JP3840995B2 - 密閉型圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、密閉容器に耐食性、耐候性に優れた塗装を施した密閉型圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、密閉型圧縮機の塗装として、特開2001−263244号公報に開示されているように、DIP式塗装、電着塗装又は粉体塗装などが一般に用いられている。また、屋外用、特に海上輸送コンテナ等重塩害に曝される圧縮機の塗装については、厚膜型エポキシ樹脂塗料が採用されていた。この厚膜型エポキシ樹脂塗料を用いた塗装において、重塩害環境下で充分な耐食性及び耐候性を維持するためには、圧縮機の密閉容器表面に形成される塗膜厚さを300μm以上にする必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記厚膜型エポキシ樹脂塗装では、塗膜厚さが厚いため吹きつけ塗装をすると塗装ムラや垂れが生じやすい。このため、美観を損ねるばかりでなく、耐食性に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、塗膜厚さが厚いため塗布された塗料の乾燥に長時間を要し、圧縮機の製造工程上問題があった。
【0004】
さらに、圧縮機は、低温低圧冷媒を吸入して高温高圧冷媒を吐出する。このため、圧縮機の密閉容器では、高温部分と低温部分との温度勾配が大きい。また、海上輸送用の冷凍コンテナ等に用いられる圧縮機は、使用される環境が赤道付近の高温地域から高緯度の極寒地域と広範に及ぶ場合もある。このような過酷な温度条件の下、特に塗膜厚さが300μm以上の厚膜型エポキシ樹脂塗装では、密閉容器の温度勾配や環境温度の変化に塗膜が順応できない。このため、塗膜割れを生じ易く、充分な耐候性、耐食性を維持できないといった問題があった。
【0005】
加えて、圧縮機が屋外に露出している場合には、紫外線の曝露により塗膜の劣化が促進されてしまうといった問題もあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、密閉型圧縮機の密閉容器に犠牲防食作用を有する塗料と、紫外線遮蔽効果を有する塗料を積層塗布することにより、高い防食性、耐候性を有する密閉型圧縮機を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、密閉容器(2)に圧縮機構(7)が収納された密閉型圧縮機(1)を対象とする。該密閉容器(2)の表面には、密閉容器(2)の素材に対し犠牲防食作用を有する金属粉末(33)を含有するエポキシ樹脂系塗料が下塗層(31)として塗布されている。下塗層(31)の上面には金属酸化物細片(34)を含有するエポキシ樹脂系塗料が上塗層(32)として塗布されている海上輸送コンテナ用の密閉型圧縮機である。そして、前記下塗層 (31) の塗膜厚さが70μm以上、100μm以下であり、上塗層 (32) の塗膜厚さが50μm以上、200μm以下である。
【0008】
請求項2の発明は、密閉容器(2)に圧縮機構(7)が収納された密閉型圧縮機(1)を対象とする。鉄製の密閉容器(200)の表面には、亜鉛粉末を含有するエポキシ樹脂系塗料が下塗層(31)として塗布されている。下塗層(31)の上面には雲母状酸化鉄を含有するエポキシ樹脂系塗料が上塗層(32)として塗布されている密閉型圧縮機である。
【0009】
請求項3の発明は、前記請求項1又は2の発明において、合成樹脂製基板(34)の裏面にアクリル樹脂系粘着剤を含浸させた不織布(42)を積層してなる銘板40を貼着した密閉型圧縮機である。
【0010】
−作用−
