合係数K2より大きくできる。この結果、SAWデバイスの小型化をより確実に行なうことができる。
【0020】
上記1の局面における弾性表面波デバイス用基板では、ZnOがオイラー角表示で(φ,75°,90°)または(φ,105°,90°)であることが好ましい。
【0021】
この場合、オイラー角表示で上記のように表現されるZnOを弾性表面波デバイス用基板として用いれば、ZnOを用いた場合における最大の結合係数K2を得ることができる。この結果、SAWデバイスの小型化をより確実に行なうことができる。
【0022】
この発明の他の局面における弾性表面波デバイスは、上記1の局面における弾性表面波デバイス用基板を備える。
【0023】
この場合、従来の圧電基板を用いた場合より、より小型化された弾性表面波デバイスを実現できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図に基いて説明する。なお、以下の図において同一または相当する部材には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態による弾性表面波デバイス(SAWデバイス)の断面模式図である。図1を参照して、SAWデバイスを説明する。
【0026】
図1を参照して、SAWデバイス3は、圧電基板(弾性表面波デバイス用基板)である単結晶ZnO基板2と電極1とを備える。単結晶ZnO基板2は、ZnOがオイラー角表示で(φ,70°〜110°,70°〜110°)である。電極1は単結晶ZnO基板2の表面に形成された櫛型電極である。
【0027】
本発明によるSAWデバイスの3圧電基板として用いられる単結晶ZnO基板2におけるSAWの伝搬速度とオイラー角との関係を計算した結果を図2に示す。図2は、(0°,θ,ψ)単結晶ZnO基板でのSAWの伝搬速度を示す図である。なお、単結晶ZnO基板の伝搬速度および結合係数K2はオイラー角のφに対する依存性がないため、以下ではオイラー角のφ=0゜の場合を示す。
【0028】
図2を参照して、横軸はオイラー角のθ、縦軸はオイラー角のψを示している。そして、図2では、単結晶ZnO基板のそれぞれのオイラー角におけるSAWの伝搬速度を示している。図2から、単結晶ZnO基板2ではSAWの伝搬速度が2600m/秒〜2800m/秒程度である。つまり、単結晶ZnO基板2のSAWの伝搬速度は従来の水晶基板やLT基板におけるSAWの伝搬速度より遅い事がわかる。このため、SAWデバイス3におけるIDTなどの電極1のピッチを従来の基板を用いた場合より小さくできるので、SAWデバイスの小型化を図ることができる。
【0029】
次に、単結晶ZnO基板2の結合係数K2とオイラー角との関係を計算した結果を図3に示す。図3は、(0°,θ,ψ)単結晶ZnO基板2での結合係数K2を示す図である。図3を参照して、横軸はオイラー角のθ、縦軸はオイラー角のψを示している。
【0030】
また、図4は、(0°,70°〜110°,70°〜110°)単結晶ZnO基板2の結合係数K2を示す図である。図4を参照して、横軸はオイラー角のθ、縦軸はオイラー角のψを示している。図4は図3のθが70゜〜110゜、ψが70゜〜110゜である範囲を拡大した図である。
【0031】
図3および図4からもわかるように、ZnOがオイラー角表示で(φ,70°〜110°,70°〜110°)という図4に示したような範囲であれば、結合係数K2を0.01(1.0%)以上とすることができる。この結合係数K2の値は、従来の水晶基板における結合係数K2の値(約0.1%)と対比すると約10倍以上大きくなっている。このため、従来の圧電基板よりSAWの伝搬速度を遅くできると同時に、結合係数K2を従来の圧電基板の結合係数K2と同等以上の値とすることができる弾性表面波デバイス用基板を得る事ができる。この結果、単結晶ZnO基板2を用いれば、帯域幅の広いデバイスを設計する際に有利であるとともに、SAWデバイスをより小型化することが可能になる。
【0032】
図5は、(0°,75°〜105°,75°〜105°)単結晶ZnO基板2の結合係数K2を示す図である。図5を参照して、横軸はオイラー角のθ、縦軸はオイラー角のψを示している。図5は図3におけるθが75゜〜105゜、ψが75゜〜105゜である範囲を拡大した図に対応する。
