JP3841029B2 - 自動車のフロア構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のフロア構造に関し、特に、ロードノイズの原因となる所定周波数帯域の振動入力に対して音響放射効率の低い特定モードの振動を励起させるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の走行中のタイヤの空洞共鳴やサスペンションの共振等に起因する車室内の騒音、すなわち、ロードノイズが問題になっている。一般に、タイヤの空洞共鳴によるロードノイズのピークは200〜300Hzの範囲の所定周波数帯域に現れ、サスペンションの共振によるロードノイズのピークは160Hz付近に現れる。そこで、従来よりロードノイズの音源の一つであるフロアパネルを中心として車体各部に種々の防振、防音対策が施されている。
【0003】
例えば、フロアパネルにビードを多数形成したり、パネル厚を大きくすることでその面剛性を高め、そのことによってその固有振動数を300Hz以上の高帯域にずらすことがなされている。つまり、フロアパネルが上記サスペンションの共振による160Hz付近やタイヤの空洞共鳴周波数帯域で共振しないようにして、ロードノイズを低減するというものである。この手法の場合、今度は高音域の振動が問題になるので、フロアパネルに高周波音を吸収するための吸音材を貼る等の対策が必要とされる。
【0004】
しかし、吸音材を多用すると材料コストが高くなるとともに、車体の重量が増大するという問題が生じる。
【0005】
これに対し、本出願人は、振動するパネルからの放射音がその振動モードによって大きく変化することに着目し、ロードノイズの問題となる所定の周波数帯域において音響放射効率の低い振動モードが励起されるように、フロアパネルの形状や拘束条件等を設定することを提案している。この提案内容は特開平9−202269号公報に記載されている。
【0006】
すなわち、略正方形のパネルの縦横にそれぞれ励起される定在波の腹の数をそれぞれn,mとして、「n×m=偶数」の振動モードになると、当該パネル内で隣り合う逆位相の部分からの放射音が互いに打ち消し合って、低減されることになる。図3(b)に示すように、特に「2×2モード」の振動モードのときに音響放射効率が最も低くなる。
【0007】
そこで、前記公報に記載の車体パネルの放射音低減構造では、車体フロアパネルにおけるフロアトンネルの左右両側にそれぞれ略正方形状の領域(振動モード調整領域)を設定して、この領域の振動モードが「2×2モード」となるように、パネルの面剛性分布を調整している。このようにすれば、タイヤの空洞共鳴やサスペンションの共振等による所定周波数帯域の振動が入力して、フロアパネルが共振しても、そのことによるロードノイズを十分に抑制して、車室内の静粛性を向上できるものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の如く、ロードノイズの原因となる振動数帯域は大略決まったものであり、この帯域の振動入力に対して「2×2モード」の振動が励起されるような領域を設定するには、フロアパネルに面積の広いフラット面を確保しなければならない。
【0009】
しかしながら、一般に、車体フロアパネルには車体前後方向に延びるフロアトンネル部が形成され、また、サイドフレーム、サイドシル、さらにはクロスメンバ等の強度メンバが結合されている。これらは、自動車のボディ剛性を確保して操縦安定性を高めるとともに、衝突時の乗員の保護性能を高めるという観点で極めて重要なものであるから、それらの寸法、形状やレイアウトはあまり大きく変更することができない。このため、前記「2×2モード」の振動を励起させるフロアパネル構造を自動車の車体に適用しようとしても、実際には広いフラット面を確保することができず実現が難しい。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動車の車体フロアパネルにおけるフロアトンネル部やサイドフレーム等のレイアウトを生かしつつ、該フロアパネル内に振動モード調整エリアを設定して、ボディ剛性や安全性の確保と、振動モードの調整によるロードノイズの低減とを両立することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、フロアトンネル部や各種強度メンバで区画されたフロアパネルの車体前後方向に長いエリアを、車体前後方向では2つの腹を生じ車幅方向では1つの腹を生ずる2×1モードの振動が発生するようにし、その2×1モードの固有振動数を上記タイヤの空洞共鳴によるロードノイズの低減に有効となるように調整した。
【0012】
まず、請求項1に係る発明は、自動車のフロアが、車幅中央部を車体前後方向に延びるフロアトンネル部と、該車幅の両側部を車体前後方向に延びる左右のサイドシルと、該フロアトンネル部と左右のサイドシルとの中間部を車体前後方向に延びるサイドフレームと、車幅方向に延びる複数のクロスメンバとによって複数のエリアに区画され、
上記複数のエリアのうちの少なくとも1つのエリアのフロアパネルは、左右が上記フロアトンネル部又はサイドシルとサイドフレームとによって拘束され、前後が2つのクロスメンバによって拘束された車体前後方向に長い略長方形状に形成され、且つその長辺は短辺の2倍よりも長く形成されており、
上記フロアパネルは、該フロアパネルに周縁が車体前後方向に長い楕円形に形成され且つ上方又は下方へ膨出した一対の曲面部が互いの長軸を同軸にして車体前後方向に並ぶように設けられて、車体前後方向では2つの腹を生じ車幅方向では1つの腹を生ずる2×1モードの振動が発生し該2×1モードの固有振動数が当該自動車のタイヤの空洞共鳴周波数に略一致するように振動モードを調整されたフロアパネル構造とされ