請求項1の発明では、密閉容器(2)の表面に下塗層(31)と上塗層(32)とが設けられている。下塗層(31)に含有される金属粉末(33)は、密閉容器(2)を形成する金属に対し犠牲防食作用を有する。つまり、密閉容器(2)の表面で腐蝕作用が起こるとき、金属粉末(33)がアノードとなり、密閉容器(2)がカソードとなって両者間に防食電流が生じる。このように防食電流が生じることで、アノードである金属粉末(33)のみが漸次溶解してゆく。下塗層(31)のマトリックス相として使用されるエポキシ樹脂系塗料は、金属粉末(33)を密閉容器(2)表面に強固に保持する。
【0011】
上塗層(32)に含有される金属酸化物細片(34)は、外界からの紫外線を有効に吸収遮蔽する。また、金属酸化物細片(34)は、海水に対する防食性にも優れる。更に、上塗層(32)のマトリックス相として使用されるエポキシ樹脂系塗料は、金属酸化物細片(34)を下塗層(31)表面に強固に保持する。また、本発明に係る密閉型圧縮機を冷凍ユニットに据え付けるときや、交換するときにボルト締め付け部などに塗膜剥離を起こす可能性があり、タッチアップ(補正塗り)が必要となる場合がある。このような場合、初期上塗層(32)の表面粗さが大きいため、タッチアップ塗装部との層間密着性に優れる。
【0012】
また、前記下塗層 (31) の塗膜厚さが70μm以上、100μm以下であり、上塗層 (32) の塗膜厚さが50μm以上、200μm以下であり、各塗膜は比較的薄く形成される。そして、両塗膜厚さの合計は、120μm以上、300μm以下となる。
【0013】
請求項2の発明では、鉄製の密閉容器(200)の表面に亜鉛粉末を含有する下塗層(31)と雲母状酸化鉄を含有する上塗層(32)とが設けられる。下塗層(31)に含有される亜鉛粉末は、鉄製の密閉容器(200)に対し犠牲防食作用を有する。つまり、鉄製の密閉容器(200)の表面で腐蝕作用が起こるとき、亜鉛粉末がアノードとなり、鉄製の密閉容器(200)がカソードとなって両者間に防食電流が生じる。このように防食電流が生じることで、アノードである亜鉛粉末のみが漸次溶解してゆく。下塗層(31)のマトリックス相として使用されるエポキシ樹脂系塗料は、亜鉛粉末を密閉容器(2)表面に強固に保持する。
【0014】
上塗層(32)に含有する雲母状酸化鉄は、外界からの紫外線を有効に吸収遮蔽する。また、雲母状酸化鉄は、海水に対する防食性にも優れる。上塗層(32)のマトリックス相として使用されるエポキシ樹脂系塗料は、雲母状酸化鉄を下塗層(31)表面に強固に保持する。また、本発明に係る密閉型圧縮機を冷凍ユニットに据え付けるときや、交換するときにボルト締め付け部などに塗膜剥離を起こす可能性があり、タッチアップ(補正塗り)が必要となる場合がある。このような場合、初期上塗層(32)の表面粗さが大きいため、タッチアップ塗装部との層間密着性に優れる。
【0015】
請求項3の発明では、合成樹脂製基板(41)は可撓性を有し、密閉容器(2)の曲面に追随して変形する。また、不織布(42)が一定の厚みを有しアクリル樹脂系粘着剤を充分に含浸する。更に、不織布(42)は弾力性を有するため、上塗層(32)の表面粗さに追随して上塗層(32)表面に密着する。
【0016】
【発明の実施の形態1】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
《圧縮機の全体構成》
図1に示すように、本実施形態に係る密閉型圧縮機(1)は、密閉容器(2)を備える。本実施形態に係る密閉容器(2)は、容器が溶接で組み立てられて分解できない全密閉型であるが、容器がボルトで組み立てられて分解可能な半密閉型でもよい。
【0018】
密閉容器(2)の表面の塗膜(3)は、下塗層(31)と上塗層(32)からなる。塗装に関しては、後に詳しく説明する。密閉容器(2)内は、ハウジング(4)により、上方の低圧室(5)と下方の高圧室(6)とに区画されている。
【0019】
低圧室(5)内には、オルダムリング(10)を備えたスクロール型の圧縮機構(7)が載置される。高圧室(6)には、電動機(16)、駆動軸(17)及び下部主軸受(18)が収納される。駆動軸(17)の上端部には、偏心部(19)が形成されており、該偏心部(19)は前記可動スクロール(9)の軸受け部(14)に係合する。駆動軸(17)の下端部は、下部主軸受(18)により回転自在に支持される。
