JP3841249B2 - ハイブリッド車の車両走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,ハイブリッド車の車両走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、通常の自動車にはトラクションコントロールシステムが搭載されている。このトラクションコントロールシステムは、加速時に車輪のスリップ率から車輪がスリップしそうな状態か否かを検出し、この状態を検出するとエンジンの出力トルクを低下させ、或いは車輪のブレーキ液圧を上昇させて制動力を強めることで車輪のスリップを抑制するものである(特開平7−125556号公報)。また、ハイブリッド自動車においてトルク制御を行なうものがある(特開平7−336810号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
現状では、ハイブリッド自動車にトラクションコントロールシステムを搭載し、応答性の良いモータとトルクダウン量の大きいエンジンとを制御することにより出力トルクを低下させることを着眼点とした先行技術は提案されておらず、今後車両の走行安定性を向上させる上で重要になってくると思われる。
【0004】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされ、その目的は、応答性の良いモータとトルクダウンの大きいエンジンとを効率良く制御して車輪のスリップを抑制できるハイブリッド車の車両走行制御装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明のハイブリッド車の車両走行制御装置は、以下の構成を備える。即ち、
バッテリの電力により駆動力を発生するモータと内燃機関により駆動力を発生するエンジンを併用して走行するハイブリッド車において、車輪のスリップ値を演算し、該スリップ値に基づいて車輪のスリップを検出するスリップ検出手段と、前記スリップ値が所定閾値を超えると、該スリップ値を目標値に収束させるよう前記モータとエンジンの出力トルクを低減させる制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記スリップ値が前記所定閾値を超えた初期段階よりも、前記初期段階で前記スリップ値が急増しその後該スリップ値が減少した時、或いは前記スリップ値が前記所定閾値を超えた初期段階に該スリップ値が急増しその後該スリップ値が前記目標値に近づいた時には、前記エンジンの出力トルクの配分割合を増大させる。
【0009】
また、好ましくは、前記制御手段は、前記スリップ値が前記所定閾値以下に収束してから所定期間経過したならば、前記エンジンの出力トルクの配分割合を増大させる。
【0011】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、スリップ値が所定閾値を超えると、スリップ値を目標値に収束させるようモータとエンジンの出力トルクを制御することにより、応答性の良いモータとトルクダウンの大きいエンジンとを効率良く制御して車輪のスリップを抑制できる。
【0013】
また、制御手段は、スリップ値が所定閾値を超えた初期段階よりも、初期段階でスリップ値が急増しその後スリップ値が低下した時、或いはスリップ値が所定閾値を超えた初期段階にスリップ値が急増しその後スリップ値が目標値に近づいた時には、エンジンの出力トルクの配分割合を増大させることにより、トルク復帰時の大きいエンジントルクの応答性が良くなる。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、スリップ値が所定閾値以下に収束してから所定期間経過したならば、エンジンの出力トルクの配分割合を増大させることにより、トルクダウン後の再加速性を向上できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
[ハイブリッド自動車の機械的構成]
図1は、本実施形態のハイブリッド自動車の機械的構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のハイブリッド自動車は、駆動力を発生するためのパワーユニットとして、バッテリ3から供給される電力により駆動される走行用モータ2とガソリン等の液体燃料の爆発力により駆動されるエンジン1とを併用して走行し、後述する車両の走行状態に応じて、走行用モータ2のみによる走行、エンジンのみによる走行、或いは走行用モータ2とエンジン1の双方による走行とが実現される。