上記一対の楕円形曲面部の各々は、上記振動モードの調整のために、中央部の曲率半径が大きく周辺部の曲率半径が小さい複合曲面構造になっていることを特徴とする。
【0013】
この発明では、フロアパネルにタイヤの空洞共鳴による振動が入力されると、該フロアパネルでは、車体前後方向に隣接する2つの楕円形曲面部が互いに逆位相かつ同振幅で振動する2×1モードの振動を生ずるので、音響放射効率が極めて低くなり、もってタイヤの空洞共鳴によるロードノイズを大幅に低減することができる。
【0014】
また、上記振動モード調整フロアパネルは、その周囲が上記フロアトンネル部、サイドフレーム等の強度メンバ(エリア区画メンバ)によって拘束されているので、独立した振動系を形成し易く、狙い通りの2×1の振動モードを励起させる上で有利になっている。
【0015】
つまり、この発明は、自動車のボディ剛性や乗員保護性能を高めるための上記強度メンバによる車体フロア補強構造を生かしつつ、それら強度メンバによって区画されるエリアを利用して、2×1モードの振動により、タイヤの空洞共鳴によるロードノイズを大幅に低減することができるフロアパネル構造を形成するようにしている。
【0016】
そうして、フロアパネルの形状が上記強度メンバで囲まれて長方形となる場合、上記2×1モードの振動を発生させる上での理想的な長方形状は長辺が短辺の2倍の長さになった2×1の長方形である。しかし、自動車によっては、上記フロアトンネル部、サイドシル、サイドフレーム及びクロスメンバのレイアウトの関係で、これら強度メンバによって囲まれるフロアパネルが上記2×1の長方形にならず、例えば3×1の長方形に近い形になることがある。その場合は上記2×1モードの振動を発生させることが難しくなる。
【0017】
具体的に説明すると、2×1の長方形でなくてもこれに近い長方形であれば、周辺部にビードその他の補強を設けることによってフロアパネルを実質的には2×1の長方形にすることできる。しかし、3×1の長方形に近い長い形状になると、車幅方向に延びる補強ビードを設けて2×1の長方形領域が形成されるようにフロアパネルを仕切っても残りの領域が独自に振動し、あるいは当該残領域と2×1長方形領域と間で振動の連成を生じ、2×1モードの振動による所期のロードノイズ低減に不利になる。
【0018】
また、上述の如く細長い長方形状のフロアパネルの場合、車体幅方向における曲げ剛性(当該パネルが車体前後方向の軸を中心に曲がるときの曲げ剛性)よりも車体前後方向における曲げ剛性(当該パネルが車体幅方向の軸を中心に曲がるときの曲げ剛性)が低い。
【0019】
そこで、本発明では、長辺が短辺の2倍よりも長い略長方形状のフロアパネルに、車体前後方向に並ぶ一対の曲面部を形成するにあたり、各曲面部の平面形状を車体前後方向に長い楕円形にし、車体前後方向における曲げ剛性を高めたものである。
【0020】
従って、当該フロアパネルでは一対の楕円形曲面部が互いに逆位相で上下に振れる2×1モードの振動を生ずることになり、しかも、その曲面部が車体前後方向に長い楕円形であるから、該2×1モードの固有振動数をタイヤの空洞共鳴周波数に略一致せしめる上で有利になる。
【0021】
すなわち、2×1モードの振動のみを目的とするのであれば、上記曲面部を楕円形にする必要はなく、例えば、周縁が略長方形状になった曲面部とすることも考えられる。しかし、上記空洞共鳴によるロードノイズの低減のためにはフロアパネルの面剛性を効率良く高めてその2×1モードの固有振動数を空洞共鳴周波数に略一致せしめる必要がある。
【0022】
これに対して、上記周縁が長方形の曲面部とは違って、本発明に係る楕円形の曲面部の場合、曲面部の周縁が長方形状フロアパネルのコーナーをバイパスしてその長辺の中間部と短辺の中間部とを結ぶように斜めに延びているから、フロアパネルの面剛性を高める上で有利である。しかも、周縁が真円形の曲面部とは違って、本発明に係る曲面部は車体前後方向に長い楕円形になっているから、当該フロアパネルの車体前後方向における曲げ剛性を効率良く高めることになる。このため、本発明によれば、2×1モードの固有振動数を上記空洞共鳴周波数に略一致するように高める上で有利になる。
【0023】
そうして、上記一対の楕円形曲面部の各々は、中央部の曲率半径が大きく周辺部の曲率半径が小さい複合曲面構造になっているから、その周辺部が立ち上がった形状により、その剛性が高くなり、上記タイヤの空洞共鳴周波数に一致するように上記2×1モードの固有振動数を高める上で有利になる。
【0024】
請求項2に係る発明は、自動車のフロアが、車幅中央部を車体前後方向に延びるフロアトンネル部と、該車幅の両側部を車体前後方向に延びる左右のサイドシルと、該フロアトンネル部と左右のサイドシルとの中間部を車体前後方向に延びるサイドフレームと、車幅方向に延びる複数のクロスメンバとによって複数のエリアに区画され、
上記複数のエリアのうちの少なくとも1つのエリアのフロアパネルは、左右が上記フロアトンネル部又はサイドシルとサイドフレームとによって拘束され、前後が2つのクロスメンバによって拘束された車体前後方向に長い略長方形状に形成され、且つその長辺は短辺の2倍よりも長く形成されており、
上記フロアパネルは、該フロアパネルに周縁が車体前後方向に長い楕円形に形成され且つ上方又は下方へ膨出した一対の曲面部が互いの長軸を同軸にして車体前後方向に並ぶように設けられて、車体前後方向では2つの腹を生じ車幅方向では1つの腹を生ずる2×1モードの振動が発生し該2×1モードの固有振動数が200〜300Hzとなるように振動モードを調整されたフロアパネル構造とされ
上記一対の楕円形曲面部の各々は、上記振動モードの調整のために、中央部の曲率半径が大きく周辺部の曲率半径が小さい複合曲面構造になっていることを特徴とする。
【0025】