【0020】
固定スクロール(8)は、渦巻壁状の固定側ラップ(11)と吸入口(27)を備える。一方、可動スクロール(9)は、渦巻壁状の可動側ラップ(12)と可動側端板部(13)とを備える。可動側端板部(13)の背面側には、軸受け部(14)が設けられる。また、可動側端板部(13)のほぼ中心には、軸受け部(14)に開口する吐出口(15)が形成される。前記駆動軸(17)には、一端側が前記偏心部(19)の上端で開口し、他端側が前記密閉容器(2)の高圧室(6)に開口する流体流通路(20)が形成されている。流体流通路(20)の偏心部(4)側の開口部には、流体流通路(20)の径よりもやや大きい径を有する円筒状の座部(21)が形成されている。座部(21)の内側には、スプリング(22)及び該スプリング(22)を押し縮めるように円管状のシール部材(23)が収納される。シール部材(23)の径は、吐出口(15)の径よりも大きく設定される。
【0021】
偏心部(19)を前記可動スクロール(9)の軸受け部(14)に係合させた状態において、座部(21)からスプリング(22)により押し上げられたシール部材(23)の先端面は、前記吐出口(15)を覆うように可動側端板部(13)の背面に当接する。
【0022】
《運転動作》
次に、本実施形態に係る密閉型圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0023】
電動機(16)を駆動すると、前記密閉容器(2)に固定されたステータに対してロータが回転し、それによって駆動軸(17)が回転する。該駆動軸(17)が回転すると、駆動軸(17)の上端部に形成された偏心部(19)が、駆動軸(19)の回転中心の周りを回動する。該偏心部(4)は軸受け部(17)を介して可動スクロール(9)を固定スクロール(8)に対して公転運動をさせる。可動スクロール(9)の公転運動に伴い、吸入ポート(24)から冷媒が吸入され、圧縮機構(7)の流体室(26)にとじ込まれる。可動スクロール(9)の公転運動に伴い、流体室(26)の容積が次第に小さくなってゆき、流体室(26)内の冷媒が圧縮される。
【0024】
このように圧縮された高温高圧の冷媒は、可動側端板部(13)のほぼ中央に形成されたの吐出口(15)から吐出される。吐出された高温高圧の冷媒は、駆動軸(17)の流体流通路(20)に流れ込み、該流体流通路(20)を通って高圧室(6)に流出する。 高圧室(6)に流出した高温高圧冷媒は、密閉容器(2)の胴部に設けられた吐出ポート(25)から冷媒回路へ送り出され、冷媒回路において凝縮、膨張、蒸発の各行程を行った後、再度吸入ポート(24)から吸入されて圧縮される。
【0025】
このように、低温状態で低圧室(5)に吸入された冷媒は、圧縮機構(7)により圧縮され高温高圧状態で高圧室に吐出される。従って、密閉型圧縮機(1)の運転中は、低圧室(5)の温度と高圧室(6)の温度との間にかなりの温度差が生じる。そのため、密閉容器(2)においても、低圧室(5)を形成する部位と高圧室(6)を形成する部位との間には大きい温度勾配が生じることとなる。
【0026】
《圧縮機の塗装》
本実施形態に係る密閉型圧縮機(1)は、密閉容器(2)の外面側に高耐食性を有する塗膜(3)が形成される。図2に示すように、該密閉容器(2)の表面には、密閉容器(2)の素材に対し犠牲防食作用を有する金属粉末(33)を含有するエポキシ樹脂系塗料が下塗層(31)として塗布され、金属酸化物細片(34)を含有するエポキシ樹脂系塗料が上塗層(32)として塗布されている。
【0027】