【0019】
エンジン1はトルクコンバータ5を介してクラッチ6の締結により自動変速機7に駆動力を伝達する。自動変速機7は、エンジン1から入力された駆動力を走行状態に応じて(或いは運転者の操作により)所定のトルク及び回転数に変換して、ギヤトレイン9及び差動機構8を介して駆動輪11、12に伝達する。また、エンジン1はバッテリ3を充電するために発電機4を駆動する。
【0020】
走行用モータ2はバッテリ3から供給される電力により駆動され、ギアトレイン9を介して駆動輪11、12に駆動力を伝達する。
【0021】
エンジン1は直噴型ガソリンエンジン或いは吸気バルブの閉弁タイミングを遅延させる高燃費タイプのものが搭載され、走行用モータ2は例えば最大出力20KWのIPM同期式モータが使用され、発電機4は例えば最大出力10KWのものが使用され、バッテリ3は例えば最大出力30KWのニッケル水素電池が搭載される。
【0022】
統括制御ECU100はCPU、ROM、RAM、インターフェース回路及びインバータ回路等からなり、エンジン1の点火時期や燃料噴射量等をコントロールすると共に、走行用モータ2の出力トルクや回転数等をエンジン1のトルク変動や自動変速機7の変速ショックを吸収するようにコントロールする。また、統括制御ECU100は、エンジン1の作動時に発電機4にて発電された電力を、走行用モータ2に供給したり、バッテリ3に充電させるように制御する。更に、統括制御ECU100は、空調制御ECU200から空調装置50の作動信号及び停止信号を受け取り、後述するようにバッテリ3の電力や走行用モータ2から回収した電力をインバータ15で所定電圧(例えば、100V)に整えた後にコンプレッサ用モータ51や補機類用モータ61に供給する。
【0023】
空調制御ECU200は、乗員により空調スイッチ52がオンされると空調装置50の作動信号を統括制御ECU100に出力すると共に、設定温度を維持するように空調装置50及びコンプレッサ用モータ51を制御する。また、空調制御ECU200は、乗員により空調スイッチ52がオフされると空調装置50の停止信号を統括制御ECU100に出力すると共に、空調装置50及びコンプレッサ用モータ51の制御を停止する。
【0024】
発電機4は、通常の場合はエンジン始動時にバッテリ3から電力が供給されてエンジンをクランキングさせる。
【0025】
図2に示すように、直噴型ガソリンエンジン1において、121はエンジン本体、122はシリンダブロック、123はシリンダヘッド、124はピストン、125は燃焼室、126は吸気ポート、127は排気ポート、128は吸気バルブ、129は排気バルブである。シリンダヘッド123に、燃焼室125の中央部に臨む点火プラグ130が設けられているとともに、シリンダヘッド123の燃焼室側壁に燃焼室125の上記点火プラグ130の下側に向かって燃料を側方から噴射する燃料噴射弁131が設けられている。ピストン124の頂部にはキャビティ132が形成されていて、このキャビティ132は燃料噴射弁131から噴射された燃料を点火プラグ130の近傍に反射させる。排気ポート127より延びる排気通路133には排気浄化触媒134が設けられている。
【0026】
上記燃料噴射弁131は、統括制御ECU100によって作動が制御され、所定のエンジン運転状態のときに、燃料の分割噴射によって排気中のCO量を増大させて上記排気浄化触媒134に供給する。そのため、統括制御ECU100には、エンジン回転数、アクセル開度、吸入空気量、エンジン水温等の各センサからの信号が入力される。
【0027】
本実施形態のハイブリッド自動車にはトラクションコントロールシステムが搭載されている。トラクションコントロールシステムは、各車輪11〜14に配設されたブレーキ装置21〜24と、各ブレーキ装置21〜24へのブレーキ液圧を制御するブレーキ制御ECU300を備える。ブレーキ制御ECU300は、統括制御ECU100が駆動輪11、12と従動輪13、14の車輪速変化量(率)から駆動輪がスリップしそうな状態か否かを検出し、この状態を検出するとエンジン若しくは走行用モータの出力トルクを低下させ、或いは車輪のブレーキ液圧を上昇させてブレーキ力を強めることで駆動輪の加速時のスリップを抑制する。
【0028】
次に、下記表1を参照して主要な状態下におけるエンジン、発電機、走行用モータ及びバッテリの制御について説明する。尚、表1において「力行」とは駆動トルクを出力している状態を意味する。