すなわち、上記タイヤの空洞共鳴周波数は、自動車に装着されるタイヤの種類(例えば、タイヤ幅、タイヤの直径、扁平率、空気圧)、当該自動車の車速、並びに雰囲気温度によって異なってくるが、一般には200〜300Hzの範囲に存する。よって、本発明では、フロアパネルに車体前後方向に長い一対の楕円形の曲面部を同軸にして車体前後方向に並ぶように設けることにより、2×1モードの振動を発生するようにするとともに、該2×1モードの固有振動数が200〜300Hzとなるように該フロアパネルの剛性を調整したものである。
【0026】
また、上記一対の楕円形曲面部の各々は、中央部の曲率半径が大きく周辺部の曲率半径が小さい複合曲面構造になっているから、その周辺部が立ち上がった形状により、その剛性が高くなり、上記2×1モードの固有振動数を高める上で有利になる。
【0027】
これにより、上記タイヤの空洞共鳴によるロードノイズの低減を効果的に図ることができる。
【0028】
請求項3に係る発明は、請求項2において、
上記2×1モードの固有振動数が220〜240Hzとされていることを特徴とする。
【0029】
すなわち、上述の如く自動車に装着されるタイヤの種類、当該自動車の車速等によってタイヤの空洞共鳴周波数は異なるが、例えばスポーツカーでは、装着されるタイヤの径や扁平率、ロードノイズの低減を図ろうとする車速帯等の関係でタイヤの空洞共鳴周波数は230Hz付近になることがある。従って、本発明はこのようなタイヤの空洞共鳴周波数が比較的低い自動車に適用してそのロードノイズの低減を図ることに有効になる。
【0030】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、
上記一対の楕円形曲面部は、平面視で互いの長軸の端同士が接し又は互いの長軸の端部がオーバラップしていることを特徴とする。
【0031】
このように一対の楕円形曲面部が互いに接し又はオーバラップする形の場合、曲面部を大形にすることができ、上記2×1モードの固有振動数が上記タイヤの空洞共鳴周波数に略一致するように当該フロアパネルの剛性を高める上で有利になる。また、オーバラップする形の場合でも、一対の楕円形曲面部の長軸の端部同士が重なるだけであり、両凹部全体を見れば平面視で中央部が括れたひょうたん形になるから、この括れた中央部が節となってその両側が逆位相で振動する上記2×1モードの振動は確保される。
【0032】
請求項5に係る発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、
上記フロアパネルには、上記一対の楕円形曲面部の長軸の端部同士を結ぶように車体前後方向に延び且つ幅が当該楕円の短軸よりも狭い中間ビードが形成されていることを特徴とする。
【0033】
すなわち、上述の如く当該フロアパネルは車体前後方向における曲げ剛性が低いことから、振動の際にはその中央部(相隣る楕円形曲面部の間の部位)が大きく歪み、その歪みが2×1モードの振動にも悪影響を及ぼす。
【0034】
これに対して、本発明によれば、当該フロアパネルの中央部の剛性が上記中間ビードによって高まり、特に中間ビードは車体前後方向に延びているから、当該フロアパネルの車体前後方向における曲げ剛性を高めることに有効に働き、歪みの少ない2×1モードの振動を得る上で有利になるとともに、この2×1モードの固有振動数を上記タイヤの空洞共鳴周波数に略一致させる上で有利になる。また、中間ビードの幅は楕円の短軸よりも短いから、両凹部と中間ビードとは該中間ビードの部位が括れたひょうたん形の様相を呈し、この括れた中間ビードの部位が節となる上記2×1モードの振動に有利になる。
【0035】
請求項6に係る発明は、請求項5において、
上記フロアパネルには、上記各楕円形曲面部の上記中間ビードとは長軸方向の反対側の縁に車体前後方向に延びる端部ビードが形成されていることを特徴とする。
【0036】
従って、中間ビードと端部ビードとによって、各楕円形曲面部の前後両端部の剛性のバランスをとることできるようになり、各楕円形曲面部を歪みなく上下に整然と振動させて上記2×1モードの振動を得る上で有利になる。
【0037】
請求項7に係る発明は、請求項6において、
上記フロアパネルには、各楕円形曲面部のサイドの縁に車体前後方向に延びる側部ビードが形成されていることを特徴とする。
【0038】
従って、各楕円形曲面部の両サイドの剛性のバランスをとることに側部ビードを利用することができ、各楕円形曲面部を歪みなく上下に整然と振動させて上記2×1モードの振動を得る上で有利になる。
【0039】
請求項8に係る発明は、請求項7において、
上記フロアパネルは、左右が上記サイドフレームと上記サイドシルとによって拘束されており、
上記側部ビードは、上記サイドフレーム及び上記サイドシルのうち上記フロアパネルに対する拘束度の低いサイドフレーム側に配置されて、上記楕円形曲面部の両サイドの剛性がバランスされていることを特徴とする。
【0040】
従って、各楕円形曲面部を歪みなく上下に整然と振動させて上記2×1モードの振動を得る上で有利になる。
【0041】
上述の如き自動車のフロア構造においては、
上記フロアパネルに、車体幅方向における曲げ剛性を高める働きよりも車体前後方向における曲げ剛性を高める働きの方が強い剛性調整手段を設けることができる。
【0042】
上述の如く当該フロアパネルは、車体前後方向に長い略長方形になっているから、車体幅方向における曲げ剛性よりも車体前後方向における曲げ剛性が低い。
【0043】
そこで、上記フロアパネルに、車体幅方向における曲げ剛性を高める働きよりも車体前後方向における曲げ剛性を高める働きの方が強い剛性調整手段を設け、該フロアパネルの前後左右の剛性のバランスをとりながら、全体的に剛性を高めることができるようにするものであり、上記2×1モードの固有振動数を上記タイヤの空洞共鳴周波数に略一致させる上で有利になる。
【0044】