【0033】
図5からわかるように、単結晶ZnO基板2では、ZnOがオイラー角表示で(φ,85°〜95°,75°〜85°)または(φ,85°〜95°,95°〜105°)であれば、結合係数K2を0.012(1.2%)以上と、従来のLT基板の結合係数K2より大きくできる。この結果、SAWデバイスの小型化をより確実に行なうことができる。
【0034】
また、図5を参照して、単結晶ZnO基板2では、ZnOがオイラー角表示で(φ,75°,90°)または(φ,105°,90°)であれば、単結晶ZnO基板2の結合係数K2を0.01318(1.318%)と、最も大きくできる。この結果、SAWデバイスの小型化をより確実に行なうことができる。
【0035】
このように、単結晶ZnO基板2を弾性表面波デバイス用基板としての圧電基板として用いる事で、従来よりSAWの伝搬速度を遅くできると同時に、結合係数K2を従来の圧電基板より大きくすることが可能な圧電基板を得る事ができる。また、このような圧電基板をSAWデバイスの基板として用いる事で、従来よりSAWデバイスを小型化することができる。
【0036】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0037】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、従来の圧電基板よりSAWの伝搬速度を遅くできるとともに、従来より結合係数K2が大きく、SAWデバイスを小型化することが可能な圧電基板(弾性表面波デバイス用基板)およびその圧電基板を用いたSAWデバイスを得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態によるSAWデバイスの断面模式図である。
【図2】 (0°,θ,ψ)単結晶ZnO基板でのSAWの伝搬速度を示す図である。
【図3】 (0°,θ,ψ)単結晶ZnO基板での結合係数K2を示す図である。
【図4】 (0°,70°〜110°,70°〜110°)単結晶ZnO基板の結合係数K2を示す図である。
【図5】 (0°,75°〜105°,75°〜105°)単結晶ZnO基板の結合係数K2を示す図である。
【図6】 一般的なSAWフィルタの構成を概略的に示す斜視図である。
【図7】 図6に示したSAWフィルタの動作を説明するための模式図である。
【図8】 従来のSAWデバイスの断面模式図である。
【図9】 オイラー角を説明するための図である。
【符号の説明】
1 電極、2 単結晶ZnO基板、3 SAWデバイス。
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)デバイス用基板および弾性表面波デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
SAWデバイスには、SAW共振器、トランスバーサル型SAWフィルタおよび共振器型SAWフィルタなどがあり、それぞれ用途に応じて使い分けられている。以下、SAWデバイスの1つとしてたとえばSAWフィルタについて説明する。
【0003】
図6は、一般的なSAWフィルタの構成を概略的に示す斜視図である。図6を参照して、SAWフィルタ104の基本構造は、弾性表面波デバイス用基板である圧電基板102と、その圧電基板102の表面上に形成された表面波の励振用および受信用の1対の櫛型電極101とを有する4端子構造からなっている。また、このような電極101を交差指形電極(interdigital electrode)といい、この種の変換素子をIDT(interdigital transducer)という。
【0004】
一般に、励振用の櫛型電極101にインパルス電圧を印加すると、図7に示すように圧電効果により隣り合う電極101間に互いに逆位相の歪みが生じ弾性表面波(SAW)が励起される。このSAWが圧電基板102の表面を伝搬し、このSAWによる歪みで圧電基板102上に表面電荷が生じ、受信用の櫛型電極101により電気信号として取出される。図7は、図6に示したSAWフィルタの動作を説明するための模式図である。
【0005】