【0029】
【表1】
[停車時]
表1に示すように、停車時では、エンジン1、発電機4、走行用モータ2は停止される。但し、エンジンは冷間時とバッテリ蓄電量低下時に運転され、発電機4はエンジン運転中は発電するために駆動されてバッテリ3を充電する。
[緩発進時]
表1に示すように、アクセル開度変化が小さい緩発進時では、エンジン1、発電機4は停止され、走行用モータ2が駆動トルクを出力する。
[急発進時]
表1に示すように、アクセル開度変化が大となり、アクセル開度が所定値以上と大きい急発進時では、発電機4と走行用モータ2が駆動トルクを出力し、エンジン1は始動後高出力で運転される。バッテリ3は発電機4と走行用モータ2とに放電する。
[エンジン始動時]
表1に示すように、エンジン始動時では、発電機4がエンジン1をクランキングするために駆動トルクを出力してエンジン1が起動される。バッテリ3は発電機4に放電する。
[定常低負荷走行時]
表1に示すように、アクセル開度が小開度域の定常低負荷走行時では、エンジン1、発電機4は停止され、走行用モータ2が駆動トルクを出力する。バッテリ3は走行用モータ2に放電する。但し、エンジン1は冷間時とバッテリ蓄電量低下時に運転され、発電機4はエンジン運転中は発電するために駆動されてバッテリ3を充電する。
[定常中負荷走行時]
表1に示すように、アクセル開度が中開度域の定常中負荷走行時では、走行用モータ2は無出力とされ、エンジン1は高効率領域で運転され、バッテリ3は走行用モータ2には放電せず、発電機4はバッテリ3を充電する。
[定常高負荷走行時]
表1に示すように、アクセル開度が略全開付近となる高開度域の定常高負荷走行時では、エンジン1は高出力運転され、発電機4と走行用モータ2が駆動トルクを出力する。バッテリ3は発電機4と走行用モータ2に放電する。但し、発電機4はバッテリ蓄電量低下時はバッテリ3を充電する。
[急加速時]
表1に示すように、アクセル開度変化が所定値以上と大きく、アクセル開度も高開度域の急加速時では、エンジン1は高出力運転され、発電機4と走行用モータ2が走行のために駆動トルクを出力する。バッテリ3は発電機4と走行用モータ2に放電する。
[減速時(回生制動時)]
表1に示すように、アクセル開度が零で車速が減少方向に変化している減速時では、エンジン1及び発電機4は停止され、走行用モータ2は発電機として電力を回生してバッテリ3を充電する。
【0030】
次に、図3乃至図8を参照して本実施形態のハイブリッド自動車の走行状態に応じた駆動力の伝達形態について説明する。
[発進&低速走行時]
図3に示すように、発進及び低速走行時には、エンジン&モータ制御ECU100は走行用モータ2のみを駆動させ、この走行用モータ2による駆動力をギアトレイン9を介して駆動輪11、12に伝達する。また、発進後の低速走行時も走行用モータ2による走行となる。
[加速時]
図4に示すように、加速時には、エンジン&モータ制御ECU100はエンジン1と走行用モータ2の双方を駆動させ、エンジン1と走行用モータ2による駆動力を併せて駆動輪11、12に伝達する。
[定常走行時]
図5に示すように、定常走行時には、エンジン&モータ制御ECU100は、エンジン1のみを駆動させ、エンジン1からギアトレイン9を介して駆動輪11、12に駆動力を伝達する。定常走行時とは、エンジン回転数が2000〜3000rpm程度の最も高燃費となる領域での走行である。
[減速時(回生制動時)]
図6に示すように、減速時には、クラッチ6を解放して、駆動輪11、12の駆動力がギアトレイン9を介して走行用モータ2に回生され、走行用モータ2が駆動源となってバッテリ3が充電される。
[定常走行時&充電時]
図7に示すように、定常走行&充電時には、クラッチ6を締結して、エンジン1からギアトレイン9を介して駆動輪11、12に駆動力が伝達されると共に、エンジン1は発電機4を駆動してバッテリ3を充電する。
[充電時]
図8に示すように、充電時には、クラッチ6を解放してエンジン1から自動変速機7に駆動力が伝達されないようにし、エンジン1は発電機4を駆動してバッテリ3を充電する。
[ハイブリッド自動車の電気的構成]
図9は、本実施形態のハイブリッド自動車の電気的構成を示すブロック図である。
【0031】