上述の如き自動車のフロア構造においては、
上記自動車は、2ドアタイプ、又は前ドアの幅よりも後ドアの幅が狭い観音開きの4ドアタイプとすることができる。
【0045】
すなわち、2ドアタイプの自動車や、前ドアの幅よりも後ドアの幅が狭い観音開きの4ドアタイプの自動車では、フロア前端のクロスメンバとその後方のクロスメンバとの間隔が広くなり、この前後2つのクロスメンバによって拘束されたフロアパネルは車体前後方向の長辺が短辺の2倍よりも長い略長方形になり易い。
【0046】
そこで、このような自動車のフロアパネルに対して、上記一対の楕円形曲面部による振動モードの調整を行ない、タイヤの空洞共鳴によるロードノイズの低減を図るようにするものである。
【0047】
次に、自動車のフロアが、車幅中央部を車体前後方向に延びるフロアトンネル部と、該車幅の両側部を車体前後方向に延びる左右のサイドシルと、該フロアトンネル部と左右のサイドシルとの中間部を車体前後方向に延びるサイドフレームと、車幅方向に延びる複数のクロスメンバとによって複数のエリアに区画され、
上記複数のエリアのうちの少なくとも1つのエリアのフロアパネルは、左右が上記フロアトンネル部又はサイドシルとサイドフレームとによって拘束され、前後が2つのクロスメンバによって拘束された車体前後方向に長い略長方形状に形成され、且つその長辺は短辺の2倍よりも長く形成されている自動車のフロアパネルの設計方法を説明する。
【0048】
それは、上記フロアパネルに、周縁が車体前後方向に長い楕円形に形成され且つ上方又は下方へ膨出した一対の曲面部を互いの長軸が同軸になって車体前後方向に並ぶように配置することにより、車体前後方向では2つの腹を生じ車幅方向では1つの腹を生ずる2×1モードの振動が発生するように当該フロアパネルの基本形状を設計するステップと、
上記一対の楕円形曲面部の長軸の端部同士を結ぶように車体前後方向に延び且つ幅が短軸よりも狭い溝形の構造ビードを設けることによって上記2×1モードの固有振動数を高めるようにし、且つ該溝形構造ビードの深さの調節により、上記固有振動数を当該自動車のタイヤの空洞共鳴周波数に略一致するようにチューニングするステップとを有することを特徴とする。
【0049】
上述の如く、フラットな長方形状のフロアパネルに対して、2×1モードの振動を生じさせるには、一対の楕円形曲面部を形成することが有効である。しかし、タイヤの空洞共鳴によるロードノイズの低減のためには上記2×1モードの固溶振動数がタイヤの空洞共鳴周波数に略一致するように当該フロアパネルの剛性を高める必要がある。
【0050】
これに対して、本発明者は、上記フロアパネルに上記両楕円形曲面部を結ぶ溝形の構造ビードを設けると、該フロアパネルの剛性を簡単に高めることができ、しかも、該構造ビードの溝の深さによって該パネルの剛性が簡単に変化すること見出したものである。
【0051】
そこで、上記溝形の構造ビードを設けることによって上記2×1モードの固有振動数を高めるようにし、該溝形構造ビードの深さの調節により、上記固有振動数を当該自動車のタイヤの空洞共鳴周波数に略一致させるというチューニングを採用するようにした。
【0052】
従って、このようなフロアパネルの設計方法であれば、上記溝形構造ビードの深さを調節することによって、当該フロアパネルの2×1モードの固有振動数を狙いとするタイヤの空洞共鳴周波数に簡単に合わせることができ、しかも、車種やタイヤの種類によってそのタイヤの空洞共鳴周波数が異なる場合でも、フロアパネルの基本形状を同じにすることができ、その設計が容易になる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、請求項1〜3の各発明によれば、強度メンバによって周囲が拘束された車体前後方向に長い略長方形状のフロアパネルに一対の曲面部を前後に並ぶように形成し、この一対の楕円形曲面部の各々を、中央部の曲率半径が大きく周辺部の曲率半径が小さい複合曲面構造にすることによって、当該フロアパネルを2×1モードで振動させ且つその固有振動数をタイヤの空洞共鳴周波数に合わせるように、又は200〜300Hzとなるようにしたから、自動車のボディ剛性や乗員保護性能を高めるための車体補強構造を生かしつつ、タイヤの空洞共鳴によるロードノイズを大幅に低下させることができ、しかも、上記曲面部を車体前後方向に長い楕円形にしたから、上記強度メンバによって囲まれるフロアパネルが、例えば3×1の長方形に近い長い形になっても、当該フロアパネルの車体前後方向における曲げ剛性を高くして、上記固有振動数をタイヤの空洞共鳴周波数に略一致させる上で有利になる。
【0054】
請求項4に係る発明によれば、上記一対の楕円形曲面部の長軸の端同士が接し又は互いの長軸の端部がオーバラップするようにしたから、上記2×1モードの振動を確保しながら、当該フロアパネルの剛性を高めて、上記2×1モードの固有振動数を上記タイヤの空洞共鳴周波数に略一致させる上で有利になる。
【0055】
請求項5に係る発明によれば、上記フロアパネルに、上記一対の楕円形曲面部の長軸の端部同士を結ぶように車体前後方向に延び且つ幅が当該楕円の短軸よりも狭い中間ビードが形成されているから、歪みの少ない2×1モードの振動を得る上で有利になるとともに、この2×1モードの固有振動数を上記タイヤの空洞共鳴周波数に略一致させる上で有利になる。
【0056】
請求項6に係る発明によれば、各楕円形曲面部の上記中間ビードとは長軸方向の反対側の縁に車体前後方向に延びる端部ビードが形成されているから、各楕円形曲面部の前後両端部の剛性をバランスさせて、各楕円形曲面部が歪みなく上下に整然と振動する上記2×1モードの振動を得る上で有利になる。
【0057】
請求項7に係る発明によれば、各楕円形曲面部のサイドの縁に車体前後方向に延びる側部ビードが形成されているから、各楕円形曲面部の両サイドの剛性をバランスさせて、各楕円形曲面部が歪みなく上下に整然と振動する上記2×1モードの振動を得る上で有利になる。