従来、このようなSAWフィルタ104などのSAWデバイスは、図8に示すように圧電基板102の表面にそれぞれのデバイスに応じた電極101を配置した構造となっている。図8は、従来のSAWデバイスの断面模式図である。SAWデバイス104の特性は圧電基板102の特性に大きく依存し、圧電基板102もまた用途に応じて使い分けられている。表1に代表的な圧電基板102の材質と圧電基板102上を伝搬するSAWの特性とを示す。
【0006】
【表1】
【0007】
表1より、水晶基板では温度特性が小さく良好であるが、電気−機械結合係数K2(以下、結合係数K2と呼ぶ)が小さい。またLiTaO3(LT)基板では結合係数K2が大きいが、遅延時間温度係数(Temperature Coefficient of Delay time:TCD)に代表される温度特性が悪い。また、水晶基板およびLT基板の双方とも、SAWの伝搬速度は3000m/秒以上となっている。
【0008】
このように各基板はそれぞれ長所と短所とを持っており、デバイスの用途に応じて使い分けられている。近年、TVなどの映像機器および携帯電話などの通信機器の発達に伴い、それらに用いられるSAWデバイスにもまた、これまで以上に優れた特性が要求されている。そのため、従来より優れた特性を有する圧電基板が求められている。また、携帯電話などの通信機器の小型化に伴い、SAWデバイスも小型化することが求められている。
【0009】
なお、表1におけるオイラー角について以下に図9を用いて説明する。図9は、オイラー角を説明するための図である。
【0010】
図9を参照して、まずZ軸を回転軸としてX軸をY軸方向にφだけ回転させた軸を第1軸100とする。次に第1軸100を回転軸としてZ軸を反時計回りにθだけ回転させた軸を第2軸200とする。この第2軸200を法線として第1軸100を含む面方位でカットし、基板とする。上記面方位にカットした基板において、第2軸200を回転軸として第1軸100を反時計回りにψだけ回転させた軸を第3軸300とし、この第3軸300をSAW伝搬方向とする。面上の第3軸300と直交する軸を第4軸400とする。このようにオイラー角(φ,θ,ψ)が規定される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
SAWデバイスの中心周波数f0は、
f0=V/λ
(V:SAWの伝搬速度、λ:SAWの波長(IDTの電極101のピッチ(図6参照)))
で決定される。このため、同じ中心周波数f0を持つデバイスを作製する場合、SAWの伝搬速度Vが遅い圧電基板を用いれば、SAWの波長λ、すなわちIDTの電極101のピッチを小さくできる。このため、SAWデバイスを小型化することができる。
【0012】
また一般的に圧電基板の結合係数K2が大きいほど帯域幅の広いデバイスが設計しやすいとされている。さらに、結合係数K2が大きいほど、同じ強度のインパルス電圧を電極101に印加した場合、圧電基板102の表面においてより大きな歪みを発生させることができるので、より効率的にSAWを励起することができる。このため、所定の強度のSAWを励起するために必要な電極102の本数を減らすことができる。このため、結合係数K2が大きいほど、SAWデバイスの小型化に有利である。
【0013】
そのため、本発明の目的は、従来の圧電基板よりSAWの伝搬速度を遅くできるとともに、従来より結合係数K2が大きく、SAWデバイスを小型化することが可能な圧電基板(弾性表面波デバイス用基板)およびその圧電基板を用いたSAWデバイスを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明の1の局面における弾性表面波(SAW)デバイス用基板は、単結晶ZnO基板を備え、ZnOがオイラー角表示で(φ,70°〜110°,70°〜110°)である。
【0015】
このように、ZnOがオイラー角表示で上記のような範囲であれば、後述するようにSAWの伝搬速度が2600m/秒〜2800m/秒となり、従来の水晶基板やLT基板などよりSAWの伝搬速度を遅くできる。このため、IDTの電極ピッチを従来の基板を用いた場合より小さくできるので、SAWデバイスの小型化を図ることができる。
【0016】