図9に示すように、統括制御ECU100には、車速を検出する車速センサ101からの信号、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ102からの信号、エンジン1に供給される電圧センサ103からの信号、エンジン1のスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ104からの信号、ガソリン残量センサ105からの信号、バッテリ3の蓄電残量を検出する蓄電残量センサ106からの信号、セレクトレバーによるシフトレンジを検出するシフトレンジセンサ107からの信号、運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出するためのアクセルストロークセンサ108からの信号、スタートスイッチ109からの信号109、その他のセンサとして、自動変速機4の作動油温度を検出する油温センサからの信号等を入力してエンジン1に対して点火時期や燃料噴射量の制御等を行うと共に、走行用モータ2への電力供給量の制御等を行う。また、統括制御ECU100は、上記各種センサ信号から車両の運転状態に関するデータ、車速、エンジン回転数、電圧、ガソリン残量、バッテリの蓄電残量、シフトレンジ、電力供給系統等をLCD等の表示部16を介して表示させる。
【0032】
ブレーキ制御ECU300は統括制御ECU100と双方向で通信可能に接続され、車輪速センサからの車輪速信号を入力して、各車輪速から推定演算される車体速と現在の車輪速から各車輪のスリップ量(率)を演算し、駆動輪11、12と従動輪13、14の車輪速変化量(率)から駆動輪がスリップしそうな状態か否かを検出し、この状態を検出するとエンジン若しくは走行用モータの出力トルクを低下させるか、或いは目標スリップ率に収束するように各チャンネル毎に並行して制動圧を上昇させて駆動輪の加速時のスリップを抑制する。尚、後述する姿勢制御装置が搭載される場合には、ヨーレートセンサ、横方向加速度センサ、ステアリング舵角センサから各信号が出力される。
[ハイブリッド自動車のトラクション制御]
次に、本実施形態のハイブリッド自動車のトラクション制御ついて説明する。
【0033】
図10は、本実施形態の統括制御ECU100によるトラクション制御を示すフローチャートである。
【0034】
図10に示すように、ステップS2では、括制御ECU100は乗員によりスタートスイッチ109がオンされるのを待ち、スタートスイッチがオンされたならば(ステップS2でYES)、ステップS4で図9に示す各センサからデータを入力する。ステップS6では、表1に示す基本運転モードに設定する。ステップS8では、図13に示すマップから走行用モータ2の基本制御量MBを演算する。ステップS10では、図13に示すマップからエンジン1の基本制御量EBを演算する。図13のマップに示すように、要求トルクが低い領域A1ではモータ2の駆動力だけで走行させ、要求トルクが中程度の領域A2ではエンジン1とモータ2の駆動力で走行させ、要求トルクが高い領域A3ではエンジン1の駆動力だけで走行させる。また、エンジン1の基本制御量EBは燃料噴射量やスロットル開度で表され、走行用モータ2の基本制御量MBは電力量で表される。
【0035】
ステップS12では、上記ステップS8、10で設定された基本制御量MB、EBからクラッチ6のオン/オフを設定する。ステップS14では、各車輪速から推定演算される車体速と駆動輪の現在の車輪速から各車輪のスリップ率(量)SLを演算すると共に(スリップ率SL=車輪速/車体速)、スリップ率SLを微分したスリップ率の変化率ΔSLを演算する。ステップS16では、スリップ率SLが所定閾値SL0以上か否かを判定する(図19参照)。ステップS16でスリップ率SLが所定閾値SL0以上ならば(ステップS16でYES)、ステップS18でフラグFを1にセットする。フラグFはトラクションコントロールシステムが作動中のときにセットされる。即ち、Fがセット中ならば駆動輪のスリップ抑制制御中であることを表している。一方、ステップS16でスリップ率SLが所定閾値SL0以上でないならば(ステップS16でNO)、後述する図11のステップS38に進む。
【0036】
ステップS20では、スリップ率SLの変化率ΔSLが所定閾値ΔSL0以上か否かを判定する(図19参照)。ステップS20で変化率ΔSLが所定閾値ΔSL0以上ならば(ステップS20でYES)、ステップS22に進む。スリップ率SLの変化率ΔSLは、図19に示すように、スリップ率が所定閾値SL0を超えた初期段階におけるスリップ率SLの増加度合(傾き)を表わし、変化率ΔSLが所定閾値ΔSL0以上ならばスリップ率SLが急増していると判定される。ステップS20で変化率ΔSLが所定閾値ΔSL0以上でないならば(ステップS20でNO)、ステップS32に進む。