【0058】
請求項8に係る発明によれば、上記フロアパネルの左右が上記サイドフレームと上記サイドシルとによって拘束されている場合において、上記側部ビードを上記フロアパネルに対する拘束度の低いサイドフレーム側に配置するようにしたから、上記楕円形曲面部の両サイドの剛性をバランスさせて、各楕円形曲面部が歪みなく上下に整然と振動する上記2×1モードの振動を得る上で有利になる。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0060】
図1は、本発明に係るフロア構造を採用した自動車を示す。この自動車は、前ドア31の幅よりも後ドア32の幅が狭い観音開きの4ドアタイプである。この自動車には、フロントフロアパネル1の前端、中間及び後端の各々を車幅方向に延びるNo.1,No.2及びNo.3の各クロスメンバ8,15,16が設けられていて、No.1クロスメンバ8とNo.2クロスメンバ15との間隔は、No.2クロスメンバ15とNo.3クロスメンバ16との間隔よりも広くなっている。符号33はタイヤである。
【0061】
図2に示すように、上記自動車のフロントフロアパネル1の車体前側の端縁部には、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル4の下端縁部がスポット溶接等により接合されており、さらに、該ダッシュパネル4の前方には、エンジンルームを左右両側から囲むように一対のフロントサイドフレーム5,5が設けられている。
【0062】
前記フロントフロアパネル1は、所定厚(例えば、厚さ0.65〜0.7mm)の鋼板をプレス成形してなり、車幅方向の略中央位置において上方に膨出するフロアトンネル部11が車体前後方向に延びるように一体成形されたものである。また、フロントフロアパネル1の車幅方向の両端側には、それぞれ、自動車のサイドボディ(図示せず)が取り付けられるようになっていて、このサイドボディの下端縁部を車体前後方向に延びる閉断面構造のサイドシル12,12(仮想線で示す)がスポット溶接等によりフロントフロアパネル1に接合される。すなわち、上記フロントフロアパネル1は、上記フロアトンネル部11を含めて上記左右のサイドシル12,12間の全幅が1枚の金属板からプレス成形によって形成されている。
【0063】
さらに、前記フロアトンネル部11と各サイドシル12,12との中間には、それぞれ車体前後方向に延びるようにフロアサイドフレーム13,13が設けられている。この各フロアサイドフレーム13は、前記フロントサイドフレーム5の後側の部分と同様に、断面コ字状の鋼板製部材をフロントフロアパネル1の底面に下方から重ね合わせて、略矩形の閉断面を構成したものである。各フロアサイドフレーム13,13の前端部はそれぞれフロントサイドフレーム5,5の後端部に接続されている。
【0064】
つまり、前記フロントフロアパネル1には、車体前後方向の補強構造として、中央のフロアトンネル部11と左右両端側のサイドシル12,12とに加えて、フロアトンネル部11とサイドシル12との間の略中央にフロアサイドフレーム13が配設されており、これにより、自動車のボディの曲げ剛性やねじり剛性を十分に確保できるとともに、特に自動車の正面衝突時における車室の変形を最小限に抑えて、乗員を確実に保護することができる。
【0065】
一方、車幅方向の補強構造としては、前記したように、フロントフロアパネル1の前縁部を補強するNo.1クロスメンバ8がある。これに加えて、フロントフロアパネル1の車体前後方向中間位置において車幅方向に延びるNo.2クロスメンバ15と、フロントフロアパネル1の後端縁部において車幅方向に延びるNo.3クロスメンバ16とが配設されている。
【0066】
No.1クロスメンバ8は、フロアパネル1の前端縁からダッシュパネル4に跨って設けられており、このクロスメンバ8とダッシュパネル4とによって車幅方向に延びる閉断面構造が構成されている。
【0067】
No.2クロスメンバ15及びNo.3クロスメンバ16は、下向きに開放するコ字状断面の部材をフロントフロアパネル1の上面に接合したもので、車幅方向の略中央側はフロアトンネル部11に接合され、側端部はサイドシル12に接合されている。
【0068】
以上の構成により、上記フロントフロアパネル1によって構成されるフロアは、各々車体前後方向に延びるフロアトンネル部11、フロアサイドフレーム13,13及びサイドシル12,12、並びに、各々車幅方向に延びる各クロスメンバ8,15,16によって略長方形状の若しくは長方形状に近い形状の8つのエリアに区画されている。
【0069】
そうして、この実施形態の特徴は、上記8つのエリアのうち、左右がサイドシル12とサイドフレーム13とで区画され、前後がNo.1及びNo.2のクロスメンバ8,15で区画された2つのエリアS1のフロアパネルを、それぞれ、タイヤの空洞共鳴周波数に対応する所定周波数帯域(200〜300Hz)の振動入力、特に220〜240Hzの振動入力に対して音響放射効率の低い特定の振動モードが励起される振動モード調整フロアパネル構造にしたことにある。上記8つのエリアのうちの残りのエリアのフロアパネルは固有振動数が300Hzよりも高くなるようにその剛性が調整されている。
【0070】
ここで、音響放射効率の低い振動モードについては、従来例の公報(特開平9−202269号)に詳しく説明されている。要するに、矩形状の領域の縦横にそれぞれ励起される定在波の腹の数をそれぞれn,mとしたときに、図3に一例を示すように、「n×m=偶数」であれば、当該パネル内で隣接する逆相の部分からの放射音が互いに打ち消し合って、音響放射エネルギが大幅に低下することになる。
【0071】