下塗層(31)に含まれる金属粉末(33)が、密閉容器(2)に対して犠牲防食作用を発揮するためには、密閉容器(2)の素材に対して卑なる金属粉末を選択する必要がある。本実施形態では、金属粉末(33)として亜鉛粉末が用いられる。この亜鉛粉末は、密閉容器(200)の素材である鉄に対して卑である。亜鉛粉末の性状は、数ミクロンオーダーの微粉末であることが望ましい。また、マトリックス相がエポキシ樹脂系塗料である場合、乾燥塗膜中に亜鉛粉末が60%(質量百分率、以下同じ)以上、80%以下程度含まれていることが好ましい。
【0028】
下塗層(31)のマトリックス相として、エポキシ樹脂系塗料が使用される。エポキシ樹脂系塗料は、炭素−炭素結合がエーテル結合で結合されており、エステル結合を含まないため、水分が存在する環境下においても加水分解されにくい。 また、分子内のエポキシ基や水酸基の作用により密着性に優れるといった利点を有する。エポキシ樹脂系塗料の硬化剤としては、主にポリアミド系硬化剤やポリアミン系硬化剤が用いられる。
【0029】
上塗層(32)に含まれる金属酸化物細片(34)は、紫外線吸収遮蔽効果を有する。
【0030】
また、金属酸化物細片(34)を含むことによって塗膜粗さが大きくなり、上塗層(32)と下塗層(31)との密着性も向上する。金属酸化物細片(34)の性状は、平均粒径10μm以上、60μm以下程度、平均厚さ3μm程度、比重4.7以上、5.2以下のものが好ましく、乾燥塗膜中、40%以上、60%以下程度含まれていることが好ましい。本実施形態に係る金属酸化物細片(34)として、雲母状酸化鉄(M.I.O:マイカシアス アイアン オキサイド)が好適である。雲母状酸化鉄は、Fe2O3を主成分とするフレーク状粒子からなる顔料であり、SiO2、Al2O3の他、微量のCaO、MgOを含むものもある。このような金属酸化物細片(34)を下塗層(31)と同様にエポキシ樹脂系塗料に分散させ、エアレス塗装やハケ塗りで前記下塗層(31)の上面に塗布する。
【0031】
塗装の塗膜厚さは、耐食性、耐候性及び耐衝撃性等と密接に関係する。また、製造工程上、乾燥時間に影響される作業効率の問題、塗装ムラ、タレといった製品の美感上の問題とも関係している。
【0032】
そこで、本実施形態に係る密閉型圧縮機(1)の密閉容器(2)に施される塗膜厚さは、下塗層(31)と上塗層(32)の合計で120μm以上、300μm以下、好ましくは、150μm以上、300μm以下とする。すなわち、下塗層(31)の塗膜厚さが70μm以上、100μm以下、上塗層(32)の塗膜厚さが50μm以上、200μm以下となるように管理する。また、上塗層(32)の塗膜厚さは、下塗層(31)の塗膜厚さの概ね2倍程度とするのが好適である。
【0033】
下塗層(31)の塗膜厚さが70μm未満であると、海水などの腐食成分を充分に遮断できないおそれがある。また、犠牲防食作用を有する金属粉末(33)の絶対量も充分ではなく、長期間にわたり耐食性を保持することが困難となるおそれがある。一方、下塗層(31)の塗膜厚さが100μmより厚いと、環境温度の変化や圧縮機の運転中に生じる温度勾配による密閉容器(2)の膨張・収縮に塗膜が順応できず、塗膜割れや塗膜剥離を生じるおそれがある。更に、製造工程上、塗膜の乾燥に長時間を要し、その間に塗料のタレが生じてムラができ、耐食性を低下させるおそれもある。
【0034】
上塗層(32)の塗膜厚さが50μm未満であると、海水などの腐食成分を充分に遮断できないおそれがある。また、充分な紫外線吸収遮蔽効果が得られず塗膜の劣化を抑制する効果が低下するおそれもある。一方、上塗層(32)塗膜厚さが200μmより厚いと、環境温度の変化や圧縮機の運転中に生じる温度勾配による密閉容器(2)の膨張・収縮に塗膜が順応できず、塗膜割れや塗膜剥離を生じるおそれがある。更に、製造工程上、塗膜の乾燥に長時間を要し、その間に塗料のタレが生じてムラができ、耐食性を低下させるおそれもある。
【0035】
ここで、下塗層(31)よりも上塗層(32)を厚く形成することができる理由は、主に次のようなものである。すなわち、下塗層(31)が緩衝層となって密閉容器(2)の温度勾配を緩和することで、上塗層(32)への温度勾配の影響が小さくなるからである。また、塗装工程の観点からは、上塗層(32)に含有する金属酸化物細片(34)がマトリックス相であるエポキシ樹脂系塗料の粘度を高め、タレが生じにくいからである。