【0037】
ステップS22では、クラッチ6のオン/オフを判定する。ステップS22でクラッチ6がオン(駆動輪とエンジン1とが連結)されているならば(ステップS22でYES)、ステップS24に進み、ステップS22でクラッチ6がオフ(駆動輪とエンジン1とが非連結)されているならば(ステップS22でNO)、ステップS26に進む。
【0038】
ステップS24では、トルクダウンするための要求トルク、即ちトルクダウン量ではなくトルクダウン後のトータルの要求トルクに応じて、図14のマップから走行用モータ2の制御量MSをMS1、エンジン1の制御量ESをES1に夫々設定する。一方、ステップS26では、クラッチ6がオフされて、走行用モータ2だけの駆動なので走行用モータ2の制御量MSをMS1’に設定する。
【0039】
ステップS28では、トルクダウン時の走行用モータ2の制御量MTをMS、エンジン1の制御量ETをESに夫々設定する。ステップS30では、ステップS28で決定された制御量ET、MTに応じてエンジン1、走行用モータ2、クラッチ6の制御して、トルクダウンを行ないスリップを抑制する。
【0040】
ステップS32では、クラッチ6のオン/オフを判定する。ステップS32でクラッチ6がオンされているならば(ステップS32でYES)、ステップS34に進み、ステップS32でクラッチ6がオフされているならば(ステップS32でNO)、ステップS36に進む。
【0041】
ステップS34では、トルクダウンするための要求トルクに応じて、図15のマップから走行用モータ2の制御量MSをMS2、エンジン1の制御量ESをES2に夫々設定してステップS28に進む。一方、ステップS36では、クラッチ6がオフされて、走行用モータ2だけの駆動なので走行用モータ2の制御量MSをMS2’に設定してステップS28に進む。
【0042】
上記ステップS24では、図19に示すように、ステップS16でスリップ率SLが急増している領域A4の時には、フィードフォワードで早急にトルクダウンする必要があるため図14のマップのようにエンジン1よりも走行用モータ2のトルク配分を多くしてフィードフォワードによりトルクダウンの応答性の向上を図っている。そして、ステップS34では、ステップS16でスリップ率SLが急増した後の変化率ΔSLが減少方向に移行して目標値SLAに近づく領域A5の時には、エンジン1のトルク配分を多くして、つまり領域A4で早急にトルクダウンを実行した後に図14のマップに対して図15のマップのようにエンジン1のトルク配分を多くしてトルクダウンを抑制して加速性の悪化を防止している。
【0043】
上記ステップS26では走行用モータ2のトルクダウンなので、図14のマップの要求トルクを走行用モータ2だけでまかない、同様に上記ステップS36では走行用モータ2のトルクダウンなので、図15のマップの要求トルクを走行用モータ2だけでまかなうことになる。
【0044】
また、ステップS24、S34でエンジン1のトルク配分を零として逆トルクを発生させ、大きなトルクダウンを得るようにしてもよい。
【0045】
説明を続けると、ステップS16でスリップ率SLが所定閾値SL0以上でないならば(ステップS16でNO)、図11に示すステップS38でフラグFがセットされいるか否かを判定する。ステップS38でフラグがセット中ならば(ステップS38でYES)、トラクションコントロールシステムが作動中なのでステップS40に進む。また、ステップS38でフラグがリセットされているならば(ステップS38でNO)、スリップ率SLが目標値SLAに収束してトラクションコントロールが終了したので、ステップS42で走行用モータ2の制御量MSをMS2とエンジン1の制御量ESをリセットし、ステップS44で走行用モータ2の制御量MTとエンジン1の制御量ETをステップS8、10での基本制御量MB、EBに夫々設定してステップS30に進む。
【0046】
ステップS40では、スリップ率SLが目標値SLAを下回ったか否かを判定する(図19の領域A6参照)。ステップS40でスリップ率SLが目標値SLAを下回ったならば(ステップS40でYES)、ステップS46でカウンタTをスタート又はインクリメントする。一方、ステップS40でスリップ率SLが目標値SLA以上ならば(ステップS40でNO)、ステップS48でカウンタTがスタートしているか否かを判定する(T>0?)。ステップS48でカウンタTがスタートしているならばステップS46に進み、未スタートならばステップS20に進む。