すなわち、同図(a)に示す「2×1=2」の振動モードでは、パネル内の2つの部分が逆位相かつ同振幅で振動し、放射音同士が打ち消し合う。また、同図(b)に示す「2×2=4」の振動モードでは、パネル内の4つの部分からの放射音が互いに打ち消し合うことになり、このときに音響放射効率が最小となる。
【0072】
そして、この実施形態では、上述の如く車体剛性を確保するために車体前後方向及び車幅方向にそれぞれ配置したフレームやクロスメンバ等の補強構造のレイアウトを生かしつつ、フロアパネル1上の車体前後方向に長いエリアS1の各フロアパネルに、それぞれ、車体前後方向の定在波の腹が2つでかつ車幅方向の定在波の腹が1つとなる2×1モードの振動を励起させるようにしている。
【0073】
具体的に説明すると、サイドシル12、サイドフレーム13及びクロスメンバ8,15によって区画された上記エリアS1のフロアパネルは、車体前後方向に延びる長辺の長さが短辺の長さの2倍以上(この実施形態では短辺に対する長辺の長さの比が約3)になった細長い長方形状になっており、且つ周縁がこれらサイドシル12、サイドフレーム13及びクロスメンバ8,15によって拘束されている。
【0074】
そうして、エリアS1のフロアパネルには、上記2×1モードで振動し、且つその固有振動数が略230Hzとなるようにその面剛性を調整する剛性調整手段が設けられている。
【0075】
まず、このフロアパネルの前後の両端部にはそれぞれ車幅方向に延びる横ビード35,36が形成され、左右の両側部にはそれぞれ車体前後方向に延びる縦ビード37,38が形成されている。この横及び縦のビード35〜38で囲まれた長方形状の面は短辺に対する長辺の長さの比が3よりも少し小さくなっている。
【0076】
上記ビード35〜38で囲まれた面には、周縁が車体前後方向に長い楕円形に形成され且つ下方へ膨出した一対の楕円形曲面部(皿状凹部)39,40が互いの長軸を同軸にして車体前後方向に並ぶように設けられている。楕円形曲面部39,40の周囲は基本的にはフラットに形成されている。
【0077】
上記一対の楕円形曲面部39,40の間には中間ビード41が形成され、前側楕円形曲面部39の前端縁及び後側楕円形曲面部40の後端縁の各々には端部ビード42,43が形成され、楕円形曲面部39,40の各々のサイドフレーム13側の縁には側部ビード44,44が形成されている。また、中間ビード41の両側のフラット部には凹部45が形成されている。なお、符号46は水抜き孔である。
【0078】
上記横ビード35,36及び縦ビード37,38は、いずれもパネルを溝状に凹ませて形成された構造ビードである。
【0079】
楕円形曲面部39,40は、平面視で互いの凹部が接する、つまりは互いの長軸の端同士が接する関係になるように、その楕円の大きさが調整されている。また、図4に示すように、楕円形曲面部39,40は、曲率半径R1が大きい中央部の曲面と、曲率半径R2が小さい周辺部の曲面とが連続した複合曲面に形成されている。本実施形態の場合、曲率半径R1は曲率半径R2の4倍になっている。また、各楕円形曲面部39,40には面剛性の調整と滑り止めとを兼ねたビード47が車体前後方向に延びている。
【0080】
中間ビード41は、上記楕円形曲面部39,40の間を溝状に凹ませて形成された構造ビードであって、楕円形曲面部39,40の楕円の短軸よりも短い幅で車体前後方向に延び、図5に示すように、楕円形曲面部39,40の長軸の端部同士を結んでいる。
【0081】
後側の端部ビード43は、後側の楕円形曲面部40の長軸の後端縁を溝状に凹ませて形成された構造ビードであって、中間ビード41と同じ幅で車体前後方向に延び後側の楕円形曲面部40と後側の横構造ビード36とを結んでいる。前側の端部ビード42も、後側の端部ビード43と同様に形成されて、前側の楕円形曲面部39と前側の横構造ビード35とを結んでいる。
【0082】
側部ビード44は、楕円形曲面部39(40)の各々のサイドフレーム13側の縁(当該楕円形曲面部の楕円の短軸位置)を溝状に凹ませて形成された構造ビードであり、図6に示すように、楕円形曲面部39(40)と縦構造ビード37とに跨って車体前後方向に延びている。なお、サイドシル12の側には側部ビードは設けられていない。その理由は、サイドシル12とサイドフレーム13とを比較した場合、前者の方が剛性が高く、フロアパネルに対する拘束度が高いことにある。つまり、細部フレーム13の側のみに側部ビード44を設けたのは、サイドシル12とサイドフレーム13との剛性の違いを考慮して、上記楕円形曲面部39,40の両サイドの剛性をバランスさせ、各楕円形曲面部39,40をその中央部が腹なるように歪みなく上下に整然と振動させるためである。
【0083】
以上の面剛性の調整により、エリアS1のフロアパネルは、上記2×1モードで振動し、且つその固有振動数は略230Hzになっている。以下では、上記楕円形曲面部39,40など上述の各剛性調整手段の働きについてシミュレーション結果に基づいて具体的に説明する。
【0084】
図7(a)は、エリアS1のフロアパネルの中央部に周縁が角形になった一対の曲面部51,51を前後に並ぶように形成し、その前後の両外側をフラットにした場合である。このケースでの固有振動数は、1×1モードでは約135Hz、2×1モードでは約156Hz又は約242Hzとなった。但し、2×1モードでの固有振動数が約242Hzに現れたが、パネルの振動は明確な2×1モードにはならなかった。
【0085】
図7(b)は、エリアS1のフロアパネルの周縁に沿って溝形の構造ビード52を形成し、この構造ビード52で囲まれた面に前後方向に長い角形になった一対の曲面部53,53を前後に並ぶように形成した場合である。このケースでの固有振動数は、1×1モードでは約90Hz、2×1モードでは約138Hzとなった。しかし、2×1モードの固有振動数は狙いとするタイヤの空洞共鳴周波数230Hzからみるとかなり低い。