【0036】
《評価試験》
本発明に係る密閉型圧縮機(1)の耐食性を評価するために、塩水噴霧試験(JIS K 5400)を行なった。
【0037】
試験片として、圧縮機の密閉容器を想定して、鋼板に所定長さの鋼管及び銅管を溶接とロウ付により接合したものを使用する。
【0038】
本実施形態に係る塗装として、亜鉛粉末を含有する下塗層(31)を厚さ70μmに塗布し、雲母状酸化鉄を含有する上塗層(32)を厚さ50μmに塗布する。
【0039】
比較する塗装として、一般的なエポキシ樹脂系塗料を厚さ100μmに塗布したもの(A)と、厚さ200μmに塗布したもの(B)、及び粉体塗料を厚さ300μmに塗布したもの(C)を用意する。
【0040】
それら各試験片の所定位置に、カッターナイフで試験片の素地に達するように交差する2本の切り傷(クロスカット)を入れたものを調製した。これら試験片を試験器中に設置して塩化ナトリウム水溶液を連続的に噴霧し、所定時間毎にクロスカット部に生じた錆の大きさを測定した。
【0041】
試験結果を図3のグラフに示す。このグラフからわかるように、各比較品は約750時間から1000時間の間に発錆し始め、その後、それぞれ一定の割合で錆が増え続ける。一方、本発明品は約1500時間まで発錆が認められなかった。また、本発明品は発錆した後も錆の増加の割合が、比較品に比べて小さいことがわかる。
【0042】
次に、本発明に係る密閉型圧縮機(1)の耐食性の耐久力を評価するために複合サイクル試験を行なった。試験片は上記塩水噴霧試験と同じものを用意し、同じくクロスカット部に生じる錆の大きさを測定した。複合サイクルは、4時間の塩水噴霧の後、2時間の強制乾燥(温度:70℃)の後、2時間の湿潤環境(温度:50℃、湿度:85%)に放置することを1サイクルとした。
【0043】
試験結果を図4のグラフに示す。このグラフからわかるように、従来のエポキシ樹脂系塗料塗料を塗装したものは、いずれも20サイクルまでに発錆し、粉体塗料による塗装を施したものも20サイクルを越えると発錆した。一方、本発明品は、40サイクルまでは発錆せず、発錆した後も錆の成長の割合が、比較品に比べて小さいことがわかる。
【0044】
更に、本発明に係る密閉型圧縮機(1)の塗膜厚さの変化による耐食性の変化を評価するための試験を行なった。
【0045】
試験片は上記塩水噴霧試験と同じものを用意し、その塗膜厚さを変えて9種の塗装を施す。なお、いずれの塗膜厚さにおいても、上塗層(32)の塗膜厚さを下塗層(31)の塗膜厚さの2倍とした。これら試験片を上記試験器中に設置し、上記複合サイクル試験を100サイクル行ないクロスカット部に生じた錆の大きさを測定した。
【0046】
試験結果を図5のグラフに示す。このグラフからわかるように、塗膜厚さ10μmや50μmでは、かなり錆が成長している。しかし、塗膜厚さが120μm以上、300μm以下であれば、錆の成長が低いレベルで安定していることがわかる。特に、塗膜厚さが150μm以上、280μm以下であれば、最も有効に錆の成長を抑制できることがわかる。一方、塗膜厚さが300μmを越えると再び錆が増加し始めることがわかる。これは上記サイクルの繰り返しに塗膜が追随できずにクロスカット部から塗膜割れが広がりはじめことに起因する。
【0047】
《実施形態の効果》
本実施形態によれば、下塗層(31)に金属粉末(33)として含有される亜鉛粉末が密閉容器(2)に対して、犠牲アノードとなり、該亜鉛粉末のみが漸次溶解してゆく。従って、カソードとして働く鉄製の密封容器(200)は、重塩害環境下においても長期間にわたり発錆が抑制される。また、上塗層(32)に金属酸化物細片(34)として含有される雲母状酸化鉄によって外界からの紫外線が吸収遮蔽されることにより、下塗層(31)及び上塗層(32)のエポキシ樹脂系塗料の劣化が低減される。従って、長期間にわたる曝露に対して上記効果を維持することができる。更に、本実施形態に係る上塗層(32)は、下塗層(31)との層間密着性に優れるため、環境温度の急激な変化や圧縮機自体の温度勾配による塗膜剥離が生じるおそれもない。