【0047】
ステップS50では、クラッチ6のオン/オフを判定する。ステップS50でクラッチ6がオンされているならば(ステップS50でYES)、ステップS52に進み、ステップS50でクラッチ6がオフされているならば(ステップS50でNO)、ステップS68に進む。
【0048】
ステップS52では、図15のマップから走行用モータ2の制御量MSをMS2、エンジン1の制御量ESをES2に夫々設定する。ステップS54ではスリップ率SLと目標値SLAとの差ΔSLAを演算する(ΔSLA=SL−SLA)。
【0049】
ステップS56では、スリップ率SLと目標値SLAとの差ΔSLAに応じてスリップ率SLを目標値SLAに収束させるためのフィードバック制御に用いる走行用モータ2のフィードバック制御量MFBを演算する。ステップS58では、ステップS52の制御量MS2とステップS56のフィードバック制御量MFBとを加算して走行用モータ2の制御量MSに設定する(MS←MS2+MFB)。
【0050】
ステップS68では、図15のマップから走行用モータ2の制御量MSをMS2に設定する。ステップS70では、クラッチ6がオフされた走行用モータ2のみの駆動であり、スリップ率SLと目標値SLAとの差ΔSLAを演算する(ΔSLA=SL−SLA)。ステップS72では、スリップ率SLと目標値SLAとの差ΔSLAに応じてスリップ率SLを目標値SLAに収束させるためのフィードバック制御に用いる走行用モータ2のフィードバック制御量MFB’を演算する。ステップS74では、ステップS68の制御量MS2とステップS72のフィードバック制御量MFB’とを加算して走行用モータ2の制御量MSに設定する(MS←MS2+MFB’)。
【0051】
ステップS60では、スリップ率SLと目標値SLAとの差ΔSLAが所定閾値ΔSLA1以上か否かを判定し、ステップS66で差ΔSLAが所定閾値ΔSLA1以上ならば(ステップS60でYES)、ステップS62に進み、差ΔSLAが所定閾値ΔSLA1以上でないならば(ステップS60でNO)、ステップS66に進む。ステップS66ではフラグF及びカウンタTをリセットして、図10のステップS28に進みフィードバック制御が実行される。
【0052】
ステップS62では、カウンタTが所定期間T1経過したか否か判定する。
ステップS62で所定期間T1経過したならば(ステップS62でYES)、ステップS64で、要求トルクに占めるエンジン制御量ESがトルクが大きくなる程大きく設定した図16のマップから走行用モータ2の制御量MSとエンジン1の制御量ESを夫々設定する。また、ステップS62で所定期間T1未経過ならば(ステップS62でNO)、図10のステップS28に進みフィードバック制御が実行される。
【0053】
上記ステップS62では、スリップ率SLが所定閾値SL0を下回った状態が所定期間経過T1したならば、トラクションコントロールが終了しそうな状態と判断できるので、ステップS64でエンジン1のトルク配分を増大させて再加速時の応答性を向上させている。
【0054】
尚、ステップS32、S50でクラッチオン(ステップS32、S50でYES)の時に、スリップ率SLが急増した後の変化率ΔSLが減少方向に移行して目標値SLAに近づく領域A5の時には、その後所定期間経過してからクラッチ6をオフして走行用モータ2によりスリップ率SLをフィードバック制御してもよく、この場合にはスリップ率SLが急増する初期段階ではエンジン1と走行用モータ2で大きくトルクダウンさせて初期スリップを回避し、その後は走行用モータ2のフィードバック制御によりスリップ率SLを目標値SLAへ早急に収束させることができる。
【0055】
また、所定期間T1は、スリップ率SLが所定閾値SL0を超えた初期段階にスリップ率SLが急増し(図19の領域A4)、その後スリップ率SLが目標値SLAに近づくまでの期間(図19の領域A5)に設定される。
【0056】
また、上記ステップS52では、ステップS20でスリップ率SLが急増した後の変化率ΔSLが減少方向に移行して目標値SLAに近づく領域A5の後に、走行用モータ2によりフィードバック制御を実行するので応答性を高めることができる。尚、ステップS52では、エンジン1の制御量ESを固定としたり、徐々に大きくしたり、差ΔSLAに基づいて走行用モータ2と同様にフィードバック制御量としてもよい。
【0057】