【0086】
図7(c)は、図7(b)において、その角形の曲面部53に代えて前後方向に長い楕円形曲面部54を採用した場合である。この楕円形曲面部54は、中央部も周辺部も同じ曲率半径の曲面に形成されている(幅方向における曲率半径は約450mm)。このケースでの固有振動数は、1×1モードでは約90Hz、2×1モードでは約148Hzとなった。すなわち、曲面部を楕円形にすると、2×1モードの固有振動数が高くなることがわかったが、狙いとするタイヤの空洞共鳴周波数230Hzからみると未だ低い。
【0087】
図7(d)は、図7(c)において、その曲率半径が一定の楕円形曲面部54に代えて、図4に示す、曲率半径R1が大きい中央部の曲面と、曲率半径R2が小さい周辺部の曲面とが連続した複合曲面の楕円形曲面部55を採用した場合である(R1=600mm,R2=150mm)。このケースでの固有振動数は、1×1モードでは約98Hz、2×1モードでは約160Hzとなった。すなわち、楕円形曲面部を複合曲面に形成すると、2×1モードの固有振動数が高くなることがわかったが、狙いとするタイヤの空洞共鳴周波数230Hzからみると未だ低い。
【0088】
図7(e)は、図7(d)の複合曲面の楕円形曲面部55を深くして大型化した楕円形曲面部39,40を採用し、相隣る楕円形曲面部39,40の長軸の端同士が接するようにした場合である。このケースでの固有振動数は、1×1モードでは約138Hz、2×1モードでは約194Hzとなった。すなわち、楕円形曲面部の大型化により、2×1モードの固有振動数が高くなることがわかったが、狙いとするタイヤの空洞共鳴周波数230Hzからみると未だ低い。また、振動したときの歪エネルギー分布の解析から、楕円形曲面部39,40の長軸の端同士が接する部位、楕円形曲面部39の前端部、楕円形曲面部40の後端部、並びに楕円形曲面部39,40の片側(サイドフレーム側)の歪みが大きいことがわかった。
【0089】
図7(f)は、図7(e)において、その楕円形曲面部39,40を結ぶ中間構造ビード41、楕円形曲面部39,40とその前後の構造ビード52,52とを結ぶ端部構造ビード42,43、並びに側部構造ビード44を設けた場合(図2に示す実施形態)である。すなわち、振動時の歪みの大きい部位に構造ビード41〜44を形成した。構造ビード41〜44の深さは3mmとした。このケースでの固有振動数は、1×1モードでは約157Hz、2×1モードでは約234Hzとなった。すなわち、上記構造ビード41〜44の形成により、2×1モードの固有振動数を狙いとするタイヤの空洞共鳴周波数230Hzに略一致させることができた。
【0090】
ところで、前後方向に長い長方形状のフロアパネルの場合、前後方向における曲げ剛性の方が幅方向における曲げ剛性よりも低くなる。これに対して、上記楕円形の楕円形曲面部39,40は、前後方向に長く延びており、また、構造ビード41〜44は全て前後方向に長くなっており、いずれもフロアパネルの前後方向における曲げ剛性を高める。このことが、上記2×1モードの固有振動数を狙いとするタイヤの空洞共鳴周波数230Hzに略一致するように高める上で有利に働いていると考えられる。
【0091】
また、上記構造ビード41〜44は、図7(e)と図7(f)の固有振動数の比較から明らかなように、当該パネルの固有振動数を高める働きが大きいが、その働きには当該構造ビードの深さが大きな影響を与える。従って、フロアパネルに2×1モード振動のための基本形状(周辺のビード35〜38(又は52)及び一対の楕円形曲面部39,40)を決定した後、上記溝形構造ビード41〜44を形成するにあたり、その深さを調節することにより、当該パネルの2×1モードの固有振動数をタイヤの空洞共鳴周波数に略一致するように簡単にチューニングすることができる。
【0092】
また、上記周辺の構造ビード35〜38は、略長方形状のフロアパネルに2×1モードの振動を生起せしめる領域を制限する働き、並びにフロアパネル全体の剛性を高める働きをする他、当該2×1モードの振動領域とその周辺のサイドフレーム、クロスメンバ等の強度メンバとの間で振動が連成することを防止する働きをする。つまり、これら構造ビード35〜38は、その長手方向におけるフロアパネルの曲げ剛性を高めるが、該長手方向と直交する方向の曲げ剛性を高めないから、当該2×1モードの振動領域とその周辺の強度メンバとの間で振動が伝達することを抑制する。楕円形曲面部39,40の周囲のフラット部も上記振動連成の防止に働く。
【0093】
図8は上述の振動モード調整フロアパネルを有する本発明パネルと、そのような振動モード調整フロアパネルを備えないフラットパネルとについて、音響放射特性を比較したテスト結果を示す。テストは、各パネルの周縁を全周にわたって単純拘束し、各パネルに適宜の振動数で加振力Fを与えて音響放射パワーPを測定するというものである。
【0094】
同図によれば、本発明パネルでは、振動数230Hzにおいて音響放射パワーがフラットパネルに比べて大きく低下している。この結果から、本発明パネルの振動モード調整エリアでは、2×1モードの振動が230Hz付近で生じていることを理解することができる。
【0095】
また、上記S1以外の他のエリアのフロアパネルについては、その固有振動数が300Hz以上になるようにその面剛性を調整したので、タイヤの空洞共鳴による230Hz前後の外部振動に対する共振が避けられ、放射音が低減する。
【0096】
なお、本願発明の構成は前記実施形態のものに限定されず、それ以外の種々の構成をも包含するものである。すなわち、一対の楕円形曲面部39,40は、その一方を下方へ膨出した凹曲面とし、他方を上方へ膨出した凸曲面としても、或いはその両方を共に凸曲面としてもよい。
【0097】