また、ZnOがオイラー角表示で上記のような範囲であれば、後述するように結合係数K2を0.01(1.0%)以上とすることができる。このため、従来の圧電基板よりSAWの伝搬速度を遅くできると同時に、結合係数K2を従来の圧電基板の結合係数K2と同等以上の値とすることができるので、帯域幅の広いデバイスを設計する際に有利であるとともに、SAWデバイスをより小型化することが可能になる。
【0017】
なお、上記オイラー角表示において、(φ,70°〜110°,70°〜110°)とは、φは任意の値をとることが可能(特に限定は無い)であり、θが70°以上110°以下、ψが70°以上110°以下であることを意味している。
【0018】
上記1の局面における弾性表面波デバイス用基板では、ZnOがオイラー角表示で(φ,85°〜95°,75°〜85°)または(φ,85°〜95°,95°〜105°)であることが好ましい。
【0019】
この場合、ZnOがオイラー角表示で上記のような範囲となっていれば、結合係数K2を0.012(1.2%)以上と、従来のLT基板の結合係数K2より大きくできる。この結果、SAWデバイスの小型化をより確実に行なうことができる。
【0020】
上記1の局面における弾性表面波デバイス用基板では、ZnOがオイラー角表示で(φ,75°,90°)または(φ,105°,90°)であることが好ましい。
【0021】
この場合、オイラー角表示で上記のように表現されるZnOを弾性表面波デバイス用基板として用いれば、ZnOを用いた場合における最大の結合係数K2を得ることができる。この結果、SAWデバイスの小型化をより確実に行なうことができる。
【0022】
この発明の他の局面における弾性表面波デバイスは、上記1の局面における弾性表面波デバイス用基板を備える。
【0023】
この場合、従来の圧電基板を用いた場合より、より小型化された弾性表面波デバイスを実現できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図に基いて説明する。なお、以下の図において同一または相当する部材には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態による弾性表面波デバイス(SAWデバイス)の断面模式図である。図1を参照して、SAWデバイスを説明する。
【0026】
図1を参照して、SAWデバイス3は、圧電基板(弾性表面波デバイス用基板)である単結晶ZnO基板2と電極1とを備える。単結晶ZnO基板2は、ZnOがオイラー角表示で(φ,70°〜110°,70°〜110°)である。電極1は単結晶ZnO基板2の表面に形成された櫛型電極である。
【0027】
本発明によるSAWデバイスの3圧電基板として用いられる単結晶ZnO基板2におけるSAWの伝搬速度とオイラー角との関係を計算した結果を図2に示す。図2は、(0°,θ,ψ)単結晶ZnO基板でのSAWの伝搬速度を示す図である。なお、単結晶ZnO基板の伝搬速度および結合係数K2はオイラー角のφに対する依存性がないため、以下ではオイラー角のφ=0゜の場合を示す。
【0028】
図2を参照して、横軸はオイラー角のθ、縦軸はオイラー角のψを示している。そして、図2では、単結晶ZnO基板のそれぞれのオイラー角におけるSAWの伝搬速度を示している。図2から、単結晶ZnO基板2ではSAWの伝搬速度が2600m/秒〜2800m/秒程度である。つまり、単結晶ZnO基板2のSAWの伝搬速度は従来の水晶基板やLT基板におけるSAWの伝搬速度より遅い事がわかる。このため、SAWデバイス3におけるIDTなどの電極1のピッチを従来の基板を用いた場合より小さくできるので、SAWデバイスの小型化を図ることができる。
【0029】
次に、単結晶ZnO基板2の結合係数K2とオイラー角との関係を計算した結果を図3に示す。図3は、(0°,θ,ψ)単結晶ZnO基板2での結合係数K2を示す図である。図3を参照して、横軸はオイラー角のθ、縦軸はオイラー角のψを示している。
【0030】
また、図4は、(0°,70°〜110°,70°〜110°)単結晶ZnO基板2の結合係数K2を示す図である。図4を参照して、横軸はオイラー角のθ、縦軸はオイラー角のψを示している。図4は図3のθが70゜〜110゜、ψが70゜〜110゜である範囲を拡大した図である。
【0031】