上記実施形態では、トラクションコントロール中においてスリップ率SLが急増してから変化率ΔSLが減少方向に移行して目標値SLAに近づく領域A4、A5まではフォードフォワードで大きくトルクダウンさせ、その後にフィードバック制御によりスリップ率SLを目標値SLAに収束させるので、応答性の良いモータとトルクダウンの大きいエンジンとを効率良く制御して車輪のスリップを抑制できる。
【0058】
尚、フィードバック制御の開始時期をスリップ率SLが目標値SLAより小さくなった時としたが、開始時期はスリップ率SLが目標値SLA近傍となった時、或いはスリップ率SLがSL0以上となった後減少し始めた時に設定してもよい。
[ハイブリッド自動車のエンジン制御]
次に、本実施形態のハイブリッド自動車のエンジン制御ついて説明する。
【0059】
図12は、本実施形態の統括制御ECU100によるエンジン制御を示すフローチャートである。
【0060】
図12に示すように、ステップS80では、括制御ECU100は図9に示す各センサからデータを入力する。ステップS82では、図10のステップS28又は図11のステップS44で設定されたエンジン1の制御量ETを読み込む。ステップS84では表1に示す基本運転モードに応じてエンジン始動条件が成立したか否か判定する。ステップS84でエンジン始動条件が成立したならば(ステップS84でYES)、ステップS86に進み、エンジン始動条件が不成立ならば(ステップS84でNO)、リターンする。
【0061】
ステップS86では、ブレーキがオンか、車速が零か、制御量ETが零以外の条件若しくはフラグFがセットされてスリップ制御中である条件が成立している時に、図17の変速マップに基づいてエンジン1の制御量ETと車速Vから変速段を演算する。ステップS88では、ステップS86で変速段が決まると車速Vからエンジン回転数Neが決まるので、図18のマップに基づいてエンジン回転数Neに対するエンジン1の制御量ETからエンジンの要求トルクを満たすよう基本燃料噴射量TBを演算する。尚、ステップS88では、基本燃料噴射量TBに基づいて理論空燃比燃焼が実行されるよう基本スロットル開度αBと基本点火時期θBも設定する。
【0062】
ステップS90では、スロットル弁及び自動変速機のバルブアクチュエータを駆動してステップS86、S88で演算されたスロットル開度θBと変速段をセットする。ステップS92では、基本燃料噴射量TBをエンジン水温や排気ガス中の酸素濃度等により補正するための補正量TCを演算する。
【0063】
ステップS94では、ステップS88の制御量TBとステップS92の補正量TCとを加算してエンジン1の制御量TTに設定する(TT=TB+TC)。
【0064】
ステップS96では、エンジン1の制御量ETが所定値ET0より小さく、或いはエンジン回転数が所定値Ne0より低くい時に燃料カットによるトルクダウンが行われるので、現在の気筒が燃料カットをする気筒に相当するか否かを判定する。ステップS96で燃料カット気筒でないならば(ステップS96でNO)、ステップS98で燃料噴射時期か否かを判定する。また、ステップS96で燃料カット気筒ならば(ステップS96でYES)、リターンする。
【0065】
ステップS98では燃料噴射時期になったときに(ステップS98でYES)、ステップS100で燃料を噴射する。この後、ステップS88で設定された基本点火時期θBに基づいて点火時期制御も実行する。
【0066】
尚、上記燃料カットによるトルクダウンは、例えば4気筒の場合にはエンジン1の制御量ETが小さくなる程、燃料カットする気筒数を増加させる。
[他の実施形態]
他の実施形態として、本実施形態のハイブリッド自動車に姿勢制御装置を搭載してもよい。姿勢制御装置は、各車輪をトルクダウン又は制動制御することで車体に旋回モーメントと減速力を加えて前輪或いは後輪の横滑りを抑制するものである。例えば、車両が旋回走行中に後輪が横滑りしそうな時(スピン)には主に前外輪にブレーキを付加し外向きモーメントを加えて旋回内側への巻き込み挙動を抑制する。また、前輪が横滑りして旋回外側に横滑りしそうな時(ドリフトアウト)には各車輪に適量のブレーキを付加し内向きモーメントを加えると共に、エンジン出力を抑制し減速力を付加することにより旋回半径の増大を抑制する。
【0067】