また、パネルに制振材を添付することにより他の振動モードを抑制することもロードノイズの低減に効果があり、この場合にはパネルの振動レベルそのものが低下して、放射音量が全体的に小さくなるので、このことによっても車室内の静粛性が向上する。
【0098】
また、前記実施形態では、第1エリアS1のフロアパネルを振動モード調整フロアパネル構造としているが、これに限らず、他のエリアについても適宜振動モード調整フロアパネル構造を採用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る自動車の側面図である。
【図2】 本発明に係る自動車のアンダボディの斜視図である。
【図3】 振動モード調整領域における放射音のキャンセレーションの概念図である。
【図4】 本発明に係る楕円形曲面部の複合曲面を示す線図である。
【図5】 本発明に係る中間ビードと端部ビードとを示す車体前後方向に切断した断面図である。
【図6】 本発明に係る側部ビードを示す車幅方向に切断した断面図である。
【図7】 各種のフロアパネルを示す斜視図である。
【図8】 本発明パネルとフラットパネルとの音響放射特性を比較したグラフ図である。
【符号の説明】
S1 振動モード調整エリア(フロアパネル)
1 フロントフロアパネル
4 ダッシュパネル
8 No.1クロスメンバ(強度メンバ)
11 フロアトンネル部(強度メンバ)
12 サイドシル(強度メンバ)
13 サイドフレーム(強度メンバ)
15 No.2クロスメンバ(強度メンバ)
16 No.3クロスメンバ(強度メンバ)
31 前ドア
32 後ドア
39,40 楕円形曲面部
41 中間構造ビード
42,43 端部構造ビード
44 側部構造ビード

Claims (8)

  1. 自動車のフロアが、車幅中央部を車体前後方向に延びるフロアトンネル部と、該車幅の両側部を車体前後方向に延びる左右のサイドシルと、該フロアトンネル部と左右のサイドシルとの中間部を車体前後方向に延びるサイドフレームと、車幅方向に延びる複数のクロスメンバとによって複数のエリアに区画され、
    上記複数のエリアのうちの少なくとも1つのエリアのフロアパネルは、左右が上記フロアトンネル部又はサイドシルとサイドフレームとによって拘束され、前後が2つのクロスメンバによって拘束された車体前後方向に長い略長方形状に形成され、且つその長辺は短辺の2倍よりも長く形成されており、
    上記フロアパネルは、該フロアパネルに周縁が車体前後方向に長い楕円形に形成され且つ上方又は下方へ膨出した一対の曲面部が互いの長軸を同軸にして車体前後方向に並ぶように設けられて、車体前後方向では2つの腹を生じ車幅方向では1つの腹を生ずる2×1モードの振動が発生し該2×1モードの固有振動数が当該自動車のタイヤの空洞共鳴周波数に略一致するように振動モードを調整されたフロアパネル構造とされ
    上記一対の楕円形曲面部の各々は、上記振動モードの調整のために、中央部の曲率半径が大きく周辺部の曲率半径が小さい複合曲面構造になっていることを特徴とする自動車のフロア構造。
  2. 自動車のフロアが、車幅中央部を車体前後方向に延びるフロアトンネル部と、該車幅の両側部を車体前後方向に延びる左右のサイドシルと、該フロアトンネル部と左右のサイドシルとの中間部を車体前後方向に延びるサイドフレームと、車幅方向に延びる複数のクロスメンバとによって複数のエリアに区画され、
    上記複数のエリアのうちの少なくとも1つのエリアのフロアパネルは、左右が上記フロアトンネル部又はサイドシルとサイドフレームとによって拘束され、前後が2つのクロスメンバによって拘束された車体前後方向に長い略長方形状に形成され、且つその長辺は短辺の2倍よりも長く形成されており、
    上記フロアパネルは、該フロアパネルに周縁が車体前後方向に長い楕円形に形成され且つ上方又は下方へ膨出した一対の曲面部が互いの長軸を同軸にして車体前後方向に並ぶように設けられて、車体前後方向では2つの腹を生じ車幅方向では1つの腹を生ずる2×1モードの振動が発生し該2×1モードの固有振動数が200〜300Hzとなるように振動モードを調整されたフロアパネル構造とされ
    上記一対の楕円形曲面部の各々は、上記振動モードの調整のために、中央部の曲率半径が大きく周辺部の曲率半径が小さい複合曲面構造になっていることを特徴とする自動車のフロア構造。
  3. 請求項2において、
    上記2×1モードの固有振動数が220〜240Hzとされている自動車のフロア構造。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、
    上記一対の楕円形曲面部は、平面視で互いの凹部が接し又はオーバラップしている自動車のフロア構造。
  5. 請求項1〜3のいずれかにおいて、
    上記フロアパネルには、上記一対の楕円形曲面部の長軸の端部同士を結ぶように車体前後方向に延び且つ幅が当該楕円の短軸よりも狭い中間ビードが形成されている自動車のフロア構造。
  6. 請求項5において、
    上記フロアパネルには、上記各楕円形曲面部の上記中間ビードとは長軸方向の反対側の縁に車体前後方向に延びる端部ビードが形成されている自動車のフロア構造。
  7. 請求項6において、
    上記フロアパネルには、各楕円形曲面部のサイドの縁に車体前後方向に延びる側部ビードが形成されている自動車のフロア構造。
  8. 請求項7において、
    上記フロアパネルは、左右が上記サイドフレームと上記サイドシルとによって拘束されており、
    上記側部ビードは、上記サイドフレーム及び上記サイドシルのうち上記フロアパネルに対する拘束度の低いサイドフレーム側に配置されて、上記楕円形曲面部の両サイドの剛性がバランスされている自動車のフロア構造。
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