【0048】
このように、本実施形態の密閉型圧縮機(1)は、上記下塗層(31)と上塗層(32)の作用効果が相まって、重塩害環境下においても発錆に起因する密閉容器(2)の損傷などが低減し、密閉型圧縮機(1)の信頼性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態によると下塗層(31)と上塗層(32)の塗膜厚さを最適化することができ、高耐食性を維持できるとともに、耐衝撃性をも向上させることができる。また、塗装作業において塗装ムラやタレを生じることがなく塗膜管理を容易にすることができる。更に、塗膜の乾燥時間を短縮できるため、製造工程上も有利である。
【0050】
【発明の実施の形態2】
実施形態2として、上記実施形態1の密閉型圧縮機(1)に銘板(40)を貼着したものについて説明する。
【0051】
本発明に係る塗装を施した密閉容器(2)の表面は、上塗層(32)に含まれる金属酸化物細片(34)の影響により、表面粗さの大きな粗面状に仕上がる。このような表面粗さの大きい密閉容器(2)の表面に従来の銘板を貼着すると、銘板の裏面の粘着剤層が薄いため、密着性が悪く使用中に剥がれてしまうといった問題があった。
【0052】
図6に示すように、本実施形態に係る銘板(40)は、合成樹脂製基板(41)の裏面にアクリル樹脂系粘着剤を含浸させた不織布(42)が積層一体化されている。
【0053】
基板(41)に用いられる合成樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等耐熱性、耐候性、適度な可撓性を有するものから適宜選択することができる。
【0054】
不織布(42)に用いられる素材としては、綿、レーヨン、ポリプロピレンあるいはナイロン等から適宜選択することができる。また、不織布(42)は厚さ100μm程度が適当である。
【0055】
ここで、アクリル樹脂系粘着剤が選択されるのは、次の理由による。すなわち、アクリル樹脂系粘着剤は、その分子構造上、エステル結合などの不飽和結合がなく、酸化などによる劣化反応を起こしにくいため、耐候性、耐劣化性に優れるからである。また、アクリル樹脂系粘着剤は浸透性に優れるため、表面粗さの大きい塗膜表面に対しても高い粘着性を発揮するからである。
【0056】
上記不織布(42)にアクリル樹脂系粘着剤を含浸させ、前記合成樹脂製基板(41)と積層一体化する。該基板(41)の表面には所定の情報等が印刷され、所定の形状に裁断される。このように形成された銘板を前記密閉型圧縮機(1)の密閉容器(2)の平面部又は曲面部に押圧して貼着する。
【0057】
尚、該銘板(40)は、該粘着剤が含浸した不織布(42)の表面に所定の剥離紙を張ることにより、保管等が可能になる。
【0058】
このように構成されることにより、銘板(40)の不織布(41)は、適度な弾力性を有するため、密閉容器(2)表面の表面粗さによく追随して良好な密着性を発揮する。そのため、アクリル樹脂系粘着剤が接触する表面積が増加し、銘板(40)を強固に貼着することができる。従って、本実施形態に係る密閉型圧縮機(1)は、貼着された銘板(40)が剥がれたり、脱落することがない。