図3および図4からもわかるように、ZnOがオイラー角表示で(φ,70°〜110°,70°〜110°)という図4に示したような範囲であれば、結合係数K2を0.01(1.0%)以上とすることができる。この結合係数K2の値は、従来の水晶基板における結合係数K2の値(約0.1%)と対比すると約10倍以上大きくなっている。このため、従来の圧電基板よりSAWの伝搬速度を遅くできると同時に、結合係数K2を従来の圧電基板の結合係数K2と同等以上の値とすることができる弾性表面波デバイス用基板を得る事ができる。この結果、単結晶ZnO基板2を用いれば、帯域幅の広いデバイスを設計する際に有利であるとともに、SAWデバイスをより小型化することが可能になる。
【0032】
図5は、(0°,75°〜105°,75°〜105°)単結晶ZnO基板2の結合係数K2を示す図である。図5を参照して、横軸はオイラー角のθ、縦軸はオイラー角のψを示している。図5は図3におけるθが75゜〜105゜、ψが75゜〜105゜である範囲を拡大した図に対応する。
【0033】
図5からわかるように、単結晶ZnO基板2では、ZnOがオイラー角表示で(φ,85°〜95°,75°〜85°)または(φ,85°〜95°,95°〜105°)であれば、結合係数K2を0.012(1.2%)以上と、従来のLT基板の結合係数K2より大きくできる。この結果、SAWデバイスの小型化をより確実に行なうことができる。
【0034】
また、図5を参照して、単結晶ZnO基板2では、ZnOがオイラー角表示で(φ,75°,90°)または(φ,105°,90°)であれば、単結晶ZnO基板2の結合係数K2を0.01318(1.318%)と、最も大きくできる。この結果、SAWデバイスの小型化をより確実に行なうことができる。
【0035】
このように、単結晶ZnO基板2を弾性表面波デバイス用基板としての圧電基板として用いる事で、従来よりSAWの伝搬速度を遅くできると同時に、結合係数K2を従来の圧電基板より大きくすることが可能な圧電基板を得る事ができる。また、このような圧電基板をSAWデバイスの基板として用いる事で、従来よりSAWデバイスを小型化することができる。
【0036】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0037】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、従来の圧電基板よりSAWの伝搬速度を遅くできるとともに、従来より結合係数K2が大きく、SAWデバイスを小型化することが可能な圧電基板(弾性表面波デバイス用基板)およびその圧電基板を用いたSAWデバイスを得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態によるSAWデバイスの断面模式図である。
【図2】 (0°,θ,ψ)単結晶ZnO基板でのSAWの伝搬速度を示す図である。
【図3】 (0°,θ,ψ)単結晶ZnO基板での結合係数K2を示す図である。
【図4】 (0°,70°〜110°,70°〜110°)単結晶ZnO基板の結合係数K2を示す図である。
【図5】 (0°,75°〜105°,75°〜105°)単結晶ZnO基板の結合係数K2を示す図である。
【図6】 一般的なSAWフィルタの構成を概略的に示す斜視図である。
【図7】 図6に示したSAWフィルタの動作を説明するための模式図である。
【図8】 従来のSAWデバイスの断面模式図である。
【図9】 オイラー角を説明するための図である。
【符号の説明】
1 電極、2 単結晶ZnO基板、3 SAWデバイス。
Claims (4)
- 単結晶ZnO基板を備え、
前記ZnOがオイラー角表示で(φ,70°〜110°,70°〜110°)である、弾性表面波デバイス用基板。 - 前記ZnOがオイラー角表示で(φ,85°〜95°,75°〜85°)または(φ,85°〜95°,95°〜105°)である、請求項1に記載の弾性表面波デバイス用基板。
- 前記ZnOがオイラー角表示で(φ,75°,90°)または(φ,105°,90°)である、請求項1に記載の弾性表面波デバイス用基板。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性表面波デバイス用基板を備える弾性表面波デバイス。
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