姿勢制御について概説すると、ブレーキ制御ECU300は、車速センサ、ヨーレートセンサ、横方向加速度センサの検出信号から車両に発生している実際の横滑り角(以下、実横滑り角という)及び実際のヨーレート(以下、実ヨーレートという)を演算すると共に、実横滑り角から姿勢制御に実際に利用される推定横滑り角の演算において参照される参照値を演算する。また、ブレーキ制御ECU300は、ステアリング舵角センサ等の検出信号から車両の目標とすべき姿勢として目標横滑り角及び目標ヨーレートを演算し、推定横滑り角と目標横滑り角の差或いは実ヨーレートと目標ヨーレートの差が所定閾値を越えた時に姿勢制御を開始し、推定実横滑り角或いは実ヨーレートが目標横滑り角或いは目標ヨーレートに収束するよう制御する。
【0068】
上記姿勢制御は、図10のステップS16の前段で実行させればよい。
【0069】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のハイブリッド自動車の機械的構成を示すブロック図である。
【図2】ハイブリッド自動車に搭載されるエンジンを示す図である。
【図3】本実施形態のハイブリッド自動車の発進&低速走行時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図4】本実施形態のハイブリッド自動車の加速時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図5】本実施形態のハイブリッド自動車の定常走行時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図6】本実施形態のハイブリッド自動車の減速時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図7】本実施形態のハイブリッド自動車の定常走行&充電時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図8】本実施形態のハイブリッド自動車の充電時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図9】本実施形態のハイブリッド自動車の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】本実施形態のハイブリッド自動車のトラクション制御を説明するフローチャートである。
【図11】本実施形態のハイブリッド自動車のトラクション制御を説明するフローチャートである。
【図12】本実施形態のハイブリッド自動車のエンジン制御を説明するフローチャートである。
【図13】基本運転時の要求トルクに対するエンジン負荷とモータ負荷の関係を示す図である。
【図14】トラクション制御時の要求トルクに対するエンジン負荷とモータ負荷の関係を示す図である。
【図15】トラクション制御時の要求トルクに対するエンジン負荷とモータ負荷の関係を示す図である。
【図16】トラクション制御終了時の要求トルクに対するエンジン負荷とモータ負荷の関係を示す図である。
【図17】本実施形態の自動変速機の変速マップを示す図である。
【図18】エンジン回転数に対する要求トルクと基本燃料噴射量の関係を示す図である。
【図19】本実施形態のトラクション制御を説明する図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 走行用モータ
3 バッテリ
4 発電機
Claims (2)
- バッテリの電力により駆動力を発生するモータと内燃機関により駆動力を発生するエンジンを併用して走行するハイブリッド車において、
車輪のスリップ値を演算し、該スリップ値に基づいて車輪のスリップを検出するスリップ検出手段と、
前記スリップ値が所定閾値を超えると、該スリップ値を目標値に収束させるよう前記モータとエンジンの出力トルクを低減させる制御手段とを具備し、
前記制御手段は、前記スリップ値が前記所定閾値を超えた初期段階よりも、前記初期段階で前記スリップ値が急増しその後該スリップ値が減少した時、或いは前記スリップ値が前記所定閾値を超えた初期段階に該スリップ値が急増しその後該スリップ値が前記目標値に近づいた時には、前記エンジンの出力トルクの配分割合を増大させることを特徴とするハイブリッド車の車両走行制御装置。 - 前記制御手段は、前記スリップ値が前記所定閾値以下に収束してから所定期間経過したならば、前記エンジンの出力トルクの配分割合を増大させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の車両走行制御装置。
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