【0059】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、下塗層(31)に含有する金属粉末(33)が密閉容器(2)に対して、犠牲アノードとなり、該金属粉末(33)のみが漸次溶解してゆく。従って、カソードとして働く密封容器(2)は、重塩害環境下においても長期間にわたりその発錆が抑制される。よって、発錆が原因となる密閉容器(2)の損傷などが低減し、圧縮機の信頼性を向上させることができる。また、上塗層(32)に含有する金属酸化物細片(34)によって外界からの紫外線が吸収遮蔽されることにより、下塗層(31)及び上塗層(32)のマトリックス相として使用されるエポキシ樹脂系塗料の劣化が低減される。従って、長期間にわたっる曝露に対して上記効果を維持することができる。更に、本発明に係る上塗層(31)は下塗層(32)との層間密着性に優れるため、環境温度の急激な変化や、密閉容器(2)自体の温度勾配による塗膜剥離が生じるおそれもない。このように、本発明に係る発明によれば、密閉型圧縮機(1)の防食性、耐候性を向上させることができる。
【0060】
また、下塗層 (31) と上塗層 (32) の塗膜はそれぞれ比較的薄く形成される。このように、塗膜が薄いため耐衝撃性にも優れる。また、塗装作業において塗装ムラやタレを生じることがない。そのため、防食性、耐候性の低下や美感を損ねることを防止することができる。更に、塗膜の乾燥時間を短縮できるため、製造工程上も有利である。
【0061】
請求項2の発明によれば、下塗層(31)に含有する亜鉛粉末が鉄製の密閉容器(200)に対して、犠牲アノードとなり、該亜鉛粉末のみが漸次溶解してゆく。従って、カソードとして働く鉄製の密封容器(200)は、重塩害環境下においても長期間にわたりその発錆が抑制される。よって、発錆が原因となる密閉容器(200)の損傷などが低減し、圧縮機の信頼性を向上させることができる。また、上塗層(32)に含有する雲母状酸化鉄によって外界からの紫外線が吸収遮蔽されることにより、下塗層(31)及び上塗層(32)のマトリックス相として使用されるエポキシ樹脂系塗料の劣化が低減される。従って、長期間にわたっる曝露に対して上記効果を維持することができる。更に、本発明に係る上塗層(32)は下塗層(31)との層間密着性に優れるため、環境温度の急激な変化や、密閉容器(2)自体の温度勾配による塗膜剥離が生じるおそれもない。このように、本発明に係る発明によれば、密閉型圧縮機(1)の防食性、耐候性を向上させることができる。
【0062】
請求項3の発明によれば、表面粗さの比較的大きな本発明に係る上塗層(32)の表面に、銘板(40)を強固に貼着することができる。従って、長期間にわたり、銘板(40)が脱落するといった不都合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る密閉型圧縮機の全体断面図である。
【図2】実施形態に係る密閉容器表面の塗膜の概念図である。
【図3】塩水噴霧試験の結果を示すグラフである。
【図4】複合サイクル試験の結果を示すグラフである。
【図5】塗膜厚さを評価する試験の結果を示すグラフである。
【図6】実施形態に係る銘板の固着状態を示す概念図である。
【符号の説明】
(2) 密閉容器
(3) 塗膜
(31) 下塗層
(32) 上塗層
(33) 金属粉末
(34) 金属酸化物細片
Claims (3)
- 密閉容器(2)に圧縮機構(7)が収納された密閉型圧縮機(1)であって、該密閉容器(2)の表面には、密閉容器(2)の素材に対し犠牲防食作用を有する金属粉末(33)を含有するエポキシ樹脂系塗料が下塗層(31)として塗布され、金属酸化物細片(34)を含有するエポキシ樹脂系塗料が上塗層(32)として塗布され、
前記下塗層 (31) の塗膜厚さが70μm以上、100μm以下であり、上塗層 (32) の塗膜厚さが50μm以上、200μm以下である海上輸送コンテナ用の密閉型圧縮機。 - 請求項1に記載の密閉型圧縮機1において、
前記金属粉末( 33 )は、亜鉛粉末であり、
前記金属酸化物細片( 34 )は、雲母状酸化鉄である密閉型圧縮機。 - 請求項1又は2に記載の密閉型圧縮機(1)において、合成樹脂製基板(41)の裏面にアクリル樹脂系粘着剤を含浸させた不織布(42)を積層してなる銘板(40)を貼着した密閉型圧縮機。
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